説明

熱硬化性シリコーン樹脂用組成物

【課題】取り扱い性に優れ、かつ、耐光性と耐熱性に優れ、光半導体素子の封止加工が可能な半硬化状態を形成できる熱硬化性シリコーン樹脂用組成物を提供すること。
【解決手段】(1)両末端シラノール型シリコーンオイル、(2)アルケニル基含有ジアルコキシアルキルシラン、(3)オルガノハイドロジェンシロキサン、(4)縮合触媒、及び(5)ヒドロシリル化触媒を含有してなる、熱硬化性シリコーン樹脂用組成物。前記組成物は、縮合反応性官能基を有する成分を縮合反応させることで半硬化状態の樹脂を調製し、次いで付加反応を生じさせることで完全硬化した樹脂を調製することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱硬化性シリコーン樹脂用組成物に関する。さらに詳しくは、耐光性と耐熱性に優れ、かつ、光半導体素子の封止加工が可能な半硬化状態を形成できる熱硬化性シリコーン樹脂用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般照明への応用が検討されている高出力白色LED装置には、耐光性と耐熱性に優れた封止材料が求められており、近年、いわゆる「付加硬化型シリコーン」が多用されている。
【0003】
この付加硬化型シリコーンは、主鎖にビニル基を有するシリコーン誘導体と、主鎖にSiH基を有するシリコーン誘導体を主成分とする混合物を、白金触媒の存在下で熱硬化させることにより得られるものであり、例えば、特許文献1では、組成物にオルガノポリシロキサンを導入して、組成物中のケイ素に結合する水素原子とアルケニル基のモル比を特定の範囲に設定することによって、透明性及び絶縁特性に優れる硬化物が得られる樹脂組成物が開示されている。
【0004】
特許文献2では、1分子中にケイ素原子に結合した少なくとも2個のアルケニル基を有するシリコーンレジンと、1分子中にケイ素原子に結合した少なくとも2個の水素原子を有するオルガノハイドロジェンシラン及び/又はオルガノハイドロジェンポリシロキサンを含有する樹脂組成物が開示されている。
【0005】
特許文献3では、SiH基を有するシリコーン樹脂成分として、直鎖状で、ケイ素原子結合水素原子(Si−H基)を分子鎖途中に有するポリオルガノハイドロジェンシロキサンと、直鎖状で、Si−H基を分子鎖両末端に有するポリオルガノハイドロジェンシロキサンとを特定量で併用することにより、優れた強度を備えた硬化物を与える組成物が開示されている。
【0006】
一方、付加硬化型シリコーン樹脂は、通常、活性の高い白金触媒を用いるために、一度、硬化反応が始まると途中で反応を停止させることが極めて難しく、半硬化状態(Bステージ)を形成することは困難である。そこで、白金触媒の触媒活性を低下させるために、反応抑制剤として、リン、窒素、硫黄化合物やアセチレン類を添加することが有効であることが知られている(例えば、特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−198930号公報
【特許文献2】特開2004−186168号公報
【特許文献3】特開2008−150437号公報
【特許文献4】特開平6−118254号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来の付加硬化型シリコーンは、耐久性に優れるものの、硬化反応させる前は粘性を有する液体からなるものであるため、取り扱いが煩雑となり、さらに、周囲の環境によって粘度が変化する場合があるなど、依然満足できるものではない。また、その粘性が高いことも、その取り扱いをより困難なものにしている。
【0009】
また、反応抑制剤として知られている化合物は、樹脂の耐久性に影響を及ぼすことから、さらなる反応制御の方法が要求される。
【0010】
本発明の課題は、取り扱い性に優れ、かつ、耐光性と耐熱性に優れ、光半導体素子の封止加工が可能な半硬化状態を形成できる熱硬化性シリコーン樹脂用組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、(1)両末端シラノール型シリコーンオイル、(2)アルケニル基含有ジアルコキシアルキルシラン、(3)オルガノハイドロジェンシロキサン、(4)縮合触媒、及び(5)ヒドロシリル化触媒を含有してなる、熱硬化性シリコーン樹脂用組成物に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の熱硬化性シリコーン樹脂用組成物は、取り扱い性に優れ、かつ、耐光性と耐熱性に優れ、光半導体素子の封止加工が可能な半硬化状態のシリコーン樹脂組成物を提供することができるという優れた効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の熱硬化性シリコーン樹脂用組成物は、(1)両末端シラノール型シリコーンオイル、(2)アルケニル基含有ジアルコキシアルキルシラン、(3)オルガノハイドロジェンシロキサン、(4)縮合触媒、及び(5)ヒドロシリル化触媒の各成分を含有するものであって、前記組成物は、縮合反応性官能基を有する成分と付加反応性官能基を有する成分を含有することから、まず縮合反応性官能基を有する成分を縮合反応させることで半硬化状態の樹脂を調製し、次いで付加反応を生じさせることで完全硬化した樹脂を調製することができる。
【0014】
一般的なエポキシ樹脂等の半硬化状態(以下、Bステージともいう)は、通常、熱硬化条件を制御することによって達成される。具体的には、例えば、80℃で加熱してモノマーの架橋反応を一部進行させることにより、Bステージのペレットが調製される。そして、得られたペレットは、所望の成型加工を施した後に、150℃で加熱して完全に硬化させる。一方、付加硬化型シリコーン樹脂は、主鎖にビニル基を有するシリコーン誘導体と、主鎖にSiH基を有するシリコーン誘導体とを付加反応(ヒドロシリル化反応)させて得られるが、通常、活性の高い白金触媒を用いるために、一度、硬化反応が始まると途中で反応を停止させることが極めて難しく、Bステージを形成することは困難である。反応抑制剤によって反応を制御する方法も知られているが、本発明の組成物は、モノマーの架橋反応を反応温度が異なる2種類の反応系、即ち、縮合反応系と付加反応(ヒドロシリル化反応)系とによって行うように、縮合反応に関するモノマーとヒドロシリル化反応に関するモノマーのいずれとも反応し得る化合物を含有することによって、反応温度を調整して架橋反応を制御してBステージのペレットを調製することが出来ると推定される。なお、本明細書において、半硬化物、即ち、半硬化状態(Bステージ)の物とは、溶剤に可溶なAステージと、完全硬化したCステージの間の状態であって、硬化、ゲル化が若干進行し、溶剤に膨潤するが完全に溶解せず、加熱によって軟化するが溶融しない状態である物のことを意味し、全硬化物とは、完全に硬化、ゲル化が進行した状態である物のことを意味する。
