説明

熱硬化性ポリカルボジイミド共重合体

【課題】各種電子部品用途、例えばフレキシブル配線板用のベースフィルムやカバーレイフィルム、あるいは接着フィルムなどの素材として好適であり、また、高い耐熱性と可撓性を有すると共に、耐屈曲性(耐ハゼ折り性)に優れる熱硬化性ポリカルボジイミド共重合体、その製造方法及び用途を提供する。
【解決手段】分子内に、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリエーテルブロックアミド、及びヘキサメチレンとペンタメチレンとテトラメチレンの中から選ばれる二種以上の混合アルキレン鎖を有するポリアルキレンカーボネートジオールの両末端官能基を除いた残基の中から選ばれる少なくとも一種を含むソフトセグメントと、ポリカルボジイミドからなるハードセグメントとを有する熱硬化性ポリカルボジイミド共重合体である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱硬化性ポリカルボジイミド共重合体、その製造方法、該ポリカルボジイミド共重合体を含む熱硬化性樹脂組成物、及び耐熱・可撓性フィルムに関する。さらに詳しくは、本発明は、各種電子部品用途、例えばフレキシブル配線板用のベースフィルムやカバーレイフィルム、あるいは接着フィルムなどの素材として好適であり、高い耐熱性と可撓性を有すると共に、耐屈曲性(耐ハゼ折り性)に優れる熱硬化性ポリカルボジイミド共重合体とそれを含む熱硬化性樹脂組成物、前記ポリカルボジイミド共重合体を効率よく製造する方法、及び前記ポリカルボジイミド共重合体又は熱硬化性樹脂組成物から得られる耐熱・可撓性フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、耐熱性の高い樹脂として、ジフェニルメタンジイソシアネートやトリレンジイソシアネートなどをモノマーとする、熱硬化性芳香族ポリカルボジイミドが知られている。このような芳香族ポリカルボジイミドは、その優れた耐熱性により、耐炎化フィルムや耐熱性接着剤などとして使用されている。
しかしながら、前記芳香族ポリカルボジイミドフィルムは、400℃以上の高温に曝しても揮発性ガスや分解モノマーを生成しないという利点を有するが、200℃などの高温下で長時間熱処理すると自己架橋を起こし、フィルムの可撓性が低下する上、それ自体弾性率が高く、曲げ加工を必要とする用途、例えばフレキシブル配線板用のベースフィルムやカバーレイフィルム、あるいは接着フィルムなどの各種電子部品用途には使用することができない。
可撓性を付与した熱硬化性樹脂組成物又はその成形品としては、例えば(1)ジエン系エラストマーで変性されたエポキシ化合物と、ポリカーボネート系樹脂と、硬化剤を有効成分として含む熱硬化性樹脂組成物(例えば、特許文献1参照)、(2)(A)エポキシ樹脂、シアネート樹脂及びビスマレイミド樹脂の中から選ばれる一種以上の熱硬化性樹脂、(B)特定の熱可塑性樹脂及び(C)特定のゴム類を含む熱硬化性樹脂組成物(例えば、特許文献2参照)、(3)イミド樹脂プレポリマーと、エポキシ樹脂と、エラストマーを含む熱硬化性接着シート(例えば、特許文献3参照)などが開示されている。
【0003】
しかしながら、前記(1)及び(2)の熱硬化性樹脂組成物においては、熱可塑性樹脂やエラストマー(ゴム類)の影響を大きく受けるため、耐熱性が不十分であり、ハンダの鉛フリー化に伴い要求される耐熱性のレベルに対応できないという問題がある。また、前記(3)の熱硬化性接着シートは、耐熱性には優れているものの、硬化に必要な熱処理温度が200℃と高く、一般の装置では対応しきれず、汎用性がない。また、これらの技術は、いずれもエポキシ樹脂硬化系を組み込んでおり、したがって、180°折り曲げ(ハゼ折り)に耐えることのできる可撓性は有していない。
一方、ポリカルボジイミド又はカルボジイミド化合物を用いた組成物として、例えば(4)ポリエステルと、加硫ゴム微粒子と、ポリカルボジイミドを含むエラストマー組成物(例えば、特許文献4参照)、(5)熱可塑性ポリウレタン樹脂と、強化繊維と、カルボジイミド化合物を含む繊維強化ポリウレタン樹脂組成物(例えば、特許文献5参照)などが開示されている。
これらの組成物は、いずれもポリカルボジイミド又はカルボジイミド化合物を少量配合して、組成物の高温特性を向上させた熱可塑性組成物であって、ハンダの鉛フリー化に伴い要求される耐熱性のレベルには不十分である。
さらに、分子内に多官能液状ゴムを有するポリカルボジイミド共重合体が開示されている(例えば、特許文献6参照)。このポリカルボジイミド共重合体は、熱成形性の向上及び加熱下での膨張等を改善することを目的とするものであり、高い耐熱性、可撓性を有すると共に耐屈曲性(耐ハゼ折り性)に優れるものは未だ得られていないのが実情であった。
さらには、分子内にヘキサメチレンカーボネートジオールを有するカルボジイミド共重合体が開示されている(例えば、特許文献7参照)。このカルボジイミド共重合体は加熱時に軟化し得る特性を有する樹脂であるが、ヘキサメチレンカーボネートが結晶性を有しているためにエラストマー性を示さず、十分な屈曲性が得られない。
【0004】
【特許文献1】特開平5−70667号公報
【特許文献2】特開平7−149952号公報
【特許文献3】特開平6−329998号公報
【特許文献4】特開平5−295243号公報
【特許文献5】特開2003−201349号公報
【特許文献6】特開平11−322888号公報
