説明

熱硬化性重合体組成物およびその硬化物

【課題】熱硬化性重合体硬化物の耐熱性、可撓性、靭性、電気特性などを改善することを目的とし、そのための熱硬化性重合体組成物を提供する。
【解決手段】 オキシラニル、オキシラニレンもしくは3,4−エポキシシクロヘキシルを有するかご型構造のシルセスキオキサン誘導体の少なくとも1つである第1成分とアミン化合物である第2成分を必須成分として含有し、オキシラニル、オキシラニレンもしくは3,4−エポキシシクロヘキシルを有し、且つ分子中にケイ素を含まない化合物および硬化促進剤の少なくとも1つである第3成分を任意成分として含有する熱硬化性重合体組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気・電子部品絶縁材料、積層板等の複合材料、接着剤、塗料等に用いられる熱硬化性重合体組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂は、耐熱性や接着力、電気的性質、機械的性質が優れているため、広範囲の用途で使用されている。特に絶縁注型材料やプリント配線基板、半導体封止材料などの電子材料分野では無くてはならない材料となっている。ところが、近年の電子機器のダウンサイジング化、ポータブル化、高性能化が急速に進んでいるため、エポキシ樹脂に対する要求特性もますます高まっている。
【0003】
高まるエポキシ樹脂への要求特性(特に電気特性)に対応すべく、これまで様々なアプローチでエポキシ樹脂が変性されてきた。例えば、特許文献1ではエポキシ樹脂、シリコーンアクリル樹脂、アクリル樹脂およびフィラーからなる重合体組成物の硬化物、特許文献2ではエポキシ樹脂と多価カルボン酸とフェノール性水酸基を有する化合物から得られるエステルからなる重合体組成物の硬化物、特許文献3ではエポキシ基を有する環状オレフィン共重合体とエポキシ樹脂からなる重合体組成物の硬化物が、それぞれ低誘電率を示すことが開示されている。しかし、これらで提供される硬化物の誘電率は3.0〜4.0であり、それは従来のエポキシ樹脂と比較すれば低誘電率ではあるが、十分満足できる物ではなかった。なお、特許文献4〜8には、かご型ケイ素化合物及びその重合体が開示されているが、本発明の熱硬化性重合体組成物は開示されていない。
【0004】
【特許文献1】特開2000−17147号公報
【特許文献2】特開2002−12650号公報
【特許文献3】特開2002−201338号公報
【特許文献4】WO2004/081084号パンフレット
【特許文献5】特開2004−331647号公報
【特許文献6】特開2006−070049号公報
【特許文献7】WO2003/24870号パンフレット
【特許文献8】WO2004/24741号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、熱硬化性重合体硬化物の耐熱性、可撓性、靭性、電気特性などを改善することを目的とし、そのための熱硬化性重合体組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、下記の[1]〜[11]項で構成される。
[1] オキシラニル、オキシラニレンもしくは3,4−エポキシシクロヘキシルを有するかご型構造のシルセスキオキサン誘導体の少なくとも1つである第1成分とアミン化合物である第2成分を必須成分として含有し、オキシラニル、オキシラニレンもしくは3,4−エポキシシクロヘキシルを有し、且つ分子中にケイ素を含まない化合物および硬化促進剤の少なくとも1つである第3成分を任意成分として含有する熱硬化性重合体組成物。
【0007】
[2] 第1成分が式(1)および式(2)のそれぞれで表される化合物の群から選択される化合物である、[1]項に記載の熱硬化性重合体組成物:
【化1】


ここに、Rは独立して、炭素数1〜45のアルキル、炭素数4〜8のシクロアルキル、アリール、またはアリールアルキルであり;炭素数1〜45のアルキルにおいて、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、そして任意の−CH−は−O−または−CH=CH−で置き換えられてもよく;アリールおよびアリールアルキル中のベンゼン環において、任意の水素はハロゲンまたは炭素数1〜10のアルキルで置き換えられてもよく;この炭素数1〜10のアルキルにおいて、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、そして任意の−CH−は−O−または−CH=CH−で置き換えられてもよく;アリールアルキル中のアルキレンにおいて、炭素原子の数は1〜10であり、そして任意の−CH−は−O−で置き換えられてもよく;そして、Yはそれぞれ独立して式(a)で表される基である:
【化2】


ここに、Xは独立して、シクロペンチル、シクロヘキシル、任意の水素がフッ素で置き換えられてもよく、そして1つの−CH−が−O−で置き換えられてもよい炭素数1〜10のアルキル、任意の水素がハロゲンもしくは炭素数1〜10のアルキルで置き換えられてもよいフェニル、任意の水素がハロゲンもしくは炭素数1〜10のアルキルで置き換えられてもよいフェニルと炭素数1〜4のアルキレンとで構成されるフェニルアルキル、またはオキシラニル、オキシラニレンもしくは3,4−エポキシシクロヘキシルを有する基であり;フェニルの置換基である炭素数1〜10のアルキルにおいて、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、そして任意の−CH−は−O−で置き換えられてもよく;フェニルアルキルのアルキレンにおいて、1つの−CH−は−O−で置き換えられてもよく;そして、Xの少なくとも1つはオキシラニル、オキシラニレンまたは3,4−エポキシシクロヘキシルを有する基である:
【化3】