【0015】
本発明の熱硬化性シリコーン樹脂用組成物は、
(1)両末端シラノール型シリコーンオイル
(2)アルケニル基含有ジアルコキシアルキルシラン
(3)オルガノハイドロジェンシロキサン
(4)縮合触媒、及び
(5)ヒドロシリル化触媒
を含有する。
【0016】
(1)両末端シラノール型シリコーンオイル
本発明における両末端シラノール型シリコーンオイルとしては、特に限定はないが、各成分との相溶性の観点から、式(I):
【0017】
【化1】

【0018】
(式中、Rは1価の炭化水素基を示し、nは1以上の整数であり、但し、全てのRは同一でも異なっていてもよい)
で表される化合物が好ましい。なお、本発明においては、両末端シラノール型シリコーンオイルの末端シラノール基が縮合反応を起こすことから、両末端シラノール型シリコーンオイルを縮合反応系モノマーという。
【0019】
式(I)におけるRは、1価の炭化水素基を示し、飽和又は不飽和、直鎖、分岐鎖又は環状の炭化水素基が挙げられる。炭化水素基の炭素数は、調製のしやすさや熱安定性の観点から、1〜20が好ましく、1〜10がより好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、フェニル基、ナフチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基等が例示される。なかでも、透明性及び耐光性の観点から、メチル基が好ましい。なお、式(I)において、全てのRは同一でも異なっていてもよいが、全てメチル基であることが好ましい。
【0020】
式(I)中のnは、1以上の整数を示すが、安定性や取り扱い性の観点から、好ましくは1〜10000、より好ましくは1〜1000の整数である。
【0021】
かかる式(I)で表される化合物としては、両末端シラノール型ポリジメチルシロキサン、両末端シラノール型ポリメチルフェニルシロキサン、両末端シラノール型ポリジフェニルシロキサン等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのなかでも、Rが全てメチル基、nが1〜1000の整数である化合物が好ましい。
【0022】
式(I)で表される化合物は市販品であっても、公知の方法に従って合成したものでもよい。
【0023】
式(I)で表される化合物は、安定性や取り扱い性の観点から、分子量は好ましくは100〜1000,000、より好ましくは100〜100,000であることが望ましい。なお、本明細書において、シリコーン誘導体の分子量は、ゲルろ過クロマトグラフィー(GPC)により測定される。
【0024】
両末端シラノール型シリコーンオイルにおける式(I)で表される化合物の含有量は、50重量%以上が好ましく、80重量%以上がより好ましく、実質的に100重量%がさらに好ましい。
【0025】
両末端シラノール型シリコーンオイルの含有量は、組成物中、1〜99重量%が好ましく、50〜99重量%がより好ましく、80〜99重量%がさらに好ましい。
【0026】
(2)アルケニル基含有ジアルコキシアルキルシラン
本発明におけるアルケニル基含有ジアルコキシアルキルシランとしては、特に限定はないが、各成分との相溶性の観点から、式(II):
−Si(OR) (II)
(式中、Rは直鎖又は分岐鎖状のアルケニル基、R及びRは1価の炭化水素基を示し、但し、R及びRは同一でも異なっていてもよく、2個のRは同一でも異なっていてもよい)
で表される化合物が好ましい。本発明においては、アルケニル基含有ジアルコキシアルキルシランのアルケニル基がヒドロシリル化反応に、アルコキシ基が縮合反応を起こして、樹脂化を行うことから、アルケニル基含有ジアルコキシアルキルシランが、縮合反応に関する成分とヒドロシリル化反応に関する成分のいずれとも反応する化合物であり、本発明の組成物を硬化させた場合には、アルケニル基含有ジアルコキシアルキルシランを介して、縮合反応に関するモノマーとヒドロシリル化反応に関するモノマーが結合する。また、縮合反応に関するアルコキシ基が1分子中に2個存在するため、分子鎖が直鎖的に成長しやすくなり、架橋しにくくなるため、低粘度化するという効果が得られると考えられる。
【0027】
式(II)におけるRは、直鎖又は分岐鎖状のアルケニル基を示し、アルケニル基を骨格に含む有機基である。該有機基の炭素数は、調製しやすさや熱安定性の観点から、1〜20が好ましく、1〜10がより好ましい。具体的には、ビニル基、アリル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノルボルネニル基、シクロヘキセニル基等が例示される。なかでも、ヒドロシリル化反応に対する反応性の観点から、ビニル基が好ましい。
【0028】
式(II)におけるRは、1価の炭化水素基、即ち、アルキル基であり、ORはアルコキシ基を示す。炭化水素基の炭素数は、反応性の観点から、1〜10が好ましく、1〜6がより好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が例示される。なかでも、縮合反応に対する反応性の観点から、メチル基が好ましい。なお、式(II)において、2個のRは同一でも異なっていてもよいが、全てメチル基であることが好ましい。
【0029】
式(II)におけるRは、1価の炭化水素基、即ち、アルキル基を示す。炭化水素基の炭素数は、調整しやすさの観点から、1〜10が好ましく、1〜6がより好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が例示される。なかでも、市場からの入手性の観点から、メチル基が好ましい。なお、式(II)において、前記R及びRは同一でも異なっていてもよいが、いずれもメチル基であることが好ましい。
【0030】
かかる式(II)で表される化合物としては、ビニルジメトキシメチルシラン、ビニルジエトキシエチルシラン、アリルジメトキシメチルシラン、プロペニルジメトキシメチルシラン、ノルボルネニルジメトキシメチルシラン、オクテニルジメトキシメチルシラン等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのなかでも、Rがビニル基、Rが全てメチル基、Rがメチル基である、ビニルジメトキシメチルシランが好ましい。
