熱転写プリンタ
【課題】多種多様な受容紙と熱転写インクリボンとの組合せに対応して、熱履歴制御を適正かつ容易に行い、良好な印字品質を得る。
【解決手段】熱転写インクリボン24の種別を特定するインクリボン特定部13と、受容紙21の種別を特定する受容紙特定部14と、特定された熱転写インクリボン24及び受容紙21の種別の組合せが転写状態による複数グループのどのグループに属するかを特定するグループ特定データを格納するグループテーブル15と、グループ特定データに対応した熱履歴制御データを格納した熱履歴テーブル16と、グループテーブル15を参照して熱転写インクリボン24と受容紙21の組合せがどのグループに属するかを示すグループ特定データを取得し、取得したグループ特定データに基づいて前記熱履歴テーブル16を参照して熱履歴制御データを取得し、前記サーマルヘッドの熱履歴制御を行う熱履歴制御部12と、を備える。
【解決手段】熱転写インクリボン24の種別を特定するインクリボン特定部13と、受容紙21の種別を特定する受容紙特定部14と、特定された熱転写インクリボン24及び受容紙21の種別の組合せが転写状態による複数グループのどのグループに属するかを特定するグループ特定データを格納するグループテーブル15と、グループ特定データに対応した熱履歴制御データを格納した熱履歴テーブル16と、グループテーブル15を参照して熱転写インクリボン24と受容紙21の組合せがどのグループに属するかを示すグループ特定データを取得し、取得したグループ特定データに基づいて前記熱履歴テーブル16を参照して熱履歴制御データを取得し、前記サーマルヘッドの熱履歴制御を行う熱履歴制御部12と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は熱転写プリンタに係り、特に受容紙に熱転写インクリボンからインクを熱転写するサーマルヘッドを備え前記サーマルヘッドの熱履歴制御を行う熱転写プリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
上述の熱転写プリンタは、POS端末、電子式キャッシュレジスタ、バーコード印刷装置、計量器などに使用される。このような熱転写プリンタでは、サーマルヘッドで熱転写インクリボンに所定の熱エネルギを加え受容紙に熱転写インクリボンのインクを熱転写し、印刷を行っている。
【0003】
近年、このような熱転写プリンタにあっては、印字物に対する目的によって、熱転写インクリボンとして多くの種類のものが採用される。一般的な汎用品では、熱転写インクリボンは、ワックスを主成分としたワックスインクリボンが採用され、また、印刷物に耐候性、保存性が求められるときには、ワックスとレジンの混合系のセミレジンリボン、更に、印刷物に耐擦過性、耐溶剤性が求められるときにはレジンリボンが使用される。また、同じ種類の熱転写インクリボンについても各転写リボンメーカから特性が異なるものが数多く販売されている。
【0004】
一方、インクを受ける受容紙も、多くの種類のものが採用される。通常使用される受容紙としては、上質紙系、ラフ紙、表面が塗工されたコート紙がある。コート紙についてみるとコートする樹脂材料として多種類のものがある。また、耐水性のある合成紙、PET系、PP系を使用したものもあり、受容紙も多種多様のものがある。
【0005】
更に、印字を行う熱転写プリンタのユーザの目的もさまざまであり、その目的により、転写インクリボンと受容紙との最適な組合せが選択される。このような条件の下、実際に使用する熱転写インクリボンと受容紙との組合せに対して熱転写プリンタを最適な印字条件に設定することは容易ではなく、ユーザにとって煩わしい問題であり、また、設定ミスによる、印字品質の低下問題が発生している。
【0006】
このような印字設定の要素として熱履歴制御がある。熱転写プリンタは、サーマルヘッドの加熱による熱転写によって印字を行うという特性上、印字によりサーマルヘッドが蓄熱し、印字品質を損ねるという問題がある。同じ位置の発熱素子が通電され続けると、発熱素子が蓄熱するため、印字濃度が実際より濃くなってしまい印字品質が低下するのである。このように熱履歴制御を適正に行わないと、文字の滲み潰れ尾引きや、ボイドかすれなどが発生し印字品質が低下することになる。
【0007】
そこで、熱転写プリンタでは、印字を行う該当ドットや隣接ドットの過去の印字情報を参照してサーマルヘッドへの印加エネルギを制御して、印字品質の劣化を補正する熱履歴制御を行う。
【0008】
熱履歴制御は例えば次にように行われる。図14は従来のサーマルヘッドの発熱素子への熱印加状態と対応する印加エネルギの設定グループを示す表、図15は各設定グループのエネルギの印加時間を示す表である。
【0009】
この例の熱履歴制御では、図14に示すように、着目した発熱素子を、過去2回、即ち「前々回」、「前回」、及び「次回」の発熱の有り(図中●印)、無し(図中○印)によって8群(a〜h)に分け、各群におけるエネルギの印加時間を5種(クラスI:370μsec、クラスII:320μsec、クラスIII:270μsec、クラスIV:220μsec、クラスV:210μsec)に割り振る。
【0010】
即ち、「前々回」、「前回」の発熱状態、「次回」の発熱の有無を考慮し、現在蓄熱がされている群についてはエネルギ印加時間を短くし、蓄熱がされていない群についてはエネルギ印加時間を長いものとするのである。
【0011】
この例では、「前々回」及び「前回」に発熱せず、蓄熱が発生しにくいa群、b群についてはエネルギ印加時間を一番短いクラスI(370μsec)、「前々回」又は「前回」に発熱し、次に蓄熱が発生しにくいc群、e群をクラスII(320μsec)、その次に蓄熱が発生しにくいd群、f群をクラスIII(270μsec)、更に次に蓄熱が発生しにくいg群をクラスIV(220μsec)、最も蓄熱が発生しやすいh群をクラスV(210μsec)としている。
【0012】
このような熱履歴制御を行うことにより、文字の滲み潰れ尾引きや、ボイドかすれなどを防止し、印字品質が低下しないようにしている。
【0013】
特許文献1には、熱履歴制御を行うサーマルプリンタとして、列状に配列された複数の発熱素子を有するサーマルヘッドと、オリジナル画像データ及び熱履歴補正データを記憶するメインメモリと、熱履歴回路及び前記サーマルヘッドを制御する印字制御回路が設けられた信号処理装置と、DMA制御部を備えた中央処理装置とを備え、前記DMA制御部の制御により前記メインメモリに記憶されているオリジナル画像データは前記信号処理装置の熱履歴補正回路にDMA転送されて熱履歴補正が行われ、その熱履歴補正された熱履歴補正データは前記メインメモリにDMA転送されて記憶され、再度その熱履歴補正データは前記印字制御回路にDMA転送されるサーマルプリンタ装置が記載されている。
【0014】
【特許文献1】特開2004−58618号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
上述のように、熱転写インクリボンの種類と受容紙の種類の多種多様性から、実際の熱転写インクリボンと受容紙との使用の組合せの種類は非常に多くなってきている。
【0016】
このため、熱履歴制御においても熱転写インクリボンと受容紙との組合せに応じた制御がなされる必要がある。
【0017】
ここで、従来熱履歴制御における通電時間は、受容紙、熱転写リボンの種類にかかわらず一定の値としている。このため受容紙、熱転写インクリボンの組合せが変更されたときの濃度調整をするときには、前記クラスI〜クラスVの時間に所定の係数を乗じて、画一的に印加時間を長くして濃度を濃くし、又は、画一的に印加時間を短くすることで濃度を薄くするようにしている。
【0018】
しかし、このような制御では、各組合せの特性によっては尾引き滲み潰れを無くそうとすると全体が薄くなってかすれ傾向になり、かすれを無くそうと濃い目に調整すると尾引き滲み潰れが発生し、全ての組合せを最適化することは困難であった。
【0019】
