説明

熱転写プリンタ、転写方法

【課題】熱転写プリンタにおける皺の発生を抑える。
【解決手段】複数の発熱素子62がライン状に設けられたサーマルヘッド13を備えた熱転写ユニット60を備え、当該サーマルヘッド13とプラテン12との間でインクリボン14と共に原反65を挟み込み前記サーマルヘッド13の発熱素子62に通電することによって、インクリボン14の各色インクの画像が印画物に転写される熱転写プリンタ60において、前記サーマルヘッド13の発熱素子62で構成されるヒータラインの幅と、インクリボン14の幅とが同一、若しくは、前記ヒータラインの幅に対するインクリボン14の幅の相違長さが片側1.5%以下の長さで広く規定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の色インクを転写して画像を形成する熱転写ユニットを備えた熱転写プリンタ等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から所定の色インクを転写して画像を形成する熱転写ユニットを備えた熱転写プリンタが知られている。この種の熱転写プリンタは、熱転写ユニットにおいて、インクリボンのフィルム基材と共に転写紙としての印画物をサーマルヘッドとプラテンとで挟み当該フィルム基材のインクに所定の熱量を加えることによって、各色インクが帯状の印画物に転写され画像が形成される。
【0003】
一般に転写紙は、予め規定されたインクが転写される転写範囲と、当該転写範囲外の(インクが転写されない)非転写範囲と、を有しており、転写時において、この転写範囲と非転写範囲との境における熱量差によって基材の伸び率差が生じ、皺を発生することが知られている。
【0004】
また、この非転写範囲に予熱をかけて、皺の発生を防止する熱転写プリンタが知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3197136号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方、上述した熱転写プリンタにおいて、サーマルヘッドの発熱素子の領域外は当然ながら予熱をかけることができず、図5に示すように、当該発熱素子の領域外の予熱を加えることが不可能な範囲を示す非加熱範囲52と非転写範囲54との境界でインクリボンとの伸び率差があると皺55が発生し、その皺55が図5中点線の囲み線で示すように、転写範囲53内にまで影響を及ぼす場合がある。
【0007】
そして、このように発生した皺が非転写範囲54に収まっているうちは(転写範囲53に入り込まなければ)転写不良とならないが、転写範囲53に到達すると転写不良となる。
【0008】
本発明は、このような問題の解消を課題の一つとし、皺の発生を抑え、転写紙に良好な印字を行うことができる熱転写プリンタ等を提供しようというものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明は次のような構成を採用する。なお、本発明の理解を容易にするため括弧付きの符号を付すが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0010】
すなわち、請求項1に係る熱転写プリンタは、複数の発熱素子がライン状に設けられたサーマルヘッドを備えた熱転写ユニットを備え、当該サーマルヘッドとプラテンとの間でインクリボンと共に原反を挟み込み前記サーマルヘッドの発熱素子に通電することによって、インクリボンの各色インクの画像が印画物に転写される熱転写プリンタにおいて、前記サーマルヘッドの発熱素子で構成されるヒータラインの幅と、インクリボンの幅とが同一、若しくは、前記ヒータラインの幅に対するインクリボンの幅の相違長さが片側1.5%以下の長さで広く規定されていることを特徴とする。
【0011】
また、請求項2に記載の熱転写プリンタは、請求項1に記載の熱転写プリンタにおいて、前記ヒータラインの幅とインクリボンの幅とが異なるとき、インクリボンの物性の特性に基づく非加熱範囲と非転写範囲とが同じ伸び率となるように前記インクリボンのテンションを規定値に基づいて高く制御することを特徴とする。
【0012】