【特許文献7】特開2002−279830号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような状況下で、各種電子部品用途、例えばフレキシブル配線板用のベースフィルムやカバーレイフィルム、あるいは接着フィルムなどの素材として好適であり、また、高い耐熱性と可撓性を有すると共に、耐屈曲性(耐ハゼ折り性)に優れる熱硬化性ポリカルボジイミド共重合体、その製造方法及び用途を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、分子内に特定のソフトセグメントと特定のハードセグメントとを、特定の結合基を介して有する熱硬化性ポリカルボジイミド共重合体が、高い耐熱性と可撓性を有すると共に、耐屈曲性(耐ハゼ折り性)に優れることを見出した。
また、この熱硬化性ポリカルボジイミド共重合体は、前記特定のソフトセグメントを形成する、官能基を両末端に有する、常温で液状又は可撓性の重合体に過剰の芳香族ジイソシアネート化合物を反応させて、両末端イソシアネート化合物を得たのち、カルボジイミド化することにより、効率よく得られることを見出した。
さらに、前記熱硬化性ポリカルボジイミド共重合体又はそれを含む熱硬化性樹脂組成物を製膜し、熱硬化処理してなるフィルムは、耐熱性及び可撓性に優れ、例えば電子部品用として前記用途に用い得ることを見出した。
本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
【0007】
すなわち、本発明は、
(1)分子内に、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリエーテルブロックアミド、及びヘキサメチレンとペンタメチレンとテトラメチレンの中から選ばれる二種以上の混合アルキレン鎖を有するポリアルキレンカーボネートジオールの両末端官能基を除いた残基の中から選ばれる少なくとも一種を含むソフトセグメントと、該ソフトセグメントとウレタン結合、ウレア結合及びアミド結合から選ばれる少なくとも一種を介して結合されるポリカルボジイミドからなるハードセグメントとを有する熱硬化性ポリカルボジイミド共重合体、特に
(2)一般式(I)
【0008】
【化1】

【0009】
(式中、Arはアリーレン基、Aは、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリエーテルブロックアミド、及びヘキサメチレンとペンタメチレンとテトラメチレンの中から選ばれる二種以上の混合アルキレン鎖を有するポリアルキレンカーボネートジオールの両末端官能基を除いた残基の中から選ばれる少なくとも一種を含むソフトセグメント、Y1及びY2は、各々Arに結合する窒素原子を有するウレタン結合、ウレア結合及びアミド結合から選ばれる少なくとも一種を示し、mは1以上の整数を示す。)
で表される構成単位を有する上記(1)に記載の熱硬化性ポリカルボジイミド共重合体、
(3)一般式 (II)
1−A−X2 (II)
(式中、X1及びX2は、各々ヒドロキシル基、アミノ基及びカルボキシル基の中から選ばれる官能基、Aは、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリエーテルブロックアミド、及びヘキサメチレンとペンタメチレンとテトラメチレンの中から選ばれる二種以上の混合アルキレン鎖を有するポリアルキレンカーボネートジオールの両末端官能基を除いた残基の中から選ばれる少なくとも一種を示す。)
で表される、常温で液状又は可撓性重合体に、一般式(III)
OCN−Ar−NCO (III)
(式中、Arはアリーレン基を示す。)
で表される芳香族ジイソシアネート化合物を反応させて、一般式(IV)
OCN−Ar−(Y1−A−Y2−Ar)p−NCO (IV)
(式中、Y1及びY2は、各々Arに結合する窒素原子を有するウレタン結合、ウレア結合及びアミド結合から選ばれる少なくとも一種を示し、pは1以上の整数を示し、Ar及びAは前記と同じである。)
で表される両末端イソシアネート化合物を得たのち、カルボジイミド化触媒を用いてカルボジイミド化する、一般式(I)
【0010】
【化2】

【0011】
(式中、Ar、A、Y1、Y2及びmは前記と同じである。)
で表される構成単位を有する熱硬化性ポリカルボジイミド共重合体の製造方法、
(4)上記(1)又は(2)に記載の熱硬化性ポリカルボジイミド共重合体を含む熱硬化性樹脂組成物、及び
(5)上記(1)又は(2)に記載の熱硬化性ポリカルボジイミド共重合体又は上記(4)記載の熱硬化性樹脂組成物を用いて製膜し、熱硬化処理してなる耐熱・可撓性フィルムを提供するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば各種電子部品用途、例えばフレキシブル配線板用のベースフィルムやカバーレイフィルム、あるいは接着フィルムなどの素材として好適であり、また、高い耐熱性と可撓性を有すると共に、耐屈曲性(耐ハゼ折り性)に優れる熱硬化性ポリカルボジイミド共重合体とそれを含む熱硬化性樹脂組成物を提供することができる。
また、本発明によれば、前記熱硬化性ポリカルボジイミド共重合体を効率よく製造する方法、及び前記の熱硬化性ポリカルボジイミド共重合体又は熱硬化性樹脂組成物を製膜し、熱硬化処理することにより、前記用途に好適な耐熱・可撓性フィルムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
まず、本発明の熱硬化性ポリカルボジイミド共重合体について説明する。
本発明の熱硬化性ポリカルボジイミド共重合体は、分子内に、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリエーテルブロックアミド、及びヘキサメチレンとペンタメチレンとテトラメチレンの中から選ばれる二種以上の混合アルキレン鎖を有するポリアルキレンカーボネートジオールの両末端官能基を除いた残基の中から選ばれる少なくとも一種を含むソフトセグメントと、該ソフトセグメントとウレタン結合、ウレア結合及びアミド結合から選ばれる少なくとも一種を介して結合されるポリカルボジイミドからなるハードセグメントとを有する熱硬化性樹脂である。