そこで、本発明は、多種多様な受容紙と熱転写インクリボンとの組合せに対応して、熱履歴制御を適正かつ容易に行え、良好な印字品質を得ることができる熱転写プリンタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明において上記の課題を解決するための手段は、受容紙に熱転写インクリボンからインクを熱転写するサーマルヘッドを備え、前記サーマルヘッドの熱履歴制御を行う熱転写プリンタにおいて、熱転写インクリボンの種別を特定するインクリボン特定部と、受容紙の種別を特定する受容紙特定部と、特定された熱転写インクリボンの種別と特定された受容紙の種別との組合せが、インクの受容紙への転写状態によりグループ分けされた複数グループの内のどのグループに属するかを特定するグループ特定データを格納するグループテーブルと、前記複数のグループ特定データに対応した熱履歴制御データを格納した熱履歴テーブルと、前記グループテーブルを参照して、特定された熱転写インクリボンの種別と受容紙の種別との組合せがどのグループに属するかを示すグループ特定データを取得し、この取得したグループ特定データに基づいて前記熱履歴テーブルを参照して熱履歴制御データを取得し、前記サーマルヘッドの熱履歴制御を行う熱履歴制御部と、を備えることを特長とする熱転写プリンタである。
【0021】
また、本発明において上記の課題を解決するための手段は、受容紙に熱転写インクリボンからインクを転写するサーマルヘッドを備えた熱転写プリンタにおいて、インクの受容紙への転写状態によりグループ分けされた複数グループに対応した熱履歴制御データを格納した熱履歴テーブルと、印字サンプルデータを格納するデータ格納部と、前記印字サンプルデータに基づいて、前記熱履歴テーブルが格納した複数グループに対応した熱履歴制御データに基づいて熱履歴制御を行ってテスト印刷を実行するテスト印字実行部と、を備えることを特長とする熱転写プリンタである。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、設定された熱転写インクリボンの種別、受容紙の種別に基づいて熱転写印刷での熱履歴制御が行えるので、ユーザは容易な設定で最適な熱履歴制御がなされた印刷を行うことができる。
【0023】
また、本発明によれば、テスト印刷を行うことにより、最適な熱履歴制御が行える熱転写グループを認識することができるので、ユーザは使用する熱転写インクリボン、受容紙の種別を意識することなく最適な熱履歴制御の条件設定を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下本発明に係る熱転写プリンタの実施の形態について図1乃至図13に基づいて説明する。
【0025】
図1は熱転写プリンタ概略構成を示すブロック図である。熱転写プリンタ100は、装置の制御を行う制御部10と、印刷を実行する機構部20とを備えている。
【0026】
機構部20は、受容紙21に熱転写インクリボン24を当接させて移動させながら、サーマルヘッド27から熱転写インクリボン24に印加エネルギを付与して、受容紙21に熱転写インクリボン24のインクを転写する。インクが熱転写された受容紙21は、図示していない切断機構で所定長さに切断され印刷物23として排出される。
【0027】
機構部20において、受容紙21は、受容紙を巻き取って形成した受容紙ロール22から供給される。熱転写インクリボン24は、インクリボンを巻き取って形成したインクリボンロール25から供給され、熱転写が終了したインクリボンは、インクリボン巻き取りローラ26で巻き取られて回収される。
【0028】
受容紙21は、受容紙供給ローラ32、ピンチローラ33、プラテンローラ34により移動され、受容紙供給ローラ32、プラテンローラ34は制御部10のパルスモータ105(図2参照)によって回転駆動される。また、熱転写インクリボン24はDCモータ106(図2参照)で回転駆動されるインクリボン案内ローラ28で案内されると共にプラテンローラ34上を受容紙21と同じ速度で移動し、熱転写されたのちローラ26に巻き取られる。また、機構部20にはサーマルヘッド27付近の温度を測定する温度検出手段であるサーミスタ29を備えている。
【0029】
また、制御部10は、上位装置200からの指示、サーミスタ29からの温度信号を受け印字制御を行うヘッド駆動制御部11と、熱転写インクリボン24、受容紙21の種類に応じてサーマルヘッド27の熱履歴制御を行う熱履歴制御部12と、熱転写インクリボンの種別を特定するインクリボン特定部13と、受容紙の種類を特定する受容紙特定部14と、熱転写インクリボンの種別と受容紙の種別との組合せが、インクの受容紙への転写状態によりグループ分けされた複数グループの内のどのグループに属するかを特定するグループテーブル15と、複数のグループに対応した熱履歴制御データを格納した熱履歴テーブル16と、ヘッド駆動部17を備える。
【0030】
ヘッド駆動制御部11は、上位装置200の印字指令に基づいて所定パターンでヘッド駆動部17を駆動する他、サーミスタ29からの環境温度情報等に基づいて熱履歴制御以外の印字制御を行う他、熱履歴制御部12からの熱履歴制御を受け、ヘッド駆動部17の駆動を制御する。
【0031】
熱履歴制御部12は、上位装置200からの印字情報、インクリボン特定部13からの熱転写インクリボンの種別、及び、受容紙特定部14からの受容紙の種別に基づいてグループテーブル15及び熱履歴テーブル16を参照してサーマルヘッド27の各加熱素子への印加エネルギの付与時間を決定し、ヘッド駆動制御部11に印字制御における熱履歴制御を行う。
【0032】
インクリボン特定部13は、ユーザが熱転写インクリボンの名称を手入力するキーボード、予め設定された熱転写インクリボンの名称を指定する指定スイッチその他の入力手段を採用できる。また、インクリボン特定部13としては、熱転写プリンタ100の図示していないカバーを開けて熱転写インクリボンを交換するに際して前記カバーを閉じたときに機構部20にセットした熱転写リボンの型名を登録する、例えばRFID入力手段等の自動登録手段を使用することができる。
【0033】
受容紙特定部14は、ユーザが受容紙の名称を手入力するキーボード、予め設定された受容紙の名称を指定する指定スイッチその他の入力手段を採用できる。また、受容紙特定部14としては、熱転写プリンタ100の図示していないカバーを開けて受容紙を交換するに際して前記カバーを閉じたときに機構部20にセットした受容紙の型名を登録する、例えばRFID入力手段等の自動登録手段を使用することができる。
【0034】
グループテーブル15は、予め所定の種類の熱転写インクリボンと、受容紙との組合せに、熱転写インクリボンのインクの受容紙への転写状態により所定のグループに属するかを特定している。
【0035】
熱履歴テーブル16は、複数のグループに対応し、加熱素子への印加時間を定める熱履歴制御データを格納している。
【0036】
制御部10は以下の電気的構成を備えている。図2は熱転写プリンタの電気的構成を示すブロック図である。
【0037】
制御部10は、マイクロコンピュータでその機能を実現している。制御部10は、図2に示すように、各種入力及び格納データを演算処理し各部の動作を制御するCPU(Central Processing Unit)101と、制御プログラム、グループテーブル15、熱履歴テーブル16等の固定的データを予め格納する記憶媒体であるROM(Read Only Memory)102と、各種データを書き換え自在に格納するRAM(Random Access Memory)103とがバスライン104を介して接続されている。
【0038】
また、CPU101には、受容紙供給ローラ32、プラテンローラ34を回転駆動させるパルスモータ105、インクリボン巻取りローラ26を回転駆動させるDC(Direct Current)モータ106、サーマルヘッド27を駆動するヘッド駆動部17、図示しない上位装置200等であるホストコンピュータから印字データ等の各種データを受信する通信I/F107等が、バスライン104と図示しない各種制御回路とを介して接続されている。
【0039】
制御部10は、CPU101で制御プログラムを実行してサーマルヘッド27への印加エネルギ量を算出するヘッド駆動制御部11、サーマルヘッド27の熱履歴制御を行う熱履歴制御部12の機能をなす。
【0040】
また、上述したように、ROM102には、前記グループテーブル15、前記熱履歴テーブル16が格納されている。