【0031】
式(II)で表される化合物は市販品であっても、公知の方法に従って合成したものでもよい。
【0032】
アルケニル基含有ジアルコキシアルキルシランにおける式(II)で表される化合物の含有量は、50重量%以上が好ましく、80重量%以上がより好ましく、実質的に100重量%がさらに好ましい。
【0033】
アルケニル基含有ジアルコキシアルキルシランの含有量は、組成物中、0.01〜90重量%が好ましく、0.01〜50重量%がより好ましく、0.01〜20重量%がさらに好ましく、0.01〜10重量%がさらに好ましい。
【0034】
また、両末端シラノール型シリコーンオイルとアルケニル基含有ジアルコキシアルキルシランの重量比は、両末端シラノール型シリコーンオイルのSiOH基とアルケニル基含有ジアルコキシアルキルシランのSiOR基を過不足なく反応させる観点から、前記官能基のモル比(SiOH/SiOR)が、20/1〜0.2/1が好ましく、10/1〜0.5/1がより好ましく、実質的に当量(1/1)であることがさらに好ましい。前記モル比が、20/1以下であれば、本発明の組成物を半硬化させた際に適度な強靭性を有する半硬化物が得られ、0.2/1以上であれば、アルケニル基含有ジアルコキシアルキルシランが多くなりすぎず、得られる樹脂の耐熱性が良好となる。
【0035】
(3)オルガノハイドロジェンシロキサン
本発明におけるオルガノハイドロジェンシロキサンとしては、特に限定はないが、各成分との相溶性の観点から、式(III):
【0036】
【化2】

【0037】
(式中、A、B及びCは構成単位であり、Aが末端単位、B及びCが繰り返し単位を示し、Rは1価の炭化水素基、aは0又は1以上の整数、bは2以上の整数を示し、但し、全てのRは同一でも異なっていてもよい)
で表わされる化合物、及び式(IV):
【0038】
【化3】

【0039】
(式中、Rは1価の炭化水素基、cは0又は1以上の整数を示し、但し、全てのRは同一でも異なっていてもよい)
で表わされる化合物、からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。本発明においては、オルガノハイドロジェンシロキサンのSiH基がヒドロシリル化反応を起こすことから、オルガノハイドロジェンシロキサンをヒドロシリル化反応に関するモノマーという。なお、本明細書において、オルガノハイドロジェンシロキサンとは、オルガノハイドロジェンジシロキサンやオルガノハイドロジェンポリシロキサン等、低分子量の化合物から高分子量の化合物まで全ての化合物の総称を意味する。
【0040】
式(III)で表わされる化合物は、構成単位A、B及びCによって構成され、Aが末端単位、B及びCが繰り返し単位であり、水素が繰り返し単位に含まれている化合物である。
【0041】
式(III)におけるR、即ち、構成単位AにおけるR、構成単位BにおけるR、及び構成単位CにおけるRは、いずれも1価の炭化水素基を示し、飽和又は不飽和、直鎖、分岐鎖又は環状の炭化水素基が挙げられる。炭化水素基の炭素数は、調製しやすさや熱安定性の観点から、1〜20が好ましく、1〜10がより好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、フェニル基、ナフチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基等が例示される。なかでも、透明性及び耐光性の観点から、メチル基、エチル基が好ましい。なお、式(III)において、全てのRは同一でも異なっていてもよく、構成単位に関係なく、それぞれ独立して上記炭化水素基を示す。
【0042】
構成単位Aは末端単位であり、式(III)中に2個含まれる。
【0043】
構成単位Bの繰り返し単位数、即ち、式(III)中のaは、0又は1以上の整数を示すが、反応性の観点から、好ましくは1〜1000、より好ましくは1〜100の整数である。
【0044】
構成単位Cの繰り返し単位数、即ち、式(III)中のbは、2以上の整数を示すが、反応性の観点から、好ましくは2〜10000、より好ましくは2〜1000の整数である。
【0045】
かかる式(III)で表される化合物としては、メチルハイドロジェンポリシロキサン、ジメチルポリシロキサン-CO-メチルハイドロジェンポリシロキサン、エチルハイドロジェンポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン-CO-メチルフェニルポリシロキサン等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのなかでも、Rがメチル基、aが0、bが2以上の整数である化合物、Rがエチル基、aが0、bが2以上の整数である化合物が好ましい。
【0046】
式(III)で表される化合物は、安定性や取り扱い性の観点から、分子量は好ましくは100〜1,000,000、より好ましくは100〜100,000であることが望ましい。
【0047】
式(IV)で表される化合物は、水素を末端に有する化合物である。
【0048】
式(IV)におけるRは、1価の炭化水素基を示し、飽和又は不飽和、直鎖、分岐鎖又は環状の炭化水素基が挙げられる。炭化水素基の炭素数は、調製しやすさや熱安定性の観点から、1〜20が好ましく、1〜10がより好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、フェニル基、ナフチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基等が例示される。なかでも、透明性及び耐光性の観点から、メチル基、エチル基が好ましい。なお、式(IV)において、全てのRは同一でも異なっていてもよいが、全てメチル基又はエチル基であることが好ましい。
【0049】
式(IV)中のcは、0又は1以上の整数を示すが、反応性の観点から、好ましくは1〜10,000、より好ましくは1〜1,000の整数である。
【0050】
かかる式(IV)で表される化合物としては、両末端ヒドロシリル型ポリジメチルシロキサン、両末端ヒドロシリル型ポリメチルフェニルシロキサン、両末端ヒドロシリル型ポリジフェニルシロキサン等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのなかでも、Rが全てメチル基、cが1〜1,000の整数である化合物、Rが全てエチル基、cが1〜1,000の整数である化合物が好ましい。
