説明

熱硬化性材料、硬化されたか、または未硬化の熱硬化性材料の形成方法および形成装置

【課題】加熱による熱硬化性材料の膨れ、亀裂形成、破砕のような不要な副作用の発生を防止する。
【解決手段】硬化されたか、部分的に硬化されたか、または未硬化の熱硬化性材料の形成方法であって、・照射された熱硬化性材料の温度が40℃と400℃との間まで導かれるような様式で、かなりの程度まで近赤外範囲内にある電磁放射に熱硬化性材料を暴露する照射工程と、・照射された熱硬化性材料を所望の形状へと導く形成工程とを含んでなり、それによって、照射工程間および/または照射工程後に形成工程が実行される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、未硬化か、部分的に硬化されたか、または硬化された熱硬化性材料の形成方法に関する。また本発明は、硬化されたか、または未硬化の熱硬化性材料の形成装置に関する。さらに本発明は、熱硬化性材料に関する。
【背景技術】
【0002】
硬化されたか、または未硬化の熱硬化性材料の形成方法は既知であり、例えば、米国特許第3,730,828号明細書に記載されている。メラミン−ホルムアルデヒド(MF)樹脂を含有する積層物である熱硬化性材料を、赤外線ランプによって約325°F(163℃)の温度まで加熱し、次いで形成する。既知の方法において、報告される温度は一般的に、例えば、チョーククレヨン溶融法(melting chalk crayons)または当業者に既知の他の技術を用いた表面測定法に基づいて決定されている。
【0003】
既知の方法は、加熱技術において必要とされる時間が長いという不都合を有する。既知の通り、しばしば160℃と190℃との間の温度までの加熱時間は、10分の数ミリメートルの厚さの熱硬化性材料に関して数十秒から、数ミリメートルの厚さの熱硬化性材料に関しては何分までも変化し、これは普通ではない。結果として、膨れ、不要な硬化および分解のような不要な副作用が多数発生し得る。必要とされる時間のため、そして副作用の発生のため、理想的な形成温度を達成することはしばしば不可能であり、そして理想温度よりも低い温度での形成によって実行する必要があり、すなわち、形成間または形成後の亀裂形成および/または破砕のリスクの著しい増加を必然的に伴う。さらに、既知の方法においては、別の方法で亀裂形成、またはさらには破砕を生じずに形成工程を完了することができないため、最終製品に関して明示された要件から見て、所望されるものよりも低い程度まで硬化された熱硬化性材料を使用することがしばしば必要とされる。また、既知の方法においては、別の方法で亀裂形成、またはさらには破砕を生じずに形成工程を完了することができないため、熱硬化性材料への可塑剤の添加がしばしば必要とされるが、熱硬化性材料への可塑剤の添加により、耐引掻き性の低下および/または耐化学性の低下などの最終製品における様々な特性の悪化を招くことが多い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記不都合を大幅に回避することが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的は、
・照射された熱硬化性材料の温度が40℃と400℃との間まで導かれる、かなりの程度まで近赤外範囲内にある電磁放射に熱硬化性材料を暴露するような様式の照射工程と、
・照射された熱硬化性材料を所望の形状へと導く形成工程と
を含んでなり、
それによって、照射工程間および/または照射工程後に形成工程が実行される方法において達成される。
【発明の効果】
【0006】
