説明

熱転写プリンタ

【課題】熱転写プリンタにおいて、記録紙の画像領域の一部にオーバーコート層を転写しない領域を形成し、領域ごとの画像の光沢の違い及び画像の経時的な変色の違いを楽しめる娯楽性を実現すること。
【解決手段】熱転写プリンタ1は、インクシートにおける現像剤の部分各々と透明な保護材の部分とを順次加熱するサーマルヘッド21と、サーマルヘッド21を制御するサーマルヘッドコントローラ18とを備える。サーマルヘッドコントローラ18は、画像データに応じてインクシートの現像剤の部分の加熱エネルギーを制御し、記録紙へ画像を転写させる(S3)。さらに、サーマルヘッドコントローラ18は、記録紙における保護領域及びそれ以外の非保護領域を特定するオーバーコート用データに応じて、インクシートの保護材の部分の加熱エネルギーを制御し、記録紙の一部の保護領域に対してのみ保護層を転写させる(S5)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱転写プリンタに関し、特に、被転写体の画像の一部の領域にのみ選択的にオーバーコートを転写することができる熱転写プリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
昇華型熱転写プリンタは、銀塩写真の画像に匹敵する高品質な画像を出力可能な画像形成装置として知られている。昇華型熱転写プリンタは、複数の色の昇華性の染料インクと保護材とが形成されたインクシートにおけるインクの部分各々及び保護材の部分を順次加熱するサーマルヘッドを備えた面順次方式のプリンタである。サーマルヘッドがインクシートにおけるインクの部分各々と保護材の部分とを順次加熱することにより、インクシートから記録紙へ画像とオーバーコート層とが重なって転写される。なお、オーバーコート層は、保護材によって覆われる保護層である。
【0003】
以下、図10から図13を参照しつつ、一般的な昇華型熱転写プリンタについて説明する。なお、図10及び図11は、一般的な昇華型熱転写プリンタにおける画像形成部20の概略構成図、図12は昇華型熱転写プリンタ用のインクシートユニット30の概略図、図13は昇華型熱転写プリンタ用の記録紙4の概略断面図である。
【0004】
図12に示されるように、インクシートユニット30は、帯状のインクシート3がロール状に巻かれた部分である繰り出し部31と、繰り出し部31から繰り出されたインクシート3が巻き取られた部分である巻き取り部32とを備える。また、インクシート3は、帯状のフィルムからなる基材層の表面に複数の色の昇華性の染料インクの層が形成された部分であるインク形成部3a,3b,3cと、基材層の表面に透明な保護材の層が形成された部分である保護材形成部3dとを有している。インク形成部3a,3b,3c各々及び保護材形成部3dは、帯状のインクシート3の長手方向において予め定められた順番で繰り返し配列されている。
【0005】
図12に示される例では、インク形成部3a,3b,3cは、イエローのインク層が形成されたイエローインク部3aと、マゼンタのインク層が形成されたマゼンタインク部3bと、シアンのインク層が形成されたシアンインク部3cとを含む。なお、インク形成部が、ブラックのインク層が形成されたブラックインク部を含む場合もある。
【0006】
また、昇華型熱転写プリンタ用の記録紙4は、シート状の基材層4Aの表面に受容層4Bが形成された構造を有している。受容層4Bは、染料インクとの親和性の高い樹脂の層である。
【0007】
また、図10及び図11に示されるように、昇華型熱転写プリンタの画像形成部20は、サーマルヘッド21、プラテンローラ22、ペーパーロール23、ピンチローラ機構24及びインクシートユニット30を備える。ペーパーロール23は、記録紙4が巻き取られた部分である。サーマルヘッド30は、インクシート3におけるインク形成部3a,3b,3c各々及び保護材形成部3dを順次加熱する装置である。サーマルヘッド30は、画像のピクセル単位でインクシート3の加熱エネルギーを調節できる。
【0008】
また、サーマルヘッド21は、プラテンローラ22に近接し、プラテンローラ22との間にインクシート22を挟み込む記録位置と、プラテンローラ22から離れた待避位置との間で移動可能に支持されている。図10は、サーマルヘッド21が記録位置に存在する状態を示し、図11は、サーマルヘッド21が待避位置に存在する状態を示している。
【0009】
サーマルヘッド21が退避位置に存在する状態において、記録紙4は、順方向に回転するピンチローラ機構24及びプラテンローラ22によってペーパーロール23から繰り出されつつ、プラテンローラ22とインクシート3との間へ搬送される。その際、インクシート3は、記録紙4から離れた状態で停止している。
【0010】
