説明

熱硬化型粉体塗料用樹脂組成物及びアルミホイール用粉体塗料用樹脂組成物

【課題】貯蔵安定性が高く、塗膜外観、耐食性、耐水性に優れた粉体塗料を得るのに好適な熱硬化型粉体塗料用樹脂組成物、及び、アルミホイール上に単層もしくはプライマーとして被覆するのに好適なアルミホイール用粉体塗料用樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】エポキシ当量180〜560g/当量、重量平均分子量4,000〜15,000のエポキシ基含有ビニル系樹脂(A)と、エポキシ当量720〜14,000g/当量、重量平均分子量25,000〜120,000のエポキシ基含有ビニル系樹脂(B)と、多価カルボン酸及び/又はその無水物(C)を含有してなり、かつ、エポキシ基含有ビニル系樹脂(A)と(B)の溶解性パラメーターの差(SpA−SpB)が0〜0.8、エポキシ基含有ビニル系樹脂(A)と(B)の重量比(A/B)が98/2〜80/20である熱硬化型粉体塗料用樹脂組成物及びアルミホイール用粉体塗料用樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貯蔵安定性が高く、塗膜外観、耐食性、耐水性に優れた塗膜を形成しうる粉体塗料を得るのに好適な熱硬化型粉体塗料用樹脂組成物に関する。さらに本発明は、貯蔵安定性が高く、自動車用アルミホイール上に単層もしくはプライマーとして被覆した場合において、耐食性、耐水性に優れた塗膜を形成する粉体塗料を得るのに好適な、実用性の極めて高いアルミホイール用粉体塗料用樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化問題がよりいっそう注目されている。その対策の一つとして、自動車業界においては、自動車から排出される二酸化炭素量の削減や省エネルギー化が強く求められており、燃費改善を目的とした自動車ボディ軽量化の重要性がいっそう高まっている。軽量化技術としては、自動車部品へのアルミ材の適用が非常に有効な手段として検討されているが、中でも、アルミホイールは、自動車の軽量化のみならず、耐食性、自動車ユーザの嗜好の多様化から、その装着率は飛躍的に増大してきている。
【0003】
一方、塗料業界においては、大気汚染等の問題から有機溶剤に対する規制が厳しくなり、環境対応製品への移行が急速に進みつつある。粉体塗料は、環境対応製品の一つとして、環境保護の観点から注目されており、建材、自動車部品、自動車トップクリヤーコートなどの用途に使用されている。こうした状況下、将来のアルミ部材用としての粉体塗料の研究も盛んに行われており、環境調和型塗料である粉体塗料が、現在の溶剤系塗料に代替して全面的に使用されることとなれば、地球環境に対する負荷を大幅に低減することが可能となる。
【0004】
アルミホイール用粉体塗装は、1回で厚く塗れる、肉持ち感があるという特徴から、溶剤系塗料に代替して利用され始めており、焼き付け温度が比較的低く、高い塗膜外観(平滑性、透明性)、耐候性、耐擦り傷性が要求されることから、アクリル系粉体塗料、例えばエポキシ基含有アクリル樹脂と多価カルボン酸及び/又はその無水物からなるアクリル系粉体塗料が主に利用されている。しかし、このようなアクリル系粉体塗料は、アルミ基材に対する耐食性や耐水性が従来の溶剤型塗料と比較して不十分であり、耐食性や耐水性を改善する手段としてはいくつかの提案がなされている。
【0005】
アクリル系粉体塗料をアルミホイール用塗料として用いたときの耐食性、耐水性向上方法については、例えば、エポキシ基含有アクリル系樹脂と共に酸性リン酸基含有アクリル系共重合体を必須成分として含有するアルミホイール用粉体プライマーが開示されている(例えば、特許文献1参照。)。当該アルミホイール用粉体プライマーを用いれば、基材付着性、耐食性は向上するものの、酸性リン酸基がエポキシ基と反応するため、貯蔵安定性(耐固相反応性)が大きく低下するという問題があり、未だ改善の余地を残すものである。
【0006】
【特許文献1】特開2002−138246公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、貯蔵安定性が高く、塗膜外観、耐食性、耐水性に優れた塗膜を形成しうる粉体塗料を得るのに好適な熱硬化型粉体塗料用樹脂組成物、さらには、アルミホイール上に単層もしくはプライマーとして被覆した場合において、耐食性、耐水性に優れた塗膜を形成する粉体塗料を得るのに好適な実用性の極めて高いアルミホイール用粉体塗料用樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは前記課題を解決するために鋭意検討した結果、エポキシ基含有ビニル系樹脂と、多価カルボン酸及び/又はその無水物(C)を含有してなる熱硬化型粉体塗料用樹脂組成物において、前記エポキシ基含有ビニル系樹脂として、エポキシ当量(EEW)180〜560g/当量、重量平均分子量4,000〜15,000のエポキシ基含有ビニル系樹脂(A)と、エポキシ当量(EEW)720〜14,000g/当量、重量平均分子量25,000〜120,000のエポキシ基含有ビニル系樹脂(B)とを、これらエポキシ基含有ビニル系樹脂の溶解性パラメーターの差(SpA−SpB)が0〜0.8で、かつ、その重量比(A/B)が98/2〜80/20となる条件で組み合わせて用いてなる粉体塗料用樹脂組成物は、貯蔵安定性が高く、塗膜外観、耐食性、耐水性に優れた塗膜を形成しうる粉体塗料を得るのに好適であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、エポキシ当量(EEW)180〜560g/当量、重量平均分子量4,000〜15,000のエポキシ基含有ビニル系樹脂(A)と、エポキシ当量(EEW)720〜14,000g/当量、重量平均分子量25,000〜120,000のエポキシ基含有ビニル系樹脂(B)と、多価カルボン酸及び/又はその無水物(C)を含有してなり、かつ、エポキシ基含有ビニル系樹脂(A)の溶解性パラメーター(SpA)とエポキシ基含有ビニル系樹脂(B)の溶解性パラメーター(SpB)の差(SpA−SpB)が0〜0.8、エポキシ基含有ビニル系樹脂(A)とエポキシ基含有ビニル系樹脂(B)の重量比(A/B)が98/2〜80/20であることを特徴とする熱硬化型粉体塗料用樹脂組成物を提供するものである。
【0010】