本発明による方法の利点は、近赤外範囲内にある放射が、例えば、慣例の赤外放射による加熱の既知の場合におけるよりも、熱硬化性材料の非常に迅速で徹底した加熱を確実にするということである。より迅速な加熱のため、照射工程および形成工程に必要とされる時間が短縮され、膨れなどの不要な副作用のリスクを最小化としつつ、形成工程に関するほとんどの最適温度に到達可能である。既知の方法との比較において、不要な副作用の発生による熱硬化性材料含有最終製品の不良材料の量を削減することができるということは、本発明による方法のさらなる利点である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明による方法を熱硬化性材料に適用する。熱硬化性材料はそれ自体既知である。熱硬化性材料の既知の特徴は、それが最終的に使用される形態で得られるように硬化されるということである。既知の通り、熱硬化性材料は一度完全に硬化されると、分子スケールでの分解を生じずに溶融形態へともはや変更することは不可能となる。部分的に、ほぼ完全に、または完全に熱硬化性材料が硬化された場合、本発明による形成工程における形成のようないくらかの形成は、通常、加熱工程を用いて可能となる。既知の通り、この終了時まで、ガラス転移温度(T)を超える温度で熱硬化性材料を加熱することが一般的に推奨される。本発明の方法で使用することが可能な熱硬化性材料は、好ましくは、−OH、−NHおよび/または−SHを含んでなる化合物を含有し、より好ましくは、熱硬化性材料はフェノール樹脂および/またはアミノプラスト樹脂を含んでなる。実際には、熱硬化性材料は、例えば別々の層中にフェノール樹脂およびアミノプラスト樹脂の組み合わせのようないくつかの化合物を含有してもよい。特に好ましくは、熱硬化性材料はアミノプラスト樹脂を含有する。アミノプラスト樹脂の例として、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂(MF)、尿素−ホルムアルデヒド樹脂(UF)、およびメラミン−尿素−ホルムアルデヒド樹脂(MUF)などが挙げられる。本発明による方法において使用される熱硬化性材料は充填材を含有してもよい。これは硬化プロセスに著しく寄与しない物質であるが、通常、強度または表面組織のような他の特定の特性を付与するように意図される。かかる充填材はそれ自体既知であり、積層物における充填材としての紙、チップボードにおける充填材としての木材チップが挙げられる。また、本発明による熱硬化性材料は基材上の層でもあり得、かかる適用例はそれ自体既知であり、金属またはプラスチック基材上のコーティングである。基材は、硬化されたか、または未硬化の熱硬化性材料であり得るが、示された通り、基材は、金属または熱可塑性物質のような他の材料でもあり得る。
【0008】
本発明の方法において使用される熱硬化性材料は、硬化されているか、または未硬化であり、すなわち、既に硬化が生じている必要はないが、部分的に、さらには完全に、またはほとんど完全に既に硬化が生じていてもよい。好ましくは、熱硬化性材料は、少なくとも部分的に既に硬化されている。この利点は、材料がある程度まで、剛性のような最終製品の機械特性を既に有するため、材料の取扱いがより容易であるということである。より好ましくは、熱硬化性材料は、完全に、またはほとんど完全に既に硬化されている。DSC、または好ましくはTMDSC測定から、熱硬化性材料の硬化度を誘導してよい。(TM)DSCは、既知の技術である(熱的に変調された(Thermally Modulated))示差走査熱量測定を意味する。既知の熱硬化性材料に関して、硬化に帰属するTMDSC曲線におけるピークは当業者に既知である。前記熱硬化性材料に関して、形成工程が生じる温度も既知である。参照として、未硬化状態の熱硬化性材料のTMDSC曲線を測定する。この曲線から硬化に帰属するピークを決定し、次いで、このピークから、形成が生じる温度までの硬化エンタルピー(ΔH)を算出する。そのようにして決定されたΔH値を0%硬化度として定義する。完全に硬化された熱硬化性材料は、形成温度まで、硬化に帰属するピークを示さず、従って、ΔH値は0であり、これは100%硬化度として定義される。中間のΔH値は、中間の硬化パーセントへと容易に再計算され、それによって定義される。本発明の方法に導入される場合、熱硬化性材料は、好ましくは少なくとも40%または50%が硬化されており、熱硬化性材料は、より好ましくは少なくとも60%または70%が硬化されており、熱硬化性材料は、最も好ましくは少なくとも80%または90%が硬化されている。熱硬化性材料が、100%ではなく、むしろ98%のみ、または好ましくは95%のみ硬化されていることを確実にすることが有利となり得る。これは、本発明による形成工程間に、より極限の形状へと熱硬化性材料を形成することができるという利点を有する。