また、請求項3に記載の熱転写プリンタの転写方法は、複数の発熱素子がライン状に設けられたサーマルヘッドを備えた熱転写ユニットを備え、当該サーマルヘッドとプラテンとの間でインクリボンと原反を挟み込み前記サーマルヘッドの発熱素子に通電することによって、インクリボンの各色インクの画像が印画物に転写される熱転写プリンタの転写方法において、前記サーマルヘッドの発熱素子で構成されるヒータラインの幅と、インクリボンの幅とが同一、若しくは、前記ヒータラインの幅に対するリボン幅の相違長さが片側1.5%以下の長さで広く規定されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、サーマルヘッドのヒータラインの幅とインクリボンの幅とをほぼ同じにすることで非加熱範囲と非転写範囲の境目から発生する皺を抑え、この皺が原因の転写不良の発生を抑えることができる。また、皺の発生を抑えることにより、転写紙に良好な印字を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】印画を行った後のインクリボンの状態を示し、図1(a)は従来の熱転写プリンタを用いて印画を行った後のインクリボンの状態図、図1(b)は本実施形態の熱転写プリンタを用いて印画を行った後のインクリボンの状態図である。
【図2】熱転写ユニットの一例を示す簡略図である。
【図3】多色熱転写プリンタの一実施形態の概略正面図である。
【図4】多色熱転写プリンタにおける一つの熱転写ユニットの概略正面図である。
【図5】転写不良の状態を示し、図5(a)は非加熱範囲と非転写範囲との境界から皺が発生した状態を示す平面図、図5(b)は発熱素子への熱量の加え方を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の熱転写プリンタの実施の形態について説明する。
【0016】
まず、熱転写プリンタを用いた転写方法について図1及び図2を用いて説明する。図1は印画を行った後のインクリボンの状態を示し、図1(a)は従来の熱転写プリンタを用いて印画を行った後のインクリボンの状態図、図1(b)は本実施形態の熱転写プリンタを用いて印画を行った後のインクリボンの状態図であり、図2は熱転写ユニットの一例を示す簡略図である。
【0017】
熱転写プリンタは、サーマルヘッド13を備えた熱転写ユニット60を備えており、当該サーマルヘッド13には、その走査方向にライン状に配列され解像度分の抵抗を備えた複数の発熱素子62で構成されるヒータラインが設けられている。一例として、図2に示すように、サーマルヘッド13はプラテン12に対面して配置され、当該プラテン12とサーマルヘッド13の間にはサーマルヘッド13側にインクリボン14、プラテン12側に転写紙65としての帯状の連続状転写箔原反7が配置される。
【0018】
そして、サーマルヘッド61の各発熱素子62に所定の電流が通電されることで、各発熱素子62が発熱し、当該各発熱素子62に対応する当該インクリボン14のインクが転写紙65に転写され所定の画像が形成される。
【0019】
ここで、このような熱転写プリンタにおいて、一般的に、サーマルヘッド13のヒータラインは、図2に示すように、インクリボン14の幅よりも短く形成され、当該インクリボン14は、転写紙65の幅よりも短く形成される。これは、インクリボン14の幅がヒータラインの幅よりも狭いと発熱素子62の一部が転写紙65と直接接触し転写紙65の表面を削るなどの不具合を招くこと、また、インクリボン14の幅が転写紙65の幅よりも広いとサーマルヘッド13による熱転写時においてインクリボン14の端部が折れ曲がることで転写紙65に皺が発生する等の不具合を招くことによるものである。
【0020】
なお、以下の説明において、上述したヒータラインによってインクリボン14に熱を加えることが可能な領域を加熱範囲51と称し、インクリボン14に熱を加えることが不可能な領域を非加熱範囲52と称する。なお、本実施形態では、ヒータラインの外側にこの非加熱範囲52が規定されるようになっているが、ヒータラインの内側にこの非加熱範囲52が含まれても構わない。この加熱範囲51は、インクが転写される転写範囲53と、インクが転写されない非転写範囲54と、に規定される。この転写範囲53は、通常、ユーザによって上述したヒータラインの内側に予め設定される。
【0021】
転写範囲53では、インクの転写に必要な電流が発熱素子62に通電されインクリボン14のインクが転写紙65に転写され画像が形成される。一方で、非転写範囲54では、後述するようにインクが転写しない範囲の電流が発熱素子62に通電され、所定の熱量がインクリボン14へと伝達される。
【0022】
