説明

熱転写プリンター

【課題】本発明は、低コストで高い冷却能力を有する熱転写プリンターの提供を目的とする。
【解決手段】本発明の熱転写プリンターは、プリント用紙8に搬送力を付与する用紙搬送ローラー5と、用紙搬送ローラー5に回転駆動力を付与する用紙搬送モーター1と、プリント用紙8にインクを熱転写するサーマルヘッド13と、サーマルヘッド13に一体に取り付けられ、サーマルヘッド13を放熱するヒートシンク12と、ヒートシンク12を冷却する冷却ファン11と、用紙搬送モーター1の回転駆動力を冷却ファン11に伝達する駆動力伝達機構を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱転写プリンターに関し、特に、サーマルヘッドの温度上昇を効率的に抑制する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の熱転写(昇華型、サーマル)プリンターでは、インクリボンとして巻かれたフィルム状のインクシートと、ロール紙およびカット紙といった専用用紙を、プラテンローラーとサーマルヘッドのヒーターラインとで挟み込んで圧着し、用紙上にインク染料を熱転写(昇華)させることで一枚の印画物を作成する。
【0003】
この際、インク染料の熱転写に寄与しないサーマルヘッドの熱が蓄熱することによりサーマルヘッドの温度が上昇し、ある一定以上の温度に達すると高温状態に起因する印画不良(濃度ムラ、尾引き、シワ)が発生する。そのため、サーマルヘッドの熱をいかに短時間で効率的に除去するかが、熱転写プリンターにおける重要な技術課題の1つとなっている。
【0004】
このような観点から、これまでに、サーマルヘッドで発熱した熱をすばやく放熱する手段として種々の方法が提案されている。その従来技術の一例として、特許文献1に示す技術では、アルミなどで構成される放熱フィンの代わりに、ヒートパイプをサーマルヘッドの基板部と一体に形成し、ヒートパイプの底面をサーマルヘッドの作用面となるように構成している。一方で、ヒートパイプには放熱フィンを取付けることにより熱輸送の効率を高め、結果として放熱効率を改善している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2936584号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1で示されている、ヒートパイプとサーマルヘッドを一体に形成する方法によれば、サーマルヘッドの取り付け面がヒートパイプとなるため、アルミなどで構成される放熱フィンに比較して取り付け面の良好な平坦度が得にくく、これに起因する印画不良が発生する。
【0007】
また、ヒートパイプを効率的に使うためには、加熱部より放熱部を上に配置する必要があり、アルミなどで構成される放熱フィンに比較してサーマルヘッドのレイアウトに制約が発生する。
【0008】
また、ヒートパイプによりサーマルヘッドの余分な熱の熱輸送効率を高めたとしても、熱輸送後の熱を冷却するための冷却能力を増大させることが重要な課題となる。
【0009】
一方で、冷却能力を向上させる手段としては、冷却ファンの数を増やして最大風量や静圧を増加させる方法が一般的であるが、冷却ファンの追加によるコスト及び消費電力の増大といった問題点がある。
【0010】
そこで、本発明は上述の問題点に鑑み、低コストで高い冷却能力を有する熱転写プリンターの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の熱転写プリンターは、プリント用紙に搬送力を付与する用紙搬送ローラーと、前記用紙搬送ローラーに回転駆動力を付与する用紙搬送モーターと、前記プリント用紙にインクを熱転写するサーマルヘッドと、前記サーマルヘッドに一体に取り付けられ、前記サーマルヘッドを放熱するヒートシンクと、前記ヒートシンクを冷却する冷却ファンと、前記用紙搬送モーターの回転駆動力を前記冷却ファンに伝達する駆動力伝達機構を備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明の熱転写プリンターは、用紙搬送モーターの回転駆動力を冷却ファンに伝達する駆動力伝達機構を備えるので、専用モーターを設けることなく冷却ファンを駆動することができ、低コストな熱転写プリンターとなる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施の形態1に係る熱転写プリンターの構成図である。
【図2】実施の形態1に係る熱転写プリンターの印画動作を説明する図である。
