説明

熱硬化性樹脂組成物及びその硬化物

【課題】 樹脂原料が十分な相溶性を有し、且つ透明性、耐熱着色性に優れ、硬度が高く表面タックが少なく、埃や指紋がつきにくい硬化物が得られる熱硬化性樹脂組成物、及びその硬化物を提供することを目的とする。
【解決手段】 (A)SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を、一分子中に少なくとも2個有する有機化合物と、(B)重量平均分子量が500以上10000以下であり、一分子中に少なくとも2個のSiH基を有する鎖状ポリオルガノシロキサンと、(C)相溶化剤と、(D)ヒドロシリル化触媒と、を含有する熱硬化性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱硬化性樹脂組成物及びその硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光学部材用樹脂には透明性や耐光性に優れるアクリル系樹脂が一般に多用されている。しかし、アクリル系樹脂を用いた硬化物は、透明性、耐光着色性に優れるが、耐熱着色性に課題があり、さらなる特性の向上が求められていた。一方、光・電子機器分野に利用される光学部材用樹脂には、電子基板等への実装プロセスや高温動作下での耐熱性や機械特性が求められ、エポキシ系樹脂が広く用いられていた。
【0003】
ところで、近年、光・電子機器分野でも高強度のレーザ光や青色光、近紫外光の利用が広がりつつあり、従来以上に透明性、耐熱性及び耐光性に優れた樹脂が求められている。一般にエポキシ樹脂は可視域での透明性は高いが、紫外から近紫外域では十分な透明性が得られていない。これに対して、脂環式ビスフェノールAジグリシジルエーテル等を用いたエポキシ樹脂は、紫外から近紫外域での透明性も比較的高いものの、熱や光によって着色し易い等の問題点があった。そこで、例えば、特許文献1や特許文献2では、脂環式ビスフェノールAジグリシジルエーテルに含まれる着色原因の一つである不純物の低減方法が開示されている。
【0004】
また近年、シリコーン樹脂を用いた硬化物は、紫外から可視域にかけての透明性が高く、耐光着色性、耐熱着色性に優れているため、光学部材への使用が検討され始めている。しかし、シリコーン樹脂は、透湿性が高く、接着性が低く、線膨張係数が高く、また軟らかいために、複雑な形状を有する成型品が得られず、埃や指紋がつきやすい等の問題点があった。
【0005】
これらの問題点を改善するため、例えば、特許文献3には、軟らかさの原因となるシリコーン樹脂のジメチルシロキサン骨格のメチル基の一部をフェニル基に置換する方法が開示されている。
【0006】
また、シリコーン樹脂は一般に有機化合物に対する相溶性が悪く、ポリオルガノハイドロジェンシロキサンと炭素−炭素二重結合を有する有機化合物とを硬化させようとしても、相分離により透明で均一な硬化物が得られないという問題があった。例えば、有機物である樹脂とケイ素を含有する無機物とを複合化する方法として、樹脂中でのゾルゲル法や、樹脂中でクレイの層を剥離する方法等がある。しかし、これらの方法では、反応の進行に伴った水の析出や、透明性等の点で課題が大きかった。
【0007】
上記の問題を解決するため、例えば特許文献4では、分子中にヒドロシリル基を有する有機系硬化剤として、有機変性シロキサンが提案されている。上記硬化剤は炭素−炭素二重結合を有する有機化合物と一般に相溶性が良好である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−171439号公報
【特許文献2】特開2004−75894号公報
【特許文献3】特開2004−292807号公報
【特許文献4】特開平3−95266号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1,2等の方法により、着色が低減された樹脂についても、色相について改善の余地がある。また、特許文献3等で得られるシリコーン樹脂は、長期信頼性が必ずしも十分ではなく、特に耐熱着色性に課題がある。さらに、特許文献4等で得られる有機変性シロキサンは、特にヒドロシリル基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を有する成分として高極性の有機化合物を用いた場合等、十分な相溶性が得られないという問題があり、上記炭素−炭素二重結合を有する成分の構造に合わせて相溶性の良いものを設計、選択する必要があった。また、有機変性シロキサンは特殊化合物であり種々のものが容易に入手可能であるとは言い難いため、工業的な実用性が低いという問題を有していた。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、樹脂原料が十分な相溶性を有し、且つ透明性、耐熱着色性に優れ、硬度が高く表面タックが少なく、埃や指紋がつきにくい硬化物を得ることが可能な熱硬化性樹脂組成物、及びその硬化物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、(A)SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を、一分子中に少なくとも2個有する有機化合物と、(B)重量平均分子量が500以上10000以下であり、一分子中に少なくとも2個のSiH基を有する、鎖状ポリオルガノシロキサンと、(C)相溶化剤と、(D)ヒドロシリル化触媒と、を含有する熱硬化性樹脂組成物を提供する。