皺55は、従来から知られているように、転写範囲53と非転写範囲54との境界で発生するとともに、図5に示すように、非加熱範囲52と非転写範囲54との境界57で発生する。この皺55は、転写範囲53と非転写範囲54、非転写範囲54と非加熱範囲52との境界において、図5(b)に示すような発熱素子への急激な電流変化による熱量変化によって基材の伸び率が異なるために起こる。
【0023】
そこで、この伸び率の急激な変動をなくし皺55の発生を防止すべく、本実施形態の熱転写プリンタでは、図1に示すように、転写紙65の搬送方向に対して直交する幅方向の両端部に有する非加熱範囲52をなくすべく、図2に示すように、サーマルヘッド13のヒータライン(加熱範囲)の幅と、インクリボン14の幅とが略同一となるように熱転写ユニット60を構成する。しかしながら、製品誤差などによるインクリボン14の蛇行などを考慮すれば、前記ヒータラインの幅に対するインクリボンの幅の相違長さΔtが片側
1.5%以下の長さで広く規定されていれば良い。なお、非加熱範囲52が十分狭ければ、非加熱範囲52にかかるテンションの上昇分により伸びて、搬送長差がなくなることを確認しており、種々の実験により、ヒータラインの幅に対するインクリボンの幅の相違長さΔtが片側1.5%以下の長さで広いものであれば、皺の発生を抑えることができるこ
とを確認している。具体的には、ヒータラインの幅が350mmに対しインクリボンの幅が360mmであったとき、皺の発生を抑えることができることを確認している。
【0024】
このようにすれば、そもそも非加熱範囲52が存在しないため、非転写範囲54と非加熱範囲52との境界57に発生していた皺の発生を防止できる。そして、この皺が原因の転写不良の発生を抑えることができる。
【0025】
さらに、ヒータラインの幅とインクリボン14の幅とが異なるとき、インクリボン14の物性の特性に基づく非加熱範囲52と非転写範囲54とが同じ伸び率となるように前記インクリボン14の巻上げテンションを規定値に基づいて高く制御することが好ましい。このようにすれば、非加熱範囲52と非転写範囲54との境界で伸び率が変化しないので、皺の発生を防止できる。
【0026】
また、転写範囲53と非転写範囲54との境界で発生する皺を防止すべく、本実施形態の熱転写プリンタでは、転写紙65の非転写範囲54に、インクが転写しない範囲で発熱素子62に通電される電流の大きさを連続的に変化させるように制御している。この発熱素子62に通電される電流の大きさは、非転写範囲54に対応する前記発熱素子62に通電され、前記サーマルヘッド13の両端に向かって連続的に減少するように制御され、更には、転写範囲53に対応する前記発熱素子62に通電される電流値未満(インクが転写される電流の大きさ未満)となるように制御される。このようにすれば、転写範囲53と非転写範囲54との境界、及び非加熱範囲52と非転写範囲54との境界で急激に熱量が変化しないため基材同士の伸び率の差も少なくすることができ、皺55の発生を防止できる。そして、この皺が原因の転写不良の発生を抑えることができる。
【0027】
次に、本実施形態の熱転写プリンタについて説明する。なお、以下に説明する熱転写プリンタは、各々所定の色インクの画像を印画物に転写する複数個の熱転写ユニットを備えた多色熱転写プリンタを一例として説明するが、一般に熱転写プリンタと称される他のプリンタにも適用することが可能である。
【0028】
図3に示すように、この多色熱転写プリンタは、各々所定の色インクの画像を転写紙としての連続状転写箔原反7に転写する複数個の熱転写ユニットI,II,III,IVが、直列で配列されることにより構成される。
【0029】
連続状転写箔原反7の多色熱転写プリンタ内における流れ方向に見て、上流側には未転写の連続状転写箔原反7を繰り出す繰り出しロール7aが設置され、下流側には既転写の連続状転写箔原反7を巻き取る巻き取りロール7bが設置される。繰り出しロール7aと巻き取りロール7bの各巻芯には、各々ベクトルインバータモータ24,25の回転軸が連結される。両ロール7a,7bは、連続状転写箔原反7が両ロール7a,7b間を所定速度で走行するようにベクトルインバータモータ24,25によって回転を制御される。
【0030】
