説明

熱転写シート及びそれを用いた画像形成物

【課題】
その目的は、色濃度の高い熱転写画像と光輝性図柄とが容易に形成でき、特異な意匠性とセキュリティ性のある光輝性図柄とを形成でき、かつ、製造が容易で低コストである熱転写シート及びそれを用いた画像形成物を提供する。
【解決手段】
基材の一方の面に、少なくとも1色の染料層領域と、光輝性転写層領域とが面順次に設けてなる熱転写シートにおいて、前記染料層領域は基材面に少なくとも染料バリア層、及び染料層が順次積層され、前記光輝性転写層領域は基材面に少なくとも剥離層、光輝性効果を発現するレリーフ形状を有するレリーフ形成層、及び反射層が順次積層されてなり、好ましくは、上記染料バリア層と上記反射層とが金属、又は金属化合物の薄膜から構成される同一層で、同一基材面に設けられてなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱転写シートに関し、さらに詳しくは、色濃度の高い熱転写画像と光輝性図柄を有し、特異な意匠性、及び/又はセキュリティ性を有する熱転写シート及びそれを用いた画像形成物に関するものである。
【0002】
本明細書において、配合を示す「比」、「部」、「%」などは特に断わらない限り質量基準であり、「/」印は一体的に積層されていることを示す。なお、本明細書では、電離放射線硬化性樹脂とは電離放射線を照射しない硬化する前の前駆体又は組成物であり、電離放射線を照射して硬化させたものを電離放射線硬化樹脂と呼ぶ。
【背景技術】
【0003】
(背景技術)従来、熱転写方法を用いて受像シートに階調画像や文字、記号等の単調画像を形成することが行われている。その熱転写方法は、昇華転写方法と熱溶融転写方法が公知である。昇華転写方式は、色材として用いる昇華性染料をバインダー樹脂に溶解または分散させた染料層を基材上に担持させた熱転写シートを受像シートに重ね、サーマルヘッドやレーザー等の加熱手段により、画像情報に応じたエネルギーを印加することにより熱転写シートの上の昇華性染料層中に含まれる染料を受像シートに移行させて画像を形成するものである。昇華転写方式は、熱転写シートに印加するエネルギー量によって、ドット単位で染料の移行量を制御することができるため、階調性のフルカラー画像の形成ができ、銀塩写真の画像に匹敵する高品質な画像を形成することができる。したがって、昇華転写方式は注目され、マルチメディアに関連した様々なハード及びソフトの発達により、種々の分野で情報記録手段として利用されている。しかしながら、このような昇華転写方式で形成された画像は、銀塩写真や公知の印刷物の画像と比べて、色濃度が低いという問題があった。これは、染料層中の昇華性染料が印画時の加熱により、全体へ拡散するので、実際に昇華して被転写体へ移行する染料の量が減少してしまい、その結果、熱転写画像の色濃度が低くなってしまうためである。従って、印画時の加熱によっても、昇華性染料が全体、特に基材側への拡散を防止し、昇華して被転写体へ移行する染料の量が増加させる必要が求められている。
一方、金券類、カード類、及び各種証明書類などのは、資格証明や一定の経済的価値や効果を持つため、不正に偽造、変造、不正使用することが絶えない。特に、カラーコピー機の精度向上が著しく、各種の媒体類の偽造を容易にしている。これを防止するため各種の偽造防止手段が施されている。光輝性、特にホログラム、回折格子などのレリーフ形状を有する転写箔は、特異な装飾像や立体像を表現できる意匠性と、これらホログラムや回折格子は高度な製造技術を要し、容易に製造できないことから、偽造防止としてセキュリティー性の向上に利用されている。
色濃度の高い熱転写画像と光輝性図柄とを得るためには、それぞれ別の方式で形成せねばならなかった。従って、画像の形成が容易な熱転写方式では、色濃度の高い熱転写画像と光輝性図柄とが得られなかった。そこで、色濃度の高い熱転写画像と、特異な意匠性とセキュリティ性のある光輝性図柄とを形成でき、かつ、製造が容易で低コストである熱転写シートが求められている。
色濃度の高い熱転写画像を形成するための染料層領域と、特異な意匠性とセキュリティ性のある光輝性図柄を形成するための光輝性転写層領域とを同一基材上に、面順次に塗り分けて設ける熱転写シートを用い、熱転写プリンターに一度セットすれば、色濃度の高い熱転写画像と光輝性図柄とが簡単に形成できる。
【0004】
(主なる用途)本発明の熱転写シートを用いた画像形成物の主なる用途としては、例えば、コンピューターグラフィックス、衛星通信による静止画像そしてCD-ROMその他に代表されるデジタル画像及びビデオ等のアナログ画像のフルカラーハードコピーシステムとして、その市場を拡大している。この熱転写方式による受像シートの具体的な用途は、多岐にわたっている。代表的なものとして、印刷の校正刷り、画像の出力、CAD/CAMなどの設計及びデザインなどの出力、CTスキャンや内視鏡カメラなどの各種医療用分析機器、測定機器の出力用途そしてインスタント写真の代替として、また身分証明書やIDカード、クレジットカード、その他カード類の顔写真等の出力、さらに遊園地、ゲームセンター、博物館、水族館等のアミューズメント施設における合成写真、記念写真としての用途等を挙げることができる。しかしながら、濃度の高い熱転写画像と光輝性図柄を有し、特異な意匠性、及び/又はセキュリティ性を有する用途であれば、特に限定されるものではない。
【0005】
(先行技術)従来、本出願人は、熱転写画像と保護層を形成するために、基材へ少なくとも1色の染料層と熱転写性保護層とを面順次に設けた熱転写シートを開示している(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、耐久性に優れた画像を備えた印画物が得られるが、熱転写プリンターに一度セットしても、色濃度の高い熱転写画像と光輝性図柄とを形成することはできず、特異な意匠性及び/又はセキュリティ性が得られないという欠点がある。
