説明

熱抑制された多糖類および製法

【課題】改良された、熱抑制された多糖類、およびその製法を提供する。
【解決手段】本発明は、熱抑制された多糖類、ならびに、色、風味、および臭いを含めた、改良された官能的特性の組成物を製造するのに、増大した圧力および/または増大した有効酸素濃度下で該多糖類を脱水することを改良とする、それらを製造する改良された方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2009年4月14日に出願された仮出願第61/169,033号についての優先権を主張する。
【0002】
本発明は、熱抑制された(thermally inhibited)多糖類、ならびに、色、風味、および臭いを含めた、改良された官能的特性の組成物を製造するのに、増大した圧力および/または増大した有効酸素濃度下で該多糖類を脱水することを改良とする、それらを製造する改良された方法に関する。
【背景技術】
【0003】
澱粉が、乾燥、異臭の蒸発、煙臭い味の付与、糊精化(dextrinizing)又はアニーリングのような種々の目的で加熱され得るのはよく知られている。より最近では、加熱処理は、熱抑制された澱粉を作成するのに用いられてきた。Chiuらの1998年3月10日に発行された米国特許第5,725,676号明細書は、熱処理を用いた、熱抑制された非‐予備糊化(non-pregelatinized)顆粒澱粉の製法を開示する。Jeffcoatらの2001年7月17日に発行された米国特許第6,261,376号明細書は、澱粉またはフラワー(flour)を脱水し、加熱処理することによって調製された、熱抑制され予備糊化された(pregelatinized)非‐顆粒澱粉またはフラワーを開示する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
色のような有意に改良された官能的特性が、増大した圧力下および/または増大した有効酸素濃度下で多糖を脱水することによって多糖類を熱抑制するプロセスから得られることが判明した。本発明の1つの態様において、限界酸素濃度(12%酸素)を増大させることなく、脱水容器雰囲気の酸素含有量が増大し、かくして、安全操作のための可能な設計オプションを提供する。
【0005】
本発明は、
a)増大した圧力下および/または増大した有効酸素濃度下で多糖を実質的に無水または無水の状態にまで脱水する工程;および
b)該実質的に無水または無水の多糖を熱抑制する工程:
を含む、熱抑制された多糖の製法に向けられている。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】抑制を決定するのに用いられる、ワキシーコーンスターチ(waxy cornstarch)の例についてのブラベンダー粘度曲線(Brabender viscosity curve)を示す。対照曲線は、同じブラベンダー手順を用いることによる、熱抑制されていない天然澱粉についての粘度プロフィールを示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明で用いるのに適した多糖類は、その用語が本明細書中で用いられるように、澱粉、澱粉を含有する成分、澱粉に由来する材料、ガム、およびガムに由来する材料、ならびにそれらのブレンドを含む。
【0008】
澱粉を含有する成分は、限定されるものではないが、フラワーおよび粗びき穀物(grits)を含む。澱粉に由来する材料は、限定されるものではないが、オリゴ糖類、および澱粉を物理的に、酵素的に、または化学的に変性することによって調製されたものを含めた、他の澱粉由来材料を含む。そのような材料は当該分野で公知であり、Modified Starches: Properties and Uses, Ed. Wurzburg, CRC Press, Inc., Florida (1986)のような標準的テキストに記載されている。
【0009】
