説明

熱変色性素子及び熱変色性表示装置

【課題】本発明は、熱変色性素子及び熱変色性表示装置に関する。
【解決手段】本発明の熱変色性素子は、絶縁基板と、熱変色性構造体と、加熱構造体と、を備える。前記熱変色性構造体及び前記加熱構造体が前記絶縁基板に設置される。前記加熱構造体が、カーボンナノチューブ構造体を含み、該カーボンナノチューブ構造体が複数のカーボンナノチューブを含み、前記熱変色性構造体を加熱することに用いられる。前記熱変色性構造体が、40℃以上の温度で非結晶状態及び結晶状態の変換できる変色材料であり、該変色材料の非結晶状態での光反射率と結晶状態での光反射率とが異なる。また、本発明は、熱変色性表示装置を提供する。該熱変色性表示装置が前記熱変色性素子を採用している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱変色性素子(THERMOCHROMATIC DEVICE)及び熱変色性表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶ディスプレーに代わる次世代平面ディスプレーとして熱変色性素子が精力的に研究されている。温度の変化によって透過率や反射率等の光学特性が可逆的に変化することを熱変色性現象と言う。熱変色性現象を持つ熱変色性材料は温度の変化によって異なる色を表示させる。従って、熱変色性材料は表示装置の表示効用である熱変色性素子に応用されることができる。
【0003】
従来の熱変色性表示装置の熱変色性素子は、少なくとも加熱層と表示層とを備え、前記加熱層と表示層とは、接近して、又は間隔を置いて配置される。前記加熱層は、主に金属板からなる。しかし、金属板の単位面積当たりの熱容量が大きく、厚さが大きいので、前記金属板からなる加熱層は、作動の際の温度の変化が鈍く、電熱変換率が低い。従って、従来の熱変色性表示装置の熱変色性素子が作動する時、色彩表示の応答速度が鈍く、エネルギー消費が大きい。又、金属板の硬度が高いため、フレキシブルな熱変色性表示装置とする応用に制限がある。前記問題を解決するために、従来技術では、以下のような熱変色性表示装置が提供されている。前記熱変色性表示装置の熱変色性素子の加熱層は、カーボンインク及びポリマーを含み、該カーボンインクが前記ポリマーに印刷される。前記ポリマーの材料は、誘電体膜又はポリエステルフィルムである。該熱変色性素子がフレキシブルな熱変色性表示装置に応用されることができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Kaili Jiang、Qunqing Li、Shoushan Fan、“Spinning continuous carbon nanotube yarns”、Nature、2002年、第419巻、p.801
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、前記カーボンインクが前記ポリマーに印刷され、該ポリマーの単位面積当たりの熱容量が大きいので、前記熱変色性素子の加熱層の熱容量が大きくなる。前記熱変色性素子が作動の際の温度の変化が鈍く、電熱変換率が低い。従って、従来の熱変色性表示装置の熱変色性素子が作動する時、色彩表示の応答速度が鈍く、エネルギー消費が大きい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
従って、前記課題を解決するために、本発明は色彩表示の応答速度が速い熱変色性素子及び熱変色性表示装置を提供する。
【0007】
熱変色性素子は、絶縁基板と、熱変色性構造体と、加熱構造体と、を備える。前記熱変色性構造体及び前記加熱構造体が前記絶縁基板に設置される。前記加熱構造体は、カーボンナノチューブ構造体を含み、該カーボンナノチューブ構造体が複数のカーボンナノチューブを含み、前記熱変色性構造体を加熱することに用いられる。前記熱変色性構造体は、40℃以上の温度で非結晶状態及び結晶状態の変換できる変色材料であり、該変色材料は、非結晶状態での光反射率と、結晶状態での光反射率とが異なる。
【0008】
前記カーボンナノチューブ構造体は、自立構造を有するものである。
【0009】
前記加熱構造体は、カーボンナノチューブ構造体であり、該カーボンナノチューブ構造体がカーボンナノチューブフィルム又はカーボンナノチューブワイヤからなり、該カーボンナノチューブフィルム又はカーボンナノチューブワイヤが複数のカーボンナノチューブからなる。
【0010】
熱変色性表示装置は、絶縁基板と、複数の行電極リード線と、複数の列電極リード線と、複数の熱変色性素子と、を備える。前記複数の行電極リード線及び複数の列電極リード線が絶縁的に交叉して前記絶縁基板の表面に設置され、隣接する二つの行電極リード線と、隣接する二つの列電極リード線とが、一つの画素ユニットを画定し、各々の前記画素ユニットに一つの前記熱変色性素子が設置される。前記熱変色性素子は、熱変色性構造体と、加熱構造体と、第一電極と、第二電極とを備える。前記第一電極と第二電極は、間隔を置いて前記加熱構造体に電気的に接続され、且つ別々に前記行電極リード線と列電極リード線とに電気的に接続される。前記加熱構造体は、カーボンナノチューブ構造体を含み、該カーボンナノチューブ構造体が複数のカーボンナノチューブを含み、前記熱変色性構造体を加熱することに用いられる。前記熱変色性構造体は、40℃以上の温度で非結晶状態及び結晶状態の変換できる変色材料である。該変色材料は、非結晶状態での光反射率と、結晶状態での光反射率とが異なる。
【発明の効果】
【0011】
従来の技術と比べて、本発明の熱変色性素子と熱変色性表示装置は以下の優れた点を有する。表示状態を書き込む場合、前記熱変色性構造体に短く、強い書き込み熱パルスを印加する。加熱温度が高いので、前記熱変色性構造体が液体状態に瞬間的に加熱される。加熱時間が短いので、温度が低温に速く下がる。これによって、前記熱変色性構造体が液体状態から固体状態に速く冷却され、非結晶状態の熱変色性構造体に形成される。前記非結晶状態の熱変色性構造体は、室温で他のエネルギーを必要とせずに非結晶状態を保持することができる。前記非結晶状態の熱変色性構造体の光線に対する反射率は、結晶状態の熱変色性構造体の光線に対する反射率とは異なるので、表示を実現することできる。表示状態を消去する場合、前記熱変色性構造体に長く、弱い消去熱パルスを印加する。この過程がアニーリングすることに相当する。アニーリングされた後、前記熱変色性構造体が最初の結晶状態に戻るので、消去を実現することができる。前記結晶状態の熱変色性構造体は、室温で他のエネルギーを必要とせずに結晶状態を保持することができる。前記熱変色性構造体は、室温で結晶状態又は非結晶状態を長い時間で保持できるので、表示状態が保持され、双安定表示を実現することができる。
【0012】
前記熱変色性素子と熱変色性表示装置の加熱構造体は、カーボンナノチューブ構造体を含み、その単位面積当たりの熱容量が低いので、前記加熱構造体の熱応答速度が速く、前記熱変色性構造体との熱の交換速度が速いので、該熱変色性構造体を速く加熱することができる。従って、前記熱変色性素子の色彩表示の応答速度が速く、エネルギー消費が小さくなる。また、前記熱変色性表示装置は、前記行電極リード線及び列電極リード線によってそれぞれ各々の熱変色性素子を制御するので、動態表示を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態1の熱変色性素子の構造を示す断面図である。
【図2】ドローン構造カーボンナノチューブフィルムのSEM写真である。
【図3】ドローン構造カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブセグメントの構造を示す図である。
【図4】図2中のドローン構造カーボンナノチューブフィルムを引き出す見取り図である。
【図5】プレシッド構造カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブが等方的に配列されたカーボンナノチューブフィルムのSEM写真である。
【図6】プレシッド構造カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブが同じ方向に沿って配列されたカーボンナノチューブフィルムのSEM写真である。
【図7】綿毛構造のカーボンナノチューブフィルムのSEM写真である。
【図8】綿毛構造のカーボンナノチューブフィルムの写真である。
【図9】ろ過された綿毛構造のカーボンナノチューブ構造体の写真である。
【図10】超長構造カーボンナノチューブフィルムのSEM写真である。
【図11】非ねじれ状のカーボンナノチューブワイヤのSEM写真である。
【図12】ねじれ状のカーボンナノチューブワイヤのSEM写真である。
【図13】本発明の実施形態2の熱変色性素子の構造を示す断面図である。
【図14】本発明の実施形態3の熱変色性素子の構造を示す断面図である。
【図15】本発明の実施形態4の熱変色性素子の構造を示す断面図である。
【図16】本発明の実施形態5の熱変色性素子の構造を示す断面図である。
【図17】本発明の実施形態6の熱変色性素子の構造を示す断面図である。
【図18】本発明の熱変色性表示装置の構造を示す上面図である。
【図19】本発明の熱変色性表示装置の構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
【0015】
(実施形態1)
図1を参照すると、本実施形態は、熱変色性素子220を提供する。該熱変色性素子220は、絶縁基板202と、熱変色性構造体218と、加熱構造体208と、第一電極210と、第二電極212と、を含む。
