説明

熱源システム

【課題】熱負荷の状況に応じた熱源機の処理負荷の配分のバリエーションを増加させた熱源システムを提供する。
【解決手段】熱源システム1は、小温度差熱源機10と、小温度差往集合部21と、小温度差還集合部22と、小温度差還集合部22内の熱媒体Cを小温度差熱源機10に導く小温度差導入管12と、小温度差往集合部21と小温度差還集合部22とを小温度差熱源機10を介さずに連通する小温度差連通管25と、大温度差熱源機30と、第2の負荷側機器91からの大温度差熱媒体CLを小温度差連通管25に流入させる大温度差熱媒体戻り管44と、小温度差往集合部21内の熱媒体Cを大温度差熱源機30に導く大温度差導入管32とを備える。第2の負荷側機器91からの大温度差熱媒体CLを大温度差熱源機30と小温度差熱源機10とに分配して還すことが可能となり、両熱源機10、30における処理熱量の按分のバリエーションを増やすことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は熱源システムに関し、特に熱負荷の状況に応じた冷凍機の処理負荷の配分のバリエーションを増加させた熱源システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば半導体関連工場等におけるクリーンルーム空調方式に代表されるように、除湿再熱運転を回避して省エネルギー化を図る観点から、外気の全熱処理と室内の顕熱処理とを分離したシステムが採用されている。
【0003】
図6に、上述のシステムの一例の模式的系統図を示す。このシステムは、中温系統180と低温系統190とが独立して構成されている。中温系統180は、顕熱を処理するドライコイル181と、ドライコイル181に供給する中温度の冷水を製造する中温冷凍機110とを配管で結び、ドライコイル181と中温冷凍機110との間で中温度の冷水を循環させる。低温系統190は、全熱を処理する外調機191と、外調機191に供給する低温度の冷水を製造する低温冷凍機130とを配管で結び、外調機191と低温冷凍機130との間で低温度の冷水を循環させる。ドライコイル181に供給される中温の冷水は、ドライコイル181が潜熱処理を行わないので処理空気を露点温度まで低下させずに済むため、比較的高い温度(例えば13℃程度)で足りる。他方、外調機191に供給される低温の冷水は、処理空気を除湿のために露点温度以下に低下させることから、比較的低い温度(例えば7℃)に冷却される。このシステムは、中温系統180において中温冷凍機が製造する冷水の温度が比較的高くて済むため、中温冷凍機のCOP(成績係数)を向上させることができ、省エネルギーに資する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述のシステムは、中温系統と低温系統とが独立して構成されており、各々独立して運転されるため、処理する熱負荷の変動に応じた適切な部分負荷運転を行う場合に、中温系統と低温系統との各々で最適な運転を行うことができるに留まり、最適運転のバリエーションが限られていた。
【0005】
上述の事情は、冷房運転のみならず、暖房運転にも当てはまる。近年、省エネルギーと快適性とを両立する冷暖房方式として、放射冷暖房システムが注目されているが、放射冷暖房システムで用いられる放射パネルを温める温水(熱媒体)の温度は、従来一般的に用いられている対流方式における温風の温度よりも低くて済む。つまり、放射パネルに供給される熱媒体の温度は、冷暖房対象室の温度との差が比較的小さくて足りる。暖房運転の場合も、図6における中温冷凍機110を小温度差熱源機に、低温冷凍機130を大温度差熱源機に置き換えることで、小温度差熱源機のCOPを向上させることができるが、小温度差熱源機系統と大温度差熱源機系統との各々で最適な運転を行うことができるに留まり、最適運転のバリエーションが限られる。
【0006】
本発明は上述の課題に鑑み、熱負荷の状況に応じた熱源機(冷凍機を含む)の処理負荷の配分のバリエーションを増加させた熱源システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の第1の態様に係る熱源システムは、例えば図1に示すように、基準温度との差が第1の所定の値となるように熱媒体Cの温度を調節可能な小温度差熱源機10と;小温度差熱源機10で温度調節された熱媒体Cである小温度差熱媒体CMSを、熱負荷を処理する第1の負荷側機器81に供給する前に通過させる小温度差往集合部21と;第1の負荷側機器81で熱が利用された小温度差熱媒体CMを、小温度差熱源機10に還す前に集める小温度差還集合部22と;小温度差還集合部22内の熱媒体Cを小温度差熱源機10に導く小温度差導入管12と;小温度差往集合部21と小温度差還集合部22とを、小温度差熱源機10を介さずに連通する小温度差連通管25と;基準温度との差が第1の所定の値よりも大きい第2の所定の値となるように熱媒体Cの温度を調節可能な大温度差熱源機30と;大温度差熱源機30で温度調節された熱媒体Cである大温度差熱媒体CLSの熱を利用して熱負荷を処理する第1の負荷側機器81とは異なる第2の負荷側機器91から導出された大温度差熱媒体CLを、小温度差連通管25に流入させる大温度差熱媒体戻り管44と;小温度差往集合部21内の熱媒体Cを大温度差熱源機30に導く大温度差導入管32とを備える。
【0008】
なお、上記本発明の第1の態様に係る熱源システムが冷却に用いられる場合は、例えば図1に示すように、熱媒体Cを所定の中温度に冷却可能な中温冷凍機10と;中温冷凍機10で冷却された熱媒体Cである中温熱媒体CMSを、熱負荷を処理する第1の負荷側機器81に供給する前に通過させる中温往集合部21と;第1の負荷側機器81で冷熱が利用された中温熱媒体CMを、中温冷凍機10に還す前に集める中温還集合部22と;中温還集合部22内の熱媒体Cを中温冷凍機10に導く中温導入管12と;中温往集合部21と中温還集合部22とを、中温冷凍機10を介さずに連通する中温連通管25と;熱媒体Cを前記中温度よりも低い低温度に冷却可能な低温冷凍機30と;低温冷凍機30で冷却された熱媒体Cである低温熱媒体CLSの冷熱を利用して熱負荷を処理する第1の負荷側機器81とは異なる第2の負荷側機器91から導出された低温熱媒体CLを、中温連通管25に流入させる低温熱媒体戻り管44と;中温往集合部21内の熱媒体Cを低温冷凍機30に導く低温導入管32とを備えることとなる。
【0009】
このように構成すると、小温度差熱源機と大温度差熱源機とが直列に配設されると共に第2の負荷側機器から導出された大温度差熱媒体を大温度差熱源機と小温度差熱源機とに分配して還すことが可能となるため、第2の負荷側機器の熱負荷の一部又は全部を小温度差熱源機で処理することが可能となり、大温度差熱源機及び小温度差熱源機で処理する第2の負荷側機器の熱負荷の按分もバリエーションの中から適切な値を決定することが可能となる。
【0010】
また、本発明の第2の態様に係る熱源システムは、例えば図1を参照して示すと、上記本発明の第1の態様に係る熱源システムにおいて、小温度差熱源機10が、生成する小温度差熱媒体CMSの温度の設定を変えることができるように構成されている。
【0011】
このように構成すると、第1の負荷側機器に影響を与えない範囲で小温度差熱源機の設定温度を基準温度との差が大きくなるようにすることにより大温度差熱源機の負荷を軽減することができ、例えば大温度差熱源機の負荷の少ない時期(例えば中間期)には大温度差熱源機を停止することが可能となりうる。
【0012】