また、本発明は、前記熱硬化型粉体塗料用樹脂組成物を用いてなることを特徴とするアルミホイール用粉体塗料用樹脂組成物を提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の粉体塗料用樹脂組成物は、貯蔵安定性が高く、塗膜外観、耐食性、耐水性に優れた塗膜を形成しうる粉体塗料を得るのに好適な樹脂組成物である。しかも、前記粉体塗料用樹脂組成物を粉体塗料用として用いると、塗膜外観、耐食性、耐水性に優れた塗膜を形成しうる粉体塗料が容易に得られるし、さらには、アルミホイール上に単層もしくは、プライマーとして被覆した場合において、耐食性、耐水性に優れた塗膜を形成することができることから、アルミホイール用粉体塗料用樹脂組成物として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
まず、本発明の粉体塗料用樹脂組成物の必須構成成分である、エポキシ基含有ビニル系樹脂(A)、(B)について説明する。
【0013】
エポキシ基含有ビニル系樹脂(A)、(B)は、一分子中にエポキシ基を少なくとも一個有し、かつ、下記のようにそれぞれ特定のエポキシ当量と特定の重量平均分子量を有する二種類のエポキシ基含有ビニル系樹脂を指称する。
【0014】
本発明の熱硬化型粉体塗料用樹脂組成物で用いるエポキシ基含有ビニル系樹脂(A)のエポキシ当量(EEW)は、180〜560g/当量であることが必須であり、好ましくは300〜560g/当量である。エポキシ当量(EEW)が180g/当量未満であると貯蔵安定性が悪化し、560g/当量を超えると、得られる塗膜の耐溶剤性、耐衝撃性等が不十分となるため、いずれも好ましくない。
【0015】
また、エポキシ基含有ビニル系樹脂(A)の重量平均分子量は、4,000〜15,000であることが必須であり、好ましくは5,000〜10,000である。重量平均分子量が4,000未満であると貯蔵安定性が悪化し、15,000を超えると塗膜の外観(平滑性)が悪化するため、いずれも好ましくない。
【0016】
ここで、エポキシ当量(EEW)及び重量平均分子量は以下の方法により求められる。
〔エポキシ当量(EEW)〕
塩酸−ピリジンの混合溶液に樹脂試料を溶解して、130℃で一時間加熱環流し、25℃に冷却した後、水酸化カリウムのアルコール溶液で逆滴定して求めた値。
【0017】
〔重量平均分子量〕
テトラヒドロフラン可溶分のゲルパーミエーションクロマトグラフィーにおける分子量測定により求めた値。
【0018】
次に、エポキシ基含有ビニル系樹脂(B)のエポキシ当量(EEW)は、720〜14,000g/当量であることが必須であり、好ましくは1,000〜7,000g/当量である。エポキシ当量(EEW)が720g/当量未満である場合や14,000g/当量を超える場合では塗膜の耐食性や耐水性が不十分となるため、いずれも好ましくない。
【0019】
また、エポキシ基含有ビニル系樹脂(B)の重量平均分子量は、25,000〜120,000であることが必須であり、好ましくは30,000〜100,000、より好ましくは40,000〜100,000である。重量平均分子量が25,000未満である場合は、塗膜の耐食性や耐水性が十分でなく、また、120,000を超える場合では、塗膜外観が悪化するため、いずれも好ましくない。
【0020】
前記エポキシ基含有ビニル系樹脂(A)、(B)の混合比率は、重量比(A/B)で98/2〜80/20であることが必須であり、好ましくは96/4〜85/15である。前記重量比(A/B)が98/2を越える場合〔(A)と(B)の合計100重量部に対して(B)が2重量部未満の場合〕では、塗膜の耐食性や耐水性が十分でなく、80/20未満の場合〔(A)と(B)の合計100重量部に対して(B)が20重量部を超える場合〕では、塗膜外観(平滑性)が悪化し、いずれも好ましくない。
【0021】
また、エポキシ基含有ビニル系樹脂(A)とエポキシ基含有ビニル系樹脂(B)は、耐食性と耐水性に優れる粉体塗料が得られることから、エポキシ基含有ビニル系樹脂(A)のエポキシ当量〔EEW(A)〕に対するエポキシ基含有ビニル系樹脂(B)のエポキシ当量〔EEW(B)〕の比〔EEW(B)/EEW(A)〕が2以上であることが好ましく、より好ましくは3以上、さらに好ましくは3〜20である。
【0022】
さらに、エポキシ基含有ビニル系樹脂(A)とエポキシ基含有ビニル系樹脂(B)は、エポキシ基含有ビニル系樹脂(A)の溶解性パラメーター(SpA)とエポキシ基含有ビニル系樹脂(B)の溶解性パラメーター(SpB)の差(SpA−SpB)が0〜0.8であることが必須であり、好ましくは、0〜0.5である。これは、エポキシ基含有ビニル系樹脂(A)とエポキシ基含有ビニル系樹脂(B)とが実質的に相溶する関係にあることを意味しており、前記(SpA−SpB)が0未満であると、耐食性や耐水性が十分でなく、0.8を超えると塗膜外観が悪化するため、いずれも好ましくない。
【0023】
前記溶解性パラメーターとは、樹脂の極性を表すパラメータであり、以下の方法により求められる。
【0024】
サンプル樹脂0.5gを100mlマイヤーフラスコに秤量し、テトラヒドロフラン(THF)10mlを加えて樹脂を溶解する。溶解した溶液を液温25℃に保持し、マグネチックスターラーで攪拌しながら、50mlビュレットを用いてヘキサンを滴下していき、溶液に濁りが生じた点(濁点)の滴下量(v)を求める。
【0025】
次に、ヘキサンの代わりに脱イオン水を使用したときの、濁点における滴下量(v)を求める。
【0026】
、vより、樹脂の溶解性パラメーターδは、スー(SUH),クラーケ(CLARKE)[J.Polym.Sci.A−1,Vol.5,1671−1681(1967)]により示された式を用いて、以下のようにして、求めることができる。
δ=〔(Vmh)(1/2)・δmh+(Vmd)(1/2)・δmd〕/〔(Vmh)(1/2)+(Vmd)(1/2)
ここで、
mh=(V・V)/(φ・V+φ・V)
md=(V・V)/(φ・V+φ・V)
δmh=φ・δ+φ・δ
δmd=φ・δ+φ・δ
φ,φ,φ;濁点における、ヘキサン,脱イオン水,THFの体積分率
〔φ=v/(v+10)、φ=v/(v+10)〕
δ,δ,δ;ヘキサン,脱イオン水,THFの溶解性パラメーター(Sp)
,V,V ;ヘキサン,脱イオン水,THFの分子容(ml/mol)
【0027】
前記エポキシ基含有ビニル系樹脂(A)、(B)の軟化点は、特に限定はないが、貯蔵安定性(耐ブロッキング性)に優れる粉体塗料が得られることから、90℃以上が好ましく、また、ガラス転移温度(Tg)についても、貯蔵安定性(耐ブロッキング性)に優れる粉体塗料が得られることから、40℃以上が好ましく、50〜90℃の範囲がより好ましい。
【0028】
ここで、前記ガラス転移温度(Tg)は以下の方法により求められる。
下記のFoxの式で計算した絶対温度(K)表示のガラス転移温度(Tg)を摂氏温度(℃)に換算した数値を、本発明におけるガラス転移温度(Tg)とする。