【0006】
【特許文献1】特開2003−312151号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明はこのような問題点を解消するためになされたものである。その目的は、熱転写プリンターに一度セットすれば、被転写体に対して、色濃度の高い熱転写画像と光輝性図柄とが簡単に形成でき、特異な意匠性とセキュリティ性のある光輝性図柄とを形成でき、かつ、製造が容易で低コストである熱転写シート及びそれを用いた画像形成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、請求項1の発明に係わる熱転写シートは、基材の一方の面に、少なくとも1色の染料層領域と、光輝性転写層領域とが面順次に設けてなる熱転写シートにおいて、前記染料層領域は基材面に少なくとも染料バリア層、及び染料層が順次積層され、前記光輝性転写層領域は基材面に少なくとも剥離層、光輝性効果を発現するレリーフ形状を有するレリーフ形成層、及び反射層が順次積層されてなるように、したものである。
請求項2の発明に係わる熱転写シートは、上記染料バリア層と上記反射層とが金属、又は金属化合物の薄膜から構成される同一層で、同一基材面に設けられてなるように、したものである。
請求項3の発明に係わる熱転写シートは、上記レリーフ形状がホログラム及び/又は回折格子であるように、したものである。
請求項4の発明に係わる画像形成物は、請求項1〜3のいずれかに記載の熱転写シートを用いて、被転写体へ熱転写画像と光輝性図柄を設けてなるように、したものである。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の本発明によれば、色濃度の高い熱転写画像と光輝性図柄とを形成できる熱転写シートが提供される。
請求項2の本発明によれば、請求項1の効果に加えて、熱転写プリンターに一度セットすれば、被転写体に対して、色濃度の高い熱転写画像と光輝性図柄とが形成でき、かつ、製造が容易で低コストである熱転写シートが提供される。
請求項3の本発明によれば、特異な意匠性とセキュリティ性のある光輝性図柄を形成できる熱転写シートが提供される。
請求項4の本発明によれば、色濃度の高い熱転写画像と、特異な意匠性とセキュリティ性のある光輝性図柄とを有し、既存設備で転写でき、低コストである画像形成物が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら、詳細に説明する。
図1は、本発明の1実施例を示す熱転写シートの平面図及び断面図である。
図2は、本発明の1実施例を示す熱転写シートの平面図である。
図3は、本発明の1実施例を示す画像形成物の断面図である。
【0011】
(熱転写シートの構成)本発明の熱転写シート10は、図1(A)に図示するように、同一の基材11の一方の面へ、染料層領域31と光輝性転写層領域33とを設けたものである。該染料層領域31は、少なくとも1領域あればよく、例えばY染料層領域31Y、M染料層領域31M、C染料層領域31Cなどである。また、必要に応じて、K色材層領域31Kを設けてもよく、該K色材層領域31Kは染料でも顔料でもよい。該Y染料層領域31Yは、図1(B)に図示するように、同一の基材11面へ、染料バリア層17B、Y染料層31YYからなる層構成で、他の染料層領域31も同様である。光輝性転写層領域33は、図1(C)に図示するように、同一の基材11面へ、剥離層層13、レリーフ形成層15、反射層17、必要に応じて接着層19からなる層構成である。基材11として易接着性基材を用いる場合には、離型層(図示せず)を設けてから剥離層13を形成するのが好ましい。また、基材11の他方の面に、背面層(図示せず)を設けてもよい。また、図2に図示するように、染料層領域31と光輝性転写層領域33とに加えて、保護層転写層領域35を面順次に設けてもよい。
【0012】
ここで、染料バリア層17Bと反射層17とを、同一の金属又は金属化合物の薄膜とし、かつ同一の基材11面へ設けることで、該薄膜が、染料層領域31の染料の染料バリア機能(染料バリア層17B)と、光輝性転写層領域33の光反射機能(反射層17)とを兼ね備えさせることができる。2つの機能の該薄膜を1層で設けることができるので、製造が容易で、低コストでもある。該薄膜を設けることによって、印画時の加熱による染料層中の昇華性染料が基材側への拡散が防止できるので、昇華して被転写体へ移行する染料の量が増加し、その結果、熱転写画像の色濃度が高くすることができる。熱転写画像の色濃度が通常でよい場合には、印画時の加熱を減ずることができるので、より低エネルギーで印画できたり、より高速で印画することができる。
【0013】
(基材)基材11の材料としては、耐熱性、機械的強度、製造に耐える機械的強度、耐溶剤性などがあれば、用途に応じて種々の材料が適用できる。例えば、ポリエチレンテレフタレ−ト、ポリブチレンテレフタレ−ト、ポリエチレンナフタレ−ト、ポリエチレンテレフタレート‐イソフタレート共重合体、又はテレフタル酸‐シクロヘキサンジメタノール‐エチレングリコール共重合体などのポリエステル系樹脂、ナイロン(商品名)6、ナイロン(商品名)66、ナイロン(商品名)610、又はナイロン(商品名)12などのポリアミド系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、又はポリメチルペンテンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリノルボネンなどの環状ポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニルなどのビニル系樹脂、ポリアクリレート、ポリメタアクリレート、又はポリメチルメタアクリレートなどの(メタ)アクリル系樹脂、ポリスチレン、高衝撃ポリスチレン、AS樹脂、又はABS樹脂などのスチレン系樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、又はエチレン−ビニルアルコール共重合体等のポリビニルアルコール系樹脂、ポリカ−ボネ−ト系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物、ポリビニルブチラール樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、アセタール系樹脂、などがある。