【0009】
本発明による方法の照射工程において、近赤外範囲内にかなりの程度まである放射に熱硬化性材料を暴露する。本発明の構成において、「かなりの程度まで」とは、近赤外放射が、熱硬化性材料に向けられた、表面積あたりのエネルギーで表された電磁放射の最大部分であるか、2番目に大きい部分か、または3番目に大きい部分であることを意味する。近赤外範囲内の放射は、0.8μmと1.5μmとの間の波長を有する放射を指す。典型的に、この種類の放射は加熱を引き起こすが、光硬化(すなわち、光子による原子結合の直接切断の結果としての硬化)を引き起こさない。好ましくは、熱硬化性材料に照準をあわせた、表面積あたりのエネルギーで表された電磁放射の少なくとも10%が近赤外範囲内である。より好ましくは、熱硬化性材料に照準をあわせた電磁放射の少なくとも15%または20%が近赤外範囲内である。この利点は、本発明による方法を実行可能とする速度により、膨れなどの不要な副作用が発達する機会がほとんどないということである。なおより好ましくは、熱硬化性材料に照準をあわせた電磁放射の少なくとも30%または40%、特に好ましくは少なくとも45%または50%、そして最も好ましくは少なくとも55%、60%、または少なくとも70%、もしくは75%が近赤外範囲内である。所望の温度までの迅速な加熱を確実にするため、少なくとも1kW/mまたは5kW/m、あるいはさらには10kW/mの電磁放射を熱硬化性材料に向けることが好ましい。これは、迅速な加熱の結果として、より広い操作ウィンドウが形成されるという利点も有する。すなわち、多くの不要な副作用を発生させずに、既知の方法と比較して、より高い温度範囲内まで熱硬化性材料を加熱することができる。より好ましくは少なくとも30kW/mまたは50kW/m、特に好ましくは少なくとも100kW/mまたは200kW/m、そして最も好ましくは少なくとも400kW/mまたは800kW/mの電磁放射を熱硬化性材料に向ける。本発明による方法における近赤外放射の高い有効性のため、最大で10000kW/mまたは9000kW/m、より好ましくは最大で8000kW/mまたは6000kW/m、そして最も好ましくは最大で5000kW/mの電磁放射を熱硬化性材料に向けることが好ましい。
【0010】
近赤外放射への暴露の結果として、熱硬化性材料は加熱される。本発明による方法において、熱硬化性材料は40℃と400℃との間の温度へと導かれる。近赤外放射が熱硬化性材料中へ非常に深部まで透過するため、近赤外放射による熱硬化性材料の加熱は非常に有効であることが見出された。結果として、参照された既知の方法と同一様式で、すなわち表面測定法を用いて、ここで記載される温度を決定することができるが、本発明による方法における熱硬化性材料の平均温度は、同一表面温度において、既知の加熱技術が利用される場合より高いであろう。本発明による方法の利点は、標準的な赤外線照射などの既知の加熱技術を適用する場合よりも、熱硬化性材料がより均一に加熱されるということである。本発明による形成工程を熱硬化性材料に適用可能にさせるためには、少なくとも40℃の温度が一般的に必要とされる。温度増加によって、本発明による形成工程の適用はさらに容易となる。また、40℃より高い温度まで近赤外放射によって熱硬化性材料を加熱することの追加的な利点は、これ以上硬化しない、または残りの硬化も開始することができるということでもあり得る。熱硬化性材料が加熱される最適温度は、部分的に、材料の具体的な組成に依存し、これらの温度は通常既知であるか、または簡単な実験によって決定することができる。熱硬化性材料が非常に高い温度まで加熱される場合、分解などの不要な副作用が発生し得る。特に、400℃より高い温度は、次に熱硬化性材料の非常に迅速な分解が発生してしまうため推奨できない。好ましくは、熱硬化性材料は、少なくとも100℃または140℃まで、より好ましくは少なくとも150℃または170℃まで、最も好ましくは少なくとも180℃、またはさらには190℃まで加熱される。