100/Tg=W/Tg+W/Tg+W/Tg+W/Tg・・・
・式中、W、W、W、W・・・は各種成分の重量分率(重量%)を示す。
・式中、Tg、Tg、Tg、Tg・・・は各モノマー成分のホモポリマーの絶対温度(K)表示のガラス転移温度を示す。ここで、上記各モノマー成分のホモポリマーの絶対温度(K)表示のガラス転移温度(Tg、Tg、Tg、Tg・・・)は、Polymer Handbook(Second Edition、J,Brandrup・E,H,Immergut編)に記載の値を使用した。
【0029】
また、前記エポキシ基含有ビニル系樹脂(A)、(B)の重量平均分子量については、それぞれ前記した範囲内にあれば、いかなる組み合わせでもよく、特に限定はないが、耐食性、耐水性に優れる塗膜を形成する粉体塗料が得られることから、重量平均分子量の比(B/A)が2以上であることが好ましく、より好ましくは4以上であり、さらに好ましくは4〜15である。
【0030】
前記エポキシ基含有ビニル系樹脂(A)、(B)は、いずれも各種の方法で製造することができるが、エポキシ基含有ビニル単量体、および当該単量体と共重合可能な他のビニル単量体類を、溶解性パラメーター(Sp)とエポキシ当量(EEW)と重量平均分子量がそれぞれ所望の値となるように組み合わせて用いて、これらを有機溶剤中で重合した後に、溶剤を留去させることにより固形化することが、最も簡便であることから好ましい。その際、各種の重合開始剤を使用することが可能である。
【0031】
ここで、前記エポキシ基含有ビニル系樹脂(A)、(B)を製造する際に使用できるビニル単量体としては、エポキシ基含有ビニル単量体と、当該単量体と共重合可能な他のビニル単量体は、それぞれ単独又は2種以上併用して使用することができる。
【0032】
当該エポキシ基含有ビニル系樹脂(A)、(B)を製造する際に使用可能なエポキシ基含有ビニル単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸β−メチルグリシジル、グリシジルビニルエーテル、アリルグリシジルエーテル等の各種のエポキシ基含有単量体類、(メタ)アクリル酸(2−オキソ−1,3−オキソラン)メチル等の(2−オキソ−1,3−オキソラン)基含有ビニル単量体類、さらには、(メタ)アクリル酸3,4−エポキシシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸3,4−エポキシシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸3,4−エポキシシクロヘキシルエチル等の各種の脂環式エポキシ基含有ビニル単量体などが挙げられる。
【0033】
前記かかるエポキシ基含有ビニル単量体と共重合可能な他のビニル単量体としては、(メタ)アクリル酸エステルなど、種々のビニル単量体を使用することができる。
【0034】
前記(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチル又は(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルオクチル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ラウリル又は(メタ)アクリル酸ステアリル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル;
【0035】
(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニロキシエチル;(メタ)アクリル酸エチルカルビトール等の(メタ)アクリル酸アルキルカルビトール;
【0036】
(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル等の水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル;これら水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル類をε−カプロラクトンで開環反応せしめた形の水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル;ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0037】
さらに、前記(メタ)アクリル酸エステル以外のビニル単量体としては、例えば、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン又はγ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン等の加水分解性シリル基含有単量体;一分子中に、ビニル基を一個有するオルガノシロキサン;
【0038】
フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ブロモトリフルオロエチレン、ペンタフルオロプロピレン、ヘキサフルオロプロピレン;トリフルオロメチルトリフルオロビニルエーテル、ペンタフルオロエチルトリフルオロビニルエーテル、ヘプタフルオロプロピルトリフルオロビニルエーテル等のフルオロアルキル・フルオロビニルエーテル又はフルオロアルキルビニルエーテル(アルキル基の炭素数が1〜18の範囲内のもの。)などのフッ素含有ビニル単量体;
【0039】
塩化ビニル、塩化ビニリデン等の前記フッ素含有ビニル単量体以外の各種ハロゲン含有ビニル単量体;エチレン、プロピレン、ブテン−1等のα−オレフィン;モノ〔(メタ)アクリロイルオキシエチル〕燐酸等の酸性燐酸(メタ)アクリル酸エステル;燐酸ジフェニル−2−(メタ)アクリロイルオキシエチル等の燐酸(メタ)アクリル酸エステル類;フマル酸、マレイン酸、イタコン酸などの2個以上の多価カルボキシル基を含有する単量体と、炭素数が1〜18なるモノアルキルアルコールとのモノエステル類又はジエステル;スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン等の芳香族ビニル化合物;
【0040】