【0012】
このような熱硬化性樹脂組成物は、樹脂原料が十分な相溶性を有し、且つ得られる硬化物は、透明性、耐熱着色性に優れ、硬度が高く、表面タックが少なく、埃や指紋がつきにくい。
【0013】
上記(A)成分及び(B)成分は、互いに非相溶であり、かつ上記(C)成分を添加すると均一となる成分であることが好ましい。
この明細書において、「相溶」という言葉は、混合後、約25℃で約24時間放置した後に、層の分離がなくクリアな状態のままである2つ以上の成分の混合物を記述するために使用される。また「非相溶」という言葉は、完全に混合し、そして約25℃で約24時間放置した後に濁るかあるいは層が分離する2つ以上の成分の混合物を記述するために使用される。
【0014】
上記(A)成分は、脂環式脂肪族炭化水素基、鎖状脂肪族炭化水素基及び複素環基からなる群より選択される少なくとも一種の基を有する有機化合物であることが好ましい。
【0015】
上記(A)成分における上記炭素−炭素二重結合のうち少なくとも2個がアリル基由来の炭素−炭素二重結合であることが好ましい。
【0016】
(A)成分は、イソシアヌレート骨格を有することが好ましい。
【0017】
(C)成分は、分子量500未満であり、シロキサン結合を有する化合物であることが好ましく、オルガノシロキサン化合物であることがより好ましく、一分子中に少なくとも2個のSiH基を有するオルガノシロキサン化合物であることが特に好ましい。
【0018】
(C)成分が上記化合物であるとき、(A)成分と(B)成分との相溶性、反応性、硬化物の透明性、耐熱性及び耐光性をより向上させることができる。
【0019】
また、(A)成分における上記炭素−炭素二重結合と、上記(B)及び(C)成分における上記SiH基の合計と、の当量比(炭素−炭素二重結合/SiH基)は、0.1/1.0〜0.5/1.0であることが好ましい。
【0020】
本発明は、上記熱硬化性樹脂組成物を加熱し、上記熱硬化性樹脂組成物中の、SiH基との反応性を有する炭素−炭素二重結合と、SiH基の一部又は全部と、を反応させることによって得られる硬化物を提供する。
【発明の効果】
【0021】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、樹脂原料が十分な相溶性を有し、反応に伴う析出物がなく、且つ上記熱硬化性樹脂組成物を反応させることによって得られる硬化物は、透明性、耐熱着色性に優れ、硬度が高く、表面タックが少なく、埃や指紋がつきにくい。従って、硬化物は、発光ダイオード素子の保護、封止若しくは接着、波長の変更若しくは調整、又はレンズ等の用途に好適に使用できる。また、レンズ材料、光学デバイス若しくは光学部品用封止材、ディスプレイ材料等の各種の光学用材料、電子デバイス若しくは電子部品用絶縁材料、さらにはコーティング材料としても使用できる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明についてさらに詳しく説明する。本発明の熱硬化性樹脂組成物は、(A)SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を、一分子中に少なくとも2個有する有機化合物(以下、場合により「(A)成分」という)と、(B)重量平均分子量が500以上10000以下であり、一分子中に少なくとも2個のSiH基を有する鎖状ポリオルガノシロキサン(以下、場合により「(B)成分」という)と、(C)相溶化剤(以下、場合により「(C)成分」という)と、(D)ヒドロシリル化触媒(以下、場合により「(D)成分」という)と、を含有する。
【0023】
((A)成分)
(A)成分は、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を、一分子中に少なくとも2個有する有機化合物であれば特に限定されない。ただし、上記有機化合物は、ポリシロキサン−有機ブロックコポリマーやポリシロキサン−有機グラフトコポリマーのようなシロキサン単位(Si−O−Si)を含むものではなく、構成元素として、C、H、N、O、S、ハロゲンのみを含むものであることが好ましい。
【0024】
