説明

熱画像形成用受容要素のためのビグアニド漂白剤

本発明は、熱転写画像形成用の受容要素を提供する。この受容要素は、高分子バインダーおよびビグアニド漂白剤を含むコーティングを含む。ビグアニド漂白剤は、このビグアニド漂白剤と赤外線吸収性染料が接触した場合に、この赤外線吸収性染料を漂白することができる。特に好適なビグアニド漂白剤は1−(Iquest;−トリル)ビグアニドである。本発明は、さらに受容要素の製造に適した組成物及び方法を提供する。熱転写画像形成のための画像形成システムも本発明により提供される。この画像形成システムは、色担持要素および漂白要素を含み、この漂白要素は高分子バインダーおよびビグアニド漂白剤を含むコーティングを含む。本発明はまた、一体校正刷の作成に用いる方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤外線源を用いた熱転写画像形成に関する。
【背景技術】
【0002】
熱転写画像形成では画像は、一般的には、熱印刷ヘッドまたはレーザからのエネルギーの作用下でドナー要素から受容要素への色材(例えば染料または顔料)の転写により形成される。一般的に転写可能な色材を含有するコーティング層を有するシートであるドナー要素と、受容要素とは、互いに近接または接触している。赤外吸収剤が、ドナー要素および受容要素の一方または両方の中に存在する。最も一般的には、この赤外吸収剤は、ドナー要素中にのみ存在する。この集成体が、普通は走査型赤外レーザ源からの赤外線にパターン露光されると、その赤外線は赤外吸収剤により吸収され、それらの画像形成された領域でドナー要素から受容要素への色材の転写を引き起こす。この方法は、Patel他の米国特許第5,935,758号中で概説されており、この特許はその全体が参照により組み込まれる。
【0003】
本発明は、例えば色校正刷の作成に利用することができる。印刷前工程または簡易校正の色校正刷は、印刷工程により生成されることになる画像をシミュレートするためにプリンターによって使用される。簡易校正の色校正刷システムには、オーバーレイ校正刷システムと一体校正刷システムがある。
オーバーレイ校正刷システムでは印刷用の各色は、一般にオーバーレイとして知られている別々の透明なシートまたはフィルム上に分離されている。個々のオーバーレイを位置合わせして組み立て、オーバーレイ校正刷にする。これは適切な背景(例えば不透明な反射白色シート)に対する合成体として見られ、印刷画像の様子を予測する。
【0004】
一体校正刷(integral proof)ではすべての印刷の色が、一般的に一枚の媒材上に示される。一体校正刷を得る通常用いられる一つの方法は、「重ね刷り」技術によるものである。重ね刷り技術では上記転写工程が、異なるドナー要素(一般的に異なる色を表す)と、同一の受容要素とを用いて繰り返される。一般的に幾つかの単色画像を共通の受容要素上で位置合わせして重ね合わせ、それによって一枚のシート形式で多色画像を発生させる。重ね刷り技術により作成される校正刷はまた「オーバープリント」校正刷としても知られ、これら2つの用語は本明細書中では区別なく使用される。
【0005】
オーバーレイ校正刷および刷り重ね校正刷の両方とも、通常「プルーフ校正刷」として使用される。プルーフ校正刷は、印刷機による印刷物の制作の場合に、校正刷りした画像が印刷工程により再現されることを印刷業者が顧客に対して保証する役割を果たす。したがって印刷業者は、印刷機による印刷物で再現されるはずの画像を最も正確に予測することができる校正刷を持つことが望ましい。正確な校正刷に対する必要性は、カスタムカラーを印刷工程で使用する場合、特に重大である。
【0006】
本発明は、好適には重ね刷りによる校正刷を作成する方法において使用される。この重ね刷り工程は、理想的には熱転写画像形成手順によりディジタル方式で格納した情報を用いて画像を処理するのに適している。重ね刷り工程は、化学的処理を必要としないという、また周囲の白色光に感光する材料を使用しないという追加の利点を有する。この工程は、色分解情報が日常的に生成されて電子工学的に格納され、このようなデータを「乾式」媒材のディジタルアドレスを介してハードコピーに変えることができることが利点であると考えられるカラー製版業界には特に適している。
【0007】
熱転写画像形成では色材の転写は、物質移動または染料転写を介して行うことができる。物質移動システムではドナー要素上の材料の大部分(例えば色材、バインダー、および添加剤)が受容要素に転写される。典型的には、これは、溶融機構またはアブレート機構のいずれかにより行うことができる。溶融機構(または「溶融粘着」機構)では、ドナー要素材料を軟化または溶融させる。次いで、この軟化または溶融した材料が受容要素全体にわたって流れ、あるいは受容要素に接着する。これは、一般的には、熱で引き起こされる通常のワックス転写システムで働く機構である。アブレート機構では、一般的には、ドナー要素から受容要素全体にわたって材料を爆発的に進ませるガスを発生させる。例えばバインダーまたは他の成分が揮発または分解してガス状生成物になる結果としての圧力の急激な高まりが存在し、それがドナー要素から受容要素への色材の物理的な推進を引き起こすことができる。アブレート転写については、例えばEliis他の米国特許第5,171,650号、および国際公開第WO90/12342号中で報じられている。
【0008】
物質移動システムから形成される画像は、一般にはハーフトーン画像である。ハーフトーン画像を形成するシステムでは、転写は、ゼロか予め決められた濃度レベルのいずれかが不連続な網点(すなわち画素)の形態で転写される二段階構造の画像を与える。これらの網点は、単位面積当たりランダムまたは規則正しい間隔に配置することができるが、普通は小さ過ぎて肉眼で解像することができない。したがってハーフトーン画像における知覚光学濃度は、単位面積当たりの不連続網点の大きさと数によって制御される。網点によって覆われる単位面積の分率が小さいほど、観察者には画像がより淡く見えることになる。
【0009】
染料転写システムでは、色材のみがドナー要素から受容要素へ転写される。すなわち色材はバインダーまたは他の添加剤を伴わずに転写される。これは、拡散機構または昇華機構のいずれかによって行うことができる。この工程の例は、例えばDeBoerの米国特許第5,126,760号に開示されている。
【0010】
拡散または昇華転写は、転写される色材の量を入力エネルギーにより連続的に変えることを可能にする。したがって染料転写システムで形成される画像は、典型的には連続的な色調の画像、すなわち「連続調」画像である。連続調画像では知覚光学濃度は画素当たりの色材の量の関数であり、より高い濃さはより多量の色材を転写することによって得られる。
【0011】
一般的には、連続調画像を形成する染料転写システムを用いてハーフトーン画像に似せた機能を果たさせるためには、画像形成レーザ光線を元の画像の形状と色を表す電子信号によって変調させることができる。その結果、各染料は、元の物体の色を再現するために受容要素上でその存在が必要とされる領域でのみ揮発させるように加熱される。この工程の更なる詳細については英国特許出願第2083726号明細書中で報じられている。
【0012】
DeBoerの米国特許第4,876,235号および第5,017,547号はまた、知覚光学濃度を画素当たりの色材の色調の階調すなわち厚さ(濃度)の制御によって得る熱染料転写システムについて報じている。このシステムでは受容要素は、ドナー要素と受容要素の接触を防ぐためにスペーサビーズを含む。これは、バインダーなしに染料が受容要素の全体にわたって拡散または昇華することを可能にする。
【0013】
レーザで誘起される転写による画像形成の場合、ドナー要素は一般的に、レーザ放射の吸収剤、転写可能な色材(例えば1種または複数種の染料または顔料)、および1種または複数種のバインダー材料を含む(1または複数の層中に)コーティングを有する支持体を含む。ドナー要素を適切な受容要素に近接して配置し、或るパターンのレーザ照射にかけたとき、そのレーザ放射の吸収が、照射領域中の受容要素への色材の転写を引き起こすのに十分なドナー要素内での熱の急激な高まりを引き起こす。
【0014】
すべてのこれら画像形成法に共通の問題は、赤外線吸収剤の一部または全部が色材と共に転写される恐れがあることである。赤外線吸収性染料が画像形成中に受容要素に転写される場合、その染料がそのスペクトルの可視領域でわずかに吸収を起こすために、それは生成する色を肉眼で見えるように害する恐れがある。赤外線吸収剤が完全に無色ではない場合、最終画像が汚染され、真の色の再生ではなくなり、そのため高品質校正刷の目的には受け入れられない。
【0015】
感度に影響する恐れのある赤外線吸収剤を色材から離れた層中に配置することによって共転写をできるだけ少なくする試み、および可視吸収のできるだけ少ない赤外線吸収剤を見出す試みがなされてきた(例えば、欧州特許公開第0 157 568号明細書参照)。しかしながら実際にはほとんど常に若干の残留吸収が存在し、その技術の実用性を限定してきた。その赤外線吸収剤が、例えば国際公開WO94/04368号中に開示されているように最初から受容要素中に存在する場合、汚染および色忠実度の問題はもっと深刻である。
【0016】
Bugner他の米国特許第5,219,703号は、熱転写可能な染料、漂白可能かつ熱転写可能な近赤外線吸収増感剤、酸性の発光性化合物、および任意選択の近紫外線吸収増感剤を用いた、レーザで誘起される熱による染料転写について報じている。近赤外線吸収増感剤と酸性の発光性化合物の組合せは、熱転写可能な染料の転写および近赤外線吸収増感剤の漂白を行って、望ましくない可視光線の吸収をなくす。この酸性の発光性化合物は、染料ドナー要素または染料受容要素のどちらかの中に存在することができる。酸性の発光性化合物が染料ドナー要素中に存在する場合は、漂白はこの染料受容要素を近赤外線または近紫外線に最初に露光させたときに起こることになる。染料受容要素中に存在する場合は、漂白は続けてこの染料受容要素を近赤外線または近紫外線に露光させたときに起こることになる。
【0017】
欧州特許公開第0 675 003号は、テトラポリメチン染料およびアミンカチオンラジカル染料などのカチオン染料を漂白するためにレーザ熱転写画像形成において熱漂白剤を使用すること、具体的にはアミン、アミン発生種、またはカルボアニオン発生種を使用することを開示している。一般的には、この漂白剤は、受容要素表面の樹脂層中に配置するか、またはレーザ転写のステップに続く個別の転写のステップで画像と接触させる。好ましい漂白剤は、アリールスルホニル酢酸の第四アンモニウム塩などのカルボアニオン発生種である。
【0018】
Patel他の米国特許第5,843,617号、Patel他の米国特許第5,945,249号、Patel他の米国特許第6,171,766号、およびPatel他の米国特許第6,291,143号は、漂白剤として1,4−ジヒドロピリジン誘導体の使用について報じている。
【0019】
Patel他の米国特許第5,935,758号では漂白剤としてグアニジンの使用について報じている。グアニジンは、すぐれた安定性、溶解度、および当業界で周知の多くのバインダーとの相溶性を有する。これらは液体とは全く異なり固体であり、また迅速に作用する。固相添加剤は、室温で非揮発性であるため有利である。グアニジンは比較的小さな分子であり、加熱した場合、転写される材料中にきわめて効果的に拡散する。さらに重要なことにはこれらは貯蔵中に変色せず、基体上に塗布する前には水性系(例えばラテックス系)から析出せず、また結晶化してコーティングから離れない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
レーザ熱転写画像形成で使用するのに適した、赤外線染料用の代替の漂白剤の提供についての絶えざる要求が存在する。好適な漂白剤は、活性にするために光線に露光する必要がなく、周囲温度または高温で関連のある赤外線染料を漂白する。
【課題を解決するための手段】
【0021】
一実施形態において、本発明は、熱転写画像形成に用いる受容要素を提供する。受容要素は、受像面を有するシート状支持体を含み、かつその支持体の受像面にコーティングを有し、このコーティングは高分子バインダーおよびビグアニド漂白剤を含む。
【0022】
別の実施形態において本発明は、受容要素の製造方法を提供する。この方法は、受像面を有するシート状支持体を用意するステップと、この受像面にコーティングを適用するステップとを含み、このコーティングは高分子バインダーおよびビグアニド漂白剤を含む。
【0023】
本発明は、さらに受容要素の製造に適したコーティング組成物を提供する。このコーティング組成物は、適切な溶媒と、その溶媒中に溶解または分散させた成分、すなわちa)高分子バインダー40〜90質量%、b)ビグアニド漂白剤2〜25質量%、およびc)粒状材料0.1〜35質量%(ただし、これらの割合は組成物の固形分含量のみを基準とする)とを含む。
【0024】
熱転写画像形成のための画像形成システムも本発明により提供される。この画像形成システムは、色材および赤外線吸収性染料を含む色記憶要素と、画像形成面を有するシート状支持体およびその画像形成面上にコーティングを有する漂白要素を含み、このコーティングは高分子バインダーおよびビグアニド漂白剤を含む。ビグアニド漂白剤は、このビグアニド漂白剤と赤外線吸収性染料が接触した場合に、この赤外線吸収性染料を漂白することができる。
【0025】