【図3】実施の形態1に係る熱転写プリンターの用紙戻し動作を説明する図である。
【図4】実施の形態2に係る熱転写プリンターの要部を示す構成図である。
【図5】実施の形態2に係る熱転写プリンターの要部を示す構成図である。
【図6】実施の形態3に係る熱転写プリンターの要部を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(実施の形態1)
<構成>
図1は、実施の形態1に係る熱転写プリンターの構成図である。本実施の形態に係る熱転写プリンターでは、用紙搬送ローラー5とピンチローラー4が対になってプリント用紙8を挟み込み、これらの回転によりプリント用紙8が搬送される。用紙搬送ローラー5の端部には用紙搬送ローラー駆動ギア3が設けられており、用紙搬送ローラー駆動ギア3と用紙搬送ローラー5は一体となって回転する。用紙搬送ローラー駆動ギア3にはベルト2を介して用紙搬送モーター1の回転駆動力が与えられる。すなわち、用紙搬送モーター1が回転すると、その回転方向に従って用紙搬送ローラー5が回転する。
【0015】
また、熱転写プリンターはプリント用紙8にインクを熱転写するサーマルヘッド13を備える。サーマルヘッド13は、プラテンローラー15と対になってプリント用紙8とインクシート14を挟み込み、インクシート14に熱を供給して、インクシート14上の染料をプリント用紙8上に熱転写する。なお、インクシート14はサーマルヘッド13の前後でインクリボンとして巻かれた状態にある。
【0016】
サーマルヘッド13の上には、サーマルヘッド13に蓄積した熱を放熱するヒートシンク12が設けられている。ヒートシンク12から放射された熱は冷却ファン11により冷却される。
【0017】
また、本実施の形態の熱転写プリンターは、用紙搬送モーター1の回転駆動力を冷却ファン11に伝達する駆動力伝達機構を備えている。駆動力伝達機構は、アイドルギア6、遊星ギア7、第1駆動ギア列9及び第2駆動ギア列10を備えている。第1、第2駆動ギア列9,10はそれぞれ複数のギアで構成されるが、図1ではギア列のうち両端のギアのみを図示し、残りは点線により省略して示す(後の図においても同様)。なお、こうした構成は駆動力伝達機構の一例であり、他の構成によって用紙搬送モーター1の駆動力を冷却ファン11の駆動部に伝達しても良い。
【0018】
アイドルギア6は用紙搬送ローラー駆動ギア3と遊星ギア7に歯合しており、用紙搬送ローラー駆動ギア3の回転駆動力を遊星ギア7に伝達する。遊星ギア7はアイドルギア6と歯合する固定ギアと、固定ギアと歯合しながら回動自在に保持された回動ギアで構成されており、回動ギアは第1駆動ギア列9か第2駆動ギア列10のいずれかと歯合する。より具体的には、用紙搬送モーター1の回転方向に応じて歯合するギア列を切り替える。
【0019】
第1駆動ギア列9と第2駆動ギア列10は、遊星ギア7と歯合した側とは反対側の端で冷却ファン11の駆動部と歯合しており、遊星ギア7の回転駆動力がこれと歯合したいずれかの駆動ギア列9,10を介して冷却ファン11を駆動する。なお、第2駆動ギア列10は第1駆動ギア列9よりも奇数個多い、又は少ない個数のギアで構成される。
【0020】
<動作>
インクリボン14にはイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(Cy)が塗布されており、プリント用紙8にYを熱転写すると、プリント用紙8を印画時に搬送した距離と同じだけ戻し、MをYと同様に熱転写する。その後、Cyも同様の手順で熱転写することで画像を形成する。こうした印画動作と用紙戻し動作からなる1枚の画像形成工程において、用紙搬送モーター1は両方向に回転する。
【0021】
図2を用いて、熱転写プリンターの印画動作を説明する。用紙搬送モーター1が反時計回りに回転すると、ベルト2を介して用紙搬送モーター1と連動する用紙搬送ローラー駆動ギア3も反時計回りに回転し、用紙搬送ローラー5は反時計回りに回転する。その結果、プリント用紙8は図中の左方向に搬送される。
【0022】
用紙搬送ローラー駆動ギア3が反時計回りに回転すると、これと歯合したアイドルギア6は時計回りに回転し、遊星ギア7の固定ギアは反時計回りに回転する。遊星ギア7の回動ギアは時計回りに回転する。印画動作時に遊星ギア7の回動ギアは第1駆動ギア列9の端部のギアと歯合しているので、第1駆動ギア列9を介して冷却ファン11の駆動部が回転し、冷却ファン11が駆動する。
【0023】