上記SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合としては、例えば(メタ)アクリル基、アリル基、ビニルエーテル基、ビニル基等に由来する炭素−炭素二重結合が挙げられる。さらに、上記(A)成分における上記炭素−炭素二重結合のうち少なくとも2個がアリル基由来の炭素−炭素二重結合であることが好ましい。また、(A)成分は、イソシアヌレート骨格を有することが好ましい。(A)成分のSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合の結合位置は特に限定されず、分子内のどこに存在してもよい。
【0025】
(A)成分のSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合の数は、1分子当たり2個以上あればよい。(A)成分のSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合の数が1分子当たり1個以下の場合は、(B)成分と反応してもグラフト構造となるのみで架橋構造とならない。(A)成分は、脂環式脂肪族炭化水素基、鎖状脂肪族炭化水素基及び複素環基からなる群より選択される少なくとも一種の基を有する有機化合物であることが好ましい。また、(A)成分の分子量は、80〜5000であることが好ましい。
【0026】
このような(A)成分としては、例えば、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレ−ト、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレ−ト、(メタ)アクリル酸ビニル、ジシクロペンタジエンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピル(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのエチレンオキサイド(EO)付加物ジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル化合物、トリアリルイソシアヌレート等のアリル化合物、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、ジシクロペンテニルビニルエーテル、ジシクロペンタジエンジメタノールジビニルエーテル、ジシクロペンタジエンジオールジビニルエーテル、トリシクロデカンジメタノールジビニルエーテル、トリシクロデカンジオールジビニルエーテル、水添ビスフェノールAジビニルエーテル等のビニルエーテル化合物、クロトン酸ビニル、アジピン酸ジビニル、ジメチルシロキサンジビニル、トリビニルシクロヘキサン等のビニル化合物、リモネン、1,5−ヘキサジエン、1,8−ノナジエン、ブタジエン、ポリブタジエン等の上記以外の二重結合を含む化合物が挙げられる。これらの中でも、得られる硬化物の着色が少なく、耐光性が高いという観点から、トリアリルイソシアヌレート及びその誘導体がより好ましい。これらは、単独又は2種以上を組み合わせて用いることが可能である。
【0027】
((B)成分)
(B)成分は、重量平均分子量が500以上10000以下であり、一分子中に少なくとも2個のSiH基を有する鎖状ポリオルガノシロキサンである。(B)成分としては、下記一般式(1)又は(2)で表されるオルガノハイドロジェンシロキサン等が挙げられる。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることが可能である。
【化1】


(式中、mは4≦m≦140を満たす整数を示す。)
【化2】


(式中、p、qは4≦p+q≦140、0≦p、4≦q≦140を満たす整数を示す。)
【0028】
なお本明細書において、重量平均分子量とは、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー法(GPC)により、標準ポリスチレンによる検量線を用いて測定したものであり、測定条件は次のとおりである。
<GPC条件>
使用機器:日立L−6000型〔(株)日立製作所〕
カラム :ゲルパックGL−R420+ゲルパックGL−R430+ゲルパックGL−R440(計3本)〔いずれも日立化成工業(株)製商品名〕
溶離液 :テトラヒドロフラン
測定温度:40℃
流量 :1.75ml/分
検出器 :L−3300RI〔(株)日立製作所〕
【0029】
((C)成分)
(C)成分は、(A)成分と(B)成分との相溶性を向上させることが可能な相溶化剤である。(C)成分は、分子量500未満であり、シロキサン結合を有する化合物であることが好ましく、オルガノシロキサン化合物であることがより好ましく、一分子中に少なくとも2個のSiH基を有するオルガノシロキサン化合物であることがさらに好ましい。なお、オルガノシロキサン化合物とは、少なくとも1つのシロキサン結合を有する有機化合物をいう。(C)成分としては、例えば、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3−ビス(ジクロロメチル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,1,3,3,5,5−ヘキサメチルトリシロキサン、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタメチルシクロペンタシロキサン、シクロトリシロキサン、メチルヒドロシロキサンオリゴマー、ヒドロシロキサンオリゴマー等のオルガノシロキサン化合物が挙げられ、(A)成分と(B)成分との相溶性及び反応性、並びに硬化物の透明性、耐熱性及び耐光性の観点の点から、特に、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタメチルシクロペンタシロキサンが好ましい。