【0041】
本構成により、制御部10は、機構部20に配置された受容紙21、熱転写インクリボン24を駆動する他、サーマルヘッド27の熱履歴制御を含む印加エネルギの制御を行う。
【0042】
次にグループテーブル15について説明する。図4はグループテーブルの内容を示す模式図である。グループテーブル15は、受容紙と熱転写インクリボンの組合せが、インクの受容紙への転写状態によりグループ分けされた複数グループの内のどのグループに属するかを特定するものである。
【0043】
このグループテーブル15は、2つのグループテーブル15−1、15−2を備える。第1のグループテーブル15−1は5種類の受容紙A,B,C,D,Eに対する12種類の熱転写インクリボンW1〜W6、WR1〜WR6の組合せを、A1,A2,A3の3つのグループに分類する。
【0044】
また、第2のグループテーブル15−2は5種類の受容紙D,E,F,G,Hに対する4種類の熱転写インクリボンR1,R2,R3,R4の組合せをB1,B2,B3の3つのグループに分類する。これらのグループ分けは各種受容紙と熱転写インクリボンの組合せによる印刷実験の結果により行った。
【0045】
次に熱履歴テーブル16について説明する。図5は熱履歴テーブルの内容を示す模式図である。16は上述した組合せグループA1,A2,A3、組合せグループB1,B2,B3が指定するサーマルヘッド27へのエネルギ印加時間を上述した発熱素子の発熱状態(a〜h:図14参照)に対応するクラスI〜クラスVに対応して指定する。
【0046】
この例では、組合せグループA1についてみると、クラスIは370μsec、クラスIIは320μsec、クラスIIIは270μsec、クラスIVは220μsec、クラスVは220μsecとなる。
【0047】
また、グループA2についてみると、クラスIは370μsec、クラスIIは320μsec、クラスIIIは270μsec、クラスIVは220μsec、クラスVは202μsecとなる。
【0048】
また、グループA3についてみると、クラスIは370μsec、クラスIIは320μsec、クラスIIIは270μsec、クラスIVは220μsec、クラスVは185μsecとなる。
【0049】
また、グループB1についてみると、クラスIは370μsec、クラスIIは320μsec、クラスIIIは270μsec、クラスIVは220μsec、クラスVは220μsecとなる。
【0050】
また、グループB2についてみると、クラスIは375μsec、クラスIIは325μsec、クラスIIIは265μsec、クラスIVは220μsec、クラスVは202μsecとなる。
【0051】
そして、グループB3についてみると、クラスIは380μsec、クラスIIは330μsec、クラスIIIは260μsec、クラスIVは220μsec、クラスVは185μsecとなる。
【0052】
これらの各グループA1〜A3、B1〜BにおけるクラスI、クラスII,クラスIII,クラスIV、クラスVの各時間は各種受容紙と熱転写インクリボンの組合せによる印刷実験の結果に基づいて定めた。
【0053】
以下、各種受容紙と熱転写インクリボンの組合せによる印刷実験について説明する。図6は実験における印字パターンを示す模式図、図7は受容紙Aに対する熱転写インクリボンW1,W2,W3の印刷結果、図8は受容紙Aに対する熱転写インクリボンWR1,WR2,WR3の印刷結果、図9は受容紙Dに対する熱転写インクリボンR1,R2,R3の印刷結果を示す図、図10は受容紙A,B,C,Dに対する熱転写インクリボンW1の印刷結果、図11は受容紙A,B,C,Dに対する熱転写インクリボンWR1の印刷結果、図12は受容紙A,B,C,Dに対する熱転写インクリボンW2の印刷結果、図13は受容紙A,B,C,Dに対する熱転写インクリボンWR3の印刷結果を示す図である。
【0054】
現在熱転写プリンタ用の熱転写インクリボンは、数メーカで製造されており、インクの種類も大別するとワックスリボン、セミレジンリボン、レジンリボンの3種類になる。これらの代表的な4社の熱転写インクリボン系16種類を実験対象とした。
【0055】
また、受容紙は、微塗工上質紙、ミラーコート紙、厚紙タグ紙、ユポ紙(合成紙)、PETフイルムの5種類を実験対象とした。この結果、熱転写インクリボンと受容紙の組合せは80組となる。
【0056】
実験において、熱履歴制御は行わないものとし、サーマルヘッドは300DPIのものを使用し、6IPSの印字速度で試験した。各組合せにて,印字エネルギを上げていき、図6に示す印字パターンを印刷した。
【0057】
第1の印字パターンは、3ドット縦線、9ドット印字無しの繰り返し(図6(a))であり、第2の印字パターンは、3ドット横線、9ドット印字無しの繰り返し(図6(b))である。
【0058】
そして、第1の印字パターンでは、繰り返し部の縦線3ドットの線幅寸法を測定し、第2の印字パターンでは、繰り返し部の3ドット横線幅寸法を測定した。また、ベタ黒部(図6(c))の印字濃度を測定し、問題がない範囲であることを確認しながら試験を行った。3ドットでの印刷幅が0.247mmであるとき、設計通りの狙い値であると判定した。尚、各図において狙い値の個所に○印を付してある。
【0059】
図7、図8、図9に示すように、同じ受容紙(図7,8の場合は受容紙A、図9の場合は受容紙D)でもリボンの種類(図7の場合は熱転写インクリボンW1,W2,W3、図8の場合は熱転写インクリボンWR1,WR2,WR3)によって縦線幅と横線幅が略同じエネルギで狙い値になるものと、縦線幅と横線幅とで狙い値になるエネルギが大きく変わっているものがある。
【0060】
このことにより、受容紙とリボンの組合せによっては、あまり尾引きしない組合せと、大きく尾引きが発生する組合せが存在することがわかる。印字品質を向上させるためには、この違いを熱履歴制御で大きく変更する必要がある。
【0061】
また、図10、図11、図12、図13に示すように同じリボン(図10の場合は熱転写インクリボンW1、図11の場合は熱転写インクリボンWR1、図12の場合は熱点インクリボンW2、図13の場合は熱転写インクリボンWR3)を使用した場合、受容紙が変わっても(受容紙A,B,C,D)、3ドット縦線幅と3ドット横線幅が狙い値になるエネルギが、略同じ場合もあれば、大きくエネルギ値が異なっている場合もある。
【0062】
このような試験をリボン16種類、受容紙5種類の組合せ合計80の組合せについて行った。組合せ毎に3ドット線幅の狙い値に必要なエネルギが縦線横線とも同じエネルギ値のものもあれば、大きくエネルギ値が違うものもあった。
【0063】
これを大きく3つに分類すると、
(1)3ドット横線のエネルギ値と、3ドット縦線のエネルギ値が略同じグループ、
(2)3ドット横線エネルギ値が3ドット縦線エネルギ値の92%程度のグループ、
(3)3ドット横線エネルギ値が、3ドット縦線エネルギ値の84%程度のグループ、
に分けることができた。
【0064】
ここで、3ドット縦線印字のとき、サーマルヘッドの印刷に係る発熱素子は、図14のg群の状態が連続することになる。このため、その文字の滲み潰れ尾引きや、ボイドかすれ等に関与する最終ドットでのエネルギ印加はクラスIVになる。
【0065】
一方、3ドット横線印字のときには、サーマルヘッドの全ての発熱素子は、図14のa群、e群、h群の状態が順次発生することとなり、その文字の滲み潰れ尾引きや、ボイドかすれ等に関与する最終ドットでのエネルギ印加は、クラスIVになる。
【0066】
そのため、クラスVの通電時間を、受容紙と熱転写インクリボンの組合せに応じて、クラスIVの通電時間の約100%、92%、86%の3ランクで印字できるように設定すると縦線、横線とも狙い幅の印字が行えることになる。
【0067】
例えば、図8(a)に示す受容紙Aと熱転写インクリボンWRlの組合せでは、クラスVの通電時間をクラスIVの通電時間の約100%とし、同図(b)に示す受容紙Aと熱転写インクリボンWR2の組合せではクラスVの通電時間をクラスIVの92%とし、同図(c)に示す受容紙Aと熱転写インクリボンWR3の組合せではクラスVの通電時間をクラスIVの84%とする。
【0068】