本発明で用いる澱粉はいずれの天然源に由来するいずれの澱粉であってもよい。本明細書中で用いる天然澱粉は、それ自体、天然で見出されるものである。交雑育種(crossbreeding)、転流(translocation)、逆位(inversion)、形質転換(transformation)、挿入(insertion)、照射(irradiation)、化学的または他の誘導突然変異を含めた標準的な育種技術、またはその変異を含ませるための遺伝子または染色体エンジニアリングのいずれかの他の方法によって得られた植物に由来する澱粉もまた適している。加えて、突然変異育種の既知の標準方法によって生産することができる、上記の一般的な組成物の誘発突然変異および変異から成長させた植物に由来する澱粉もまた、ここでは適している。
【0010】
澱粉の典型的な源は、穀類、塊茎および根、豆類および果実である。天然源は、限定されるものではないが、トウモロコシ、ジャガイモ、サツマイモ、オオムギ、コムギ、コメ、サゴ、アマランス、タピオカ(キャッサバ)、クズウコン、カンナ、エンドウ、バナナ、オートムギ、ライムギ、ライコムギおよびモロコシを含めたいずれもの品種、ならびにその低アミロース(ワキシー)および高アミロース品種であり得る。低アミロースまたはワキシー品種は、澱粉に対して、10重量%未満のアミロースを含有する澱粉を、1つの実施態様においては5重量%未満、もう1つの実施態様においては2重量%未満、なおもう1つの実施態様においては1重量%未満のアミロースを含有する澱粉を意味することを意図する。高アミロース品種は、全て澱粉に対する重量で表して、少なくとも約30%のアミロースを、第二の実施態様においては少なくとも約50%アミロースを、第三の実施態様においては少なくとも約70%のアミロースを、第四の実施態様においては少なくとも約80%のアミロースを、第五の実施態様においては少なくとも約90%のアミロースを含有する澱粉を意味することを意図する。
【0011】
多糖は、剪断、或いは多糖の粒状または結晶性性質の変化などによるような、当該分野で知られたいずれかの方法によって物理的に処理して、多糖を機械的に改変することができ、それには本明細書中で用いるように、変換および予備糊化を含むことを意図する。当該分野で知られた物理的処理の方法は、ボール‐粉砕(ball-milling)、ホモゲナイゼーション(homogenization)、高剪断ブレンディング、ジェットクッキングのようなもしくはホモジェナイザーによる高剪断クッキング、ドラム乾燥、スプレイ‐乾燥(spray‐drying)、スプレイクッキング、チルソネーション(chilsonation)、ロール‐粉砕および押出を含む。
【0012】
多糖は、当該分野で公知のいずれの試薬または試薬の組合せでの処理によっても化学的に変性することができる。化学的変性には、多糖類の架橋、アセチル化、有機エステル化、有機エーテル化、ヒドロキシアルキル化(ヒドロキシプロピル化およびヒドロキシエチル化を含む)、リン酸化、無機エステル化、イオン(カチオン、アニオン、ノニオン、および両性イオン)変性、コハク酸化、および置換されたコハク酸化を含むことが意図される。また、酸化および漂白も含まれる。そのような変性は、当該分野において、例えば、Modified starches: Properties and Uses. Ed. Wurzburg, CRC Prerss, Inc., Florida(1986)において公知である。
【0013】
澱粉は熱抑制の前または後のいずれかで、粒状または予備糊化されていてもよい。冷水可溶性または分散澱粉としても知られている予備糊化澱粉は、熱的、化学的または機械的予備糊化、次いで、乾燥によってそれを調製する方法がそうであるように、当該分野でよく知られている。用語「糊化(gelatinized)」澱粉とは、その偏光(マルタ(Maltese))クロスを失った、かつその粒状構造を失っていてもいなくてもよい、膨潤した澱粉粒をいう。澱粉を糊化するのに用いられる熱的プロセスは、限定されるものではないが、熱交換器、ジェット‐クッカー、スプレイドライアー(spray drier)、及びドラムドライアー(drum drier)を含む機器での、バッチ調理、オートクレーブ処理、および連続的調理プロセスを含む。
【0014】
用いることができるガム類は、当該分野でよく知られており、キサンタン、カラギーナン、ジェラン、ローカストビーン、アルギネート、ペクチン、寒天、アラビアガム、およびグアーガムを含む。ガムに由来する材料は、加水分解および化学的変性のような当該分野で知られた方法を用いてさらに変性された、それらのリストされたものを含む。
【0015】