(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−n−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−iso−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−n−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−iso−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−tert−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−アミル(メタ)アクリルアミド、N−(メタ)アクリルアミド、N−ヘキシル(メタ)アクリルアミド、N−ヘプチル(メタ)アクリルアミド、N−2−エチルヘキシル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−n−プロポキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−iso−プロポキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−n−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−iso−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−tert−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−アミロキシメチルアクリルアミド、N−ヘキシロキシ(メタ)アクリルアミド、N−ヘプチロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−オクチロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−2−エチル−ヘキシロキシメチル(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド等のアミド系ビニル単量体;
【0041】
(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル等の(メタ)アクリル酸ジアルキルアミノアルキル類;(メタ)アクリル酸−tert−ブチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸−tert−ブチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸アジリジニルエチル、(メタ)アクリル酸ピロリジニルエチル、(メタ)アクリル酸ピペリジニルエチル、(メタ)アクリロイルモルフォリン、N−ビニル−2−ピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルオキサゾリン、(メタ)アクリロニトリル等の含窒素ビニル単量体;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、炭素原子数が9〜11である分岐状脂肪族カルボン酸ビニル、ステアリン酸ビニル等の脂肪族カルボン酸ビニルエステル;
【0042】
シクロヘキサンカルボン酸ビニル、メチルシクロヘキサンカルボン酸ビニル、安息香酸ビニル、p−tert−ブチル安息香酸ビニル等の環状構造を有するカルボン酸のビニルエステル;エチルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシn−ブチルビニルエーテル、ヒドロキシイソブチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ラウリルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテルなどが挙げられる。
【0043】
前記エポキシ基含有ビニル系樹脂(A)、(B)を製造する際には、公知慣用の種々のラジカル重合開始剤を使用することができる。
【0044】
かかるラジカル重合開始剤としては、例えば、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、2,2'−アゾビス−メチルブチロニトリル、2,2'−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、1,1'−アゾビス−シクロヘキサンカルボニトリル、ジメチル−2,2'−アゾビスイソブチレート、4,4'−アゾビス−4−シアノ吉草酸、2,2'−アゾビス−(2−アミジノプロペン)2塩酸塩、2−tert−ブチルアゾ−2−シアノプロパン、2,2'−アゾビス(2−メチル−プロピオンアミド)2水和物、2,2'−アゾビス〔2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロペン〕、2,2'−アゾビス(2,2,4−トリメチルペンタン)等のアゾ化合物;
【0045】
過酸化ベンゾイル、メチルエチルケトンパーオキサイド、キュメンハイドロパーオキサイド、カリウムパーサルフェート、tert−ブチルパーオキシネオデカノエート、tert−ブチルパーオキシピバレート、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、tert−ブチルパーオキシイソブチレート、1,1−ビス−tert−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、tert−ブチルパーオキシーラウレート、tert−ブチルパーオキシイソフタレート、tert−ブチルパーオキシアセテート、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、ジクミルパーオキシド、ジ−tert−ブチルパーオキシド等のケトンパーオキシド類;パーオキシケタール類;ハイドロパーオキシド類;ジアルキルパーオキシド類;ジアシルパーオキシド類;パーオキシエステル類;パーオキシジカーボネート類;過酸化水素などが挙げられる。
【0046】
前記した各種ビニル単量体を有機溶剤中で共重合して前記エポキシ基含有ビニル系樹脂(A)、(B)を製造する際には、各種の有機溶剤を使用することができる。
【0047】
かかる有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、n−ペンタノール、イソペンタノール等のアルキルアルコール類;
【0048】
メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル等のグリコールエーテル類;
【0049】
ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;エクソンアロマティックナフサNo.2(米国エクソン社製)等の芳香族炭化水素を含有する混合炭化水素類;n−ペンタン、n−ヘキサン、n−オクタン等の脂肪族炭化水素類;アイソパーC、アイソパーE、エクソールDSP100/140,エクソールD30(いずれも米国エクソン社製)、IPソルベント1016(出光石油化学社製)等の脂肪族炭化水素を含有する混合炭化水素類;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の脂環族炭化水素類;
【0050】
テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジイソプロピルエーテル、ジ−n−ブチルエーテル等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸n−アミル、酢酸イソアミル、酢酸ヘキシル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ブチル等のエステル類等が挙げられる。
【0051】
また、前記エポキシ基含有ビニル系樹脂(A)、(B)を製造する際には、必要に応じて、連鎖移動剤を用いることもでき、例えば、ドデシルメルカプタン、ラウリルメルカプタン、チオグリコール酸エステル、メルカプトエタノール、α−メチルスチレンダイマーなどが挙げられる。
【0052】
前記エポキシ基含有ビニル系樹脂(A)、(B)は、例えば、重合によって得られた樹脂溶液を減圧下で脱溶剤する、噴霧乾燥により溶剤を揮発飛散させるなどの方法により、固形化して製造されるが、溶剤を留去する方法としては、何ら制限されるものではない。又、それぞれ単独に固形化を行っても良いし、得られた各々樹脂溶液を、粉体塗料を製造する際のエポキシ基含有ビニル系樹脂(A)、(B)の混合比において事前に均一混合した後に、固形化してもよい。
【0053】
ここにおいて、本発明の熱硬化型粉体塗料用樹脂組成物の有する高い貯蔵安定性を保持したままで、その塗膜が有する優れた耐食性、耐水性がさらに向上することから、エポキシ基含有ビニル系樹脂(B)が正リン酸トリエステル基及び/又は亜リン酸トリエステル基とエポキシ基を含有するビニル系樹脂(B1)であることが望ましい。
【0054】
前記正リン酸トリエステル基及び/又は亜リン酸トリエステル基とエポキシ基を含有するビニル系樹脂(B1)は、一分子中にエポキシ基を少なくとも一個、好ましくは二個以上有し、かつ側鎖に正リン酸トリエステル及び/又は亜リン酸トリエスエル基が結合したビニル系樹脂を指称するものである。
【0055】
前記正リン酸トリエステル基及び/又は亜リン酸トリエステル基とエポキシ基を含有するビニル系樹脂(B1)の製造方法は何ら制限されるものではないが、例えば、1)エポキシ基含有ビニル単量体、一分子中に1個のラジカル重合性基を有する正リン酸トリエステル及び/又は亜リン酸トリエステル、及び、その他のビニル単量体類を用いて共重合する方法、2)エポキシ基含有ビニル系樹脂に、正リン酸ジエステル及び/又は亜リン酸ジエステルを付加する方法などにより製造することができる。
【0056】
前記1)のビニル系樹脂(B1)の製造方法において使用する一分子中に1個のラジカル重合性基を有する正リン酸トリエステル及び/又は亜リン酸トリエスエルとしては、例えば、一分子中に1個のラジカル重合性基を有する正リン酸及び/又は亜リン酸の、トリアルキルエステル、トリアルケニルエステル又はトリアリールエステル等が挙げられ、その具体例としては、ジアルキル−2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフォスフェート、ジフェニル−2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフォスフェート等や、前記したエポキシ基含有ビニル単量体に正リン酸ジエステル及び/又は亜リン酸ジエスエルを付加した化合物等が挙げられる。エポキシ基含有ビニル単量体に正リン酸ジエステル及び/又は亜リン酸ジエステル化合物を付加する方法としては、例えば、80〜180℃に加熱して、エポキシ基含有ビニル単量体中のエポキシ基と反応させる方法が挙げられる。
【0057】
前記正リン酸ジエステル及び/又は亜リン酸ジエスエル化合物としては、例えば、ジメチルフォスフェート、ジブチルフォスフェート、ジオクチルフォスフェート、ジ2−エチルヘキシルフォスフェート、ジラウリルフォスフェート、ジフェニルフォスフェート、ジナフチルフォスフェート、ジクレジルフォスフェート、ジ(ノニルフェニル)フォスフェート、メチルオクチルフォスフェート、セチルフェニルフォスフェート、ジイソデシルフォスフェートなどの正リン酸ジエステル化合物や、ジメチルフォスファイト、ジブチルフォスファイト、ジオクチルフォスファイト、ジ2−エチルヘキシルフォスファイト、ジラウリルフォスファイト、ジフェニルフォスファイトなどの亜リン酸ジエステル化合物が挙げられる。
【0058】
前記2)の製造方法で前記ビニル系樹脂(B1)を製造するには、例えば、エポキシ基含有ビニル系樹脂の樹脂溶液あるいはその脱溶剤後の溶融体に、正リン酸ジエステル及び/又は亜リン酸ジエステル化合物を加え、均一に分散させ、80〜180℃に加熱して、エポキシ基含有ビニル系樹脂中のエポキシ基と反応させればよい。
【0059】
その際、使用される正リン酸ジエステル及び/又は亜リン酸ジエスエル化合物としては、前記したエポキシ基含有ビニル単量体に正リン酸ジエステル及び/又は亜リン酸ジエスエルを付加した化合物の製造に使用するものとして例示した、正リン酸ジエステル及び/又は亜リン酸ジエスエル化合物をいずれも使用することができる。
【0060】
前記ビニル系樹脂(B1)は、本発明の熱硬化型粉体塗料用樹脂組成物の貯蔵安定性(耐固相反応性)を維持することができることから、炭素数が4以上の正リン酸ジアルキルエステル化合物である、ジブチルフォスフェートやジ2−エチルヘキシルフォスフェートなどで変性したものであることが好ましい。
【0061】
前記ビニル系樹脂(B1)の正リン酸トリエステル及び/又は亜リン酸ジエステル変性量としては、貯蔵安定性(耐固相反応性)の低下を効果的に抑制しながら耐食性、耐水性の向上が計れることから、正リン酸トリエステル及び/又は亜リン酸ジエステル由来成分含有率が0.1〜5重量%となる範囲が好ましく、より好ましくは0.5〜2重量%となる範囲である。
【0062】
その際、前記ビニル系樹脂(B1)のエポキシ当量が600〜14,000g/当量であることが好ましく、さらには1,000〜14,000g/当量であることがより好ましい。
【0063】
次に、本発明で使用する多価カルボン酸及び/又はその無水物(C)について説明する。