また、図9(b)に示す、受容紙Dと熱転写インクリボンR2の組合せではクラスVの通電時間はクラスIVの通電時間の100%とし、同図(a)に示す受容紙Dと熱転写インクリボンRlの組合せではクラスVの通電時間はクラスIVの通電時間の92%とし、同図(c)に示す受容紙Dと熱転写インクリボンR3の組合せではクラスVの通電時間をクラスIVの通電時間の84%とする。
【0069】
尚、上記の実験結果からはクラスVの通電時間を変更したA1〜A3グループについて説明した。本例では、B1〜B3グループとして、熱転写インクリボンと受容紙の組合せに固有の特性を考慮して、クラスII、クラスIIIの時間も調整することができる。このように個別に通電時間を細かく調整することにより、使用する熱転写インクリボンと受容紙の組合せに最適な熱履歴制御を行うことができる。即ち、印字速度やヘッド解像度、受容紙や熱転写インクリボンの新しい組合せにおいては、通電時間の設定が3種類に限定するのではなく、また、通電時間の設定もクラスVのみを3種類に分けるのではなく、図4(b)に示す第2のグループテーブル15−2のようにクラスI〜クラスVの全ての通電時間において、3種類に分類するなど、より細かく制御することができる。
【0070】
以上のようにして本例では、グループテーブル15と熱履歴テーブル16の内容を決定した。
【0071】
次に本例に係る熱転写プリンタの作動について説明する。図3は本例に係る熱転写プリンタの作動状態を示すフローチャートである。
【0072】
上位装置200から印字スピード等のプリント印字条件が設定され(ST1)、必要に応じて受容紙や、熱転写インクリボンが交換される(ST2)と、インクリボン特定部13及び受容紙特定部14から使用される熱転写インクリボンの名称と受容紙の名称が設定される。この設定は、手動あるいはRFID等により自動的に行われる(ST3)。
【0073】
次にサーミスタ29から環境温度が入力され、ヘッド駆動制御部11は環境温度補正(ST4)、サーマルヘッド27の抵抗値に基づくヘッド抵抗値ランク補正を行う(ST5)。
【0074】
印字データを上位装置200からの読み取りを熱履歴制御に必要な複数ライン分行い(ST6,ST7)、受容紙及び熱転写インクリボンの設定値を確認する(ST8)。そして、この設定値に基づいてグループテーブル15から組合せにより定まる組合せグループ(例えば組合せグループA1,B1)を読み取る(ST9)、そして、この組合せグループと、取得した印字データとから個別の加熱素子がいずれの群(a群からh群:図14)に属するかを判定し、熱履歴テーブル16からエネルギの印加時間を設定する(ST10)。
【0075】
そして、読み取ったラインについてサーマルヘッドの印加状態を設定し(ST11)、印字を行う(ST12)。そしてST6〜ST11までの処理を全部のラインについて行い印刷が終了する(ST13)。
【0076】
以上説明したように、実施の形態例に係る熱転写プリンタによれば、設定された熱転写インクリボンの種別、受容紙の種別に基づいて適正な熱履歴制御が自動的に行えるので、ユーザは容易な設定で最適な熱履歴制御がなされた印刷を行うことができる。
【0077】
尚、熱転写プリンタの印字速度が変われば熱履歴制御の内容も変更する必要があるので、設定される印字速度に応じてグループテーブル15、熱履歴テーブル16の内容を選択可能なものとしておくことができる。
【0078】
次に本発明に係る熱転写プリンタの他の例について説明する。
【0079】
この例は、前記グループテーブル15に登録されていない熱転写インクリボンと受容紙の組合せを使用するとき最適な熱履歴制御を行えるようにするものである。一般に熱転写プリンタ100においては、使用推奨品として熱転写インクリボンと受容紙とが指定され、この指定された熱転写インクリボンと受容紙との組合せが前記グループテーブル15に登録されている。しかし、ユーザはこのような推奨品を使用するとは限らず、推奨品以外の熱転写インクリボンと受容紙との組合せで印字を行うことがある。本例は、このような場合でも最適な熱履歴制御を行えるようにしたものである。
【0080】
本例では、横線の列や文字のサンプルからなる印字サンプルデータを備えておき、このサンプルデータをさまざまな熱履歴制御データに基づいてテスト印刷し、この印刷結果から使用する熱転写インクリボンと受容紙の組合せに対して最適な熱履歴制御の条件を設定する。
【0081】
このため、本例では熱転写プリンタ100のROM102に前記テストデータを格納するデータ格納部と、各種の熱履歴制御を実行するための熱履歴テーブルとを備えると共に、熱履歴制御部12にテスト印刷を実行するテスト印字実行部を備えるようにしたものである。
【0082】
この例では、熱履歴テーブルは、前記例における熱履歴テーブル16と同様に複数グループに対応してクラスI〜クラスVの印加時間を指定しておく。実際には前記例の熱履歴テーブル16をそのまま使用することができる。また、テスト印字実行部は、制御部10においてCPU101がプログラムを実行して実現することができる。
【0083】
この例によれば、熱転写プリンタ100に熱転写インクリボンと受容紙とを装着し、テスト印刷を行うことにより、テストデータが、熱履歴テーブルに格納されたグループ数だけ印字されるので、ユーザは印刷された複数のテスト印字結果から最適なグループを選択し、熱転写プリンタ100に設定するようにする。
【0084】
従って本例によれば、どのような熱転写インクリボンと受容紙との組合せであっても、最適な熱履歴制御の設定を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】熱転写プリンタ概略構成を示すブロック図である。
【図2】熱転写プリンタの電気的構成を示すブロック図である。
【図3】熱転写プリンタの作動状態を示すフローチャートである。
【図4】グループテーブルの内容を示す模式図である。
【図5】熱履歴テーブルの内容を示す模式図である。
【図6】実験における印字パターンを示す模式図である。
【図7】受容紙Aに対する熱転写インクリボンW1,W2,W3の印刷結果を示す図である。
【図8】受容紙Aに対する熱転写インクリボンWR1,WR2,WR3の印刷結果を示す図である。
【図9】受容紙Dに対する熱転写インクリボンR1,R2,R3の印刷結果を示す図である。
【図10】受容紙A,B,C,Dに対する熱転写インクリボンW1の印刷結果を示す図である。
【図11】受容紙A,B,C,Dに対する熱転写インクリボンWR1の印刷結果を示す図である。
【図12】受容紙A,B,C,Dに対する熱転写インクリボンW2の印刷結果を示す図である。
【図13】受容紙A,B,C,Dに対する熱転写インクリボンWR3の印刷結果を示す図である。
【図14】熱転写プリンタにおけるサーマルヘッドの発熱素子への熱印加状態と対応する印加エネルギの設定グループを示す表である。
【図15】各設定グループのエネルギの印加時間を示す表である。
【符号の説明】
【0086】
12 熱履歴制御部、13 インクリボン特定部、14 受容紙特定部、15 グループテーブル、16 熱履歴テーブル、 21 受容紙、24 熱転写インクリボン、27 サーマルヘッド
【技術分野】
【0001】
本発明は熱転写プリンタに係り、特に受容紙に熱転写インクリボンからインクを熱転写するサーマルヘッドを備え前記サーマルヘッドの熱履歴制御を行う熱転写プリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
上述の熱転写プリンタは、POS端末、電子式キャッシュレジスタ、バーコード印刷装置、計量器などに使用される。このような熱転写プリンタでは、サーマルヘッドで熱転写インクリボンに所定の熱エネルギを加え受容紙に熱転写インクリボンのインクを熱転写し、印刷を行っている。
【0003】
近年、このような熱転写プリンタにあっては、印字物に対する目的によって、熱転写インクリボンとして多くの種類のものが採用される。一般的な汎用品では、熱転写インクリボンは、ワックスを主成分としたワックスインクリボンが採用され、また、印刷物に耐候性、保存性が求められるときには、ワックスとレジンの混合系のセミレジンリボン、更に、印刷物に耐擦過性、耐溶剤性が求められるときにはレジンリボンが使用される。また、同じ種類の熱転写インクリボンについても各転写リボンメーカから特性が異なるものが数多く販売されている。