本発明はまた、重ね刷り校正刷などの一体校正刷の作成に用いる方法を含む。この方法は、a)転写可能な色材および赤外線吸収性染料を含んでなる色担持要素(color−bearing element)を用意するステップ、b)シート状支持体を含み、かつこのシート状支持体の受像面にコーティングを有し、このコーティングが高分子バインダーおよびビグアニド漂白剤を含む漂白要素を用意するステップ、c)その漂白要素の受像面が色担持要素に隣接した状態で、色担持要素および漂白要素を近接させて集成するステップ、およびd)色担持要素から漂白要素の受像面へ色材を像様に転写するステップを含む。一実施形態では、ステップd)を、赤外線を用いてドナーおよび受容要素の集成体を像様露光することによって行って、ドナー要素から受容要素へ色材を像様転写させる。別の実施形態では、これらステップの幾つかを異なるドナー要素を用いて繰返し、次いでその転写された色材を受容要素から校正刷基体へ像様転写する。さらに別の実施形態では、その受容要素が校正刷基体である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本明細書中で詳述するようにビグアニド基を有する化合物が、熱転写画像形成工程後に存在する可能性のある赤外線吸収性染料などの干渉物質を漂白するための、グアニジンよりも即効かつ効率的な漂白剤であることが分かった。
【0027】
「干渉物質」は、望ましくないことだがヒトの目で認識できる色または色差を生み出す化合物である。本発明の実施においては、存在している、または熱転写画像形成工程中に色材と一緒に受容要素に転写される赤外線吸収性染料が干渉物質である可能性がある。
【0028】
用語「漂白」とは、どのように達成されるかには無関係に、ヒトの目で認識できる色または色差を生み出す光吸収特性(干渉物質からなど)の実質的な低減を意味する。例えば、干渉物質の吸収強度の全体的な低減が存在する場合もあり、またその吸収を非妨害波長(例えばそのスペクトルの可視領域外の波長)にシフトする場合もあり、またその干渉物質を無色にするのに十分な狭域化などの吸収バンドの形の変化が存在する場合もある。
【0029】
「漂白剤」は、干渉物質の漂白を引き起こすことができ、かつこの目的に使用される化合物である。具体的には本発明の実施の場合、漂白剤は熱転写画像形成工程後に干渉物質として存在することがある赤外線吸収性染料を漂白することができるものである。具体的には本発明は、ビグアニド基を有する化合物またはポリマーである漂白剤を使用する。この化合物またはポリマーは、例えばビグアニド化合物、ビスビグアニド化合物、または高分子ビグアニドであることができる。
【0030】
本明細書中で用いる用語「熱漂白剤」は、活性にするために光線に露光する必要がなく、周囲温度または高温で干渉物質を漂白することになる漂白剤を指す。
【0031】
受容要素
一実施形態では本発明は、熱転写画像形成に用いる受容要素を提供する。この受容要素は、受像面を有するシート状支持体と、この支持体の受像面上のコーティングとを含み、このコーティングは高分子バインダーと、熱転写画像形成の間にその受容要素の受像面に転写される赤外線吸収性染料を漂白するためのビグアニド漂白剤とを含む。実施形態によっては、このコーティングは、さらに粒状材料または他のテクスチャ付与材料を含む。
【0032】
本明細書中で用いられる語句「受容要素」は、熱転写画像形成においてドナー要素などの色担持要素から転写される色材を像様に受容することができる少なくとも1つの主要面を有する材料、一般的にはシートの形態を指す。この受像主要面は、転写される色材の受容および定着を容易にするために、一般的に処理またはコーティングされる。
【0033】
ビグアニド漂白剤の存在を除けば、本発明の受容要素の構造は従来のものであることができる。熱転写画像形成に用いられる受容要素は、一般的に受像面に1層または複数層のコーティングを載せた紙またはプラスチックシートなどの支持体を備える。このコーティングは、典型的には、厚さ数マイクロメートルであり、多くは周囲温度で不粘着性表面を与えることができ、かつドナー要素から転写されることになる材料(色材など)と相溶性のあるバインダーを含む。
【0034】
代替の実施形態ではこの受容要素は、シート状支持体の受像面に剥離層を含む。この剥離層は、一般的にシート状支持体と、漂白剤を含有する受像コーティングとの間にある。剥離層は、例えば次に述べる適切なバインダーまたはバインダーの混合物を含むことができる。例としてはGoodyear Chemical(Akron,Ohio)から商品名PLIOLITEで入手できるスチレン/ブタジエンコポリマーが適している場合がある。受容要素における剥離層の使用は、でこぼこしたまたはテクスチャ付きのシート状支持体を使用する場合には特に適切である。
【0035】
本発明による受容要素は、校正刷工程において中間受像要素として用いることができる。しかしながら語句「受容要素」は、本明細書中ではより広範囲の意味を有し、中間受像要素としての使用または機能には限定されない。単なる例としては校正刷基体もまた上記で与えられる定義内の「受容要素」であることができ、また本発明の受容要素は校正刷基体として好適に使用することができる。さらに本発明の別の実施形態は、受像面を有するシート状支持体と、この支持体の受像面上に配置され、高分子バインダーおよびビグアニド漂白剤を含むコーティングとを備えた校正刷基体とを提供し、そのシート状支持体は紙またはカードストックである。
【0036】
受容要素用支持体
受容要素用のシート状支持体は、個々の画像形成用途に基づいて選択される。好適なシート状支持体には、紙またはカードストック、金属(例えば鋼またはアルミニウム)、あるいは様々なフィルム形成性ポリマーから構成されるフィルムまたはプレートが挙げられる。好適な高分子材料には、付加重合体(例えば、ポリ(塩化ビニリデン)、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(酢酸ビニル)、ポリスチレン、ポリイソブチレンのポリマーおよびコポリマー)、ならびに直鎖縮合重合体(例えば、ポリ(テレフタル酸エチレン)、ポリ(アジピン酸ヘキサメチレン)、およびポリ(ヘキサメチレンアジパミド/アジピン酸ヘキサメチレン)などのポリエステル)が挙げられる。このシート状支持体は透明でも不透明でもよい。非透明シート状支持体は、拡散反射性でも鏡面反射性でもよい。
【0037】
受容要素用の好適なシート状支持体には、例えばポリエチレンテレフタレート、フルオレンポリエステルポリマー類、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニルおよびそのコポリマー、ならびに酢酸セルロース加水分解物および非加水分解物が挙げられる。特に好適な支持体には、ポリエチレンテレフタレートシートなどのフィルムが挙げられる。例えばDuPont Teijin Films(Hopewell,Virginia)によりMELINEXの名称で販売されているMELINEX 574などのポリエチレンテレフタレートシートが適している。
【0038】
実際には、このシート状支持体は、典型的には、厚さ約20μm〜約200μmである。必要に応じて、この支持体は、続いて適用されるコーティングに対するその湿潤性および接着性を改変するために前処理することもできる。このような表面処理には、コロナ放電処理と、下塗層または剥離層の塗布とがある。このシート状支持体はまた、アクリル接着剤または酢酸ビニル接着剤などの接着剤を含有する剥離可能な層を備えることもできる。
【0039】
不可欠ではないが、本発明の受容要素の受像面にテクスチャ付き表面を含むことが有利な場合もある。シート状支持体またはコーティング上のテクスチャ付き表面は、その支持体またはコーティングの主要面から延びる多数の突出部により与えることができる。この突出部は、様々な方法により得ることができる。下記で考察するように、例えば突出部を形成するようにテクスチャ付与材料をコーティング中に含めることができる。
【0040】
別法ではこのシート状支持体が、それ自体テクスチャ付き表面を備えることもできる。例えばこのシート状支持体は、従来の方法で作られるマイクロレプリケート構造を有する表面を備え、それによって突出部を形成することができる。テクスチャ付き表面を有する好適なシート状支持体の例は、型押されたポリエステルフィルムである。好適な型押されたポリエステルフィルムは、例えばDuPont Teijin FilmsからMYLAR EB31およびMYLAR EB11の名称で市販されている。シート状支持体がテクスチャ付き表面を備える場合、そのシート状支持体の受像面に剥離層を含むことが望ましい場合もある。
【0041】
受容要素用コーティング
受容要素上のコーティングは、一般的に、適切な高分子バインダーと、ビグアニド漂白剤とを含む。幾つかの実施形態ではこのコーティングは、さらに粒状材料または他のテキスチャー付与材料を含む。このコーティングは、界面活性剤および酸化防止剤などの任意選択の添加剤を含むことができる。
【0042】
本発明の一実施形態では、受容要素上のコーティングは、約2〜約20μmの範囲の厚さを有する。別の実施形態では、このコーティングは、約2〜約20g/mの範囲のコーティング量を有する。
【0043】
このコーティング成分をさらに次に述べる。例示的な実施形態では、このコーティングは、高分子バインダーを約40〜約90質量%、ポリ(メタクリル酸メチル)ビーズを約0.1〜約35質量%、ビグアニド漂白剤を約2〜約25質量%(コーティングの固形分含量を基準にして)含む。一つの特定の実施形態では、このコーティングは、高分子バインダーとしてポリビニルブチラールを約40〜約90質量%、ポリ(メタクリル酸メチル)ビーズを約0.1〜約35質量%、漂白剤として1−(o−トリル)ビグアニドを約2〜約25質量%(コーティングの固形分含量を基準にして)含む。
【0044】
別の実施形態ではこの受容要素は、受像面を有するシート状支持体と、その支持体の受像面上に高分子バインダーおよびビグアニド漂白剤を含むコーティングとを含み、上記受容要素はそれ以外には色材または他の画像形成材料を本質的に含まない。
【0045】
高分子バインダー
高分子バインダーの選択において考慮すべきことには、例えばそのポリマーのガラス転移温度、軟化点、および粘度などがある。広範囲の様々な高分子バインダーが本発明の実施に適している。この高分子バインダーは、ヒドロキシルポリマー(すなわち、複数個の水酸基を有するポリマー)を含んでもよく、また水酸基を含まないポリマーを含んでもよい。
【0046】
受容要素上のコーティング用の高分子バインダーの選択は、関係する色材転写の機構(例えばアブレーション、溶融粘着、または昇華)に左右される。例えば、溶融粘着機構を使用する画像形成システムに用いる場合、ドナー要素中の色材層のバインダーとして用いられるものと類似または同一のバインダーを受容要素についても使用するのが有利な場合がある。Kodak Polychrome Graphics(Norwalk,Connecticut)からMATCHPRINT DIGITAL HALFTONEの名称で販売されている市販のドナー要素と共に使用する場合、Solutia, Inc.(St.Louis,Missouri)から得られるBUTVAR B−76ポリビニルブチラールコポリマーおよび類似の熱可塑性ポリマーが、受容要素上のコーティング中で使用するのにきわめて好適な材料である。
【0047】
受容要素のコーティング中に使用するための別の好適なポリマーは、International Specialty Products,Inc.(Wayne,New Jersey)から商品名E−735で入手できるポリビニルピロリドン/酢酸ビニルコポリマーバインダーである。別の好適なポリマーは、Goodyear Chemical(Akron,Ohio)から商品名PLIOLITEで入手できるスチレン/ブタジエンコポリマーである。さらに別の好適なポリマーは、InChem Corp.(Rock Hill,South Carolina)から商品名INCHEMREZ PKHM−301で入手できるフェノキシ樹脂である。
【0048】
スチレン/アリルアルコールコポリマーもまた、好適にこのコーティング中に含めることができる。市販のスチレン/アリルアルコールコポリマーは、Lyondell Chemical Company(Houston,Texas)から得られるSAA−100である。
【0049】
ポリマーの混合物もまたバインダーとして使用することができる。例えば、質量単位で約2:1〜約20:1の比率のBUTVAR B−76とSAA−100の混合物が適している。
【0050】
前述の材料は、非限定的な例として与えられるに過ぎない。他の好適なポリマーは、当業者によって正しく評価されるはずである。
【0051】
漂白剤
このコーティングに有用な漂白剤にはビグアニド漂白剤がある。ビグアニド漂白剤は、ビグアニドの部類の化合物(すなわちビグアニド基を含む)の中の化合物またはポリマーで、かつ熱転写画像形成工程後に存在する可能性のある赤外線吸収性染料を漂白する能力のあるものである。
【0052】
本発明に有用なビグアニド漂白剤は、下記の構造式で示される形態のビグアニド基を活性官能基として含む化合物またはポリマーである。
【0053】
【化1】

【0054】
上式中、各Rは独立に水素、以下に述べる有機置換基、あるいはビスビグアニドおよび高分子ビグアニド化合物の場合には適切な連結基であることができる。
【0055】