澱粉およびフラワーは特に有用な多糖類である。1つの適切な実施態様において、澱粉ベースは天然澱粉であり、もう1つの実施態様においては、天然ワキシー澱粉であり、さらにもう1つの実施態様においては、高アミロース澱粉である。
【0016】
多糖は単一種の多糖、または2種以上の多糖類のブレンドであってもよい。多糖類は、熱抑制プロセスを妨げず、また多糖を実質的に加水分解もしない、他の材料または成分の存在下で脱水および/または熱抑制することもできる。
【0017】
熱抑制プロセスは、多糖がさらに変性される前にまたはその後に行うことができる。1つの実施態様において、その変性は、多糖が熱抑制される前に行われる。もう1つの実施態様において、熱抑制の前または後に、多糖がさらに変性されることはない。
【0018】
多糖は、必要であれば、脱水工程の前、その後および/またはその間に、引き続いての熱抑制工程の間中性pH(7程度のpH値の範囲、約6〜8のpH)または塩基性pH(アルカリ)にpHを維持するのに有効なpHレベルに調整することができる。そのような調整は、当該分野で知られており、pH調整方法、用いるバッファーおよびアルカリの種類、ならびに適切なpHレベルを含む。
【0019】
多糖は無水または実質的に無水の状態にまで脱水される。本明細書中で用いるように、用語「実質的に無水」とは、5%未満、1つの実施態様においては2%未満、なおもう1つの実施態様においては1%(w/w)未満の水を意味することを意図する。水分を除去し、実質的に無水の多糖を得るための脱水工程は、増大した圧力下および/または増大した有効酸素濃度下で行われる。そのような脱水は、当該分野で公知のいずれの手段によっても達成することができ、熱的方法および非‐熱的方法を含む。非‐熱的方法は、アルコール(例えば、エタノール)のような親水性溶媒の使用、凍結乾燥、または乾燥剤の使用を含む。非‐熱的脱水は熱抑制された多糖類の味の改良につながり得る。
【0020】
熱的脱水方法も当該分野で知られており、水分含有量を所望の量まで低下させるのに十分な時間および高められた温度で加熱装置を用いて達成される。1つの実施態様において、用いる温度は125℃以下である。もう1つの実施態様において、その温度は100〜140℃の範囲である。脱水温度は100℃よりも低くできるが、熱的方法を用いる場合に水分を除去するのには、少なくとも100℃の温度がより効果的であろう。
【0021】
もし脱水が上昇した圧力において行われる場合には、加圧反応器(pressurized reactor)中で行われることが適切である。1つの実施態様において、その圧力は標準気圧〜525kPagであり、一方、もう1つの実施態様において、その圧力は145〜515kPagである。上昇した圧力において用いるガスは、窒素または二酸化炭素のような不活性ガスであってもよく、或いは空気、豊富化空気(enrich air)、もしくは窒素/酸素混合物のような酸素含有量が低い空気様混合物のような酸素含有ガスであってもよい。1つの実施態様において、かかるガスは不活性ガスである。もう1つの実施態様において、かかるガスは、酸素含有量が12重量%(限界酸素濃度)未満であり、なおさらなる実施態様においてはかかるガスの酸素含有量が8〜12重量%の範囲内にある。1つの方法において、用いるガスは予め乾燥させて、いくらかの水分を除去する。
【0022】
上昇した温度において増大した圧力を用いる技術は、制御された温度プロフィールにて材料を加熱することができるいずれの機器でも用いることができる。機器として用いる器または容器は圧力について調節されなければならず、すなわち、容器圧力を含むように構造的に堅固でなければならず、もう1つの実施態様において、もしより高い酸素濃度を用いる場合に容器雰囲気が限界酸素濃度を超えれば、上昇した温度/圧力においてダストの爆発によって生じる燃焼‐爆燃波の伝播を抑制し、または安全に排出できなければならない。
【0023】