また、本発明の第3の態様に係る熱源システムは、例えば図1に示すように、上記本発明の第1の態様又は第2の態様に係る熱源システム1において、小温度差熱源機10で生成された小温度差熱媒体CMSを小温度差往集合部21に導く小温度差導出管11と;小温度差往集合部21から第1の負荷側機器81に向けて供給される熱媒体Cを小温度差往集合部21の外に導く小温度差供給管23とを備え;小温度差連通管25及び大温度差導入管32が隣接した状態、かつ、小温度差導出管11及び小温度差供給管23が隣接した状態で、小温度差往集合部21に接続されている。ここで「小温度差連通管及び大温度差導入管が隣接した状態」とは、典型的には両者の間に小温度差導出管又は小温度差供給管が介在しないことをいい、「小温度差導出管及び小温度差供給管が隣接した状態」とは、典型的には両者の間に小温度差連通管又は大温度差導入管が介在しないことをいう。
【0013】
このように構成すると、小温度差熱媒体を専ら第1の負荷側機器の系統で循環させ、かつ、大温度差熱媒体戻り管を流れる大温度差熱媒体を大温度差熱源機へ優先的に導入させつつ、大温度差熱媒体戻り管を流れる大温度差熱媒体の余剰分を小温度差熱源機に導入させることが可能となり、第1の負荷側機器及び第2の負荷側機器の要求を乱すことなく大温度差熱源機及び小温度差熱源機の最適な運転を行うことが可能になる。
【0014】
また、本発明の第4の態様に係る熱源システムは、例えば図3に示すように、上記本発明の第3の態様に係る熱源システムにおいて、基準温度との差が第1の所定の値となる熱媒体C及び基準温度との差が第2の所定の値となる熱媒体Cを生成可能なバックアップ熱源機50と;小温度差還集合部22内の熱媒体Cをバックアップ熱源機50に導くバックアップ導入管52と;バックアップ熱源機50で温度調節された熱媒体Cを、大温度差導入管32の接続部と小温度差導出管11の接続部との間で小温度差往集合部21に流入させるバックアップ導出管51とを備える。
【0015】
このように構成すると、1種類のバックアップ熱源機で、第1の負荷側機器の系統と第2の負荷側機器の系統とに、両系統への供給を切り換える切換弁を設けることなく、バックアップを行うことが可能になる。
【0016】
また、本発明の第5の態様に係る熱源システムは、例えば図1を参照して示すと、上記本発明の第1の態様乃至第4の態様のいずれか1つの態様に係る熱源システム1において、第2の負荷側機器91で処理される最大熱負荷の一部に相当する熱量が、小温度差熱源機10で温度調節された小温度差熱媒体CMが保有する熱量で充当されるように、小温度差熱源機10及び大温度差熱源機30の定格能力が決定されている。
【0017】
このように構成すると、小温度差熱源機及び大温度差熱源機の容量を選定する際の自由度を大きくすることができる。
【0018】
また、本発明の第6の態様に係る熱源システムは、例えば図4に示すように、上記本発明の第1の態様乃至第5の態様のいずれか1つの態様に係る熱源システムにおいて、大温度差熱媒体戻り管44との接続部と、小温度差還集合部22と、の間の小温度差連通管25内の熱媒体CHの流通を遮断可能な開閉弁325vを備える。
【0019】
このように構成すると、必要に応じて小温度差熱源機の系統と大温度差熱源機系統とを独立して運転させることができ、小温度差熱源機で熱媒体を冷却し、大温度差熱源機で熱媒体を加熱することが可能となり、冷熱負荷と温熱負荷とを同時に満たすことができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、小温度差熱源機と大温度差熱源機とが直列に配設されると共に第2の負荷側機器から導出された大温度差熱媒体を大温度差熱源機と小温度差熱源機とに分配して還すことが可能となるため第2の負荷側機器の熱負荷の一部又は全部を小温度差熱源機で処理することが可能となり、大温度差熱源機及び小温度差熱源機で処理する第2の負荷側機器の熱負荷の按分もバリエーションの中から適切な値を決定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る熱源システムの模式的系統図である。
【図2】中温冷凍機及び低温冷凍機の定格出力の按分例を示すテーブルの図である。
【図3】本発明の第2の実施の形態に係る熱源システムの模式的系統図である。
【図4】本発明の第3の実施の形態に係る熱源システムの模式的系統図である。
【図5】本発明の第3の実施の形態に係る熱源システムを構成する小温度差往集合部の部分平面図である。
【図6】従来の熱源システムの模式的系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、各図において互いに同一又は相当する部材には同一あるいは類似の符号を付し、重複した説明は省略する。
【0023】
まず図1を参照して、本発明の第1の実施の形態に係る熱源システム1を説明する。図1は、熱源システム1の模式的系統図である。本実施の形態では、小温度差熱源機及び大温度差熱源機が共に冷凍機であるとして説明する。熱源システム1は、熱媒体としての冷水Cを冷却する中温冷凍機10及び低温冷凍機30と、中温往集合部としての中温往ヘッダ21と、中温還集合部としての中温還ヘッダ22と、冷水Cを効果的に流動させる配管類(後に詳述する)とを備えている。中温冷凍機10、低温冷凍機30、中温往集合部、中温還集合部は、それぞれ小温度差熱源機、大温度差熱源機、小温度差往集合部、小温度差還集合部に相当する。
【0024】
以下の説明においては、冷水Cに関し、便宜上次のように区別する場合がある。中温冷凍機10で製造された冷水Cを「中温往冷水CMS」と、中温冷凍機10に導入される冷水Cを「中温還冷水CMR」と、両者を総称して「中温冷水CM」という。低温冷凍機30で製造された冷水Cを「低温往冷水CLS」と、低温冷凍機30に導入される冷水Cを「低温還冷水CLR」と、両者を総称して「低温冷水CL」という。このほか、説明の便宜上冷水Cの区別をする場合は適宜別の呼称を使用する場合があるが、その場合も「C」で始まる符号を付することとする。中温冷水CMは小温度差熱媒体に相当し、低温冷水CLは大温度差熱媒体に相当する。なお、中温冷凍機10及び低温冷凍機30の両方が運転されている場合、典型的には中温往冷水CMSの温度よりも低温往冷水CLSの温度の方が低くなる。
【0025】
中温往冷水CMSが供給される第1の負荷側機器は、典型的には顕熱を処理する顕熱処理機器であり、低温往冷水CLSが供給される第2の負荷側機器は、典型的には全熱を処理する全熱処理機器であるが、第1の負荷側機器が全熱を処理する機器であってもよく、第2の負荷側機器が顕熱を処理する機器であってもよい。本実施の形態では、熱源システム1で製造された冷水Cが、クリーンルームの冷房のような精密空調を行うのに用いられる、第1の負荷側機器としてのドライコイル81及び第2の負荷側機器としての外調機91に供給されることとして説明する。本実施の形態の精密空調では、温度及び湿度の調節を精密に行うため、精密空調用の空気の潜熱の処理(除湿)は外調機91が行い、ドライコイル81では顕熱(例えば生産機器の発熱)の処理のみが行われる。このため、外調機91には除湿を行う一般的な空調に用いられるのと同様の低温度(例えば7℃)の冷水Cが供給される。他方、ドライコイル81には、除湿が行われないように低温度よりも高い中温度(例えば13℃)の冷水Cが供給される。所定の中温度は、処理空気の露点温度よりも高く、顕熱を処理できる範囲で適宜決定される。このような負荷側機器81、91に供給する冷水Cを製造する熱源システム1の構成を、次から説明する。なお、負荷側機器81、91では空気を冷却するためにエネルギーを消費するので、負荷側機器81、91で処理する熱負荷を、冷凍機10、30で処理する熱負荷と区別するために、「空気負荷」という場合がある。また、冷凍機10、30では冷水Cを冷却するためにエネルギーを消費するので、冷凍機10、30で処理する熱負荷を「冷水負荷」という場合がある。また、「中温度」は基準温度との差が第1の所定の値となる温度であり、「低温度」は基準温度との差が第2の所定の値となる温度である。第2の所定の値は第1の所定の値よりも大きい。ここで「基準温度」とは、中温度との差よりも低温度との差の方が大きくなる任意の温度であり、例えば中間期の外気温あるいは20℃等とすることができる。