多価カルボン酸及び/又はその無水物(C)としては、主として、脂肪族(環状脂肪族も含む。)又は芳香族の多価カルボン酸類及び/又はその無水物を使用することができる。その代表的なものを例示すれば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバチン酸、ブラシリン酸、ドデカン2酸、テトラデカン酸、オクタデカン酸、ヘキサデカン酸、エイコサン2酸、テトラエイコサン2酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸又はグルタコン酸;
【0064】
フタル酸、イソフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、及びこれらの酸無水物等が挙げられる。これらの多価カルボン酸及び/又はその無水物(C)は、単独でも2種以上を併用してもよい。
【0065】
上記のうちでも、塗膜物性、貯蔵安定性に優れることから、脂肪族二塩基酸が好ましく、とりわけ塗膜物性に優れることから、ドデカン2酸が特に好ましい。
【0066】
本発明で使用するエポキシ基含有ビニル系樹脂(A)とエポキシ基含有ビニル系樹脂(B)及び、多価カルボン酸及び/又はその無水物(C)との配合比としては、エポキシ基含有ビニル系樹脂(A)及び(B)中のエポキシ基と、多価カルボン酸及び/又はその無水物(C)中のカルボキシル基(無水カルボン酸基を含む。)との当量比〔エポキシ基/カルボキシル基〕が、0.5〜1.5の範囲内であることが好ましく、0.6〜1.0の範囲内がより好ましい。
【0067】
本発明の熱硬化型粉体塗料用樹脂組成物からなる粉体塗料及びアルミホイール用粉体塗料用樹脂組成物からなるアルミホイール用粉体塗料には、本発明の目的を逸脱しないような範囲内で、あるいは、本発明の効果を損なわないような範囲内で、さらに、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、ポリアミド樹脂等の、各種の合成樹脂などをはじめ、硬化触媒、流動調節剤、ブロッキング防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、ベンゾイン、帯電防止剤、酸化防止剤などのような、種々の塗料用添加剤類あるいは顔料等を、必要に応じて加えて使用することができる。
【0068】
かかる添加剤類のうちで、紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、サリシレート系、ニッケル錯体系などの紫外線吸収剤を、光安定剤としては、例えば、各種ヒンダードアミン系などの光安定剤を、また、酸化防止剤としては、例えば、フェノール系、ホスファイト系、チオエーテル系などの酸化防止剤を使用することができる。
【0069】
また、硬化触媒としては、例えば、トリフェニルフォスフィンなどのフォスフィン類、2−メチルイミダゾールなどのイミダゾール類、テトラブチルアンモニウムクロライドなどのアンモニウム塩類等を使用することができる。
【0070】
顔料としては、例えば、酸化チタン、弁柄、クロムチタンイエロー、黄色酸化鉄、カーボンブラック等の無機顔料;フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン等のフタロシアニン系、インダスレンブルー、ジアントラキノニルレッド等のアントラキノン系、キナクリドン系、レーキレッド、ファーストイエロー、ジスアゾイエロー、パーマネントレッド等のアゾ系、ナフトールイエロー等のニトロ系、ピグメントグリーンB、ナフトールグリーン等のニトロソ系等の、有機顔料;種々の体質顔料;アルミ・フレーク、マイカ・フレーク等の光輝性(メタリック調)顔料等を使用することができる。
【0071】
本発明の熱硬化型粉体塗料用樹脂組成物の製造方法としては、エポキシ基含有ビニル系樹脂(A)とエポキシ基含有ビニル系樹脂(B)と多価カルボン酸及び/又はその無水物(C)を混合すればよく、混合方法に限定はないが、品質安定性、安定した量産性の観点から、いわゆる溶融混練法によるのが最適である。すなわち、前述した各種原料を混合し、加熱ロール又はエクストルーダーなどの溶融混練機を用いて、50〜130℃で充分に溶融混合した後、冷却し、粉砕・分級することによって、目的とする粉体塗料用樹脂組成物を得る方法が挙げられる。
【0072】
また、本発明のアルミホイール用粉体塗料用樹脂組成物は、前記した本発明の熱硬化型粉体塗料用樹脂組成物を用いて得られる。具体的には、本発明の熱硬化型粉体塗料用樹脂組成物をそのままアルミホイール用粉体塗料用樹脂組成物として用いることができるし、本発明の熱硬化型粉体塗料用樹脂組成物にさらに各種の添加剤等を混合してアルミホイール用粉体塗料用樹脂組成物として用いることもできる。
【0073】
被塗物基材の焼き付け温度及び時間は、被塗物基材の種類や目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、120〜250℃で5〜50分の範囲である。
【0074】
以上に述べてきたように、本発明の熱硬化型粉体塗料用樹脂組成物及びアルミホイール用粉体塗料用樹脂組成物は、貯蔵安定性が高く、塗膜外観、耐食性、耐水性などに優れた塗膜を形成し、さらには、自動車用アルミホイール上に単層もしくはプライマーとして被覆した場合において、基材の前処理の影響を受けず、耐食性、耐水性に優れた塗膜を形成するものである。
【実施例】
【0075】
次に、本発明を参考例、実施例及び比較例により、一層具体的に説明する。以下において、特に断りのない限りは、「部」は、すべて「重量部」を意味する。
【0076】
参考例1〔エポキシ基含有ビニル系樹脂(A―1)の調製〕
温度計、撹拌機、還流冷却器及び窒素導入口を備えた反応容器に、キシレン60部を入れ、130℃にまで昇温した。これに、単量体としての、グリシジルメタクリレート55部、i−ブチルメタクリレート10部、メチルメタクリレート13部及びスチレン22部と、重合開始剤としてのtert−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート4.0部とからなる混合物を6時間要して滴下した。滴下終了後も同温度でさらに10時間保持して重合反応を続行し、エポキシ基含有ビニル系樹脂(A−1)の溶液(A′−1)を得た。さらに、得られた樹脂溶液(A′−1)30部を170℃、20Torrの減圧下に保持し、キシレンを除去することによってエポキシ基含有ビニル系樹脂(A−1)を得た。エポキシ基含有ビニル系樹脂(A―1)及びその溶液(A′−1)の性状値を第1表に示す。
【0077】
参考例2〔エポキシ基含有ビニル系樹脂(A−2)の調製〕
