説明

熱転写シート包装物および熱転写シート包装物の製造方法

【課題】長期保存した後であっても、熱転写シートからの熱転写によって安定した濃度発現性、画像光沢性を有する画像を得ることが可能な熱転写シート包装物およびその製造方法を提供する。
【解決手段】熱転写シート包装物は、熱転写シートAとこれを収納する包装材とからなる。このうち熱転写シートAは、基材1上に面順次に形成された各色の色材層Y,M,Cと画像保護層5を備えている。また各色の色材層Y,M,Cおよび画像保護層5の単位面積あたりの残存溶剤量の平均値が12.5mg/m2以下に調整されている。また包装材は、透湿度係数が23℃相対湿度55%RHにおいて2g/m2・24h以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱転写シートと該熱転写シートを収納するための包装材とからなる熱転写シート包装物に関するものであり、詳細には、該熱転写シート包装物に収納された熱転写シートの保存中の経時変化を抑制でき、熱転写シートを長期収納した後でも安定した転写画像出力が得られ、画像保護層転写後の印画物表面における光沢の低下を防止できることを特徴とする熱転写シート包装物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
カラーまたはモノクロの画像の形成技術の一つとして、色素熱転写方式がある。この方式では、加熱により拡散移行する性質を有する熱拡散性色素を色材層に含有する熱転写シートを、受像シートの色素受容層と対向させ、サーマルヘッドを用いて該色素受容層に該熱拡散性色素を画像様に転写して画像を形成する。このような色素熱転写方式は、デジタルデータを用いての画像形成を可能とし、現像液等の処理液を使わず、しかも銀塩写真に匹敵する階調表現を形成できる方法として定評がある。
【0003】
しかしながら、色素熱転写方式で用いる熱転写シートは、長期の保存期間を経た後では、熱転写シートから色素受容層への熱拡散性色素の転写効率が低下したり、熱拡散性色素そのものの分解等により画像出力の再現性が保てないという問題がある。また、熱転写シートを構成する色材層ならびに画像保護層(転写画像の保護のために画像上に積層するもの)に含有される樹脂成分も、長期の保存によって化学変化する。このような樹脂性分の化学変化によっても、転写効率が低下したり、形成した画像の光沢度が低下する等の課題があった。
【0004】
そこで、熱転写シートにおける色材層中の熱拡散性色素(染料)濃度と残存溶媒量とを制御すること染料の結晶化による画質の低下を防止する手法が提案されている(例えば下記特許文献1参照)。また、昇華性染料とバインダー樹脂とからなる染料層が形成された熱転写シートにおいて染料層中の残留溶剤量を制限するに際し、染料層を印刷形成した後の乾燥条件を制御する手法が提案されている(例えば下記特許文献2参照)。さらに、防湿処理された袋状容器に熱転写シートを収納することで、熱転写シートの吸湿を防止する手法(例えば下記特許文献3参照)や、透湿度および膜厚が規定された包材中に熱転写シートを収納することにより感度変動を抑える手法(例えば下記特許文献4参照)が提案されている。
【0005】
【特許文献1】特開平5−238158号公報
【特許文献2】特開平9−277723号報
【特許文献3】特開平4−78574号公報
【特許文献4】特開2000−141890号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した各手法では、熱転写シートの長期保存による濃度発現性の経時変化を抑制するにいたらず、また画像保護層転写後の印画物表面の光沢が保存条件により悪化するという課題を解決することができなかった。
【0007】
そこで本発明は、熱転写シートを長期保存した後であっても、安定した濃度発現性、画像光沢を得ることが可能な熱転写シート包装物およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的を達成するための本発明の熱転写シート包装物は、熱転写シートと熱転写シートを収納する包装材とからなる。このうち熱転写シートは、基材上に面順次に形成された各色の色材層と画像保護層を備えると共に、当該各色の色材層および画像保護層の単位面積あたりの残存溶剤量の平均値が12.5mg/m2以下に調整されている。また包装材は、透湿度係数が23℃相対湿度55%RHにおいて2g/m2・24h以下である。
【0009】
また本発明は、このような構成の熱転写シート包装物の製造方法でもあり、あらかじめ、各色の色材層および画像保護層の単位面積あたりの残存溶剤量の平均値が12.5mg/m2以下となるように、当該各色の色材層および画像保護層の塗布形成条件を設定しておく。そして設定された条件により、基材上に面順次に各色の色材層と画像保護層とを塗布形成した熱転写シートを作製する。その後、透湿度係数が23℃相対湿度55%RHにおいて2g/m2・24h以下である包装材中に、作製した熱転写シートを収納する。
【0010】
このような構成の熱転写シート包装物、さらにはこの製造方法で得られた熱転写シート包装物では、以降の実施例で詳細に説明するように、熱転写シートを長期保存した後であっても、濃度発現性および画像光沢性が良好な画像が熱転写によって得られることが確認された。
【発明の効果】
【0011】
以上の結果、本発明によれば長期保存した後であっても、熱転写シートからの熱転写によって安定した濃度発現性、画像光沢性を有する画像を得ることが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0013】