【0016】
前記熱変色性構造体218及び加熱構造体208は、前記絶縁基板202の表面に設置される。前記加熱構造体208が前記熱変色性構造体218の周りに設置され、該熱変色性構造体218を加熱することに用いられる。前記加熱構造体208が前記熱変色性構造体218を加熱できる限り、前記熱変色性構造体218及び加熱構造体208の位置は制限されない。好ましくは、前記熱変色性構造体218及び加熱構造体208は、層状構造体であり、積層して接触して、又は間隔を置いて配置される。
【0017】
前記熱変色性構造体218及び加熱構造体208が積層して接触して配置される場合、前記熱変色性構造体218及び加熱構造体208の表面が直接接触する。例えば、前記熱変色性構造体218が前記絶縁基板202の表面に配置され、前記加熱構造体208が、前記熱変色性構造体218の、前記絶縁基板202から離れる表面に配置される。前記熱変色性構造体218及び加熱構造体208が間隔を置いて配置される場合、前記熱変色性構造体218及び加熱構造体208が平行して対向して間隔を置いて配置される。例えば、前記熱変色性構造体218が前記加熱構造体208と前記絶縁基板202との間に配置され、該加熱構造体208が支持体(図示せず)によって前記熱変色性構造体218と間隔を置いて配置される。前記第一電極210及び第二電極212は、間隔を置いて配置される。前記第一電極210と第二電極212は、前記加熱構造体208に電気的に接続され、該加熱構造体208に電圧又は電流を提供し、該加熱構造体208で前記熱変色性構造体218を加熱させることに用いられる。
【0018】
本実施形態において、前記熱変色性構造体218及び加熱構造体208は、層状構造体である。前記加熱構造体208は、前記絶縁基板202の表面に配置される。前記熱変色性構造体218は、前記加熱構造体208の、前記絶縁基板202から離れる表面に配置される。前記第一電極210及び第二電極212は、前記熱変色性構造体218の両側に位置する前記加熱構造体208の表面に間隔を置いて配置される。
【0019】
前記絶縁基板202は、剛性基板又は柔軟性基板である。前記剛性基板は、セラミックス基板、ガラス基板、石英基板、シリコン基板、シリコン酸化物基板、ダイヤモンド基板、アルミニウム酸化物基板及び剛性高分子基板などのいずれか一種である。前記柔軟性基板は、合成紙、繊維布及び柔軟性高分子基板などのいずれか一種である。前記柔軟性高分子基板は、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)、ポリカーボネート(PC)又はポリイミド(PI)などである。前記絶縁基板202の材料は前記材料に制限されず、200℃の温度に耐える絶縁材料でもよい。前記絶縁基板202の大きさは、前記熱変色性表示装置20の大きさによって決定される。本実施形態において、前記絶縁基板202はPET基板であり、その厚さが1ミリメートルである。
【0020】
前記熱変色性構造体218は、所定の温度で非結晶状態及び結晶状態の変換できる変色材料により製造される。前記所定の温度は、前記変色材料の非結晶状態及び結晶状態が変換する相変化温度である。前記変色材料は、前記所定の温度に加熱される場合、非結晶状態及び結晶状態の変換を発生させることができる。
【0021】
表示状態を書き込む場合、前記熱変色性構造体218に短く、強い書き込み熱パルスを印加する。加熱温度が高いので、前記熱変色性構造体218が液体状態に瞬間的に加熱される。加熱時間が短いので、温度が低温に速く下がる。これによって、前記熱変色性構造体218が液体状態から固体状態に速く冷却され、非結晶状態の熱変色性構造体218に形成される。前記非結晶状態の熱変色性構造体218は、室温で他のエネルギーを必要とせずに非結晶状態を保持することができる。前記非結晶状態の熱変色性構造体218の光線に対する反射率は、結晶状態の熱変色性構造体218の光線に対する反射率とは異なるので、表示を実現することができる。
【0022】
表示状態を消去する場合、前記熱変色性構造体218に長く、弱い消去熱パルスを印加する。この過程がアニーリングすることに相当する。アニーリングされた後、前記熱変色性構造体218が最初の結晶状態に戻るので、消去を実現することができる。前記結晶状態の熱変色性構造体218が室温で他のエネルギーを必要とせずに結晶状態を保持することができる。前記熱変色性構造体218は、室温で結晶状態又は非結晶状態を長い時間で保持できるので、表示状態が保持され、双安定表示を実現することができる。
【0023】
前記変色材料の結晶状態及び非結晶状態が変換する相変化温度は、40℃より高い。相変化温度が40℃より高い変色材料を利用して前記熱変色性構造体218を製造する場合、前記熱変色性素子220を室温で作動させることができる。好ましくは、前記変色材料の結晶状態及び非結晶状態が変換する相変化温度が600℃より低いことが好ましい。相変化温度が600℃より低い変色材料を利用して前記熱変色性構造体218を製造する場合、前記熱変色性素子220の作動電圧を低下させ、エネルギー消費を減少することができる。また、カーボンナノチューブを利用した加熱構造体208は、長い時間使用しても、酸化されない状態を保持することができる。前記変色材料が非結晶状態及び結晶状態である時の光線に対する反射率は異なり、視覚的に違いがあるので、画素の表示を実現することができる。
【0024】
また、画素の応答速度を高めるために、前記変色材料の結晶状態−非結晶状態の変換時間ができるだけ短く、好ましくは、前記変色材料の結晶状態及び非結晶状態の変換時間が40ミリ秒以下である。前記変色材料は例えば、硫黄化合物、テルル化合物、セレン化合物、テルルセレン化合物などのカルコゲナイド系化合物である。本実施形態において、前記変色材料の熱安定性を高めるために、該変色材料は、カルコゲナイド系元素とゲルマニウムとの化合物、カルコゲナイド系元素とインジウムの化合物、カルコゲナイド系元素とヒ素の化合物、カルコゲナイド系元素とアンチモンの化合物である。例えば、ゲルマニウムとカルコンの化合物、ゲルマニウムとセレンの化合物、ヒ素とカルコンの化合物、ヒ素とセレンの化合物、インジウムとテルルの化合物、インジウムとセレンの化合物、アンチモンとテルルの化合物、又はアンチモンとセレンの化合物である。前記変色材料の相変化速度を高めるために、該変色材料に添加物を添加することができる。該添加物は、銅、銀、金、ニッケル、コバルト、パラジウムなどの金属又は少なくとも二種の前記金属からなる合金である。前記カルコゲナイド系化合物の変色材料は、結晶状態から非結晶状態となる時間が数ナノ秒〜数百ナノ秒であり、非結晶状態から結晶状態となる時間が0.5マイクロ秒〜1ミリ秒である。
【0025】
また、半導体、半導体化合物、金属化合物、高分子材料などの結晶材料は、結晶状態及び非結晶状態の変換する相変化温度が40℃より大きく、結晶状態及び非結晶状態の変換する時間が40ミリ秒以下で、結晶状態及び非結晶状態である時の光線に対する反射率が異なれば、前記熱変色性構造体218を製造することができる。
【0026】
本実施形態において、前記熱変色性構造体218がゲルマニウムとセレンの化合物であり、その厚さが10マイクロメートル〜500マイクロメートルであるが、好ましくは、50マイクロメートル〜500マイクロメートルである。前記熱変色性構造体218は、熱堆積法又はスパッタリング法により、前記加熱構造体208の表面に堆積され、前記第一電極210と前記第二電極212との間に形成される。前記熱変色性構造体218は、それぞれ前記第一電極210及び前記第二電極212と、間隔を置いて配置され、或いは、それぞれ前記第一電極210及び前記第二電極212と、接触して配置される。
【0027】
前記加熱構造体208は、前記熱変色性構造体218を加熱させて、前記熱変色性構造体218の色を変化させる。前記加熱構造体208は、カーボンナノチューブ構造体である。前記カーボンナノチューブ構造体は、自立構造を有するものである。ここで、自立構造とは、支持体材を利用せず、前記カーボンナノチューブ構造体を独立して利用することができるという形態のことである。すなわち、前記カーボンナノチューブ構造体を対向する両側から支持して、前記カーボンナノチューブ構造体の構造を変化させずに、前記カーボンナノチューブ構造体を懸架させることができることを意味する。前記カーボンナノチューブ構造体は、分子間力で結合された複数のカーボンナノチューブからなるので、特定の形状を有する。前記カーボンナノチューブは、単層カーボンナノチューブ、二層カーボンナノチューブ又は多層カーボンナノチューブの少なくとも一種を含む。前記カーボンナノチューブが単層カーボンナノチューブである場合、直径は0.5ナノメートル〜50ナノメートルに設定され、前記カーボンナノチューブが二層カーボンナノチューブである場合、直径は1ナノメートル〜50ナノメートルに設定され、前記カーボンナノチューブが多層カーボンナノチューブである場合、直径は1.5ナノメートル〜50ナノメートルに設定される。前記カーボンナノチューブ構造体における隣接するカーボンナノチューブの間に多くの隙間を有するので、該カーボンナノチューブ構造体が多くの微孔を有する。前記カーボンナノチューブ構造体の単位体積当たりの熱容量は、0(0は含まず)〜2×10−4J/cm・Kであるが、好ましくは、0(0は含まず)〜1.7×10−6J/cm・Kである。
【0028】