前記ポリテトラメチレンエーテルグリコール及びポリアルキレンカーボネートジオールの両末端官能基は、ヒドロキシル基(ウレタン結合)であり、ポリエーテルブロックアミドの両末端官能基は、主としてカルボキシル基(アミド結合)であるが、両末端がアミノ基(ウレア結合)である場合や、一方の末端がカルボキシル基(アミド結合)で、他方の末端がアミノ基(ウレア結合)の場合もあり得る。なお括弧内は、その官能基によって生成する結合の種類を示す。
【0014】
本発明の熱硬化性ポリカルボジイミド共重合体におけるソフトセグメントとハードセグメントとの質量比は、通常20:100〜500:100の範囲で選定される。該質量比が上記の範囲にあれば、ポリカルボジイミド共重合体は、良好な可撓性を有すると共に、耐熱性に優れる熱硬化性樹脂とすることができる。より好ましい質量比は、50〜300:100であり、特に70〜200:100の範囲が好ましい。
本発明の熱硬化性ポリカルボジイミド共重合体としては、一般式(I)
【0015】
【化3】

【0016】
(式中、Arはアリーレン基、Aは、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリエーテルブロックアミド、及びヘキサメチレンとペンタメチレンとテトラメチレンの中から選ばれる二種以上の混合アルキレン鎖を有するポリアルキレンカーボネートジオールの両末端官能基を除いた残基の中から選ばれる少なくとも一種を含むソフトセグメント、Y1及びY2は、各々Arに結合する窒素原子を有するウレタン結合、ウレア結合及びアミド結合から選ばれる少なくとも一種を示し、mは1以上の整数を示す。)
で表される構成単位を有するポリカルボジイミド共重合体を挙げることができる。
前記一般式(I)において、Arで示されるアリーレン基としては、フェニレン基、ナフチレン基、ジフェニルメタンジイル基、ジフェニルエーテルジイル基、及びこれらの基の芳香環上に低級アルキル基や低級アルコキシル基などの置換基を一つ以上有する基などを挙げることができる。このArは、一種含まれていてもよく、二種以上含まれていてもよい。mは1以上の整数であり、好ましくは5〜50の整数である。
【0017】
ソフトセグメントAを形成する官能基を両末端に有する重合体として、本発明においては、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリエーテルブロックアミド、及びヘキサメチレンとペンタメチレンとテトラメチレンの中から選ばれる二種以上の混合アルキレン鎖を有するポリアルキレンカーボネートジオールが用いられる。これらの重合体は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
前記のポリテトラメチレンエーテルグリコールは、通常、一般式(V)
HO−(CH2CH2CH2CH2O)n−H (V)
(式中、nは重合度を示す。)
で表されるポリエーテルグリコールである。数平均分子量としては、通常600〜3,000程度のものが用いられる。
【0018】
前記ポリエーテルブロックアミドは、ポリアミドとポリアルキレンエーテルとのブロック共重合体であって、ポリアミド成分としては、通常ナイロン6、11、12などの脂肪族ポリアミドが使用される。また、ポリアルキレンエーテルは、例えばポリエチレンエーテル、ポリプロピレンエーテル、ポリテトラメチレンエーテルなどである。このポリエーテルブロックアミドの両末端の官能基は、通常カルボキシル基であるが、両末端がアミノ基である場合や、一方の末端がカルボキシル基で、他方の末端がアミノ基の場合もあり得る。
このポリエーテルブロックアミドの数平均分子量は、通常1000〜5000程度、好ましくは1000〜3000である。
【0019】
一方、前記ポリアルキレンカーボネートジオールとして、本発明においては、ヘキサメチレンとペンタメチレンとテトラメチレンの中から選ばれる二種以上の混合アルキレン鎖を有するものが用いられる。
ポリヘキサメチレンカーボネートジオール、ポリペンタメチレンカーボネートジオール又はポリテトラメチレンカーボネートジオールを、それぞれ単独でソフトセグメントとして用いたものは、これらが結晶性を有するために、得られるポリカルボジイミド共重合体が十分なエラストマー性を発現することができない。
これに対し、ヘキサメチレンとペンタメチレンとテトラメチレンの中から選ばれる二種以上の混合アルキレン鎖を有するポリアルキレンカーボネートジオールをソフトセグメントとして用いたものは、結晶性が低下し、得られるポリカルボジイミド共重合体が良好なエラストマー性を発揮する。このような混合アルキレン鎖としては、例えばペンタメチレンとヘキサメチレンの組合せ、テトラメチレンとヘキサメチレンの組合せなどが好ましく、これらを本発明の目的に則して適切な量で組み合わせて用いることができるが、例えば、ペンタメチレン(テトラメチレン):ヘキサメチレン=5:95〜95:5%、さらに10:90〜90:10%の範囲で組み合わせることができる。
【0020】
本発明で用いるポリアルキレンカーボネートジオールは、公知の方法、例えば特開2003−183376号公報の段落[0008]〜[0011]に記載されている方法等に従い、1,6−ヘキサンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,4−ブタンジオールなどの中から上記組合せに従い適宜選ばれる二種以上のジオール類と、ジメチルカーボネートなどのジアルキルカーボネートをエステル交換反応させることにより得ることができる。このポリアルキレンカーボネートグリコールの数平均分子量は、通常500〜5000程度、好ましくは600〜3000である。
