説明

熱蒸気利用栽培装置

【課題】熱暖房装置を用いた熱蒸気利用栽培装置を提供する。
【解決手段】先端を地中8に埋設し固定させた複数の支軸2a上にビニールシート2bを被せ出入口2cを備えたビニールハウス2と、前記ビニールハウス2内の地中8に埋設される複数の管材5aを連結した管5と蒸気を発生させる熱源3aと前記管5及び熱源3aを接続する蒸気輸送管4からなる蒸気発生装置3とからなり、該蒸気発生装置3は、酸素ボンベと冷却装置を接続した分岐管4bとブロアーを備えた熱蒸気利用栽培装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種の農作物を栽培するために設置使用する熱蒸気利用栽培装置に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
従来の熱暖房装置を用いた農作物の栽培は、ボイラー等で熱風を送風するものや電熱ヒーターを配設したものなど、いずれもハウス内を熱で温める暖房システムが主流であった。
【0003】
しかしながら、それらの暖房システムは複雑な構造をしているものが多く、設置が困難だったり設置そのもののコストが高いものも多い上、ハウス内の空気を暖めるにとどまり栽培作物が苗床とする土壌の暖房には効率が悪いものであった。
【0004】
また、寒さが厳しい時期には、地中に霜が降りたりして予定の収穫時期に差が出てしまうこともあった。そのほか暖房の熱や風により作物が乾燥するおそれがあり、栽培を失敗することもあった。
【特許文献1】特開2003−185368号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、簡易な構造で暖房効果が高く、土壌そのものを暖めることで確実な収穫時期を調節でき、さらに熱蒸気を利用することで土壌の乾燥を防げる熱蒸気利用栽培装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の課題を解決するために、先端を地中8に埋設し固定させた複数の支軸2a上にビニールシート2bを被せ出入口2cを備えたビニールハウス2と、前記ビニールハウス2内の地中8に埋設される複数の管材5aを連結した管5と蒸気を発生させる熱源3aと前記管5及び熱源3aを接続する蒸気輸送管4からなる蒸気発生装置3とからなることを特徴とする熱蒸気利用栽培装置1と、酸素ボンベ11と冷却装置10を接続した分岐管4bとブロアー10aを備えた蒸気発生装置3を備えたことを特徴とする熱蒸気利用栽培装置1aの構成とした。
【発明の効果】
【0007】
本発明の熱蒸気利用栽培装置1は、地中に管を通し、地中へ高温度の蒸気を放出するため土壌そのものが暖められ、また放出される蒸気により土壌中の空気の流通を良好にすることができるため、農作物の栽培を調節でき、更には収穫時期までも調節することが可能であり、季節や天候に左右さずに農作物をいつでも栽培することができる。
【0008】
また、収穫時期の予測が容易であるため、計画的な農作物の栽培が可能であり、結果として作業率の向上につながる。
【0009】
更に、構造が簡易であるため、複雑な設置技術を有していなくても設置が可能であり、製造及び設置コストを低くおさえることができる。
【0010】
そして、土壌中は、地表に比べて保温力が高い。即ち、一度暖めれば長時間一定温度を保つことができ、効率的な暖房効果を得ることができる。これは気温の低下が激しい夜間や冬場に効力を発揮し、省エネルギーに役立つ。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
収穫時期を確実に予測できる農作物の栽培方法という目的を、簡易な構造で土壌の温度及び湿度の状態を最良に保つことができる熱蒸気利用栽培装置とすることで実現した。
【実施例1】
【0012】
以下に、添附図面に基づき、本発明である熱蒸気利用栽培装置1について詳細に説明する。図1は、本発明である熱蒸気利用栽培装置の斜視図、図2は熱蒸気利用栽培装置の側面の断面図、図3は熱蒸気利用栽培装置の正面の断面図である。
【0013】