一方、サーマルヘッド21が記録位置に存在する状態において、記録紙4は、逆方向に回転するピンチローラ機構24及びプラテンローラ22によってペーパーロール23側へ逆送される。その際、インクシート3は、記録紙4に密着した状態で繰り出し部31から巻き取り部32へ移動する。さらに、サーマルヘッド21が、移動中のインクシート3を加熱し、画像又はオーバーコート層をインクシート3から記録紙4へ転写させる。その際、サーマルヘッド21は、画像データにおける各ピクセルの濃度に応じた加熱エネルギーでインクシート3のインク形成部3a,3b,3cを加熱する。
【0011】
画像形成部20は、サーマルヘッド21を待避位置に移動させて記録紙4の位置を1ページ分順方向へ送り出す動作と、サーマルヘッド21を記録位置に移動させてインクシート3を加熱しつつ画像の転写を行う動作とを順次繰り返す。
【0012】
以上に示した画像形成部20の動作により、インク形成部3a,3b,3cにおける各色のインクの画像がインクシート3から記録紙4へ順次重ねて転写される。さらに、オーバーコート層が、インクシート3から記録紙4へ、記録紙4上のカラー画像を覆うように転写される。
【0013】
オーバーコート層は、記録紙4に形成された画像の耐光性及び耐指紋性を向上させる保護層であるとともに、記録紙4の表面の平滑性を高め、光沢性を高める役割も果たす。
【0014】
また、オーバーコート層は、通常、一様な膜厚で転写される。一方、特許文献1に示されるプリンタは、インクシート3における保護材形成部の加熱エネルギーをピクセル単位で変化させることにより、記録紙上においてオーバーコート層の凹凸パターンを形成する。このオーバーコート層の凹凸パターンにより、記録紙の表面におけるつや消し効果が得られる。
【0015】
また、特許文献2に示されるプリンタは、画像の撮影日時又は撮影条件などの画像の関連情報を、オーバーコート層の有無によって構成されるバーコードなどの印刷パターンによって記録紙に記録する。このオーバーコート層の印刷パターンは、光学機器により構成された読み取り装置による読み取りが可能であるが、人による画像の視認性を妨げない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特許第3861293号公報
【特許文献2】特開2002−211017号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
ところで、昇華型熱転写プリンタは、娯楽施設に設置される娯楽用写真プリンタに適用されることが多い。娯楽用写真プリンタの典型例は、ゲームセンターに設置され、撮影されたユーザの写真画像を粘着剤付き記録紙へ転写する写真プリンタである。娯楽用写真プリンタにおいては、遊び心及び面白みなどの娯楽性を主目的とする機能が、出力される画像の精細度、耐水性及び耐光性などの画像品質の高さを主目的とする機能とともに、もしくはそれに代わって、装置の付加価値を高める。
【0018】
例えば、記録紙上の画像領域の一部を、オーバーコート層が転写されない非保護領域に設定することができれば、ユーザは、保護領域の画像と非保護領域の画像との間の光沢の違い及びインクの経時的な変色の違いを楽しむことができ、ユーザの遊び心が刺激される。
【0019】
また、ここに示されるような娯楽性を主目的とする機能は、熱転写プリンタの利用の多様化を促進するため、娯楽施設の写真プリンタ以外の熱転写プリンタへの適用も有効と考えられる。
【0020】
しかしながら、特許文献1に示される熱転写プリンタは、入力された画像データに対応する画像の全体的な再現性に影響しないことを前提に、つや消しなどの目的でオーバーコート層全体の転写パターンを調節する。同様に、特許文献2に示される熱転写プリンタも、入力された画像データに対応する画像の全体的な再現性に影響しないことを前提に、目立たない付加情報の記録のために予め定められた位置でオーバーコート層の転写パターンを調節する。
【0021】
以上に示したように、従来の熱転写プリンタは、記録紙上の画像領域における任意の一部の領域にオーバーコート層が転写されない領域をあえて設定し、領域ごとの画像の光沢の違い及び画像の経時的な変色の違いを楽しむことができるという娯楽性を有さない。
【0022】
本発明の目的は、熱転写プリンタにおいて、記録紙上の画像領域における任意の一部の領域にオーバーコート層を転写しない領域を形成することを可能とし、これにより、領域ごとの画像の光沢の違い及び画像の経時的な変色の違いを楽しめる娯楽性を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0023】
上記目的を達成する本発明に係る熱転写プリンタは、面順次方式の熱転写プリンタであり、現像体に形成された複数の色の現像剤の部分各々と透明な保護材の部分とを順次加熱することによって現像体から被転写体へ画像と透明な保護層とを重ねて転写するサーマルヘッドを備える。さらに、第1発明に係る熱転写プリンタは、以下に示される各構成要素を備える。
(1)第1の構成要素は、画像データを入力する画像データ入力部である。
(2)第2の構成要素は、被転写体における保護層が転写される保護領域及びそれ以外の非保護領域を特定する保護層データを入力する保護層データ入力部である。