この技術分野ではよく理解されているように活性官能基の高度の置換が、許容されるだけでなく望ましい場合が多い。用語「基」は、本明細書中では官能基の置換可能な位置で置換を受け入れると同時に望ましい活性を与える化学的官能基を指すために用いる。例えば語句「アルキル基」は、メチル、エチル、オクチル、シクロヘキシル、t−ブチルなどの炭化水素アルキル鎖だけでなく、水酸基、アルコキシ、フェニル、ハロゲン(F、Cl、Br、およびI)、シアノ、ニトロ、アミノなどの当業界で知られている通常の置換基を持つアルキル鎖もまた含むことを意図している。
【0056】
本明細書中で用いる用語「アルキル」は、炭素原子20個まで、より好適には炭素原子10個未満、また最も好適には低級アルキルを指し、これは炭素6個までを意味する。用語「アリール」は、炭素原子14個まで、より好適には10個未満、また最も好適には6個までの芳香族の環または縮合環系を指す。用語「脂環式」は、炭素原子14個まで、より好適には10個未満、また最も好適には6個までの非芳香族の環または縮合環系を指す。用語「ヘテロ環式」は、炭素、窒素、酸素、およびイオウから選択される原子が14個まで、より好適には10個未満、また最も好適には6個までの芳香族または脂環式の環あるいは環系を指す。
【0057】
一般的には、本発明で用いられるビグアニド漂白剤は、各ビグアニド基がアルキル、アリール、脂環、またはヘテロ環置換基(この置換基はそれ自体さらに通常の置換基で置換されてもよい)で置換された1個または複数個のビグアニド基を含むことになる。このビグアニド基中の塩基性窒素の存在が望ましい漂白活性を得るために重要な場合もある。
【0058】
一実施形態では、ビグアニド漂白剤は、ビグアニド化合物、ビスビグアニド化合物、高分子ビグアニド、およびこれらの混合物からなる群から選択される。別段の指定がない限り2種類以上のビグアニド化合物またはポリマーの混合物も本発明の実施における漂白剤として適していると考えられたい。
【0059】
このビグアニド漂白剤はビグアニド化合物であることができる。多くの種類のビグアニド化合物が知られている。ビグアニド化合物は、抗生物質、消毒薬、口内歯垢防止薬として、また抗糖尿病用医薬組成物において使用されてきた。
【0060】
遊離塩基の形態のビグアニド化合物が本発明の実施においては特に有用である。ビグアニド化合物は、より安定にするためにしばしば塩の形態に調製され、本発明では有用な場合もある。しかしながら遊離塩基の形態のビグアニド化合物は、塩の形態のビグアニド化合物と比べると溶媒および本発明の組成物とより相溶性がある可能性がある。また遊離塩基の形態は、塩の形態と比べてより高い塩基性度のために、より優れた漂白活性を与えることができる。
【0061】
アリールビグアニド化合物、すなわち1個または複数個の置換または非置換アリール部分を有するビグアニド化合物はビグアニド漂白剤として適している場合がある。例としては、フェニルビグアニドが、本発明の実施用の好適なアリールビグアニド化合物である。置換基としてC〜Cアルキル基をもつフェニル環を有するものなど、アルキルフェニルビグアニド化合物もまた適している。
【0062】
本発明の実施に特に適したビグアニド漂白剤は、下記の構造式で表される1−(o−トリル)ビグアニドである。
【0063】
【化2】

【0064】
1−(o−トリル)ビグアニドは、Sigma−Aldrich Corp.(St.Lois,Missouri、製品番号42,466−8)から市販されている。1−(o−トリル)ビグアニドはまた、通常の方法を用いて簡単に合成することができる。この化合物は室温で固体である。1−(o−トリル)ビグアニドは、すぐれた安定性、溶解度、および本明細書中に開示したバインダーとの相溶性を有する。
1−(o−トリル)ビグアニドは、熱転写画像形成用の媒材中で光熱コンバーターとしてしばしば用いられる或る種の赤外線吸収性染料(テトラアリールポリメチン染料など)に対する熱漂白剤として作用する。1−(o−トリル)ビグアニドはまた迅速に作用する漂白剤である。したがって本発明は、受容要素上に干渉物質として赤外線吸収性染料が存在することによって引き起こされる望ましくない着色を取り除く便利で効果的な手段を提供する。
【0065】
前述のように広範囲の様々なビグアニド化合物が、本発明における漂白剤として有用である可能性がある。単なる例としてはAhrens他の米国特許第3,960,949号に記載の1,2−ビグアニド化合物および米国特許第3,996,232号に記載の1,5−二置換ビグアニド化合物が、本発明に用いるビグアニド漂白剤として適している可能性がある。
【0066】
ビスビグアニド化合物もまた、本発明における漂白剤として適している可能性がある。例えば「クロロヘキシジン」として知られるビスビグアニド化合物は、周知の防腐剤および消毒薬である。ヘキサメチレンアルキル連結基によって結合した2個のビグアニド基を有する様々なヘキサメチレンビスビグアニド化合物が知られている。単なる例として様々なヘキサメチレンビスビグアニド化合物が、M.Tanzer、A.M.Slee、およびB.A.Kamayによって「Structural Requirements of Guanide,Biguanide,and Bisbiguanide Agents for Antiplaque Activity」Antimicrob Agents Chemother.12,721(1977)中で報告されている。
【0067】
高分子ビグアニド化合物もまた漂白剤として適している可能性がある。「PHMB」とも呼ばれるポリ(ヘキサメチレンビグアニド)は周知の殺菌薬であり、本発明の実施用に適している可能性がある。米国特許第4,891,423号およびその中に引用されている参考文献に記載の高分子ビグアニドもまた適している可能性がある。
【0068】
この漂白剤は、画像形成に先立って受容要素上のコーティング中に含めることができ、またそれが最も適切である。漂白剤が受容要素上のコーティング中に存在する本発明の実施形態において使用される漂白剤の量はかなり変えることができる。その必要な量は、画像形成の間にそれが色材と一緒に共転写する傾向、その目に見える呈色の強度など、赤外線吸収性染料の量および特徴によって決まることになる。
【0069】
一般的には、この漂白剤は、そのコーティングの固形分含量の約2質量%〜約25質量%として存在することができる。より適切には、この漂白剤は、そのコーティングの固形分含量の約5質量%〜約20質量%として存在することができる。一実施形態では、そのコーティングは、漂白剤1質量部に対してバインダーを約5〜約20質量部含む。
【0070】
テクスチャ付与材料(Texturizing Material)
受容要素上のコーティングは、粗さの程度の制御された表面を与えるために、任意選択でテクスチャ付与材料によりテクスチャを付けることができる。このテクスチャ付与材料は、例えば高分子ビーズ、シリカ粒子などの不活性の粒状材料であることができる。粗さは、コーティングの主要面から延出する突出部を生成するためにコーティング組成物中にテクスチャ付与材料を混ぜ込むことによって創り出すことができる。
【0071】
若干の表面粗さの存在は、受容要素を画像形成用のドナー要素と接近させる場合、有利であることが分かっている。ドナー要素と受容要素の一方(または両方)が粗面を与える場合、その一方の他方に対する真空ドローダウンが容易になる。受容要素中の突出部は、ドナー要素と受容要素の関係を正確に調節し、かつ画像形成中のドナー要素と受容要素の間のほぼ均一な間隔を与える。これらの突出部は、空気が逃げるチャンネルを与え、その結果ドナー要素と受容要素の間の均一な近接が保たれると考えられる。恐らくより重要なことはこれらの突出部は、転写された画像部中の空気の閉じ込めを防ぐと考えられる。所定の領域で溶融または軟化したフィルムがドナー要素から受容要素へ転写されるにつれて、空気はこれらの突出部により形成されるチャンネルを通って逃げることができる。
【0072】
前述のようにテクスチャ付与材料は、例えば高分子ビーズ、シリカ粒子、金属酸化物粒子、無機塩などの不活性の粒状材料であることができる。その最適な粒径は、受像コーティングの厚さおよび転写される材料(例えば色材層)の厚さを含めた複数の要因によって決まる。レーザ照射を画像形成に用いる場合、そのテクスチャ付与材料の最適なサイズおよびそのコーティング中の濃度は、画像形成用レーザについてのスポットサイズ、すなわち色材層の平面に照らされたスポットの直径によって決まる。このスポットサイズは、ドナー要素から受容要素へ転写することができるドットすなわち画素の最小サイズを決定する。この最小画素サイズは、典型的には、約5μm〜約50μmの範囲にあるが、異なる設計の画像形成エンジンに対して違ってもよい。例えばPresstek PEARLSETTER画像装置は直径約30μmの画素サイズを有し、一方Creo TRENDSETTER画像装置は約8μmの画素サイズを有する。
【0073】
ビーズにより形成されようと、粒状物質により形成されようと、型押により形成されようと受容要素上の突出部の大きさは、干渉分析法などの周知の手法を用いて、あるいは光学または電子顕微鏡を用いた表面の試験によって測定することができる。
【0074】
テクスチャ付与材料は、本質的に均一なサイズ(すなわち単分散)のものでもよく、またサイズが異なっていてもよい。一般の用途ではこの粒状材料は、約3〜約50μmの範囲内の平均粒径により特徴付けられる。シリカなどの無機粒子の分散物は通常或る範囲の粒径を有するのに対し、ポリマービーズの単分散物は容易に入手可能である。どちらの種類の集団を用いようとこれらの粒子は、受容要素面の平面より平均で約8μmを超えるまで高く突出すべきでないが、好ましくは上記平面より最低で約1μmだけ、またより好ましくは最低で約3μm高く突出すべきである。幾つかの構造では、異なる平均サイズを有するはっきり識別できる2つのビーズの組を加えるのが有利である。これによりヘイズを滑りまたは分解特性とバランスさせる順応性が可能になる。
【0075】
高分子ビーズをテクスチャ付与材料として用いる場合、そのビーズの組成は、光学的透明性を得るためにほぼ全可視波長(400nm〜700nm)がその材料を通って送られてように一般には選択される。すぐれた光学的透明性を有する高分子ビーズの非限定的な例には、ポリ(メタクリル酸メチル)およびポリ(メタクリル酸ステアリル)のビーズと、ジメタクリル酸ジオールホモポリマーまたはコポリマーを含むビーズが挙げられる。好適な高分子ビーズにはまた、ポリスチレン、フェノール樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル類、ポリイミド類などから作られるものが挙げられる。
【0076】
ビーズの形状は、好ましくは球形、長楕円形、卵形、または楕円形である。一般には、この高分子ビーズは、約3〜約50μm、好ましくは約5〜約25μmの範囲の粒径(すなわち平均直径)を有するべきである。コーティング中のこのスペーサビーズの被覆所要量は、約5〜約2,000ビーズ/mmの範囲であることができる。ビーズの粒径が増すにつれ、それに比例してより少量のビーズが必要である。
【0077】
例としては一つの好適なテクスチャ付与材料には、約10μmの平均直径を有するポリ(メタクリル酸メチル)の単分散ビーズが挙げられる。このようなビーズは市販されている。
【0078】
受容要素上のコーティング中のテクスチャ付与材料濃度は、約100〜約500粒子数/mmの面積密度を与えるのに十分な濃度であるべきである。例として適切な粒子面積密度は、約200粒子数/mmである。一実施形態では、コーティングは、テクスチャ付与材料1質量部に対してバインダー約20〜約80質量部を含む。
【0079】
ビーズまたは粒子を使用する代わりに、受容要素表面に物理的にテクスチャを付与して必要とする突出部を得ることもできる。アルミニウムなどの金属表面は、砂目付けし、陽極酸化することによって、テクスチャを付与することができる。他のテクスチャ付き表面を当業界で周知のようにマイクロレプリケーション技術によって得ることもできる。
【0080】
受容要素の作製方法
別の実施形態で本発明は、受容要素の作製方法を提供する。この方法は、受像面を有するシート状支持体を準備するステップおよびそのシート状支持体の受像面にコーティングを適用するステップを含み、このコーティングは高分子バインダーおよびビグアニド漂白剤を含む。このビグアニド漂白剤は、熱転写画像形成中に受容要素の受像面に転写された赤外線吸収性染料を漂白する能力がある。
【0081】
この受容要素を作製するための好適なシート状支持体は上記のとおりである。
【0082】
この受容要素を作製するためにコーティングをそのシート状支持体に塗布する。このコーティングは、高分子バインダーおよび適切なビグアニド漂白剤を含む。これらの成分は上記のとおりである。
【0083】
典型的には、このコーティングは、適切な溶媒または溶媒混合物中のバインダーおよび漂白剤の溶液または分散液を含むコーティング組成物を用いて支持体に適用される。この溶液または分散液は、上記のようにテクスチャ付与材料を含んでもよい。この溶液または分散液はまた、例えば界面活性剤または酸化防止剤などの最終のコーティングに望ましい任意の他の添加剤を含むこともできる。
【0084】