前記カーボンナノチューブ構造体は、少なくとも一枚の、カーボンナノチューブフィルム、カーボンナノチューブ線状構造体、又はカーボンナノチューブフィルム及びカーボンナノチューブ線状構造体の組み合わせである。前記カーボンナノチューブ構造体が複数のカーボンナノチューブフィルムを含む場合、前記複数のカーボンナノチューブフィルムが積層して設置される。前記カーボンナノチューブ構造体が複数のカーボンナノチューブ線状構造体を含む場合、該複数のカーボンナノチューブ線状構造体が平行して設置され、交差して設置され、又は編んで、二次元のカーボンナノチューブ構造体を形成することができる。また、前記カーボンナノチューブ構造体は、前記カーボンナノチューブ線状構造体を巻き付けることにより、二次元のカーボンナノチューブ構造体を形成することができる。
【0029】
前記カーボンナノチューブフィルムは、均一的に配置された複数のカーボンナノチューブを含む。前記複数のカーボンナノチューブは、配向し又は配向せずに配置されている。前記複数のカーボンナノチューブの配列方式により、前記カーボンナノチューブフィルムは非配向型のカーボンナノチューブフィルム及び配向型のカーボンナノチューブフィルムの二種に分類される。本実施例における非配向型のカーボンナノチューブフィルムでは、カーボンナノチューブが異なる方向に沿って配置され、又は絡み合っている。配向型のカーボンナノチューブフィルムでは、前記複数のカーボンナノチューブが同じ方向に沿って配列している。又は、配向型のカーボンナノチューブフィルムにおいて、配向型のカーボンナノチューブフィルムが二つ以上の領域に分割される場合、各々の領域における複数のカーボンナノチューブが同じ方向に沿って配列されている。この場合、異なる領域におけるカーボンナノチューブの配列方向は異なる。前記カーボンナノチューブ構造体が同じ方向に沿って配置された複数のカーボンナノチューブを含む場合、該複数のカーボンナノチューブが前記第一電極210から前記第二電極212へ延びる。具体的には、前記カーボンナノチューブフィルムは、ドローン構造カーボンナノチューブフィルム、プレシッド構造カーボンナノチューブフィルム、綿毛構造カーボンナノチューブフィルム又は超長構造カーボンナノチューブフィルムを含む。
【0030】
前記カーボンナノチューブ線状構造体は、少なくとも一つの非ねじれ状カーボンナノチューブワイヤ、少なくとも一つのねじれ状カーボンナノチューブワイヤ、又は非ねじれ状カーボンナノチューブワイヤ及びねじれ状カーボンナノチューブワイヤの組み合わせである。
【0031】
本発明のカーボンナノチューブフィルムとしては、以下の(一)〜(四)のものが挙げられる。
【0032】
(一)ドローン構造カーボンナノチューブフィルム
前記カーボンナノチューブ構造体は、少なくとも一枚のドローン構造カーボンナノチューブフィルムを含む。図2を参照すると、単一の前記ドローン構造カーボンナノチューブフィルム143aは、超配列カーボンナノチューブアレイ(Superaligned array of carbon nanotubes,非特許文献1を参照)から引き出して得られ、自立構造を有したものである。単一の前記カーボンナノチューブフィルム143aにおいて、前記複数のカーボンナノチューブの大部分は、前記カーボンナノチューブフィルムの表面に平行に、カーボンナノチューブフィルムを引き出す方向に沿って、且つ、同じ方向に沿って配列されている。前記複数のカーボンナノチューブは、分子間力で端と端が接続されている。
【0033】
微視的には、前記カーボンナノチューブフィルム143aにおいて、前記同じ方向に沿って配列された複数のカーボンナノチューブ以外に、該同じ方向に沿っておらずランダムな方向を向いたカーボンナノチューブも存在している。ここで、該ランダムな方向を向いたカーボンナノチューブは、前記同じ方向に沿って配列された複数のカーボンナノチューブと比べて、割合は小さい。
【0034】
図3を参照すると、単一の前記カーボンナノチューブフィルム143aは、複数のカーボンナノチューブセグメント143bを含む。前記複数のカーボンナノチューブセグメント143bは、長さ方向に沿って分子間力で端と端が接続されている。それぞれのカーボンナノチューブセグメント143bは、相互に平行に、分子間力で結合された複数のカーボンナノチューブ145を含む。単一の前記カーボンナノチューブセグメント143bにおいて、前記複数のカーボンナノチューブ145の長さは実質的に同じである。前記カーボンナノチューブフィルム143aを有機溶剤に浸漬させることにより、前記カーボンナノチューブフィルム143aの強靭性及び機械強度を高めることができる。前記カーボンナノチューブフィルム143aの厚さが10マイクロメートル以下である場合、該カーボンナノチューブフィルム143aの透光率が96%以上程度に達するため、透明熱源に用いられることも可能である。一枚の前記カーボンナノチューブフィルム143aの単位面積当たりの熱容量は、1.7×10−6J/cm・K以下である。
【0035】
前記カーボンナノチューブ構造体が積層された複数の前記カーボンナノチューブフィルム143aを含む場合、隣接する前記カーボンナノチューブフィルム143aは、分子間力で結合されている。隣接する前記カーボンナノチューブフィルム143aにおけるカーボンナノチューブ145は、それぞれ0°〜90°の角度で交差している。隣接する前記カーボンナノチューブフィルム143aにおけるカーボンナノチューブ145が0°を超える角度で交差する場合、前記カーボンナノチューブ構造体に複数の微孔が形成され、該微孔の直径が10マイクロメートル以下である。又は、前記複数のカーボンナノチューブフィルム143aは、同一平面上に隙間なく並列されることもできる。
【0036】
前記カーボンナノチューブフィルムの製造方法は次のステップを含む。
【0037】
第一ステップでは、カーボンナノチューブアレイを提供する。該カーボンナノチューブアレイは、超配列カーボンナノチューブアレイ(Superaligned array of carbon nanotubes,非特許文献1を参照)であり、該超配列カーボンナノチューブアレイの製造方法は、化学気相堆積法を採用する。該製造方法は、次のステップを含む。ステップ(a)では、平らな基材を提供し、該基材はP型のシリコン基材、N型のシリコン基材及び酸化層が形成されたシリコン基材のいずれか一種である。本実施形態において、4インチのシリコン基材を選択することが好ましい。ステップ(b)では、前記基材の表面に、均一的に触媒層を形成する。該触媒層の材料は鉄、コバルト、ニッケル及びその2種以上の合金のいずれか一種である。ステップ(c)では、前記触媒層が形成された基材を700℃〜900℃の空気で30分〜90分間アニーリングする。ステップ(d)では、アニーリングされた基材を反応炉に置き、保護ガスで500℃〜740℃の温度で加熱した後で、カーボンを含むガスを導入して、5分〜30分間反応を行って、超配列カーボンナノチューブアレイ(Superaligned array of carbon nanotubes,非特許文献1)を成長させることができる。該カーボンナノチューブアレイの高さは100マイクロメートル以上である。該カーボンナノチューブアレイは、互いに平行し、基材に垂直に生長する複数のカーボンナノチューブからなる。該カーボンナノチューブは、長さが長いため、部分的にカーボンナノチューブが互いに絡み合っている。生長の条件を制御することによって、前記カーボンナノチューブアレイは、例えば、アモルファスカーボン及び残存する触媒である金属粒子などの不純物を含まなくなる。
【0038】
本実施形態において、前記カーボンを含むガスとしては、例えば、アセチレン、エチレン、メタンなどの活性な炭化水素が選択され、エチレンを選択することが好ましい。保護ガスは窒素ガスまたは不活性ガスであり、アルゴンガスが好ましい。
【0039】
本実施形態により提供されたカーボンナノチューブアレイは、前記の製造方法により製造されることに制限されず、アーク放電法またはレーザー蒸発法で製造してもよい。
【0040】
第二ステップでは、前記カーボンナノチューブアレイから、少なくとも、一枚のカーボンナノチューブフィルムを引き伸ばす。まず、ピンセットなどの工具を利用して複数のカーボンナノチューブの端部を持つ。例えば、一定の幅を有するテープを利用して複数のカーボンナノチューブの端部を持つ。次に、所定の速度で前記複数のカーボンナノチューブを引き出し、複数のカーボンナノチューブ束からなる連続のカーボンナノチューブフィルムを形成する。
【0041】
前記複数のカーボンナノチューブを引き出す工程において、前記複数のカーボンナノチューブがそれぞれ前記基材から脱離すると、分子間力で前記カーボンナノチューブ束が端と端で接合され、連続のカーボンナノチューブフィルムが形成される(図4を参照)。
【0042】
(二)プレシッド構造カーボンナノチューブフィルム
前記カーボンナノチューブ構造体は、少なくとも一枚のプレシッド構造カーボンナノチューブフィルム(pressed carbon nanotube film)を含む。図5又は図6を参照すると、前記カーボンナノチューブフィルムにおける複数のカーボンナノチューブは、等方的に配列されているか、所定の方向に沿って配列されているか、または、異なる複数の方向に沿って配列されている。前記カーボンナノチューブフィルムは、押し器具を利用することにより、所定の圧力をかけて前記カーボンナノチューブアレイを押し、該カーボンナノチューブアレイを圧力で倒すことにより形成された、シート状の自立構造を有するものである。前記カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブの配列方向は、前記押し器具の形状及び前記カーボンナノチューブアレイを押す方向により決められている。
【0043】