ここに、Rは式(1)におけるRと同じ意味を有し、Yは式(b)で表される基または式(c)で表される基である:
【化4】


ここに、式(b)および式(c)のそれぞれにおいて、Xは式(a)におけるXと同じ意味を有し、そして式(c)におけるZは−O−、−CH−または単結合である。
【0008】
[3] Rが独立して、シクロヘキシル、任意の水素がハロゲンもしくは炭素数1〜4のアルキルで置き換えられてもよいフェニル、または任意の水素がハロゲンもしくは炭素数1〜4のアルキルで置き換えられてもよいフェニルと炭素数1〜4のアルキレンとで構成されるフェニルアルキルであり;フェニルの置換基である炭素数1〜4のアルキルにおいて、任意の水素がフッ素で置き換えられてもよく、そして1つの−CH−が−O−で置き換えられてもよく;
Xが独立して、炭素数1〜4のアルキル、炭素数1〜4のフッ素化アルキル、シクロペンチル、シクロヘキシル、任意の水素がハロゲンもしくは炭素数1〜4のアルキルで置き換えられてもよいフェニル、任意の水素がハロゲンもしくは炭素数1〜4のアルキルで置き換えられてもよいフェニルと炭素数1〜4のアルキレンとで構成されるフェニルアルキル、またはオキシラニル、オキシラニレンもしくは3,4−エポキシシクロヘキシルを有する基であり、フェニルの置換基である炭素数1〜4のアルキルにおいて、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、そして任意の−CH−は−O−で置き換えられてもよく;そして、式(a)、式(b)および式(c)のそれぞれにおいて、Xの少なくとも1つがオキシラニル、オキシラニレンまたは3,4−エポキシシクロヘキシルを有する基である、[2]項に記載の熱硬化性重合体組成物。
【0009】
[4] Rがシクロヘキシル、任意の水素がハロゲンもしくは炭素数1〜4のアルキルで置き換えられてもよいフェニル、または任意の水素がハロゲンもしくは炭素数1〜4のアルキルで置き換えられてもよいフェニルと炭素数1〜4のアルキレンとで構成されるフェニルアルキルであり;フェニルの置換基である炭素数1〜4のアルキルにおいて、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、そして1つの−CH−が−O−で置き換えられ
てもよく;
式(a)、式(b)および式(c)のそれぞれにおいて、Xの1つがオキシラニル、オキシラニレンまたは3,4−エポキシシクロヘキシルを有する基であって、残りのXが炭素数1〜4のアルキル、炭素数1〜4のフッ素化アルキル、シクロペンチル、シクロヘキシル、任意の水素がハロゲンもしくは炭素数1〜4のアルキルで置き換えられてもよいフェニル、任意の水素がハロゲンもしくは炭素数1〜4のアルキルで置き換えられてもよいフェニルと炭素数1〜4のアルキレンとで構成されるフェニルアルキルであり;フェニルの置換基である炭素数1〜4のアルキルにおいて、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、そして任意の−CH−は−O−で置き換えられてもよい、[2]項に記載の熱硬化性重合体組成物。
【0010】
[5] Rがシクロヘキシルまたはフェニルであり;式(a)、式(b)および式(c)のそれぞれにおいて、Xの1つがオキシラニル、オキシラニレンまたは3,4−エポキシシクロヘキシルを有する基であり、そして残りのXがメチル、エチル、t−ブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルまたはフェニルである、[2]項に記載の熱硬化性重合体組成物。
【0011】
[6] Rがフェニルであり;式(a)、式(b)および式(c)のそれぞれにおいて、Xの1つがオキシラニル、オキシラニレンまたは3,4−エポキシシクロヘキシルを有する基であり、そして残りのXがメチルまたはフェニルである、[2]項に記載の熱硬化性重合体組成物。
【0012】
[7] 第1成分が式(1−1)で表される化合物である、[1]項に記載の熱硬化性重合体組成物:
【化5】

【0013】
[8] 第1成分が式(1−2)で表される化合物である、[1]項に記載の熱硬化性重合体組成物:
【化6】

【0014】
[9] 第1成分が式(2−1)で表される化合物である、[1]項に記載の熱硬化性重合体組成物:
【化7】

【0015】
[10] 第1成分が式(2−2)で表される化合物である、[1]項に記載の熱硬化性重合体組成物:
【化8】

【0016】
[11] [1]〜[10]の何れか1項に記載の熱硬化性重合体組成物を硬化することによって得られる硬化物。

【発明の効果】
【0017】
本発明により、耐熱性を有し、低誘電率であり、そして弾性率の大きい硬化物が得られる。従って、本発明の熱硬化性重合体組成物は、例えば次世代の電気・電子産業、通信機器産業用材料(半導体封止材料やフレキシブル基板材料など)や塗料、接着剤として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明で用いる用語について説明する。式(1)で表わされる化合物を化合物(1)と表記することがある。他の式で表される化合物についても同様に簡略化して称することがある。「任意のAはBまたはCで置き換えられてもよい」という表現は、少なくとも1つのAがBで置き換えられる場合および少なくとも1つのAがCで置き換えられる場合に加えて、少なくとも1つのAがBで置き換えられると同時に、その他のAの少なくとも1つがCで置き換えられる場合があることを意味する。本明細書に記載される化学式において、Meはメチルであり、そしてPhはフェニルである。実施例においては、電子天秤の表示データを質量単位であるg(グラム)を用いて示した。重量%や重量比はこのような数値に基づくデータである。
【0019】
本発明の熱硬化性重合体組成物は、第1成分と第2成分を必須成分として含有し、そして第3成分を任意の成分として含有する組成物である。この第1成分は、オキシラニル、オキシラニレンまたは3,4−エポキシシクロヘキシルを有するかご型構造のシルセスキオキサン誘導体の少なくとも1つである。このかご型構造は、複数の環状シロキサンが閉じた空間を形成している構造であり、その閉じた空間の形状は特に限定されない。さらに
本発明では、かご型構造の少なくとも1箇所以上が塞がれていない構造を有するシルセスキオキサン誘導体も包含する。
【0020】
このようなかご型構造のシルセスキオキサン誘導体の具体例として、化合物(1)および化合物(2)示すことができる。
【化9】