【0026】
中温冷凍機10は、例えば空調用として用いられる水冷式あるいは空冷式の熱源装置であり、典型的には、ターボ冷凍機、吸収式冷凍機、チリングユニット等が用いられる。中温冷凍機10は、不図示の冷媒が冷凍サイクルを行い(蒸発と凝縮を交互に行う)、冷媒が蒸発する際に、中温冷凍機10内を通過する中温冷水CMから熱を奪う(冷却する)ことで中温往冷水CMSを製造する機器である。中温冷凍機10は、中温往冷水CMSを専ら中温度にする機器であるが、好ましくは温度の設定を適宜変えることができるように構成され、さらに、低温度にすることができる能力を有していることがより好ましい。温度の設定を適宜変えることができるように構成されていることで、負荷変動に応じた冷水負荷配分(ドライコイル81及び外調機91の空気負荷を処理するための冷熱源の受け持ち分)のバリエーションをさらに増やすことができる。例えば、ドライコイル81に影響を与えない範囲(低すぎる温度とならない範囲)で中温冷凍機10の設定温度を下げることにより低温冷凍機30の冷水負荷を軽減することができ、条件によっては、中間期等において低負荷運転となり運転COP(成績係数)が低下した低温冷凍機30を停止して中温冷凍機10でドライコイル81及び外調機91の空気負荷を処理することが可能となり、熱源システム1の省エネルギーを図ることができる。さらに、中温冷凍機10が中温往冷水CMSを低温度にすることができる能力を有する場合は、中温冷凍機10を低温冷凍機30の故障時のバックアップ機器として用いることが可能になる。
【0027】
中温冷凍機10には、製造した中温往冷水CMSを導出する中温導出管としての中温冷水往管11と、中温還冷水CMRを導入する中温導入管としての中温冷水還管12とが接続されている。中温導出管は小温度差導出管に相当し、中温導入管は小温度差導入管に相当する。中温冷水往管11の他端は、中温往ヘッダ21に接続されている。中温冷水還管12の他端は、中温還ヘッダ22に接続されている。中温冷水還管12には、中温冷水CMを圧送する中温冷水ポンプ13が挿入配置されている。中温冷凍機10まわりの構成は、中温往ヘッダ21に流入する中温往冷水CMSの流量を変えることができるようになっている。中温往ヘッダ21に流入する中温往冷水CMSの流量を可変にする構成としては、中温冷水ポンプ13にインバータを設けて吐出流量(ひいては中温冷凍機10を通過する冷水Cの流量)を可変にしてもよく(この場合、典型的には中温冷凍機10をいわゆる変流量対応型とする。)、あるいは中温冷凍機10から吐出された中温往冷水CMSの一部を中温冷水還管12に戻す中温冷凍機バイパス管(不図示)を設けてもよく(この場合、典型的には中温冷凍機10をいわゆる定流量型とする。)、あるいは中温冷凍機10を複数台に分割して(換言すれば複数の中温冷凍機10を並列に配置した中温冷凍機群を構成して)それぞれに中温冷水往管11及び中温冷水ポンプ13が配設された中温冷水還管12を設けて台数制御を行うようにしてもよく(この場合、典型的には中温冷凍機10をいわゆる定流量型とする。)、あるいはこれらの2つ以上を組み合わせてもよい。本実施の形態では、便宜上、中温冷水ポンプ13をインバータ制御することにより中温往ヘッダ21に流入する中温往冷水CMSの流量を可変にすることとして説明する。
【0028】
中温往ヘッダ21には、ドライコイル81に向けて中温冷水CMを導出する小温度差供給管としての中温供給管23が接続されている。中温供給管23の他端とドライコイル81とは、ドライコイル81に中温冷水CMを圧送する中温2次ポンプ82が配設された配管83で接続されている。中温2次ポンプ82は、インバータを有していて冷水Cの吐出流量を変えることができるように及び/又は複数台に分割されて台数制御を行うことにより全体として冷水Cの吐出流量を変えることができるように構成されていてもよい。配管83には、内部を流れる冷水Cの温度を検出する中温往温度計88が配設されている。中温還ヘッダ22には、ドライコイル81から導出された中温冷水CMを導入する中温熱媒体戻り管(小温度差熱媒体戻り管)としての中温戻り管24が接続されている。中温戻り管24の他端とドライコイル81とは、配管84で接続されている。中温戻り管24には、内部を流れる冷水Cの温度を検出する中温還温度計18及び流量を検出する中温流量計19が配設されている。中温往ヘッダ21と中温還ヘッダ22とは、中温冷凍機10を介さずに両ヘッダ21、22を連通する小温度差連通管としての中温連通管25で接続されている。中温往ヘッダ21及び/又は中温還ヘッダ22は、典型的には架台を有して床上に設置される構成となっているが、いわゆるヘッダの外観を呈しない、配管ヘッダとして構成されていてもよい。さらに、中温往ヘッダ21と中温還ヘッダ22と中温連通管25とは、外観上一体不可分に構成されていていてもよい。
【0029】
低温冷凍機30は、中温冷凍機10と同様の水冷式あるいは空冷式の熱源装置であって典型的には、ターボ冷凍機、吸収式冷凍機、チリングユニット等が用いられる。低温冷凍機30は、不図示の冷媒が冷凍サイクルを行い(蒸発と凝縮を交互に行う)、冷媒が蒸発する際に、低温冷凍機30内を通過する低温冷水CLから熱を奪う(冷却する)ことで低温往冷水CLSを製造する機器である。低温冷凍機30は、低温往冷水CLSを専ら低温度にする機器である。しかしながら、低温冷凍機30が温度の設定を適宜変えることができるように構成されていると、例えば低温冷凍機30の冷水負荷の少ない中間期などに低温往冷水CLSを中温度に近づけることで低温冷凍機30の運転COPを向上させることができ、熱源システム1の省エネルギーを図ることができるため、好ましい。
【0030】
低温冷凍機30には、製造した低温往冷水CLSを導出する低温導出管としての低温冷水往管31と、低温還冷水CLRを導入する低温導入管としての低温冷水還管32とが接続されている。低温導出管は大温度差導出管に相当し、低温導入管は大温度差導入管に相当する。低温冷水往管31の他端は、低温往ヘッダ41に接続されている。低温冷水還管32の他端は、中温往ヘッダ21に接続されている。低温冷水還管32には、低温冷水CLを圧送する低温冷水ポンプ33が挿入配置されている。低温冷凍機30まわりの構成は、省エネルギーの観点から、低温往ヘッダ41に流入する低温往冷水CLSの流量を変えることができるようになっていることが好ましい。例えば、低温冷水ポンプ33にインバータを設けて吐出流量(ひいては低温冷凍機30を通過する冷水Cの流量)を可変にしてもよく(この場合、典型的には低温冷凍機30をいわゆる変流量対応型とする。)、あるいは低温冷凍機30を複数台に分割して(換言すれば複数の低温冷凍機30を並列に配置した低温冷凍機群を構成して)それぞれに低温冷水往管31及び低温冷水ポンプ33が配設された低温冷水還管32を設けて台数制御を行うようにしてもよく(この場合、典型的には低温冷凍機30をいわゆる定流量型とする。)、あるいはこれらを組み合わせてもよい。本実施の形態では、便宜上、低温冷水ポンプ33をインバータ制御することにより低温往ヘッダ41に流入する低温往冷水CLSの流量を可変にすることとして説明する。
【0031】