【0004】
一方、インクを受ける受容紙も、多くの種類のものが採用される。通常使用される受容紙としては、上質紙系、ラフ紙、表面が塗工されたコート紙がある。コート紙についてみるとコートする樹脂材料として多種類のものがある。また、耐水性のある合成紙、PET系、PP系を使用したものもあり、受容紙も多種多様のものがある。
【0005】
更に、印字を行う熱転写プリンタのユーザの目的もさまざまであり、その目的により、転写インクリボンと受容紙との最適な組合せが選択される。このような条件の下、実際に使用する熱転写インクリボンと受容紙との組合せに対して熱転写プリンタを最適な印字条件に設定することは容易ではなく、ユーザにとって煩わしい問題であり、また、設定ミスによる、印字品質の低下問題が発生している。
【0006】
このような印字設定の要素として熱履歴制御がある。熱転写プリンタは、サーマルヘッドの加熱による熱転写によって印字を行うという特性上、印字によりサーマルヘッドが蓄熱し、印字品質を損ねるという問題がある。同じ位置の発熱素子が通電され続けると、発熱素子が蓄熱するため、印字濃度が実際より濃くなってしまい印字品質が低下するのである。このように熱履歴制御を適正に行わないと、文字の滲み潰れ尾引きや、ボイドかすれなどが発生し印字品質が低下することになる。
【0007】
そこで、熱転写プリンタでは、印字を行う該当ドットや隣接ドットの過去の印字情報を参照してサーマルヘッドへの印加エネルギを制御して、印字品質の劣化を補正する熱履歴制御を行う。
【0008】
熱履歴制御は例えば次にように行われる。図14は従来のサーマルヘッドの発熱素子への熱印加状態と対応する印加エネルギの設定グループを示す表、図15は各設定グループのエネルギの印加時間を示す表である。
【0009】
この例の熱履歴制御では、図14に示すように、着目した発熱素子を、過去2回、即ち「前々回」、「前回」、及び「次回」の発熱の有り(図中●印)、無し(図中○印)によって8群(a〜h)に分け、各群におけるエネルギの印加時間を5種(クラスI:370μsec、クラスII:320μsec、クラスIII:270μsec、クラスIV:220μsec、クラスV:210μsec)に割り振る。
【0010】
即ち、「前々回」、「前回」の発熱状態、「次回」の発熱の有無を考慮し、現在蓄熱がされている群についてはエネルギ印加時間を短くし、蓄熱がされていない群についてはエネルギ印加時間を長いものとするのである。
【0011】
この例では、「前々回」及び「前回」に発熱せず、蓄熱が発生しにくいa群、b群についてはエネルギ印加時間を一番短いクラスI(370μsec)、「前々回」又は「前回」に発熱し、次に蓄熱が発生しにくいc群、e群をクラスII(320μsec)、その次に蓄熱が発生しにくいd群、f群をクラスIII(270μsec)、更に次に蓄熱が発生しにくいg群をクラスIV(220μsec)、最も蓄熱が発生しやすいh群をクラスV(210μsec)としている。
【0012】
このような熱履歴制御を行うことにより、文字の滲み潰れ尾引きや、ボイドかすれなどを防止し、印字品質が低下しないようにしている。
【0013】
特許文献1には、熱履歴制御を行うサーマルプリンタとして、列状に配列された複数の発熱素子を有するサーマルヘッドと、オリジナル画像データ及び熱履歴補正データを記憶するメインメモリと、熱履歴回路及び前記サーマルヘッドを制御する印字制御回路が設けられた信号処理装置と、DMA制御部を備えた中央処理装置とを備え、前記DMA制御部の制御により前記メインメモリに記憶されているオリジナル画像データは前記信号処理装置の熱履歴補正回路にDMA転送されて熱履歴補正が行われ、その熱履歴補正された熱履歴補正データは前記メインメモリにDMA転送されて記憶され、再度その熱履歴補正データは前記印字制御回路にDMA転送されるサーマルプリンタ装置が記載されている。
【0014】
【特許文献1】特開2004−58618号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
上述のように、熱転写インクリボンの種類と受容紙の種類の多種多様性から、実際の熱転写インクリボンと受容紙との使用の組合せの種類は非常に多くなってきている。
【0016】
このため、熱履歴制御においても熱転写インクリボンと受容紙との組合せに応じた制御がなされる必要がある。
【0017】
ここで、従来熱履歴制御における通電時間は、受容紙、熱転写リボンの種類にかかわらず一定の値としている。このため受容紙、熱転写インクリボンの組合せが変更されたときの濃度調整をするときには、前記クラスI〜クラスVの時間に所定の係数を乗じて、画一的に印加時間を長くして濃度を濃くし、又は、画一的に印加時間を短くすることで濃度を薄くするようにしている。
【0018】
しかし、このような制御では、各組合せの特性によっては尾引き滲み潰れを無くそうとすると全体が薄くなってかすれ傾向になり、かすれを無くそうと濃い目に調整すると尾引き滲み潰れが発生し、全ての組合せを最適化することは困難であった。
【0019】
そこで、本発明は、多種多様な受容紙と熱転写インクリボンとの組合せに対応して、熱履歴制御を適正かつ容易に行え、良好な印字品質を得ることができる熱転写プリンタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明において上記の課題を解決するための手段は、受容紙に熱転写インクリボンからインクを熱転写するサーマルヘッドを備え、前記サーマルヘッドの熱履歴制御を行う熱転写プリンタにおいて、熱転写インクリボンの種別を特定するインクリボン特定部と、受容紙の種別を特定する受容紙特定部と、特定された熱転写インクリボンの種別と特定された受容紙の種別との組合せが、インクの受容紙への転写状態によりグループ分けされた複数グループの内のどのグループに属するかを特定するグループ特定データを格納するグループテーブルと、前記複数のグループ特定データに対応した熱履歴制御データを格納した熱履歴テーブルと、前記グループテーブルを参照して、特定された熱転写インクリボンの種別と受容紙の種別との組合せがどのグループに属するかを示すグループ特定データを取得し、この取得したグループ特定データに基づいて前記熱履歴テーブルを参照して熱履歴制御データを取得し、前記サーマルヘッドの熱履歴制御を行う熱履歴制御部と、を備えることを特長とする熱転写プリンタである。
【0021】
また、本発明において上記の課題を解決するための手段は、受容紙に熱転写インクリボンからインクを転写するサーマルヘッドを備えた熱転写プリンタにおいて、インクの受容紙への転写状態によりグループ分けされた複数グループに対応した熱履歴制御データを格納した熱履歴テーブルと、印字サンプルデータを格納するデータ格納部と、前記印字サンプルデータに基づいて、前記熱履歴テーブルが格納した複数グループに対応した熱履歴制御データに基づいて熱履歴制御を行ってテスト印刷を実行するテスト印字実行部と、を備えることを特長とする熱転写プリンタである。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、設定された熱転写インクリボンの種別、受容紙の種別に基づいて熱転写印刷での熱履歴制御が行えるので、ユーザは容易な設定で最適な熱履歴制御がなされた印刷を行うことができる。
【0023】
また、本発明によれば、テスト印刷を行うことにより、最適な熱履歴制御が行える熱転写グループを認識することができるので、ユーザは使用する熱転写インクリボン、受容紙の種別を意識することなく最適な熱履歴制御の条件設定を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下本発明に係る熱転写プリンタの実施の形態について図1乃至図13に基づいて説明する。
【0025】
図1は熱転写プリンタ概略構成を示すブロック図である。熱転写プリンタ100は、装置の制御を行う制御部10と、印刷を実行する機構部20とを備えている。
【0026】
機構部20は、受容紙21に熱転写インクリボン24を当接させて移動させながら、サーマルヘッド27から熱転写インクリボン24に印加エネルギを付与して、受容紙21に熱転写インクリボン24のインクを転写する。インクが熱転写された受容紙21は、図示していない切断機構で所定長さに切断され印刷物23として排出される。