【0021】
式(1)および式(2)において、Rは炭素数1〜45のアルキル、炭素数4〜8のシクロアルキル、アリールおよびアリールアルキルから独立して選択される基である。即ち、式(1)および式(2)のそれぞれにおいて、8つのRは異なる2つ以上の基で構成されてもよいが、すべてが同じ基であることが好ましい。この炭素数1〜45のアルキルにおいて、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、そして任意の−CH−は−O−または−CH=CH−で置き換えられてもよいが、隣接した−CH−がともに−O−で置き換えられることはない。このアルキルの好ましい炭素数は1〜10である。
【0022】
Rが炭素数4〜8のシクロアルキルであるとき、架橋構造の基であってもよい。シクロアルキルの好ましい例はシクロペンチルおよびシクロヘキシルであり、シクロヘキシルがより好ましい。
【0023】
Rがアリールまたはアリールアルキルであるとき、これらの基中のベンゼン環において、任意の水素はハロゲンまたは炭素数1〜10のアルキルで置き換えられてもよい。ハロゲンの例はフッ素、塩素および臭素である。この炭素数1〜10のアルキルにおいて、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、そして任意の−CH−は−O−または−CH=CH−で置き換えられてもよいが、隣接した−CH−がともに−O−で置き換えられることはない。このアルキルの好ましい炭素数は1〜4である。アリールアルキル中のアルキレンにおいて、その炭素原子の数は1〜10であり、そして任意の−CH−は−O−で置き換えられてもよいが、隣接した−CH−がともに−O−で置き換えられることはない。このアルキレンの好ましい炭素数は1〜4である。
【0024】
このようなアリールの例は、フェニル、ハロゲン化フェニル、4−メチルフェニル、4−エチルフェニル、4−ブチルフェニル、4−オクチルフェニル、2,4−ジメチルフェニル、4−メトキシフェニル、4−ブトキシフェニル、4−トリフルオロメチルフェニル、4−トリフルオロメトキシフェニル、3−クロロ−4−メチルフェニル、3,5−ジクロロ−4−メチルフェニル、および2,3−ジフルオロ−4−メトキシフェニルである。これらのうちで、フェニルが特に好ましい。
【0025】
前記のようなアリールアルキルの例は、フェニルメチル、フェニルエチル、3−フェニルプロピル、4−フェニルブチル、4−クロロフェニルメチル、4−フルオロフェニルメチル、2−(4−フルオロフェニル)プロピル、2−(4−クロロフェニル)エチル、4−メチルフェニルメチル、2−(4−メチルフェニル)エチル、2−(2,5ジメチルフェニル)エチル、4−トリフルオロメチルフェニルメチル、2−(4−トリフルオロメチルフェニル)エチル、2−(4−エテニルフェニル)エチル、4−メトキシフェニルメチル、4−エトキシフェニルメチル、2−(4−メトキシフェニル)エチル、3−(4−メトキシフェニル)プロピル、2−クロロ−4−メチルフェニルメチル、および2,5−ジクロロ−4−メチルフェニルメチルである。
【0026】
式(1)におけるYは式(a)で表される基であり、式(2)におけるYは式(b)または式(c)で表される基である。製造コストを考慮するとき、式(2)における2つのYは同一の基であることが好ましいが、異なる基であっても構わない。
【化10】