好適な溶媒としては有機溶剤または水が挙げられる。好適な有機溶剤には、典型的にはアルコール、ケトン、エーテル、炭化水素、ハロアルカン、またはこれらの混合物がある。好適な溶剤としては、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、1−メトキシエタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、メチルエチルケトン、ジエチレングリコールモノブチルエーテルなどが挙げられる。トルエンなどの芳香族炭化水素もまた好適である。一般には乾燥速度のより卓越した制御を可能にし、また曇ったフィルムの形成を避けることを可能にする溶媒の混合物が用いられる。このような混合物の例は、メチルエチルケトン、エタノール、および1−メトキシプロパノールである。この溶媒または溶媒混合物は、高温、すなわち溶媒の蒸発を促進するには十分高いが、支持体か、またはコーティング溶液の成分のどれかを損傷または分解するほどには高くない温度で少なくとも適度に揮発することが多分望ましいであろう。
【0085】
任意の標準的なコーティング法、例えばエアドクターコーティング、ブレードコーティング、エアナイフコーティング、スクイズコーティング、リバースロールコーティング、トランスファロールコーティング、グラビアコーティング、キスコーティング、キャストコーティング、吹付けコーティング、浸漬コーティング、バーコーティング、押出コーティング、またはしごきコーティングなどをこのコーティングを適用するために使用することができる。一つの適切なコーティング法は、マイヤバーまたは他の巻線計量棒を使用する。
【0086】
この支持層をコーティング組成物と接触させた後、そのコーティング組成物を乾燥するか、あるいは支持層に固着させてコーティングを生成する。本明細書の目的では乾燥またはコーティングを固着させる他の方法は同義語とみなすべきである。
【0087】
例としてこのコーティングを適用するステップは、高温で乾燥するステップを含むことができる。乾燥は、溶媒の少なくとも一部を蒸発などにより除去することによって達成することができる。溶媒の除去は、熱を加えるかまたはファン乾燥により、あるいはその両方により行うことができる。例として水性コーティング組成物の場合、そのコーティングから過剰な水を除去するには30秒以上にわたって100℃に加熱すれば多分十分であろう。溶剤系コーティング組成物を用いる場合、溶剤の発火を避け、あるいは空気、水、または作業場環境の許容できない汚染が生じるのを避けるように用心しながら溶剤を蒸発あるいは除去することによってそのコーティングを乾燥することができる。
【0088】
高温での加熱を用いてコーティングを乾燥する場合、機能的にコーティングおよび支持体のどちらも破壊、損傷、または分解しないように注意を払わなければならない。
【0089】
この方法の一実施形態では実質的に均一なコーティングが支持体に適用される。「実質的に均一」とは、そのコーティングが比較的一様な厚さを有し、被覆された領域中に欠陥(ピンホールまたはボイド)の心配が十分ないことを意味する。
【0090】
この方法の変形形態では、剥離層がシート状支持体の受像面に施される。この剥離層は、一般的には、漂白剤を含有するコーティングに先立ってシート状支持体に適用される。剥離層は、前述のように例えば適切なバインダーまたはバインダーの混合物を含むことができる。剥離層は、でこぼこしたまたはテクスチャ付きのシート状支持体を使用する場合には多分特に相応しいであろう。
【0091】
コーティング組成物
本発明はさらに、受容要素の作製に適したコーティング組成物を提供する。このコーティング組成物は、適切な溶媒およびこの溶媒中に溶解または分散した成分、a)高分子バインダー40〜90質量%、b)ビグアニド漂白剤2〜25質量%、およびc)テクスチャ付与材料0.1〜35質量%(ただしこれらの割合は組成物の固形分含量のみを基準とする)を含む。このテクスチャ付与材料は、約3〜約50μmの範囲内の平均粒径により特徴付けられ粒状材料であることができる。
【0092】
この組成物中の固形分の割合は、望ましい粘度が得られるように制御することができる。例えば2〜15μmの範囲の厚さを有するコーティングを生成するのに適した粘度は、そのコーティング組成物の質量を基準にして固形分を約5〜約20%有する組成物により達成することができる。より適切には約10〜約15%の固形分が好適な組成物をもたらす。約5〜約6μmの範囲の厚さを有する乾燥コーティングを作製するためには約13%の固形分を有するコーティング組成物が用いられている。
【0093】
この好適な溶媒は有機溶剤または水であることができる。好適な有機溶剤は、典型的には、アルコール、ケトン、エーテル、炭化水素、ハロアルカン、またはこれらの混合物である。好適な溶剤には、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、1−メトキシエタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、メチルエチルケトン、ジエチレングリコールモノブチルエーテルなどが挙げられる。トルエンなどの芳香族炭化水素もまた適している。一般的には、乾燥速度のより優れた制御を可能にし、また曇ったフィルムの形成を避けることを可能にする溶媒の混合物が用いられる。このような混合物の例は、メチルエチルケトン、エタノール、および1−メトキシプロパノールである。
【0094】
このコーティング組成物はさらに、上記のようにテクスチャ付与材料を含むことができる。一実施形態ではコーティング組成物は、テクスチャ付与材料1質量部に対してバインダー約20〜約80質量部を含む。
【0095】
一般的には、漂白剤が、コーティングの固形分含量の約2質量%〜約25質量%として存在することができる。より適切には、この漂白剤は、コーティングの固形分含量の約5質量%〜約15質量%として存在する。一実施形態では、コーティングは、漂白剤1質量部に対してバインダー約5〜約20質量部を含む。
【0096】
画像形成システム
熱転写画像形成用の画像形成システムがまた本発明により提供される。この画像形成システムは、色材および赤外線吸収性染料を含む色担持要素と、受像面を有するシート状支持体およびその受像面上にコーティングを備えた漂白要素とを含み、このコーティングは高分子バインダーおよびビグアニド漂白剤を含む。このビグアニド漂白剤は、そのビグアニド漂白剤および赤外線吸収性染料が接触するとその赤外線吸収性染料を漂白する能力がある。
【0097】
本発明の画像形成システムは、ハーフトーン色校正刷の制作のためのレーザで誘起される熱転写画像形成などによる一体校正刷の制作に有用である。本発明の画像形成システムは、この色担持要素が、ドナー要素、中間受像要素などの画像担持要素(image−bearing element)、または画像担持校正刷媒体(image−bearing proof medium)であることができ、かつこの漂白要素が、受容要素、校正刷基板、または漂白剤転写要素であることができるので、校正刷工程に多くの順応性を与える。
【0098】
一実施形態では、本発明の画像形成システムは、レーザによって供給されるエネルギーの影響下でのドナー要素から受容要素へのカラーハーフトーン画像の物質移動に適している。具体的にはこの色担持要素は、転写可能な色材を有するドナー要素であることができる。適切なドナー要素は下記で述べる。この色担持要素がドナー要素である場合、好適には、その漂白要素は受容要素または校正刷基体であることができる。
【0099】
漂白剤が受容要素上の画像受容コーティング中にある最も効率的なシステムは、画像形成工程を合理化するが、上記のように特別に作製された受容要素の使用が必要となる。代替の実施形態では、この漂白剤は、特別に作製された校正刷基体上の画像受容コーティング中にある。
【0100】
別の実施形態では、色担持要素は画像担持要素であり、かつ漂白要素は校正刷基体である。この実施形態の画像形成システムは、画像担持要素から、漂白剤を含有するコーティングを有する校正刷基体への色画像の像様転写に適している。この実施形態では、一般的には、画像担持要素は、中間受像要素として用いられる通常の受容要素である。処理の間に画像は、画像担持要素から校正刷基体へ像様転写される。像様転写は、例えば圧力の作用下または全体的な加熱下で行うことができる。
【0101】
さらに別の実施形態では、本発明の画像形成システムは、漂白剤転写要素から、画像担持要素または画像担持校正刷基体への漂白剤の転写に適している。この実施形態では、漂白要素は、漂白剤を含有する転写可能なコーティングを有する漂白剤転写要素である。この色担持要素は、画像担持要素または画像担持校正刷基体であることができる。処理の間に、漂白剤を、漂白剤転写要素から画像担持要素または校正刷基体へ転写することができる。漂白剤の転写は、例えば圧力の作用下または全体的な加熱下で行うことができる。このシステムは、余分な処理ステップを必要とするが、普通紙などのコーティングしていない校正刷基体の使用が可能になる。この代替案は余分な処理ステップを必要とするが、校正刷基体の性質に特別な制約がないという利点があり、その結果、この目的に普通紙および従来のプルーフ用ベース材料等の様々な材料を用いることができる。
【0102】
適切な漂白剤転写要素は、典型的には、その固形分含量の約5〜約25質量%、好ましくは約10〜約20質量%に相当する量の漂白剤を含有する熱可塑性バインダー(BUTVAR B−76、ビニルバインダー、アクリルバインダーなど)の層を有する支持体(ポリエステルフィルムなど)を含む。したがって漂白剤転写要素の構造は、本発明による受容要素の構造と非常に似ており、単一の構造体が両方の目的に適している可能性がある。幾つかの実施形態では剥離層が適切に使用される場合もある。
【0103】
それぞれの画像形成システムに対する適切なドナー要素を次に述べる。
【0104】
ドナー要素
ドナー要素は、転写可能な色材と、赤外線吸収性染料とを含む。本明細書中で用いられる「ドナー要素」は、熱転写画像形成に用いられ、赤外線に露光したときに受容要素に転写することができる色材を含む少なくとも1つの主要面を有する材料、一般的には、シート形態の材料を指す。
【0105】
好適なドナー要素は当業界で知られており、従来の方法により作製される。例えば好適なドナー要素およびこのドナー要素の作製方法は、Patel他の米国特許第5,935,758号に記載されている。このドナー要素は、例えば昇華転写、アブレーション転写、または溶融粘着転写に合うようにすることができる。一般的には、このドナー要素は、支持体(ポリエステルシートなど)と、転写可能な色材および赤外線吸収剤を含むコーティングとを備え、この赤外線吸収剤は色材と同じ層中にあっても、異なる層中にあっても、また両方の中にあってもよい。特に好適なドナー要素は、欧州特許公開第0 602 893号中に報じられているタイプのものであり、この色材層はフルオロカーボン化合物を含む。
【0106】
本発明の一実施形態では、好適なドナー要素は、支持体と、転写可能な色材および赤外線吸収剤を含むコーティングとを含む。この実施形態ではコーティングは、ヒドロキシルポリマー、転写可能な色材、フッ化炭化水素添加剤、カチオン赤外線吸収性染料、および潜伏性架橋剤(これらについては下記に述べる)を含むバインダーを含む。
【0107】
市販され、画像形成システムに用いるのに適したドナー要素は、Kodak Polychrome GraphicsからMATCHPRINT DIGITAL HALFTONEの名称で販売されている。
【0108】
転写可能な色材
転写可能な色材は、一般に所望の色を与えることになる1種類または複数種類の染料または顔料を含む。好ましくはこの色材は、International Prepress Proofing Associationによって与えられ、SWOP色基準として知られる標準印刷インク基準により示される色を再現する染料または顔料を含む。
【0109】
色材層中の染料または顔料はバインダー中に分散させることができるが、国際公開第WO94/04368号中に報じられているようにバインダーを含まない色材層もまた可能である。一つの考慮すべき問題は、その転写可能な色材が、両方の周囲条件下でまた熱転写工程の間、受容要素の漂白剤に対して実質上不活性であるべきであるということである。したがって色材は注意深く選択され、起こり得る漂白剤との相互作用に関して選別されなければならない。この理由により好ましいドナー要素は、それが望ましくない色材の漂白の可能性を大きく減少させるのでバインダー中の顔料粒子の分散体の形態の色材層を備える。
【0110】
転写可能な色材は、色材層の固形分含量を基準にして好ましくは約10質量%〜約40質量%の量でその色材層中に存在する。
【0111】
この転写可能な色材は、場合によっては分散助剤の助けにより色材層内に分散させるのに足る十分小さな粒径の粒状材料であることができる。この色材層に用いられる好適な色材としては顔料および非昇華性染料が挙げられる。顔料および非昇華性高分子染料は、層間で移動する傾向がないので好適に使用される。顔料は、その入手可能な広範な色、低コスト、および印刷インクの色とのすぐれた相関性の故により適している。固体粒子の分散物の形態の顔料が好ましい。固体粒子顔料は、一般的に、日光、熱、湿度などに長期間暴露した場合に、可溶性染料に比べてずっとすぐれた漂白または退色に対する抵抗性を有し、それゆえ耐久性のある画像を形成するために用いることができる。色校正刷材料における顔料分散体の使用は当業界でよく知られており、本発明においてその目的にとって有用な任意の従来の顔料を用いることができる。
【0112】