【0051】
式(IV)で表される化合物は、安定性や取り扱い性の観点から、分子量は好ましくは100〜1,000,000、より好ましくは100〜100,000であることが望ましい。
【0052】
式(III)及び式(IV)で表される化合物としては、市販品を用いても、公知の方法に従って合成したものを用いてもよい。
【0053】
オルガノハイドロジェンシロキサンにおける、式(III)及び式(IV)で表される化合物の総含有量は、50重量%以上が好ましく、80重量%以上がより好ましく、実質的に100重量%がさらに好ましい。
【0054】
オルガノハイドロジェンシロキサンの含有量は、組成物中、0.1〜99重量%が好ましく、0.1〜90重量%がより好ましく、0.1〜80重量%がさらに好ましい。
【0055】
また、アルケニル基含有ジアルコキシアルキルシランとオルガノハイドロジェンシロキサンの重量比は、アルケニル基含有ジアルコキシアルキルシランのSiR基とオルガノハイドロジェンシロキサンのSiH基を過不足なく反応させる観点から、前記官能基のモル比(SiR/SiH)が、20/1〜0.05/1が好ましく、20/1〜0.1/1がより好ましく、10/1〜0.1/1がさらに好ましく、10/1〜0.2/1がさらに好ましく、5/1〜0.2/1がさらに好ましい。前記モル比が、20/1以下であれば、本発明の組成物を半硬化させた際に適度な強靭性があり、0.05/1以上であれば、オルガノハイドロジェンシロキサンが多くなりすぎず、得られる樹脂の耐熱性及び強靭性が良好となる。また、前記モル比が1/1未満、0.05/1以上である組成物は、前記モル比が20/1〜1/1である組成物に比べて、組成物から半硬化状態へ硬化する速度が速く、より短時間で硬化させることができる。
【0056】
縮合反応に関するモノマーとヒドロシリル化反応に関するモノマー、即ち、両末端シラノール型シリコーンオイルとオルガノハイドロジェンシロキサンの重量比(両末端シラノール型シリコーンオイル/オルガノハイドロジェンシロキサン)は、シート化した際の粘弾性の観点から、99.9/0.1〜1/99が好ましく、99.9/0.1〜30/70がより好ましく、99.9/0.1〜50/50がさらに好ましく、99.9/0.1〜60/40がさらに好ましく、99.9/0.1〜90/10がさらに好ましい。
【0057】
(4)縮合触媒
本発明における縮合触媒としては、シラノール基とアルコキシシリル基との縮合反応を触媒する化合物であれば特に限定はなく、塩酸、酢酸、ギ酸、硫酸等の酸;水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化テトラメチルアンモニウム等の塩基;アルミニウム、チタン、亜鉛、スズ等の金属系触媒が例示される。なかでも、相溶性及び熱分解性等の観点から、水酸化テトラメチルアンモニウムが好ましい。水酸化テトラメチルアンモニウムは、固体状態のものをそのまま用いてもよいが、取り扱い性の観点から、水溶液又はメタノール溶液として用いることが好ましく、樹脂の透明性の観点から、メタノール溶液を用いることがより好ましい。
【0058】
組成物における縮合触媒の含有量は、両末端シラノール型シリコーンオイル100モルに対して、0.1〜50モルが好ましく、1〜5モルがより好ましい。
【0059】
(5)ヒドロシリル化触媒
本発明におけるヒドロシリル化触媒としては、ヒドロシラン化合物とアルケンとのヒドロシリル化反応を触媒する化合物であれば特に限定はなく、白金黒、塩化白金、塩化白金酸、白金−オレフィン錯体、白金−カルボニル錯体、白金−アセチルアセテート等の白金触媒;パラジウム触媒、ロジウム触媒等が例示される。なかでも、相溶性、透明性及び触媒活性の観点から、白金−カルボニル錯体が好ましい。
【0060】
組成物におけるヒドロシリル化触媒の含有量は、例えば、白金触媒を用いる場合、白金量換算で、オルガノハイドロジェンシロキサン100重量部に対して、1.0×10-4〜1.0重量部が好ましく、1.0×10-4〜0.5重量部が好ましく、1.0×10-3〜0.05重量部がより好ましい。
【0061】
また、本発明の熱硬化性シリコーン樹脂用組成物は、粘度調整の観点から、前記(1)〜(5)以外に、(6)アルケニル基含有トリアルコキシシランをさらに含有することが好ましい。
【0062】
(6)アルケニル基含有トリアルコキシシラン
アルケニル基含有トリアルコキシシランは、アルケニル基がヒドロシリル化反応に、アルコキシ基が縮合反応を起こす。よって、アルケニル基含有トリアルコキシシランは、アルケニル基含有ジアルコキシアルキルシランと同様に、縮合反応に関する成分とヒドロシリル化反応に関する成分のいずれとも反応する化合物である。従って、前記(1)〜(6)を含有する本発明の組成物を硬化させた場合には、アルケニル基含有ジアルコキシアルキルシランとアルケニル基含有トリアルコキシシランの両化合物を介して、縮合反応に関するモノマーとヒドロシリル化反応に関するモノマーが結合することになる。ここで、アルケニル基含有トリアルコキシシランは、アルコキシ基の数が1分子中に3個であるため、一部のアルコキシ基が縮合して架橋構造体を形成し、組成物の粘度が上昇するという効果が得られると考えられる。
【0063】
本発明におけるアルケニル基含有トリアルコキシシランとしては、特に限定はないが、各成分との相溶性の観点から、式(V):
−Si(OR) (V)
(式中、Rは直鎖又は分岐鎖状のアルケニル基、Rは1価の炭化水素基を示し、但し、3個のRは同一でも異なっていてもよい)
で表される化合物が好ましい。
【0064】
式(V)におけるRは、直鎖又は分岐鎖状のアルケニル基を示し、アルケニル基を骨格に含む有機基である。該有機基の炭素数は、調製しやすさや熱安定性の観点から、1〜20が好ましく、1〜10がより好ましい。具体的には、ビニル基、アリル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノルボルネニル基、シクロヘキセニル基等が例示される。なかでも、ヒドロシリル化反応に対する反応性の観点から、ビニル基が好ましい。
【0065】
式(V)におけるRは、1価の炭化水素基、即ち、アルキル基であり、ORはアルコキシ基を示す。炭化水素基の炭素数は、反応性の観点から、1〜10が好ましく、1〜6がより好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が例示される。なかでも、縮合反応に対する反応性の観点から、メチル基が好ましい。なお、式(V)において、3個のRは同一でも異なっていてもよいが、全てメチル基であることが好ましい。