下記第1表に示す単量体と重合開始剤とからなる混合物を用いた以外は参考例1と同様にして、目的とするエポキシ基含有ビニル系樹脂(A−2)及びその溶液(A′−2)を得た。エポキシ基含有ビニル系樹脂(A―2)及びその溶液(A′−2)の性状値を第1表に示す。
【0078】
参考例3〔比較対照用のエポキシ基含有ビニル系樹脂(A−3)の調製〕
下記第1表に示す単量体と重合開始剤とからなる混合物を用いた以外は参考例1と同様にして、目的とするエポキシ基含有ビニル系樹脂(A−3)及びその溶液(A′−3)を得た。エポキシ基含有ビニル系樹脂(A―3)及びその溶液(A′−3)の性状値を第1表に示す。
【0079】
【表1】

【0080】
なお、表中のガラス転移温度(℃)、重量平均分子量、エポキシ当量及び溶解性パラメーター(Sp)は、本明細書中で詳述した方法により求めた値である。
【0081】
参考例4〔エポキシ基含有ビニル系樹脂(B−1)の調製〕
温度計、撹拌機、還流冷却器及び窒素導入口を備えた反応容器に、キシレン60部を入れ、100℃にまで昇温した。これに、下記第2表(1)に示す単量体と重合開始剤とからなる混合物を6時間要して滴下した。滴下終了後も同温度でさらに10時間保持して重合反応を続行し、エポキシ基含有ビニル系樹脂(B−1)の溶液(B′−1)を得た。さらに、得られた樹脂溶液(B′−1)30部を170℃、20Torrの減圧下に保持し、キシレンを除去することによってエポキシ基含有ビニル系樹脂(B−1)を得た。エポキシ基含有ビニル系樹脂(B―1)及びその溶液(B′−1)の性状値を第2表(1)に示す。
【0082】
参考例5〔エポキシ基含有ビニル系樹脂(B−2)の調製〕
下記第2表(1)に示す単量体と重合開始剤とからなる混合物を用いた以外は参考例4と同様にして、目的とするエポキシ基含有ビニル系樹脂(B−2)及びその溶液(B′−2)を得た。エポキシ基含有ビニル系樹脂(B―2)及びその溶液(B′−2)の性状値を第2表(1)に示す。
【0083】
参考例6〔エポキシ基含有ビニル系樹脂(B−3)の調製〕
温度計、撹拌機、還流冷却器及び窒素導入口を備えた反応容器に、キシレン60部を入れ、100℃にまで昇温した。これに、第2表(1)に示す単量体と重合開始剤とからなる混合物を6時間要して滴下した。滴下終了後も同温度でさらに10時間保持して重合反応を続行し重合反応を完結した。その後、同温度でDBP〔城北化学工業(株)製;ジブチルホスフェート〕1部を加え、さらに2時間加熱反応させて、エポキシ基含有ビニル系樹脂(B−3)の溶液(B′−3)を得た。さらに、得られた樹脂溶液(B′−3)30部を170℃、20Torrの減圧下に保持し、キシレンを除去することによってエポキシ基含有ビニル系樹脂(B−3)を得た。エポキシ基含有ビニル系樹脂(B―3)及びその溶液(B′−3)の性状値を第2表(1)に示す。
【0084】
参考例7〜8〔比較対照用のエポキシ基含有ビニル系樹脂(B−4)〜(B−5)の調製〕
下記第2表(2)に示す単量体と重合開始剤とからなる混合物を用いた以外は、参考例4と同様にして、目的とするエポキシ基含有ビニル系樹脂(B−4)〜(B−5)及びその溶液(B′−4)〜(B′−5)を得た。エポキシ基含有ビニル系樹脂(B−4)〜(B−5)及びその溶液(B′−4)〜(B′−5)の性状値を第2表(2)に示す。
【0085】
参考例9〔比較対照用の酸性リン酸基含有アクリル系共重合体(E−1)の調製〕
温度計、撹拌機、還流冷却器及び窒素導入口を備えた反応容器に、プロピレングリコールモノメチルエーテル60部を入れ、100℃にまで昇温した。これに、第2表(2)に示す単量体と重合開始剤とからなる混合物を6時間要して滴下した。滴下終了後も同温度でさらに10時間保持して重合反応を続行し、酸性リン酸基含有アクリル系共重合体(E−1)の溶液(E′−1)を得た。さらに、得られた共重合体溶液(E′−1)を170℃、20Torrの減圧下に保持し、プロピレングリコールモノメチルエーテルを除去することによって酸性リン酸基含有アクリル系共重合体(E−1)を得た。酸性リン酸基含有アクリル系共重合体(E−1)の及び、その溶液(E′−1)の性状値を第2表(2)に示す。
【0086】
【表2】

【0087】
【表3】

【0088】
参考例10〜13〔エポキシ基含有ビニル系樹脂(A)及び(B)の混合物(S)の調製〕
下記第3表(1)に示す配合組成で、参考例1〜2で得られたエポキシ含有ビニル系樹脂(A)の溶液(A′−1)〜(A′−2)のいずれかと、参考例4〜6で得られたエポキシ含有ビニル系樹脂(B)の溶液(B′−1)〜(B′−3)のいずれかを組み合わせて、それぞれ容器に仕込み、攪拌・混合し、170℃、20Torrの減圧下に保持してキシレンを除去することにより、不揮発分99.7重量%以上の混合物(S−1)〜(S−4)を得た。
【0089】
参考例14〜16〔比較対照用のエポキシ基含有ビニル系樹脂(A)と(B)の混合物(S−5)〜(S−7)の調製〕
下記第3表(2)に示すような配合組成で、参考例2〜3で得られたエポキシ含有ビニル系樹脂溶液(A′−2)〜(A′−3)と、参考例5、及び7〜8で得られたエポキシ基含有ビニル共重合体溶液(B′−2)、及び(B′−4)〜(B′−5)を使用して、参考例10と同様にして、不揮発分99.7質量%以上の混合物(S−5)〜(S−7)を得た。
【0090】
【表4】

【0091】
【表5】

【0092】
実施例1〜4及び比較例1〜5
下記第4表(1)、(2)に示す配合組成で各成分を「ヘンシェル・ミキサー」〔三井三池加工機(株)製の混合機)で混合し、その混合物を、ZSK−25WLE」(ウエルナー・アンド・フライデラー社製の2軸混練機)を使用して、80〜120℃のバレル温度でそれぞれ溶融混練した。次いで、得られたそれぞれの混練物を冷却後、粉砕し、さらに分級することによって、平均粒径が15〜35マイクロ・メーター(μm)の、目的とする粉体塗料用樹脂組成物(X−1)〜(X−4)及び比較対照用粉体塗料用樹脂組成物(x−1)〜(x−5)を調製した。
【0093】
【表6】

【0094】
【表7】

【0095】
《第4表(1)、(2)の註》
エピクロン3050:大日本インキ化学工業(株)製エポキシ樹脂。
ベンゾイン:東京化成工業(株)製試薬。
Troy 570FL……TROY CHEMICAL社製のレベリング剤。
【0096】
次いで、得られた粉体塗料用樹脂組成物(X−1)〜(X−4)と、比較対照用粉体塗料用樹脂組成物(x−1)〜(x−5)の貯蔵安定性を判定すると共に、これらを使用して、下記の塗膜形成方法に従って各種の塗膜を作製した後、それぞれの塗膜について塗膜性能試験を行なった。
【0097】