もう1つの実施態様において、脱水は、少なくとも6.5モル/m3の増大した有効酸素濃度において行われる。これは、大気圧より高く圧力を上昇させることにより(上記に詳述)によって、および/または用いる周囲のガス中のパーセント酸素を21容量%より高く、そして本発明の1つの態様においてはかかるガスの21%容量〜35%容量間の酸素に増大させることにより、達成することができる。本発明のもう1つの態様において、脱水は、少なくとも9モル/m3の、もう1つの態様においては少なくとも12モル/m3までの、なおもう1つの態様においては少なくとも25モル/m3までの、増大した有効酸素濃度において行われる。増大した酸素濃度は、限定的因子である機器の有効性および安全性を考慮して、広い範囲にわたって用いることができる。増大した酸素濃度は当該分野で公知のいずれの方法によっても達成することもできる。1つの実施態様において、増大した酸素濃度は豊富化された酸素ガス(空気の約21%(v/v)酸素含有量よりも大)を用いることによって達成される。この実施態様は、安全性が維持される限り、周囲圧力(ambient pressure)またはより高い圧力におけるものであってよく、1つの実施態様においては、周囲圧力におけるものである。もう1つの実施態様において、増大した酸素濃度は、熱抑制の間に装置内で周囲圧力より高くガスの圧力を上昇させることによって達成され、この実施態様は限界酸素濃度(それより低いとコーンスターチの燃焼が防止される)がガスの圧力と共に変化しないという利点を有する。もう1つの実施態様において、限界酸素含有量を超えるまたは豊富化された酸素含有量のいずれかの増大した酸素と圧力の組合せは、脱水の間に産物の色を減少させる(ハンターのL‐値(Hunter L-value)を増加させる)ことにおいて、最大の改良を供するであろう。
【0024】
脱水工程は、水分を除去することができるいずれのプロセスまたはプロセスの組合せを用いても行うことができ、増大した圧力および/または有効な酸素濃度下で行うことができる。1つの実施態様において、脱水は1インチ(2.5cm)未満の薄いフィルムで行われ、もう1つの実施態様においては、半インチ(1.3cm)未満の薄いフィルムで行われる。
【0025】
脱水工程は、典型的には、水分除去のための手段(例えば、装置のヘッド−スペースからガスを掃引するためのブロア、流動化ガス)を備えた装置で行って、水分が蓄積しおよび/または多糖上に沈澱するのを実質的に防ぐ。脱水および熱抑制装置(単数または複数)はいずれの熱的に制御された器とすることもでき、限定されるものではないが、慣用的なまたはマイクロ波オーブンのような工業用オーブン、デキストリナイザー(dextrinizer)、流動床反応器およびドライヤー、およびミキサーまたはブレンダーを含む。本明細書中で用いるように、流動(床)反応器、流動(床)ドライヤーまたは流動(床)ミキサーは、ガス、機械的手段または他の手段によるのを問わず、多糖が実質的に流動化されるいずれの装置も意味することが意図される。澱粉を脱水する典型的な機器は、当該分野で知られており、1999年8月3日にChiu等に対して発行された米国特許第5,932,017号明細書および2001年7月17日にJeffcoat等に対して発行された米国特許第6,261,376号明細書に開示されている。
【0026】
脱水のための時間および温度の組合せは、用いる機器に依存し、処理する多糖のタイプ、pHおよび水分含有量、並びに実行者によって見分けられそして選択される他の因子によっても影響され得る。
【0027】
熱抑制工程は、当該分野で知られている方法を用いて行われ、例えば、米国特許第5,932,017号明細書および同第6,261,376号明細書および米国出願番号第61/051,057号明細書に開示されている。
【0028】
多糖類が水の存在下で加熱に付される場合、加水分解または分解が起こり得る。加水分解または分解は粘度を低下させる。従って、脱水のための条件は、加水分解および分解を低減しつつ抑制に有利であるように選択される必要がある。本発明の1つの態様において、多糖は熱処理温度に到達する前に実質的に無水であり、本発明のもう1つの態様においては、多糖が熱処理の少なくとも90パーセントを通して実質的に無水である。
【0029】
初期のpH、脱水の方法および条件、並びに熱抑制の温度、時間および条件を含めたプロセス条件を変化させることによって、抑制のレベルを変動させて、最終の熱抑制された多糖における異なる粘度特性を供することができる。
【0030】
熱抑制工程に続いて、多糖は以下の1以上によってさらに処理されてもよい。即ち、望ましい粒子サイズを選択するために篩い分けし、スラリー化しかつ洗浄し、濾過しかつ/または乾燥させ、漂白しまたはそうでなければ精製し、ならびに/あるいはpH調整してよい。多糖は、さらに、他の変性されていないまたは変性された多糖とブレンドされ、または最終使用産物での使用前に食物成分(food ingredients)と更にブレンドされ得る。