【0066】
かかる式(V)で表される化合物としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、プロペニルトリメトキシシラン、ノルボルネニルトリメトキシシラン、オクテニルトリメトキシシラン等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのなかでも、Rがビニル基、Rが全てメチル基である、ビニルトリメトキシシランが好ましい。
【0067】
式(V)で表される化合物は市販品であっても、公知の方法に従って合成したものでもよい。
【0068】
アルケニル基含有トリアルコキシシランにおける式(V)で表される化合物の含有量は、50重量%以上が好ましく、80重量%以上がより好ましく、実質的に100重量%がさらに好ましい。
【0069】
アルケニル基含有トリアルコキシシランの含有量は、組成物中、0〜90重量%が好ましく、0〜50重量%がより好ましく、0〜10重量%がさらに好ましい。
【0070】
また、アルケニル基含有ジアルコキシアルキルシランとアルケニル基含有トリアルコキシシランは、いずれも縮合反応に関する成分とヒドロシリル化反応に関する成分のいずれとも反応する化合物であることから、これらの重量比(アルケニル基含有ジアルコキシアルキルシラン/アルケニル基含有トリアルコキシシラン)は、熱硬化性シリコーン樹脂用組成物の粘性の観点から、100/0〜10/90が好ましく、100/0〜20/80がより好ましく、100/0〜30/70がさらに好ましい。
【0071】
またさらに、両末端シラノール型シリコーンオイルと、アルケニル基含有ジアルコキシアルキルシラン及びアルケニル基含有トリアルコキシシランとの重量比は、両末端シラノール型シリコーンオイルのSiOH基と、アルケニル基含有ジアルコキシアルキルシランのSiOR基及びアルケニル基含有トリアルコキシシランのSiOR基を過不足なく反応させる観点から、前記官能基のモル比〔SiOH/(SiOR+SiOR)〕が、20/1〜0.2/1が好ましく、10/1〜0.5/1がより好ましく、実質的に当量(1/1)であることがさらに好ましい。前記モル比が、20/1以下であれば、本発明の組成物を半硬化させた際に適度な強靭性を有する半硬化物が得られ、0.2/1以上であれば、アルケニル基含有ジアルコキシアルキルシランやアルケニル基含有トリアルコキシシランが多くなりすぎず、得られる樹脂の耐熱性が良好となる。
【0072】
また、アルケニル基含有ジアルコキシアルキルシラン及びアルケニル基含有トリアルコキシシランと、オルガノハイドロジェンシロキサンとの重量比は、アルケニル基含有ジアルコキシアルキルシランのSiR基及びアルケニル基含有トリアルコキシシランのSiR基と、オルガノハイドロジェンシロキサンのSiH基とを過不足なく反応させる観点から、前記官能基のモル比〔(SiR+SiR)/SiH〕が、20/1〜0.05/1が好ましく、20/1〜0.10/1がより好ましく、10/1〜0.10/1がさらに好ましく、10/1〜0.2/1がさらに好ましく、5/1〜0.2/1がさらに好ましい。前記モル比が、20/1以下であれば、本発明の組成物を半硬化させた際に適度な強靭性があり、0.05/1以上であれば、オルガノハイドロジェンシロキサンが多くなりすぎず、得られる樹脂の耐熱性及び強靭性が良好となる。また、前記モル比が1/1未満、0.05/1以上である組成物は、前記モル比が20/1〜1/1である組成物に比べて、組成物から半硬化状態へ硬化する速度が速く、より短時間で硬化させることができる。
【0073】
本発明の熱硬化性シリコーン樹脂用組成物は、上記以外に、本発明の効果を損なわない範囲で、蛍光体無機粉末、充填剤、老化防止剤、変性剤、界面活性剤、染料、顔料、変色防止剤、紫外線吸収剤等の添加剤を含有してもよい。
【0074】
例えば、充填剤としては、得られる樹脂組成物の機械的強度を向上する観点から、シリカ粒子が好ましい。シリカ粒子としては、主成分がシリカである粒子であれば特に限定はなく、無水シリカのほか、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸マグネシウム等を含有するものが例示される。また、その形態としては、煙霧シリカ、沈降性シリカ、溶融シリカ、粉砕シリカ、結晶シリカ等が例示され、その平均粒子径も特に限定されない。なお、ここでいう「主成分」とは、粒子を構成する成分のうち50重量%以上を占める成分を意味する。
【0075】
シリカ粒子の含有量は、樹脂の機械的強度と接着性の向上、透明性と硬化前樹脂の流動性維持の観点から、(1)〜(6)の総量100重量部に対して、0.1〜70重量部が好ましく、1〜60重量部がより好ましい。
【0076】
本発明の熱硬化性シリコーン樹脂用組成物は、(1)両末端シラノール型シリコーンオイル、(2)アルケニル基含有ジアルコキシアルキルシラン、(3)オルガノハイドロジェンシロキサン、(4)縮合触媒、及び(5)ヒドロシリル化触媒の各成分を含有するものであれば、特に限定なく調製することができるが、本発明の組成物は、縮合反応とヒドロシリル化反応の各反応機構に応じて反応温度及び時間を適当に選択し、反応を進行、完結させる観点から、縮合反応に関する成分を予め混合してから、ヒドロシリル化反応に関する成分を混合してもよい。
【0077】
縮合反応に関する成分の混合は、(1)両末端シラノール型シリコーンオイル、(2)アルケニル基含有ジアルコキシアルキルシラン、及び(4)縮合触媒、必要に応じて、有機溶媒などの添加剤を、好ましくは0〜60℃で5分〜24時間攪拌することにより行うことができる。なお、アルケニル基含有ジアルコキシアルキルシランは、縮合反応、ヒドロシリル化反応のいずれにも関する成分であるが、縮合反応の方がヒドロシリル化反応より低温で反応が開始されることから、(1)両末端シラノール型シリコーンオイルと同時に混合されることが好ましい。また、本発明の組成物が、(6)アルケニル基含有トリアルコキシシランを含有する場合は、該成分も縮合反応に関する成分の混合時に混合されることが好ましい。
【0078】
有機溶媒を用いる場合、その種類は特に限定されないが、シリコーン誘導体と縮合触媒の相溶性を高める観点から、2−プロパノールが好ましい。
【0079】