本発明おいては、ソフトセグメントAを形成する、官能基を両末端に有する重合体として、所望により、一般式(VI)
【0021】
【化4】

【0022】
(式中、R1及びR2は、それぞれ独立に炭素数1〜10のアルキル基又は炭素数6〜10のアリール基、aは1〜20の整数を示す。)
で表されるポリオルガノシロキサンや、その他ソフトセグメント形成重合体を前記重合体と併用することができる。
前記一般式(VI)において、R1及びR2の中で炭素数1〜10のアルキル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよく、具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、各種ブチル基、各種ペンチル基、各種ヘキシル基、各種オクチル基、各種デシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。また、炭素数6〜10のアリール基の例としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基などが挙げられる。R1及びR2としては、メチル基及びフェニル基が好ましく、またR1及びR2はたがいに同一でも異なっていてもよい。
一般式(VI)で表されるポリオルガノシロキサンとしては、両末端にヒドロキシル基を有する、ポリジメチルシロキサン、ポリジフェニルシロキサン及びポリメチルフェニルシロキサンを好ましく挙げることができる。
本発明においては、当該ポリカルボジイミド共重合体のソフトセグメントを形成する官能基を両末端に有する常温で液状又は可撓性の重合体として、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG)、ポリエーテルブロックアミド(PEBA)、あるいはヘキサメチレンとペンタメチレンとテトラメチレンの中から選ばれる二種以上の混合アルキレン鎖を有するポリ混合アルキレンカーボネートジオール(PCDL)を、単独であるいは組み合わせて用いることができる。
【0023】
前記一般式(I)で表される構成単位を有する熱硬化性ポリカルボジイミド共重合体においては、前述の理由から、分子内における全A成分/[Ar−(N=C=N−Ar)mに相当する全成分]質量比は、好ましくは0.2〜5、より好ましくは0.5〜3、さらに好ましくは0.7〜2である。なお、「Ar−(N=C=N−Ar)mに相当する全成分」とは、前記一般式(I)で表される構成単位におけるAr−(N=C=N−Ar)mの全成分と、該構成単位以外に存在するAr−(N=C=N−Ar)n成分(nは1以上の整数)との合計のことである。また当該ポリカルボジイミド共重合体においては、前記一般式(I)で表される構成単位の数は、1〜5程度が好ましい。この構成単位の数が上記範囲にあれば、当該ポリカルボジイミド共重合体の製造時に、分子量の増大に伴うゲル化を抑制することができる。
上記一般式(I)で表される構成単位を有する熱硬化性ポリカルボジイミド共重合体においては、一般式(I)の構成単位は、そのまま繰り返し単位として含まれるものであってもよいが、ランダムに共重合体に含まれるものであってもよい。
当該ポリカルボジイミド共重合体は、ソフトセグメントを有し、可撓性に優れているが、耐熱性にも優れており、熱硬化物のガラス転移点は、通常130℃以上であり、また200℃以上にすることができる。
【0024】
次に、本発明の熱硬化性ポリカルボジイミド共重合体の製造方法について説明する。
前記一般式(I)で表される構成単位を有する熱硬化性ポリカルボジイミド共重合体は、以下に示す本発明の方法に従えば、効率よく製造することができる。
本発明の方法においては、一般式(II)
1−A−X2 (II)
(式中、X1及びX2は、各々ヒドロキシル基、アミノ基及びカルボキシル基の中から選ばれる官能基、Aは前記と同じである。)
で表される、常温で液状又は可撓性の重合体に、一般式(III)
OCN−Ar−NCO (III)
(式中、Arは前記と同じである。)
で表される芳香族ジイソシアネート化合物を反応させて、一般式(IV)
OCN−Ar−(Y1−A−Y2−Ar)p−NCO (IV)
(式中、Ar、Y1、Y2、A及びpは前記と同じである。)
で表される両末端イソシアネート化合物を得たのち、カルボジイミド化触媒を用いてカルボジイミド化することにより、前記一般式(I)で表される構成単位を有する熱硬化性ポリカルボジイミド共重合体を製造する。上記方法により製造された熱硬化性ポリカルボジイミド共重合体もまた本発明に包含される。
【0025】
前記一般式(II)で表される、常温で液状又は可撓性の重合体としては、前述の一般式(V)で表されるポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリエーテルブロックアミド及びポリ混合アルキレンカーボネートグリコールの中から選ばれる少なくとも一種を用いることができるが、本発明においては、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG)、ポリエーテルブロックアミド(PEBA)、ポリ混合アルキレンカーボネートジオール(PCDG)を単独で、又はこれらの混合物を用いることが好ましい。
【0026】