好ましくは、熱硬化性材料は、最大で350℃または300℃まで、より好ましくは最大で250℃まで、最も好ましくは最大で220℃まで加熱される。熱硬化性材料のTが既知である場合、400℃以下の温度を維持しながら、Tよりも少なくとも10℃または20℃高い温度まで、好ましくはTよりも少なくとも30℃、またはさらには50℃高い温度まで、より好ましくはTよりも少なくとも75℃または100℃高い温度まで熱硬化性材料を加熱することが推奨される。熱硬化性材料がアミノプラスト樹脂を含んでなる場合、通常、100℃と220℃との間、好ましくは160℃と190℃との間の温度まで加熱する必要がある。
【0011】
本発明による方法で使用されるような、近赤外放射の透過の深度が大きい結果として、熱硬化性材料は大きい厚さを有し得るが、ここではなお、標準的な赤外放射のような既知の加熱技術による場合よりも厚さを全体により均一に加熱が生じる。好ましくは、熱硬化性材料は、最大で30mmまたは25mm、より好ましくは最大で20mmまたは10mm、なおより好ましくは最大で8mm、特に好ましくは最大で6mm、そして最も好ましくは最大で5mmの厚さを有する。相対的に厚い熱硬化性材料に関しては、例えば、6mm〜25mmまたは30mmの厚さを有する場合、照射工程において、いくつかの側面から熱硬化性材料を照射することは都合がよく、例えば、熱硬化性材料が平坦またはほとんど平坦である場合、上側および下側から照射する。反射された放射が再び熱硬化性材料を透過するように未吸収の放射が反射するような様式で、一側面から照射し、そして同時に金属のような近赤外放射を反射する材料を配置することも都合がよい。特に好ましい実施形態において、熱硬化性材料は少なくとも2層からなり、そして少なくとも1層が反射層であることを特徴とする。これは、反射層が、近赤外放射を反射する材料を含んでなることを意味する。従って、本発明は、反射材料を含有する熱硬化性材料にも関する。かかる反射材料の例は、アルミニウムのような金属である。反射材料は、反射層中に連続相として存在することができ、また反射材料は、分散された反射粒子の形態でも存在し得る。反射層は、熱硬化性材料の一側面上の表面層であり得、ここで電磁放射が、例えばもう1つの側面から熱硬化性材料に向けられる。好ましくは、熱硬化性材料は少なくとも3層を含んでなり、そして反射層は熱硬化性材料の表面上に存在せず、より好ましくは、熱硬化性材料は少なくとも4層を含んでなり、反射層は、実質的に、または完全に熱硬化性材料の中央に存在する。この利点は、熱硬化性材料がいくつかの側面から照射される場合、加熱が均等に生じるということである。また、照射工程において、例えば、15mmまたは20mm以上の全厚さを有する相対的に厚い熱硬化性材料を有効に処理することも可能である。
【0012】
熱硬化性材料は通常、少なくとも25μm、好ましくは少なくとも0.1mm、より好ましくは少なくとも0.5mmの厚さを有する。積層物の形態の熱硬化性材料が本発明による方法において使用される場合、かかる厚さが実際に一般的に生じるため、厚さは通常、0.6mmと1.2mmとの間である。
【0013】
近赤外放射の有効な、深部まで透過する加熱の効果の結果として、この照射工程を通常、既知の照射工程よりも迅速に実行することができる。好ましくは、0.01秒間〜60秒間、より好ましくは0.1秒間〜30秒間、なおより好ましくは0.5秒間〜20秒間、最も好ましくは1秒間〜10秒間、熱硬化性材料は照射される。
【0014】
本発明による方法の好ましい実施形態において、例えば、1秒あたり数十回、またはさらには数百回〜数千回の高い頻度で熱硬化性材料の温度を測定する。本実施形態において、フィードバック回路によって照射工程の期間を決定することができる。この様式において、熱硬化性材料が加熱されなければならない前記温度である予め決められた温度に到達した時点で照射工程を停止することが可能である。好ましくは、本実施形態は、前記温度測定法およびフィードバック回路を用いて自動的に行なわれる。
【0015】