別法ではこのドナー要素は、色を付け加えずに単に色を強化する材料(すなわち色増強添加剤)、あるいは透明または無色であり質感のあるイメージを与える材料、あるいはなにか別の望ましい機能を果たす転写可能な材料を含むこともできる。このような転写可能な材料は、その赤外線屈折率がバインダーの赤外線屈折率と一致する場合、無色であることができる。色校正刷を形成するのに用いられる転写可能な材料はまた、例えばスポットワニスをシミュレートすることが望ましい場合には無色であることもできる。この色増強添加剤またはテクスチャ付与材料を単独で、あるいは顔料または非昇華性染料と組み合わせて用いて望ましい視覚上の効果を有する校正刷を作成することができる。
【0113】
例として色を強化する、または他の機能を果たす転写可能な材料には、蛍光性材料、真珠光沢のある材料、乳白光を発する材料、玉虫色の材料、UV吸収性材料、赤外線吸収性材料、強磁性材料、または金属性材料が挙げられる。蛍光などの特殊な効果を与えるものを含めて本質的にどのような色の顔料も用いることができる。
【0114】
例えばシリカ、高分子ビーズ、反射および非反射ガラスビーズ、またはマイカなどの材料を転写可能な材料として用いて質感のあるイメージを与えることができる。このような材料は典型的には無色であるが、白色でもよく、また最終校正刷の色精度を損なわない色を有することもできる。
【0115】
赤外線吸収性染料
ドナー中に用いられる赤外線吸収性染料は、光−熱コンバーターである。幾つかの実施形態によっては、これはカチオン染料である。カチオン染料は、バインダーおよび色材層の他の成分と組み合わせた場合、透明なフィルムを生成する。これに反してスクアリリウムおよびクロコニウム染料などの幾つかの中性染料は分散凝集塊を生成し、目に見える凝集形成した顔料を有する色材層を生ずる。またシアニン染料などのアニオン染料は、本発明の転写材料と不相溶性であり、顔料分散物のフロキュレーションを引き起こす。
【0116】
この転写材料に用いる好適なカチオン染料としては、テトラアリールポリメチン(TAPM)染料、アミンカチオンラジカル染料、およびこれらの混合物が挙げられる。好ましくは、この染料はテトラアリールポリメチン染料である。これら部類の染料は、ドナー要素のコーティングのその他の成分と一緒に配合する場合に一般に安定であり、また市販のレーザ源に用いた場合に正確な波長範囲で吸収する。さらに、これら部類の染料は、レーザ照射により光励起した場合に下記に述べるように潜伏性架橋剤と反応すると考えられる。この反応は、赤外線吸収性染料の漂白に寄与するだけでなく、下記により詳細に述べるようにバインダーの架橋をもたらす。これら染料の多くが示すさらに別の有用な特性は、これもまた次により詳細に述べるように受容要素層中に組み込むことができる求核化合物および還元剤により熱漂白する能力である。
【0117】
TAPM染料は、奇数個の炭素原子(5個以上)を有するポリメチン鎖を含み、この鎖の各末端炭素原子が2個のアリール置換基に連結している。TAPM染料は一般に700nm〜900nm領域で吸収し、それらをダイオードレーザアドレスに適したものにする。好適なTAPM染料は、例えばPatel他の米国特許第5,935,758号に記載されている。
【0118】
画像形成中にTAPM染料が顔料と一緒に共転写される場合、ブルーの色合いが転写画像を生ずる恐れがある。というのは一般にTAPM染料が、スペクトルの赤領域中に尾を引く吸収ピークを有するためである。しかしながらこの問題は、本明細書中で述べるように転写される赤外線吸収性染料を漂白剤と接触させることによって解決される。
【0119】
好適なカチオン赤外線吸収性染料には、例えば国際公開第WO90/12342号および欧州特許公開第0 739 748号中で報じられているアミンカチオンラジカル染料の部類(またインモニウム染料として知られる)が挙げられる。好適なカチオン赤外線吸収性染料はまた、Patel他の米国特許第5,935,758号にも記載されている。
【0120】
好ましくはこの赤外線吸収性染料は、露光波長において好ましくは最低で約0.5、より好ましくは最低で約0.75、また最も好ましくは最低で約1.0の透過光学密度を得るのに十分な量で存在する。典型的には、これは、色材層の固形分含量を基準にして約3質量%〜約20質量%の赤外線吸収性染料で達成される。
【0121】
支持体
ドナー要素用の好適な支持体には、ポリエチレンテレフタレート、フルオレンポリエステルポリマー、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、およびこれらのコポリマー、ならびに加水分解および非加水分解酢酸セルロースなどのプラスチックシートおよびフィルムが、例えば挙げられる。この支持体は、受容要素へ対応する画像の熱転写を行うためにレーザまたはレーザダイオードによって放射される画像形成用放射線に対して十分透明であることが必要である。必要に応じて支持体は、続いて塗布されるコーティングに対するその湿潤性および接着性を改変するために表面処理することができる。このような表面処理には、コロナ放電処理と、下塗層または剥離層の適用とがある。
【0122】
ドナー要素用の好ましい支持体は、ポリエチレンテレフタレートシートである。典型的には、このポリエチレンテレフタレートシートは、厚さ約20μm〜約200μmである。
【0123】
バインダー
色材層中のバインダーは、ヒドロキシルポリマー(すなわち複数個の水酸基を有するポリマー)を含んだバインダーを含む。好ましくはそのバインダーの100%がヒドロキシルポリマーである。このバインダーは、色材層の他の選択された成分と相溶性であるべきであり、かつ低級アルコール、ケトン、エーテル、炭化水素、ハロアルカンなどの適切な塗料溶媒に可溶性であるべきである。
【0124】
この水酸基は、アルコール基またはフェノール基、あるいはその両方であることができる。主にアルコール基を含むバインダーが適している。ヒドロキシルポリマーは、アリルアルコールなどの官能性モノマーと、アクリル酸またはメタクリル酸ヒドロキシアルキルの重合または共重合により、あるいは予め形成されたポリマーの化学的転化、例えば酢酸ビニルなどのビニルエステルのポリマーまたはコポリマーの加水分解により得ることができる。ポリ(ビニルアルコール)、セルロースなどの高度の水酸官能基を有するポリマーが本発明で使用するのに原則的には適しているが、実際にはその赤外線溶解性(infrared solubility)および他の物理化学的特性は大部分の用途にとって決して理想的ではない。水酸基の大部分をエステル化、エーテル化、またはアセタール化することによって得られるこのようなポリマーの誘導体が、一般にすぐれた溶解度およびフィルム形成特性を示し、少なくとも少ない割合の水酸基が未反応のまま残るという条件でこれらは本発明で使用するのに適している。
【0125】
バインダーとして使用するための一つの好適な水酸官能性ポリマーは、ポリ(ビニルアルコール)をブチルアルデヒドと反応させることによって形成される反応生成物である。この反応生成物の商用銘柄の場合、典型的には、少なくとも5%の未反応(すなわち遊離)の水酸基を残し、通常は一般的な有機溶剤中にあり、すぐれたフィルム形成特性および顔料分散特性を有する。
【0126】
好適な市販のヒドロキシルポリマーは、Solutia,Inc.(St.Louis,Missouri)から商品名BUTAVAR B−76で入手できるポリビニルブチラールポリマーである。この特殊なポリマーは、約140℃〜約200℃の軟化範囲を有する。BUTAVARシリーズのポリマーの他のヒドロキシルバインダーもまた用いることができる。Kuraray America,Inc.(New York,New York)から商品名MOWITALで入手できるポリビニルブチラールポリマーもまた適している。
【0127】
別法では1種類または複数種類の非架橋性バインダーと1種類または複数種類のヒドロキシ官能性バインダーのブレンドを用いることもできる。非架橋性バインダーは、色材の転写を妨げないように本発明の画像形成システムに適合すべきである。すなわち、画像形成中に用いられる条件に曝した場合に非反応性であるべきである。好適な非架橋性バインダーとしては、例えばポリエステル、ポリアミド、ポリカルバマート、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリエーテル、ポリビニルエーテル、ポリビニルエステル、ポリアクリラート、ポリメタクリラートなどが挙げられる。色材層中で上記ヒドロキシルバインダーと組み合わせることができる好適な市販の非架橋性バインダーの例には、DuPont(Wilmington,Delaware)から商品名ELVACITEで入手できるポリ(メタクリル酸メチル)が挙げられる。レーザアドレス画像形成条件下で分解するポリマーは、全く役に立たなくはないがバインダーとして適切とはいえない。例えば塩化ビニルのポリマーおよびコポリマーは分解して塩素を放出する恐れがあり、それが変色と、正確な色の一致に関する問題を引き起こすので望ましいとはいえない。
【0128】
総計のバインダーは、色材層の固形分含量を基準にして一般に約25質量%〜約75質量%の量、より適切には約35質量%〜約65質量%の量で存在する。
【0129】
フルオロカーボン添加剤
色材層は、一般的には、融解または軟化したフィルムの転写能力を高め、また輪郭のはっきりした一般的には連続した比較的鋭いエッジを有するハーフトーン網点(すなわち画素)の生成能力を高めるためにフルオロカーボン添加剤も含む。画像形成条件下でこのフルオロカーボン添加剤は、レーザに露光し加熱された領域と非露光領域の界面で色材層内の凝集力を下げるように働き、それによってその色材層の主要面に垂直の方向で露光領域のきれいな「シアリング(shearing)」を増進する。これは、露光領域が色材層の残りの部分から分離するので「裂け」または他のゆがみの傾向がより少ないため、鋭いエッジを有する改善された完全な形のドットをもたらす。
【0130】
その選択されるフルオロカーボン添加剤が、通常のコーティングおよび乾燥条件下で実質的に不揮発性であり、かつそのバインダー材料と十分に相溶性であるという条件で、この添加剤として広範な様々な化合物を使用することができる。したがってポリテトラフルオロエチレンおよびポリフッ化ビニリデンなどの高度に不溶性のフルオロカーボンは、過フッ化アルカンなどの気体または低沸点の液体と同様に適さない。上記を除いて高分子材料およびより低分子量の材料の両方を用いることができる。
【0131】
好適なフルオロカーボン添加剤は、Patel他の米国特許第5,935,758号に記載されている。他の好適なフルオロカーボン化合物は、欧州特許公開第0 602 893号およびその中に引用された文献中に報じられている。好ましいフルオロカーボン添加剤は、スルホンアミノ化合物である式、(C17)SONH(CHCH)を有するN−エチルペルフルオロオクタンスルホンアミドであり、これは直鎖70%と分枝鎖30%を含む。このフルオロカーボン添加剤は、色材層の乾燥コーティング質量を基準にして一般に約1質量%〜約10質量%で用いられる。好ましくはフルオロカーボン添加剤と転写可能な色材の質量比は、最低で約1:10、またより好ましくは最低で約1:5である。
【0132】
潜伏性架橋剤
本明細書中で用いる「潜伏性架橋剤」とは、レーザアドレスの条件下でのみ架橋を引き起こすことができる化合物である。好適な潜伏性架橋剤には、例えばジヒドロピリジンから誘導される化合物が挙げられる。ジヒドロピリジンの好適な誘導体は、その環の位置のいずれかにおいてアルキルまたはアリール基などの適切な置換基で置換することができる。具体的にはジヒドロピリジンの3,5−ジカルボキシルジエステル誘導体が潜伏性架橋剤として適している。また、ポリマー骨格中に組み込まれたジヒドロピリジンの3,5−ジカルボキシルジエステル誘導体を含むポリマーが適している場合もある。この色材層に有用な潜伏性架橋剤が、Patel他の米国特許第5,935,758号に記載されている。
【0133】
この潜伏性架橋剤は、その色材層の固形分含量を基準にして約30質量%までの量で色材層中に存在する。別法では潜伏性架橋剤は、受容要素中に存在することもできる。
【0134】
この潜伏性架橋剤は、転写された色材中で凝集を与えるために重要であると考えられる。これは、フルオロカーボン添加剤の作用を補完し、凝集性フィルムとして露光領域の転写を引き起こす。それはまたドナー要素へ戻る色材の再転写、および後続の画像形成ステップにおいて別個のドナー要素への色材の逆転写を防止ために重要であると考えられる。
【0135】
レーザ画像形成中にこの潜伏性架橋剤は、光励起した赤外線吸収性染料と反応して対応するピリジニウム化合物を形成し、それが活性化してヒドロキシルバインダーを架橋させると考えられる。
【0136】
任意選択の添加剤
塗布助剤、分散助剤、蛍光増白剤、UV吸収剤、充填剤などもまた、この色材層中に取り込むことができる。これらの様々な添加剤は当業界でよく知られている。
【0137】
分散助剤、すなわち「分散剤」は、最高の分散特性を達成するために望ましい場合がある。分散助剤の幾つかの例には、例えばポリエステル/ポリアミンコポリマー、アルキルアリールポリエステルアルコール、アクリルバインダー、および湿潤剤が挙げられる。色材層における一つの好適な分散剤は、顔料親和性の基を有するブロックポリマーであり、これはByk−Chemie USA(Wallingford,Connecticut)から商品名DISPERBYK 161で入手できる。この分散助剤は、その色材層の固形分含量を基準にして好ましくは約1重量%〜約6重量%の量で色材層中に用いられる。
【0138】