(3)第3の構成要素は、画像データに応じてサーマルヘッドによる現像体の現像剤の部分の加熱エネルギーを制御することにより、現像体から被転写体へ画像を転写させる第一制御部である。
(4)第4の構成要素は、保護層データに応じてサーマルヘッドによる現像体の保護材の部分の加熱エネルギーを制御することにより、現像体から被転写体の一部の保護領域に対してのみ保護層を転写させる第二制御部である。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、熱転写プリンタに入力される保護層データにおいて任意の領域が非保護領域として設定されることにより、被転写媒体上の画像領域における任意の一部の領域にオーバーコート層を転写しない領域を形成することが可能となる。その結果、被転写体に転写された画像の楽しみ方として、領域ごとの画像の光沢の違い及び画像の経時的な変色の違いを楽しむという娯楽性に富んだ楽しみ方を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施形態に係る熱転写プリンタ1の主要部の概略構成を示すブロック図である。
【図2】熱転写プリンタ1が実行する第1実施例に係る画像形成処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【図3】第1実施例に係る画像形成処理によって形成される画像の第一例を示す図である。
【図4】第1実施例に係る画像形成処理によって形成される画像の第二例を示す図である。
【図5】昇華性染料インクの画像の濃度の経時変化を示すグラフである。
【図6】熱転写プリンタ1が実行する第2実施例に係る画像形成処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【図7】記録紙上の画像領域における保護領域及び非保護領域の光の反射の状況を示す図である。
【図8】熱転写プリンタ1が実行する第3実施例に係る画像形成処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【図9】第3実施例に係る画像形成処理によって形成される画像の一例を示す図である。
【図10】一般的な昇華型熱転写プリンタにおけるサーマルヘッドが記録位置にある状態の画像形成部の概略構成図である。
【図11】一般的な昇華型熱転写プリンタにおけるサーマルヘッドが退避位置にある状態の画像形成部の概略構成図である。
【図12】昇華型熱転写プリンタ用のインクシートユニットの概略図である。
【図13】昇華型熱転写プリンタ用の記録紙の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であり、本発明の技術的範囲を限定する事例ではない。
【0027】
<装置の構成>
まず、図1を参照しつつ、本発明の実施形態に係る熱転写プリンタ1の構成について説明する。熱転写プリンタ1は、昇華型熱転写プリンタであり、従来の一般的な熱転写プリンタと同様に、図10及び図11に示される画像形成部20を備えている。さらに、図1に示されるように、熱転写プリンタ1は、通信インターフェース11、CPU(Central Processor Unit)12、メモリコントローラ13、第一フレームメモリ14、第二フレームメモリ15、不揮発性メモリ16、画像処理回路17及びサーマルヘッドコントローラ18を備える。通信インターフェース11、CPU12、メモリコントローラ13、画像処理回路17及びサーマルヘッドコントローラ18は、例えば、バス19を介して相互に接続され、これにより相互にデータの受け渡しが可能である。
【0028】
前述したように、画像形成部20は、サーマルヘッド21、プラテンローラ22、ペーパーロール23、ピンチローラ機構24及びインクシートユニット30を備えている。画像形成部20の各構成要素の内容は、前述した通りである。
【0029】
なお、インクシートユニット30におけるインクシート3は、複数の色の現像剤の部分であるインク形成部3a,3b,3c各々と透明な保護材の部分である保護材形成部3dとが形成された現像体の一例である。また、記録紙4は、被転写体の一例である。
【0030】
通信インターフェース11は、CPU12と外部のホスト計算機5との間のデータ通信を中継する装置である。なお、ホスト計算機5は、例えば、パーソナルコンピュータ又はワークステーションなどの計算機である。
【0031】
CPU12は、通信インターフェース11を通じてホスト計算機5とデータ通信を行うとともに、画像処理回路17及びサーマルヘッドコントローラ18を制御するプロセッサである。
【0032】
メモリコントローラ13は、第一フレームメモリ14及び第二フレームメモリ15とバス19に接続された他の機器との間でのデータ転送を高速で中継する装置である。
【0033】