【0031】
得られた多糖類は、脱水工程が増大した圧力下でおよび/または増大した有効酸素濃度で行われていない熱抑制された多糖類に機能的に類似している。しかしながら、得られた熱抑制された多糖類は、そのように熱抑制された多糖類に対して改良された色、風味および臭いを有する。
【0032】
1つの実施態様において、実施例セクションに記載される方法を用いて、熱抑制された多糖のハンター色が、処理前の多糖と比較して、7ハンターL単位未満だけ減少し、もう1つの実施態様においては5ハンターL単位未満だけ減少し、さらにもう1つの実施態様においては3ハンターL単位未満だけ減少する。1つの実施態様において、前記ハンターL色は、脱水が増大した圧力および/または増大した有効酸素濃度下でないこと以外は同様の様式で処理された多糖よりも、少なくとも0.5単位、もう1つの実施態様においては少なくとも1単位、なおもう1つの実施態様においては少なくとも2単位、さらになおもう1つの実施態様においては少なくとも3単位高い。
【0033】
得られた熱抑制された多糖は、食品(foods)で現在用いられる化学的に変性されたまたは架橋された多糖の代わりに用いてもよく、そのうえ、クリーンなラベル(label)(非‐変性ラベル)を維持する。本発明の多糖類の使用によって改良することができる食品産物(food products)には、ベビーフード(baby foods)、液体の幼児処方、ソースおよびグラビー、スープ、サラダドレッシングおよびマヨネーズ、ならびに他の香辛料、ヨーグルト、酸味クリームおよび他の乳製品、プディング及びパイフィリング、果実調製物、病院食用の液体ダイエット製品および液体製品、パン、ケーキおよびクッキーのような焼き物品、ならびに直ぐに食べられるシリアルがある。多糖類はソース、プディング、ベビーフード、ホットシリアル、栄養製品等のためのドライミックスでも有用である。熱抑制された多糖類は、全ての加工温度を通じて粘度安定性が必要とされる食品用途で用いるのに適している。得られた多糖は望まれるいずれの量でも用いることができ、典型的には、同様の粘度およびテキスチャー特性を付与する化学的に変性された多糖と実質的に同一濃度で用いられる。1つの実施態様において、多糖は食品製品の0.1〜35重量%、もう1つの実施態様においては、2〜6重量%の量で用いられる。
【0034】
熱抑制された多糖類は、限定されるものではないが、紙、包装、接着剤、医薬およびパーソナルケア製品の製造を含む、そのような多糖類が現在用いられている他の用途で、現在用いられる化学的に変性されたまたは架橋された多糖類の代わりに用いることもできる。
【0035】
実施態様
以下の実施態様は、本発明をさらに示し、説明するために掲げるが、いずれにせよ限定的なものと解釈すべきではない。
1. a)増大した圧力下および/または増大した有効酸素濃度下で多糖を実質的に無水または無水の状態にまで脱水する工程、および
b)該実質的に無水または無水の多糖を熱抑制する工程:
を含む、方法。
2.前記脱水工程が増大した圧力下で行われる、実施態様1の方法。
3.前記脱水工程が増大した有効酸素濃度下で行われる、実施態様1または2の方法。
4.前記有効酸素濃度が、前記ガスのパーセント酸素含有量を増大させることによって達成される、実施態様3の方法。
5.前記有効酸素濃度が少なくとも6.5モル/m3である、実施態様3の方法。
6.前記有効酸素濃度が少なくとも9モル/m3である、実施態様3の方法。
7.前記有効酸素濃度が少なくとも12モル/m3である、実施態様3の方法。
8.前記有効酸素濃度が少なくとも25モル/m3である、実施態様4の方法。
9.前記圧力が標準気圧〜525kPagである、実施態様1の方法。
10.前記圧力が145〜515kPagである、実施態様9の方法。
【0036】
11.用いる前記ガスが酸素含有ガスである、実施態様2の方法。
12.前記ガスが、該ガスの12%容量未満の酸素を含有する、実施態様11の方法。
13.前記ガスが、該ガスの8〜12容量%間の酸素を含有する、実施態様11の方法。
14.前記ガスが、該ガスの21容量%を上回る酸素を含有する、実施態様4の方法。