【0027】
機構部20において、受容紙21は、受容紙を巻き取って形成した受容紙ロール22から供給される。熱転写インクリボン24は、インクリボンを巻き取って形成したインクリボンロール25から供給され、熱転写が終了したインクリボンは、インクリボン巻き取りローラ26で巻き取られて回収される。
【0028】
受容紙21は、受容紙供給ローラ32、ピンチローラ33、プラテンローラ34により移動され、受容紙供給ローラ32、プラテンローラ34は制御部10のパルスモータ105(図2参照)によって回転駆動される。また、熱転写インクリボン24はDCモータ106(図2参照)で回転駆動されるインクリボン案内ローラ28で案内されると共にプラテンローラ34上を受容紙21と同じ速度で移動し、熱転写されたのちローラ26に巻き取られる。また、機構部20にはサーマルヘッド27付近の温度を測定する温度検出手段であるサーミスタ29を備えている。
【0029】
また、制御部10は、上位装置200からの指示、サーミスタ29からの温度信号を受け印字制御を行うヘッド駆動制御部11と、熱転写インクリボン24、受容紙21の種類に応じてサーマルヘッド27の熱履歴制御を行う熱履歴制御部12と、熱転写インクリボンの種別を特定するインクリボン特定部13と、受容紙の種類を特定する受容紙特定部14と、熱転写インクリボンの種別と受容紙の種別との組合せが、インクの受容紙への転写状態によりグループ分けされた複数グループの内のどのグループに属するかを特定するグループテーブル15と、複数のグループに対応した熱履歴制御データを格納した熱履歴テーブル16と、ヘッド駆動部17を備える。
【0030】
ヘッド駆動制御部11は、上位装置200の印字指令に基づいて所定パターンでヘッド駆動部17を駆動する他、サーミスタ29からの環境温度情報等に基づいて熱履歴制御以外の印字制御を行う他、熱履歴制御部12からの熱履歴制御を受け、ヘッド駆動部17の駆動を制御する。
【0031】
熱履歴制御部12は、上位装置200からの印字情報、インクリボン特定部13からの熱転写インクリボンの種別、及び、受容紙特定部14からの受容紙の種別に基づいてグループテーブル15及び熱履歴テーブル16を参照してサーマルヘッド27の各加熱素子への印加エネルギの付与時間を決定し、ヘッド駆動制御部11に印字制御における熱履歴制御を行う。
【0032】
インクリボン特定部13は、ユーザが熱転写インクリボンの名称を手入力するキーボード、予め設定された熱転写インクリボンの名称を指定する指定スイッチその他の入力手段を採用できる。また、インクリボン特定部13としては、熱転写プリンタ100の図示していないカバーを開けて熱転写インクリボンを交換するに際して前記カバーを閉じたときに機構部20にセットした熱転写リボンの型名を登録する、例えばRFID入力手段等の自動登録手段を使用することができる。
【0033】
受容紙特定部14は、ユーザが受容紙の名称を手入力するキーボード、予め設定された受容紙の名称を指定する指定スイッチその他の入力手段を採用できる。また、受容紙特定部14としては、熱転写プリンタ100の図示していないカバーを開けて受容紙を交換するに際して前記カバーを閉じたときに機構部20にセットした受容紙の型名を登録する、例えばRFID入力手段等の自動登録手段を使用することができる。
【0034】
グループテーブル15は、予め所定の種類の熱転写インクリボンと、受容紙との組合せに、熱転写インクリボンのインクの受容紙への転写状態により所定のグループに属するかを特定している。
【0035】
熱履歴テーブル16は、複数のグループに対応し、加熱素子への印加時間を定める熱履歴制御データを格納している。
【0036】
制御部10は以下の電気的構成を備えている。図2は熱転写プリンタの電気的構成を示すブロック図である。
【0037】
制御部10は、マイクロコンピュータでその機能を実現している。制御部10は、図2に示すように、各種入力及び格納データを演算処理し各部の動作を制御するCPU(Central Processing Unit)101と、制御プログラム、グループテーブル15、熱履歴テーブル16等の固定的データを予め格納する記憶媒体であるROM(Read Only Memory)102と、各種データを書き換え自在に格納するRAM(Random Access Memory)103とがバスライン104を介して接続されている。
【0038】
また、CPU101には、受容紙供給ローラ32、プラテンローラ34を回転駆動させるパルスモータ105、インクリボン巻取りローラ26を回転駆動させるDC(Direct Current)モータ106、サーマルヘッド27を駆動するヘッド駆動部17、図示しない上位装置200等であるホストコンピュータから印字データ等の各種データを受信する通信I/F107等が、バスライン104と図示しない各種制御回路とを介して接続されている。
【0039】
制御部10は、CPU101で制御プログラムを実行してサーマルヘッド27への印加エネルギ量を算出するヘッド駆動制御部11、サーマルヘッド27の熱履歴制御を行う熱履歴制御部12の機能をなす。
【0040】
また、上述したように、ROM102には、前記グループテーブル15、前記熱履歴テーブル16が格納されている。
【0041】
本構成により、制御部10は、機構部20に配置された受容紙21、熱転写インクリボン24を駆動する他、サーマルヘッド27の熱履歴制御を含む印加エネルギの制御を行う。
【0042】
次にグループテーブル15について説明する。図4はグループテーブルの内容を示す模式図である。グループテーブル15は、受容紙と熱転写インクリボンの組合せが、インクの受容紙への転写状態によりグループ分けされた複数グループの内のどのグループに属するかを特定するものである。
【0043】
このグループテーブル15は、2つのグループテーブル15−1、15−2を備える。第1のグループテーブル15−1は5種類の受容紙A,B,C,D,Eに対する12種類の熱転写インクリボンW1〜W6、WR1〜WR6の組合せを、A1,A2,A3の3つのグループに分類する。
【0044】
また、第2のグループテーブル15−2は5種類の受容紙D,E,F,G,Hに対する4種類の熱転写インクリボンR1,R2,R3,R4の組合せをB1,B2,B3の3つのグループに分類する。これらのグループ分けは各種受容紙と熱転写インクリボンの組合せによる印刷実験の結果により行った。
【0045】
次に熱履歴テーブル16について説明する。図5は熱履歴テーブルの内容を示す模式図である。16は上述した組合せグループA1,A2,A3、組合せグループB1,B2,B3が指定するサーマルヘッド27へのエネルギ印加時間を上述した発熱素子の発熱状態(a〜h:図14参照)に対応するクラスI〜クラスVに対応して指定する。
【0046】
この例では、組合せグループA1についてみると、クラスIは370μsec、クラスIIは320μsec、クラスIIIは270μsec、クラスIVは220μsec、クラスVは220μsecとなる。
【0047】
また、グループA2についてみると、クラスIは370μsec、クラスIIは320μsec、クラスIIIは270μsec、クラスIVは220μsec、クラスVは202μsecとなる。
【0048】
また、グループA3についてみると、クラスIは370μsec、クラスIIは320μsec、クラスIIIは270μsec、クラスIVは220μsec、クラスVは185μsecとなる。
【0049】
また、グループB1についてみると、クラスIは370μsec、クラスIIは320μsec、クラスIIIは270μsec、クラスIVは220μsec、クラスVは220μsecとなる。
【0050】
また、グループB2についてみると、クラスIは375μsec、クラスIIは325μsec、クラスIIIは265μsec、クラスIVは220μsec、クラスVは202μsecとなる。
【0051】
そして、グループB3についてみると、クラスIは380μsec、クラスIIは330μsec、クラスIIIは260μsec、クラスIVは220μsec、クラスVは185μsecとなる。