図5を参照すると、単一の前記カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブが配向せずに配置される。該カーボンナノチューブフィルムは、等方的に配列されている複数のカーボンナノチューブを含む。隣接するカーボンナノチューブが分子間力で相互に引き合い、接続する。該カーボンナノチューブ構造体が平面等方性を有する。該カーボンナノチューブフィルムは、平面を有する押し器具を利用して、カーボンナノチューブアレイが成長された基板に垂直な方向に沿って前記カーボンナノチューブアレイを押すことにより形成される。
【0044】
図6を参照すると、単一の前記カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブが配向して配列される。該カーボンナノチューブフィルムは、同じ方向に沿って配列された複数のカーボンナノチューブを含む。ローラー形状を有する押し器具を利用して、同じ方向に沿って前記カーボンナノチューブアレイを同時に押す場合、基本的に同じ方向に配列されたカーボンナノチューブを含むカーボンナノチューブフィルムが形成される。また、ローラー形状を有する押し器具を利用して、異なる方向に沿って、前記カーボンナノチューブアレイを同時に押す場合、前記異なる方向に沿って、選択的な方向に配列されたカーボンナノチューブを含むカーボンナノチューブフィルムが形成される。
【0045】
前記カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブの傾斜の程度は、前記カーボンナノチューブアレイにかけた圧力に関係する。前記カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブと該カーボンナノチューブフィルムの表面とは、角度αを成し、該角度αは0°以上15°以下である。好ましくは、前記カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブが該カーボンナノチューブフィルムの表面に平行する。前記圧力が大きくなるほど、前記傾斜の程度が大きくなる。前記カーボンナノチューブフィルムの厚さは、前記カーボンナノチューブアレイの高さ及び該カーボンナノチューブアレイにかけた圧力に関係する。即ち、前記カーボンナノチューブアレイの高さが大きくなるほど、また、該カーボンナノチューブアレイにかけた圧力が小さくなるほど、前記カーボンナノチューブフィルムの厚さが大きくなる。これとは逆に、カーボンナノチューブアレイの高さが小さくなるほど、また、該カーボンナノチューブアレイにかけた圧力が大きくなるほど、前記カーボンナノチューブフィルムの厚さが小さくなる。前記カーボンナノチューブフィルムにおける隣接するカーボンナノチューブの間に隙間があるので、該カーボンナノチューブフィルムにおいて、複数の微孔が形成され、該微孔の直径が10マイクロメートル以下である。
【0046】
(三)綿毛構造カーボンナノチューブフィルム
前記カーボンナノチューブ構造体は、少なくとも一枚の綿毛構造カーボンナノチューブフィルム(flocculated carbon nanotube film)を含む。図7及び図8を参照すると、単一の前記カーボンナノチューブフィルムにおいて、複数のカーボンナノチューブは、相互に絡み合い、等方的に配列されている。前記カーボンナノチューブ構造体においては、前記複数のカーボンナノチューブが均一に分布されている。複数のカーボンナノチューブは配向せずに配置されている。単一の前記カーボンナノチューブの長さは、10マイクロメートル以上であり、200マイクロメートル〜900マイクロメートルであると好ましい。前記カーボンナノチューブ構造体は、自立構造の薄膜の形状に形成されている。ここで、自立構造とは、支持体材を利用せず、前記カーボンナノチューブ構造体を独立して利用することができるという形態である。前記複数のカーボンナノチューブは、分子間力で接近して、相互に絡み合って、カーボンナノチューブネット状に形成されている。前記複数のカーボンナノチューブは配向せずに配置されて、複数の微小な穴が形成されている。ここで、単一の前記微小な穴の直径が10マイクロメートル以下になる。前記カーボンナノチューブ構造体におけるカーボンナノチューブは、相互に絡み合って配置されるので、該カーボンナノチューブ構造体は柔軟性に優れ、任意の形状に湾曲して形成させることができる。用途に応じて、前記カーボンナノチューブ構造体の長さ及び幅を調整することができる。前記カーボンナノチューブ構造体の厚さは、1.0マイクロメートル〜1.0ミリメートルであり、100マイクロメートルであることが好ましい。
【0047】
前記カーボンナノチューブフィルムの製造方法は、下記のステップを含む。
【0048】
第一ステップでは、前記カーボンナノチューブフィルムのもとになるカーボンナノチューブを提供する。
【0049】
ナイフのような工具で前記カーボンナノチューブを前記基材から剥離し、カーボンナノチューブの原料が形成される。前記カーボンナノチューブは、ある程度互いに絡み合っている。前記カーボンナノチューブの原料においては、該カーボンナノチューブの長さは、10マイクロメートル以上であり、200マイクロメートル〜900マイクロメートルであることが好ましい。
【0050】
第二ステップでは、前記カーボンナノチューブの原料を溶剤に浸漬し、該カーボンナノチューブの原料を処理して、綿毛構造のカーボンナノチューブ構造体を形成する。
【0051】
前記カーボンナノチューブ原料を前記溶剤に浸漬した後、超音波式分散、又は高強度攪拌又は振動などの方法により、前記カーボンナノチューブを綿毛構造に形成させる。前記溶剤は水または揮発性有機溶剤である。超音波式分散方法により、カーボンナノチューブを含む溶剤に対して10〜30分間処理する。カーボンナノチューブは大きな比表面積を有し、カーボンナノチューブの間に大きな分子間力が生じるので、前記カーボンナノチューブはそれぞれもつれて、綿毛構造に形成されている。
【0052】
第三ステップでは、前記綿毛構造のカーボンナノチューブ構造体を含む溶液をろ過して、最終的な綿毛構造のカーボンナノチューブ構造体を取り出す。
【0053】
まず、濾紙が置かれたファネルを提供する。前記綿毛構造のカーボンナノチューブ構造体を含む溶剤を濾紙が置かれたファネルにつぎ、しばらく放置して、乾燥させると、綿毛構造のカーボンナノチューブ構造体が分離される。図9を参照すると、前記綿毛構造のカーボンナノチューブ構造体におけるカーボンナノチューブが互いに絡み合って、不規則的な綿毛構造となる。
【0054】
分離された前記綿毛構造のカーボンナノチューブ構造体を容器に置き、前記綿毛構造のカーボンナノチューブ構造体を所定の形状に展開し、展開された前記綿毛構造のカーボンナノチューブ構造体に所定の圧力を加え、前記綿毛構造のカーボンナノチューブ構造体に残留した溶剤を焙り、或いは、該溶剤が自然に蒸発すると、図7と図8に示す綿毛構造のカーボンナノチューブフィルムが形成される。
【0055】
前記綿毛構造のカーボンナノチューブ構造体が展開される面積によって、綿毛構造のカーボンナノチューブフィルムの厚さと面密度を制御できる。即ち、一定の体積を有する前記綿毛構造のカーボンナノチューブ構造体は、展開される面積が大きくなるほど、綿毛構造のカーボンナノチューブフィルムの厚さと面密度が小さくなる。
【0056】
また、微多孔膜とエアーポンプファネル(Air−pumping Funnel)を利用して綿毛構造のカーボンナノチューブフィルムが形成される。具体的には、微多孔膜とエアーポンプファネルを提供し、前記綿毛構造のカーボンナノチューブ構造体を含む溶剤を、前記微多孔膜を通して前記エアーポンプファネルにつぎ、該エアーポンプファネルに抽気し、乾燥させると、綿毛構造のカーボンナノチューブフィルムが形成される。前記微多孔膜は、平滑な表面を有する。該微多孔膜において、単一の微小孔の直径は、0.22マイクロメートルにされている。前記微多孔膜が平滑な表面を有するので、前記カーボンナノチューブフィルムは容易に前記微多孔膜から剥落することができる。さらに、前記エアーポンプを利用することにより、前記綿毛構造のカーボンナノチューブフィルムに空気圧をかけるので、均一な綿毛構造のカーボンナノチューブフィルムを形成させることができる。
【0057】
(四)超長構造カーボンナノチューブフィルム
前記カーボンナノチューブ構造体は、少なくとも一枚の超長構造カーボンナノチューブフィルム(ultra−long carbon nanotube film)を含む。図10を参照すると、前記カーボンナノチューブフィルムは、ほぼ同じ長さを有する複数のカーボンナノチューブを含む。単一の前記カーボンナノチューブフィルムにおいて、前記複数のカーボンナノチューブは、同じ方向に沿って、均一に並列されている。単一の前記カーボンナノチューブフィルムの厚さは、10ナノメートル〜100マイクロメートルである。前記複数のカーボンナノチューブは、それぞれ前記複数のカーボンナノチューブフィルムの表面に平行に配列され、相互に平行に配列されている。隣接する前記カーボンナノチューブは所定の距離で分離して設置される。前記距離は0マイクロメートル〜5マイクロメートルである。前記距離が0マイクロメートルである場合、隣接する前記カーボンナノチューブは分子間力で接続されている。前記カーボンナノチューブフィルムにおける各々の前記カーボンナノチューブの長さは、前記カーボンナノチューブフィルムの長さと基本的に同じである。単一の前記カーボンナノチューブの長さは、1センチメートル以上であり、1センチメートル〜30センチメートルであることが好ましい。さらに、各々の前記カーボンナノチューブには結節がない。本実施形態において、前記カーボンナノチューブフィルムの厚さは10マイクロメートルである。単一の前記カーボンナノチューブの長さは10センチメートルである。