15.前記ガスが、該ガスの21容量%〜35容量%間の酸素を含有する、実施態様4の方法。
16.前記多糖が澱粉である、実施態様1〜15のいずれか1つの方法。
17.前記澱粉がワキシー澱粉である、実施態様16に記載の方法。
18.前記多糖がガムである、実施態様1〜15のいずれか1つの方法。
19.前記多糖がフラワーである、実施態様1〜15のいずれか1つの方法。
20.実施態様1〜19のいずれか1つの方法によって製造された組成物。
21.前記組成物が、脱水が増大した圧力および/または増大した有効酸素濃度下で行われないこと以外は同一の方法を用いて製造された組成物よりも少なくとも0.5単位高いハンターL色を有する、実施態様20の組成物。
22.前記組成物が工程(a)および(b)前の前記多糖よりも7単位以下低いハンターL色を有する、実施態様20の組成物。
【実施例】
【0037】
以下の実施例は、本発明をさらに示し、説明するために掲げるが、いずれにせよ限定的なものと解釈すべきではない。容量で与えられるガスを除いて、全ての部およびパーセンテージは重量により与えられ、全ての温度は特記しない限り摂氏温度(℃)で表す。
【0038】
以下の手順を実施例全体で用いた。
ブラベンダー粘度の手順
テストすべき多糖を十分な量の蒸留水中にスラリー化して、クエン酸ナトリウム/クエン酸緩衝液で調整されたpH3の5%無水固形物のスラリーを得た。充填重量は23.0グラムの無水多糖、387グラムの蒸留水、および50グラムの緩衝溶液である。緩衝溶液は、蒸留水で1000mlに希釈した1.5容量の210.2グラムのクエン酸一水和物を、蒸留水で1000mlに希釈した1.0容量の98.0グラムのクエン酸三ナトリウム二水和物と混合することによって調製する。次いで、そのスラリーを、350cm/グラムのカートリッジを備えたブラベンダーVISCO/Amylo/GRAPH(C. W. Brabender Instruments, Inc., Hackensack, NJにより製造)の試料カップに導入し、スラリーを92℃まで加熱(1.5℃/分の速度で)し、15分間(15’)保持しながら、粘度を測定した。粘度は、92℃で記録し、92℃に15分保持した後に再度記録した(92℃+15)。ブラベンダー手順に対する時間は、充填物が60℃とされたときにゼロとした。
【0039】
VISCO/Amylo/GRAPHは、多糖スラリーをプログラムされた加熱サイクルに付した場合に生じる粘度をバランスさせるのに必要なトルクを記録する。
【0040】
この手順を用いて、ワキシートウモロコシ澱粉(waxy maize corn starch)についての実質的加水分解を、500BU未満の92℃粘度と共に、92℃粘度よりも低い92℃+15分の粘度によって示すことができる。当業者であれば、粘度だけで熱抑制と加水分解とを区別するのが難しいことは分かる。例えば、高レベルの熱抑制または高レベルの加水分解のいずれかの結果として、低い粘度がもたらされ得る。加水分解によりより長くかつより粘着性のテキスチャーが生じる場合にテキスチャーを通じて、あるいは、分散または調理の後の溶解度の増加によって加水分解が示される場合に粒状澱粉溶解度の測定を通じて、そのいずれかで加水分解の程度を測定するには、より徹底的な分析が必要であることが知られている。
【0041】
水分の手順
Cenco B‐3デジタル水分はかり上で5グラムの粉末を秤量する。電球の電力を100%に設定して、試料を135〜140℃の間に15分間加熱する。重量パーセント水分が、重量損失によって決定され、水分秤量によって直接報告される。
【0042】
ハンター比色計の手順
ハンター色Quest II(Hunter Color Quest II)を、標準化または試料の分析の実施に先立って、1時間温める。標準化は、製造業者によって提供された手順を用いて行われる。以下の設定を用いて試料の読みを採取する:スケール=ハンターLab、光源=D65、手順=なし、観測者=10*、MI光源=少数、差=DE、指標=YID1925(2/C)、ディスプレイモード=絶対、向き=主な列。本明細書中で報告される全ての色分析は粉末試料で行う。粉末を試料セルに装填し、そのセルを軽く叩いて、セルウインドウと粉末との間の間隙をなくす。試料セルを比色計に装填し、試料を読み取る。
【0043】
実施例1流動床反応器における酸素濃度の効果