第一フレームメモリ14は、画像データ、即ち、画像の各ピクセルの階調データを一時的に記憶する高速メモリである。熱転写プリンタ1は、カラー画像形成装置であるため、複数の第一フレームメモリ14が、インクシート3に形成されている複数種類のインク形成部3a,3b,3c各々に対応した色ごとに設けられている。第一フレームメモリ14に記録される画像データは、ホスト計算機5から受信された画像データ及びその画像データに対して各種の補正が加えられた画像データである。本実施形態においては、第一フレームメモリ14は、イエロー、マゼンタ及びシアンの3色に対応した3つのフレームメモリを含む。
【0034】
第二フレームメモリ15は、オーバーコート層のピクセルごとの階調データを含むオーバーコート用データ及びそのオーバーコート用データに補正が加えられたデータを一時的に記憶する高速メモリである。オーバーコート用データにおけるピクセルごとの階調データは、オーバーコート層のピクセルごとの厚みの指標値である。
【0035】
不揮発性メモリ16は、CPU12によって実行される制御プログラム、及びCPU12が参照する各種のパラメータを記憶するメモリである。
【0036】
画像処理回路17は、CPU12から処理の開始指令を受けた場合に、画像データに対してシャープネス演算及びガンマ変換などの各種の画像補正処理を施す演算を実行する回路である。画像処理回路17は、メモリコントローラ13を通じて第一フレームメモリ14に対する画像データの読み出し及び書き込みを行う。
【0037】
サーマルヘッドコントローラ18は、サーマルヘッド21の加熱エネルギーをピクセルごとに調節する回路である。例えば、サーマルヘッドコントローラ18は、CPU12から画像転写指令を受けた場合に、画像処理回路17によって補正された画像データに基づいて、サーマルヘッド21の加熱エネルギーをピクセルごとに調節する。さらに、サーマルヘッドコントローラ18は、CPU12からオーバーコート層転写指令を受けた場合に、第二フレームメモリ15に記憶されているオーバーコート層転写用データに基づいて、サーマルヘッド21の加熱エネルギーをピクセルごとに調節する。
【0038】
<画像形成処理:第1実施例>
次に、図2に示されるフローチャートを参照しつつ、熱転写プリンタ1が実行する第1実施例に係る画像形成処理の手順の一例について説明する。画像形成処理は、熱転写プリンタ1が、ホスト計算機5から画像データを含む印刷ジョブのデータを受信したときに開始される。以下、S1,S2,…S5は、処理の手順の識別符号を表す。
【0039】
<ステップS1>
第1実施例に係る画像形成処理において、まず、CPU12が、通信インターフェース11を通じて、ホスト計算機5から画像データ及びオーバーコート用データを含む印刷ジョブのデータを受信する(S1)。さらに、CPU12は、受信した画像データをメモリコントローラ13を通じて第一フレームメモリ14に記録するとともに、受信したオーバーコート用データをメモリコントローラ13を通じて第二フレームメモリ15に記録する(S1)。
【0040】
画像データは、例えば、ホスト計算機5によって制御される不図示のカメラによって得られた画像データ、又は、ホスト計算機5のメモリドライブ装置にセットされた外部メモリに記憶されている画像データなどである。なお、外部メモリは、例えば、ユーザが、デジタルカメラなどによって取得した画像データを記憶するメモリカードなどである。
【0041】
また、オーバーコート用データは、オーバーコート層のピクセルごとの階調データを含み、オーバーコート用データにおける各ピクセルは、画像データにおける各ピクセルと1対1に対応している。さらに、オーバーコート用データは、記録紙4におけるオーバーコート層が転写される保護領域と、オーバーコート層が転写されない非保護領域とを特定するデータである。
【0042】
例えば、オーバーコート用データにおいて、全画像領域のうちの一部の領域内のピクセルの階調データは、予め定められたしきい値以下の値に設定されている。そのしきい値は、例えば0である。以下、そのしきい値のことを領域区分用しきい値と称する。
【0043】
熱転写プリンタ1において、領域区分用しきい値以下の階調データが設定されている領域は、オーバーコート層が転写されない非保護領域であると判定され、領域区分用しきい値より大きな階調データが設定されている領域は、オーバーコート層が転写される保護領域であると判定される。このようなオーバーコート用データは、保護領域と非保護領域とを特定するデータの一例である。
【0044】
本実施形態において、オーバーコート用データは、保護領域及び非保護領域を特定する保護層データの一例である。また、本実施例において、ステップS1の処理を実行する通信インターフェース11及びCPU12は、画像データを入力する画像データ入力部、及び保護層データを入力する保護層データ入力部の一例である。
【0045】
<オーバーコート用データの設定>
オーバーコート用データは、ホスト計算機5が備える不図示のタッチパネルなどのマンマシンインターフェースに対するユーザの操作に従って、ホスト計算機5によって設定される。例えば、ホスト計算機5が備えるハードディスクなどの記憶部には、一様な厚みのオーバーコート層及び規則的な凹凸パターンのオーバーコート層を表す複数の基準パターンデータが予め記憶されている。いずれの基準パターンデータにおいても、各階調データは、領域区分用しきい値よりも大きな値に設定されている。