図1に示すように、本発明である熱蒸気利用栽培装置1は、先端を地中8に埋設し固定させた複数の支軸2a上にビニールシート2bを被せ出入口2cを備えたビニールハウス2と、前記ビニールハウス2内の地中に埋設された管5と蒸気を発生させる熱源3aと前記管5及び熱源3aを接続する蒸気輸送管4とからなる蒸気発生装置3とからなる。
【0014】
複数の支軸2aを骨組みとし張り巡らせたビニールシート2bは、外気を遮断できるハウス形状に組み立てられる。出入口2cを設ける事で、人の出入りが可能となりビニールハウス2の内部で栽培作物7を栽培できる。前記ビニールハウス2の形状は、側面が扇形のビニールハウスに限定しているものではなく、一般に使用されている形状の異なったビニールハウスでも良いものとする。
【0015】
前記ビニールハウス2内の地中8には管材5a、5a、5a・・・を連結部材5b、5b、5b・・・により連結し、一本の長い管5として埋設しており、前記管5の長さは通常ビニールハウス2の全長と同程度とする。また、ビニールハウス2の幅に合わせて管5を複数本平行に埋設することで、ビニールハウス2内の地中に管5、5、5が張り巡らせている。
【0016】
前記複数本の管5、5、5の一端は分岐管4bに連結されており、分岐管4bはバルブ4aを介して蒸気輸送管4に連結されている。前記蒸気輸送管4のもう一端は熱源3aに接続されている。即ち、熱源3aより発生した蒸気は蒸気輸送を通り、分岐管4bより各管5、5、5・・・に分かれてゆき、ビニールハウス2内の地中8全体が蒸気により温められる。
【0017】
本発明では、前記熱源3a及び蒸気輸送管4をビニールハウス2の外に設置しビニールハウス内全体に管5が行き渡るようにしたが、熱源3a及び蒸気輸送管4をビニールハウス2内に設置し悪天候の場合であってもビニールハウス2内で蒸気の調節を行えるようにしてもよい。
【0018】
図2は、本発明である熱蒸気利用栽培装置の側面の断面図である。前記管5は、栽培作物7の根7aの更に下である地下およそ1mから1.2mのあたりに埋設されるが、この管5、5、5・・・の周囲には籾殻6を敷き詰めて埋設する。
【0019】
図2に示すように、管材5a、5a、5a・・・を連結する際に使用する連結部材5bの片側を隙間5cができる構造となっており、この隙間5cから蒸気が噴出して周囲の地中8を温める。即ち連結部材5bが蒸気の噴出口の役割を果たしている。
【0020】
実際に熱源3aから管5内に送り込む蒸気の温度は100℃から130℃で、地下30cmの温度が20℃、地下50cmの温度が25℃になるように蒸気の送り込みを調節し、15℃以下になった場合も蒸気をお送り込むように設定されている。また、地下30cmと50cmの温度を計るための温度計を設置する。
【0021】
また、管5の途中にバルブ5dを設けることで、蒸気を放出する範囲を変えることができ無駄な蒸気放出を抑えることができる。尚、蒸気輸送管4に取り付けられたバルブ4aは蒸気の放出自体を調節するためのバルブである。
【0022】
図3は、本発明である熱蒸気利用栽培装置の正面の断面図である。図3に示すように、管5の周囲に敷き詰められた籾殻6は、管5より放出される蒸気を吸収し、地中8を満遍なく均一に温める働きをし、作物を育てるために最適な状態を維持する役割を果たしている。尚、蒸気は、管材5a内部の空洞部5eを通過する。
【0023】
図3に示すようにビニールハウス2内に設置された温度計9は地中30cm及び50cmの位置の温度を測定するために設置され、計測した地中の温度から蒸気を送り込む日数や感覚を決めることができる。
【実施例2】
【0024】
図4は本発明である熱蒸気利用栽培装置の第2実施例の斜視図、図5は熱蒸気利用栽培装置の第2実施例の側面の断面図である。図4に示すように、本発明である熱蒸気利用栽培装置1aは、前記熱蒸気利用栽培装置1とほぼ同じ構造をしている。
【0025】
即ち、先端を地中8に埋設し固定させた複数の支軸2a上にビニールシート2bを被せ出入口2cを備えたビニールハウス2と、前記ビニールハウス2内の地中に埋設された管5と蒸気を発生させる熱源3aと前記管5及び熱源3aを接続する蒸気輸送管4と前記管5内へ熱蒸気と共に送る酸素ボンベ11と前記酸素ボンベ11の酸素を効率よく管5内へ送るためのブロアー10aと前記蒸気輸送管4に接続された冷却装置10からなる蒸気発生装置3とからなる。