界面活性剤をコーティング助剤として用いて溶液の安定性を改良することができる。広範な様々な界面活性剤を用いることができる。一つの好適な界面活性剤は、コーティング品質を改良するために色材層中に用いられるフルオロカーボン界面活性剤である。好適なフルオロカーボン界面活性剤には、Yonkoski他の米国特許第5,380,644号に記載のフッ素化ポリマーなどのフッ素化ポリマーが挙げられる。適切な量は、約0.05質量%〜約5質量%未満の範囲であることができ、また一般には約1質量%〜約2質量%の範囲である。
【0139】
受容要素
さきに述べたように適切な受容要素は、熱転写画像形成においてドナー要素などの色記憶要素から転写された色材を像様に受容することができる少なくとも1つの主要面を有する材料、一般にはシート形態の材料である。画像形成システム用の受容要素の従来の構造は、前述の通りである。従来の受容要素は、画像処理中に中間受像要素が必要な場合など、画像形成システム中で適切に使用することができる。
【0140】
この受像要素が漂白要素であることが必要な場合、その画像形成システム用には上記のように本発明による受像要素が適している。このような受容要素は、受像面を有するシート状支持体と、その支持体の受像面上の高分子バインダーおよびビグアニド漂白剤を含むコーティングとを含む。このビグアニド漂白剤は、そのビグアニド漂白剤と赤外線吸収性染料が接触した場合に、その赤外線吸収性染料を漂白する能力を有する。このコーティングはテクスチャ付与材料を含むことができ、また界面活性剤または酸化防止剤などの他の添加剤を含んでもよい。
【0141】
校正刷基板
本明細書中で用いる語句「校正刷基体」は、画像担持要素から、または直接ドナー要素から転写された色材を像様に受け取ることができる少なくとも1つの主要面を有する材料、一般的には、シート形態の材料を指す。校正刷基体は、重ね刷り校正刷などの最終の印刷前校正刷に用いるのに適しているべきであり、一般的には紙またはカードストックから作られるが他の材料もまた適している。
【0142】
従来の校正刷基体をこの画像形成システムに好適に使用することができる。好適な校正刷基体の例には、MATCHPRINT Low Gain Commercial Base、MATCHPRINT Commercial Base、MATCHPRINT Publication Base、およびMATCHPRINT Superwhite Baseが挙げられ、それぞれKodak Polychrome Graphicsから入手できる。これらの各校正刷基体は、2枚のポリエチレン層の間にはさまれたペーパーシートを含む熱安定性防水材料である。
【0143】
校正刷基体が漂白要素であることが必要な場合、その校正刷基体は上記のように本発明による受容要素であることができる。このような校正刷基体は、受像面を有するシート状支持体と、この支持体の受像面上の高分子バインダーおよびビグアニド漂白剤を含むコーティングとを含む。このビグアニド漂白剤は、そのビグアニド漂白剤と赤外線吸収性染料が接触する場合、その赤外線吸収性染料を漂白する能力を有する。さらに本発明の別の実施形態は、受像面を有するシート状支持体と、その支持体の受像面上に配置され、高分子バインダーおよびビグアニド漂白剤を含むコーティングとを備え、このシート状支持体が紙またはカードストックである校正刷基体を提供する。
【0144】
画像形成済み要素の作製方法
一体型校正刷の制作に有用な方法をまた本発明により提供する。この方法は、a)転写可能な色材と赤外線吸収性染料とを含む色担持要素を用意するステップ、b)シート状支持体を含み、このシート状支持体の受像面にコーティングを有し、このコーティングが高分子バインダーおよびビグアニド漂白剤を含む漂白要素を用意するステップ、c)漂白要素の受像面が色記憶要素に隣接した状態で色担持要素と漂白要素を近接させて集成するステップ、およびd)この色担持要素から漂白要素の受像面へ色材を像様に転写するステップを含む。
【0145】
本発明により提供される方法は、その色担持要素が中間受像要素などのドナー要素または画像担持要素であることができ、かつその漂白要素が受容要素または校正刷基体であることができるので校正刷工程に多くの順応性を与える。
【0146】
この方法の一実施形態では、色担持要素が上記のようにドナー要素であり、漂白要素が受容要素である。ドナー要素から受容要素へ色材を像様に転写するための従来の手順を用いることができる。一般的には、このドナー要素と受容要素は、受容要素の受像面がドナー要素に隣接した状態に近接させて集成される。この文脈における語句「近接」とは、これら要素が接触しているか、または互いに接触していないが画像形成放射線に露光したとき色材の転写を可能にするのに足るほど十分に近接していることを意味する。真空ホールドダウンまたは機械的手段を用いて集成体中にドナー要素と受容要素を固定することができる。
【0147】
一実施形態では、色材を転写するステップには、赤外線を用いてこのドナーおよび受容要素の集成体を像様に露光してドナー要素から受容要素への色材の像様転写を引き起こすことが含まれる。赤外線は、例えばダイオードレーザまたはNd:YAGレーザなどのコンピュータ制御下で走査またはラスター化することが可能な赤外線レーザにより得ることができる。周知の走査装置、例えば平板式スキャナ、外筒型スキャナ、または煙筒型スキャナを用いることができる。これらの装置ではこの画像形成される集成体はその筒または板に固定され、レーザ光線はドナー要素の色材層上の当てることができるスポットに集束される。このレーザのスポットは、レーザ出力を電子的に格納された画像情報に従って調節しながら、画像形成される全領域にわたって走査する。2台以上のレーザが同時に集成体の異なる領域を走査して処理量を増すこともできる。レーザアドレスは、通常は集成体のドナー要素側からであるが、受容要素がレーザ放射線に対して透明である場合には受容要素側からであってもよい。
【0148】
画像形成の後、ドナー要素を受容要素から剥がして、赤外線吸収性染料の共転写により多くの場合汚染されていると思われる受容要素上の画像を現すことができる。このような状況において受容要素上の漂白剤は、赤外線吸収性染料を漂白することができる。
【0149】
幾つかの実施形態では受容要素上にある画像を任意選択で熱処理、好ましくは約華氏100度を超える温度の熱処理にかけることによって硬化することができる。熱処理は、オーブン中に保管する、熱風処理、加熱プラテンとの接触、または加熱ローラー装置を通過させるなどの様々な手段によって行うことができる。熱処理はまた、熱漂白剤を開始させるためにも効果がある。多色画像形成(より完全には次に述べる)の場合、2つ以上の単色画像をばらばらのドナー要素から単一の受容要素へ転写するには、個々の色材転写ステップがすべて終わるまで硬化のステップを遅らせるのがより好都合である。しかしながら個々の転写された画像が、未硬化の状態で特に軟らいかまたは損傷を受け易い場合、次の転写ステップの前に各単色画像を硬化し、固める必要がある場合がある。他の実施形態では、硬化を引き起こすのに熱処理は必要でない。
【0150】
この方法の別の実施形態ではステップa)からd)を、種々の色のドナー要素シートと個々の受容要素とを用いて1回または複数回繰り返すことができる。各繰返しの後、その転写された色材を、続いてそれぞれの画像担持受容要素から1つの校正刷基体へ見当合わせして像様に転写(各受容要素のシート状支持体が校正刷基体から剥がされた状態で)することができる。このやり方で多色画像を校正刷基体上に集めることができる。この実施形態はオーバープリントすなわち重ね刷りによる校正刷の作成に適しているが、重ね刷りによる校正刷を作成するための下記述べる方法は、時間および材料に関してより効率的であり、また一般的に多色の画像の見当合わせの点でより高い精度が得られる。
【0151】
上記の方法はまた、色材をドナー要素から校正刷基体へ像様に直接転写するのに適している。この方法の別の実施形態ではステップa)からd)を、種々の色のドナー要素シートと漂白要素としての単一校正刷基体とを用いて1回または複数回繰り返すことができる。このやり方で多色画像を校正刷基体上に集めることができる。この実施形態はオーバープリントすなわち重ね刷りによる校正刷を作成するのに適しているが、重ね刷りによる校正刷を作成するための次に述べる方法は、時間および材料に関してより効率的であり、また一般的に多色の画像の位置合わせの点でより高い精度が得られる。
【0152】
多くの状況においては色材を最初に中間受像要素に像様に転写する。これはその上に画像が見られる最終の基体ではない。この色材は、続いて例えば校正刷用の校正刷基体などの別の媒体に転写される場合が多い。したがって、この方法の別の実施形態では、色担持要素は画像担持要素(画像担持中間要素など)であり、また漂白要素は校正刷基体である。像様に転写された後は、この中間要素が画像担持中間要素である。次いで色材をこの画像担持中間要素から校正刷基体などの別の支持体へ像様に転写することができる。
【0153】
この画像担持中間要素から校正刷基体への色材の像様転写は、一般的にはこの中間要素の画像担持面をその校正刷基体の受像面と近接させ、次いでその中間要素を全体的に加熱して色材の校正刷基体への像様転写を引き起こすことによって行うことができる。次いでこの中間要素のシート状支持体を校正刷基体から剥がしてその校正刷基体上に画像を現すことができる。場合によっては、色材の像様転写はまた、圧力の作用によって、またはその色記憶および漂白要素の集成体の全体的加熱によって達成することもできる。熱漂白を開始させるのには、加熱がさらに有効であろう。
【0154】
一体校正刷の作成方法
本発明はまた、少なくとも2種類の色を含む画像を有する重ね刷りによる校正刷などの一体校正刷の作成方法を含む。この方法は、a)転写可能な色材と赤外線吸収性染料とを含むドナー要素を用意するステップ、b)シート状支持体を備え、そのシート状支持体の受像面上にコーティングを有し、そのコーティングが高分子バインダーおよびビグアニド漂白剤を含む受容要素を用意するステップ、c)その受容用シート状支持体の受像面がドナー要素に隣接した状態で、このドナー要素と受容要素を近接させて集成するステップ、d)このドナー要素と受容要素の集成体を赤外線を用いて像様露光して、ドナー要素から受容要素への色材の像様転写をもたらすステップ、e)第二の転写可能な色材および第二の赤外線吸収性染料を含む第二のドナー要素を用意するステップ、f)その受容用シート状支持体の受像面がその第二のドナー要素と隣接した状態で、この第二のドナー要素とこの受容要素を近接させて集成するステップ、g)この第二のドナー要素と受容要素の集成体を見当合わせして赤外線を用いて像様露光して、第二のドナー要素からその受容要素への色材の像様転写をもたらすステップ、およびh)その転写された色材をこの受容要素から校正刷基体へ像様転写するステップを含む。
【0155】
ステップa)からd)は、画像形成された要素の作製方法に関して上記で述べた通りに行う。ステップe)からg)は、第二の転写可能な色材および第二の赤外線吸収性染料を有する第二のドナー要素を用いて同様に行う。一般にはこの第二のドナー要素は、第一のドナー要素とは異なる色材を有するはずである。この第二の赤外線吸収性染料は、第一の赤外線吸収性染料と同一でもよく、また異なってもよい。この第二のドナー要素とこの受容要素は、その受容要素の受像面がこの第二のドナー要素と隣接した状態に近接させて集成される。次いでこの集成体を見当合わせして像様露光して、第二のドナー要素からこの受容要素への色材の像様転写をもたらす。この像様露光は、受容要素上で2つの色画像がオンプレスで得られる最終印刷物を正確に表すことになるように位置合わせして行わなければならない。
【0156】
ステップe)からg)は、第三の色材には第三のドナー要素、また任意選択で第四の色材には第四のドナー要素などを用いて同様に繰り返すことができる。多色の画像は、このやり方で受容要素上に集めることができる。普通、この受容要素上の多色の画像を用いてCMYK校正刷などの4色校正刷を作成することができる。その追加の色がスポットカラーまたはカスタムカラーである場合、校正刷がさらに5色や6色を有することも稀ではない。
【0157】
後続のステップでは転写された色剤が、画像担持受容要素から校正刷基体へ像様に転写される。この受容要素から校正刷基体への色材の像様転写は、一般的には、受容要素の画像担持面を校正刷基体の受像面と接触させ、次いでその受容要素を全体的に加熱して色材の校正刷基体への転写を引き起こすことによって行うことができる。次いでこの受容要素のシート状支持体を校正刷基体から剥がしてその校正刷基体上に画像を現すことができる。場合によっては、色材の像様転写は、圧力の作用によって、またはその受容要素および校正刷基体の集成体の全体的な加熱によっても達成することもできる。
【0158】
好適な校正刷基体の例は、Kodak Polychrome Graphicsから入手できるMATCHPRINT Low Gain Commercial Baseである。
【実施例】
【0159】
実施例1: 1−(o−トリル)ビグアニドを含むコーティング組成物
コーティング組成物を表1に示す配合に従って作製した。
【0160】
【表1】

【0161】
実施例2: フェニルビグアニドを含むコーティング組成物
コーティング組成物を、1−(o−トリル)ビグアニドの代わりにフェニルビグアニドを用いたことを除いて実施例1と同様に作製した。
【0162】
実施例3: 塩酸フェニルビグアニドを含むコーティング組成物
コーティング組成物を、1−(o−トリル)ビグアニドの代わりに塩酸フェニルビグアニドを用いたことを除いて実施例1と同様に作製した。