低温往ヘッダ41には、外調機91に向けて低温冷水CLを導出する低温供給管43が接続されている。低温供給管43の他端と外調機91とは、外調機91に低温冷水CLを圧送する低温2次ポンプ92が配設された配管93で接続されている。低温2次ポンプ92は、インバータを有していて冷水Cの吐出流量を変えることができるように及び/又は複数台に分割されて台数制御を行うことにより全体として冷水Cの吐出流量を変えることができるように構成されていてもよい。配管93には、内部を流れる冷水Cの温度を検出する低温往温度計98が配設されている。外調機91には、冷熱を利用して温度が上昇した低温冷水CLを導出する配管94も接続されている。配管94の他端は、大温度差熱媒体戻り管としての低温戻り管44に接続されている。低温戻り管44の他端は、中温連通管25に接続されている。このように、中温連通管25は、中温往ヘッダ21と中温還ヘッダ22とを連通する機能を有するほか、低温戻り管44からの冷水Cを受け入れる機能を有する部材である。このような趣旨に鑑みて、例えば、低温戻り管44がいわゆるヘッダの外観を呈した部材に接続されている場合には、そのヘッダの外観を呈した部材の少なくとも低温戻り管44が接続されている部分までは、中温連通管25の概念に含まれることとする。低温戻り管44には、内部を流れる冷水Cの温度を検出する低温還温度計38及び流量を検出する低温流量計39が配設されている。中温連通管25には、低温戻り管44の接続部と中温還ヘッダ22との間に、連通流量計29が配設されている。連通流量計29は、低温戻り管44の接続部と中温往ヘッダ21との間の中温連通管25に配設されていてもよい。あるいは、低温戻り管44の接続部と中温還ヘッダ22との間及び低温戻り管44の接続部と中温往ヘッダ21との間の双方に配設されていてもよく、この場合は低温流量計39を設けるには及ばない。中温往ヘッダ21と低温往ヘッダ41とは、低温冷凍機30を介さずに両ヘッダ21、41を連通する低温バイパス管26で接続されている。
【0032】
中温往ヘッダ21に接続される各配管は、本実施の形態では、中温往ヘッダ21の長手方向に沿って、中温連通管25、低温冷水還管32、中温冷水往管11、中温供給管23の順に接続されているが、中温連通管25と低温冷水還管32とが隣接しており、中温冷水往管11と中温供給管23とが隣接していれば、この接続順に限られない。また、本実施の形態では、低温バイパス管26が、低温冷水還管32との接続部よりも中温連通管25側で中温往ヘッダ21に接続されているが、中温冷水往管11及び中温供給管23の双方よりも低温冷水還管32に近い位置で接続されていればよい。このような態様で各配管が中温往ヘッダ21に接続されていることで、中温冷凍機10及びドライコイル81の系統と低温冷凍機30及び外調機91の系統とが独立(分離)して構成されずに統合されていても、中温連通管25及び低温バイパス管26から中温往ヘッダ21へ流入する低温冷水CLが中温供給管23に流入することを防ぐことができ、ドライコイル81へ送水される冷水Cを適正な温度に維持することが可能になる。また、冷水Cの全体的な流れ方向から見て上流から下流に向かって、中温冷凍機10、中温往ヘッダ21、低温冷凍機30の順に直列に接続され、ドライコイル81に供給される冷水Cが中温往ヘッダ21から取り出される構成になっているために、低温度の冷水Cがドライコイル81に誤って導入される可能性をより低減することができる。なお、本実施の形態では、中温還ヘッダ22に接続される各配管は、中温還ヘッダ22の長手方向に沿って、中温連通管25、中温戻り管24、中温冷水還管12の順に接続されているが、この接続順に限られない。
【0033】
中温冷凍機10、中温往ヘッダ21、低温冷凍機30の順に直列に接続された熱源システム1では、中温冷凍機10及び低温冷凍機30の定格出力(定格冷凍能力又は定格冷凍容量ともいう)を複数のバリエーションから決定することが可能である。例えば、ドライコイル81の最大空気負荷の合計が800kWに相当する単位時間当たりの熱量であり、外調機91の最大空気負荷の合計が1200kWに相当する単位時間当たりの熱量である場合、中温冷凍機10及びドライコイル81の系統と低温冷凍機30及び外調機91の系統とが独立(分離)して構成されていると中温冷凍機10の定格冷凍容量を800kWとして低温冷凍機30の定格冷凍容量を1200kWとせざるを得ないが、ドライコイル81系統と外調機91系統とが統合された熱源システム1では、中温冷凍機10の定格冷凍容量がドライコイル81の最大空気負荷に相当する冷凍能力(ここでの例では800kW)以上、かつ、中温冷凍機10及び低温冷凍機30の合計定格冷凍容量が2000kWになるようにすれば、その按分は複数のバリエーションから決定することができる。
【0034】
ここで図2をも参照すると、図2には上記の条件における中温冷凍機10及び低温冷凍機30の定格出力(定格冷凍容量)の按分の例を示している。例1では、中温冷凍機10の定格出力をドライコイル81の空気負荷に合わせ、低温冷凍機30の定格出力を外調機91の空気負荷に合わせている。これを、例2のように中温冷凍機10及び低温冷凍機30の定格出力を共に1000kWとしてもよく、例3のように中温冷凍機10の定格出力を低温冷凍機30の定格出力よりも大きくしてもよい。あるいは、例4及び例5に示すように、中温冷凍機10及び/又は低温冷凍機30を複数台に分割して、中温冷凍機10の定格出力が800kW以上、かつ、中温冷凍機10及び低温冷凍機30の合計定格出力が2000kWになるように適宜各冷凍機10、30の定格出力の按分を決定してもよい。このように、中温冷凍機10及び低温冷凍機30の定格出力の按分の様々なバリエーションの中から、各冷凍機10、30まわりのイニシャルコストやランニングコストを勘案して経済的な組み合わせを決定することができる(経済設計)。
【0035】
中温冷凍機10及び低温冷凍機30の運転時の出力(各冷凍機10、30で製造される冷水Cの利用可能な冷熱量)は、制御装置60からの信号を受信して調節されるように構成されている。制御装置60は、熱源システム1の運転を制御する機器であり、中温冷凍機10及び低温冷凍機30の運転制御や温度設定のほか、中温冷水ポンプ13及び低温冷水ポンプ33に信号を送信してそれぞれの回転速度(ひいては吐出流量)を調節することができるように構成されている。また、制御装置60は、中温還温度計18、低温還温度計38、中温往温度計88、低温往温度計98から温度信号を受信し、中温流量計19、連通流量計29、低温流量計39から流量信号を受信して、両冷凍機10、30及び両ポンプ13、33の制御に反映させることができるように構成されている。例えば、中温還温度計18及び中温往温度計88並びに中温流量計19の計測値から、ドライコイル81の運転負荷を算出し、低温還温度計38及び低温往温度計98並びに低温流量計39の計測値から外調機91の運転負荷を算出して、中温冷凍機10及び低温冷凍機30における冷水負荷を、外調機91の空気負荷を両冷凍機10、30で受け持つ按分率を勘案して設定し、この設定に基づいて中温冷凍機10及び低温冷凍機30で製造される冷水Cの流量や温度あるいは連通流量計29を通過する冷水Cの流量を算出する。この算出された、中温冷凍機10及び低温冷凍機30で製造される冷水Cの流量や温度となるように中温冷凍機10及び低温冷凍機30の運転制御を行うほか、連通流量計29を通過する冷水Cの流量が算出された値となるように中温冷水ポンプ13の回転速度を調節する。また、制御装置60は、中温2次ポンプ82及び低温2次ポンプ92の変流量制御や中温冷凍機10及び低温冷凍機30のそれぞれの冷却水ポンプ(不図示)の変流量制御等、その他熱源運転制御システムを兼用して構成してもよい。