【0030】
((D)成分)
本発明の(D)成分であるヒドロシリル化触媒は、中心金属を有する錯体であり、ヒドロシリル化反応の触媒活性があれば特に限定されるものではない。中心金属としては、例えば、白金、鉄、アルミニウム、パラジウム、ルテニウム、ロジウム等が挙げられる。これらの中でも、中心金属が白金であるヒドロシリル化触媒が好ましい。中心金属が白金であるヒドロシリル化触媒としては、例えば、白金(0)−2,4,6,8−テトラメチル−2,4,6,8−テトラビニルシクロテトラシロキサン錯体、白金カルボニルシクロビニルメチルシロキサン錯体(OSSKO触媒)、白金Nジビニルテトラメチルジシロキサン錯体(KARSTEDT触媒)、白金シクロビニルメチルシロキサン錯体(ASHBY−KARSTEDT触媒)、白金オクタナール/オクタノール錯体(LAMOREAUX触媒)等が挙げられる。
【0031】
熱硬化性樹脂組成物には、上記必須成分以外に、硬化遅延剤、ヒンダードアミン系の光安定剤、フェノール系やリン系の酸化防止剤、紫外線吸収剤、無機充填剤、有機充填剤、カップリング剤、接着性付与剤、重合禁止剤、可塑剤、離型剤、帯電防止剤、難燃剤等を添加してもよい。
【0032】
上記(A)成分及び(B)成分は、互いに非相溶であり、かつ上記(C)成分を添加すると均一となる成分であることが好ましい。(A)成分における上記炭素−炭素二重結合と、上記(B)及び(C)成分における上記SiH基の合計と、の当量比(炭素−炭素二重結合/SiH基)は、0.1/1.0〜0.5/1.0であることが好ましい。熱硬化性樹脂組成物中の(C)成分の配合量は、(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対し、1〜200質量部であることが好ましい。熱硬化性樹脂組成物中の(D)成分の配合量は、触媒としての有効量であれば良く、特に制限されないが、(A)〜(C)成分の合計質量に対して、金属原子として、1〜500ppmであることが好ましい。
【0033】
熱硬化性樹脂組成物において、上記(A),(B)及び(C)成分を、(D)成分の存在下で加熱して、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合と、SiH基の一部又は全部と、を反応させる、すなわちヒドロシリル化反応を行うことにより、硬化物を得ることができる。なお、上記(A)〜(D)成分は、加熱の前に、あらかじめ混合することが好ましい。ヒドロシリル化による硬化反応の反応温度は、50℃から150℃であることが好ましい。反応温度が50℃未満では硬化が不十分となり、150℃を超えると硬化物が着色する傾向にある。
【0034】
以上、説明した本発明の熱硬化性樹脂組成物から得られる硬化物は、透明性、耐熱着色性に優れ、硬度が高く表面タックが少なく、埃や指紋がつきにくい。従って、硬化物は、発光ダイオード素子の保護、封止若しくは接着、波長の変更若しくは調整、又はレンズ等の用途に好適に使用できる。また、レンズ材料、光学デバイス若しくは光学部品用封止材、ディスプレイ材料等の各種の光学用材料、電子デバイス若しくは電子部品用絶縁材料、さらにはコーティング材料としても使用できる。
【実施例】
【0035】
以下、本発明の実施例を示して、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲での種々の変更が可能である。
【0036】
(実施例1)
50mLのスクリュー管に、(A)成分としてトリアリルイソシアヌレート(日本化成株式会社製、以下、「TAIC」という)100質量部、(B)成分として、
【化3】


(nは平均値で25である。)の化学式で表されるハイドロジェンポリジメチルシロキサン60質量部、(C)成分として1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン(和光純薬株式会社製、以下、「TMCTS」という)150質量部、(D)成分として白金(0)−2,4,6,8−テトラメチル−2,4,6,8−テトラビニルシクロテトラシロキサン錯体0.7質量部を加えて、これらを均一になるまで混合した。次いで、厚さ1mm及び3mmとなるように底が平らなガラス容器に混合液を入れ、オーブンで100℃1時間、120℃2時間、150℃1時間加熱し、厚さ1mm及び3mmの硬化物を得た。
【0037】
(実施例2)