≪熱転写シート包装物≫
実施形態の熱転写シート包装物は、熱転写シートと、この熱転写シートを密閉状態で収納して長期保管するための包装材とで構成されている。熱転写シートは、色素熱転写方式(昇華熱転写方式)による画像形成に用いるものである。以下、熱転写シート、包装材、さらには熱転写シートからの熱転写によって画像が形成される受像シートの順に構成を説明する。
【0014】
≪熱転写シート≫
図1は、本発明が適用される熱転写シート包装物において、包装材の内部に収納される熱転写シートAの一構成例を示す要部断面模式図である。この図に示すように、熱転写シートAは、シート状の基材1の一主面側に、必要に応じて設けられたプライマー層3を介して、複数の各色材層Y,M,C、および画像保護層5が面順次に設けられている。ここでは、各色材層Y,M,Cは、例えばイエロー色用色材層Y、マゼンタ色用色材層M、およびシアン色用色材層Cの4色であることとし、この配置順は適宜に設計される。また基材1における反対側の面は、必要に応じて耐熱滑性層7で覆われていることとする。
【0015】
以上のような構成の熱転写シートAにおいては、包装材に収納する直前の残存溶剤量が規定されているところが特徴的である。以下、熱転写シートAを構成する各層の詳細を説明し、次にこの熱転写シートAにおける残存溶剤量を説明し、さらに残存溶剤量の制御について説明する。
【0016】
<基材1>
本発明における基材1は、フィルム状であり、プラスチックフィルム、紙、合成紙、セロハンなど特に限定するものではなく、サーマルヘッドの加熱温度に耐えるとともに、熱伝達が早く、均一に行えるよう薄膜で厚さむらがなく製造できるものが好ましい。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアミド、ポリイミド、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、エチレン・ビニルアルコール共重合体、ポリカーボネート、フッ素樹脂、ポリメチルメタアクリレート、ポリブテンー1、ポリエーテルエーテルケトン、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイドなどの未延伸又は延伸フィルムを挙げることができる。これらの中でも、耐熱性が優れ、厚さのむらが少なく製造できるポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートやポリエーテルエーテルケトンのプラスチックフィルムが好ましい。
【0017】
基材1の厚さは3.5〜12μmが好ましく、特に好ましくは、4.0〜6.0μmである。基材1が薄いと熱転写シートAの耐熱性が低下する。一方、基材1が厚すぎると、受像シートに対して積層させた状態で段差を生じ、この段差に起因して色調の再現性が低下するため好ましくない。また基材1は、破断強度が縦、横ともに10〜40kg/mm2、破断伸延度が縦、横ともに50〜150%(いずれも、JIS C2318による)程度のものが好ましい。上記の範囲を外れるものは、巻取りや印画のときに伸びたり、破れたりするというおそれがある。
【0018】
尚、このような基材1の表面には、次に説明するプライマー層3や耐熱滑性層7等を設ける他に、コロナ放電処理や、異物付着防止やシートの走行を安定するための帯電防止処理などの表面処理を必要に応じて施して良い。
【0019】
<プライマー層3>
基材1に対する色材層Y,M,Cの接着性を強固にするための層であり、有機材料及び無機材料を用いて形成された層である。
【0020】
<耐熱滑性層7>
【0021】
耐熱滑性層7は、熱転写の際の印字しわなどの悪影響を防止するための層であり、耐熱性樹脂からなる層である。このような樹脂としては従来公知の物を用いることができる。
【0022】
<各色材層Y,M,C>
色材層Y,M,Cは、熱転写性の色材であって昇華性を有する熱拡散性色素と、バインダー樹脂と、溶剤とからなる色材層形成用塗工液を、基材1の一主面上に順次印刷し、各色毎に乾燥することにより形成される層である。
【0023】
このうち熱拡散性色素としては、公知の熱転写シートに使用されている昇華性の染料を使用でき、特に限定されない。例えばいくつかの好ましい染料としては、イエローの染料には、フォロンブリリアントイエロー6GL(サンド(株)製商品名)、PTY−52(バイエル社製商品名)、マクロレックスイエロー6G(バイエル社製商品名)などが挙げられる。
マゼンタ染料には、MS Red G(三井東圧化学(株)製商品名)、Macrolex Red R(バイエル社製商品名)、Ceres Red 7B(バイエル社製商品名)、Samaron Red HBSL(ヘキスト社製商品名)などが挙げられる。シアン染料には、カヤセットブルー714(日本化薬社製商品名)、ワクソリンブルーAP−FW(インペリアルケミストリー社製商品名)、フォロンブリリアントブルーS−R(クラリアント社製商品名)、MSブルー100(住友化学社製商品名)などが挙げられる。
【0024】