水酸化物と炭酸塩の組合せで9.5のpHに調整されたワキシートウモロコシ澱粉(ハンターL色=94.87)を、全て限界酸素濃度未満の種々の酸素濃度レベルで、加圧流動床反応器(pressurized fluid bed reactor)において脱水する。最初の実験において、その澱粉を132℃でかつ345kPagにおいて脱水する。第二の実験において、pH調整されたワキシー澱粉を流動床反応器中で132℃および517kPagにおいて1%未満の水分まで脱水し、一方、第三の実験においては、pH調整されたワキシー澱粉を流動床反応器中で132℃および周囲圧力において1%未満の水分まで脱水する。実質的に無水の状態に到達した後、その圧力を開放し、内容物を冷却する。得られた澱粉を取り出し、その色を測定する。脱水の間に圧力を上昇させるにつれて、初期のハンターL値から最終ハンターL値を引くことにより測定される色の変化は低減する。
【0044】
実験の第二段階は、これら3種の実質的に無水の試料それぞれを採取し、2種のさらなる試料中に出すことを含んだ。1シリーズの試料を流動床反応器に再導入し、166℃まで加熱し、所定の粘度または抑制レベルに達するのに適切な時間保持した。分析後、圧力下で脱水した試料は、大気条件下で乾燥させたものより白いということを示すより高いハンターL色を有し、脱水の間に増大した圧力が熱抑制後により高いハンターL色をもたらした。
【0045】
第二のシリーズの試料をリトルフォード反応器(Littleford reactor)に再導入し、166℃まで加熱し、所定の粘度または抑制レベルに達するのに適切な時間保持した。分析後、圧力下で脱水した試料は、大気条件下で乾燥させたものより白いということを示すより高いハンターL色を有し、脱水の間に増大した圧力が熱抑制後にのより高いハンターL色をもたらした。
【0046】
以下の特許請求の範囲で用いるように、「含む」または「含んでいる」は、以下のエレメントを含むことを意味することを意図するが、他のものを排除せず無制限である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)増大した圧力下および/または増大した有効酸素濃度下で多糖を実質的に無水または無水の状態にまで脱水する工程、および
b)該実質的に無水または無水の多糖を熱抑制する工程:
を含む、方法。
【請求項2】
前記脱水工程が増大した圧力下で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記脱水工程が増大した有効酸素濃度下で行われる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記有効酸素濃度が、前記ガスのパーセント酸素含有量を増大させることによって達成される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記多糖が、澱粉、ガム及びフラワーからなる群から選択される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記澱粉がワキシー澱粉である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法によって製造された、組成物。
【請求項8】
前記組成物が、脱水が増大した圧力および/または増大した有効酸素濃度下で行われないこと以外は同一の方法を用いて製造された組成物よりも少なくとも0.5単位高いハンターL色を有する、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記組成物が、工程(a)および(b)前の前記多糖よりも7単位以下低いハンターL色を有する、請求項7に記載の組成物。

【図1】
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【公開番号】特開2010−248513(P2010−248513A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−92295(P2010−92295)
【出願日】平成22年4月13日(2010.4.13)
【出願人】(308036790)ブルノプ トゥヴェーデ ベスローテン フェンノートシャップ (21)
【Fターム(参考)】