【0027】
式(a)、式(b)および式(c)のそれぞれにおいて、Xは独立してシクロペンチル、シクロヘキシル、任意の水素がフッ素で置き換えられてもよく、そして1つの−CH−が−O−で置き換えられてもよい炭素数1〜10のアルキル、任意の水素がハロゲンもしくは炭素数1〜10のアルキルで置き換えられてもよいフェニル、任意の水素がハロゲンもしくは炭素数1〜10のアルキルで置き換えられてもよいフェニルと炭素数1〜4のアルキレンとで構成されるフェニルアルキル、またはオキシラニル、オキシラニレンもしくは3,4−エポキシシクロヘキシルを有する基である。このとき、フェニルの置換基である炭素数1〜10のアルキルにおいて、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、そして任意の−CH−は−O−で置き換えられてもよく、フェニルアルキルのアルキレンにおける1つの−CH−は−O−で置き換えられてもよい。そして、式(a)、式(b)および式(c)のそれぞれにおいて、Xの少なくとも1つはオキシラニル、オキシラニレンまたは3,4−エポキシシクロヘキシルを有する基である。
【0028】
そして、式(a)、式(b)および式(c)のそれぞれにおいて、Xの1つがオキシラニル、オキシラニレンまたは3,4−エポキシシクロヘキシルを有する基であって、残りのXがシクロペンチル、シクロヘキシル、任意の水素がフッ素で置き換えられてもよく、そして1つの−CH−が−O−で置き換えられてもよい炭素数1〜10のアルキル、任意の水素がハロゲンまたは炭素数1〜10のアルキルで置き換えられてもよいフェニル、および任意の水素がハロゲンまたは炭素数1〜10のアルキルで置き換えられてもよいフェニルと炭素数1〜4のアルキレンとで構成されるフェニルアルキルから選択される基であることが好ましい。
【0029】
式(1)および式(2)の好ましい範囲は、RとXに関して次のように示される。即ち、Rが独立して、シクロヘキシル、任意の水素がハロゲンもしくは炭素数1〜4のアルキルで置き換えられてもよいフェニル、または任意の水素がハロゲンもしくは炭素数1〜4のアルキルで置き換えられてもよいフェニルと炭素数1〜4のアルキレンとで構成されるフェニルアルキルであり;フェニルの置換基である炭素数1〜4のアルキルにおいて、任意の水素がフッ素で置き換えられてもよく、そして1つの−CH−が−O−で置き換えられてもよく;Xが独立して、炭素数1〜4のアルキル、炭素数1〜4のフッ素化アルキル、シクロペンチル、シクロヘキシル、任意の水素がハロゲンもしくは炭素数1〜4のアルキルで置き換えられてもよいフェニル、任意の水素がハロゲンもしくは炭素数1〜4のアルキルで置き換えられてもよいフェニルと炭素数1〜4のアルキレンとで構成されるフェニルアルキル、またはオキシラニル、オキシラニレンもしくは3,4−エポキシシクロヘキシルを有する基であり;フェニルの置換基である炭素数1〜4のアルキルにおいて、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、そして任意の−CH−は−O−で置き換えられてもよく;そして、式(a)、式(b)および式(c)のそれぞれにおいて、Xの少なくとも1つはオキシラニル、オキシラニレンまたは3,4−エポキシシクロヘキシルを有する基である。
【0030】
式(1)および式(2)のより好ましい範囲は、RとXに関して次のように示される。即ち、Rがシクロヘキシル、任意の水素がハロゲンもしくは炭素数1〜4のアルキルで置き換えられてもよいフェニル、または任意の水素がハロゲンもしくは炭素数1〜4のアルキルで置き換えられてもよいフェニルと炭素数1〜4のアルキレンとで構成されるフェニルアルキルであり;フェニルの置換基である炭素数1〜4のアルキルにおいて、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、そして1つの−CH−が−O−で置き換えられてもよく;式(a)、式(b)および式(c)のそれぞれにおいて、Xの1つがオキシラニル、オキシラニレンまたは3,4−エポキシシクロヘキシルを有する基であって、残りのXが炭素数1〜4のアルキル、炭素数1〜4のフッ素化アルキル、シクロペンチル、シクロヘキシル、任意の水素がハロゲンもしくは炭素数1〜4のアルキルで置き換えられてもよいフェニル、任意の水素がハロゲンもしくは炭素数1〜4のアルキルで置き換えられてもよいフェニルと炭素数1〜4のアルキレンとで構成されるフェニルアルキルであり;フェニルの置換基である炭素数1〜4のアルキルにおいて、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、そして任意の−CH−は−O−で置き換えられてもよい。
【0031】
式(1)および式(2)のさらに好ましい範囲は、RとXに関して次のように示される。即ち、Rがシクロヘキシルまたはフェニルであり;式(a)、式(b)および式(c)のそれぞれにおいて、Xの1つがオキシラニルまたは3,4−エポキシシクロヘキシルを有する基であり、そして残りのXがメチル、エチル、t−ブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルまたはフェニルである。
【0032】
式(1)および式(2)の特に好ましい範囲は、RとXに関して次のように示される。即ち、Rがフェニルであり;式(a)、式(b)および式(c)のそれぞれにおいて、Xの1つがオキシラニルまたは3,4−エポキシシクロヘキシルを有する基であり、そして
残りのXがメチルまたはフェニルである。
【0033】
オキシラニル、オキシラニレンまたは3,4−エポキシシクロヘキシルを有する基の好ましい例を次に示す。
【化11】


これらの式において、RおよびRは炭素数1〜6のアルキレンである。このアルキレンにおける1つの−CH−は−O−または1,4−フェニレンで置き換えられてもよい。そして、Rは水素または炭素数1〜6のアルキルである。
【0034】
これらのうち、オキシラニルおよび3,4−エポキシシクロヘキシルのいずれか1つを有する基がより好ましい。
【0035】
Xの特に好ましい例は、式(3)、式(4)および式(5)のそれぞれで示される基である。
【化12】