またバインダー樹脂は、例えば、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルヒドロキシセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、酢酸セルロース、酢酪酸セルロースなどのセルロース誘導体、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアセトアセタール、ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドンなどのビニル系樹脂、ポリアクリレート、ポリメタアクリレート、ポリアクリルアミド、ポリメタアクリルアミドなどのアクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂などがある。これらのなかでは、セルロース誘導体、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、およびポリエステル系樹脂などが、耐熱性および熱拡散性色素(染料)の移行性などの点から好ましい。
【0025】
さらに溶剤はバインダー樹脂を溶解するものであって、バインダー樹脂や熱拡散性色素(染料)の種類によって選択されるが、一例としてメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、酢酸エチル、エタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテルなどから適宜選択し混合して使用できる。また、残留溶剤を少なくできるように配慮し、印刷に支障がない程度に蒸発速度が速くなるように溶剤の種類を選択し混合することが好ましい。
【0026】
尚、色材層形成用塗工液には、以上の他にも必要に応じて添加剤、例えば離型剤や界面活性剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、無機または有機の微粒子などを加えても良い。この場合、色材層形成用塗工液を乾燥させてなる色材層Y,M,Cにも、これらの添加剤が添加されていても良い。
【0027】
<画像保護層5>
画像保護層5は、少なくとも熱可塑性樹脂と溶剤とからなる画像保護層形成用塗工液を、基材1の一主面上に印刷して乾燥することにより形成される層であり、色材層Y,M,Cと共に面順に形成されている。
【0028】
<残存溶剤量>
以上のように構成された熱転写シートAにおいては、基材1上に面順次に設けられる3色の色材層Y,M,Cおよび画像保護層5の単位面積当たりの残存溶剤量[g/m2]の平均値、すなわち平均残存溶剤量[g/m2]が12.5[mg/m2]以下、好ましくは平均残存溶剤量[g/m2]が8.8mg/m2以下に制御されていることとする。この平均残存溶剤量は、各色材層Y,M,C,および画像保護層5毎に、それぞれの単位面積当たりの残存溶剤量を測定し、この値を平均化することによって得られる。
【0029】
ここで残存溶剤量の測定は、下記のようにして行われる。すなわち、熱転写シートAの各色材層Y,M,Cおよび画像保護層5を、基材上にそれぞれ個別に形成する。そして、各色材層Y,M,Cおよび画像保護層5の各形成部分を5cm×5cm□の大きさに切断して、個別にガラス容器に密封する。このガラス容器を120℃で5分間加熱後、ガラス容器中の有機溶剤量をガスクロマトグラフィで測定し、単位面積あたりの有機溶剤を測定する。こうして測定した各層の残存溶剤量を平均化した値を平均残存溶剤量として算出する。
【0030】
つまり、熱転写シートAが、3色の色材層Y,M,Cおよび画像保護層5を備えている場合であれば、平均残存溶剤量[g/m2]=(イエロー色用色材層Yの残存溶剤量[g/m2]+マゼンタ色用色材層Mの残存溶剤量[g/m2]+シアン色用色材層Cの残存溶剤量[g/m2]+画像保護層5の残存溶剤量[g/m2])÷4である。そして、色材層が2色、または4色や5色である場合であれば、それぞれの色の色材層および画像保護層5について、単位面積当たりの残存溶剤量を測定し、これを平均化することで平均残存溶剤量とする。
【0031】
以上のように平均残存溶剤量を算出してこの値を制御することにより、異なる材料からなる各色材層Y,M,C,および画像保護層5において、残存する溶剤の量にバラツキがあってもこれが平均化された値で制御されるため、保存中に径時的に溶剤が及ぼす影響を抑えることができる。
【0032】
<残存溶剤量の制御>
以上のような熱転写シートAにおいての残存溶剤量は、次のように制御される。すなわち、この熱転写シートAは、各色材層Y,M,Cと画像保護層5とを面順次に塗布し続けて乾燥して作製された後、ロール状に巻き取られて保存される。このため、各色材層Y,M,C、および画像保護層5の塗布量や、各塗布の直後で行われる各乾燥時の条件を調整することにより、残存溶剤量を上述した値に制御する。
【0033】
このような塗布量および乾燥条件の一例として、色材層Y,M,Cの塗布膜厚を乾燥固形分量で0.8μm以下、画像保護層5の塗布膜厚を乾燥固形分量で3μm以下となるように塗布し、各塗布の後に70〜130℃の乾燥温度、および乾燥風量10〜20m/secで乾燥することが好ましい。
【0034】
≪包装材≫
以上のような構成の熱転写シートAを収納する包装材は、透湿度が温度23℃、相対湿度55%の条件下で2g/m2・24h以下の材質で構成されていることとする。また、この包装材は、少なくも2種の高分子フィルムを貼合してなり、膜厚(全膜厚)が30〜800μmであることとする。
【0035】
上記透湿度の測定は、JIS Z 0208に記載の条件A(温度25±0.5℃、相対湿度90±2%)に従って可能である。なお、本発明では、さらに包装材の厚みのパラメーター(cm)が付与されている。
【0036】