50mLのスクリュー管に、(A)成分としてTAIC100質量部、(B)成分として実施例1と同様のハイドロジェンポリジメチルシロキサン60質量部、(C)成分として1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン(和光純薬株式会社製、以下、「TMDS」という)150質量部、(D)成分として白金(0)−2,4,6,8−テトラメチル−2,4,6,8−テトラビニルシクロテトラシロキサン錯体0.7質量部を加えて、これらを均一になるまで混合した。次いで、厚さ1mm及び3mmとなるように底が平らなガラス容器に混合液を入れ、オーブンで100℃1時間、120℃2時間、150℃1時間加熱し、厚さ1mm及び3mmの硬化物を得た。
【0038】
(比較例1)
比較例1では、相溶化剤である(C)成分を添加しなかったこと以外は実施例1と同様の条件で、化合物を配合し、硬化反応を行った。しかし、均一かつ透明な硬化物は得られなかった。
【0039】
[硬化物の評価]
上記実施例1〜2で得られた硬化物について、以下に示す方法で、耐熱着色性、硬度及び指紋付着性(硬化物表面のタック)を測定した。
【0040】
(耐熱着色性)
硬化物(1mm厚)を150℃のオーブンに入れ72時間放置し、加熱前後の460nmでの光線透過率とその黄色度(YI)を日本分光(株)製V−570で測定することで耐熱着色性を評価した。結果を表1に示す。
【0041】
(硬度)
硬化物(3mm厚)について、硬度計(デュアルメータ、タイプA)を用いたショア硬度Aと、硬度計(デュアルメータ、タイプD)を用いたショア硬度Dを測定した。結果を表1に示す。
【0042】
(タック)
硬化物表面を指で押圧後、指紋の付着の有無によりタックの評価をした。結果を表1に示す。
【0043】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を、一分子中に少なくとも2個有する有機化合物と、
(B)重量平均分子量が500以上10000以下であり、一分子中に少なくとも2個のSiH基を有する、鎖状ポリオルガノシロキサンと、
(C)相溶化剤と、
(D)ヒドロシリル化触媒と、
を含有する熱硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記(A)成分及び(B)成分は、互いに非相溶であり、かつ前記(C)成分を添加すると均一となる成分である、請求項1に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記(A)成分が、脂環式脂肪族炭化水素基、鎖状脂肪族炭化水素基及び複素環基からなる群より選択される少なくとも一種の基を有する有機化合物である、請求項1に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
前記(A)成分における前記炭素−炭素二重結合のうち少なくとも2個がアリル基由来の炭素−炭素二重結合である、請求項1に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
前記(A)成分が、イソシアヌレート骨格を有する、請求項1に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
前記(C)成分が、分子量500未満であり、シロキサン結合を有する化合物である、請求項1に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
前記(C)成分が、分子量500未満のオルガノシロキサン化合物である、請求項1に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項8】
前記(C)成分が、分子量が500未満であり、一分子中に少なくとも2個のSiH基を有するオルガノシロキサン化合物である、請求項1に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項9】
前記(A)成分における前記炭素−炭素二重結合と、前記(B)及び(C)成分における前記SiH基の合計と、の当量比(炭素−炭素二重結合/SiH基)が、0.1/1.0〜0.5/1.0である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物を加熱し、当該熱硬化性樹脂組成物中の、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合と、SiH基の一部又は全部と、を反応させることによって得られる硬化物。

【公開番号】特開2012−52025(P2012−52025A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−195877(P2010−195877)
【出願日】平成22年9月1日(2010.9.1)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】