有機溶媒の存在量は、両末端シラノール型シリコーンオイル、アルケニル基含有ジアルコキシアルキルシラン及びアルケニル基含有トリアルコキシシランの総量100重量部に対して、3〜20重量部が好ましく、5〜10重量部がより好ましい。3重量部以上であると反応進行性が良好であり、20重量部以下であると組成物の硬化段階における発泡が低減される。
【0080】
なお、上記混合によって、両末端シラノール型シリコーンオイルのSiOH基と、アルケニル基含有ジアルコキシアルキルシランのOR基及びアルケニル基含有トリアルコキシシランのOR基の縮合反応の一部が開始されてもよく、縮合反応の進行度は、H−NMR測定によって、アルケニル基含有ジアルコキシアルキルシラン及びアルケニル基含有トリアルコキシシランのアルコキシ基に由来するピークの消失程度によって確認することができる。
【0081】
次に、ヒドロシリル化反応に関する成分として、(3)オルガノハイドロジェンシロキサン、及び(5)ヒドロシリル化触媒を、上記の縮合反応に関する成分の混合物に混合する。本発明の組成物は、縮合反応とヒドロシリル化反応の2種類の反応を行って硬化物を得る際に、縮合反応のみを行って半硬化状態の成形物を調製することが可能であることから、ヒドロシリル化反応に関する成分は、上記の縮合反応に関する成分の混合物に、均一に混合されるのであれば、混合方法に特に限定はない。また、本発明の組成物が、充填剤を含有する場合は、該成分の配合方法は特に限定されず、例えば、ヒドロシリル化反応に関する成分の配合後に、さらに添加して混合することができる。
【0082】
かくして得られた本発明の組成物の25℃における粘度は、好ましくは10〜100000mPa・s、より好ましくは1000〜20000mPa・sである。本明細書において、粘度は、B形粘度計を用いて測定することができる。
【0083】
本発明の組成物は、耐熱性と耐光性に優れるシリコーン誘導体を主成分として含有するために、光半導体素子の封止材料として好適に用いられる。従って、本発明は、本発明の組成物を含む光半導体素子封止材料、及び該封止材料を用いて光半導体素子を封止した、光半導体装置を提供する。
【0084】
また、本発明の熱硬化性シリコーン樹脂用組成物は、例えば、表面を剥離処理した離型シート(例えば、ポリエステル基材等のセパレーター)の上にキャスティング、スピンコーティング、ロールコーティングなどの方法により、適当な厚さに塗工し、溶媒の除去が可能な程度の温度で加熱して乾燥することによりシート状に成形することができる。加熱温度は、使用される溶媒の種類によって一概には決定されないが、本発明の組成物は、この加熱によって、溶媒の除去に加えて、縮合反応を完結させて、半硬化状(Bステージ)のシリコーン樹脂シートを調製することができる。従って、本発明はまた、本発明の熱硬化性シリコーン樹脂用組成物を半硬化させた、シリコーン樹脂シートを提供する。なお、本明細書において、「反応の完結」とは、反応に関与する官能基の80%以上が反応した場合のことを意味し、縮合反応においては、前述のH−NMRによって残存アルコキシ基量を測定することによって確認することができる。
【0085】
加熱温度は、40〜120℃が好ましく、60〜100℃がより好ましい。加熱時間は、シート厚さや加熱温度によって一概には決定されないが、0.1〜60分が好ましく、0.1〜15分がより好ましい。
【0086】
シリコーン樹脂シートの厚さは、特に限定されないが、封止性の観点から、100〜10000μmが好ましく、100〜3000μmがより好ましい。
【0087】
本発明のシリコーン樹脂シートは、例えば、光半導体装置を調製する際に、基板に実装された光半導体素子を完全に包埋させ、かつ、ボンディングワイヤーを変形、損傷させずに封止するために、後述の実施例に記載の方法に従って測定されるシート硬度が99.9〜80であることが好ましく、99.9〜90であることがより好ましい。
【0088】
また、本発明のシリコーン樹脂シートは、経済性及び取り扱い性の観点から、半硬化状態のまま25℃で24時間以上保存できることが好ましく、25℃で24時間保存後の本発明のシリコーン樹脂シートは、保存前のシート硬度を100%とした場合、好ましくは80〜120%、より好ましくは90〜110%、さらに好ましくは97〜103%のシート硬度を有することが望ましい。
【0089】
本発明のシリコーン樹脂シートは、半硬化状態であるために、例えば、光半導体素子の上にそのまま、あるいは公知の樹脂をポッティングした上に載置させて封止加工した後、高温で加熱して樹脂シートを完全に硬化させることにより光半導体装置を調製することができる。この樹脂シートの完全硬化は、ヒドロシリル化反応に関する成分が反応することにより実施される。よって、本発明の別態様として、本発明のシリコーン樹脂シートを硬化させたシリコーン樹脂硬化物を提供する。
【0090】
シートを基板に載置させてから封止加工する方法は、特に限定はないが、例えば、ラミネーターを用いて、好ましくは100〜200℃、0.01〜10MPaで、より好ましくは120〜160℃、0.1〜1MPaで、5〜600秒間加熱することにより圧着させてから封止加工する方法が例示される。
【0091】
封止加工の加熱温度は、120〜250℃が好ましく、150〜200℃がより好ましい。加熱時間は、0.5〜24時間が好ましく、2〜6時間がより好ましい。
【0092】
なお、ヒドロシリル化反応の進行度は、IR測定によって、オルガノハイドロジェンシロキサンのSiH基に由来するピークの吸収程度によって確認することができ、吸収強度が初期値(硬化反応前)の20%を下回った場合に、ヒドロシリル化反応が完結して全硬化している。
【実施例】
【0093】
以下、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれらの実施例等によりなんら限定されるものではない。
【0094】
〔シリコーン誘導体の分子量〕
ゲルろ過クロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算にて求める。
【0095】
〔組成物の粘度〕
25℃、1気圧の条件下でレオメータ(B形粘度計)を用いて測定する。
【0096】
実施例1