該基材11は、これら樹脂を主成分とする共重合樹脂、または、混合体(アロイでを含む)、若しくは複数層からなる積層体であっても良い。また、該基材11は、延伸フィルムでも、未延伸フィルムでも良いが、強度を向上させる目的で、一軸方向または二軸方向に延伸したフィルムが好ましい。該基材11は、これら樹脂の少なくとも1層からなるフィルム、シート、ボード状として使用する。
【0014】
通常は、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系のフィルムが、耐熱性、機械的強度がよいため好適に使用され、ポリエチレンテレフタレートが最適である。該基材の厚さは、通常、2.5〜50μm程度が適用できるが、2.5〜12μmが好適で、3〜8μmが転写性の点で最適である。このような厚さで、これ以上の厚さでは、サーマルヘッドの熱の伝達が悪く、これ以下では、機械的強度が不足する。該基材は、塗布に先立って塗布面へ、コロナ放電処理、プラズマ処理、オゾン処理、フレーム処理、プライマー(アンカーコート、接着促進剤、易接着剤とも呼ばれる)塗布処理、予熱処理、除塵埃処理、蒸着処理、アルカリ処理、などの易接着処理を行ってもよい。また、必要に応じて、充填剤、可塑剤、着色剤、帯電防止剤などの添加剤を加えても良い。
【0015】
(剥離層)転写する際の転写性を安定させ向上させるために、基材11と熱転写性樹脂層15との間へ剥離層13を設けることが好ましい。剥離層13は樹脂としては、離型性樹脂、離型剤を含んだ樹脂、電離放射線で架橋する硬化性樹脂などが適用できる。離型性樹脂は、例えば、弗素系樹脂、シリコーン、メラミン系樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル系樹脂、繊維素系樹脂、ワックス、メラミン系樹脂などである。離型剤を含んだ樹脂は、例えば、弗素系樹脂、シリコーン、各種のワックスなどの離型剤を、添加または共重合させたアクリル系樹脂、ビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、繊維素系樹脂などである。電離放射線で架橋する硬化性樹脂は、例えば、紫外線(UV)、電子線(EB)などの電離放射線で重合(硬化)する官能基を有するモノマー、オリゴマーなどを含有させた樹脂である。
【0016】
剥離層13の材料としては、一般的な熱可塑性樹脂でガラス転移温度(Tg)が120〜200℃のものが適用できる。使用可能な樹脂としては、環状オレフィン系樹脂、ノルボルネン系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリアミドイミド樹脂(Tg;200℃以下)、ポリエーテルイミド樹脂(Tg;200℃以下)、ポリスルホン樹脂などが挙げられる。好ましくは環状オレフィン系樹脂であり、さらに好ましくはノルボルネン系樹脂である。また、剥離層の材料は、これら樹脂を主成分とする共重合樹脂、または、混合体(アロイを含む)であっても良い。環式構造を含有する環状オレフィン系樹脂としては、例えば、(a)ノルボルネン系重合体、(b)単環の環状オレフィン重合体、(c)環状共役ジエン系重合体、(d)ビニル脂環式炭化水素重合体、及び(a)〜(d)の水素化物等が挙げられる。これらの中でも、耐熱性及び機械的強度に優れること等から、ノルボルネン系重合体水素化物、ビニル脂環式炭化水素重合体及びその水素化物が好ましく、ノルボルネン系重合体の水素化物がより好ましい。
【0017】
(剥離層の形成)剥離層13は、必要に応じて、基材11の一方の面へ設ける。剥離層13の形成は、該樹脂を溶媒へ分散又は溶解して、ロールコート、リバースロールコート、グラビアコート、リバースグラビアコート、バーコート、ロッドコ−トなどの公知の印刷又はコーティング方法で、少なくとも1部に塗布し乾燥して塗膜を形成したり、押出しコーティング法で皮膜を形成したりすれば良い。また、要すれば、温度30℃〜120℃で加熱乾燥、あるいはエージング、または電離放射線を照射して架橋させてもよい。
剥離層13の厚さとしては、通常は0.01μm〜5.0μm程度、好ましくは0.5μm〜3.0μm程度である。該厚さは薄ければ薄い程良いが、0.1μm以上であればより良い成膜が得られて剥離力が安定する。
【0018】
(レリーフ形成層)熱圧法に用いるレリーフ形成層15の材料としては、ポリ塩化ビニル、アクリル樹脂(例、ポリメチルメタアクリレート)、ポリスチレン、ポリカーボネート等の熱可塑性樹脂、そして、不飽和ポリエステル、メラミン、エポキシ、ウレタンなどの熱硬化性樹脂を硬化させたもの、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリオール(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、トリアジン系アクリレート等の電離放射線硬化性樹脂を硬化させたもの、或いは、上記熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂、もしくは、電離放射線硬化性樹脂の混合物が使用可能である。特に耐薬品性、耐光性及び耐候性等の耐久性に優れた熱硬化性樹脂、紫外線や電子線などの電離放射線で硬化する硬化性樹脂が好ましい。好ましくは、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート等の電離放射線硬化性樹脂を硬化させたものが適用でき、特に好ましくはウレタン変性アクリレート樹脂である。