透湿度が2g/m2・24h以下の場合には、熱転写シートAの残存溶剤と、包装材内に浸入する水分との相互作用が小さく抑えられ、熱転写シートAに与える各種影響が少なくなり好ましい。なお、透湿度は0.5g/m2・24h以下であるとさらに好ましい。
【0037】
また包装材の全膜厚が30以上である場合には、十分な強度となりピンホールや破けなどの心配が無く、さらに全膜厚が50μm以上であればこれらを確実に防止できるのでより好ましい。また包装材の全膜厚が800μm以下である場合には、熱転写シート形状に対する包装材の追随性に優れ、さらに全膜厚が200μm以下であればさらに追随性に優れるためより好ましい。
【0038】
以上の他の包装材の好ましい態様としては、温度23℃、相対湿度23%の条件下での表面比抵抗が2×109Ω/cm2以下であることとする。表面比抵抗は、包装材を温度23℃、相対湿度23%の条件下で2時間調湿した後に測定すれば良い。表面比抵抗が2×10^9Ω/cm2を越える場合には、画像欠陥が生じやすくなる。このような表面比抵抗の測定は、例えば(株)川口電気製作所製「TERAOHMMETER R−503」を用いて行うことができる。
【0039】
このような性質を有する包装材は、単独素材ではなく異なる素材からなり、且つ少なくとも2種の高分子フィルムを貼合してなる複合フィルムであることが好ましい。これらの2層は、ガスバリヤー性を有する材料からなる層と、防湿性を有する材料からなる層とであることとする。そして、この包装材に用いられるガスバリヤー性を有する材料としては、酸素に関しては塩化ビニリデン、ポリアミド、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリアクリロニトリル、ナイロン−6、ポリメタキシレンアジバミド等の樹脂、及び酸化ケイ素やアルミの蒸着層等の無機物が挙げられる。さらにこの包装材に用いられる防湿性を有する材料としては、塩化ビニリデン、ポリエチレン、ポリアクリロニトリル、ナイロン−6、ポリプロプロピレン等の樹脂、及び酸化ケイ素やアルミの蒸着層等の無機物が挙げられる。そして、これらの材料からなる層は、何れか一方の主層を支持体とし、この上に1層以上積層した複合フィルムの形態で用いてもよい。
【0040】
≪熱転写シート包装物の製造方法≫
以上のような包装材中に熱転写シートAを密閉収納してなる熱転写シート包装物の製造は、次のように行う。
【0041】
先ず、予め各色の色材層Y,M,Cおよび画像保護層5の単位面積あたりの残存溶剤量の平均値が12.5mg/m2以下となるように、これらの層Y,M,C,5の塗布形成条件を設定しておくことが重要である。このため、予備的な実験として、各色の色材層Y,M,Cおよび画像保護層5を、各塗布形成条件で形成して残存溶剤量を測定することで、単位面積あたりの残存溶剤量の平均値が12.5mg/m2以下となる塗布形成条件を抽出して設定する。尚、塗布形成条件としては、上述のように塗布量、乾燥時の乾燥温度および乾燥風量等であることとする。
【0042】
そして、設定された塗布形成条件により、基材上に面順次に各色の色材層Y,M,Cと画像保護層5とを塗布形成して熱転写シートAを作製する。その後、作製した熱転写シートAを、透湿度係数が23℃相対湿度55%RHにおいて2g/m2・24h以下である包装材中に収納する。これにより、熱転写シート包装物が得られる。
【0043】
≪受像シート≫
次に、上述した熱転写シート包装物の熱転写シートからの熱転写によって画像が形成される受像シートの構成を説明する。受像シートは、シート基材と、この一主面側に設けられた受像層とを備えている。シート基材と受像層との間には、必要に応じて中間層を設けても良い。以下、これらの構成の詳細を説明する。
【0044】
<シート基材>
シート基材は、受像層を保持するという役割を有するとともに、熱転写時には熱が加えられるため、過熱された状態でも取り扱い上支障のない程度の機械的強度を有することが好ましい。このようなシート基材の材料としては特に限定されず、例えば、コンデンサーペーパー、グラシン紙、硫酸紙、またはサイズ度の高い紙、合成紙(ポリオレフィン系、ポリスチレン系)、上質紙、アート紙、コート紙、キャストコート紙、壁紙、裏打用紙、合成樹脂又はエマルジョン含浸紙、合成ゴムラテックス含浸紙、合成樹脂内添紙、板紙等、セルロース繊維紙、あるいはポリエステル、ポリアクリレート、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、セルロース誘導体、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリプロピレン、ポリスチレン、アクリル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ナイロン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、テトラフルオロエチレン、パーフルオロアルキルビニルエーテル、ポリビニルフルオライド、テトラフルオロエチレン・エチレン、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド等のフィルムが挙げられる。また、これらの合成樹脂に白色顔料や充填剤を加えて成膜した白色不透明フィルムあるいは発泡させた発泡シートも使用でき、特に限定されない。また、上記基材の任意の組み合わせによる積層体も使用できる。代表的な積層体の例として、セルロース繊維紙と合成紙或いはセルロース合成紙とプラスチックフィルムとの合成紙が挙げられる。これらの支持体の厚みは任意でよく、通常10〜300μm程度である。