【0036】
化合物(1)および化合物(2)の具体例を次に示す。
【化13】

【0037】
【化14】

【0038】
【化15】

【0039】
【化16】

【0040】
これらのシルセスキオキサン誘導体は、特許文献7または8を参照することにより容易に得ることができる。
【0041】
本発明では、必須の第2成分としてアミン化合物を用いる。アミン化合物の具体例を次に挙げる。脂肪族アミンの例は、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ジメチルアミノプロピルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ヘキサメチレントリアミン、ビスシアノエチルアミン、およびテトラメチルグアニジンである。複素環式アミンの例は、ピリジン、ピラジン、キノリンおよびピペリジンである。脂環式アミンの例は、メセンジアミン、イソホロンジアミン、1,3−ビスアミノメチル−シクロヘキサン、ビス(4−アミノ−シクロヘキシル)メタン、およびビス(4−アミノ−3−メチル−シクロヘキシル)メタンである。芳香族アミンの例は、ベンジルメチルアミン、α−メチル−ベンジルメチルアミン、m−フェニレンジアミン、m−キシリレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、およびジアミノジフェニルエーテルである。第3アミンの例は、トリエチルアミン、ベンジルジメチルアミン、N−アミノエチルピペラジン、ジメチルアミノメチルフェノールおよびトリス(ジメチルアミノメチル)フェノールである。これらの他、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダソールなど
のイミダゾール系化合物、BF−モノエチルアミン、BF−モノエタノールアミン、BF−ピペラジンなどの三フッ化ホウ素−アミン錯体、ポリアミン-ビスフェノールAジグリシジルエーテル付加物、ポリアミン-フェニルグリシジルエーテル付加物、ポリアミン-エチレンオキシド付加物、ポリアミン-シアノエチル付加物などのアミンアダクト類や、ポリアミンとケトンの脱水反応物で第一アミノ基を封鎖したケチミン(ケトイミン)、潜在性硬化剤として知られているジシアンジアミドなども挙げることができる。これらのアミン化合物は、用途や目的に応じて単独で用いることもできるし、複数組み合わせて用いることもできる。
【0042】
アミン化合物を硬化剤として用いるときの使用量は、組成物中のエポキシ基1当量に対して0.2〜1.5当量が好ましく、0.3〜1.2当量がより好ましい。3級アミンをアニオン重合触媒として使用する場合のその使用量は、組成物中のエポキシ基を有する化合物に対する重量比で、0.003〜0.20が好ましく、0.005〜0.10がより好ましい。
【0043】
以下の説明では、オキシラニル、オキシラニレンまたは3,4−エポキシシクロヘキシルを含有し、且つ分子中にケイ素を含有しない化合物を、非ケイ素系エポキシ樹脂と称することがある。
本発明の熱硬化性重合体組成物の第3成分は必要に応じて用いられる成分である。この第3成分は、非ケイ素系エポキシ樹脂および硬化促進剤の少なくとも1つである。
非ケイ素系エポキシ樹脂の例は、ビスフェノール型エポキシ樹脂(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂など)、2個のオキシラニルを有するエポキシ樹脂(ビフェニル型エポキシ樹脂、水素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂など)、多官能複素環式エポキシ樹脂(フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、アルキル変性トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレートなど)、および3個以上のオキシラニルを有するエポキシ樹脂(ポリ(エポキシ化シクロヘキセンオキサイド)などの多官能脂環式エポキシ樹脂など)である。これらのうち、透明性の観点から着色の少ない、ビスフェノール型エポキシ樹脂や複素環式エポキシ樹脂を用いることがより好ましく、複素環式エポキシ樹脂の中でもトリグリシジルイソシアヌレートが好ましい。これらのエポキシ樹脂は、2種以上を併用してもよい。
【0044】
非ケイ素系エポキシ樹脂を用いるときのその割合は、第1成分と非ケイ素系エポキシ樹脂の合計量を基準として10〜90重量%である。この割合の好ましい範囲は、20〜70重量%であり、より好ましい範囲は30〜60重量%である。
【0045】
硬化促進剤の例は、トリフェニルフォスフィン等のホスフィン類、オクチル酸スズなどの金属化合物、および第4級ホスホニウム塩である。硬化促進剤を使用する場合におけるその使用量は、エポキシ基を有する化合物の合計量に対する重量比で0.0001〜0.15である。
【0046】
本発明の熱硬化性重合体組成物は、第3成分の他に、必要に応じてさらに、シリカ、アルミナ、ガラスファイバー、タルク等の充填材や離型剤、顔料、表面処理剤、粘度調整剤、可塑剤、安定剤およびカップリング剤から選択されるその他の成分を含有することができる。
【0047】
本発明の熱硬化性重合体組成物は、これを溶剤に溶解して、ワニスとして使用することもできる。溶剤としては、組成物の各成分を溶解するものであれば特に限定されないが、例えばトルエン、キシレン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジメチルホルムアミド等が挙げられる。本発明の硬化物は、これらの溶剤に溶解したワニ
スをガラス繊維、カーボン繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アルミナ繊維、紙などの基材に含浸させてから加熱乾燥してプリプレグを得、このプリプレグを熱プレス成形することによっても得ることができる。そのときの溶剤の使用量は、熱硬化性重合体組成物と溶剤の合計重量に対する溶剤の割合で、10〜70重量%、好ましくは15〜65重量%である。
【0048】
本発明の熱硬化性重合体組成物は、各成分を均一に混合することにより得られる。例えば、オキシラニル、オキシラニレンもしくは3,4−エポキシシクロヘキシルを有するケイ素化合物(第1成分)とアミン化合物(第2成分)とに、必要により、非ケイ素系エポキシ樹脂、硬化促進剤、前記のその他の成分などを加えて、押出機、ニーダ、ロール等を用いて均一になるまで充分に混合して熱硬化性重合体組成物を得、その熱硬化性重合体組成物を溶融後注型あるいはトランスファー成型機などを用いて成型し、さらに80〜200℃で2〜10時間加熱することにより、その硬化物を得ることができる。
【0049】
本発明の熱硬化性重合体組成物は、従来のエポキシ樹脂に比べ、耐熱性、可撓性、誘電特性に優れた硬化物を得ることができるため、得られる硬化物は、プリント基板用樹脂、積層板用樹脂、電気絶縁用樹脂、封止剤用樹脂、各種接着剤用樹脂等の用途に有効に用いることができる。ガラス、アラミド、ポリエステルなどのクロスや不織布などの基材、あるいはシリカやマイカなどの充填剤を含んだ形で、プリント配線基板、フレキシブルプリント配線基板、ビルドアップの層間絶縁材用の融着フィルム、コート材、樹脂付き銅箔等の用途に有効に用いることもできる。
【実施例】
【0050】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明する。尚、本発明はこれらの実施例により限定されない。また、実施例中特に断りがない限り、部は重量部を示す。なお、実施例中の各物性値は以下の方法で測定した。
<耐熱性、ガラス転移点(Tg)>
(株)レオロジ製 DVE−V4を用いて、温度依存性、引っ張りモード、測定周波数10Hz、変位幅5.0μm、温度範囲−150〜250℃、昇温速度2℃/min、歪み波形は正弦波で測定した。試料は幅が4mm、長さが30mm、厚みが0.4mmの帯状直方体の試験片を、減圧下180℃で4時間アニーリング処理を行ったものを用いた。
耐熱性は250℃での貯蔵弾性率の値で評価した。またガラス転移点は、貯蔵弾性率を損失弾性率で除した値を温度に対してプロットした場合のピーク位置で表される。
<線膨張係数>
セイコー電子工業株式会社製 TMA100を用いて、圧縮荷重2.0gf、温度範囲−100〜200℃、昇温速度5℃/minで測定プローブは石英を用いて測定した。試料は幅が5mm、長さが5mm、厚みが2.3mmの試験片を用いた。
<引っ張り試験>
株式会社島津製作所製 AGS−J 100を用いて、試験速度1mm/minで測定した。試料は(JIS K7113) 1号形試験片に準じて作製し用いた。
<誘電率>
セイコー電子工業株式会社製 DES 100を用いて、測定周波数 100kHz、温度範囲−100〜100℃、昇温速度4℃/minで測定した。試料は直径44mm、厚さ0.5mmの円盤平板状のものを用いた。
【0051】
[合成例1]
<化合物(1−1)の合成>
(第1段階)
環流冷却器、温度計、および滴下漏斗を取り付けた反応容器に、フェニルトリメトキシシラン(6.54kg)、水酸化ナトリウム(0.88kg)、水(0.66kg)、お
よび2−プロピルアルコール(26.3リットル)を仕込んだ。窒素シールしたのち、撹拌しながら還流するまで加熱した。そして還流温度で4時間撹拌を継続したのち反応液を室温で1晩静置した。そして窒素ガスを用いて加圧濾過器で濾過することにより固体を得た。得られた固体を2−プロピルアルコールで1回洗浄、濾過したのち70℃で5時間減圧乾燥を行いの白色状固体(2.22kg)を得た。これを化合物(d−1)とする。
(第2段階)
滴下漏斗、温度計、および還流冷却器を備えた反応容器に、化合物(d−1)(69g)、トルエン(540g)を仕込み、窒素シールした。撹拌しながらクロロジメチルシラン(91g)を約35分間で滴下した。そして還流するまで加熱したのち、還流開始から3時間撹拌を継続した。次いで反応液が50℃以下になるまで冷却したのち、水(160g)を滴下漏斗からゆっくりと滴下した。滴下終了後10分間撹拌したのち分液漏斗へ移し有機層と水層に分離した。有機層は3回水洗を行なったのち無水硫酸マグネシウムで乾燥した。そして無水硫酸マグネシウムを濾別したのち、濃縮して(71g)の個体を得た。得られた固体はノルマルヘプタン(240g)で洗浄したのち、減圧乾燥することにより白色状固体(d−2)(50g)を得た。
【0052】
(第3段階)
温度計、滴下漏斗、および還流冷却器を備えた反応容器に、化合物(d−2)(39g)、アリルグリシジルエーテル(21g)、およびトルエン(60g)を仕込み、乾燥窒素でシールした。そして撹拌しながら80℃に加熱したのち、Karsted触媒(白金−ジビニルジシロキサン錯体の3%キシレン溶液;40マイクロリットル)を添加した。そして3時間撹拌を継続したのち、反応液の一部をサンプリングして赤外線吸収スペクトルを測定した結果、Si−Hの伸縮振動に由来する2138cm−1のピークが消失していることを確認し、反応を終了した。そして反応液を減圧濃縮することにより化合物(1−1)(51g)を得た。
<化合物(1−1)の分析結果>
29Si−NMR(溶剤:CDCl):δ(ppm);11.38、−75.79、−78.53
H−NMR(溶剤:CDCl):δ(ppm);0.02(s,24H)、0.42−0.46(m,8H)、1.31−1.35(m,8H)、2.49−2.51(m,4H)、2.71−2.73(m,4H)、2.99−3.04(m,12H)、3.15―3.19(m,4H)、3.40−3.44(m,4H)、7.10−7.44(m,40H)
【化17】