熱転写ユニットI,II,III,IVは、上記繰り出しロール7aと上記巻き取りロール7bとの間において、連続状転写箔原反7の上流側から下流側に向かって、藍、赤、黄、下地色としての白の各色インクを刷るように並べられる。もちろん、この熱転写ユニットI,II,III,IVの配列は、藍、赤、黄、白の順に限られるものではない。また、四ユニットに限られるものでもなく、三色刷りの三ユニット、二色刷りの二ユニットにしてもよいし、他の色インクをさらに転写することができるようにユニットを四基からさらに増設してもよい。
【0031】
図4に示すように、藍色インクの熱転写ユニットIには、水平方向に走行する連続状転写箔原反7を上方向に迂回させるためのガイドローラ10,11が設けられる。これらガイドローラ10,11の上方には、迂回する連続状転写箔原反7を走行させるプラテン12が配置される。プラテン12の上方には、サーマルヘッド13がプラテン12に対向するように配置される。プラテン12とサーマルヘッド13との間には藍色のインクリボン14が配置される。
【0032】
プラテン12は、表面がゴムで覆われたロールである。
【0033】
図4に示すように、プラテン12とサーマルヘッド13との間を通る連続状転写箔原反7を、サーマルヘッド13の前後でプラテン12に対して各々押圧するニップローラ15,15が必要に応じて設けられる。このニップローラ15,15により連続状転写箔原反7がプラテン12の表面に押し付けられることによって、連続状転写箔原反7とプラテン12との間での滑りが防止される。これにより、画像がより精細、美麗に転写されることとなる。
【0034】
また、本実施形態の多色熱転写プリンタは、プラテン12を加温する加温手段を備えている。この加温手段には、例えば、図4に示すように、遠赤外線ヒータ16が用いられ、この遠赤外線ヒータ16は、プラテン12の下方に設置される。この遠赤外線ヒータ16は、この多色熱転写プリンタが転写を開始する前にプラテン12が所定の温度(好ましくは連続転写時の飽和温度)に加温制御される。プラテン12はその表面がゴムでできているため、転写し続けることにより蓄熱し、径が変動し、それに伴い連続状転写箔原反7の走行速度が変化するが、この加温手段によってプラテン12をあらかじめ連続転写時の飽和温度まで加温しておくことによって、そのような不都合を解消することができる。
【0035】
なお、本実施形態では、加温手段として遠赤外線ヒータ16を用いたが、特にこの形態に限られるものではなく、公知の技術を用いることが可能である。
【0036】
サーマルヘッド13は、垂直方向に上下に移動可能であり、画像を転写する際には、インクリボン14をプラテン12に向かって押し付けるようになっている。
【0037】
このサーマルヘッド13は、その走査方向にライン状に配列され解像度分の抵抗を備えた複数の発熱素子を備えている。そして、図示しない制御部によってサーマルヘッド13の各発熱素子に所定の電流値で通電されるように制御され、各発熱素子に対応する当該インクリボン14のインクが連続状転写箔原反7に転写されることで所定の転写画像を形成するためのインク層6が形成される。
【0038】
また、本実施形態の多色熱転写プリンタでは、皺の発生を防止すべく、転写範囲53へのインク転写時において、連続状転写箔原反7の非転写範囲54には、インクが転写しない範囲で前記サーマルヘッド13の各発熱素子に通電される電流値が制御されるようになっている。
【0039】
図2に示すように、熱転写ユニット60は、サーマルヘッド13の発熱素子62で構成されるヒータラインの幅と、インクリボン14の幅とが略同一となるように構成される。しかしながら、製品誤差などによるインクリボンの蛇行などを考慮すれば、前記ヒータラインの幅に対するインクリボンの幅が片側1.5%以下の長さで広く規定されても構わない。
【0040】
このようにすれば、そもそも非転写範囲54が存在しないため、非転写範囲54と非加熱範囲52との境界57に発生していた皺の発生を防止できる。そして、この皺が原因の転写不良の発生を抑えることができる。
【0041】
また、本実施形態の多色熱転写プリンタでは、転写範囲53と非転写範囲54との境界で発生する皺の発生を防止すべく、転写範囲53へのインク転写時において、連続状転写箔原反7の非転写範囲54には、インクが転写しない範囲で前記サーマルヘッド13の各発熱素子に通電される電流値が制御されるようになっている。
【0042】
この発熱素子に通電される電流の大きさは、非転写範囲54において、サーマルヘッド13の両端部へ向かって、走査方向の1ラインにおける熱量が連続的に減少するように制御される。
【0043】