【0036】
引き続き図1を参照して、熱源システム1の作用を説明する。以下の説明では、中温冷凍機10、中温冷水ポンプ13、中温2次ポンプ82、低温冷凍機30、低温冷水ポンプ33、低温2次ポンプ92が変流量仕様であり、各ポンプ13、33、82、92の変流量の方法がインバータ制御であることとする。また、中温冷凍機10の定格出力とドライコイル81の最大空気負荷、及び低温冷凍機30の定格出力と外調機91の最大空気負荷とがそれぞれ同じ熱量であることとする。まず、基本的な運転状況として、ドライコイル81に供給される冷水Cの流量に見合った中温往冷水CMSが中温冷凍機10で製造され、外調機91に供給される冷水Cの流量に見合った低温往冷水CLSが低温冷凍機30で製造される場合を説明する。この場合、中温冷凍機10では中温度(本実施の形態では例えば13℃)の中温往冷水CMSが製造され、低温冷凍機30では低温度(本実施の形態では例えば7℃)の低温往冷水CLSが製造される。ドライコイル81及び外調機91を流れる冷水Cは、処理する空気負荷の変動に応じて流量が制御される変流量とされる。また、中温往ヘッダ21に流入する中温往冷水CMSの流量とドライコイル81に流入する冷水Cの流量とが等しくなるように中温冷水ポンプ13の回転速度が調節される。また、低温往ヘッダ41に流入する低温往冷水CLSの流量と外調機91に流入する冷水Cの流量とが好ましくは等しくなるように、少なくとも低温往ヘッダ41に流入する低温往冷水CLSの流量が外調機91に流入する冷水Cの流量よりも多くなるように低温冷水ポンプ33の回転速度が調節される。低温往ヘッダ41に流入する低温往冷水CLSの流量が外調機91に流入する冷水Cの流量よりも多くなる場合、余剰分は低温バイパス管26を介して低温冷水還管32に導かれる。
【0037】
上述のように中温冷水ポンプ13及び低温冷水ポンプ33の回転速度が調節されると、中温冷凍機10で製造された中温度の中温往冷水CMSは、中温冷水往管11から中温往ヘッダ21を介して中温供給管23に流入し、中温2次ポンプ82で昇圧されて配管83を介してドライコイル81に流入する。ドライコイル81に流入した中温往冷水CMSは、被処理空気(不図示)の顕熱を奪って温度が上昇した後に(本実施の形態では例えば18℃になる)、配管84、中温戻り管24、中温還ヘッダ22、中温冷水還管12を介して中温還冷水CMRとして中温冷凍機10に流入する。中温冷凍機10に流入した中温還冷水CMRは、冷却されて中温度の中温往冷水CMSとなって再び中温冷凍機10から導出される。
【0038】
他方、低温冷凍機30で製造された低温度の低温往冷水CLSは、低温冷水往管31から低温往ヘッダ41を介して低温供給管43に流入し、低温2次ポンプ92で昇圧されて配管93を介して外調機91に流入する。外調機91に流入した低温往冷水CLSは、被処理空気(不図示)の全熱を奪って温度が上昇した後に(本実施の形態では例えば17℃になる)、配管94、低温戻り管44を介して中温連通管25に流入する。中温連通管25に流入した低温冷水CLは、流量配分の関係から、全量が中温往ヘッダ21に向かって流れ、中温往ヘッダ21及び低温冷水還管32を介して低温還冷水CLRとして低温冷凍機30に流入する。低温冷凍機30に流入した低温還冷水CLRは、冷却されて低温度の低温往冷水CLSとなって再び低温冷凍機30から導出される。
【0039】
このように、熱源システム1は、中温往ヘッダ21に流入する中温往冷水CMSの流量とドライコイル81に流入する冷水Cの流量とが等しくなるように、また、好適には低温往ヘッダ41に流入する低温往冷水CLSの流量と外調機91に流入する冷水Cの流量とが等しくなるように、中温冷水ポンプ13及び低温冷水ポンプ33の回転速度を調節することで、ドライコイル81に供給する中温冷水CMの系統と、外調機91に供給する低温冷水CLの系統とを、配管で接続して統合していながら分離して構成されたように運転することができる。このような運転をベースとして、熱源システム1は、各冷凍機10、30の運転を最適化(例えば、最も消費エネルギーが小さくなる(COPが高くなる)、あるいは最も運転費が安くなる等の観点から見たときの最適な運転容量(処理冷水負荷)の配分)するべく、以下のように運転することが可能である。
【0040】
例えば、ドライコイル81及び外調機91のそれぞれの空気負荷が定格(100%)よりも小さく、中温冷凍機10及び低温冷凍機30が定格よりも小さい冷水負荷で運転している場合に、中温冷水ポンプ13の回転速度を上げることによって中温冷凍機10で冷却する中温冷水CMの流量を増加する。すると、ドライコイル81に供給する中温冷水CMの系統は上述の基本的な運転状況のように流れる一方で、中温冷凍機10で製造された中温往冷水CMSの増加分(中温冷凍機10で製造された中温往冷水CMSの流量から中温供給管23に流入する中温往冷水CMSの流量を差し引いた流量分)が、低温冷水還管32に向かって流れる。他方、外調機91に供給する低温冷水CLの系統は、低温戻り管44から中温連通管25に流入した低温冷水CLの一部が中温還ヘッダ22に向かって流れるようになる。中温連通管25から中温還ヘッダ22に流入した低温冷水CLは、中温戻り管24から中温還ヘッダ22に流入した中温冷水CMと混合して中温還冷水CMRとして中温冷凍機10に流入し、中温度の中温往冷水CMSとなる。そして、中温冷凍機10で製造されて中温冷水往管11から中温往ヘッダ21に流入した中温往冷水CMSは、ドライコイル81に供給される分以外の余剰分が、中温連通管25から流入した低温冷水CLと混合して、低温還冷水CLRとして低温冷凍機30に流入する。このとき中温往ヘッダ21で混合される中温往冷水CMS(本実施の形態では13℃)は、中温連通管25から流入してきた低温冷水CL(本実施の形態では17℃)よりも温度が低い。このため、低温冷水還管32を流れる低温還冷水CLRは、全量が中温連通管25から流れてきた場合に比べて温度が低くなり、低温冷凍機30が処理すべき冷水負荷が軽減される。このような運転とすることで、仮にドライコイル81に供給する中温冷水CMの系統と外調機91に供給する低温冷水CLの系統とが分離していてそれぞれ独立して最適化運転をした結果、中温冷凍機10及び低温冷凍機30のそれぞれが定格よりも小さい冷水負荷で運転するような状況の場合に、低温冷凍機30で処理すべき冷水負荷の一部を中温冷凍機10に配分することで、熱源システム1全体の運転効率を上げることが可能となる。例えば、中間期など冷却水の温度を低温にして運転した場合に運転COPが顕著に高いインバータ式ターボ冷凍機を中温冷凍機10として採用している場合は、より省エネルギーとなる。熱源システム1は、上述のように中温冷水ポンプ13の流量を変えることによって、低温戻り管44から中温連通管25に流入した低温冷水CLの、中温往ヘッダ21に向かう流量と中温還ヘッダ22に向かう流量との按分を変えることができるように、各配管のサイズや各ポンプの揚程が設計されている。なお、このような制御は、中温冷凍機10及び低温冷凍機30の定格冷凍能力が、全負荷運転時に外調機91で処理される空気負荷の一部を中温冷凍機10が負担するように決定されている場合(例えば図2の例2、3、5のような関係の場合)でも、同様に適用することができる。つまり、全負荷運転時にも低温戻り管44から中温連通管25に流入した冷水Cが中温往ヘッダ21に向かう流れと中温還ヘッダ22に向かう流れとに分配されつつ、部分負荷運転時にはそれぞれのヘッダ21、22に向かう冷水Cの流量配分が変わるような制御とすることもできる。
【0041】