前記一般式(III)で表される芳香族ジイソシアネート化合物としては、例えば4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ビフェニルジイソシアネート、o−トリジンジイソシアネート、ナフチレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネートなどが挙げられる。これらは一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0027】
本発明の方法においては、まず、前記一般式(II)で表される両末端に官能基を有する、常温で液状又は可撓性の重合体に、前記一般式(III)で表される芳香族ジイソシアネート化合物を、通常2倍モルより多く使用することにより反応させて、前記一般式(IV)で表される両末端イソシアネート化合物を生成させる。この反応においては、必要に応じ、適当な溶媒を用いることができる。この溶媒としては、例えばテトラヒドロフランやジオキサンなどの脂環式エーテル類、ベンゼン、トルエンなどの芳香族炭化水素化合物類、シクロペンタノン、シクロヘキサノンなどの脂環式ケトン類等が挙げられ、これらは一種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0028】
反応温度は、重合体の両末端官能基の種類や使用溶媒にもよるが、通常50〜200℃である。
次に、このようにして得られた両末端イソシアネート化合物と、反応系中に過剰に存在する芳香族ジイソシアネート化合物及び必要により新たに添加された芳香族ジイソシアネート化合物とを、カルボジイミド化触媒の存在下に反応させて、ポリカルボジイミド共重合体を形成させる。
カルボジイミド化触媒としては、従来公知であるものを使用すればよく、例えば3−メチル−1−フェニル−2−ホスホレン−1−オキシド、3−メチル−1−フェニル−3−ホスホレン−1−オキシド、3−メチル−1−エチル−2−ホスホレン−1−オキシド等のホスホレンオキシドを挙げることができ、3−メチル−1−フェニル−2−ホスホレン−1−オキシドが反応性の面から好ましい。カルボジイミド化触媒の量は、カルボジイミド化に用いられる芳香族ジイソシアネート化合物に対して、通常0.1〜1.0質量%である。
【0029】
カルボジイミド化反応の温度は、溶媒の種類やモノマー濃度などに左右されるが、通常30〜150℃程度、好ましくは50〜130℃である。
このカルボジイミド化反応において使用する芳香族ジイソシアネート化合物の量は、前記の両末端に官能基を有する重合体1モルに対して、通常2モル以上であり、この反応段階で追加してもよく、反応初期より存在するものであってもよい。
芳香族ジイソシアネート化合物の全使用量は、得られるポリカルボジイミド共重合体において、ソフトセグメントとハードセグメントとの質量比が、前述の範囲になるように選定するのがよい。
【0030】
また、本発明においては、このカルボジイミド化反応において、芳香族モノイソシアネート化合物を、反応の初期、中期、末期又は全般にわたり加え、末端を封鎖してもよい。この末端封鎖に用いられる芳香族モノイソシアネート化合物としては、例えばフェニルイソシアネート、p−ニトロフェニルイソシアネート、p−及びm−トリルイソシアネート、p−ホルミルフェニルイソシアネート、p−イソプロピルフェニルイソシアネートなどを用いることができる。特にp−イソプロピルフェニルイソシアネートが好適に用いられる。このようにして末端封鎖したポリカルボジイミド共重合体溶液は、溶液の保存安定性に優れている。
【0031】
上記カルボジイミド化反応を行う際の固形分濃度としては、反応系の総量の5〜50質量%であることが好ましく、更に好ましくは20〜30質量%である。
このようにして得られた本発明の熱硬化性ポリカルボジイミド共重合体の数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC法)によるポリスチレン換算で、通常5000以上、好ましくは8000以上、より好ましくは10000以上である。
【0032】
熱硬化性ポリカルボジイミド共重合体は、ジブチルアミンなどの単官能活性水素化合物やフェニルイソシアネートなどのモノイソシアネートを用いて末端封止を行っても良い。
本発明の熱硬化性ポリカルボジイミド共重合体の熱硬化は、通常100〜300℃、好ましくは120〜250℃の温度で加熱処理して熱硬化させることができる。
当該ポリカルボジイミド共重合体を各種用途に用いる場合、通常当該ポリカルボジイミド共重合体と共に、各種の添加成分を含む熱硬化性樹脂組成物を調製して用いることが行われる。
本発明はまた、当該ポリカルボジイミド共重合体を含む熱硬化性樹脂組成物をも提供する。
【0033】
本発明の熱硬化性樹脂組成物には、当該ポリカルボジイミド共重合体と共に、所望により各種添加成分を含むことができる。この添加成分としては、例えば弾性率などを高めるための無機充填剤、柔軟性を向上させるための可塑剤、表面平滑性を得るための平滑剤、レベリング剤、脱泡剤などを適宜含有させることができる。また、接着フィルムとして用いる場合には、導電性の付与や熱伝導性の向上、弾性率の調節などのため、さらに、例えばアルミニウム、銅、銀、金、ニッケル、クロム、鉛、錫、亜鉛、パラジウム、ハンダなどの金属、あるいは合金、アルミナ、シリカ、マグネシア、窒化ケイ素などのセラミック、その他カーボンなどの種々の無機粉末を含有させてもよい。
本発明はまた、当該ポリカルボジイミド共重合体又は前記熱硬化性樹脂組成物を用いて製膜し、熱硬化処理してなる耐熱・可撓性フィルムをも提供する。
【0034】
本発明の耐熱・可撓性フィルムを作製するには、当該ポリカルボジイミド共重合体又は前記熱硬化性樹脂組成物を含有するワニスを、公知の方法、例えばキャスティング、スピンコーティング、ロールコーティングなどの方法を用い、適当な厚さに製膜したのち、合成溶媒によっても異なるが通常30〜180℃、好ましくは50〜160℃の温度にて乾燥処理し、次いで、通常100〜300℃、好ましくは120〜250℃の温度で加熱処理して熱硬化させる方法を用いることができる。