【0019】
レリーフ形成層15の好ましい1つとしては、一般式(a)で表されるウレタン変性アクリル系樹脂を主成分とする未硬化の電離放射線硬化性樹脂組成物を硬化させた硬化物である。具体的には、本出願人が特開2000−273129号公報で開示している光硬化性樹脂組成物などが適用でき、前記明細書に記載の光硬化性樹脂組成物を「電離放射線硬化性樹脂組成物S」と呼称する。
【0020】
【化1】

(ここで、6個のR1は夫々互いに独立して水素原子またはメチル基を表わし、R2は炭素数が1〜20個の炭化水素基を表わす。l、m、n、o及びpの合計を100とした場合に、lは20〜90、mは0〜80、nは0〜50、o+pは10〜80、pは0〜40の整数である。XおよびYは直鎖状または分岐鎖状のアルキレン基を表わし、Zはウレタン変性アクリル樹脂を改質するための基を表し、好ましくは嵩高い環状構造の基を表わす。)
【0021】
レリーフ形成層15の好ましい他の1つとしては、融点が40℃以上のイソシアネート化合物と、イソシアネート基と反応し得る(メタ)アクリル化合物との反応生成物であって、軟化点が40℃以上のものを含有する樹脂である。
【0022】
即ち、(1)融点が40℃以上のイソシアネート化合物と、(メタ)アクリロイル基を有していて且つイソシアネート基と反応し得る(メタ)アクリル化合物との反応生成物であって、軟化点が40℃以上のものを含有するか、(2)融点が40℃以上のイソシアネート化合物と、(メタ)アクリロイル基を有していて且つイソシアネート基と反応し得る(メタ)アクリル化合物及び(メタ)アクリロイル基を有しておらず且つイソシアネート基と反応し得る化合物との反応生成物であって、軟化点が40℃以上のものを含有する電離放射線硬化性樹脂の硬化物である。また、イソシアネート化合物が、非芳香族性炭化水素環に結合したイソシアネート基を有するもの、イソホロンジイソシアネートの三量体、又はイソホロンジイソシアネートと活性水素含有化合物との反応生成物であり、さらに、(メタ)アクリル化合物が、(メタ)アクリル酸、水酸基を有する(メタ)アクリレートであることが好ましい。具体的には、特開2001−329031号公報で開示されている光硬化性樹脂が適用でき、電離放射線硬化性組成物Mと呼称する。
【0023】
(レリーフ形成層の形成)レリーフ形成層15を設ける方法としては、前述した材料、例えば、ウレタン変性アクリル系樹脂の電離放射線硬化性樹脂には、必要に応じて、光重合開始剤、光増感剤、光重合促進剤、多官能のモノマーやオリゴマー、離型剤、重合防止剤、粘度調節剤、界面活性剤、消泡剤等の各種助剤、また、シリコーン、スチレン−ブタジエンラバー等の高分子体などを配合してもよく、これらを有機溶媒へ溶解又は分散させるか、又は溶媒を加えずノンソルベント状の、レリーフ形成層15組成物(インキ)とする。該レリーフ形成層15組成物(インキ)を、例えば、ロ−ルコ−ト法、グラビアコ−ト法、その他公知のコーティング法又は印刷法で、塗布し、必要に応じて乾燥すればよい。該レリーフ形成層15の厚さは、通常は0.1〜10μm程度、好ましくは0.2〜5μm、さらに好ましくは0.5〜2μmである。0.5μm未満では光輝性(輝度)が著しく低下し、2μmを超えても輝度は十分であり、コスト的に不利である。
【0024】
(レリーフ)レリーフ形状は凹凸形状であり特に限定されるものではないが、微細な凹凸形状を有する光拡散、光散乱、光反射、光回折などの機能を発現するものが好ましく、例えば、フーリエ変換やレンチキュラーレンズ、光回折パターン、モスアイ、が形成されたものである。また、光回折機能はないが、特異な光輝性を発現するヘアライン柄、マット柄、万線柄、干渉パターン、なし地柄などでもよい。光回折凹凸パターンとしては、物体光と参照光との光の干渉による干渉縞が凹凸模様で記録されたホログラムや回折格子が適用できる。ホログラムとしては、フレネルホログラム等のレーザ再生ホログラム、及びレインボーホログラム等の白色光再生ホログラム、さらに、それらの原理を利用したカラーホログラム、コンピュータジェネレーティッドホログラム(CGH)、ホログラフィック回折格子などがある。
【0025】
回折格子としては、ホログラム記録手段を利用したホログラフィック回折格子があげられ、その他、電子線描画装置等を用いて機械的に回折格子を作成することにより、計算に基づいて任意の回折光が得られる回折格子をあげることもできる。また、機械切削法でもよい。これらのホログラム及び/又は回折格子の単一若しくは多重に記録しても、組み合わせて記録しても良い。これらの原版は公知の材料、方法で作成することができ、通常、感光性材料を塗布したガラス板を用いたレーザ光干渉法、電子線レジスト材料を塗布したガラス板に電子線描画法、機械切削法などが適用できる。
【0026】
(レリ−フの賦型)該レリーフ形成層15面へ上記のレリーフ形状を賦形(複製とも呼称する)する。熱圧法での賦形は、レリーフ形成層15の表面に、レリーフが形成されているスタンパ(金属版、又は樹脂版)を圧着(所謂エンボス)をして、該レリーフをレリーフ形成層15へ賦型し複製した後に、スタンパを剥離することで行う。商業的複製の方法は、金型又は樹脂型のスタンパを用いて、レリーフ形成層15の表面へエンボスしてレリーフを複製した後に電離放射線を照射するか、又は、エンボス中に電離放射線を照射してからスタンパを剥離することでレリーフを複製する。この商業的な複製は、長尺状で行うことで連続な複製作業ができる。また、シリンダーにスタンパをとりつけたり、シリンダーに直接レリーフを刻むなどして作製されたシリンダー状のスタンパを用いて、より商業的にレリーフを複製することができる。