粉体塗料用樹脂組成物(X−1)〜(X−4)と、比較対照用粉体塗料用樹脂組成物(x−1)〜(x−5)を、粉体塗装用静電スプレー塗装機で、基材に焼き付けた後の膜厚が90μmとなるように、0.8mm(厚さ)×70mm×150mmのアルミニウム未処理板「A−1050P」〔日本テストパネル(株)製〕上に塗装し、次いで、160℃で20分間焼き付けを行なうことによって、硬化塗膜の形成された各種の試験板を得た。それらの塗膜の評価判定結果をまとめて、第5表(1)、(2)に示す。
【0098】
【表8】

【0099】
【表9】

【0100】
[塗膜諸物性評価方法]
〔1〕塗膜外観
〔1〕−1 平滑性:PCI〔(パウダーコーティングインスティチュート)、1981年に設立された北アメリカの粉体塗料工業を代表する粉体塗料の普及、粉体塗料業界の交流を目的とした非営利組織(ホームページ:http://www.powdercoating.org/home.htm)〕による粉体塗膜の平滑性目視判定用標準板を用いて判定した値。標準板はNo.1〜No.10までの10枚あり、標準板はNo.1〜No.10へ段階的に平滑性が良好となる。平滑性がどの標準板に当たるかを目視により判定した。
No. 1:平滑性不良
No.10:平滑性良好
【0101】
〔1〕−2 透明性:塗膜の仕上がり外観をツヤ感、透明感から次の基準で目視評価を行った。
評価「○」……良好
評価「△」……やや不良
評価「×」……不良
【0102】
〔2〕耐溶剤性:キシレンを含んだ脱脂綿にて30回塗膜をこすった後、目視で下記の基準で判定した。
評価「○」……塗膜に光沢感があり、塗膜に目立った損傷はない。
評価「△」……塗膜に光沢感はあるが、溶剤によりエッチングされている。
評価「×」……塗膜が溶剤により溶解し光沢感なし。
【0103】
〔3〕耐食性:塗膜にカッターナイフで基材の素地に達するようにクロスカットを入れた試験板を、キャス試験機にて、下記試験溶液を温度50±2℃の条件下240時間噴霧した後、水洗し、フクレの個数と、クロスカットの片側フクレ幅の最大長さ(mm)を測定した。
<試験溶液>
5重量%食塩水に、塩化銅(II)二水和物を食塩水1l当り0.26g溶解させた後、酢酸を食塩水1l当り1ml添加、十分混合して得たpH=3±0.2の試験溶液。
【0104】
〔4〕耐水性:試験板を40℃の温水中に5日間浸漬し、引き上げてから1時間後に塗膜にカッターで碁盤目状に2mm幅のクロスカットを入れて25個の碁盤目を作成し、粘着テープによる剥離試験を行なった。評価判定の基準は、25個の碁盤目の内の残数で表示した。この値が高いほど、付着性が良好であることを意味している。また、塗膜のフクレ発生の有無を目視で評価した。
評価「○」……フクレ無し
評価「△」……フクレ少しあり
評価「×」……フクレ多数あり
【0105】
〔5〕貯蔵安定性:各粉体塗料用樹脂組成物をそれぞれ50CCのサンプル瓶に入れ、30℃で2週間放置した後に取り出し、各塗料の固形化の有無を下記基準にて評価判定した。
評価「○」……ブロッキング、固化していない。
評価「△」……ややブロッキングしているが、容易に粉砕できる。
評価「×」……ブロッキング、固化している。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ当量(EEW)180〜560g/当量、重量平均分子量4,000〜15,000のエポキシ基含有ビニル系樹脂(A)と、エポキシ当量(EEW)720〜14,000g/当量、重量平均分子量25,000〜120,000のエポキシ基含有ビニル系樹脂(B)と、多価カルボン酸及び/又はその無水物(C)を含有してなり、かつ、エポキシ基含有ビニル系樹脂(A)の溶解性パラメーター(SpA)とエポキシ基含有ビニル系樹脂(B)の溶解性パラメーター(SpB)の差(SpA−SpB)が0〜0.8、エポキシ基含有ビニル系樹脂(A)とエポキシ基含有ビニル系樹脂(B)の重量比(A/B)が98/2〜80/20であることを特徴とする熱硬化型粉体塗料用樹脂組成物。
【請求項2】
エポキシ基含有ビニル系樹脂(B)とエポキシ基含有ビニル系樹脂(A)のエポキシ当量比〔EEW(B)/EEW(A)〕が2以上である請求項1に記載の熱硬化型粉体塗料用樹脂組成物。
【請求項3】
エポキシ基含有ビニル系樹脂(B)とエポキシ基含有ビニル系樹脂(A)のエポキシ当量比〔EEW(B)/EEW(A)〕が3以上である請求項1に記載の熱硬化型粉体塗料用樹脂組成物。
【請求項4】
エポキシ基含有ビニル系樹脂(A)がエポキシ当量(EEW)300〜560g/当量、重量平均分子量5,000〜10,000のエポキシ基含有ビニル系樹脂であり、かつ、エポキシ基含有ビニル系樹脂(B)がエポキシ当量(EEW)1,000〜7,000g/当量、重量平均分子量30,000〜100,000のエポキシ基含有ビニル系樹脂である請求項1、2又は3に記載の熱硬化型粉体塗料用樹脂組成物。
【請求項5】
エポキシ基含有ビニル系樹脂(A)の溶解性パラメーター(SpA)とエポキシ基含有ビニル系樹脂(B)の溶解性パラメーター(SpB)の差(SpA−SpB)が0〜0.5、エポキシ基含有ビニル系樹脂(A)とエポキシ基含有ビニル系樹脂(B)の重量比(A/B)が96/4〜85/15である請求項4に記載の熱硬化型粉体塗料用樹脂組成物。
【請求項6】
エポキシ基含有ビニル系樹脂(B)が正リン酸トリエステル基及び/又は亜リン酸トリエステル基とエポキシ基を含有するビニル系樹脂(B1)である請求項1〜5のいずれか1項に記載の熱硬化型粉体塗料用樹脂組成物。
【請求項7】
正リン酸トリエステル及び/又は亜リン酸トリエステル基含有エポキシ基含有ビニル系樹脂(B1)が正リン酸トリエステル及び/又は亜リン酸トリエステル由来成分率0.1〜5重量%である請求項6に記載の熱硬化型粉体塗料用樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の熱硬化型粉体塗料用樹脂組成物を用いてなることを特徴とするアルミホイール用粉体塗料用樹脂組成物。
【請求項9】
アルミホイール塗装用プライマーである請求項8に記載のアルミホイール用粉体塗料用樹脂組成物。


【公開番号】特開2007−269844(P2007−269844A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−93778(P2006−93778)
【出願日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【出願人】(000002886)大日本インキ化学工業株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】