このようにして得られた本発明の耐熱・可撓性フィルムの厚さに特に制限はなく、用途に応じて適宜選定されるが、通常1〜200μm程度、好ましくは5〜100μmである。
【0035】
当該ポリカルボジイミド共重合体又は前記熱硬化性樹脂組成物を含有するワニスは、接着フィルム用途にも用いることができる。この接着フィルムを作製するには、適当な支持体上に該ワニスを塗工して作製してもよく、あるいは、前述のようにして予め未硬化フィルムを製膜し、このフィルムをプレスなどにより支持体上にラミネートして作製してもよい。
このような接着フィルムは、加熱処理により熱硬化し、強固な接着力を発現すると共に低弾性率の硬化物となる。加熱処理を行うには、例えばヒーター、超音波、紫外線などの適宜の方法を用いることができる。したがって当該接着フィルムは種々の材料の接着処理に好ましく、半導体チップやリードフレームなどで代表される電気・電子部品の固着処理に好ましい。当該接着フィルムは低弾性率であること、可撓性に富み取り扱いやすいこと、半導体素子に対して接着性がよいこと、保存安定性がよいことなどの点で優れている。
この際用いられる支持体としては、金属箔、絶縁性フィルムなどが挙げられる。金属箔としてはアルミニウム、銅、銀、金、ニッケル、インジウム、クロム、鉛、錫、亜鉛、パラジウム等を用いることができ、これらは単独で、あるいは合金として用いてもよい。また、絶縁性フィルムとしては、ポリイミド、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレートなど、耐熱性や耐薬品性を有するフィルムなどを用いることができる。
【実施例】
【0036】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明する。
実施例1
1リットル4つ口フラスコに4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(以降MDIと表記)50.0g、PTMG1000(三洋化成(株)製)74.0gと溶媒としてトルエン320.0g、メチルエチルケトン(MEK)180.0gを投入し、これを、90℃のオイルバスに浸けて3時間加熱下で攪拌した。次いで3−メチル−1−フェニル−2−ホスフォレン−1−オキシド(以降「カルボジイミド化触媒」と表記)を0.06g投入して、110℃昇温後5時間カルボジイミド化反応を進めることにより、ポリカルボジイミド共重合体溶液1を得た。
【0037】
実施例2
1リットル4つ口フラスコにトリレンジイソシアネート(2,4−トリレンジイソシアネート:2,6−トリレンジイソシアネート=80:20の混合物)70.0g、PTMG1400(三洋化成(株)製)50.0gを仕込み、80℃のオイルバスに浸けて、3時間加熱下で攪拌した。次いで、溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)500.0gを投入し均一溶液とした後、カルボジイミド化触媒0.09g投入して12時間カルボジイミド化反応を進めることにより、ポリカルボジイミド共重合体溶液2を得た。
【0038】
実施例3
1リットル4つ口フラスコにMDI30.0g、PEBA(融点132℃、分子量7200)60.0gと、溶媒としてシクロヘキサノン450.0gを仕込み、160℃のオイルバスに浸漬させ還流下で2時間攪拌反応させた。110℃に下げた後、カルボジイミド化触媒を0.06g投入して4時間カルボジイミド化反応を進めることにより、ポリカルボジイミド共重合体溶液3を得た。
【0039】
実施例4
1リットル4つ口フラスコにMDI40.0g、PCDL5650(旭化成(株)製)70.0gと、溶媒としてシクロヘキサノン300.0g及びMEK150gを仕込み、100℃のオイルバスに浸漬させ加熱下で2時間攪拌反応させた。カルボジイミド化触媒を0.06g投入した後120℃に上げ、4時間カルボジイミド化反応を進めることにより、ポリカルボジイミド共重合体溶液4を得た。
なお、PCDL5650は下記の構造を有するものであり、mは5及び6であり、nは6〜7の数である。
【0040】
【化5】

【0041】
実施例5
1リットル4つ口フラスコにMDI40.0g、PCDL4671(旭化成(株)製)30.0gとPTMG1000(三菱化成(製))10.0gと、溶媒としてトルエン200.0g及びMEK250gを仕込み、100℃のオイルバスに浸漬させ加熱下で2時間攪拌反応させた。カルボジイミド化触媒を0.06g投入した後110℃にオイルバス温度を上げ、4時間カルボジイミド化反応を進めることにより、ポリカルボジイミド共重合体溶液5を得た。
なお、PCDL4671は下記の構造を有するものであり、mは4及び6であり、nは6〜8の数である。
【0042】
【化6】

【0043】
比較例1
1リットル4つ口フラスコにMDI50.0g、ポリエチレングリコール(PEG1000)74.0gと、溶媒としてトルエン300.0g及びMEK150gを仕込み、100℃のオイルバスに浸漬させ加熱下で2時間攪拌反応させた。カルボジイミド化触媒を0.06g投入した後120℃に上げ、4時間カルボジイミド化反応を進めることにより、ポリカルボジイミド共重合体溶液6を得た。
【0044】
比較例2
1リットル4つ口フラスコにMDI40.0g、ヘキサメチレンカーボネートジオール70.0gと、溶媒としてシクロヘキサノン300.0g及びMEK150gを仕込み、100℃のオイルバスに浸漬させ加熱下で2時間攪拌反応させた。カルボジイミド化触媒を0.06g投入した後120℃に上げ、4時間カルボジイミド化反応を進めることにより、ポリカルボジイミド共重合体溶液7を得た。