【0027】
(レリーフの硬化)レリーフ形成層15として電離放射線硬化性樹脂を用いた場合には、スタンパでエンボス中、又はエンボス後に、電離放射線を照射して、電離放射線硬化性樹脂を硬化させる。上記の電離放射線硬化性樹脂は、レリーフを形成後に、電離放射線を照射して硬化(反応)させると電離放射線硬化樹脂(レリーフ形成層15)となる。電離放射線としては、電磁波が有する量子エネルギーで区分する場合もあるが、本明細書では、すべての紫外線(UV‐A、UV‐B、UV‐C)、可視光線、ガンマー線、X線、電子線を包含するものと定義する。従って、電離放射線としては、紫外線(UV)、可視光線、ガンマー線、X線、または電子線などが適用できるが、紫外線(UV)が好適であり、波長300〜400nmの紫外線が最適である。電離放射線で硬化する電離放射線硬化性樹脂は、紫外線硬化の場合は光重合開始剤、及び/又は光重合促進剤を添加し、エネルギーの高い電子線硬化の場合は添加しないで良く、また、適正な触媒が存在すれば、熱エネルギーでも硬化できる。レリーフ形成層15として、熱硬化性樹脂を用いた場合には、使用する熱硬化性樹脂の硬化条件に応じた温湿度環境下で、エージングを行い硬化させればよい。
【0028】
(反射層)反射層17Aは、所定のレリーフ構造を設けたレリーフ形成層15面のレリーフ面へ、反射層17Aへ設けることにより、レリーフの反射及び/又は回折効果を高めるので、レリーフ形成層15の反射率のより高れば、特に限定されなず、例えば金属、または屈折率に差のある透明金属化合物が適用できる。
【0029】
該反射層17に用いる金属としては、金属光沢を有し光を反射する金属元素の薄膜で、Cr、Ni、Ag、Au、Al等の金属、及びその酸化物、硫化物、窒化物等の薄膜を単独又は複数を組み合わせてもよい。上記の光反射性の金属薄膜の形成は、いずれも10〜2000nm程度、好ましくは20〜1000nmの厚さになるよう、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などの真空薄膜法で得られるが、その他、メッキなどによっても形成できる。反射層17の厚さがこの範囲未満では、光がある程度透過して効果が減じ、また、それ以上では、反射効果は変わらないので、コスト的に無駄である。
【0030】
また、透明な反射層17として、ほぼ無色透明な色相で、その光学的な屈折率がレリーフ形成層のそれとは異なることにより、金属光沢が無いにもかかわらず、ホログラムなどの光輝性を視認できるから、透明なホログラムなどの光輝性フィルムを作製することができる。例えば、レリーフ形成層15よりも光屈折率の高い薄膜、および光屈折率の低い薄膜とがあり、前者の例としては、ZnS、TiO2、Al23、Sb23、SiO、SnO2、ITO等があり、後者の例としては、LiF、MgF2、AlF3がある。またアルミニウム等の一般的な光反射性の金属薄膜も、厚みが200Å以下になると、透明性が出て使用できる。透明金属化合物の形成は、金属の薄膜と同様、レリーフ形成層15のレリーフ面に、10〜2000nm程度、好ましくは20〜1000nmの厚さになるよう、蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング、CVDなどの真空薄膜法などにより設ければよい。さらには、レリーフ形成層15と光の屈折率の異なる透明な合成樹脂を使用してもよい。
【0031】
(染料バリア層)染料バリア層17Bは、反射層17Aと同一であり、染料バリア層17Bを反射層17Aと読み替えればよいので、反射層17Aの説明で兼ねる。
このように、染料バリア層17Bと反射層17Aは同一であり、2つの機能の該薄膜を1層で設けることができるので、製造が容易で、低コストでもある。
該薄膜は、水蒸気や酸素などのバリア性に優れ、染料に対してもバリア性が高く、該染料高バリア性のために、印画時の加熱による染料層中の昇華性染料が基材側への拡散が防止できるので、昇華して被転写体へ移行する染料の量が増加し、その結果、熱転写画像の色濃度が高くすることができるのである。
【0032】
(接着層)接着層19は熱で溶融又は軟化して接着する熱接着型接着剤が適用でき、例えば、アイオノマー樹脂、酸変性ポリオレフィン系樹脂、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ビニル系樹脂、アクリル系・メタクリル系などの(メタ)アクリル系樹脂、アクリル酸エステル系樹脂、マレイン酸樹脂、ブチラール系樹脂、アルキッド樹脂、ポリエチレンオキサイド樹脂、フェノール系樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、メラミン−アルキッド樹脂、セルロース系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリビニールエーテル樹脂、シリコーン樹脂、ゴム系樹脂などが適用でき、これらの樹脂を単独または複数を組み合せて使用する。これらの接着層19の樹脂は、接着力などの点で、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ブチラール系樹脂、ポリエステル系樹脂が好ましい。さらに好ましくは、接着性の点で、マレイン酸−塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体である。
【0033】