【0046】
そして、ホスト計算機5は、マンマシンインターフェースに対するユーザの操作に従って複数の基準パターンデータの中から1つの基準パターンデータを選択する。さらに、ホスト計算機5は、マンマシンインターフェースに対するユーザの操作に従って、全画像領域を保護領域と非保護領域とに区分する。
【0047】
例えば、ホスト計算機5は、タッチパネルを通じて、画像領域内の一部の閉じた領域の境界線を指で描く操作を検出する。さらに、ホスト計算機5は、タッチパネルを通じて、描かれた境界線の内側と外側とのいずれを非保護領域とするかを指定する操作を検出する。ホスト計算機5は、これらの操作の検出の結果に従って、全画像領域を保護領域と非保護領域とに区分する。さらに、ホスト計算機5は、選択された基準パターンデータにおける非保護領域内の階調データを領域区分用しきい値以下の値に更新し、更新後のデータをオーバーコート用データとして熱転写プリンタ1へ送信する。
【0048】
なお、熱転写プリンタ1が、マンマシンインターフェースを備え、CPU12が、そのマンマシンインターフェースを通じて入力される情報に従ってオーバーコート用データを生成することも考えられる。
【0049】
<ステップS2>
次に、画像処理回路17が、受信された第一フレームメモリ14内の画像データに対し、シャープネス演算及びガンマ変換などの各種の画像補正処理を実行する(S2)。画像補正処理により、ピクセルごとの各色の画像の濃度を表す階調データが、その濃度のインクの転写に必要なサーマルヘッド21への印加電流に相当する階調データへ変換される。このステップS2の処理は、CPU12が、画像処理回路17に対して画像データの補正処理の開始指令を出力することによって開始される。
【0050】
<ステップS3>
次に、サーマルヘッドコントローラ18が、第一フレームメモリ14内の補正後の画像データに応じてサーマルヘッド21を制御することにより、インクシート3から記録紙4へ画像を転写させる画像転写処理を実行する(S3)。このステップS3の処理は、CPU12が、サーマルヘッドコントローラ18に対して画像転写指令を出力することによって開始される。
【0051】
画像転写処理においては、インクシート3におけるインク形成部3a,3b,3c各々が、記録紙4と重なる状態でサーマルヘッド21の位置を通過する。さらに、画像転写処理において、サーマルヘッドコントローラ18は、補正後の画像データにおける各階調データの大きさに応じて、ピクセルごとのサーマルヘッド21への供給電流を調節することにより、画像データにおける各階調データに応じた濃度のインクを記録紙4へ転写させる。これにより、インクシート3から記録紙4への画像の転写が行われる。
【0052】
なお、本実施例において、ステップS3の処理を実行するサーマルヘッドコントローラ18は、第一制御部の一例である。即ち、サーマルヘッドコントローラ18は、画像データに応じてサーマルヘッド21によるインクシート3のインク形成部3a,3b,3cの加熱エネルギーを制御することにより、インクシート3から記録紙4へ画像を転写させる。
【0053】
<ステップS4>
次に、画像処理回路17が、第二フレームメモリ15内のオーバーコート用データを補正する処理を実行する(S4)。このステップS4の処理は、CPU12が、画像処理回路17に対してオーバーコート用データの補正処理の開始指令を出力することによって開始される。
【0054】
ステップS4において、CPU12は、ピクセルごとのオーバーコート層の厚みを表す階調データを、その厚みのオーバーコート層の転写に必要なサーマルヘッド21への印加電流に相当する階調データへ変換する補正処理を実行する。従って、オーバーコート用データにおける非保護領域の階調データは、サーマルヘッド21による加熱が行われないデータ、即ち、加熱エネルギーが0となるデータへ変換される。なお、ホスト計算機5から得られるオーバーコート用データにおいて、サーマルヘッド21の印加電流に相当する階調データが設定されている場合には、ステップS4の補正処理は不要である。
【0055】
<ステップS5>
最後に、サーマルヘッドコントローラ18が、第二フレームメモリ15内の補正後のオーバーコート用データに応じてサーマルヘッド21を制御することにより、インクシート3から記録紙4へオーバーコート層を転写させるオーバーコート層転写処理を実行する(S5)。このステップS5の処理は、CPU12が、サーマルヘッドコントローラ18に対してオーバーコート層転写指令を出力することによって開始される。
【0056】
オーバーコート層転写処理においては、インクシート3における保護材形成部3dが、記録紙4と重なる状態でサーマルヘッド21の位置を通過する。さらに、オーバーコート層転写処理において、サーマルヘッドコントローラ18は、補正後のオーバーコート用データにおける各階調データの大きさに応じて、ピクセルごとのサーマルヘッド21への供給電流を調節することにより、オーバーコート用データにおける各階調データに応じた厚みの保護材を記録紙4へ転写させる。これにより、インクシート3から記録紙4へのオーバーコート層の転写が行われる。