【0045】
実施例6
実施例1で得たポリカルボジイミド共重合体溶液1を、該共重合体濃度が25質量%になるまで濃縮したのち、テーブルコーターを使用して、離型処理したポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上にキャスティングし、120℃で6分乾燥処理することにより、厚さ30μmのフィルムを作製した。
【0046】
実施例7
実施例2で得たポリカルボジイミド共重合体溶液2を、該共重合体濃度が25質量%になるまで濃縮したのち、テーブルコーターを使用して、離型処理したPETフィルム上にキャスティングし、120℃で4分乾燥処理することにより、厚さ30μmのフィルムを作製した。
【0047】
実施例8
実施例3で得たポリカルボジイミド共重合体溶液3を、該共重合体濃度が25質量%になるまで濃縮したのち、テーブルコーターを使用して、離型処理したPETフィルム上にキャスティングし、160℃で6分乾燥処理することにより、厚さ30μmのフィルムを作製した。
【0048】
実施例9
実施例4で得たポリカルボジイミド共重合体溶液4を、該共重合体濃度が25質量%になるまで濃縮したのち、テーブルコーターを使用して、離型処理したPETフィルム上にキャスティングし、160℃で5分乾燥処理することにより、厚さ30μmのフィルムを作製した。
【0049】
実施例10
実施例5で得たポリカルボジイミド共重合体溶液5を、該共重合体濃度が25質量%になるまで濃縮したのち、テーブルコーターを使用して、離型処理したPETフィルム上にキャスティングし、130℃で6分乾燥処理することにより、厚さ30μmのフィルムを作製した。
【0050】
比較例3
MDIとフェニルイソシアネートを使用し重合度100で末端封止を行い合成したカルボジイミド樹脂150質量部に対し、PTMG1000 100質量部を加えた溶液を濃度25質量%まで濃縮した後、テーブルコーターを使用して離型処理をしたPETフィルム上にキャスティングし、乾燥させることにより厚さ30μmのフィルムを作製した。
【0051】
比較例4
末端カルボン酸のCTBN(カルボン酸末端基を有するブタジエン−ニトリルゴム)50gにMDI100gを180℃で5時間反応させた後、THFを300gとカルボジイミド化触媒0.25gを加えカルボジイミド化反応を進めることで得た樹脂粉末100gを、180℃で熱プレスして厚さ30μmのフィルムを作製した。
【0052】
比較例5
ビスフェノールA型エポキシ樹脂100質量部にジシアンジアミド6質量部を混合し、さらに実施例3で用いたPEBAの微粉化物150質量部を加えた。この組成物をロールミルを用いて混練りして均一化させたのち、脱泡処理し、離型処理したPETフィルム上に塗付した。次いで、150℃で5分間加熱乾燥処理して、厚さ30μmのフィルムを作製した。
【0053】
比較例6
比較例1で得たポリカルボジイミド共重合体溶液6を、該共重合体濃度が25質量%になるまで濃縮したのち、テーブルコーターを使用して、離型処理したPETフィルム上にキャスティングし、140℃で5分乾燥処理することにより、厚さ30μmのフィルムを作製した。
【0054】
比較例7
比較例2で得たポリカルボジイミド共重合体溶液7を、該共重合体濃度が25質量%になるまで濃縮したのち、テーブルコーターを使用して、離型処理したPETフィルム上にキャスティングし、160℃で5分乾燥処理することにより、厚さ30μmのフィルムを作製した。
【0055】
実施例6〜10、比較例3〜7で得られた各フィルムを、175℃で90分間加熱処理することにより硬化させ、試験片とし、これらについて、下記の要領に従って物性の評価試験を行った。その結果を第1表に示す。なお、比較例4で得られたフィルムは、そのまま試験に用いた。
(1)耐ハゼ折り性
20mm幅にフィルムを切断したものを、幅方向に対して直角にハゼ折りをした折り目部位の上に300gのローラーを転がす。その後、折り目を開いて元の位置まで戻す操作を一回とし、同じ部位に対しこの操作を3回繰り返し、折り目部位への割れ・裂けの有無を目視にて確認した。
3回以上割れ・裂けが発生しなかったものは◎とし、3回以内に割れ・裂けが発生したものは割れ・裂けの発生が確認された時点の回数を表記した。
【0056】
(2)ガラス転移点
DMA「TMA/SS 6000」(SII社製)を使用し昇温5℃/min.、振動周波数0.1Hzの条件で測定を行い、得られたスペクトルでのtanδのピーク値をガラス転移点とした。
同温度が130℃以上の場合を◎、130℃に満たない場合を×と表記した。
(3)熱分解温度
「TG/DTA6020」(SII社製)を使用し昇温10℃/min.で測定を行い5%の質量減少が観測された温度を熱分解温度とした。
250℃以上のものを◎、250℃に満たないものを×と表記した。
【0057】
【表1】

第1表から分かるように、本発明のフィルム(実施例6〜10)は、いずれも耐ハゼ折り性に優れると共に、高い耐熱性を有している。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明の熱硬化性ポリカルボジイミド共重合体は、高い耐熱性と可撓性を有すると共に、耐屈曲性(耐ハゼ折り性)に優れており、各種電子部品用塗、例えばフレキシブル配線板用のベースフィルムやカバーレイフィルム、あるいは接着フィルムなどの素材として好適に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子内に、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリエーテルブロックアミド、及びヘキサメチレンとペンタメチレンとテトラメチレンの中から選ばれる二種以上の混合アルキレン鎖を有するポリアルキレンカーボネートジオールの両末端官能基を除いた残基の中から選ばれる少なくとも一種を含むソフトセグメントと、該ソフトセグメントとウレタン結合、ウレア結合及びアミド結合から選ばれる少なくとも一種を介して結合されるポリカルボジイミドからなるハードセグメントとを有する熱硬化性ポリカルボジイミド共重合体。