【0053】
[合成例2]
<化合物(2−1)の合成>
(第1段階)
滴下漏斗、還流冷却器、および温度計を備えた反応容器に、合成例1の第1段階で示した方法と同様にして製造した化合物(d−1)(3.0kg)、ジクロロメタン(20k
g)、トリエチルアミン(130g)仕込み窒素シールした。そして撹拌しながら10℃以下に冷却したのちメチルジクロロシラン(744g)を液温が25℃以下に保たれるように滴下した。そしてで1時間撹拌を継続したのち、3重量%の炭酸水素ナトリウム水溶液(7.3kg)、水(7.3kg)仕込み撹拌した。10分間静置したのち有機層を抜き出し、得られた有機層を水(7.3kg)で1回洗浄した。そして無水硫酸マグネシウム(1kg)で乾燥したのち濾過、濃縮した。得られた残渣は酢酸エチル(6.6kg)で再結晶を行い化合物(d−3)(1.6kg)を得た。
【0054】
(第2段階)
還流冷却器、温度計を取り付けた反応容器に、化合物(d−3)(69g)、トルエン(700ミリリットル)、アリルグリシジルエーテル(27g)仕込み、乾燥窒素にてシールした。そして撹拌しながら100℃に加熱したのち、前記のKarsted触媒(40マイクロリットル)を添加した。そして100℃で時間撹拌を継続したのち、反応液の一部をサンプリングして赤外吸収スペクトルを測定した結果、Si−Hの伸縮振動に由来する吸収ピーク(2170cm−1)が消失していることを確認し、反応を終了した。そして反応液を減圧濃縮することにより化合物(2−1)(77g)を得た。
<化合物(2−1)の分析結果>
29Si−NMR(溶剤:CDCl):δ(ppm);−17.33、−78.39、−79.23、−79.31、−79.38
H−NMR(溶剤:CDCl):δ(ppm);0.30(s,6H)、
0.72−0.77(m,4H)、1.64−1.72(m,4H)、2.42−2.66(m,4H)、2.95−2.98(m,2H)、3.15−3.19(m,2H)、3.31―3.37(m,4H)、3.43−3.47(m,2H)、7.17−7.53(m,40H)
【化18】