【0058】
前記カーボンナノチューブ構造体は少なくとも一本のカーボンナノチューブ線状構造体を含むことができる。前記カーボンナノチューブ線状構造体は、少なくとも一本のカーボンナノチューブワイヤを含む。一本の前記カーボンナノチューブワイヤの熱容量は、2×10−4J/cm・K以下であり、0(0は含まず)〜5×10−5J/cm・Kであることが好ましい。一本の前記カーボンナノチューブワイヤの直径は4.5ナノメートル〜1センチメートルであり、1.0マイクロメートル〜100マイクロメートルであることが好ましい。
【0059】
図11を参照すると、前記カーボンナノチューブワイヤ(非ねじれ状カーボンナノチューブワイヤ)は、端と端とが接続された複数のカーボンナノチューブセグメント(図示せず)を含む。前記カーボンナノチューブセグメントは、同じ長さ及び幅を有する。さらに、各々の前記カーボンナノチューブセグメントに、同じ長さの複数のカーボンナノチューブが平行に配列されている。前記複数のカーボンナノチューブはカーボンナノチューブワイヤの中心軸に平行に配列されている。この場合、一本の前記カーボンナノチューブワイヤの直径は、1マイクロメートル〜1センチメートルである。
【0060】
図12を参照すると、前記カーボンナノチューブワイヤをねじり、ねじれ状カーボンナノチューブワイヤを形成することができる。ここで、前記複数のカーボンナノチューブは前記カーボンナノチューブワイヤの中心軸を軸に、螺旋状に配列されている。この場合、一本の前記カーボンナノチューブワイヤの直径は、1マイクロメートル〜1センチメートルである。前記カーボンナノチューブ線状構造体は、前記非ねじれ状カーボンナノチューブワイヤ、ねじれ状カーボンナノチューブワイヤ又はそれらの組み合わせのいずれか一種からなる。
【0061】
前記カーボンナノチューブワイヤを形成する方法は、カーボンナノチューブアレイから引き出してなるカーボンナノチューブフィルムを利用する。前記カーボンナノチューブワイヤを形成する方法は、次の三種がある。第一種では、前記カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブの長手方向に沿って、前記カーボンナノチューブフィルムを所定の幅で切断し、カーボンナノチューブワイヤを形成する。第二種では、前記カーボンナノチューブフィルムを有機溶剤に浸漬させて、前記カーボンナノチューブフィルムを収縮させてカーボンナノチューブワイヤを形成することができる。第三種では、前記カーボンナノチューブフィルムを機械加工(例えば、紡糸工程)してねじれたカーボンナノチューブワイヤを形成する。詳しく説明すれば、まず、前記カーボンナノチューブフィルムを紡糸装置に固定させる。次に、前記紡糸装置を動作させて前記カーボンナノチューブフィルムを回転させ、ねじれたカーボンナノチューブワイヤを形成する。
【0062】
前記カーボンナノチューブ線状構造体が二本以上のカーボンナノチューブワイヤを含む場合、各々のカーボンナノチューブワイヤが平行に配列され、非ねじれ状のカーボンナノチューブ線状構造体を形成する。或いは、各々のカーボンナノチューブワイヤが、螺旋状に配列され、ねじれ状のカーボンナノチューブ線状構造体を形成する。即ち、前記非ねじれ状のカーボンナノチューブ線状構造体におけるカーボンナノチューブワイヤは、前記カーボンナノチューブ線状構造体の長手方向に沿って、配列される。前記ねじれ状のカーボンナノチューブ線状構造体におけるカーボンナノチューブワイヤは、前記線状構造体の軸向に沿って、螺旋状に配列される。
【0063】
前記非ねじれ状のカーボンナノチューブ線状構造体におけるカーボンナノチューブワイヤは、非ねじれ状のカーボンナノチューブワイヤ又はねじれ状のカーボンナノチューブワイヤである。前記ねじれ状のカーボンナノチューブ線状構造体におけるカーボンナノチューブワイヤは、非ねじれ状のカーボンナノチューブワイヤ又はねじれ状のカーボンナノチューブワイヤである。
【0064】
前記カーボンナノチューブ線状構造体の直径は、0.5ナノメートル〜2ミリメートルである。単一の前記カーボンナノチューブワイヤの直径が大きく、前記カーボンナノチューブワイヤの数量が多いほど、前記カーボンナノチューブ線状構造体の直径が大きくなる。この逆に、単一の前記カーボンナノチューブワイヤの直径が小さく、前記カーボンナノチューブワイヤの数量が少ないほど、前記カーボンナノチューブ線状構造体の直径が小さくなる。
【0065】
前記カーボンナノチューブワイヤにおけるカーボンナノチューブが配向して配列されるので、該カーボンナノチューブワイヤからなるカーボンナノチューブ線状構造体におけるカーボンナノチューブが配向して配列される。
【0066】
また、前記ねじれ状のカーボンナノチューブワイヤを揮発性有機溶剤で処理してもよい。前記揮発性有機溶剤の表面力の作用で前記ねじれ状のカーボンナノチューブワイヤにおける隣接するカーボンナノチューブが分子間力で緊密に接続されるので、該ねじれ状のカーボンナノチューブワイヤは、直径及び比表面積が小さくなり、大きな密度、優れた機械強度及び優れた強靭性を有する。
【0067】
前記カーボンナノチューブ構造体が、一つの前記カーボンナノチューブ線状構造体を含む場合、該カーボンナノチューブ線状構造体におけるカーボンナノチューブの両端は、それぞれ、前記第一電極210及び前記第二電極212に電気的に接続される。前記カーボンナノチューブ構造体は、複数のカーボンナノチューブ線状構造体を含む場合、該複数のカーボンナノチューブ線状構造体が平行に配列され、又は交叉して配列される。前記交叉して配列されたカーボンナノチューブ線状構造体の交叉する角度は、特に制限されない。前記各々のカーボンナノチューブ線状構造体を設置する方式は制限されず、均一な加熱構造体を形成することができることを確保してもよい。
【0068】
前記カーボンナノチューブ線状構造体が、揮発性有機溶剤又は機械外力で前記ドローン構造カーボンナノチューブフィルムを処理し、形成されたものであり、且つ前記ドローン構造カーボンナノチューブフィルムが、自立構造体を有するので、該カーボンナノチューブ線状構造体は、自立構造体も有する。前記カーボンナノチューブ線状構造体におけるカーボンナノチューブの間に、隙間があるので、該カーボンナノチューブ線状構造体には、複数の微孔があり、該微孔の直径が10マイクロメートル以下である。
【0069】
前記カーボンナノチューブ構造体が大きな比表面積を有し、その自体が大きな接着性を有するので、該カーボンナノチューブ構造体からなる加熱構造体208が前記絶縁基板202の表面に直接設置することができる。また、前記加熱構造体208が接着剤により前記絶縁基板202の表面に固定することもできる。前記加熱構造体208がそれぞれ、前記第一電極210及び前記第二電極212の表面に直接設置することができ、導電接着剤により、前記第一電極210及び前記第二電極212の表面に固定することもできる。本実施形態において、導電銀ペーストを利用して、前記加熱構造体208をそれぞれ前記第一電極210及び前記第二電極212の表面に固定させる。
【0070】
前記加熱構造体208は、カーボンナノチューブ複合構造体であってもよい。該カーボンナノチューブ複合構造体がカーボンナノチューブ構造体と、該カーボンナノチューブ構造体に分散された充填材料とを含む。該充填材料は、前記カーボンナノチューブ構造体の微孔の中に充填され、又は前記カーボンナノチューブ構造体の表面に複合される。前記充填材料は、金属、樹脂、セラミックス、ガラス及び繊維の少なくとも一種である。前記カーボンナノチューブ複合構造体は、基体と、該基体に複合されたカーボンナノチューブ構造体とを含むことができる。該基体の材料は、金属、樹脂、セラミックス、ガラス及び繊維の少なくとも一種である。前記カーボンナノチューブ構造体の全部又は一部が前記基体の材料に浸漬される。
【0071】
また、前記加熱構造体208は、複数のカーボンナノチューブが分散されたインクをシルクスクリーン印刷して形成されたカーボンナノチューブ複合構造体であってもよい。該カーボンナノチューブ複合構造体が配向せずに分布された複数のカーボンナノチューブを含む。
【0072】
前記カーボンナノチューブフィルムを加熱構造体208として利用した場合、該カーボンナノチューブフィルムを前記絶縁基板202又は熱変色性構造体218の表面に直接設置することができる。一つのカーボンナノチューブ線状構造体を加熱構造体208として利用した場合、該カーボンナノチューブ線状構造体を湾曲させて層状構造体に形成し、あるいは、該カーボンナノチューブ線状構造体を層状構造体に巻き付けた後、該層状構造体を前記絶縁基板202又は熱変色性構造体218の表面に設置することができる。一つの前記カーボンナノチューブ線状構造体を前記加熱構造体208の周りに巻き付けることもできる。複数の前記カーボンナノチューブ線状構造体を加熱構造体208として利用した場合、該複数のカーボンナノチューブ線状構造体を平行に又は交叉して配列させ、又は編まれ、層状構造体に形成され、該層状構造体を前記絶縁基板202又は熱変色性構造体218の表面に設置することができる。
【0073】