次に、図3を用いて、熱転写プリンターの用紙戻し動作を説明する。このとき、遊星ギア7の回動ギアは第2駆動ギア列10と歯合している。用紙搬送モーター1が時計回りに回転すると、ベルト2を介して用紙搬送モーター1と連動する用紙搬送ローラー駆動ギア3も時計回りに回転し、用紙搬送ローラー5が時計回りに回転する。これにより、プリント用紙8は図中の右方向に搬送される。
【0024】
用紙搬送ローラー駆動ギア3、アイドルギア、遊星ギア7の固定ギア及び回動ギアは、それぞれ印画時の回転方向とは逆向きに回転する。遊星ギア7の回動ギアは反時計回りに回転し、第2駆動ギア列10を介して冷却ファン11の駆動部が回転し、冷却ファン11が駆動する。
【0025】
ここで、第2駆動ギア列10を構成するギア数を第1駆動ギア列9を構成するギア数より奇数個多く、あるいは少なくすることにより、ギア列の最終段のギアの回転方向を揃えることができ、用紙搬送モーター1の回転方向によらず、冷却ファン11を常に一方向に回転させることが出来る。
【0026】
<効果>
本実施の形態の熱転写プリンターは、プリント用紙8に搬送力を付与する用紙搬送ローラー5と、用紙搬送ローラー5に回転駆動力を付与する用紙搬送モーター1と、プリント用紙8にインクを熱転写するサーマルヘッド13と、サーマルヘッド13に一体に取り付けられ、サーマルヘッド13を放熱するヒートシンク12と、ヒートシンク12を冷却する冷却ファン11と、用紙搬送モーター1の回転駆動力を冷却ファン11に伝達する駆動力伝達機構を備えるので、冷却ファン11を駆動するために専用のモーターを設ける必要がなく、コストを抑えることが出来る。
【0027】
また、本実施の形態の熱転写プリンターにおいて、用紙搬送モーター1は用紙搬送ローラー5に双方向の回転駆動力を与え、前記駆動力伝達機構は、一端が冷却ファン11の駆動部と歯合した第1駆動ギア列9と、一端が冷却ファン11の駆動部と歯合し、第1駆動ギア列9と奇数異なる個数のギアで構成された第2駆動ギア列10と、用紙搬送モーター1の回転駆動力が伝達され、用紙搬送ローラー5の回転方向に応じて、第1駆動ギア列9及び第2駆動ギア列10の何れかの他端と歯合する遊星ギア7とを備えるので、用紙搬送モーター1がいずれの方向に回転にしても、冷却ファン11を一方向に回転させることが可能である。
【0028】
(実施の形態2)
図4は、実施の形態2の熱転写プリンターの要部構成を示す図である。実施の形態2の熱転写プリンターは、アイドルギア6の代わりにレバーギア16を用いる点が実施の形態1と異なる。レバーギア16は、用紙搬送ローラー駆動ギア3と遊星ギア7の間に歯合するように設けられているが、歯合しない位置に自由に回動することができる。
【0029】
レバーギア16の回動機構としては、例えば図4に示すように、励磁状態に応じて可動部が伸張するソレノイド17とバネ18を用いることができる。バネ18によりレバーギア16を用紙搬送ローラー駆動ギア3及び遊星ギア7と歯合する位置に付勢しておき、ソレノイド17が伸張するとレバーが押されてレバーギア16が用紙搬送ローラー駆動ギア3及び遊星ギア7と歯合しない位置に回動する。レバーギア16が歯合した状態では用紙搬送モーター1の回転駆動力が冷却ファン11に伝達され、歯合していない状態では伝達されないため、所望の条件に応じてソレノイド17を伸張することで、冷却ファン11の駆動・非駆動を切り替えることが出来る。
【0030】
なお、上記で説明したレバーギア16の回動機構は一例であり、例えばサーマルヘッド13、プラテンローラー15、又はピンチローラー4のいずれかを上下させるカム(図示せず)とレバーギア16の回動を同期させる機構を用いても良い。
【0031】
<効果>
本実施の形態の熱転写プリンターは、用紙搬送ローラー5と一体に設けられ、用紙搬送モーター1から受けた回転駆動力を用紙搬送ローラー5に伝達する用紙搬送ローラー駆動ギア3と、用紙搬送ローラー駆動ギア3と遊星ギア7の間に両ギアとの歯合位置と非歯合位置で移動自在に配置されたレバーギア16とをさらに備えるので、レバーギア16の回動動作によって冷却ファン11の駆動・非駆動を切り替えることが出来る。
【0032】
(実施の形態3)
<構成>
図6は、実施の形態3の熱転写プリンターの要部構成を示す図である。実施の形態3の熱転写プリンターはヒートシンク12を冷却する冷却ファンとして、内蔵のモーターで駆動するモーター付き冷却ファン19と、補助冷却ファン11a,11bを備える。
【0033】
補助冷却ファン11a,11bは、実施の形態1,2で説明した冷却ファン11に相当するもので、駆動力伝達機構により用紙搬送モーター1の回転駆動力を受けて回転するものである。駆動力伝達機構についても実施の形態1,2と同様である。