本発明による方法における照射工程の間または完了時に、照射された熱硬化性材料を所望の形状へと導く形成工程を適用する。かかる形成工程は当業者にそれ自体既知である。一軸に沿って形成を実行することができ、これは2D形成としても既知である。また二本の交差軸に沿って形成を実行することもでき、これは3D形成としても既知である。形成度は、最終製品の所望の形状、および熱硬化性材料によって許容される形成の最大可能数に依存する。形成プロセスにおいて、熱硬化性材料の亀裂または破壊を防ぐことが一般的に重要である。これは、熱硬化性材料が過度に変形した場合、すなわち半径が非常に小さい円の弧へと変形した時に生じる可能性がある。これに関連して、3D形成の達成はより困難であると考えられており、これは、3D形成では2D形成よりも迅速に亀裂形成または破砕へと導かれることを意味する。一般的に、熱硬化性材料の温度が高いほど、特にTより高い温度によって、形成工程の間に可能な形成度がより高くなると考えられる。本発明による方法は、膨れなどの不要な副作用を部分的または完全に回避するように、標準的な赤外放射のような既知の加熱法を使用する場合よりも高い温度までの加熱を可能にする熱硬化性材料の迅速な加熱のため、既知の方法よりも高い形成度が可能であるという利点を有する。本発明による方法において、および材料の最適温度において、熱硬化性材料は、通常、熱硬化性材料の亀裂形成または破壊がない状態で、最大で3cm、好ましくは最大で2cm、より好ましくは最大で1cmまたは0.8cm、そして最も好ましくは0.6cm、もしくはさらには0.4cmの半径を有する円の弧へと形成され得る。ここでは、達成されるべき最大形成度を熱硬化性材料の厚さに応じて見なければならないとも考えられる。一般的に、材料が厚いほど、形成の可能性はより限定されると考えられる。指標として、熱硬化性材料の厚さの10倍またはより多数倍、好ましくは8倍またはより多数倍、より好ましくは6倍またはより多数倍、そして最も好ましくは5倍またはより多数倍の半径を有する円の弧を形成するために、本発明による形成工程を実行することができる。
【0016】
照射工程の完了時に本発明による形成工程を実行することができる。本発明による方法の好ましい実施形態において、形成工程は、照射工程の間に少なくとも部分的に実行される。熱硬化性材料は、そのように加熱されるか、または所望の形状へと導かれながらさらに加熱される。迅速かつ一貫した加熱効果を有する近赤外放射によって、この操作方法を使用可能である。本実施形態の利点は、照射工程および変形工程を続けて実行する場合よりも迅速に本発明による方法を実行することができるということである。本発明による本実施形態のもう1つの利点は、より正確な照射量を実施でき、すなわち、必要とされる時点で必要とされる量のみを実施できるということであり、それによって、確実に熱硬化性材料において発生する不要の副作用のさらなる低下さえも達成可能である。本実施形態のなおさらなる利点は、加熱が生じる時に形成が実行されるため、可能な限り、形成工程が実行された後まで熱硬化性材料のいずれかの硬化またはさらなる硬化が延期されるということである。
【0017】
当業者に既知の通り、最終結果を達成するため、すなわち、熱硬化性材料を予め決められた所望の形状へと導くために、形成工程間に特定の量の力(変形力)を使用する。熱硬化性材料に関して、前記変形力は、典型的に、熱硬化性材料の温度増加によって減少する。前記変形力は特定の限界範囲内にとどまるべきであり、非常に高い変形力は、熱硬化性材料における亀裂または熱硬化性材料の破壊を導く好ましくない変形機構への移行を示す。一方、非常に低い変形力は、熱硬化性材料の温度が必要以上に高いことを示し、従って、エネルギーの無駄および不要な副作用の促進へと導く。それを超えると変形力が高すぎるか、または低すぎると考えられる正確な限界範囲は、当業者に明白である通り、熱硬化性材料自体の厚さおよび特性のような要因に依存する。概算として、これらの限界範囲は、本発明に従って前記予熱が実行されたかどうかに関わらず予熱された熱硬化性材料によって実行される変形工程の場合と同一であると考えられる。いずれの場合も、熱硬化性材料において亀裂形成を伴う変形力は典型的に非常に高いと考えられ、一方、分解のような不要な副作用を伴う変形力は典型的に非常に低いと考えられる。