【0163】
比較例4: ジフェニルグアニジンを含むコーティング組成物
コーティング組成物を表2に示す配合に従って作製した。
【0164】
【表2】

【0165】
実施例5: 1−(o−トリル)ビグアニドを含有するコーティングを有する受容要素
第一の受容要素(5−1)を、#38マイヤバーを用いてポリエステルシート(MELINEX 574)上に実施例1で得たコーティング組成物を適用することによって作製した。このコーティング組成物は、約13%の固形分を含有し、乾燥時に厚さ約5μmを有するコーティングを生成するのに適する。このコーティングを華氏200度の温度で180秒間乾燥した。
【0166】
第二の受容要素(5−2)を、実施例1で得たコーティング組成物の代わりに実施例2で得たコーティング組成物を使用し、MELINEX 574の代わりにMYLAR EB 31を使用し、また剥離層をコーティング組成物の適用に先立ってMYLARシートに適用したことを除いて実施例5の場合と同様に作製した。この剥離層は、トルエン/MEK50:50(w:w)の溶剤混合液中の5質量%のPLIOLITE S−5Aからなる組成物を用いて適用した。この剥離層は#10マイヤバーを用いて適用した。
【0167】
第三の受容要素(5−3)を、実施例1で得たコーティング組成物の代わりに実施例2で得たコーティング組成物を使用し、MELINEX 574の代わりにMYLAR EB 11を使用し、また剥離層をコーティング組成物の塗布に先立ってMYLARシートに適用したことを除いて実施例5の場合と同様に作製した。この剥離層は、トルエン/MEK50:50(w:w)の溶剤混合液中の5質量%のPLIOLITE S−5Aからなる組成物を用いて適用した。この剥離層は、#10マイヤバーを用いて適用した。
【0168】
実施例6: フェニルビグアニドを含有するコーティングを有する受容要素
受容要素を、実施例1で得たコーティング組成物の代わりに実施例2で得たコーティング組成物を用いたことを除いて実施例5の場合と同様に作製した。
【0169】
実施例7: 塩酸フェニルビグアニドを含有するコーティングを有する受容要素
受容要素を、実施例1で得たコーティング組成物の代わりに実施例3で得たコーティング組成物を使用し、また#38マイヤバーの代わりに#50マイヤバーを使用したことを除いて実施例5の場合と同様に作製した。
【0170】
比較例8: ジフェニルグアニジンを含有するコーティングを有する受容要素
受容要素を、ポリエステルシート(MELINEX 574)上に比較例4で得たコーティング組成物を#38マイヤバーを用いて適用することによって作製した。このコーティング組成物は、約13%の固形分を含有し、乾燥時に厚さ約5μmを有するコーティングを生成するのに適する。このコーティングを華氏200度の温度で180秒間乾燥した。
【0171】
実施例9: 1−(o−トリル)ビグアニドを含有するコーティングを有する受容要素から作られる画像形成済み要素
実施例5で得た受容要素5−1の受像面を、Kodak Polychrome Graphicsから入手できるシアン色のMATCHPRINT DIGITAL HALFTONEドナー要素の色材層に隣接しかつきわめて接近させて配置した。このドナー要素はその色材層中に赤外線染料を含有する。この色材層は画像形成時に転写し、受容要素上にそのスペクトルの可視領域中の干渉物質として赤外線染料を残す恐れがある。
【0172】
この集成体を、Creo,Inc.(Burnaby,British Columbia)から得たTRENDSETTER画像装置を用いて830 nmの赤外線に画像どおりに露光した。この画像形成された受容要素をドナー要素から剥がした。次いでこの受容要素の画像担持面を校正刷基体(Kodak Polychrome Graphicsから入手できるMATCHPRINT COMMERCIAL BASE)の受像面と接触させて配置した。次いでこの画像担持受容要素からの色材を、Model 447L貼合せ機(Kodak Polychrome Graphicsから入手できる)を用いて熱でその校正刷基体に像様転写した。次いで校正刷基体上に表読み画像を残して、この受容要素からのシート状支持体をその校正刷基体から剥がした。結果として画像形成済み要素9−1が得られた。
【0173】
この手順を、受容要素5−1の代わりに受容要素5−2を用いたことを除いて繰り返した。画像形成済み要素9−2が得られた。
【0174】
この手順を、受容要素5−1の代わりに受容要素5−3を用いたことを除いて繰り返した。画像形成済み要素9−3が得られた。
【0175】
実施例10: フェニルビグアニドを含有するコーティングを有する受容要素から作られる画像形成済み要素
受容要素5−1の代わりに実施例6で得た受容要素を用いたことを除いて実施例9に対する手順を繰り返した。
【0176】
この赤外線吸収性染料の漂白速度は、実施例9で得られる画像形成済み要素の場合の漂白速度よりも低いと考えられた。この結果は、このコーティング組成物中のフェニルビグアニドの溶解度が1−(o−トリル)ビグアニドと比べて低いせいである可能性がある。
【0177】
実施例11: 塩酸フェニルビグアニドを含有するコーティングを有する受容要素から作られる画像形成済み要素
受容要素5−1の代わりに実施例7で得た受容要素を用いたことを除いて実施例9に対する手順を繰り返した。
【0178】
比較例12: ジフェニルグアニジンを含有するコーティングを有する受容要素から作られる画像形成済み要素
比較例2で得た受容要素の受像面を、シアン色のMATCHPRINT DIGITAL HALFTONEドナー要素の色材層に隣接しかつ近接させて配置した。この集成体を、Creo TRENDSETTER画像装置を用いて830nmの赤外線に像様露光した。この画像形成された受容要素をドナー要素から剥がした。次いでこの受容要素の画像記憶面を校正刷基体(MATCHPRINT COMMERCIAL BASE)の受像面と接触させて配置した。次いでこの画像担持受容要素からの色材を、Model 447L貼合せ機を用いて熱でその校正刷基体に像様に転写した。次いでこの校正刷基体上に表読み画像を残して、この受容要素からのシート状支持体をその校正刷基体から剥がした。結果として画像形成済み要素が得られた。
【0179】
実施例13: 実施例9の画像形成済み要素の△Eおよび彩度変化
実施例9で得た画像形成済み要素9−1上の画像の色を分析して初期L***値を得た。これらの実施例中で与えられるすべてのL***値は、GretagMacbeth LLC(New Windsor,New York)から得られるSPM 100分光光度計を用いて測定した。彩度(c*)は、式、下記式によりa*およびb*の値から計算した。
【0180】
【数1】

【0181】
次いでこの画像形成済み要素をオーブン中での95℃、3分間の加熱による加速エージングにかけた。画像形成済み要素上の画像の色を分析してエージング後L***値を求め、またc*をa*およびb*から計算した。
【0182】
これらの初期L***値およびエージング後L***値を用いて△Eを計算した。このL***色モデルにおいて△Eを計算するための式は、下記のとおりである。
【0183】
【数2】

【0184】
***モデルでは△Eを用いてL***色空間における2つの色の間の「距離」を数学的に記述する。△Eの大きさの意味はそれらの色に強く左右される。非常に濃い色の場合、何気ない観察者も△Eが約4〜5の範囲にある2つの色の間の違いに気付くことができる。訓練された目は、△Eが約2〜3の範囲にある2つの色を識別する能力がある。白または灰色の色あいの場合には、△Eが約0.5〜1の範囲にある色の違いを知覚することができる。
【0185】
画像形成済み要素9−1上の画像については、その初期L***値をエージング後L***値と比較した場合、△Eを計算すると0.79であり、これはシアン画像に対する知覚できる差である。同様に調製した第二のこのような画像形成済み要素の場合、△Eを計算すると0.89であった。
【0186】
また、彩度の変化の割合を計算して初期の彩度をエージング後の彩度と比較した。c*の変化の割合を計算すると0.75%であり、これは画像がエージング時にきわめてわずか鮮明になったに過ぎないことを示している。第二の画像形成済み要素の場合、c*の変化の割合を計算すると0.66%であった。
【0187】
画像形成済み要素9−2上の画像について測定および加速エージングを上記と同様に行った。その初期L***値をエージング後L***値と比較した場合、△Eを計算すると0.84であった。c*の変化の割合を計算すると0.95%であった。
【0188】
画像形成済み要素9−3上の画像について測定および加速エージングを上記と同様に行った。その初期L***値をエージング後L***値と比較した場合、△Eを計算すると2.38であった。c*の変化の割合を計算すると3.03%であった。
【0189】
実施例14: 実施例10の画像形成済み要素の△Eおよび彩度変化
実施例10で得た画像形成済み要素上の画像について測定および加速エージングを実施例13の場合と同様に行った。その初期L***値をエージング後L***値と比較した場合、△Eを計算すると5.54であった。c*の変化の割合を計算すると6.65%であった。
【0190】
実施例15: 実施例11の画像形成済み要素の△Eおよび彩度変化
実施例11で得た画像形成済み要素上の画像について測定および加速エージングを実施例13の場合と同様に行った。その初期L***値をエージング後L***値と比較した場合、△Eを計算すると5.29であった。c*の変化の割合を計算すると8.13%であった。
【0191】
赤外線吸収性染料の漂白は、コーティング組成物中の塩酸フェニルビグアニドの溶解度が遊離塩基の形態のビグアニド化合物と比べてより低いせいで、また塩酸フェニルビグアニドが遊離塩基の形態のビグアニド化合物ほど塩基性でないことにより、それほど効果的でないと考えられる。
【0192】
比較例16: 比較例12で得た画像形成済み要素の△Eおよび彩度変化
比較例12で得た画像形成済み要素上の画像の色を分析して初期L***値を得た。彩度(c*)をa*およびb*から計算した。
【0193】
次いでこの画像形成済み要素をオーブン中での95℃、3分間の加熱による加速エージングにかけた。この画像形成済み要素上の画像の色を分析してエージング後L***値を求め、またc*を計算した。
【0194】
この画像形成済み要素上の画像の場合、初期L***値をエージング後L***値と比較した場合、△Eを計算すると6.57であり、これはシアン画像に対する知覚できる差である。
【0195】
また、彩度の変化の割合を計算して初期の彩度をエージング後の彩度と比較した。c*の変化の割合を計算すると9.32%であり、これは画像がエージング時に著しく鮮明になったことを示している。
【0196】
上記実施例から得られた結果は、ビグアニド漂白剤を含有するコーティングを有する受容要素が、ジフェニルグアニジンを含有する同等の受容要素と比較した場合、より高い色忠実度を与えることを示している。
【0197】
具体的には1−(o−トリル)ビグアニドは、ジフェニルグアニジンよりも効率的かつ即効性であり、またジフェニルグアニジンを含有する同等の受容要素と比較した場合、より優れた色忠実度を与える。さらに1−(o−トリル)ビグアニドは、そのコーティング中に漂白剤としてジフェニルグアニジンを用いる場合に必要とするよりも低濃度の漂白剤で効力がある。
【0198】
実施例5: 1−(o−トリル)ビグアニドを含有するコーティングを有する受容要素を用いて作成される重ね刷りによる校正刷
4色重ね刷りによる校正刷は、次のように作成することができる。
実施例5〜7のいずれかで得られる受容要素の受像面を、Kodak Polychrome Graphicsから入手できるMATCHPRINT DIGITAL HALFTONEドナー要素の色材層と隣接しかつ近接させて配置する。この集成体を、適切な色分解データを使用し、Creo TRENDSETTER画像装置を用いて830nmの赤外線に画像どおりに露光させる。この画像形成した受容要素をドナー要素から剥がす。
【0199】
次に、この受容要素の画像担持面を、シアン色のMATCHPRINT DIGITAL HALFTONEドナー要素の色材層と隣接しかつ近接させて配置する。この集成体を、適切な色分解データを使用し、TRENDSETTER画像装置を用いて830nmの赤外線に像様に露光させる。この画像形成した受容要素をドナー要素から剥がす。マゼンタおよびイエローのドナー要素をそれぞれ同様のやり方で画像形成してこの受容要素上に4色の画像を生み出す。
【0200】
次いでこの受容要素の画像担持面を校正刷基体(MATCHPRINT COMMERCIAL BASE)の受像面と接触させて配置する。次いでこの画像担持受容要素からの色材を、Model 447L貼合せ機(Kodak Polychrome Graphicsから入手できる)を用いて熱でこの校正刷基体に像様に転写する。次いで校正刷基体上に表読み4色画像を残して、この受容要素からのシート状支持体をその校正刷基体から剥がす。この得られた重ね刷りによる校正刷は、プルーフ校正刷として適している。
【0201】
任意選択のつや消しのステップを行って重ね刷りによる校正刷の光沢を減らすことができる。例としてこの重ね刷りによる校正刷の画像担持面をMATCHPRINT Digital Halftone Semi−Matte Degloss Sheetと接触させて配置し、Model 447L貼合せ機を通して処理することができる。