両末端シラノール型シリコーンオイル〔式(I)中のRが全てメチル基、n=155で表わされる化合物、平均分子量11500〕100g(8.7mmol)、及びアルケニル基含有ジアルコキシアルキルシランとしてビニルジメトキシメチルシラン〔式(II)中のRがビニル基、R及びRが全てメチル基で表わされる化合物〕1.15g〔8.7mmol、両末端シラノール型シリコーンオイルのSiOH基とアルケニル基含有ジアルコキシアルキルシランのSiOR基のモル比(SiOH/SiOR)=1/1〕を攪拌混合後、縮合触媒として水酸化テトラメチルアンモニウムメタノール溶液(濃度10重量%)0.19mL(0.17mmol、両末端シラノール型シリコーンオイル100モルに対して2.0モル)を加え、室温(25℃)で2時間攪拌した。その後、反応系中のメタノールを除去するために、減圧下(67Pa)でメタノール留去を行った。得られたオイルに、オルガノハイドロジェンシロキサン〔式(III)中のRが全てメチル基、a=10、b=10で表わされる化合物、粘度20mPa・s〕3.65g〔アルケニル基含有ジアルコキシアルキルシランのSiR基とオルガノハイドロジェンシロキサンのSiH基のモル比(SiR/SiH)=1/3〕、及びヒドロシリル化触媒として白金カルボニル錯体溶液(白金濃度2重量%)0.025mL(白金含有量はオルガノハイドロジェンシロキサン100重量部に対して0.014重量部)を加えて、シリコーン樹脂用組成物を得た。
【0097】
実施例2
実施例1において、ビニルジメトキシメチルシランの使用量を1.15g(8.7mmol)から1.035g(7.83mmol)に変更し、オルガノハイドロジェンシロキサン〔式(III)中のRが全てメチル基、a=10、b=10で表わされる化合物〕の使用量を3.65gから3.53gに変更し、さらに、アルケニル基含有トリアルコキシシランとしてビニルトリメトキシシラン〔式(V)中のRがビニル基、Rが全てメチル基で表わされる化合物〕を0.086g(0.58mmol)添加する以外は、実施例1と同様にしてシリコーン樹脂用組成物を得た。なお、モル比〔SiOH/(SiOR+SiOR)〕は1/1、モル比〔(SiR+SiR)/SiH〕は1/3.0、白金含有量はオルガノハイドロジェンシロキサン100重量部に対して0.014重量部であった。
【0098】
実施例3
実施例1において、ビニルジメトキシメチルシランの使用量を1.15g(8.7mmol)から0.575g(4.35mmol)に変更し、オルガノハイドロジェンシロキサン〔式(III)中のRが全てメチル基、a=10、b=10で表わされる化合物〕の使用量を3.65gから3.045gに変更し、さらに、アルケニル基含有トリアルコキシシランとしてビニルトリメトキシシラン〔式(V)中のRがビニル基、Rが全てメチル基で表わされる化合物〕を0.43g(2.9mmol)添加する以外は、実施例1と同様にしてシリコーン樹脂用組成物を得た。なお、モル比〔SiOH/(SiOR+SiOR)〕は1/1、モル比〔(SiR+SiR)/SiH〕は1/3.0、白金含有量はオルガノハイドロジェンシロキサン100重量部に対して0.016重量部であった。
【0099】
実施例4
実施例1において、ビニルジメトキシメチルシランの使用量を1.15g(8.7mmol)から0.288g(2.18mmol)に変更し、オルガノハイドロジェンシロキサン〔式(III)中のRが全てメチル基、a=10、b=10で表わされる化合物〕の使用量を3.65gから2.74gに変更し、さらに、アルケニル基含有トリアルコキシシランとしてビニルトリメトキシシラン〔式(V)中のRがビニル基、Rが全てメチル基で表わされる化合物〕を0.645g(4.35mmol)添加する以外は、実施例1と同様にしてシリコーン樹脂用組成物を得た。なお、モル比〔SiOH/(SiOR+SiOR)〕は1/1、モル比〔(SiR+SiR)/SiH〕は1/3.0、白金含有量はオルガノハイドロジェンシロキサン100重量部に対して0.018重量部であった。
【0100】
実施例5
実施例1において、両末端シラノール型シリコーンオイル〔式(I)中のRが全てメチル基、n=155で表わされる化合物、平均分子量11500〕100g(8.7mmol)を、両末端シラノール型シリコーンオイル〔式(I)中のRが全てメチル基、n=40で表わされる化合物、平均分子量3000〕100g(33mmol)に変更し、ビニルジメトキシメチルシランの使用量を1.15g(8.7mmol)から4.41g(33mmol)に変更し、オルガノハイドロジェンシロキサン〔式(III)中のRが全てメチル基、a=10、b=10で表わされる化合物〕の使用量を3.65gから13.9gに変更する以外は、実施例1と同様にしてシリコーン樹脂用組成物を得た。なお、モル比(SiOH/SiOR)は1/1、モル比(SiR/SiH)は1/3.0、白金含有量はオルガノハイドロジェンシロキサン100重量部に対して0.0036重量部であった。
【0101】
実施例6
実施例1において、両末端シラノール型シリコーンオイル〔式(I)中のRが全てメチル基、n=155で表わされる化合物、平均分子量11500〕100g(8.7mmol)を、両末端シラノール型シリコーンオイル〔式(I)中のRが全てメチル基、n=13で表わされる化合物、平均分子量1000〕100g(100mmol)に変更し、ビニルジメトキシメチルシランの使用量を1.15g(8.7mmol)から13.2g(100mmol)に変更し、オルガノハイドロジェンシロキサン〔式(III)中のRが全てメチル基、a=10、b=10で表わされる化合物〕の使用量を3.65gから42gに変更する以外は、実施例1と同様にしてシリコーン樹脂用組成物を得た。なお、モル比(SiOH/SiOR)は1/1、モル比(SiR/SiH)は1/3.0、白金含有量はオルガノハイドロジェンシロキサン100重量部に対して0.0012重量部であった。
【0102】
実施例7
実施例1において、アルケニル基含有ジアルコキシアルキルシランとしてビニルジメトキシメチルシラン〔式(II)中のRがビニル基、R及びRが全てメチル基で表わされる化合物〕1.15g(8.7mmol)を、ビニルジエトキシメチルシラン〔式(II)中のRがビニル基、R及びRが全てエチル基で表わされる化合物〕1.39g(8.7mmol)に変更する以外は、実施例1と同様にしてシリコーン樹脂用組成物を得た。なお、モル比(SiOH/SiOR)は1/1、モル比(SiR/SiH)は1/3.0、白金含有量はオルガノハイドロジェンシロキサン100重量部に対して0.0014重量部であった。
【0103】
実施例8
実施例1で得られた組成物100gに対して煙霧シリカ(平均一次粒子径7nm、比表面積300m2/g)5gを加え、ハイブリッドミキサーで2分間攪拌脱泡して、シリコーン樹脂用組成物を得た。
【0104】