接着層19の厚さは、通常は0.05〜10μm程度、好ましくは0.1〜5μmである。接着層19の厚さは、この範囲未満では被転写体との接着力が不足して脱落し、また、その以上では、接着効果は十分でその効果は変わらないのでコスト的に無駄であり、さらには、サーマルヘッドの熱を無駄に消費してしまう。さらにまた、接着層19へは、必要に応じて、充填剤、可塑剤、着色剤、帯電防止剤などの添加剤を、適宜加えてもよい。
【0034】
(背面層)また、基材11の他方の面へ背面層41を設けてもよい。背面層41は、耐熱性のある熱可塑性樹脂バインダーと、熱離型剤または滑剤のはたらきをする物質とを、基本的な構成成分とする。耐熱性のある熱可塑性樹脂バインダーとしては、広い範囲から選ぶことが出来るが、好適な例をあげれば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン−マレイン酸共重合体、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、酢酸セルロース、フッ化ビニリデン樹脂、ナイロン、ポリビニルカルバゾール、塩化ゴム、環化ゴム及びポリビニルアルコールがある。上記の熱可塑性樹脂に配合する、熱離型剤まはた滑剤は、ポリエチレンワックス、パラフィンワックスの様なワックス類、高級脂肪酸のアミド、エステル又は塩類、高級アルコール及びレシチン等のリン酸エステル類ような加熱により溶融してその作用をするものと、フッ素樹脂や無機物質の粉末のように、固体のままで役立つものとがある。
【0035】
背面層41の形成は、ロールコート、リバースロールコート、グラビアコート、リバースグラビアコート、スクリーンコート、ファウンテンコート等の公知のコーティング法で、塗布し、乾燥すればよい。背面層41の厚さは0.01〜1.0μm程度、好ましくは0.1〜0.2μmである。このように、背面層41を有する熱転写シート10とすることで、被転写体の対象が拡大し、又は転写(印字、プリント)速度の高速化に伴って、背面層41面からサーマルヘッドで高エネルギーの加熱印字を行なっても、耐熱性が高いので、基体とサーマルヘッドとが熱融着してしまう所謂スティッキングが発生することがない。
【0036】
(染料層)本発明の熱転写シートに設ける染料層31は、染料を任意のバインダーで担持してなる層である。使用する染料としては、熱により、溶融、拡散もしくは昇華移行する染料であって、従来公知の熱転写シートに使用されている染料は、いずれも本発明に有効に使用可能であるが、色相、耐光性、バインダーへの溶解性を考慮して選択する。好ましい染料としては、例えば、ジアリールメタン系、トリアリールメタン系、チアゾール系、メロシアニン等のメチン系、インドアニリン、アセトフェノンアゾメチン、ピラゾロアゾメチン、イミダゾルアゾメチン、イミダゾアゾメチン、ピリドンアゾメチンに代表されるアゾメチン系、キサンテン系、オキサジン系、ジシアノスチレン、トリシアノスチレンに代表されるシアノメチレン系、チアジン系、アジン系、アクリジン系、ベンゼンアゾ系、ピリドンアゾ、チオフェンアゾ、イソチアゾールアゾ、ピロールアゾ、ピラールアゾ、イミダゾールアゾ、チアジアゾールアゾ、トリアゾールアゾ、ジズアゾ等のアゾ系、スピロピラン系、インドリノスピロピラン系、フルオラン系、ローダミンラクタム系、ナフトキノン系、アントラキノン系、キノフタロン系等のものが挙げられる。
【0037】
具体的には、例えば、C.I.(Color Index)ディスパースイエロー51,3,54,79,60,23,7,141、C.I.ディスパースブルー24,56,14,301,334,165,19,72,87,287,154,26,354、C.I.ディスパースレッド135,146,59,1,73,60,167、C.I.ディスパースオレンジ149、C.I.ディスパースバイオレット4,13,26,36,56,31、C.I.ディスパースイエロー56,14,16,29,201、C.I.ソルベントブルー70,35,63,36,50,49,111,105,97,11、C.I.ソルベントレッド135,81,18,25,19,23,24,143,146,182、C.I.ソルベントバイオレット13、C.I.ソルベントブラック3、C.I.ソルベントグリーン3のような染料が用いられる。
【0038】
例えば、シアン染料としては、カヤセットブルー714(日本化薬製、ソルベントブルー63)、フォロンブリリアントブルー−S−R(サンド製、ディスパースブルー354)、ワクソリンAP−FW(ICI製、ソルベントブルー36)、マゼンタ染料として、MS−REDG(三井東圧製、ディスパースレッド60)、マクロレックスバイオレットR(バイエル製、ディスパースバイオレット26)、イエロー染料としてフォロンブリリアントイエローS−6GL(サンド製、ディスパースイエロー231)、マクロレックスイエロー6G(バイエル製、ディスパースイエロー201)等の染料が使用できる。
【0039】
上記の如き染料を担持するための樹脂バインダーとしては、既知のものが使用可能であり、例えばエチルセルロース、エチルヒドロキシセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、酢酸セルロース等のセルロース系樹脂、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、ポリビニルピロリドン等のビニル系樹脂、ポリ(メタ)アクリレート、ポリ(メタ)アクリルアミド等のアクリル系樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル系樹脂等が挙げられ、単独又は混合することにより任意に用いることができる。これらの中ではポリビニルブチラール、ポリビニルアセタールが染料の移行性、熱転写シートとしての保存性の点から好ましい。
【0040】