【請求項2】
ソフトセグメントとハードセグメントとの質量比が20:100〜500:100である請求項1記載の熱硬化性ポリカルボジイミド共重合体。
【請求項3】
一般式(I)
【化1】

(式中、Arはアリーレン基、Aは、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリエーテルブロックアミド、及びヘキサメチレンとペンタメチレンとテトラメチレンの中から選ばれる二種以上の混合アルキレン鎖を有するポリアルキレンカーボネートジオールの両末端官能基を除いた残基の中から選ばれる少なくとも一種を含むソフトセグメント、Y1及びY2は、各々Arに結合する窒素原子を有するウレタン結合、ウレア結合及びアミド結合から選ばれる少なくとも一種を示し、mは1以上の整数を示す。)
で表される構成単位を有する請求項1又は2記載の熱硬化性ポリカルボジイミド共重合体。
【請求項4】
分子内における全A成分/[Ar−(N=C=N−Ar)mに相当する全成分]質量比が0.2〜5である請求項3記載の熱硬化性ポリカルボジイミド共重合体。
【請求項5】
熱硬化物のガラス転移点が130℃以上である請求項1ないし4のいずれかに記載の熱硬化性ポリカルボジイミド共重合体。
【請求項6】
一般式(II)
1−A−X2 (II)
(式中、X1及びX2は、各々ヒドロキシル基、アミノ基及びカルボキシル基の中から選ばれる官能基、Aは、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリエーテルブロックアミド、及びヘキサメチレンとペンタメチレンとテトラメチレンの中から選ばれる二種以上の混合アルキレン鎖を有するポリアルキレンカーボネートジオールの両末端官能基を除いた残基の中から選ばれる少なくとも一種を示す。)
で表される、常温で液状又は可撓性の重合体に、一般式(III)
OCN−Ar−NCO (III)
(式中、Arはアリーレン基を示す。)
で表される芳香族ジイソシアネート化合物を反応させて、一般式(IV)
OCN−Ar−(Y1−A−Y2−Ar)p−NCO (IV)
(式中、Y1及びY2は、各々Arに結合する窒素原子を有するウレタン結合、ウレア結合及びアミド結合から選ばれる少なくとも一種を示し、pは1以上の整数を示し、Ar及びAは前記と同じである。)
で表される両末端イソシアネート化合物を得たのち、カルボジイミド化触媒を用いてカルボジイミド化してなる、一般式(I)
【化2】

(式中、Ar、A、Y1及びY2は前記と同じであり、mは1以上の整数である。)
で表される構成単位を有する熱硬化性ポリカルボジイミド共重合体。
【請求項7】
一般式(II)X1−A−X2 (II)
(式中、X1及びX2は、各々ヒドロキシル基、アミノ基及びカルボキシル基の中から選ばれる官能基、Aは、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリエーテルブロックアミド、及びヘキサメチレンとペンタメチレンとテトラメチレンの中から選ばれる二種以上の混合アルキレン鎖を有するポリアルキレンカーボネートジオールの両末端官能基を除いた残基の中から選ばれる少なくとも一種を示す。)
で表される、常温で液状又は可撓性重合体に、一般式(III)
OCN−Ar−NCO (III)
(式中、Arはアリーレン基を示す。)
で表される芳香族ジイソシアネート化合物を反応させて、一般式(IV)
OCN−Ar−(Y1−A−Y2−Ar)p−NCO (IV)
(式中、Y1及びY2は、各々Arに結合する窒素原子を有するウレタン結合、ウレア結合及びアミド結合から選ばれる少なくとも一種を示し、pは1以上の整数を示し、Ar及びAは前記と同じである。)
で表される両末端イソシアネート化合物を得たのち、カルボジイミド化触媒を用いてカルボジイミド化する、一般式(I)
【化3】

(式中、Ar、A、Y1及びY2は前記と同じであり、mは1以上の整数である。)
で表される構成単位を有する熱硬化性ポリカルボジイミド共重合体の製造方法。
【請求項8】
一般式(II)で表される、常温で液状又は可撓性の重合体が、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリエーテルブロックアミド、及びヘキサメチレンとペンタメチレンとテトラメチレンの中から選ばれる二種以上の混合アルキレン鎖を有するポリアルキレンカーボネートジオールの中から選ばれる少なくとも一種である請求項7記載の熱硬化性ポリカルボジイミド共重合体の製造方法。
【請求項9】
請求項1ないし6のいずれかに記載の熱硬化性ポリカルボジイミド共重合体を含む熱硬化性樹脂組成物。
【請求項10】
請求項1ないし6のいずれかに記載の熱硬化性ポリカルボジイミド共重合体又は請求項9記載の熱硬化性樹脂組成物を用いて製膜し、熱硬化処理してなる耐熱・可撓性フィルム。


【公開番号】特開2006−8992(P2006−8992A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−143977(P2005−143977)
【出願日】平成17年5月17日(2005.5.17)
【出願人】(000004374)日清紡績株式会社 (370)
【Fターム(参考)】