本実施形態における加熱構造体208が複数のカーボンナノチューブを含み、該カーボンナノチューブが優れた電熱変換効率及び熱輻射効率を有するので、該加熱構造体208は、優れた電熱変換効率及び熱輻射効率を有する。前記カーボンナノチューブ構造体の単位面積当たりの熱容量がより低いので、前記加熱構造体208の熱応答速度が速く、前記カーボンナノチューブ構造体と前記熱変色性構造体218との熱の伝送速度が速く、該熱変色性構造体218を速く加熱することができる。例えば、単一のドローン構造カーボンナノチューブフィルムは、1ミリ秒で温度が2000Kに上がることができる。従って、本実施形態における熱変色性素子220は、速い熱応答速度を有する。前記カーボンナノチューブが強い化学安定性を有するので、該カーボンナノチューブを利用した加熱構造体208の抵抗が安定し、前記熱変色性素子220の安定性を高めることができる。また、前記カーボンナノチューブが小さなサイズを有するので、該カーボンナノチューブを加熱構造体208とすることは、前記熱変色性素子220のサイズを減少し、該熱変色性素子220を利用した表示装置の解像度を高めることができる。
【0074】
前記第一電極210及び第二電極212は、前記絶縁基板202の表面、前記加熱構造体208の表面、又は前記熱変色性構造体218の表面に直接設置することができ、或いは、支持体(図示せず)によって設置することができる。前記第一電極210及び第二電極212は、導電材料からなり、例えば導電性フィルム、金属チップ又は金属ワイヤーである。好ましくは、前記第一電極210及び第二電極212がそれぞれ導電性フィルムであり、その厚さが0.5ナノメートル〜100マイクロメートルである。前記導電フィルムの材料は、金属、合金、インジウム酸化スズ(ITO)、アンチモニー酸化スズ(ATO)、亜鉛酸化アルミニウム(ZAO)、導電銀ペースト又は導電ポリマーである。前記金属又は合金は、アルミニウム、銅、タングステン、モリブデン、金、チタン、銀、ネオジム、パラジウム及びセシウムなどの一種又は数種の合金である。本実施形態において、前記第一電極210及び第二電極212は、シルクスクリーン印刷方法によって、導電ペーストを前記絶縁基板202に印刷して形成したものである。該導電ペーストは、金属粉末、低融点のガラス及び接着剤を含む。前記金属粉末が銀粉末であることが好ましい。前記接着剤はテルピネオール又はエチルセルロースであることが好ましい。前記導電ペーストにおいて、前記金属粉末の質量パーセンテージの含有量が50%〜90%であり、前記低融点のガラスの質量パーセンテージの含有量が2%〜10%であり、前記接着剤の質量パーセンテージの含有量が8%〜40%である。
【0075】
前記第一電極210及び前記第二電極212の間に電圧パルスを印加すると、前記加熱構造体208が熱を放出する。該熱が熱パルスとして、前記熱変色性構造体218に印加される。前記電圧パルスが短い時間の高電圧である場合、前記加熱構造体208は短い時間の強い熱パルスを形成する。前記電圧パルスが長い時間の低電圧である場合、前記加熱構造体208は長い時間の弱い熱パルスを形成する。
【0076】
表示状態を書き込む場合、前記熱変色性構造体218に短い時間の強い書き込み熱パルスを印加する必要がある。例えば、温度が900℃〜1000℃であり、周期が50ナノ秒〜200ナノ秒である。加熱温度が高いので、前記熱変色性構造体218が瞬間的に液体状態に加熱される。加熱時間が短いので、温度が瞬間的に低温に下がる。これによって、前記熱変色性構造体218が液体状態から固体状態に冷却され、非結晶状態の熱変色性構造体218が形成される。前記非結晶状態の熱変色性構造体218の光線に対する反射率は、結晶状態の熱変色性構造体218の光線に対する反射率とは異なるので、表示を実現することができる。前記非結晶状態の熱変色性構造体218は、室温で他のエネルギーを必要とせずに非結晶状態を保持することができる。
【0077】
表示状態を消去する場合、前記熱変色性構造体218に長い時間の弱い消去熱パルスを印加する必要がある。例えば、温度が500℃〜600℃であり、周期が1マイクロ秒〜1ミリ秒である。この過程がアニーリングすることに相当する。アニーリングされた後、前記熱変色性構造体218が最初の結晶状態に戻るので、消去を実現することができる。前記結晶状態の熱変色性構造体218は、室温で他のエネルギーを必要とせずに結晶状態を保持することができる。前記熱変色性構造体218は、室温で結晶状態又は非結晶状態を長い時間で保持することができるので、表示状態が保持され、双安定表示を実現することができる。双安定表示とは、前記熱変色性素子220が書き込みと消去する過程だけで、エネルギーを消費して、書き込みと消去した後、他のエネルギーがなくても、安定表示を保持することもできる。双安定表示は、前記熱変色性素子220のエネルギーの消費を減少することができる。
【0078】
また、本実施形態は、前記熱変色性素子220の製造方法を提供する。まず、前記絶縁基板202の表面に単一のドローン構造カーボンナノチューブフィルムを設置する。次に、シルクスクリーン印刷法によって前記ドローン構造カーボンナノチューブフィルムの表面に間隔を置いて第一電極210及び第二電極220を形成する。最後に、前記第一電極210と第二電極220との間にゲルマニウムとセレンの化合物層を堆積して前記熱変色性構造体218を形成する。
【0079】
(実施形態2)
図13を参照すると、本実施形態は、熱変色性素子320を提供する。該熱変色性素子320は、絶縁基板302と、熱変色性構造体318と、加熱構造体308と、第一電極310と、第二電極312と、を含む。前記熱変色性素子320は前記実施形態1の熱変色性素子220の構造と比べて、本実施形態の前記熱変色性構造体318が前記絶縁基板302と前記加熱構造体308との間に設置される点が異なる。具体的には、前記熱変色性構造体318は前記絶縁基板302の表面に設置される。前記第一電極310と第二電極312とは、前記熱変色性構造体318の両側に位置された絶縁基板302の表面に設置される。前記加熱構造体308は、前記第一電極310と第二電極312と前記熱変色性構造体318との前記絶縁基板302から離れる表面に設置される。前記第一電極310及び第二電極312は前記加熱構造体308に電気的に接続される。本実施形態において、前記加熱構造体308は、前記熱変色性構造体318を覆うので、前記加熱構造体308の透明性が重要となる。該加熱構造体308は、透明なカーボンナノチューブ構造体であり、好ましくは、単一のドローン構造カーボンナノチューブフィルムである。
【0080】
本実施形態は、前記熱変色性素子320の製造方法を提供する。まず、前記絶縁基板302の表面にシルクスクリーン印刷法によって間隔を置いて第一電極310と第二電極312を形成する。前記第一電極310と第二電極312との間にゲルマニウムとセレンの化合物層を堆積して前記熱変色性構造体318を形成し、該熱変色性構造体318の厚さが前記第一電極310及び第二電極312の厚さと、同じである。最後に、前記単一のドローン構造カーボンナノチューブフィルムを前記第一電極310と第二電極312と前記熱変色性構造体318との表面に設置し、前記加熱構造体308を形成する。
【0081】
(実施形態3)
図14を参照すると、本実施形態は熱変色性素子420を提供する。該熱変色性素子420は、絶縁基板402と、熱変色性構造体418と、加熱構造体408と、第一電極410と、第二電極412と、を含む。前記熱変色性構素子420は前記実施形態2の熱変色性素子320の構造と比べて、本実施形態の前記加熱構造体408及び前記熱変色性構造体418が間隔を置いて設置される点が異なる。具体的には、前記熱変色性構造体418は前記絶縁基板402の表面に設置される。前記第一電極410及び第二電極412は、前記熱変色性構造体418の両側に位置された絶縁基板402の表面に設置され、該第一電極410及び第二電極412の高さが前記熱変色性構造体418の厚さより大きい。前記加熱構造体408の両端は、前記第一電極410及び第二電極412の前記絶縁基板402の表面から離れる表面に設置される。これによって、前記加熱構造体408は、前記第一電極410及び第二電極412によって、前記熱変色性構造体418と間隔を置いて設置される。また、前記加熱構造体408は、二つの支持体(図示せず)によって、前記熱変色性構造体418と間隔を置いて設置することもできる。
【0082】
前記加熱構造体408は、単位面積当たりの熱容量が小さくなければならなく、好ましくは、その単位面積当たりの熱容量が2×10−4J/cm・K以下である。本実施形態において、前記加熱構造体408は、単一のドローン構造カーボンナノチューブフィルムであり、その単位面積当たりの熱容量が1.7×10−6J/cm・K以下である。前記加熱構造体408と前記熱変色性構造体418との熱交換は熱輻射によって行われる。前記加熱構造体408の単位面積当たりの熱容量が小さく、短い時間で予定の温度に達することができるので、該予定の温度に達した加熱構造体408が前記熱変色性構造体418に短く、強い熱パルスを提供することができる。従って、前記熱変色性素子420の応答速度を高めることができる。
【0083】
本実施形態は、前記熱変色性素子420の製造方法を提供する。該熱変色性素子420の製造方法は、前記実施形態2における熱変色性素子320の製造方法と比べて、本実施形態の前記熱変色性構造体418の厚さが前記第一電極410及び前記第二電極412の厚さより小さく、前記単一のドローン構造カーボンナノチューブフィルムが前記熱変色性構造体418と間隔を置いて設置される点が異なる。
【0084】
(実施形態4)