加えて、制御装置60が、外調機91で処理される空気負荷に対して中温冷凍機10で冷却された中温往冷水CMSが保有する冷熱量で充当される分と低温冷凍機30で冷却された低温往冷水CMSが保有する冷熱量で充当される分との配分の複数のパターン(例えば、中間期に中温冷凍機10を優先的に運転するパターンや低温冷凍機30の運転負荷率をなるべく高めに維持するパターン等)が所定の外部条件に応じてあらかじめ複数のモードとして所定の選定条件ごとに記憶されており、この複数のモードから所定の選定条件に照らして採用するモードを選定し、選定されたモードに従って中温冷凍機10及び低温冷凍機30を運転させるように構成されていてもよい。所定の外部条件としては、季節、外気条件、運転時刻、冷凍機冷水負荷等が挙げられ、所定の選定条件としては、省エネ性、低ランニングコスト性、低CO排出量性等が挙げられる。このように構成すると、所定の外部条件と運転モードとの組み合わせの対照表や判定図等が所定の選定条件ごとにあらかじめ記憶されていて、記憶された複数のモードから中温冷凍機10及び低温冷凍機30を運転させるモードを選定することができ、比較的簡易な構成で熱源システム1の適切な運転を行うことができる。このとき、制御装置60が、上記複数のモードのそれぞれについて上述の所定の選定条件に照らした指標となる値を演算する演算部としての運転シミュレータ(不図示)を有し、運転シミュレータ(不図示)における演算により得られた指標値を比較して上述の所定の選定条件に最も適合するモードを選定するように構成されていてもよい。このように構成すると、所定の選定条件に適合する精度を高めることができ、より適切な運転を行うことができる。また、制御装置60は、選択されたモードによる運転における上述の所定の選定条件の適合の度合いを検出し、検出された適合の度合いをデータ化して蓄積するデータベース(不図示)を有していてもよい。このように構成すると、実際の運転における所定の選定条件の適合度合いをデータベース化して蓄積することができ、より高精度な制御を行うためにフィードバックすることができる。なお、データベース(不図示)は制御装置60と一体に構成されていてもよく、分離して構成されていてもよい。このほか、制御装置60は、運転シミュレータ(不図示)により中温冷凍機10と低温冷凍機30との冷水負荷配分の最適な値を直接探索し、探索結果を最適化制御の目標値として採用するように構成されていてもよい。この場合、最適値の探索は、局所探索と全体探索とを組み合わせて実行してもよい。例えば、現設定値に対して所定の増減値と現状値との比較を局所探索として実施し、局所探索による結果を最適化制御の設定目標値として採用しつつ、併せて、局所探索では探索範囲とはならない範囲の仮想設定値を適宜ピックアップする全体探索を実施して、定周期的に局所探索による結果と比較して仮想設定値に局所最適化の傾向があれば現設定値の自動又は手動による更新を行い、この更新した値について改めて局所探索を行うような制御である。このようにすると、熱源システム1に対して多変数を扱う最適化運転の制御について、最適化精度の向上、運転制御の安定性、並びにシステム構築及び実運転での制御の簡素化を確保することができる。このほか、制御装置60は、各冷凍機10、30の冷水温度や冷却水量の設定についても運転モードの選定や最適値の探索を行ってもよい。
【0042】
次に図3を参照して、本発明の第2の実施の形態に係る熱源システム2を説明する。図3は、熱源システム2の模式的系統図である。熱源システム2の、熱源システム1(図1参照)と異なる点は、中温冷凍機10又は低温冷凍機30が故障した際のバックアップ機となるバックアップ冷凍機(バックアップ熱源機)としての補助冷凍機50を備えている点である。すなわち、熱源システム2の構成は、熱源システム1(図1参照)の構成に加えてさらに、補助冷凍機50及びこれに付帯するものを備えている。
【0043】
補助冷凍機50は、中温冷凍機10及び低温冷凍機30と同様の水冷式あるいは空冷式の熱源装置であって典型的には、ターボ冷凍機、吸収式冷凍機、チリングユニット等が用いられる。補助冷凍機50は、不図示の冷媒が冷凍サイクルを行い(蒸発と凝縮を交互に行う)、冷媒が蒸発する際に、補助冷凍機50内を通過する冷水Cから熱を奪う(冷却する)ことで冷水Cを冷却する機器である。補助冷凍機50は、制御装置60から受信した制御信号に応じて、製造後の冷水C(冷却された冷水C)の温度の設定を適宜変えることができるように構成されており、設定温度に応じて中温度の冷水C又は低温度の冷水Cを製造することができるように構成されている。
【0044】
補助冷凍機50には、冷却した冷水Cを導出するバックアップ導出管としての補助冷水往管51と、冷却しようとする冷水Cを導入するバックアップ導入管としての補助冷水還管52とが接続されている。補助冷水往管51の他端は、本実施の形態では、中温往ヘッダ21に、中温冷水往管11の接続位置と低温冷水還管32の接続位置との間で接続されている。補助冷水還管52の他端は、本実施の形態では、中温還ヘッダ22に、中温戻り管24の接続位置と中温連通管25の接続位置との間で接続されている。補助冷水還管52には、冷水Cを圧送する補助冷水ポンプ53が挿入配置されている。補助冷水ポンプ53は、インバータを設けて吐出流量を可変にすることができるように構成されていてもよい。低温バイパス管26の中温往ヘッダ21への接続位置は、本実施の形態では、低温冷水還管32に対して補助冷水往管51の接続位置の反対側となっている(換言すれば補助冷水往管51と低温バイパス管26との間で低温冷水還管32が中温往ヘッダ21に接続されている。)が、中温冷水往管11との接続部よりも低温冷水還管32側に位置していればよい。熱源システム2では、低温バイパス管26は、定常運転時に低温往ヘッダ41に流入する冷水Cの流量と外調機91に流入する冷水Cの流量との差を吸収する機能を有するほか、低温冷凍機30の故障時には補助冷凍機50で製造された冷水Cを外調機91側に送るバイパス管として機能する。
【0045】
上述のように構成された熱源システム2は、例えば中温冷凍機10が故障した場合は、中温冷水ポンプ13を停止して補助冷水ポンプ53を起動すると共に、設定温度を中温度として補助冷凍機50を起動する。このようにすることで、補助冷凍機50を中温冷凍機10の代替機器として、熱源システム1(図1参照)の作用として説明した運転を行うことが可能になる。また、低温冷凍機30が故障した場合は、低温冷水ポンプ33を停止して補助冷水ポンプ53を起動すると共に、設定温度を低温度として補助冷凍機50を起動する。このようにすることで、補助冷凍機50を低温冷凍機30の代替機器として運転を行うことができる。熱源システム2は、中温冷凍機10及びドライコイル81の系統と低温冷凍機30及び外調機91の系統とが独立して構成されているシステムに対して共通のバックアップ機を設ける場合(図6に破線で例示している)に比べて流路を切り替える制御弁や配管等の構成が少なくて済み、より簡易な構成で冷凍機故障時のバックアップを行うことができる。なお、補助冷凍機50は、バックアップ専用として設けるほかに、中温冷凍機10を並列に複数台設置した場合の一部(典型的には1台)を充当することとしてもよい。この場合、典型的には最も低温冷水還管32の近くで中温往ヘッダ21に接続された中温冷水往管11に冷水Cを導出する中温冷凍機10が補助冷凍機50として機能すると共に、この補助冷凍機50兼中温冷凍機10は、非常時以外は中温冷凍機10として定常運転に供される。
【0046】
以上の説明では、説明の便宜のために、主として中温冷凍機10及び低温冷凍機30がそれぞれ1台で構成されているとしたが、上述の説明で言及したように、それぞれ複数台が並列又は直列に配列されて構成されていてもよい。この場合、典型的には、並列に接続された冷凍機まわりのそれぞれに、冷水往管と、冷水ポンプが配設された冷水還管とが設置されることとなる。なお、冷凍機が直列に配置されている場合は、直列に配置された冷凍機全体を、1台の冷凍機と考えるとよい。