【0202】
前述の詳細な説明および実施例は、はっきり理解するためにのみ示した。本発明は、示し記述したとおりの細部には限定されない。本発明は、その精神および範囲から逸脱することなく様々な修正形態および変更形態を取ることができる。本発明は本明細書中に具体的に開示されていない任意の要素がない場合でも適切に実施することができることもまた理解されたい。本発明の好ましい実施形態の記述においては理解しやすいように特定の術語を用いている。しかしながら本発明は、このように選択された特定の術語に限定されるものではなく、このように選択された各用語には同様に働くすべての技術的同義語が含まれることを理解されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱転写画像形成用の受容要素であって、
a)受像面を有するシート状支持体、および
b)前記支持体の受像面に配置され、高分子バインダーと、熱転写画像形成中に前記受容要素の受像面に転写される赤外線吸収性染料を漂白するためのビグアニド剤とを含むコーティング、
を含んでなる受容要素。
【請求項2】
前記ビグアニド剤が、ビグアニド化合物、ビス−ビグアニド化合物、高分子ビグアニド、およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の受容要素。
【請求項3】
前記ビグアニド剤が遊離塩基の形態にあるビグアニド化合物である、請求項1に記載の受容要素。
【請求項4】
前記ビグアニド剤がアリールビグアニド化合物である、請求項3に記載の受容要素。
【請求項5】
前記アリールビグアニド化合物がフェニルビグアニドである、請求項4に記載の受容要素。
【請求項6】
前記アリールビグアニド化合物がアルキルフェニルビグアニド化合物である、請求項4に記載の受容要素。
【請求項7】
前記アルキルフェニルビグアニド化合物が、置換基として少なくとも1個のC〜Cアルキル基を有するフェニル環を含む、請求項6に記載の受容要素。
【請求項8】
前記アルキルフェニルビグアニド化合物が1−(o−トリル)ビグアニドである、請求項6に記載の受容要素。
【請求項9】
前記支持体がポリエステルフィルムを含んでなる、請求項1に記載の受容要素。
【請求項10】
前記支持体がテクスチャ付きポリエステルフィルムを含んでなる、請求項1に記載の受容要素。
【請求項11】
前記バインダーがヒドロキシルポリマーを含む、請求項1に記載の受容要素。
【請求項12】
前記バインダーがポリビニルブチラールを含んでなる、請求項1に記載の受容要素。
【請求項13】
前記バインダーがスチレン/アリルアルコールコポリマーを含んでなる、請求項1に記載の受容要素。
【請求項14】
前記コーティングが、ビグアニド剤1質量部に対して約5〜約20質量部のバインダーを含む、請求項1に記載の受容要素。
【請求項15】
前記コーティングが、約3〜約50μmの範囲内の平均粒径により特徴付けられる粒状材料をさらに含む、請求項1に記載の受容要素。
【請求項16】
前記コーティングが、粒状材料1質量部に対して約20〜約80質量部のバインダーを含む、請求項15に記載の受容要素。
【請求項17】
前記粒状材料が、約3〜約50μmの範囲内の平均直径を有する高分子ビーズを含む、請求項15に記載の受容要素。
【請求項18】
前記粒状材料が、約5〜約25μmの範囲内の平均直径を有する高分子ビーズを含む、請求項17に記載の受容要素。
【請求項19】
前記高分子ビーズがポリ(メタクリル酸メチル)ビーズを含む、請求項17に記載の受容要素。
【請求項20】
前記高分子ビーズが、約10μmの平均直径を有するポリ(メタクリル酸メチル)ビーズを含む、請求項17に記載の受容要素。
【請求項21】
前記コーティングが約2μm〜約20μmの厚さを有する、請求項1に記載の受容要素。
【請求項22】
前記コーティングが、
前記高分子バインダーを前記コーティングの固形分含量を基準にして40〜90質量%、
ポリ(メタクリル酸メチル)ビーズを前記コーティングの固形分含量を基準にして0.1〜35質量%、および
前記ビグアニド剤を前記コーティングの固形分含量を基準にして2〜25質量%、
含んでなる、請求項1に記載の受容要素。
【請求項23】
前記コーティングが、
前記高分子バインダーとしてポリビニルブチラールを前記コーティングの固形分含量を基準にして40〜90質量%、
ポリ(メタクリル酸メチル)ビーズを前記コーティングの固形分含量を基準にして0.1〜35質量%、および
前記ビグアニド剤として1−(o−トリル)ビグアニドを前記コーティングの固形分含量を基準にして2〜25質量%、
含んでなる、請求項1に記載の受容要素。
【請求項24】
前記シート状支持体と前記コーティングの間に配置された剥離層をさらに含んでなる、請求項1に記載の受容要素。
【請求項25】
前記剥離層がスチレン/ブタジエンコポリマーを含んでなる、請求項24に記載の受容要素。
【請求項26】
前記受容要素が校正刷基体である、請求項1に記載の受容要素。
【請求項27】
前記シート状支持体が紙またはカードストックである、請求項26に記載の受容要素。
【請求項28】
シート状支持体、および
前記支持体上に配置された転写可能なコーティングであって、高分子バインダーと、熱転写画像形成中に前記転写可能なコーティングと接触した赤外線吸収性染料を漂白するためのビグアニド漂白剤とを含むコーティング、
を含んでなる、漂白剤転写要素。
【請求項29】
前記シート状支持体と前記転写可能なコーティングの間に配置された剥離層をさらに含んでなる、請求項28に記載の漂白剤転写要素。
【請求項30】
熱転写画像形成用の受容要素の製造方法であって、
受像面を有するシート状支持体を用意するステップ、および
高分子バインダーと、熱転写画像形成中に前記受容要素の受像面に転写された赤外線吸収性染料を漂白するためのビグアニド剤とを含んでなるコーティングを前記シート状支持体の受像面に適用するステップ、
を含む方法。
【請求項31】
コーティングを適用する前記ステップが、
前記高分子バインダーおよび前記ビグアニド剤を適切な溶媒または溶媒混合物中に溶解または分散させてコーティング組成物を調製すること、
前記シート状支持体の受像面に前記コーティング組成物を接触させてこのシート状支持体上に前記コーティング組成物の層を生成させること、および
前記シート状支持体上に前記コーティングを残すために、前記コーティング組成物を乾燥して前記溶媒の少なくとも一部を除去すること、
を含む、請求項28に記載の方法。
【請求項32】
コーティングを適用する前記ステップが、前記シート状支持体の受像面に剥離層を適用することをさらに含む、請求項28に記載の方法。
【請求項33】
受容要素を製造するためのコーティング組成物であって、
高分子バインダーを前記組成物の固形分含量を基準にして40〜90質量%、
ビグアニド漂白剤を前記組成物の固形分含量を基準にして2〜25質量%、および
約3〜約50μmの範囲内の平均粒径により特徴付けられる粒状材料を前記組成物の固形分含量を基準にして0.1〜35質量%、
含む、コーティング組成物。
【請求項34】
前記ビグアニド漂白剤が、ビグアニド化合物、ビス−ビグアニド化合物、高分子ビグアニド、およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項33に記載のコーティング組成物。
【請求項35】
前記ビグアニド漂白剤が遊離塩基の形態にあるビグアニド化合物である、請求項33に記載のコーティング組成物。
【請求項36】
前記ビグアニド剤がアリールビグアニド化合物である、請求項35に記載のコーティング組成物。
【請求項37】
前記アリールビグアニド化合物がフェニルビグアニドである、請求項36に記載のコーティング組成物。
【請求項38】
前記アリールビグアニド化合物がアルキルフェニルビグアニド化合物である、請求項36に記載のコーティング組成物。
【請求項39】
前記アルキルフェニルビグアニド化合物が、置換基として少なくとも1個のC〜Cアルキル基を有するフェニル環を含む、請求項38に記載のコーティング組成物。
【請求項40】
前記アルキルフェニルビグアニド化合物が1−(o−トリル)ビグアニドである、請求項38に記載のコーティング組成物。
【請求項41】
前記バインダーがヒドロキシルポリマーを含んでなる、請求項33に記載のコーティング組成物。
【請求項42】
前記バインダーがポリビニルブチラールを含んでなる、請求項33に記載のコーティング組成物。
【請求項43】
前記バインダーがスチレン/アリルアルコールコポリマーを含んでなる、請求項33に記載のコーティング組成物。
【請求項44】
前記粒状材料がポリ(メタクリル酸メチル)ビーズを含んでなる、請求項33に記載のコーティング組成物。
【請求項45】
熱転写画像形成用の画像形成システムであって、
色材および赤外線吸収性染料を含んでなる色担持要素、および
画像形成面と、この画像形成面上に配置された高分子バインダーおよびビグアニド漂白剤を含むコーティングとを有するシート状支持体を含む漂白要素、
を含んでなり、
前記ビグアニド漂白剤と前記赤外線吸収性染料が接触した場合に、前記ビグアニド漂白剤が前記赤外線吸収性染料を漂白することができる、画像形成システム。
【請求項46】
前記色担持要素が、転写可能な色材を有するドナー要素である、請求項45に記載の画像形成システム。
【請求項47】
前記漂白要素が校正刷基体である、請求項45に記載の画像形成システム。
【請求項48】
前記校正刷基体のシート状支持体が紙またはカードストックである、請求項46に記載の画像形成システム。
【請求項49】
前記漂白要素が、前記ビグアニド漂白剤を含んでなる転写可能なコーティングを含む、請求項45に記載の画像形成システム。
【請求項50】
一体校正刷の作成に用いる方法であって、
転写可能な色材および赤外線吸収性染料を含んでなる色担持要素を用意するステップ、
受像面を有するシート状支持体と、この受像面上に、高分子バインダーおよびビグアニド漂白剤を含むコーティングとを含んでなる漂白要素を用意するステップ、
前記漂白要素の受像面が前記色担持要素に隣接した状態で、前記色担持要素と前記漂白要素を近接させて集成するステップ、および
前記色担持要素から前記漂白要素の受像面へ色材を像様に転写するステップ
を含む、方法。
【請求項51】
前記色担持要素がドナー要素であり、かつ前記漂白要素が受容要素である、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
色材を像様に転写する前記ステップが、
赤外線を用いて前記ドナー要素と前記受容要素の集成体を像様露光して前記ドナー要素から前記受容要素への色材の像様転写をもたらすことを含む、請求項50に記載の方法。
【請求項53】
赤外線レーザを像様露光のために使用する、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
第二の転写可能な色材および第二の赤外線吸収性染料を含んでなる第二のドナー要素を用意するステップ、
前記受容シート状支持体の受像面が前記第二のドナー要素に隣接した状態で、前記第二のドナー要素と前記受容要素を近接させて集成するステップ、
前記第二のドナーおよび受容要素の集成体を見当合わせして赤外線を用いて像様露光して、前記第二のドナー要素から前記受容要素への色材の像様転写をもたらすステップ、および
色材を前記受容要素から校正刷基体へ像様転写するステップ、
をさらに含む、請求項52に記載の方法。
【請求項55】
第三の転写可能な色材および第三の赤外線吸収性染料を含んでなる第三のドナー要素を用意するステップ、
前記受容シート状支持体の受像面が前記第三のドナー要素に隣接した状態で、前記第三のドナー要素と前記受容要素を近接させて集成するステップ、および
前記第三のドナーおよび受容要素の集成体を見当合わせして赤外線を用いて像様露光して、前記第三のドナー要素から前記受容要素への色材の像様転写をもたらすステップ、
をさらに含む、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記色担持要素が画像担持要素であり、色材を像様転写する前記ステップが圧力の作用下または前記色担持要素および漂白要素の集成体の全体的な加熱下で色材を転写することを含む、請求項50に記載の方法。
【請求項57】
前記漂白要素が校正刷基体である、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記シート状支持体が紙またはカードストックである、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記赤外線吸収性染料の一部が色材の像様転写の間に前記漂白要素の受像面に転写され、前記ビグアニド漂白剤が前記転写された赤外線吸収性染料を漂白する、請求項50に記載の方法。

【公表番号】特表2007−506586(P2007−506586A)
【公表日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−528233(P2006−528233)
【出願日】平成16年9月24日(2004.9.24)
【国際出願番号】PCT/US2004/031423
【国際公開番号】WO2005/030492
【国際公開日】平成17年4月7日(2005.4.7)
【出願人】(598108641)コダック ポリクロウム グラフィクス リミティド ライアビリティ カンパニー (10)
【出願人】(506099878)
【Fターム(参考)】