【0026】
図4及び図5に示すように、本発明である熱蒸気利用栽培装置1aで使用する管5は、全長の3分の1にあたる先端部分で使用する管材5aの側面に噴出口12が穿設されており、管5内に送り込まれてくる熱蒸気が噴出し易くなっている。前記噴出口12は、分岐管4bの先端部のみではなく地中に埋設されている分岐管4bの左右側面、底面及び上面等の前面に設けてもよい。また、噴出口12は、左右側面のみ、底面のみ、上面のみのように一面にのみ複数設けても良い。
【0027】
このように管5の全長の3分の1にあたる先端部分に噴出口12を穿設した管材5aを使用することで、熱蒸気の効果が弱い先端部分にも効率よく熱蒸気が届き、管5を張り巡らせた周囲の地中を均等に温めることができる。尚、この噴出口12を穿設した管材5aは前記噴出口12が外側を向くように設置される。
【0028】
前記蒸気輸送管4と管材5aを接続する分岐管4bには冷却装置10及び酸素ボンベ11が取り付けられており、更に蒸気発生装置3にはブロアー10aが設置されている。前記酸素ボンベ11の酸素は前記分岐管4b内へ送られて熱蒸気とともに管5内へ送られるが、この酸素ボンベ11の酸素を効率よく送るための装置が前記ブロアー10aである。
【0029】
前記ブロアー10aによって酸素を効率よく管5内へ送ることで、地中に酸素を供給することができ、更にそのままでは熱すぎる熱蒸気を地中に放出するのに適した温度まで下げることができる。これにより、地表から50cm〜70cmの管5の周囲の温度はおよそ18℃前後に保たれ、栽培作物7の栽培が促進される。
【0030】
前記冷却装置10は、前記酸素ボンベ11と同じように分岐管4bに接続される装置であり、この冷却装置10は夏場などの急な地中温度の上昇によって栽培作物7に悪影響を及ぼさないように、管5内を一時的に冷やすための装置である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明である熱蒸気利用栽培装置の斜視図である。
【図2】本発明である熱蒸気利用栽培装置の側面の断面図である。
【図3】本発明である熱蒸気利用栽培装置の正面の断面図である。
【図4】本発明である熱蒸気利用栽培装置の第2実施例の斜視図である。
【図5】本発明である熱蒸気利用栽培装置の第2実施例の側面の断面図である。
【符号の説明】
【0032】
1 熱蒸気利用栽培装置
1a 熱蒸気利用栽培装置
2 ビニールハウス
2a 支軸
2b ビニールシート
2c 出入口
3 蒸気発生装置
3a 熱源
4 蒸気輸送管
4a バルブ
4b 分岐管
5 管
5a 管材
5b 連結部材
5c 隙間
5d バルブ
5e 空洞部
6 籾殻
7 栽培作物
7a 根
8 地中
9 温度計
10 冷却装置
10a ブロアー
11 酸素ボンベ
12 噴出口


【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端を地中に埋設し固定させた複数の支軸上にビニールシートを被せ出入口を備えたビニールハウスと、前記ビニールハウス内の地中に埋設される複数の管材を連結した管と蒸気を発生させる熱源と前記管及び熱源を接続する蒸気輸送管からなる蒸気発生装置とからなることを特徴とする熱蒸気利用栽培装置。
【請求項2】
分岐管に酸素ボンベ及び冷却装置を接続したことを特徴とする請求項1に記載の熱蒸気利用栽培装置。
【請求項3】
蒸気発生装置にブロアーを備えたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の熱蒸気利用栽培装置。
【請求項4】
分岐管に噴出口を設けたことを特徴とする請求項1、請求項2又は請求項3に記載の熱蒸気利用栽培装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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