【0047】
以上の説明では、熱源システム1、2が、精密空調を行う負荷側機器81、91に供給する冷水Cを製造することとして説明したが、例えば対流式の空調を行うための空調用機器(例えばエアハンドリングユニットやファンコイルユニット等)よりも高い温度の冷水を導入すれば足りる輻射冷房用の機器に供給する中温冷水CMと、エアハンドリングユニット等の空調用機器に供給する低温冷水CLとを製造することとしてもよい。つまり、熱源システム1、2を適用することができるのは、負荷側機器が精密空調を行う機器である場合に限られない。
【0048】
次に図4を参照して、本発明の第3の実施の形態に係る熱源システム3を説明する。図4は、熱源システム3の模式的系統図である。熱源システム3は、流動する熱媒体が、状況に応じて冷水及び/又は温水となるように構成されている。熱源システム3の、熱源システム1(図1参照)と異なる点は、小温度差熱源機が小温度差冷温水機310で構成され、大温度差熱源機が大温度差冷温水機330で構成されている点、小温度差往集合部21と小温度差還集合部22とを小温度差冷温水機310を介さずに連通する小温度差バイパス管328が設けられている点、小温度差連通管25に熱媒体の流通を遮断する開閉弁としての小温度差連通遮断弁325vが設けられている点である。以下、熱源システム3から供給された熱媒体の熱を利用する機器について、第1の負荷側機器が放射パネル381であり、第2の負荷側機器が空調機(エアハンドリングユニット)391であるとして説明する。また、熱源システム3を流動する熱媒体に関し、以下の説明では「CH」で始まる符号を付することとする。熱源システム3の、上記以外の構成は、熱源システム1(図1参照)と同様である。以下に、熱源システム3に特有の構成について説明を加える。なお、以下の熱源システム3の説明において、熱源システム1(図1参照)で用いたのと同じ参照符号でありながら異なる呼称を用いているのは、熱源システム1(図1参照)が冷熱の扱いに特化したシステムであるのに対し、熱源システム3が冷熱及び温熱の双方を取り扱い対象にしていることを考慮したものであり、同じ参照符号の機器及び配管類についての物理的な構成は熱源システム1(図1参照)と同様である。
【0049】
小温度差冷温水機310及び大温度差冷温水機330は、状況に応じて冷水又は温水を製造することができる機器、換言すれば冷水及び温水の両方を製造することが可能な機器であり、冷温水発生機やヒートポンプチラー等が用いられる。本実施の形態では、小温度差冷温水機310で温度が調節される熱媒体CHを小温度差熱媒体CHMといい、大温度差冷温水機330で温度が調節される熱媒体CHを大温度差熱媒体CHLという。小温度差冷温水機310は、小温度差熱媒体CHMを専ら所定の中温度に温度調節する機器であるが、好ましくは温度の設定を適宜変えることができるように構成され、さらに低温度(冷却時)及び/又は高温度(加熱時)にすることができる能力を有していることが好ましい。大温度差冷温水機330は、大温度差熱媒体CHLを専ら低温度(冷却時)又は高温度(加熱時)に温度調節する機器であるが、温度の設定を適宜変えることができるように構成されていると熱源システム3の省エネルギーを図ることができるため好ましい。ここで「中温度」は、基準温度との差が第1の所定の値である温度である。「低温度」及び「高温度」は、基準温度との差が第2の所定の値である温度である。第2の所定の値は第1の所定の値よりも大きい。また「基準温度」とは、中温度との差よりも、低温度(冷却時)及び高温度(加熱時)との差の方が大きくなる任意の温度であり、例えば中間期の外気温あるいは20℃等とすることができる。
【0050】
小温度差バイパス管328は、小温度差連通管25とは別体の管であり、主に小温度差冷温水機310で冷水が製造され、大温度差冷温水機330で温水が製造される場合に用いられる管である。小温度差バイパス管328は、小温度差連通管25及び大温度差導入管32よりも、小温度差導出管11及び小温度差供給管23に近い位置で小温度差往集合部21に接続され、小温度差連通管25よりも小温度差導入管12に近い位置で小温度差還集合部22に接続されている。換言すれば、小温度差往集合部21では、小温度差バイパス管328の接続部と小温度差導出管11の接続部との間に、小温度差連通管25、大温度差バイパス管26、及び大温度差導入管32の接続部が介在せず、小温度差還集合部22では、小温度差バイパス管328の接続部と小温度差導入管12の接続部との間に、小温度差連通管25の接続部が介在しないように構成されている。小温度差バイパス管328には、熱媒体CHMの流通を遮断する小温度差バイパス遮断弁328vが設けられている。小温度差バイパス遮断弁328vは、制御装置60と信号ケーブルで接続されており、制御装置60からの信号を受信して開閉動作をすることができるように構成されている。
【0051】
小温度差連通遮断弁325vは、大温度差熱媒体戻り管44から小温度差連通管25に流入した熱媒体CHLの、小温度差還集合部22への流入を遮断することを可能にする弁であり、大温度差熱媒体戻り管44の接続部と小温度差還集合部22との間に設けられている。小温度差連通遮断弁325vは、制御装置60と信号ケーブルで接続されており、制御装置60からの信号を受信して開閉動作をすることができるように構成されている。
【0052】
上述のように構成された熱源システム3は、小温度差冷温水機310及び大温度差冷温水機330共に冷却運転を行う場合は、制御装置60によって小温度差連通遮断弁325vが開にされ、小温度差バイパス遮断弁328vが閉にされて、上述の熱源システム1(図1参照)と同様の運転が行われる。
【0053】
熱源システム3の小温度差冷温水機310及び大温度差冷温水機330が共に加熱運転を行う場合も、制御装置60によって小温度差連通遮断弁325vが開にされ、小温度差バイパス遮断弁328vが閉にされる。そして、小温度差熱媒体CHMが小温度差冷温水機310で中温度の温水とされ、大温度差熱媒体CHLが大温度差冷温水機330で高温度の温水とされることとなり、温度差を取る方向が冷却時と異なるものの、熱媒体(温水)CHの流れや流量配分等は冷却時と同様である。加熱時の温度条件の一例を示すと、小温度差熱媒体CHMは、小温度差冷温水機310で35℃に加熱され、放射パネル381で放熱して30℃に温度が低下した後に、再び小温度差冷温水機310に導入されて加熱される。他方、大温度差熱媒体CHLは、大温度差冷温水機330で40℃に加熱され、空調機391で被処理空気(不図示)と熱交換して30℃に温度が低下した後に小温度差連通管25に流入し、小温度差往集合部21に導入され、あるいは小温度差往集合部21及び小温度差還集合部22に適宜分配される。
【0054】