【0045】
より高い印字感度を有すると共に、濃度ムラや白抜けのない高画質を得るためには、微細空隙を有する層をシート基材中に存在させることが好ましい。微細空隙を有する層としては、内部に微細空隙を有するプラスチックフィルムや合成紙を用いることが出来る。また、各種支持体の上に、各種の塗工方式で微細空隙を有する層を形成できる。微細空隙を有するプラスチックフィルム又は合成紙としては、ポリオレフィン、特にポリプロピレンを主体として、それに無機顔料及び/又はポリプロピレンと非相溶なポリマーをブレンドし、これらをボイド(空隙)形成開始剤として用い、これらの混合物を延伸、成膜したプラスチックフィルム又は合成紙が好ましい。これらがポリエステル等を主体としたものの場合には、その粘弾性的あるいは熱的性質から、クッション性、及び断熱性が、ポリプロピレンを主体としたものに比較して劣るため、印字感度に劣り、濃度ムラなども生じやすい。
【0046】
これらの点を考慮すると、プラスチックフィルム及び合成紙の20℃における弾性率は5×108Pa〜1×1010Paが好ましい。また、これらのプラスチックフィルムや合成紙は、通常2軸延伸により成膜されたものであるが故に、これらは加熱により収縮する。これらを110℃下で60秒放置した場合の収縮率は0.5〜2.5%である。上述のプラスチックフィルムや合成紙は、それ自体が、微細空隙を含む層の単層で合っても良いし、複数の層構成であっても良い。複数の層構成の場合には、その構成する全ての層に微細空隙を含有しても良いし、微細空隙が存在しない層が含有しても良い。このプラスチックフィルムや合成紙には、必要に応じて隠蔽剤として、白色顔料を混入させてもよい。又、白色性を増すために、蛍光増白剤等の添加剤を含有させても良い。微細空隙を有する層は、30〜80μmの厚みが好ましい。
【0047】
また微細空隙を有する層は、シート基材上にコーティング法によって形成することも可能である。使用するプラスチック樹脂としては、ポリエステル、ウレタン樹脂、ポリカーボネート、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル等の公知の樹脂を単独或いは複数をブレンドして使用することができる。
【0048】
またこのシート基材は、必要に応じて受像層を設ける側とは反対側の面に、カール防止の目的として、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、ポリプロピレン、変性ポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート等の樹脂や合成紙の層を設けることが出来る。貼り合わせ方法としては、例えば、ドライラミネーション、ノンソルベント(ホットメルト)ラミネーション、ECラミネーション法等の公知の積層方法が使用できるが、好ましい方法はドライラミネーション及びノンソルベントラミネーション法である。ノンソルベントラミネーション法に好適な接着剤としては、例えば、武田薬品工業(株)製のタケネート720L等が挙げられ、ドライラミネーションに好適な接着剤としては、例えば、武田薬品工業(株)製のタケラックA969/タケネートA−5(3/1)、昭和高分子(株)製のポリゾール PSA SE−1400、ビニロール PSA AV−6200シリーズ等が挙げられる。これらの接着剤の使用量としては、固形分で約1〜8g/m2、好ましくは2〜6g/m2の範囲である。
【0049】
上述したような、プラスチックフィルムと合成紙、あるいはそれら同士、あるいは各種紙とプラスチックフィルムや合成紙、等を積層する場合、接着層により貼り合わせることが出来る。
【0050】
上記シート基材と受像層との接着強度を大きくする等の目的で、当該シート基材の表面に各種プライマー処理やコロナ放電処理を施すのが好ましい。またシート基材の裏面側には、必要に応じた機能を有する理面層を設けても良い。
【0051】
<中間層>
シート基材と受像層との間に、必要に応じて設けられる中間層は、接着層(プライマー層)、バリアー層、紫外線吸収層、発泡層、帯電防止層等、受像層とシート基材との間に設ける層すべてを意味し、公知のものは、必要に応じていずれも使用できる。このような中間層は、1層に限定されず必要に応じて複数層の積層構造であっても良い。さらに、シート基材のギラツキ感やムラを隠蔽するために、中間層を構成するベース樹脂に酸化チタン等の白色顔料を添加すると、基材選択の自由度が広がるので好ましい。このような中間層のベース樹脂と白色顔料との含有量は、樹脂固形分100質量部に対し、白色顔料固形分30〜300質量部が好ましいが、隠蔽性を高めるには100〜300質量部の範囲で用いることがさらに好ましい。
【0052】
また中間層としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、或いは官能基を有する熱可塑性樹脂を、各種の添加剤その他の手法を用いて硬化させた層を用いることができる。具体的には、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエステル、塩素化ポリプロピレン、変性ポリオレフィン、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート、アイオノマー、単官能及び/又は多官能水酸基含有のプレポリマーをイソシアネート等で硬化させた樹脂等を使用することが出来る。
【0053】