【0018】
好ましくは、照射工程の間に形成工程が少なくとも部分的に実行される装置は、前記変形力の表示または測定値が提供されるような様式で装備される。この表示または測定値によって、予め決められた所望の変形を達成するために必要とされる変形力が高すぎると示される場合、熱硬化性材料が暴露される近赤外照射の量を増加させるべきである。一方、この表示または測定値によって、必要とされる変形力が低すぎると示される場合、同一原理によって熱硬化性材料が暴露される近赤外照射の量を減少させるべきである。好ましくは、変形力の測定、およびその後の照射量の調整は自動的に行なわれる。
【0019】
熱硬化性材料が基材上の層である場合、熱硬化性材料が基材の形状に確実に適合するように熱硬化性材料に対してのみ形成工程を実行することは、都合がよいか、または必要である。
【0020】
熱硬化性材料に対して全体的に照射工程を実行可能である。既知の方法では、不要な副作用を発生させずに大きい表面積、例えば0.5m〜2mを加熱することはより困難であるため、これは都合がよい。従って、本発明による方法は、椅子または他の家具類のような熱硬化性材料の大型成型物品の3D形成を可能にする。
【0021】
本発明による方法のもう1つの好ましい実施形態において、照射工程を熱硬化性材料の一部のみ、すなわち、形成工程において形成される部分にのみ適用する。この利点は、未照射の部分において発生する膨れまたは分解のような加熱効果よる不要な副作用がないということである。好ましい実施形態のさらなる利点は、次いで、未加熱部分へと熱を放散させることができるため、形成工程後に熱硬化性材料の照射された部分が迅速に冷却され、これによって、照射された部分における加熱効果による不要な副作用の可能性がなおさらに減少するということである。熱硬化性材料の一部のみを照射することは、それ自体既知の技術によって達成可能であり、例えば、近赤外源と熱硬化性材料との間に金属のような電磁放射を遮断または反射する材料から作製されたマスクを配置することが可能である。
【0022】
未硬化か、または部分的に硬化された熱硬化性材料において本発明による方法を実行する場合、40℃と400℃との間の温度へと熱硬化性材料を加熱することは、有益な副作用として、熱硬化性材料の部分的またはさらには完全な硬化を導き得る。しかしながら、硬化または部分的硬化がない場合は、形成工程の後に、照射された熱硬化性材料の温度が40℃と400℃との間の温度まで導かれるか、または維持されるような様式で、かなりの程度まで近赤外範囲内にある電磁放射に熱硬化性材料を暴露する後硬化工程を実行することが都合よいだろう。熱硬化性材料の後硬化の利点は、より高い硬化度が、通常、耐熱性および耐化学性ならびに機械特性のような熱硬化性材料の特性の改善を導くということである。
【0023】
本発明による形成工程または後硬化工程の間および/または完了後、冷却工程を実行することができる。冷却工程の目的は、熱硬化性材料を迅速に冷却することであり、これは、前記不要な副作用がなおさらに限定されるという利点を有する。強制空冷、または冷却要素と熱硬化性材料との間での直接接触によるような、当業者にそれ自体既知の方法によって冷却工程を実行することができる。
【0024】
また本発明は、熱硬化性材料を形成するための装置にも関する。本発明による装置は、上記方法を実施するために適切である。この装置は、熱硬化性材料を形成するためにそれ自体既知の手段を具備する。この装置は、かなりの程度まで近赤外範囲内にある電磁放射による熱硬化性材料の照射手段も具備する。かかる手段は、たとえ異なる適用でも、当業者にそれ自体既知である。
【0025】