また、熱源システム3は、小温度差冷温水機310で冷却運転を行い、大温度差冷温水機330で加熱運転を行うこともできる。このような運転が行われるのは、例えばOA機器等の発熱のある機器が室内に多数設置されている近年のオフィスビル等で冬季にも冷却負荷がある場合などが挙げられる。さらに補足すれば、例えば所定の絶対湿度にすることができる温度まで空調機391の系統で外気を加熱し、放射パネル381の系統で冷房が必要なオフィス室内の冷却を行う場合にこのような運転が行われることがある。このような冷/暖同時運転が行われる場合、熱源システム3は、制御装置60によって小温度差連通遮断弁325vが閉にされ、小温度差バイパス遮断弁328vが開にされる。小温度差連通遮断弁325vが閉にされることにより、大温度差熱媒体戻り管44から小温度差連通管25に流入した大温度差熱媒体CHLが、小温度差還集合部22に流入せずにすべて小温度差往集合部21に流入することとなる。また、小温度差バイパス遮断弁328vが開にされることにより、小温度差熱媒体CHMについて、小温度差往集合部21に流入する流量が放射パネル381(第1の負荷側機器)に流入する流量よりも多くなる場合に、余剰分が小温度差バイパス管328を介して小温度差還集合部22に導かれることとなる。そして、このような冷/暖同時運転が行われる場合、小温度差熱媒体CHMは小温度差冷温水機310と第1の負荷側機器381との間を循環し、大温度差熱媒体CHLは大温度差冷温水機330と第2の負荷側機器391との間を循環することとなる。つまり、小温度差の系統と大温度差の系統とが独立して運転されることとなる。このように、冷/暖同時運転が行われる場合は小温度差の系統と大温度差の系統との各々で最適な運転を行うことができるに留まる。しかしながら、熱源システム3は、冷却運転又は加熱運転を行う場合は熱源システム1(図1参照)のように最適運転のバリエーションが増加する統合運転を可能にしながら、冷/暖同時運転をも可能にした、用途が拡大したシステムである。
【0055】
なお、図5に示すように、冷/暖同時運転を行う可能性がある熱源システム3を構築する場合は、小温度差の系統と大温度差の系統とのそれぞれの独立運転をより確実とするため、換言すれば小温度差熱媒体CHMの大温度差系統への侵入及び大温度差熱媒体CHLの小温度差系統への侵入を抑制するために、小温度差往集合部21に邪魔板21bを設けるとよい。邪魔板21bは、小温度差導出管11と小温度差供給管23と小温度差バイパス管328(図4参照)とが接続された部分と、大温度差導入管32と小温度差連通管25と大温度差バイパス管26(図4参照)とが接続された部分とを部分的に遮断するように、小温度差往集合部21内に設けられる。なお、邪魔板21bは、常設の板状部材とするほか、開閉可能な弁として冷/暖同時運転時には一部又は全部を閉とし、冷却運転又は加熱運転時は全開にすることしてもよい。
【0056】
以上の熱源システム3の説明では、小温度差熱源機及び大温度差熱源機が、状況に応じて冷水又は温水を製造することができる機器であるとしたが、加熱運転のみを行うシステムとする場合は、温水だけを製造することができる機器としてもよい。また、小温度差連通遮断弁325v及び小温度差バイパス遮断弁328vが、自動弁であるとして説明したが、手動弁であってもよい。
【0057】
また、熱源システム3についても、熱源システム2(図3参照)に倣ってバックアップ熱源機を同様に設けることができることはいうまでもない。この場合、バックアップ熱源機は、小温度差熱源機及び大温度差熱源機と同様の熱源機であることが好ましい。つまり、小温度差熱源機及び大温度差熱源機が冷水及び温水の両方が製造可能な冷温水発生機等である場合は、バックアップ熱源機も冷温水発生機等とすることが好ましく、小温度差熱源機及び大温度差熱源機が冷凍機の場合はバックアップ熱源機も冷凍機で足り、小温度差熱源機及び大温度差熱源機が加熱熱源機である場合はバックアップ熱源機も加熱熱源機で足りる。
【符号の説明】
【0058】
1、2、3 熱源システム
10 中温冷凍機(小温度差熱源機)
11 中温冷水往管(小温度差導出管)
12 中温冷水還管(小温度差導入管)
21 中温往ヘッダ(小温度差往集合部)
22 中温還ヘッダ(小温度差還集合部)
23 中温供給管(小温度差供給管)
25 中温連通管(小温度差連通管)
30 低温冷凍機(大温度差熱源機)
32 低温冷水還管(大温度差導入管)
44 低温戻り管(大温度差熱媒体戻り管)
50 補助冷凍機(バックアップ熱源機)
51 補助冷水往管(バックアップ導出管)
52 補助冷水還管(バックアップ導入管)
81 ドライコイル(第1の負荷側機器)
91 外調機(第2の負荷側機器)
325v 小温度差連通遮断弁(開閉弁)
C 冷水
CLS 低温往冷水(大温度差熱媒体)
CMS 中温往冷水(小温度差熱媒体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準温度との差が第1の所定の値となるように熱媒体の温度を調節可能な小温度差熱源機と;
前記小温度差熱源機で温度調節された熱媒体である小温度差熱媒体を、熱負荷を処理する第1の負荷側機器に供給する前に通過させる小温度差往集合部と;
前記第1の負荷側機器で熱が利用された前記小温度差熱媒体を、前記小温度差熱源機に還す前に集める小温度差還集合部と;
前記小温度差還集合部内の熱媒体を前記小温度差熱源機に導く小温度差導入管と;
前記小温度差往集合部と前記小温度差還集合部とを、前記小温度差熱源機を介さずに連通する小温度差連通管と;
前記基準温度との差が前記第1の所定の値よりも大きい第2の所定の値となるように熱媒体の温度を調節可能な大温度差熱源機と;
前記大温度差熱源機で温度調節された熱媒体である大温度差熱媒体の熱を利用して熱負荷を処理する前記第1の負荷側機器とは異なる第2の負荷側機器から導出された前記大温度差熱媒体を、前記小温度差連通管に流入させる大温度差熱媒体戻り管と;
前記小温度差往集合部内の熱媒体を前記大温度差熱源機に導く大温度差導入管とを備える;
熱源システム。
【請求項2】
前記小温度差熱源機が、生成する前記小温度差熱媒体の温度の設定を変えることができるように構成された;
請求項1に記載の熱源システム。
【請求項3】
前記小温度差熱源機で生成された小温度差熱媒体を前記小温度差往集合部に導く小温度差導出管と;
前記小温度差往集合部から前記第1の負荷側機器に向けて供給される熱媒体を前記小温度差往集合部の外に導く小温度差供給管とを備え;
前記小温度差連通管及び前記大温度差導入管が隣接した状態、かつ、前記小温度差導出管及び前記小温度差供給管が隣接した状態で、前記小温度差往集合部に接続された;
請求項1又は請求項2に記載の熱源システム。
【請求項4】
前記基準温度との差が前記第1の所定の値となる熱媒体及び前記基準温度との差が前記第2の所定の値となる熱媒体を生成可能なバックアップ熱源機と;
前記小温度差還集合部内の熱媒体を前記バックアップ熱源機に導くバックアップ導入管と;
前記バックアップ熱源機で温度調節された熱媒体を、前記大温度差導入管の接続部と前記小温度差導出管の接続部との間で前記小温度差往集合部に流入させるバックアップ導出管とを備える;
請求項3に記載の熱源システム。
【請求項5】
前記第2の負荷側機器で処理される最大熱負荷の一部に相当する熱量が、前記小温度差熱源機で温度調節された前記小温度差熱媒体が保有する熱量で充当されるように、前記小温度差熱源機及び前記大温度差熱源機の定格能力が決定された;
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の熱源システム。
【請求項6】
前記大温度差熱媒体戻り管との接続部と、前記小温度差還集合部と、の間の前記小温度差連通管内の前記熱媒体の流通を遮断可能な開閉弁を備える;
請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の熱源システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−266183(P2010−266183A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−22278(P2010−22278)
【出願日】平成22年2月3日(2010.2.3)
【出願人】(000175803)三建設備工業株式会社 (38)
【Fターム(参考)】