【0057】
なお、本実施例において、ステップS5の処理を実行するサーマルヘッドコントローラ18は、第二制御部の一例である。即ち、サーマルヘッドコントローラ18は、オーバーコート用データに応じてサーマルヘッド21によるインクシート3の保護材形成部3dの加熱エネルギーを制御することにより、インクシート3から記録紙4へオーバーコート層を転写させる。また、オーバーコート用データは、保護層データの一例である。
【0058】
<アウトプット>
図3及び図4は、第1実施例に係る画像形成処理によって記録紙4に形成される画像の第一例及び第二例を示す図である。各図の例は、記録紙4の全領域が画像領域である例である。また、図3(a)及び図4(a)は、記録紙4に印刷された直後の画像を表す。図3(a)において、破線で囲まれた領域は非保護領域42であり、それ以外の領域は保護領域41である。また、図4(a)において、破線で囲まれた領域は保護領域41であり、それ以外の領域は非保護領域42である。なお、各図における画像領域の一部の領域を囲む破線は、説明の便宜のために描かれた線であり、転写された画像の一部ではない。
【0059】
図7は、記録紙4上の画像領域における保護領域41及び非保護領域42の光の反射の状況を示す記録紙4の断面図である。
【0060】
図7に示されるように、オーバーコート層3yが形成されておらずインク画像の層3xが露出している非保護領域42の表面は、オーバーコート層3yが形成されている保護領域41の表面よりも入射光の反射率が低く、光沢度が低い。そのため、記録紙4上の画像に保護領域41と非保護領域42とが形成されることにより、一部の画像のみが光沢度が高く目立つ画像、或いは、一部の画像のみが光沢度が低く目立たない画像が形成される。
【0061】
一方、図3(b)及び図4(b)は、それぞれ図3(a)及び図4(a)の画像に相当し、記録紙4に印刷されてからしばらくの期間が経過した後の画像を表す。
【0062】
また、図5は、記録紙4に転写された昇華性染料インクの画像の濃度の経時変化を示すグラフである。図5において、グラフの横軸は、昇華性染料インクの画像が記録紙4に印刷された時点からの経過時間を表す。また、グラフの縦軸は、記録紙4に印刷された画像の濃度の指標値を表す。但し、濃度の指標値は、画像が印刷された直後の濃度に対する比である。また、図5のグラフにおけるグラフ線g1は、オーバーコート層有りで記録紙4に印刷された画像の濃度の変化を示し、グラフ線g2は、オーバーコート層無しで記録紙4に印刷された画像の濃度の変化を示す。
【0063】
図5に示されるように、昇華性染料インクの画像が記録紙4に印刷された場合、その画像の濃度は、時間の経過とともに徐々に低下する。また、オーバーコート層無しの画像の方が、オーバーコート層有りの画像よりも濃度の低下速度が速い。即ち、オーバーコート層無しの画像の色は、オーバーコート層有りの画像の色よりも、経時劣化による退色の速度が速い。例えば、印刷時点から1年から2年程度が経過した時点において、オーバーコート層無しの画像の濃度は、オーバーコート層有りの画像の濃度よりも10%から20%程度低くなる。
【0064】
従って、図3(a)及び図4(a)に示される画像における非保護領域42の画像は、時間の経過に伴って濃度が低下し、図3(b)及び図4(b)に示される非保護領域42の画像のように、保護領域41の画像よりも退色が著しい画像となる。
【0065】
例えば、非保護領域42が、画像における一部の閉じた領域内に設定されれば、時間の経過とともにその閉じた領域の画像の濃度が他の領域よりも低くなり、その閉じた領域が、他の領域よりも掘り下げられたように見える画像が得られる。
【0066】
また、非保護領域42が、画像における一部の閉じた領域以外の部分に設定されれば、時間の経過とともにその閉じた領域の外側の領域の画像の濃度が低くなり、閉じた領域の画像が浮き彫りにされたように見える画像が得られる。
【0067】
<効果>
以上に示したように、熱転写プリンタ1が採用されることにより、オーバーコート用データにおいて任意の非保護領域42が設定されれば、記録紙4上の画像領域における任意の一部の領域にオーバーコート層を転写しない領域を形成することが可能となる。その結果、記録紙4に転写された画像の楽しみ方として、領域ごとの画像の光沢の違い及び画像の経時的な変色の違いを楽しむという娯楽性に富んだ画像の楽しみ方を提供することが可能となる。
【0068】
<画像形成処理:第2実施例>
次に、図6に示されるフローチャートを参照しつつ、熱転写プリンタ1が実行する第2実施例に係る画像形成処理の手順の一例について説明する。画像形成処理は、熱転写プリンタ1が、ホスト計算機5から画像データを含む印刷ジョブのデータを受信したときに開始される。以下、S11,S12,…S16は、処理の手順の識別符号を表す。