ヨーロッパ規格EN438−2(1991)から既知であり、この規格の第21章「成形性能(Formability)(プロセスB)」および図22に記載の装置を、本発明による装置のベースとすることができる。それによって上記規格に記載の放射線源は、例えばアドホス(AdPhos)(登録商標)製のそれ自体既知である放射線源のような、かなりの程度まで近赤外範囲内にある放射を放射する放射線源と交換されなければならない。好ましくは、本発明による装置は、その形成間に熱硬化性材料を照射するための手段を具備し、かなりの程度まで近赤外範囲内にある電磁放射によって前記照射が実行される。この装置によって、照射工程と同時に形成工程が部分的または完全に実行される本発明による方法の実施形態を実行することができる。好ましくは、前記装置は、所望の形成度を得るために熱硬化性材料上に実行される変形力を測定するための手段と、変形力の関数として、形成間に熱硬化性材料が暴露される照射量を調節するための手段とを具備する。
【0026】
前記放射工程および形成工程を実行するために適切な装置に加えて、本発明は、熱硬化性材料の加熱および/または形成のための現行の装置の最適化にも関する。ここでは、最適化は、かなりの程度まで近赤外範囲内にある電磁放射を放射する放射線源を加える工程を含んでなる。近赤外放射線源を加えることによって、完全に新しい装置の製造を必要とせずに達成される、熱硬化性材料における促進および/または局所加熱、ならびにより高い温度の達成のような本発明の利点が与えられる。
【実施例】
【0027】
実施例および比較実験によって本発明を説明する。
【0028】
(実施例1)
照射によって、コア層と表面層とからなるHPL(高圧積層物)の平板状の一片を加熱した。選択されたHPLは、いわゆる後形成、すなわち、HPLの調製後の形成工程のために適切であり、これは、積層物が完全に硬化されていないことを示す。コア層は、市販品のフェノール−ホルムアルデヒド樹脂によって含浸されたナトロンクラフト紙からなった。表面層は、市販品のメラミン−ホルムアルデヒド樹脂によって含浸された白紙からなった。既知の通り、実用時されるフェノール−ホルムアルデヒド樹脂およびメラミン−ホルムアルデヒド樹脂は両方とも、添加物を含んでなる。
【0029】
積層物の全厚さは0.8mmであった。照射源は近赤外(NIR)ランプ(供給元:アドホス(AdPhos))であった。この放射の約50%はNIR範囲内に収まる。250kW/m(合計)の強度によって、この種類の積層物に対する後形成工程の操作ウィンドウである室温から160℃と190℃との間の温度まで4秒以内で積層物を加熱した。加熱後、積層物を首尾よく2D形成することができた。8mmの半径を有する円の弧へと形成を実行した。亀裂または分解は観察されなかった。
【0030】
(比較実験A)
実施例1と同一のHPL積層物を室温から160℃と190℃との間の温度まで加熱したが、慣例の赤外放射を放射するランプを使用した。照射工程は30秒かかり、その後、積層物を形成することができた。
【0031】
(実施例2)
実施例1と同一構造を有するが、4mmの全厚さを有するHPL積層物に、実施例1と同一の照射工程をかけた。通常通り、表面の温度を測定した。加えて、積層物のコアの温度も測定した。HPLの調製プロセスの間に積層物内側に熱電対を組み入れることによって、これを達成することができた。18秒後、コアは160℃の後形成温度に到達しており、この時点で表面温度は180℃であった。加熱後、積層物を首尾よく2D形成することができた。40mmの半径を有する円の弧へと形成を実行した。亀裂または分解は観察されなかった。
【0032】
(比較実験B)
実施例2と同一の4mmのHPL積層物を加熱したが、慣例の赤外放射を放射するランプを使用した。照射工程は3分かかり、その後、コアが160℃に到達した。しかしながら、この時点で表面の深刻な分解が発生した。これによって、積層物はさらなる使用に不適切となった。ここで実験を終了した。
【0033】
(実施例3)
厚さ8mmのHPL積層物を使用して、実施例2を繰返した。本実験において、表面の過熱を回避するために、近赤外放射は連続的ではなく脈動型であった。室温から出発して2分後、コアは160℃に到達し、表面温度は190℃〜200℃であった。
【0034】
(比較実験C)
室温から160℃と190℃との間の温度までの温度増加を目的として、実施例3と同一の8mmのHPL積層物を加熱したが、慣例の赤外放射を放射するランプを使用した。4.5分後、コアは150℃に到達したが、照射の延長によって160℃以上へのコア温度の増加は得られなかった。従って、ここで実験を終了した。