また、本発明においては、上記バインダー樹脂に代えて次の如き離型性グラフトコポリマーを離型剤又は樹脂バインダーとして用いることができる。これらの離型性グラフトコポリマーはポリマー主鎖にポリシロキサンセグメント、フッ化炭化水素セグメント、フッ化炭素セグメント又は長鎖アルキルセグメントから選択された少なくとも一種の離型性セグメントをグラフト重合させてなるものである。
【0041】
染料層31は、好ましくは上記の如き染料および樹脂バインダーに、さらに必要に応じて各種の添加剤を加え、適当な有機溶剤に溶解、あるいは有機溶剤や水に分散した分散体をグラビア印刷法、スクリーン印刷法、グラビア版を用いたリバースロールコーティング法等の形成手段により前記基材上に塗布、乾燥して染料層を形成することができる。この場合、染料層は1回の塗工により設けてもよいが、2回の塗工で設けてもよい。このように形成することによって、単位面積当たりの染料濃度を高めることが可能となる。また、染料層31の最外層を上記の如き離型性樹脂を含む層とすることにより、印字時に離型性成分が乏しいプラスチックカード等の受像体に印字した場合でも、熱融着することを防止できる。上記の如くして形成した染料層31は0.2〜5.0g/m2、好ましくは0.3〜2.0g/m2程度の塗工量(乾燥時)が適当である。この印刷に際しては単色印刷でもよいが、フルカラー画像が形成できるように、イエロー、マゼンタ、シアンの3色、更にはブラックを加えた4色の多色印刷が好ましい。
【0042】
(保護層転写領域)図2に示すように、熱転写シート10には、保護層転写領域35を面順次に設けてもよい。被転写体の熱転写画像の形成と、保護層の形成(転写)と、光輝性転写層21の形成(転写)とを同時に行うことができる。保護層転写領域35の保護層は、公知のものでよく、例えば、本出願人が特開2003-312151号公報で開示しているものなどが適用できる。
【0043】
(画像形成物)以上説明してきた熱転写シート10を用いて、被転写体へ色濃度の高い熱転写画像を形成し、該熱転写画像面及び/又は熱転写画像面の形成されていない面へ、特異な意匠性とセキュリティ性のある光輝性図柄を形成し、必要に応じて、保護層(図示せず)も形成したものが、図3に図示するような、本発明の画像形成物100である。
【0044】
(被転写体)被転写体100としては、耐磨耗性や耐可塑剤性などの耐久性を必要とする用途であれば特に限定されず、例えば天燃繊維紙、コート紙、トレーシングペーパー、転写時の熱で変形しないプラスチックフイルム、ガラス、金属、セラミックス、木材、布あるいは染料受容性のある媒体等いずれのものでもよい。被転写体の用途は前述した通りであり、好ましくは、更なる意匠性及びセキュリティー性を要求されるものであり、また、該被転写体100の媒体はその少なくとも1部が着色、印刷、その他の加飾が施されていてよい。
【0045】
被転写体への、被転写体への、色濃度の高い熱転写画像の形成、光輝性図柄の形成、必要に応じて保護層の形成方法としては、公知の転写法でよく、例えば、熱刻印によるホットスタンプ(箔押)、熱ロールによる全面又はストライプ転写、サーマルヘッド(感熱印画ヘッド)によるサーマルプリンタ(熱転写プリンタともいう)などの公知の方法が適用できる。好ましくは、サーマルプリンタである。このように、特に、色濃度の高い熱転写画像を形成するための染料層領域と、特異な意匠性とセキュリティ性のある光輝性図柄を形成するための光輝性転写層領域とを同一基材上に、面順次に塗り分けて設ける本発明の熱転写シートを用い、熱転写プリンターに一度セットすれば、色濃度の高い熱転写画像と光輝性図柄とが簡単に形成できる。
【0046】
図3(A)は反射層17A(染料バリア層17Bも同じ)に、AlやSnなどの金属蒸着による不透明な薄膜層を用いた場合で、熱転写画像のない部分に、任意な形状に光輝性図柄を形成(転写)すればよい。図3(B)は反射層17A(染料バリア層17Bも同じ)に、TiO2やSiO2などの透明な薄膜層を用いた場合で、熱転写画像のある部分及び/又はない部分に、任意な形状に光輝性図柄を形成(転写)すればよい。該光輝性図柄は透明であるから、熱転写画像を覆ってしまっても、観察することができる。
【実施例】
【0047】
以下、実施例及び参考例により、本発明を更に詳細に説明するが、これに限定されるものではない。
【0048】
(実施例1)基材11として、厚さ6μmの未処理ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(三菱化学ポリエステルフィルム(株)製、ダイヤホイルK880)を用いて、一方の面に下記組成の背面層用プライマー層組成液を乾燥時0.2g/m2の塗布量になるように塗布および乾燥し、該プライマー層の表面に下記の背面用組成液を乾燥時1.0g/m2になるように塗布、乾燥させた後、60℃で5日間加熱処理を行ない、背面層41を形成した。
・<背面層用プライマー層組成液>
ポリエステル樹脂 10.0部
(ニチゴーポリエスター LP-035;日本合成化学工業(株)製)
メチルエチルケトン 90.0部
・<背面層用組成液>
ポリビニルブチラール樹脂(エスレックBX-1;積水化学工業(株)製)13.6部
ポリイソシアネート硬化剤(タケネートD218;武田薬品工業(株)製)0.6部
リン酸エステル(プライサーフA208S;第一工業製薬(株)製) 0.8部
溶媒(メチルエチルケトン:トルエン=1:1) 85部
次に、背面層の設けられている反対面に、図1に準じた面順次配置で、光輝性転写層領域と、染料層領域とを形成する。グラビア印刷法で、染料層領域に下記のプライマ層組成液を乾燥時0.2g/m2の塗布量になるように塗布および乾燥してプライマー層を形成し、光輝性転写層領域に下記の剥離層組成液を乾燥時0.2g/m2の塗布量になるように塗布および乾燥して剥離層13を形成し、該剥離層13面に、下記のレリ―フ形成層組成液を乾燥時1.5g/m2の塗布量になるように塗布および乾燥してレリーフ形成層15を形成する。