【0069】
前述したように、画像が形成された記録紙4において、非保護領域42の表面は、オーバーコート層が形成されている保護領域41の表面よりも光沢度が低い。また、画像が形成された記録紙4において、画像の表面の光沢度は、画像を記録紙4に転写する際の加熱エネルギーとの間で負の相関があることが知られている。即ち、インクシート3のインク形成部3a,3b,3cを加熱するエネルギーが大きくなるほど、記録紙4に転写される画像の光沢度は低くなる。
【0070】
本実施例に係る画像形成処理は、画像の光沢度が、画像を転写する際の加熱エネルギーの大きさによって変化する特性を利用し、保護領域41の光沢度と非保護領域42の光沢度との違いをより大きくする、或いは、その違いをより小さくすることを可能とする。
【0071】
<ステップS11>
第2実施例に係る画像形成処理において、まず、CPU12が、通信インターフェース11を通じて、ホスト計算機5から画像データ及びオーバーコート用データを含む印刷ジョブのデータを受信する(S11)。さらに、CPU12は、受信した画像データをメモリコントローラ13を通じて第一フレームメモリ14に記録するとともに、受信したオーバーコート用データをメモリコントローラ13を通じて第二フレームメモリ15に記録する(S11)。このステップS11の処理及びステップS11で取り扱われるデータは、ステップS1の処理及びステップS1で取り扱われるデータと同じである。
【0072】
本実施例において、ステップS11の処理を実行する通信インターフェース11及びCPU12は、画像データを入力する画像データ入力部、及び保護層データを入力する保護層データ入力部の一例である。
【0073】
<ステップS12>
次に、画像処理回路17が、第二フレームメモリ15内のオーバーコート用データに基づいて、画像領域の一部の非保護領域42を特定する(S12)。画像処理回路17は、オーバーコート用データにおいて領域区分用しきい値以下の階調データが設定されている領域を非保護領域42と判定する。このステップS12の処理は、CPU12が、画像処理回路17に対して非保護領域を特定する処理の開始指令を出力することによって開始される。
【0074】
<ステップS13>
次に、画像処理回路17が、ステップS2の処理と同様に、受信された第一フレームメモリ14内の画像データに対し、シャープネス演算及びガンマ変換などの各種の画像補正処理を実行する(S13)。但し、このステップS13において、画像処理回路17は、ステップS12で特定された非保護領域42の階調データに対する補正処理を行うときと、それ以外の保護領域41の階調データに対する補正処理を行うときとで、補正用パラメータを切り替える。このステップS13の処理は、CPU12が、画像処理回路17に対して画像データの補正処理の開始指令を出力することによって開始される。
【0075】
例えば、画像処理回路17は、保護領域41の階調データの補正においては、サーマルヘッド21による加熱エネルギーが相対的に小さくなる補正用パラメータを用い、非保護領域42の階調データの補正においては、サーマルヘッド21による加熱エネルギーが相対的に大きくなる補正用パラメータを用いる。より具体的には、非保護領域42の階調データが、保護領域41の階調データと比較して、加熱エネルギーが数パーセントから十数パーセント程度増えるように補正されることが考えられる。これにより、保護領域41の光沢度と非保護領域42の光沢度との違いがより大きくなる。以下、この例を光沢差拡大の例と称する。
【0076】
また、画像処理回路17が、保護領域41の階調データの補正においては、サーマルヘッド21による加熱エネルギーが相対的に大きくなる補正用パラメータを用い、非保護領域42の階調データの補正においては、サーマルヘッド21による加熱エネルギーが相対的に小さくなる補正用パラメータを用いることも考えられる。より具体的には、非保護領域42の階調データが、保護領域41の階調データと比較して、加熱エネルギーが数パーセントから十数パーセント程度減るように補正されることが考えられる。この場合、オーバーコート層の有無によって生じる保護領域41の光沢度と非保護領域42の光沢度との違いが、加熱エネルギーの違いによって緩和される。以下、この例を光沢差緩和の例と称する。
【0077】
なお、画像データの補正のアルゴリズム、即ち、サーマルヘッド21による加熱エネルギーの設定方法は、インクシート3への過大な熱エネルギーの印加によってインクシート3の破断、又は記録紙4へのインクシート3の付着などの不具合が生じないように、実験的に定められる。
【0078】
<ステップS14>
次に、サーマルヘッドコントローラ18が、ステップS3の処理と同様に、第一フレームメモリ14内の補正後の画像データに応じてサーマルヘッド21を制御することにより、インクシート3から記録紙4へ画像を転写させる画像転写処理を実行する(S14)。このステップS14の処理は、CPU12が、サーマルヘッドコントローラ18に対して画像転写指令を出力することによって開始される。