<受像層>
受像層は、バインダー樹脂と共に、必要に応じて離型剤等の各種添加剤を含有させた構成となっている。バインダー樹脂は公知のものを用いることができ、染料が染着しやすいものを用いることが好ましい。具体的にはポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のハロゲン化樹脂、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸エステルなどのビニル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、フェノキシ樹脂、エチレンやプロピレンなどのオレフィンと他のビニル系モノマーとの共重合体、ポリウレタン、ポリカーボネート、アクリル樹脂、アイオノマー、セルロース誘導体等の単体、又は混合物を用いることができ、これらの中でもポリエステル系樹脂、及びビニル系樹脂が好ましい。
【0054】
このような受像層は、熱転写シートA側の色材層Y,M,Cとの熱融着を防止するために、離型剤を添加することが好ましい。離型剤としては、燐酸エステル系可塑剤、フッ素系化合物、シリコーンオイル(反応硬化型シリコーンを含む)等を使用することができるが、この中でもシリコーンオイルが好ましい。シリコーンオイルとしては、ジメチルシリコーンを始め各種の変性シリコーンを用いることができる。具体的には、アミノ変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、アルコール変性シリコーン、ビニル変性シリコーン、ウレタン変性シリコーン等を用い、これらをブレンドしたり、各種の反応を用いて重合させて用いることもできる。離型剤は1種もしくは2種以上のものが使用される。また、離型剤の添加量は、受像層形成用樹脂100質量部に対し、0.5〜30質量部が好ましい。この添加量の範囲を満たさない場合は、熱転写シートと受像シートの受像層との融着もしくは印画感度低下などの問題が生じる場合がある。尚、これらの離型剤は受像層に添加せず、受像層上に別途離型層として設けても良い。
【0055】
以上のような構成の受像層は、シート基材(中間層)上に、水または有機溶剤などの溶媒にバインダー樹脂や添加剤を溶解又は分散させた塗布液を、バーコーター、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、ロールコーティング法、グラビア版を用いたリバースロールコーティング法、エアナイフコーティング法、スプレーコーティング法、カーテン塗布方法、エクストルージョンコート法などの通常の方法で塗布し、乾燥して形成することができる。尚、シート基材の一方の面に設けられる中間層や裏面層の形成手段も、上記の受像層の場合と同様の方法で行われる。また受像層は、上記のようにシート基材上に直接塗布液を塗布し、乾燥して形成するだけでなく、別の支持体に受像層を予め形成してあるものから、シート基材上に受像層を転写形成してもよい。また、各層を2層以上を同時に塗布することもでき、特に全ての層を一回の塗布で済ます同時塗布を行うこともできる。
【0056】
以上のような受像層の厚さは、塗布乾燥後の膜厚で、0.1〜10μm程度が好ましい。
【0057】
尚、ここで用いられる受像シートは、プリンターに枚葉で供給されてもロール形態で供給されても良い。枚葉供給とは、例えば、受像シートを一定サイズにカットし、50枚程度を1セットとしてカセットに入れ、プリンターに装着して使用される形態を指す。又、ロール形態とは、その形でプリンタに受像シートを供給し、印画後所望のサイズに切断して使用する形態のことである。特に後者は、2枚差し等の給紙不良や排出不良等の搬送系のトラブルが解消される他、印画可能枚数の大容量化にも対応することが出来るため好ましい。ロール形態で受像シートを供給する場合、特に、上述したようなハガキ仕様にした場合や、ラベルやシールタイプの受像シートを用いる場合は、裏面側に形成された郵便番号枠等のデザインマークや、シールのハーフカットの位置に対して切断位置を合わせるために、検知マークを裏面側に設けることが出来る。
【実施例】
【0058】
≪熱転写シート包装物の作製≫
(1)先ず、フィルム状の基材1として、易接着処理を施した厚さ6μmのルミラー6F65K(東レ(株)製商品名)を用意した。この基材1の一主面側に、<a.耐熱滑性層形成用塗工液>を塗布し、乾燥させて耐熱滑性層7を形成した。またこの基材1の他主面側に、<b.プライマー層形成用塗工液>を塗布し、乾燥させてプライマー層3を形成した。各塗工液は次のような組成とした。
【0059】
<a.耐熱滑性層形成用塗工液組成物>
ポリビニルブチラール樹脂 3.5重量部
(積水化学工業社製 エスレックBX−1]
リン酸エステル系界面活性剤 3.0重量部
[第一工業製薬社製 プライサーフA208S]
リン酸エステル系界面活性剤 0.3重量部
[東邦化学社製 フォスファノールRD720]
ポリイソシアネート 19.0重量部
[大日本インキ化学工業社製、バーノックD750−45]
タルク(日本タルク社製 Y/X=0.03] 0.2重量部
メチルエチルケトン 35.0重量部
トルエン 35.0重量部
【0060】
<b.プライマー層形成用塗工液組成物>
アドコート335A 40.0重量部
[ポリエステル 東洋モートン(株)製 商品名]
メチルエチルケトン 60.0重量部
【0061】