また、この発熱素子に通電される電流の大きさは、前記連続状転写箔原反7の転写範囲53に通電される電流値未満で連続的に変化するようにして制御される。
【0044】
このようにすれば、転写範囲53と非転写範囲54との境界で急激に熱量が変化しないため基材同士の伸び率の差も少なくすることができ、皺の発生を防止できる。そして、この皺が原因の転写不良の発生を抑えることができる。
【0045】
また、本実施形態の多色熱転写プリンタは、サーマルヘッド13を加温する加温手段を備えている。本実施形態の加温手段は、図示しないが、転写前にサーマルヘッド13が所定の温度(連続転写時の飽和温度)まで加温制御され、サーマルヘッド13周辺の温度とプラテン12周辺の温度とがほぼ一定に保たれるように制御される。なお、このようなサーマルヘッド13を加温する加温手段は、従来から公知の他の加温手段を適用することができる。
【0046】
ところで、図4に示すように、藍色インクの熱転写ユニットIにおけるインクリボン14は、連続状フィルム等の表面に藍色インクが塗布されてなるもので、その繰り出しロール14aと巻き取りロール14bが、プラテン12及びサーマルヘッド13を連続状転写箔原反7の上流側と下流側から挟むように配置される。インクリボン14の繰り出しロール14aと巻き取りロール14bは、転写時において、インクリボン14がプラテン12の回りを連続状転写箔原反7と同じ速度で走行するように制御される。
【0047】
プラテン12が回転すると、連続状転写箔原反7がプラテン12の周速度と同じ一定速度でプラテン12とサーマルヘッド13との間をインクリボン14と重なった状態で通過しつつ、その表面に藍色インクの画像が熱転写される。
【0048】
藍色インクの熱転写ユニットIは、以上のように構成されるが、他の色インクの熱転写ユニットII,III,IVも同様に構成される。ただ、インクリボン14のインクの色が異なるのみである。従って、他の色インクの熱転写ユニットII,III,IVについての詳細な説明は省略する。
【0049】
連続状転写箔原反7は各色の熱転写ユニットI,II,III,IVのプラテン12によって各ユニットI,II,III,IV内のサーマルヘッド13下を互いに同一の一定速度で走行するが、その状態で転写を続行すると、連続状転写箔原反7の張力が徐々に変化し、これが色ずれの発生の原因となる。張力が低すぎると連続状転写箔原反7が弛んで蛇行や転写開始時の位置ずれの原因となり、張力が高すぎるとフィルムが駆動ローラとの間でスリップして正常に搬送されなくなる。
【0050】
これを防止するために、図3に示すように、所定箇所、例えば連続状転写箔原反7の繰り出しロール7aと先頭の熱転写ユニットIとの間や、後尾の熱転写ユニットIVと巻き取りロール7bとの間に、張力検出器18及び張力調整ローラ19a,19bが各々設けられる。
【0051】
張力調整ローラ19a,19bの一方には例えばサーボモータ23が接続される。張力検出器18により検出された張力と適正張力とのズレは図示しない他の制御部を介しサーボモータ23に送られるようになっている。このサーボモータ23の制御された駆動力が張力調整ローラ19bに伝達されることによって、連続状転写箔原反7は張力が一定に保たれつつ上記複数個の熱転写ユニットI,II,III,IVを通過し、色ずれのない画像が転写される。
【0052】
また、張力検出器18は、上記連続状転写箔原反7の繰り出しロール7aと巻き取りロール7bを各々回転させるベクトルインバータモータ24,25に対しても設けられる。この張力検出器18により検出された張力と適正張力とのズレも上記図示しない他の制御部を介しベクトルインバータモータ24,25に送られる。このベクトルインバータモータ24,25の制御された駆動力が繰り出しロール7aと巻き取りロール7bに各々伝達されることによって、連続状転写箔原反7は張力が一定に保たれる。
【0053】
次に、上記多色熱転写プリンタの動作等について図3を用いて説明する。
【0054】
転写の開始にあたり、上述したようにプラテン12の加温手段、サーマルヘッド13の加温手段の両方を用いて、プラテン12やサーマルヘッド13を連続転写時の飽和温度まで加温制御する。このようにすれば、サーマルヘッド13やプラテン12、及び周囲の構造体に徐々に熱が溜まることにより伸び率差が発生することを防止するとともに、長時間の転写でもサーマルヘッド13やプラテン12の温度変動を抑制することで、良品率を安定させることができる。
【0055】