・<プライマ層用組成液>
ポリエステル樹脂(バイロン240;東洋紡績(株)製) 4.4部
溶媒(メチルエチルケトン:トルエン=1:1) 90部
・<剥離層用組成液>
ノルボルネン系樹脂(日本合成ゴム(株)製、アートンG) 40部
アクリルポリオール樹脂 10部
溶媒(メチルエチルケトン:トルエン=2:8) 50部
・<レリーーフ形成層用組成液>
「電離放射線硬化性樹脂組成物M(前述)」 100部
メチルエチルケトン 200部
次に、該レリーフ形成層15面へ、回折格子から2P法で複製したスタンパを複製装置のエンボスローラーに貼着して、相対するローラーと間で加熱プレス(エンボス)して、微細な凹凸パターンからなるレリーフを賦形させた。賦形後直ちに、高圧水銀灯を用いて紫外線を照射して硬化させた。
次に、光輝性転写層領域のレリーフ形成層15のレリーフ面、及び、染料層領域のプライマ層の全面へ、公知の真空蒸着法で厚さが500nmのアルミニウム薄膜を形成した。該薄膜は、光輝性転写層領域では反射層17となり、染料層領域では染料バリア層17Bとなる。
次に、反射層17、及び染料バリア層17B面をコロナ処理を行った。
次に、光輝性転写層領域の反射層17面へ、グラビア印刷法で、下記の接着層組成液を乾燥時1.5g/m2の塗布量になるように塗布および乾燥して接着層19を形成し、染料層領域の染料バリア層17B面へ、下記の染料層組成液を乾燥時0.8g/m2の塗布量になるように塗布および乾燥して染料層31を形成して、実施例1の熱転写シート10を得た。
・<プライマ層用組成液>
ポリエステル樹脂(バイロン240;東洋紡績(株)製) 4.4部
溶媒(メチルエチルケトン:トルエン=1:1) 90部
・<染料層用組成液A>
C.I.ソルベントブルー22 5.5部
ポリビニルアセタール樹脂(エスレックKS−5;積水化学工業(株)製)3.0部
メチルエチルケトン 22.5部
トルエン 68.2部
・<接着層用組成液>
ポリエステル樹脂(バイロン700;東洋紡績(株)製) 69.6部
反応性紫外線吸収剤を反応結合したアクリル共重合体 17.4部
(UVA635L、BASFジャパン社製)
シリカ(サイリシア310、富士シリシア(株)製) 25部
【0049】
(実施例2)レリーフ形成層組成液の組成を下記の如くし、かつ、反射層17(兼染料バリア層17B)の薄膜を公知のスパッタリング法で厚さが100nmの酸化チタン薄膜とする以外は、実施例1と同様にして、熱転写シート10を得た。
・<レリーーフ形成層用組成液>
「電離放射線硬化性樹脂組成物S(前述)」 100部
メチルエチルケトン 200部
【0050】
(比較例1)光輝性転写層領域を設けない以外は、実施例1と同様にして、比較例1の熱転写シートを得た。
【0051】
(評価)実施例1〜2、比較例1の熱転写シート10を用いて、印画機;オリンパス(株)製、デジタルカラープリンタP-200、印画紙;デジタルカラープリンタP-200専用スタンダードセットの印画紙、印画パターン;階調パターンの条件にて、熱転写画像を形成(転写、印画)し、実施例1〜2では、さらに光輝性転写層を転写し、光輝性図柄を形成した。
実施例1〜2の熱転写画像を比較例1の熱転写画像と目視で比較したところ、明らかに色濃度が高く、高品質画像であった。また、実施例1〜2の光輝性図柄も、正常に形成され、特異な意匠性とセキュリティ性を有するものであった。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の1実施例を示す熱転写シートの平面図及び断面図である。
【図2】本発明の1実施例を示す熱転写シートの平面図である。
【図3】本発明の1実施例を示す画像形成物の断面図である。
【符号の説明】
【0053】
10:熱転写シート
11:基材
12:プライマ層
13:剥離層
15:レリーフ形成層
17A:反射層
17B:染料バリア層
19:接着層
21:光輝性転写層
31:染料層
33:光輝性転写層領域
35:保護層転写領域
41:背面層
100:画像形成物
101:被転写体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の一方の面に、少なくとも1色の染料層領域と、光輝性転写層領域とが面順次に設けてなる熱転写シートにおいて、前記染料層領域は基材面に少なくとも染料バリア層、及び染料層が順次積層され、前記光輝性転写層領域は基材面に少なくとも剥離層、光輝性効果を発現するレリーフ形状を有するレリーフ形成層、及び反射層が順次積層されてなることを特徴とする熱転写シート。
【請求項2】
上記染料バリア層と上記反射層とが金属、又は金属化合物の薄膜から構成される同一層で、同一基材面に設けられてなることを特徴とする請求項1記載の熱転写シート。
【請求項3】
上記レリーフ形状がホログラム及び/又は回折格子であることを特徴とする請求項1〜2のいずれかに記載の熱転写シート。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の熱転写シートを用いて、被転写体へ熱転写画像と光輝性図柄を設けてなることを特徴とする画像形成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−223045(P2007−223045A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−43354(P2006−43354)
【出願日】平成18年2月21日(2006.2.21)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】