【0035】
実施例1〜3および比較実験A〜Cから、近赤外放射の使用が、慣例の赤外放射よりも積層物の迅速でより深部での加熱を可能にし、それによって、慣例の加熱源が積層物を首尾よく加熱することができない場合(例えば、厚さがより厚い場合)でさえも、迅速かつ良好な形成プロセスが可能となるということを明白に理解できる。
【0036】
(実施例4〜7;比較実験D)
NIRランプ(供給元:アドホス(AdPhos))を使用する照射によって、実施例1のHPL積層物に後硬化工程をかけた。この放射の約50%はNIR範囲内に収まる。250kW/m(合計)の強度によって積層物を加熱した。TMDSC測定によって、照射時間に応じて、コアおよび表面層における追加の硬化度を決定した。TMDSCは、既知の技術の熱的に変調された(Thermally Modulated)示差走査熱量測定を表し、この技術によって、当業者は(T転移に帰属するような)可逆プロセスを、熱硬化性材料の硬化のような非可逆プロセスから識別することが可能となる。この種類の積層物に関して、約120℃と約180℃との間の温度で硬化が生じることは既知であるため、さらなる確実性をもって硬化に帰属し得るピークを確認することができた。本実施例の測定において、硬化の間に発生するいずれの水蒸気の損失も防止するように、密閉された高圧再使用可能なステンレス鋼試料ホルダー中に試料を配置した。加熱速度は1分あたり2.5℃であり、温度変調は0.5℃の振幅および90秒の期間を有した。いずれの後硬化工程(比較実験D)にも暴露されていない試料に関して、追加硬化度を0%として定義した。硬化に帰属し得るピークをTMDSC曲線が全く示さなかった場合、100%追加硬化スコアが与えられた。最初に、本実施例の硬化エンタルピー(ΔH)を測定し、比較実験Dの硬化エンタルピーのパーセントとしてこの硬化エンタルピーを表し、その後、100%から前記パーセントを引き算することによって、中間スコアが定められる。
【0037】
表に結果をまとめる。
【0038】
【表1】

【0039】
実施例4〜7は、近赤外放射の使用によって後硬化工程を首尾よく実行できるということを明白に示す。コアと表面との間のパーセントの差異は、フェノール樹脂、すなわち、コア中の樹脂が、表面に存在するメラミン−ホルムアルデヒド樹脂よりも遅い速度で硬化するという既知の事実に主に帰属する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
かなりの程度まで近赤外範囲内にある電磁放射による熱硬化性材料の照射手段と、
熱硬化性材料の形成手段と
を具備する、熱硬化性材料の形成装置。
【請求項2】
その形成間に熱硬化性材料を照射するための手段を具備し、かなりの程度まで近赤外範囲内にある電磁放射によって前記照射が実行される、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
・形成間に熱硬化性材料上に実行される変形力を測定するための手段と、
・前記変形力の関数として、形成間に熱硬化性材料が暴露される照射量を調節するための手段と
を具備する、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
熱硬化性材料の加熱および/または形成のための現行の装置の最適化方法であって、かなりの程度まで近赤外範囲内にある電磁放射を放射する放射線源が加えられることを特徴とする方法。

【公開番号】特開2010−131997(P2010−131997A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−292737(P2009−292737)
【出願日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【分割の表示】特願2006−532138(P2006−532138)の分割
【原出願日】平成16年5月27日(2004.5.27)
【出願人】(503220392)ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ. (873)
【Fターム(参考)】