【0055】
[合成例3]
<化合物(2−2)の合成>
還流冷却器、および温度計を取り付けた反応容器に、合成例2の第1段階で製造された化合物(d−3)(3.0g)、トルエン(26g)、前記のKarsted触媒(5マイクロリットル)を加えて90℃に加熱した。そして4−ビニル−1−シクロヘキセン 1,2−エポキシド(0.7g)を滴下したのち、還流温度で5時間撹拌を継続した。そして室温まで冷却したのち、トルエン(26g)、水(70g)を加えて抽出した。有機層は水洗したのち、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。そして減圧下濃縮し、得られた残査をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:トルエン/酢酸エチル)で精製した。減圧下で溶媒を溜去したのち、エタノール/酢酸エチルから再結晶して、化合物(2−2)(0.8g)を得た。
29Si−NMR(溶媒:CDCl):δ(ppm);−17.0、−78.7、−79.6(s,4Si)
H−NMR(溶媒:CDCl):δ(ppm);0.27(s,6H)、0.60−0.73(m,5H)、0.84−0.92(m,1H)、0.97−1.07(m,2
H)、1.62−1.68(m,1H)、1.76−1.84(m,2H)、1.94−1.98(m,2H)、2.90−3.00(m,4H)、7.13−7.54(m,40H)
【化19】

【0056】
[実施例1〜3]
<硬化物の調製>
表1に示す配合量で、熱硬化性重合体組成物を調製し、合成例1〜3で得られたエポキシ基を有するかご型構造のシルセスキオキサン、および硬化剤を配合し、均一に混合した。このようにして得られた重合体組成物をアルミカップに移し、実施例1は80℃、150℃、190℃で各2時間、実施例2は80℃、100℃、150℃、190℃で各2時間、実施例3は170℃、190℃、210℃で各2時間加熱して、それぞれの硬化物を得た。評価結果を表1に示した。
【0057】
[比較例1]
γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン85.1部、フェニルトリメトキシシラン7.9部、メチルイソブチルケトン93部を反応容器に仕込み、80℃に昇温した。昇温後、0.1重量%水酸化カリウム水溶液21.6部を30分間かけて連続的に滴下した。滴下終了後、生成するメタノールを除去しながら80℃にて5時間反応させた。反応終了後、洗浄液が中性になるまで水洗を繰り返した。次いで減圧下で溶媒を除去することによりエポキシ基を有するケイ素化合物(PGPSQ)69部を得た。このエポキシ化合物のH−NMR(CDCl溶液)により、エポキシ環のメチンピーク(3.2ppm付近)からエポキシ環が保持されていること、およびメトキシ基のピーク(3.6ppm付近)が消失していることが確認できた。得られた化合物のエポキシ当量は190g/eq、重量平均分子量は2200であった。このPGPSQおよびテトラエチレンペンタミン(TEPA)を、表1に示す配合量で均一に混合し熱硬化性重合体組成物を調製した。得られた熱硬化性重合体は60℃、80℃で各2時間、90℃、100℃、120℃で各1時間、150℃、190℃で各2時間加熱し硬化物を得た。評価結果を表1に示した。
【0058】
[比較例2および3]
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(EP828)(エポキシ等量186g/eq、ジャパンエポキシレジン株式会社製)、ジアミノジフェニルメタン(DDM)、およびテトラエチレンペンタミン(TEPA)を表1に示す重量比で均一に混合して、熱硬化性重合体組成物を調製した。この組成物を60℃、100℃、150℃、190℃で各4時間加熱して硬化物を得た。評価結果を表1に示した。
【0059】
【表1】

【0060】
表1から、本発明のかご型構造を有するシルセスキオキサンを含有する熱硬化性重合体組成物から、誘電率が低く、弾性率が大きい硬化物が得られることがわかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オキシラニル、オキシラニレンもしくは3,4−エポキシシクロヘキシルを有するかご型構造のシルセスキオキサン誘導体の少なくとも1つである第1成分とアミン化合物である第2成分を必須成分として含有し、オキシラニル、オキシラニレンもしくは3,4−エポキシシクロヘキシルを有し、且つ分子中にケイ素を含まない化合物および硬化促進剤の少なくとも1つである第3成分を任意成分として含有する熱硬化性重合体組成物。
【請求項2】
第1成分が式(1)および式(2)のそれぞれで表される化合物の群から選択される化合物の少なくとも1つである、請求項1に記載の熱硬化性重合体組成物:
【化1】


ここに、Rは独立して、炭素数1〜45のアルキル、炭素数4〜8のシクロアルキル、アリール、またはアリールアルキルであり;炭素数1〜45のアルキルにおいて、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、そして任意の−CH−は−O−または−CH=CH−で置き換えられてもよく;アリールおよびアリールアルキル中のベンゼン環において、任意の水素はハロゲンまたは炭素数1〜10のアルキルで置き換えられてもよく;この炭素数1〜10のアルキルにおいて、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、そして任意の−CH−は−O−または−CH=CH−で置き換えられてもよく;アリールアルキル中のアルキレンにおいて、炭素原子の数は1〜10であり、そして任意の−CH−は−O−で置き換えられてもよく;そして、Yはそれぞれ独立して式(a)で表される基である:
【化2】