図15を参照すると、本実施形態は、熱変色性素子520を提供する。該熱変色性素子520は、絶縁基板502と、熱変色性構造体518と、加熱構造体508と、第一電極510と、第二電極512と、を含む。前記熱変色性構素子520は前記実施形態1における熱変色性素子220の構造と比べて、本実施形態の前記加熱構造体508が前記熱変色性構造体518と前記絶縁基板502との間に設置され、且つ該熱変色性構造体518の両端の側面に延び、且つ前記第一電極510と前記第二電極512との前記絶縁基板502から離れる表面が覆われる点が異なる。具体的には、前記加熱構造体508は前記絶縁基板502の表面に設置される。前記熱変色性構造体518は前記加熱構造体508の前記絶縁基板502から離れる表面に設置される。前記第一電極510及び前記第二電極512は、それぞれ、前記熱変色性構造体518の両側に位置された絶縁基板502の表面に設置される。前記加熱構造体508は、前記熱変色性構造体518と前記第一電極510との間から前記第一電極510の表面に延び、前記熱変色性構造体518と前記第二電極512との間から前記第二電極512の表面に延びる。本実施形態において、前記加熱構造体508が単一のドローン構造カーボンナノチューブフィルムである。該加熱構造体508と前記熱変色性構造体518との接触面積が大きいので、該加熱構造体508が前記熱変色性構造体518を加熱する効率を高め、前記熱変色性構素子520の感度を高めることができる。
【0085】
本実施形態は、熱変色性素子520の製造方法を提供する。まず、絶縁基板502の表面にシルクスクリーン印刷法によって間隔を置いて第一電極510と第二電極512を形成する。次に、単一のドローン構造カーボンナノチューブフィルムを前記第一電極510と第二電極512に設置し、該単一のドローン構造カーボンナノチューブフィルムに圧力を印加し、該単一のドローン構造カーボンナノチューブフィルムを前記第一電極510と第二電極512との対向する側面、及び前記第一電極510と第二電極512との間の絶縁基板502に接着させる。最後に、前記第一電極510と第二電極512との間にゲルマニウムとセレンの化合物を堆積して熱変色性構造体518を形成する。
【0086】
(実施形態5)
図16を参照すると、本実施形態は、熱変色性素子620を提供する。該熱変色性素子620は、絶縁基板602と、熱変色性構造体618と、第一加熱構造体608と、第二加熱構造体609と、第一電極610と、第二電極612と、を含む。前記熱変色性構素子620は前記実施形態1における熱変色性素子220の構造と比べて、本実施形態の前記熱変色性素子620がさらに前記熱変色性構造体618の前記絶縁基板602から離れる表面に設置された第二加熱構造体609を含む点が異なる。具体的には、前記第一加熱構造体608は前記絶縁基板602の表面に設置される。前記熱変色性構造体618は前記第一加熱構造体608の前記絶縁基板602から離れる表面に設置される。前記第一電極610及び第二電極612は、前記熱変色性構造体618の両端の前記第一加熱構造体608の表面に設置される。前記第二加熱構造体609は前記熱変色性構造体618の前記絶縁基板602から離れる表面に設置され、前記第一電極610及び第二電極612が覆われる。本実施形態において、前記第一加熱構造体608と前記第二加熱構造体609とがそれぞれ、単一のドローン構造カーボンナノチューブフィルムである。前記第一加熱構造体608と前記第二加熱構造体609を利用して、同時に前記熱変色性構造体618を加熱できるので、前記熱変色性素子620の感度をより高めることができる。
【0087】
本実施形態は、熱変色性素子620の製造方法を提供する。まず、絶縁基板602の表面に単一のドローン構造カーボンナノチューブフィルムを設置し、第一加熱構造体608を形成する。次に、前記第一の単一のドローン構造カーボンナノチューブフィルムの表面にシルクスクリーン印刷法によって間隔を置いて第一電極610と第二電極612を形成する。次に、前記第一電極610と第二電極612との間にゲルマニウムとセレンの化合物を堆積して熱変色性構造体618を形成する。該熱変色性構造体618と前記第一電極610及び第二電極612との厚さが同じである。最後に、単一のドローン構造カーボンナノチューブフィルムを前記第一電極610と第二電極612と前記熱変色性構造体618との前記絶縁基板602から離れる表面に設置し、第一加熱構造体609を形成する。
【0088】
(実施形態6)
図17を参照すると、本実施形態は、熱変色性素子720を提供する。該熱変色性素子720は、絶縁基板702と、熱変色性構造体718と、加熱構造体708と、第一電極710と、第二電極712と、を含む。前記熱変色性構素子720は前記実施形態1における熱変色性素子220の構造と比べて、前記絶縁基板702の表面に凹部(図示せず)が設置され、前記熱変色性構造体718が前記凹部の中に設置される点が異なる。具体的には、前記熱変色性構造体718は、前記凹部の中に設置され、その厚さが前記凹部の深さと等しい。前記加熱構造体708は、前記熱変色性構造体718及び前記絶縁基板702の表面に設置される。前記第一電極710及び第二電極712は、前記絶縁基板702の凹部ではない所に位置された前記加熱構造体708の表面に設置される。前記熱変色性構造体718の厚さが前記凹部の深さと同じであることが好ましい。本実施形態において、前記加熱構造体708が単一のドローン構造カーボンナノチューブフィルムである。前記熱変色性構造体718は、前記凹部の中に設置されるので、加熱されると、最初の形状を保持することができる。
【0089】
本実施形態は、熱変色性素子720の製造方法を提供する。まず、絶縁基板702の表面をエッチングすることによって凹部を形成する。次に、前記凹部の中にゲルマニウムとセレンの化合物を堆積して熱変色性構造体718を形成する。その後で、単一のドローン構造カーボンナノチューブフィルムを前記熱変色性構造体718及び前記絶縁基板702の表面に設置し、該熱変色性構造体718を覆う。最後に、シルクスクリーン印刷法によって前記単一のドローン構造カーボンナノチューブフィルムの表面に間隔を置いて設置された第一電極710と第二電極712を形成し、該第一電極710及び第二電極712が前記絶縁基板702の凹部ではない所に位置された前記加熱構造体708の表面に設置される。
【0090】
本発明は、前記実施形態1〜実施形態6のいずれかの熱変色性素子を利用した熱変色性表示装置を提供する。該熱変色性表示装置は、複数の熱変色性素子が行列で配列して形成された画素アレイと、駆動回路と、複数の電極リード線とを含む。前記駆動回路が前記複数の電極リード線によって、それぞれ各々の熱変色性素子の熱変色性構造体を制御する。具体的には、本実施形態において、複数の熱変色性素子が一つの絶縁基板を共用し、アドレス回路(addressing circuit)によって、それぞれ各々の熱変色性素子の作動を制御して、表示を実現するようになる。本発明の実施形態1における熱変色性素子220を応用した熱変色性表示装置を例として、熱変色性表示装置について詳しく説明する。
【0091】
図18及び図19を参照すると、本実施形態は、熱変色性表示装置20を提供する。該熱変色性表示装置20は、絶縁基板202と、複数の行電極リード線204と、複数の列電極リード線206と、複数の熱変色性素子220と、を備える。前記複数の行電極リード線204は、平行し、等間隔に前記絶縁基板202の一つの表面に設置され、前記複数の列電極リード線206は、平行し、等間隔に前記絶縁基板202の前記表面に設置される。該複数の行電極リード線204と該複数の列電極リード線206は、交叉して前記絶縁基板202に設置されている。該複数の行電極リード線204と該複数の列電極リード線206とが短路することを防止するために、交叉する場所に絶縁層216が設置されている。隣接する二つの行電極リード線204と、隣接する二つの列電極リード線206とは、複数の格子214を形成している。各々の前記格子214は、一つの画素ユニットを画定し、即ち各々の前記格子214に一つの前記熱変色性素子220が設置される。前記熱変色性素子220は、本発明の実施形態1に係る熱変色性素子220である。
【0092】
各々の前記熱変色性素子220は、熱変色性構造体218と、加熱構造体208と、第一電極210と、第二電極212と、を含む。前記加熱構造体208が前記絶縁基板202の表面に設置され、前記熱変色性構造体218が前記加熱構造体208の前記絶縁基板202から離れる表面に設置される。前記第一電極210と第二電極212は、前記加熱構造体208に電気的に接続される。
【0093】
前記絶縁基板202は、剛性材料又は柔軟性材料からなる。前記剛性材料は、セラミック、ガラス、樹脂、二酸化ケイ素である。前記柔軟性材料は、プラスチックまたはファイバーである。前記絶縁基板202が柔軟性材料からなる場合、前記熱変色性表示装置20は、任意的に曲げることができる。本実施形態において、前記絶縁基板202は、その材料がPETであり、その厚さが1ミリメートルであり、その辺長が48ミリメートルである正方形のシートである。
【0094】
前記複数の行電極リード線204と複数の列電極リード線206とは、導電体である。例えば、前記複数の行電極リード線204と複数の列電極リード線206との材料が導電ペースト、金属フィルム、カーボンナノチューブワイヤ、インジウム酸化スズなどである。前記複数の行電極リード線204と複数の列電極リード線206と交差してなす角度は、10度〜90度である。本実施形態において、前記複数の行電極リード線204と複数の列電極リード線206は、導電ペーストで印刷して形成された平面導電体である。前記隣接する行電極リード線204の行間隔距離が50マイクロメートル〜5センチメートルであり、前記隣接する列電極リード線206の列間隔距離が50マイクロメートル〜2センチメートルである。前記複数の行電極リード線204と複数の列電極リード線206の幅は、全て30マイクロメートル〜100マイクロメートルであり、厚さが全て10マイクロメートル〜50マイクロメートルである。前記複数の行電極リード線204と複数の列電極リード線206とが交差してなす角度は90度である。前記複数の行電極リード線204と複数の列電極リード線206とは、シルクスクリーン印刷方法によって、導電ペーストを前記絶縁基板202に印刷して形成したものである。前記導電ペーストは、金属粉末、低融点ガラス粉末及び接着剤を含む。ここで、前記金属粉末が銀粉末であり、前記接着剤がテルピネオール又はエチルセルロースであることが好ましい。前記導電ペーストにおける前記金属粉末の質量パーセンテージは50〜90%であり、前記低融点ガラス粉末の質量パーセンテージは2〜10%であり、前記接着剤の質量パーセンテージは8〜40%である。