得られた組成物を用いて、以下の方法に従って、半硬化物、全硬化物、及び光半導体装置を調製した。なお、市販の二液混合型シリコーンエラストマー(旭化成ワッカーシリコーン社製、加熱硬化型高粘度品)のA液10gとB液10gをよく混合して、シリコーン樹脂用組成物を調製し、参考例1として同様に半硬化物、全硬化物、光半導体装置を調製した。
【0105】
半硬化物の調製例1
得られた組成物を二軸延伸ポリエステルフィルム(三菱化学ポリエステル社製、50μm)上に500μmの厚さに塗工し、実施例1〜8の組成物は135℃で5分加熱して、参考例1の組成物は室温(25℃)で16時間放置して、シート状の半硬化物(シート)を調製した(厚み500μm)。
【0106】
全硬化物の調製例1
上記で得られたシートについて、実施例1〜8のシートは150℃で5時間、参考例1のシートは150℃で1時間、それぞれ加熱して調製した。
【0107】
光半導体装置の作製例1
青色LEDが実装された基板に、上記で得られた半硬化状態のシートを被せ、減圧下、160℃に加熱し、0.2MPaの圧力で封止加工後、150℃で1時間加熱することにより、樹脂を完全に硬化させて、光半導体装置を作製した。
【0108】
得られた半硬化物、全硬化物、光半導体装置について、以下の試験例1〜5に従って、特性を評価した。結果を表1〜2に示す。
【0109】
試験例1(保存安定性)
調製直後と室温(25℃)で24時間保存後の半硬化物について、デジタル測長計(MS-5C、ニコン社製)を用いて、センサーヘッドで7g/mm2の荷重をかけた際に、半硬化物の表面からセンサーヘッドが沈んだ距離を測定し、以下の式に基づいてシート硬度を求めた。
シート硬度=[1−{センサーヘッドが沈んだ距離(μm)/半硬化物の膜厚(μm)}]×100
次に、得られたシート硬度の比率(保存後/調製直後×100)を硬度保持率(%)とし、以下の評価基準に従って、保存安定性を評価した。なお、シート硬度の値が大きいほど硬いものであることを示す。
【0110】
〔保存安定性の評価基準〕
A:硬度保持率が97%超、103%未満
B:硬度保持率が80〜97%、103〜120%
C:硬度保持率が80%未満、120%超
【0111】
試験例2(光透過性)
各全硬化物の波長450nmにおける光透過率(%)を、分光光度計(U−4100、日立ハイテク社製)を用いて測定した。光透過率が高いほど光透過性に優れることを示す。
【0112】
試験例3(耐熱性)
各全硬化物を150℃の温風型乾燥機内に静置し、100時間経過後の全硬化物の外観(透明性)を目視で観察し、保存前の状態から変色のないものを「○」、あるものを「×」とした。また、200℃の温風型乾燥機内に静置し、24時間経過後の全硬化物の重量を保存前の重量で除した値を残存率(%)とした。保存後の外観の変化がなく、残存率が高いほど耐熱性に優れることを示す。
【0113】
試験例4(封止性)
各光半導体装置の封止前後の状態を光学顕微鏡で観察し、光半導体素子が完全に包埋され、ボンディングワイヤーに変形、損傷がないものを「○」、あるものを「×」とした。
【0114】
試験例5(耐光性)
各光半導体装置に300mAの電流を流してLED素子を点灯させ、試験開始直後の輝度を瞬間マルチ測光システム(MCPD-3000、大塚電子社製)により測定した。その後、LED素子を点灯させた状態で放置し、300時間経過後の輝度を同様にして測定し、下記式により輝度保持率を算出して、耐光性を評価した。輝度保持率が高いほど、耐光性に優れることを示す。
輝度保持率(%)=(300時間経過後の輝度/試験開始直後の輝度)×100
【0115】
【表1】

【0116】
【表2】

【0117】
結果、実施例の組成物は参考例に比べて、半硬化状態を形成でき、かつ、光透過性、耐熱性、耐光性のいずれもが優れるという優れた封止材料であることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0118】
本発明の熱硬化性シリコーン樹脂用組成物は、例えば、液晶画面のバックライト、信号機、屋外の大型ディスプレイや広告看板等の半導体素子を製造する際に好適に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)両末端シラノール型シリコーンオイル、(2)アルケニル基含有ジアルコキシアルキルシラン、(3)オルガノハイドロジェンシロキサン、(4)縮合触媒、及び(5)ヒドロシリル化触媒を含有してなる、熱硬化性シリコーン樹脂用組成物。
【請求項2】
両末端シラノール型シリコーンオイルが、式(I):
【化1】

(式中、Rは1価の炭化水素基を示し、nは1以上の整数であり、但し、全てのRは同一でも異なっていてもよい)
で表わされる化合物である、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
アルケニル基含有ジアルコキシアルキルシランが、式(II):
−Si(OR) (II)
(式中、Rは直鎖又は分岐鎖状のアルケニル基、R及びRは1価の炭化水素基を示し、但し、R及びRは同一でも異なっていてもよく、2個のRは同一でも異なっていてもよい)
で表わされる化合物である、請求項1又は2記載の組成物。
【請求項4】
オルガノハイドロジェンシロキサンが、式(III):
【化2】

(式中、A、B及びCは構成単位であり、Aが末端単位、B及びCが繰り返し単位を示し、Rは1価の炭化水素基、aは0又は1以上の整数、bは2以上の整数を示し、但し、全てのRは同一でも異なっていてもよい)
で表わされる化合物、及び式(IV):
【化3】

(式中、Rは1価の炭化水素基、cは0又は1以上の整数を示し、但し、全てのRは同一でも異なっていてもよい)
で表わされる化合物、からなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1〜3いずれか記載の組成物。
【請求項5】
さらに、(6)アルケニル基含有トリアルコキシシランを含有してなる、請求項1〜4いずれか記載の組成物。
【請求項6】
アルケニル基含有トリアルコキシシランが、式(V):
−Si(OR) (V)
(式中、Rは直鎖又は分岐鎖状のアルケニル基、Rは1価の炭化水素基を示し、但し、3個のRは同一でも異なっていてもよい)
で表わされる化合物である、請求項5記載の組成物。

【公開番号】特開2011−149020(P2011−149020A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−287717(P2010−287717)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】