ここに、Xは独立して、シクロペンチル、シクロヘキシル、任意の水素がフッ素で置き換えられてもよく、そして1つの−CH−が−O−で置き換えられてもよい炭素数1〜10のアルキル、任意の水素がハロゲンもしくは炭素数1〜10のアルキルで置き換えられてもよいフェニル、任意の水素がハロゲンもしくは炭素数1〜10のアルキルで置き換えられてもよいフェニルと炭素数1〜4のアルキレンとで構成されるフェニルアルキル、またはオキシラニル、オキシラニレンもしくは3,4−エポキシシクロヘキシルを有する基であり;フェニルの置換基である炭素数1〜10のアルキルにおいて、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、そして任意の−CH−は−O−で置き換えられてもよく;フェニルアルキルのアルキレンにおいて、1つの−CH−は−O−で置き換えられてもよく;そして、Xの少なくとも1つはオキシラニル、オキシラニレンまたは3,4−エポキシシクロヘキシルを有する基である:
【化3】


ここに、Rは式(1)におけるRと同じ意味を有し、Yは式(b)で表される基または式(c)で表される基である:
【化4】


ここに、式(b)および式(c)のそれぞれにおいて、Xは式(a)におけるXと同じ意味を有し、そして式(c)におけるZは−O−、−CH−または単結合である。
【請求項3】
Rが独立して、シクロヘキシル、任意の水素がハロゲンもしくは炭素数1〜4のアルキルで置き換えられてもよいフェニル、または任意の水素がハロゲンもしくは炭素数1〜4のアルキルで置き換えられてもよいフェニルと炭素数1〜4のアルキレンとで構成されるフェニルアルキルであり;フェニルの置換基である炭素数1〜4のアルキルにおいて、任意の水素がフッ素で置き換えられてもよく、そして1つの−CH−が−O−で置き換えられてもよく;
Xが独立して、炭素数1〜4のアルキル、炭素数1〜4のフッ素化アルキル、シクロペンチル、シクロヘキシル、任意の水素がハロゲンもしくは炭素数1〜4のアルキルで置き換えられてもよいフェニル、任意の水素がハロゲンもしくは炭素数1〜4のアルキルで置き換えられてもよいフェニルと炭素数1〜4のアルキレンとで構成されるフェニルアルキル、またはオキシラニル、オキシラニレンもしくは3,4−エポキシシクロヘキシルを有する基であり、フェニルの置換基である炭素数1〜4のアルキルにおいて、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、そして任意の−CH−は−O−で置き換えられてもよく;そして、式(a)、式(b)および式(c)のそれぞれにおいて、Xの少なくとも1つがオキシラニル、オキシラニレンまたは3,4−エポキシシクロヘキシルを有する基である、請求項2に記載の熱硬化性重合体組成物。
【請求項4】
Rがシクロヘキシル、任意の水素がハロゲンもしくは炭素数1〜4のアルキルで置き換えられてもよいフェニル、または任意の水素がハロゲンもしくは炭素数1〜4のアルキルで置き換えられてもよいフェニルと炭素数1〜4のアルキレンとで構成されるフェニルアルキルであり;フェニルの置換基である炭素数1〜4のアルキルにおいて、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、そして1つの−CH−が−O−で置き換えられてもよ
く;
式(a)、式(b)および式(c)のそれぞれにおいて、Xの1つがオキシラニル、オキシラニレンまたは3,4−エポキシシクロヘキシルを有する基であって、残りのXが炭素数1〜4のアルキル、炭素数1〜4のフッ素化アルキル、シクロペンチル、シクロヘキシル、任意の水素がハロゲンもしくは炭素数1〜4のアルキルで置き換えられてもよいフェニル、任意の水素がハロゲンもしくは炭素数1〜4のアルキルで置き換えられてもよいフェニルと炭素数1〜4のアルキレンとで構成されるフェニルアルキルであり;フェニルの置換基である炭素数1〜4のアルキルにおいて、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、そして任意の−CH−は−O−で置き換えられてもよい、請求項2に記載の熱硬化性重合体組成物。
【請求項5】
Rがシクロヘキシルまたはフェニルであり;式(a)、式(b)および式(c)のそれぞれにおいて、Xの1つがオキシラニル、オキシラニレンまたは3,4−エポキシシクロヘキシルを有する基であり、そして残りのXがメチル、エチル、t−ブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルまたはフェニルである、請求項2に記載の熱硬化性重合体組成物。
【請求項6】
Rがフェニルであり;式(a)、式(b)および式(c)のそれぞれにおいて、Xの1つがオキシラニル、オキシラニレンまたは3,4−エポキシシクロヘキシルを有する基であり、そして残りのXがメチルまたはフェニルである、請求項2に記載の熱硬化性重合体組成物。
【請求項7】
第1成分が式(1−1)で表される化合物である、請求項1に記載の熱硬化性重合体組成物:
【化5】


ここに、Phはフェニルであり、Meはメチルである。
【請求項8】
第1成分が式(1−2)で表される化合物である、請求項1に記載の熱硬化性重合体組成物:
【化6】


ここに、Phはフェニルであり、Meはメチルである。
【請求項9】
第1成分が式(2−1)で表される化合物である、請求項1に記載の熱硬化性重合体組
成物:
【化7】


ここに、Phはフェニルであり、Meはメチルである。
【請求項10】
第1成分が式(2−2)で表される化合物である、請求項1に記載の熱硬化性重合体組成物:
【化8】


ここに、Phはフェニルであり、Meはメチルである。
【請求項11】
請求項1〜10の何れか1項に記載の熱硬化性重合体組成物を硬化することによって得られる硬化物。

【公開番号】特開2007−332214(P2007−332214A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−163670(P2006−163670)
【出願日】平成18年6月13日(2006.6.13)
【出願人】(399030060)学校法人 関西大学 (208)
【出願人】(000002071)チッソ株式会社 (658)
【Fターム(参考)】