(2)次に、プライマー層3が形成された基材1上に、<c1.〜c3.色材層形成用塗工液>と、<d1.〜d3.画像保護層形成用塗工液>とを、多色グラビア塗布機により印刷塗布し、乾燥させることにより、各色材層Y,M,Cおよび3層構造の画像保護層5とを形成した。このとき、<c1.〜c3.色材層形成用塗工液>は、プライマー層3上に面順次に印刷した。また、<d1.〜d3.画像保護層形成用塗工液>は、同一面上にプライマー層3に近いほうから各々同順序で3層を積層して形成した。この際、基材1に近い側から順に同一面上に各層の印刷塗布と乾燥とを繰返すことにより、積層構造の画像保護層5を形成した。各塗工液は次のような組成とした。
【0062】
<c1.イエロー用色材層形成用塗工液>
フォロンブリリアントイエローS・6GL 3重量部
[イエロー染料 サンド(株)製 商品名]
アセトアセタール樹脂 4重量部
[エスレックKS−5 積水化学工業(株)製 商品名]
メラミン・ホルムアルデヒド縮合体微粒子 0.5重量部
[日本触媒社製:エポスターS]
メチルエチルケトン 50重量部
トルエン 43重量部
【0063】
<c2.マゼンタ用色材層形成用塗工液>
イエロー用色材層形成用塗工液においてイエロー染料をMS Red G 2重量部(マゼンタ染料 三井東圧化学(株)製 商品名)に代えた以外は同様にしてマゼンタ用色材層形成用塗工液組成物を得た。
【0064】
<c3.シアン用色材層形成用塗工液>
イエロー用色材層形成用塗工液においてイエロー染料をDH・C2 4重量部(シアン染料 日本化薬(株)製 商品名)に代えた以外は同様にしてシアン用色材層形成用塗工液組成物を得た。
【0065】
<d1.画像保護層形成用塗工液(非転写性離型層)>
ポリビニルアセトアセタール 5重量部
メチルエチルケトン 55重量部
トルエン 40重量部
【0066】
<d2.画像保護層形成用塗工液(主要層)>
アクリロニトリルスチレン樹脂 20重量部
[日本エイアンドエル株式会社製 ライタックA]
紫外線吸収性樹脂 2重量部
[BASF社製 UVA635L]
メチルエチルケトン 40重量部
トルエン 38重量部
<d3.画像保護層形成用塗工液(接着層)>
アクリル樹脂 6重量部
[三菱レイヨン社製、ダイヤナールBR90]
水添石油系樹脂 1重量部
[荒川化学工業社製 アルコンP100]
メチルエチルケトン 50重量部
トルエン 43重量部
【0067】
尚、以上のような<d1.〜d3.画像保護層形成用塗工液>を積層させた3層構造の画像保護膜5のうち、非転写性離型層を除く残りの2層が被熱転写シート上に熱転写される。
【0068】
そして実施例1〜4および比較例1〜5においては、各色材層Y,M,Cの形成における印刷塗布後の各乾燥条件、および画像保護層5を構成する3層の印刷塗布後の各乾燥条件として乾燥温度と乾燥風量とをそれぞれの値に調整することで、平均残存溶剤量が12.5[g/m2]となるように制御した。
【0069】
(3)以上のようにして得られた各熱転写シートを、各種保存用包装材に入れ、ヒートシールすることで、表1に示す実施例1〜4および比較例1〜4の熱転写シート包装物を得た。下記表1には、実施例1〜4および比較例1〜4についての、熱転写シート作製時の乾燥条件、平均残存溶剤量、および包装材を示す。
【0070】
【表1】

【0071】
包装材として用いた各防湿袋1〜防湿袋5は、以下の積層貼合フィルムからなる。
包装材1:PET12μm/PE15μm/Al箔7μm/PE15μm/LLDPE30μm(全膜厚97μm)
包装材2:シリカ蒸着PET12μm/PET12μm/LLDPE20μm(全膜厚44μm)
包装材3:OPP30μm/CPP40μm(全膜厚70μm)
包装材4:OPP15μm/CPP13μm(全膜厚28μm)
包装材5:OPP10μm/CPP13μm(全膜厚23μm)
尚、PETはポリエチレンテレフタレート、PEはポリエチレン、LLDPEは低密度ポリエチレン、OPPは2軸延伸ポリプロピレン、CPPは無延伸ポリプロピレンである。
【0072】
≪受像シートの作製≫
以上のようにして得られた熱転写シート包装物の評価に用いた受像シートを以下のようにして作製した。
【0073】
(1)シート基材として、片面をコロナ放電処理した厚み200μmの合成紙(王子油化製:YUPO FPG#200)を容易した。このシート基材のコロナ放電処理した面に、中間層となるプライマー層として下記組成の<e.プライマー層形成用塗工液>をワイヤーバーコーティング法により塗布・乾燥し、厚み0.5μmのプライマー層を形成した。
【0074】
<e.プライマー層形成用塗工液組成>
ポリビニルブチラール[積水化学製:エスレックスBL−1] 9部
イソシアナート[日本ポリウレタン製:コロネートHX] 1部
メチルエチルケトン 80部
酢酸ブチル 10部
【0075】
(2)次いで、下記組成の<f.受像層形成塗工液>を調製した後、ワイヤーバーにて塗布・乾燥し、厚み4μmの受像層を形成し、受像シートを得た。
【0076】
<f.受像層形成塗工液>
ポリビニラールブチラール樹脂 6部
[積水化学工業製:エスレックスBX−1,ブチラール化度70モル%,未鹸化ビニルアセテート基3モル%]
シリコン変性ポリイミド樹脂[信越化学工業製:X-22-8904] 1部
イソシアナート[日本ポリウレタン製:コロネート3041] 0.5部
【0077】
≪熱転写シートを用いた画像形成≫