また、連続状転写箔原反7の巻き取りロール7aと繰り出しロール7bとが各々のベクトルインバータモータ24,25の駆動によって回転し、連続状転写箔原反7が各色の熱転写ユニットI,II,III,IV内を走行する。
【0056】
また、各色の熱転写ユニットI,II,III,IV内では、プラテン12が速度一定制御式サーボモータの駆動によって一定速度で回転しつつ連続状転写箔原反7をその上流側から下流側へと送る。その際プラテン12上にサーマルヘッド13がインクリボン14を連続状転写箔原反7に押し付け、該当する色インクを画像として連続状転写箔原反7に転写させる。
【0057】
なお、各色インクを転写させる際において、この転写範囲53の搬送方向両端部に有する非転写範囲54に対応する前記サーマルヘッド13の各発熱素子には、インクが転写しない範囲の電流値を通電し、さらには、発熱端子端に向かって連続的に(徐々に)電流値が減少するように熱転写ユニットI〜IVを制御する。
【0058】
また、各色の熱転写ユニットI,II,III,IVにおける全プラテン12は、制御部17による速度一定制御式サーボモータ22の制御によって同一の一定速度で回転することから、連続状転写箔原反7には各色の画像がずれることなく刷り重ねられる。
【0059】
全色が刷られることにより画像が形成された連続状転写箔原反7は巻き取りロール7bに巻き取られる。
【0060】
上記転写が続行されると、連続状転写箔原反7の張力が徐々に変化する可能性がある。そこで、転写中張力検出器18により連続状転写箔原反7の張力が検出され、適正張力と比較されたうえでズレを解消するための信号が図示しない制御部を介しベクトルインバータモータ24,25やサーボモータ23に送られる。
【0061】
このベクトルインバータモータ24,25やサーボモータ23の制御された駆動力が張力調整ローラ19aや繰り出しロール7a、巻き取りロール7bに伝達されることにより、連続状転写箔原反7は張力が一定に保たれつつ上記複数個の熱転写ユニットI,II,III,IVを通過し、これにより、色ずれのない精細かつ美麗な画像が転写される。
【符号の説明】
【0062】
I,II,III,IV…熱転写ユニット
7…連続状転写箔原反
12…プラテン
13…サーマルヘッド
14…インクリボン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の発熱素子がライン状に設けられたサーマルヘッドを備えた熱転写ユニットを備え、当該サーマルヘッドとプラテンとの間でインクリボンと共に原反を挟み込み前記サーマルヘッドの発熱素子に通電することによって、インクリボンの各色インクの画像が印画物に転写される熱転写プリンタにおいて、
前記サーマルヘッドの発熱素子で構成されるヒータラインの幅と、インクリボンの幅とが同一、若しくは、前記ヒータラインの幅に対するインクリボンの幅の相違長さが片側1.5%以下の長さで広く規定されていることを特徴とする熱転写プリンタ。
【請求項2】
前記ヒータラインの幅とインクリボンの幅とが異なるとき、インクリボンの物性の特性に基づく非加熱範囲と非転写範囲とが同じ伸び率となるように前記インクリボンのテンションを規定値に基づいて高く制御することを特徴とする請求項1に記載の熱転写プリンタ。
【請求項3】
複数の発熱素子がライン状に設けられたサーマルヘッドを備えた熱転写ユニットを備え、当該サーマルヘッドとプラテンとの間でインクリボンと原反を挟み込み前記サーマルヘッドの発熱素子に通電することによって、インクリボンの各色インクの画像が印画物に転写される熱転写プリンタの転写方法において、
前記サーマルヘッドの発熱素子で構成されるヒータラインの幅と、インクリボンの幅とが同一、若しくは、前記ヒータラインの幅に対するリボン幅の相違長さが片側1.5%以下の長さで広く規定されていることを特徴とする転写方法。

【図2】
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【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−158033(P2012−158033A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−18240(P2011−18240)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】