【0034】
具体的には、同期ギア20a(同期ギア20b)は第1駆動ギア列9(第2駆動ギア列10)と歯合しており、同期ギア20a,20bは同期シャフト23により連結されて同期している。同期ギア22a,22bが回転すると、同期ギア22aと歯合した補助冷却ファン駆動ギア20a、同期ギア22bと歯合した補助冷却ファン駆動ギア20bがそれぞれ回転し、補助冷却ファン11a,11bが回転する。
【0035】
ここで、補助冷却ファン11a及び11bの回転数がモーター付冷却ファン19の最大回転数を上回るように、用紙搬送ローラー駆動ギア3から補助冷却ファン21a及び21bの間の駆動力伝達機構におけるギア列の歯数を構成する。また、補助冷却ファン21aおよび21bにより発生する風量がモーター付冷却ファン19により発生する風量を上回るように補助冷却ファン21a及び21bを構成する。これにより、ヒートシンク12中の圧力が低下してモーター付冷却ファン19の回転抵抗が低減するため、モーター付冷却ファン19はより高速で回転することができ、より高い冷却効果を得ることが可能となる。
【0036】
<効果>
本実施の形態の熱転写プリンターは、内蔵モーターで駆動しヒートシンク12を冷却するモーター付冷却ファン19を備え、第1、第2駆動ギア列9,10は、モーター付冷却ファン19の最大回転数以上で補助冷却ファン11a,11bが回転するようにギア比が構成されているので、モーター付き冷却ファン19は回転抵抗が低減してより高速で回転することができ、高い冷却効果を得ることが可能となる。
【符号の説明】
【0037】
1 用紙搬送モーター、2 ベルト、3 用紙搬送ローラー駆動ギア、4 ピンチローラー、5 用紙搬送ローラー、6 アイドルギア、7 遊星ギア、8 プリント用紙、9 第1駆動ギア列、10 第2駆動ギア列、11 冷却ファン、11a,11b 補助冷却ファン、12 ヒートシンク、13 サーマルヘッド、14 インクリボン、15 プラテンローラー、16 レバーギア、17 ソレノイド、18 バネ、19 モーター付冷却ファン、20a、20b 補助冷却ファン駆動ギア、21a、21b 同期ギア、22 同期シャフト。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリント用紙に搬送力を付与する用紙搬送ローラーと、
前記用紙搬送ローラーに回転駆動力を付与する用紙搬送モーターと、
前記プリント用紙にインクを熱転写するサーマルヘッドと、
前記サーマルヘッドに一体に取り付けられ、前記サーマルヘッドを放熱するヒートシンクと、
前記ヒートシンクを冷却する冷却ファンと、
前記用紙搬送モーターの回転駆動力を前記冷却ファンに伝達する駆動力伝達機構とを備える、
熱転写プリンター。
【請求項2】
前記用紙搬送モーターは前記用紙搬送ローラーに双方向の回転駆動力を与え、
前記駆動力伝達機構は、
一端が前記冷却ファンの駆動部と歯合した第1駆動ギア列と、
一端が前記冷却ファンの駆動部と歯合し、前記第1駆動ギア列と奇数異なる個数のギアで構成された第2駆動ギア列と、
前記用紙搬送モーターの回転駆動力が伝達され、前記用紙搬送ローラーの回転方向に応じて、前記第1駆動ギア列及び前記第2駆動ギア列の何れかの他端と選択的に歯合する遊星ギアとを備える、
請求項1に記載の熱転写プリンター。
【請求項3】
前記用紙搬送ローラーと一体に設けられ、前記用紙搬送モーターから受けた回転駆動力を前記用紙搬送ローラーに伝達する用紙搬送ローラー駆動ギアと、
前記用紙搬送ローラー駆動ギアと前記遊星ギアの間に両ギアとの歯合位置と非歯合位置で移動自在に配置されたレバーギアとをさらに備える、
請求項2に記載の熱転写プリンター。
【請求項4】
内蔵モーターで駆動し、前記ヒートシンクを冷却するモーター付冷却ファンをさらに備え、
前記第1、第2駆動ギア列は、前記モーター付冷却ファンの最大回転数以上で前記冷却ファンが回転するようにギア比が構成された、
請求項2又は3に記載の熱転写プリンター。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−183682(P2012−183682A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−47225(P2011−47225)
【出願日】平成23年3月4日(2011.3.4)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】