作製した実施例1〜4および比較例1〜5の各熱転写シート包装物について、30℃、相対湿度80%の環境下に30日間保存する加速試験を行った。そして、加速試験下における保存前後の熱転写シートを用いて画像形成を行った。この際、熱転写シート包装物より取り出した熱転写シートと作製した受像シートとを、紙昇華熱転写型プリンタ(UP−CR10L;ソニー社製)にセットし、熱転写シートから受像シートの受像層に熱転写によって画像を転写形成した。
【0078】
≪熱転写シート包装物の評価≫
以上のようにして形成した画像につて、下記のような測定を行った。
【0079】
(1)保存前後の熱転写シートを用いて形成された画像の光学濃度変化[ΔO.D.]と色差変化[ΔE]とを求めた。ここでは、プロセスブラックの光学濃度(O.D.値)が1.0と0.5の部分について、加速試験の前後の熱転写シートを用いて形成した画像のO.D値と色差とを、X−rite810濃度計(X−Rite社製)によって測定し、ステータスA反射濃度とLab値から、下記式に基づいて保存前後の光学濃度変化[ΔO.D.]と色差変化[ΔE(ΔEa*b*)]とを算出した。
ΔO.D.=(保存前のO.D.値)−(保存後のO.D.値)
ΔE(ΔEa*b*)=[(保存前のa*値−保存後のa*値)2+(保存前のb*値−保存後のb*値)21/2
【0080】
算出値を上記表1に合わせて示した。これらの算出値の評価基準としては、光学濃度変化[ΔO.D.]が±0.05以上、また色差変化[ΔE(ΔEa*b*)]3以上であると商品として許容されないレベルである。
【0081】
(2)保存後の熱転写シートを用いて形成された画像の表面光沢度を測定した。ここでは、印画濃度2.0のプロセスブラック画像について、プリンター副走査方向における60°光沢度を測定した。測定結果を上記表1に合わせて示した。
【0082】
(3)保存後の熱転写シートを用いて形成された画像の表面光沢品質を評価した。ここでは、印画濃度2.0のプロセスブラック画像の画像表面を下記の基準に従い表面光沢品質の評価を行った。評価結果を上記表1に合わせて示した。
◎ :画像部の光沢が一様である。
○ :画像部の光沢がわずかに乱れるが、許容できるレベル。
△ :画像部の光沢が少し乱れるが、許容できるレベル。
× :画像部の光沢が乱れ、肉眼でもはっきりと確認でき、許容されないレベル。
××:画像部の光沢が面荒れにより完全に乱れ、完全に許容されないレベル。
×以下は商品として許容されないレベル。
【0083】
以上の評価をまとめた表1に示すように、本発明を適用し、熱転写シートの平均残存溶剤量を12.5mg/m2以下で、かつ包装材の透湿度係数を23℃相対湿度55%RHにおいて2g/m2・24h以下とした実施例1〜4の熱転写シート包装物では、加速試験条件下での保存後であっても、転写形成した画像の光学濃度の変化および色差の変化が許容範囲に抑えられ、しかも画像の光沢度(60°)も85以上の高い値を示し、また画像の表面性も良好であることが確認された。
【0084】
これに対して、本発明を適用していない熱転写シート包装物では、加速試験下の保存後の転写シートを用いて転写形成した画像に十分な特性が得られなかった。
【0085】
以上から、本発明を適用した熱転写シート包装物では、長期保存した後であっても、熱転写シートからの熱転写によって安定した濃度発現性、画像光沢性を有する画像を得ることが可能になることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】熱転写シートの一構成例を示す要部断面模式図である
【符号の説明】
【0087】
1…基材、Y…イエロー色用色材層、M…マゼンタ色用色材層、C…シアン色用色材層、5…画像保護層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に面順次に形成された各色の色材層と画像保護層とを備えると共に、当該各色の色材層および画像保護層の単位面積あたりの残存溶剤量の平均値が12.5mg/m2以下である熱転写シートと、
前記熱転写シートを収納するもので、透湿度係数が23℃相対湿度55%RHにおいて2g/m2・24h以下である包装材とからなる
ことを特徴とする熱転写シート包装物。
【請求項2】
請求項1記載の熱転写シート包装物において、
前記包装材は、少なくも2種の高分子フィルムを貼合してなり、全膜厚が30μm以上800μm以下である
ことを特徴とする熱転写シート包装物。
【請求項3】
各色の色材層および画像保護層の単位面積あたりの残存溶剤量の平均値が12.5mg/m2以下となるように、当該各色の色材層および画像保護層の塗布形成条件を設定する工程と、
前記設定された塗布形成条件により、基材上に面順次に前記各色の色材層と画像保護層とを塗布形成した熱転写シートを作製する工程と、
透湿度係数が23℃相対湿度55%RHにおいて2g/m2・24h以下である包装材中に、前記作製した熱転写シートを収納する工程とを行う
ことを特徴とする熱転写シート包装物の製造方法。
【請求項4】
請求項3記載の熱転写シート包装物の製造方法において、
前記塗布形成条件として、前記各色の色材層および画像保護層を塗布した後の乾燥条件を設定する
ことを特徴とする熱転写シート包装物の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2009−166849(P2009−166849A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−3910(P2008−3910)
【出願日】平成20年1月11日(2008.1.11)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】