【0095】
前記第一電極210及び第二電極212の材料は、前記行電極リード線204及び列電極リード線206の材料と同じでもよく、同じでなくてもよい。前記第一電極210が前行電極リード線204から伸びる部分であってもよく、前記第二電極212が前記列電極リード線206から伸びる部分であってもよい。前記第一電極210と前記第二電極212は、長さが20マイクロメートル〜1.5センチメートルであり、幅が30マイクロメートル〜1.0センチメートルであり、厚さが10マイクロメートル〜500マイクロメートルである。前記第一電極210及び前記第二電極212の長さは、100マイクロメートル〜700マイクロメートルであることが好ましいく、幅は、50マイクロメートル〜500マイクロメートルであることが好ましく、厚さは、20マイクロメートル〜100マイクロメートルであることが好ましい。本実施形態において、前記第一電極210と第二電極212は、平面導電体であり、その大きさが格子214の大きさにより、決められる。前記第一電極210は、直接に前記行電極リード線204に接続され、前記第二電極212は、直接に前記列電極リード線206に接続される。前記第一電極210及び前記第二電極212の材料は、導電ペーストであり、シルクスクリーンの印刷法で前記絶縁基板202に印刷する。該導電ペーストは、前記行電極リード線204と前記列電極リード線206の材料と同じである。
【0096】
本実施形態において、前記絶縁基板202に16×16個の熱変色性素子220が設置される。各々の熱変色性素子220における加熱構造体208が単一のドローン構造カーボンナノチューブフィルムである。各々のドローン構造カーボンナノチューブフィルムは、長さが300マイクロメートルであり、幅が100マイクロメートルである。各々のドローン構造カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブは、端と端とが接続され、前記第一電極210から前記第二電極212へ延びる。該ドローン構造カーボンナノチューブフィルムの両端がそれぞれ、前記第一電極210と前記絶縁基板202との間及び第二電極212と前記絶縁基板202との間に設置される。前記ドローン構造カーボンナノチューブフィルムは、自体の接着性によって前記絶縁基板202の表面に接着されている。
【0097】
前記熱変色性表示装置20は、さらに断熱材222を含む。前記断熱材222が各々の前記熱変色性素子220の周りに設置される。具体的には、前記断熱材222は、各々の格子214の中に設置された熱変色性素子220と、前記行電極リード線204及び前記列電極リード線206との間のあらゆる所に設置される。従って、隣接する熱変色性素子220の間を断熱させることができ、隣接する熱変色性素子220の間の妨害を減少するようになる。前記断熱材222は、酸化アルミニウム又は有機材料である。前記有機材料は、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリカーボネート又はポリイミドなどである。本実施形態において、前記断熱材222は、ポリエチレンテレフタレートであることが好ましく、その厚さが前記行電極リード線204、前記列電極リード線206、前記第一電極210及び前記第二電極212の厚さと同じである。前記断熱材222は、物理気相堆積法又は化学気相堆積法を採用して製造することができる。該物理気相堆積法がスパッタリング法又は蒸着法を含む。
【0098】
前記熱変色性表示装置20は、さらに保護層224を含む。前記保護層224が前記行電極リード線204、前記列電極リード線206及び各々の熱変色性素子220を覆う。前記保護層224が透明且つ絶縁材料からなり、その材料が有機高分子材料、二酸化珪素、酸化アルミニウムなどである。有機高分子材料がポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリカーボネート又はポリイミドなどである。本実施形態において、前記保護層224の材料がポリエチレンテレフタレートであり、その厚さが0.5ミリメートリ〜2ミリメートリである。前記保護層224は、塗布又は堆積法によって前記絶縁基板202に形成される。前記保護層224は、前記熱変色性表示装置20が外界と電気的に接触することを防止し、加熱構造体208に外界のほこりが付着することを防止することができる。
【0099】
前記熱変色性表示装置20が使用される場合、前記駆動回路で前記行電極リード線204及び前記列電極リード線206に電圧を印することによって、該行電極リード線204及び列電極リード線206に電気的に接続された熱変色性素子220を作動させ、前記熱変色性表示装置20に表示させることができる。
【0100】
前記熱変色性表示装置20における熱変色性素子220が加熱構造体208としてカーボンナノチューブを利用して、該カーボンナノチューブの単位面積当たりの熱容量が小さいので、該加熱構造体208が速い熱応答速度を有し、前記熱変色性構造体218を速く加熱でき、該熱変色性表示装置20の画素ユニットに速い応答速度を持たせる。前記熱変色性表示装置20が前記行電極リード線204及び列電極リード線206によってそれぞれ各々の熱変色性素子220を制御するので、動画表示を実現できる。
【符号の説明】
【0101】
220、320、420、520、620、720 熱変色性素子
202、302、402、502、602、702 絶縁基板
208、308、408、508、708 加熱構造体
608 第一加熱構造体
609 第二加熱構造体
218、318、418、518、618、718 熱変色性構造体
210、310、410、510、610、710 第一電極
212、312、412、512、612、712 第二電極
143a ドローン構造カーボンナノチューブフィルム
143b カーボンナノチューブセグメント
145 カーボンナノチューブ
20 熱変色性表示装置
204 行電極リード線
206 列電極リード線
214 格子
216 絶縁層
222 断熱材
224 保護層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁基板と、熱変色性構造体と、加熱構造体と、を備えた熱変色性素子であって、
前記熱変色性構造体及び前記加熱構造体が前記絶縁基板に設置され、
前記加熱構造体が、カーボンナノチューブ構造体を含み、該カーボンナノチューブ構造体が複数のカーボンナノチューブを含み、前記熱変色性構造体を加熱することに用いられ、
前記熱変色性構造体が、40℃以上の温度で非結晶状態及び結晶状態の変換できる変色材料であり、該変色材料の非結晶状態での光反射率と結晶状態での光反射率とが異なることを特徴とする熱変色性素子。
【請求項2】
前記カーボンナノチューブ構造体が自立構造を有するものであることを特徴とする請求項1に記載の熱変色性素子。
【請求項3】
前記加熱構造体がカーボンナノチューブ構造体であり、該カーボンナノチューブ構造体がカーボンナノチューブフィルム又はカーボンナノチューブワイヤからなり、該カーボンナノチューブフィルム又はカーボンナノチューブワイヤが複数のカーボンナノチューブからなることを特徴とする請求項1に記載の熱変色性素子。
【請求項4】
絶縁基板と、複数の行電極リード線と、複数の列電極リード線と、複数の熱変色性素子と、を備えた熱変色性表示装置であって、
前記複数の行電極リード線及び複数の列電極リード線が絶縁的に交叉して前記絶縁基板の表面に設置され、隣接する二つの行電極リード線と、隣接する二つの列電極リード線とが、一つの画素ユニットを画定し、各々の前記画素ユニットに一つの前記熱変色性素子が設置され、
前記熱変色性素子が熱変色性構造体と、加熱構造体と、第一電極と、第二電極とを備え、
前記第一電極と第二電極とが、間隔を置いて前記加熱構造体に電気的に接続され、且つ別々に前記行電極リード線と列電極リード線とに電気的に接続され、
前記加熱構造体が、カーボンナノチューブ構造体を含み、該カーボンナノチューブ構造体が複数のカーボンナノチューブを含み、前記熱変色性構造体を加熱することに用いられ、
前記熱変色性構造体が、40℃以上の温度で非結晶状態及び結晶状態の変換できる変色材料であり、
該変色材料の非結晶状態での光反射率と結晶状態での光反射率とが異なることを特徴とする熱変色性表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2011−128614(P2011−128614A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−272378(P2010−272378)
【出願日】平成22年12月7日(2010.12.7)
【出願人】(598098331)ツィンファ ユニバーシティ (534)
【出願人】(500080546)鴻海精密工業股▲ふん▼有限公司 (1,018)
【Fターム(参考)】