【0052】
これらの各グループA1〜A3、B1〜BにおけるクラスI、クラスII,クラスIII,クラスIV、クラスVの各時間は各種受容紙と熱転写インクリボンの組合せによる印刷実験の結果に基づいて定めた。
【0053】
以下、各種受容紙と熱転写インクリボンの組合せによる印刷実験について説明する。図6は実験における印字パターンを示す模式図、図7は受容紙Aに対する熱転写インクリボンW1,W2,W3の印刷結果、図8は受容紙Aに対する熱転写インクリボンWR1,WR2,WR3の印刷結果、図9は受容紙Dに対する熱転写インクリボンR1,R2,R3の印刷結果を示す図、図10は受容紙A,B,C,Dに対する熱転写インクリボンW1の印刷結果、図11は受容紙A,B,C,Dに対する熱転写インクリボンWR1の印刷結果、図12は受容紙A,B,C,Dに対する熱転写インクリボンW2の印刷結果、図13は受容紙A,B,C,Dに対する熱転写インクリボンWR3の印刷結果を示す図である。
【0054】
現在熱転写プリンタ用の熱転写インクリボンは、数メーカで製造されており、インクの種類も大別するとワックスリボン、セミレジンリボン、レジンリボンの3種類になる。これらの代表的な4社の熱転写インクリボン系16種類を実験対象とした。
【0055】
また、受容紙は、微塗工上質紙、ミラーコート紙、厚紙タグ紙、ユポ紙(合成紙)、PETフイルムの5種類を実験対象とした。この結果、熱転写インクリボンと受容紙の組合せは80組となる。
【0056】
実験において、熱履歴制御は行わないものとし、サーマルヘッドは300DPIのものを使用し、6IPSの印字速度で試験した。各組合せにて,印字エネルギを上げていき、図6に示す印字パターンを印刷した。
【0057】
第1の印字パターンは、3ドット縦線、9ドット印字無しの繰り返し(図6(a))であり、第2の印字パターンは、3ドット横線、9ドット印字無しの繰り返し(図6(b))である。
【0058】
そして、第1の印字パターンでは、繰り返し部の縦線3ドットの線幅寸法を測定し、第2の印字パターンでは、繰り返し部の3ドット横線幅寸法を測定した。また、ベタ黒部(図6(c))の印字濃度を測定し、問題がない範囲であることを確認しながら試験を行った。3ドットでの印刷幅が0.247mmであるとき、設計通りの狙い値であると判定した。尚、各図において狙い値の個所に○印を付してある。
【0059】
図7、図8、図9に示すように、同じ受容紙(図7,8の場合は受容紙A、図9の場合は受容紙D)でもリボンの種類(図7の場合は熱転写インクリボンW1,W2,W3、図8の場合は熱転写インクリボンWR1,WR2,WR3)によって縦線幅と横線幅が略同じエネルギで狙い値になるものと、縦線幅と横線幅とで狙い値になるエネルギが大きく変わっているものがある。
【0060】
このことにより、受容紙とリボンの組合せによっては、あまり尾引きしない組合せと、大きく尾引きが発生する組合せが存在することがわかる。印字品質を向上させるためには、この違いを熱履歴制御で大きく変更する必要がある。
【0061】
また、図10、図11、図12、図13に示すように同じリボン(図10の場合は熱転写インクリボンW1、図11の場合は熱転写インクリボンWR1、図12の場合は熱点インクリボンW2、図13の場合は熱転写インクリボンWR3)を使用した場合、受容紙が変わっても(受容紙A,B,C,D)、3ドット縦線幅と3ドット横線幅が狙い値になるエネルギが、略同じ場合もあれば、大きくエネルギ値が異なっている場合もある。
【0062】
このような試験をリボン16種類、受容紙5種類の組合せ合計80の組合せについて行った。組合せ毎に3ドット線幅の狙い値に必要なエネルギが縦線横線とも同じエネルギ値のものもあれば、大きくエネルギ値が違うものもあった。
【0063】
これを大きく3つに分類すると、
(1)3ドット横線のエネルギ値と、3ドット縦線のエネルギ値が略同じグループ、
(2)3ドット横線エネルギ値が3ドット縦線エネルギ値の92%程度のグループ、
(3)3ドット横線エネルギ値が、3ドット縦線エネルギ値の84%程度のグループ、
に分けることができた。
【0064】
ここで、3ドット縦線印字のとき、サーマルヘッドの印刷に係る発熱素子は、図14のg群の状態が連続することになる。このため、その文字の滲み潰れ尾引きや、ボイドかすれ等に関与する最終ドットでのエネルギ印加はクラスIVになる。
【0065】
一方、3ドット横線印字のときには、サーマルヘッドの全ての発熱素子は、図14のa群、e群、h群の状態が順次発生することとなり、その文字の滲み潰れ尾引きや、ボイドかすれ等に関与する最終ドットでのエネルギ印加は、クラスIVになる。
【0066】
そのため、クラスVの通電時間を、受容紙と熱転写インクリボンの組合せに応じて、クラスIVの通電時間の約100%、92%、86%の3ランクで印字できるように設定すると縦線、横線とも狙い幅の印字が行えることになる。
【0067】
例えば、図8(a)に示す受容紙Aと熱転写インクリボンWRlの組合せでは、クラスVの通電時間をクラスIVの通電時間の約100%とし、同図(b)に示す受容紙Aと熱転写インクリボンWR2の組合せではクラスVの通電時間をクラスIVの92%とし、同図(c)に示す受容紙Aと熱転写インクリボンWR3の組合せではクラスVの通電時間をクラスIVの84%とする。
【0068】
また、図9(b)に示す、受容紙Dと熱転写インクリボンR2の組合せではクラスVの通電時間はクラスIVの通電時間の100%とし、同図(a)に示す受容紙Dと熱転写インクリボンRlの組合せではクラスVの通電時間はクラスIVの通電時間の92%とし、同図(c)に示す受容紙Dと熱転写インクリボンR3の組合せではクラスVの通電時間をクラスIVの通電時間の84%とする。
【0069】
尚、上記の実験結果からはクラスVの通電時間を変更したA1〜A3グループについて説明した。本例では、B1〜B3グループとして、熱転写インクリボンと受容紙の組合せに固有の特性を考慮して、クラスII、クラスIIIの時間も調整することができる。このように個別に通電時間を細かく調整することにより、使用する熱転写インクリボンと受容紙の組合せに最適な熱履歴制御を行うことができる。即ち、印字速度やヘッド解像度、受容紙や熱転写インクリボンの新しい組合せにおいては、通電時間の設定が3種類に限定するのではなく、また、通電時間の設定もクラスVのみを3種類に分けるのではなく、図4(b)に示す第2のグループテーブル15−2のようにクラスI〜クラスVの全ての通電時間において、3種類に分類するなど、より細かく制御することができる。
【0070】
以上のようにして本例では、グループテーブル15と熱履歴テーブル16の内容を決定した。
【0071】
次に本例に係る熱転写プリンタの作動について説明する。図3は本例に係る熱転写プリンタの作動状態を示すフローチャートである。
【0072】
上位装置200から印字スピード等のプリント印字条件が設定され(ST1)、必要に応じて受容紙や、熱転写インクリボンが交換される(ST2)と、インクリボン特定部13及び受容紙特定部14から使用される熱転写インクリボンの名称と受容紙の名称が設定される。この設定は、手動あるいはRFID等により自動的に行われる(ST3)。
【0073】
次にサーミスタ29から環境温度が入力され、ヘッド駆動制御部11は環境温度補正(ST4)、サーマルヘッド27の抵抗値に基づくヘッド抵抗値ランク補正を行う(ST5)。
【0074】
印字データを上位装置200からの読み取りを熱履歴制御に必要な複数ライン分行い(ST6,ST7)、受容紙及び熱転写インクリボンの設定値を確認する(ST8)。そして、この設定値に基づいてグループテーブル15から組合せにより定まる組合せグループ(例えば組合せグループA1,B1)を読み取る(ST9)、そして、この組合せグループと、取得した印字データとから個別の加熱素子がいずれの群(a群からh群:図14)に属するかを判定し、熱履歴テーブル16からエネルギの印加時間を設定する(ST10)。
【0075】
そして、読み取ったラインについてサーマルヘッドの印加状態を設定し(ST11)、印字を行う(ST12)。そしてST6〜ST11までの処理を全部のラインについて行い印刷が終了する(ST13)。
【0076】
以上説明したように、実施の形態例に係る熱転写プリンタによれば、設定された熱転写インクリボンの種別、受容紙の種別に基づいて適正な熱履歴制御が自動的に行えるので、ユーザは容易な設定で最適な熱履歴制御がなされた印刷を行うことができる。
【0077】
尚、熱転写プリンタの印字速度が変われば熱履歴制御の内容も変更する必要があるので、設定される印字速度に応じてグループテーブル15、熱履歴テーブル16の内容を選択可能なものとしておくことができる。
【0078】
次に本発明に係る熱転写プリンタの他の例について説明する。
【0079】
この例は、前記グループテーブル15に登録されていない熱転写インクリボンと受容紙の組合せを使用するとき最適な熱履歴制御を行えるようにするものである。一般に熱転写プリンタ100においては、使用推奨品として熱転写インクリボンと受容紙とが指定され、この指定された熱転写インクリボンと受容紙との組合せが前記グループテーブル15に登録されている。しかし、ユーザはこのような推奨品を使用するとは限らず、推奨品以外の熱転写インクリボンと受容紙との組合せで印字を行うことがある。本例は、このような場合でも最適な熱履歴制御を行えるようにしたものである。
【0080】
本例では、横線の列や文字のサンプルからなる印字サンプルデータを備えておき、このサンプルデータをさまざまな熱履歴制御データに基づいてテスト印刷し、この印刷結果から使用する熱転写インクリボンと受容紙の組合せに対して最適な熱履歴制御の条件を設定する。
【0081】
このため、本例では熱転写プリンタ100のROM102に前記テストデータを格納するデータ格納部と、各種の熱履歴制御を実行するための熱履歴テーブルとを備えると共に、熱履歴制御部12にテスト印刷を実行するテスト印字実行部を備えるようにしたものである。
【0082】
この例では、熱履歴テーブルは、前記例における熱履歴テーブル16と同様に複数グループに対応してクラスI〜クラスVの印加時間を指定しておく。実際には前記例の熱履歴テーブル16をそのまま使用することができる。また、テスト印字実行部は、制御部10においてCPU101がプログラムを実行して実現することができる。
【0083】
この例によれば、熱転写プリンタ100に熱転写インクリボンと受容紙とを装着し、テスト印刷を行うことにより、テストデータが、熱履歴テーブルに格納されたグループ数だけ印字されるので、ユーザは印刷された複数のテスト印字結果から最適なグループを選択し、熱転写プリンタ100に設定するようにする。
【0084】
従って本例によれば、どのような熱転写インクリボンと受容紙との組合せであっても、最適な熱履歴制御の設定を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】熱転写プリンタ概略構成を示すブロック図である。
【図2】熱転写プリンタの電気的構成を示すブロック図である。
【図3】熱転写プリンタの作動状態を示すフローチャートである。
【図4】グループテーブルの内容を示す模式図である。
【図5】熱履歴テーブルの内容を示す模式図である。
【図6】実験における印字パターンを示す模式図である。
【図7】受容紙Aに対する熱転写インクリボンW1,W2,W3の印刷結果を示す図である。
【図8】受容紙Aに対する熱転写インクリボンWR1,WR2,WR3の印刷結果を示す図である。
【図9】受容紙Dに対する熱転写インクリボンR1,R2,R3の印刷結果を示す図である。
【図10】受容紙A,B,C,Dに対する熱転写インクリボンW1の印刷結果を示す図である。
【図11】受容紙A,B,C,Dに対する熱転写インクリボンWR1の印刷結果を示す図である。
【図12】受容紙A,B,C,Dに対する熱転写インクリボンW2の印刷結果を示す図である。
【図13】受容紙A,B,C,Dに対する熱転写インクリボンWR3の印刷結果を示す図である。
【図14】熱転写プリンタにおけるサーマルヘッドの発熱素子への熱印加状態と対応する印加エネルギの設定グループを示す表である。
【図15】各設定グループのエネルギの印加時間を示す表である。
【符号の説明】
【0086】
12 熱履歴制御部、13 インクリボン特定部、14 受容紙特定部、15 グループテーブル、16 熱履歴テーブル、 21 受容紙、24 熱転写インクリボン、27 サーマルヘッド
【特許請求の範囲】
【請求項1】
受容紙に熱転写インクリボンからインクを熱転写するサーマルヘッドを備え、前記サーマルヘッドの熱履歴制御を行う熱転写プリンタにおいて、
熱転写インクリボンの種別を特定するインクリボン特定部と、
受容紙の種別を特定する受容紙特定部と、
特定された熱転写インクリボンの種別と特定された受容紙の種別との組合せが、インクの受容紙への転写状態によりグループ分けされた複数グループの内のどのグループに属するかを特定するグループ特定データを格納するグループテーブルと、
前記複数のグループ特定データに対応した熱履歴制御データを格納した熱履歴テーブルと、
前記グループテーブルを参照して、特定された熱転写インクリボンの種別と受容紙の種別との組合せがどのグループに属するかを示すグループ特定データを取得し、この取得したグループ特定データに基づいて前記熱履歴テーブルを参照して熱履歴制御データを取得し、前記サーマルヘッドの熱履歴制御を行う熱履歴制御部と、
を備えることを特徴とする熱転写プリンタ。
【請求項2】
受容紙に熱転写インクリボンからインクを転写するサーマルヘッドを備えた熱転写プリンタにおいて、
インクの受容紙への転写状態によりグループ分けされた複数グループに対応した熱履歴制御データを格納した熱履歴テーブルと、
印字サンプルデータを格納するデータ格納部と、
前記印字サンプルデータに基づいて、前記熱履歴テーブルが格納した複数グループに対応した熱履歴制御データに基づいて熱履歴制御を行ってテスト印刷を実行するテスト印字実行部と、
を備えることを特徴とする熱転写プリンタ。
【請求項1】
受容紙に熱転写インクリボンからインクを熱転写するサーマルヘッドを備え、前記サーマルヘッドの熱履歴制御を行う熱転写プリンタにおいて、
熱転写インクリボンの種別を特定するインクリボン特定部と、
受容紙の種別を特定する受容紙特定部と、
特定された熱転写インクリボンの種別と特定された受容紙の種別との組合せが、インクの受容紙への転写状態によりグループ分けされた複数グループの内のどのグループに属するかを特定するグループ特定データを格納するグループテーブルと、
前記複数のグループ特定データに対応した熱履歴制御データを格納した熱履歴テーブルと、
前記グループテーブルを参照して、特定された熱転写インクリボンの種別と受容紙の種別との組合せがどのグループに属するかを示すグループ特定データを取得し、この取得したグループ特定データに基づいて前記熱履歴テーブルを参照して熱履歴制御データを取得し、前記サーマルヘッドの熱履歴制御を行う熱履歴制御部と、
を備えることを特徴とする熱転写プリンタ。
【請求項2】
受容紙に熱転写インクリボンからインクを転写するサーマルヘッドを備えた熱転写プリンタにおいて、
インクの受容紙への転写状態によりグループ分けされた複数グループに対応した熱履歴制御データを格納した熱履歴テーブルと、
印字サンプルデータを格納するデータ格納部と、
前記印字サンプルデータに基づいて、前記熱履歴テーブルが格納した複数グループに対応した熱履歴制御データに基づいて熱履歴制御を行ってテスト印刷を実行するテスト印字実行部と、
を備えることを特徴とする熱転写プリンタ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
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【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2008−213236(P2008−213236A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−52003(P2007−52003)
【出願日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】
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