【0079】
なお、本実施例において、ステップS14の処理を実行するサーマルヘッドコントローラ18は、第一制御部の一例である。
【0080】
<ステップS15>
次に、画像処理回路17が、ステップS4の処理と同様に、第二フレームメモリ15内のオーバーコート用データを補正する処理を実行する(S15)。このステップS15の処理は、CPU12が、画像処理回路17に対してオーバーコート用データの補正処理の開始指令を出力することによって開始される。
【0081】
<ステップS16>
最後に、サーマルヘッドコントローラ18が、ステップS5の処理と同様に、第二フレームメモリ15内の補正後のオーバーコート用データに応じてサーマルヘッド21を制御することにより、インクシート3から記録紙4へオーバーコート層を転写させるオーバーコート層転写処理を実行する(S16)。このステップS16の処理は、CPU12が、サーマルヘッドコントローラ18に対してオーバーコート層転写指令を出力することによって開始される。
【0082】
以上に示したように、本実施例において、ステップS12〜S14の処理を実行する画像処理回路17及びサーマルヘッドコントローラ18は、サーマルヘッド21によるインクシート3のインク形成部3a,3b,3cの加熱エネルギーを、記録紙4における保護領域41と非保護領域42とで異なる制御規則に従って制御する。
【0083】
即ち、光沢差拡大の例では、画像処理回路17及びサーマルヘッドコントローラ18は、サーマルヘッド21によるインク形成部3a,3b,3cの加熱エネルギーを、保護領域41での加熱エネルギーが非保護領域42での加熱エネルギーよりも小さくなる制御規則に従って制御する。
【0084】
一方、光沢差緩和の例では、画像処理回路17及びサーマルヘッドコントローラ18は、サーマルヘッド21によるインク形成部3a,3b,3cの加熱エネルギーを、保護領域41での加熱エネルギーが非保護領域42での加熱エネルギーよりも大きくなる制御規則に従って制御する。
【0085】
なお、本実施例において、保護領域41と非保護領域42とで異なる補正用パラメータを用いて画像データの補正処理を行い、補正後の画像データに従ってサーマルヘッド21を制御することが、サーマルヘッド21の制御規則の一例である。また、本実施例において、ステップS16の処理を実行するサーマルヘッドコントローラ18は、第二制御部の一例である。
【0086】
<効果>
以上に示した第2実施例に係る画像形成処理が採用された場合も、第1実施例が採用された場合と同様に、領域ごとの画像の光沢の違い及び画像の経時的な変色の違いを楽しむという娯楽性に富んだ画像の楽しみ方を提供することが可能となる。
【0087】
また、第2実施例において光沢差拡大の例が採用されることにより、記録紙4に転写された画像における保護領域41の光沢度と非保護領域42の光沢度との違いをより顕著にし、領域ごとの画像の光沢の違いを楽しむ効果をより高めることができる。
【0088】
また、第2実施例において光沢差緩和の例が採用されることにより、熱転写プリンタ1は、印刷時点において、画像が保護領域41と非保護領域42とに区分されていることを目視によって認識できない画像を出力することができる。この場合、記録紙4における保護領域41の画像の劣化と非保護領域42の画像の劣化との差が、時間が経過するにつれて拡大する。そのため、ユーザは、一定の期間が経過して初めて、一部の領域が掘り下げられたように見える画像、又は、一部の領域が浮き彫りにされたように見える画像を認識することができる。その結果、画像の経時的な変色の違いを楽しむ効果をより高めることができる。
【0089】
<画像形成処理:第3実施例>
次に、図8に示されるフローチャートを参照しつつ、熱転写プリンタ1が実行する第3実施例に係る画像形成処理の手順の一例について説明する。画像形成処理は、熱転写プリンタ1が、ホスト計算機5から画像データを含む印刷ジョブのデータを受信したときに開始される。以下、S21,S22,…S26は、処理の手順の識別符号を表す。
【0090】
図7に示されるように、昇華性染料インクの画像の濃度の経時変化の特性を予め実験により測定することは可能である。本実施例に係る画像形成処理は、予め測定された画像濃度の経時変化の特性に基づいて、非保護領域42に転写される画像の色の経時変化を表すグラデーション画像を含む画像を記録紙4に転写する処理を含む。
【0091】
<ステップS21>
第3実施例に係る画像形成処理において、まず、CPU12が、通信インターフェース11を通じて、ホスト計算機5から画像データ及びオーバーコート用データを含む印刷ジョブのデータを受信する(S21)。さらに、CPU12は、受信した画像データをメモリコントローラ13を通じて第一フレームメモリ14に記録するとともに、受信したオーバーコート用データをメモリコントローラ13を通じて第二フレームメモリ15に記録する(S21)。このステップS21の処理及びステップS21で取り扱われるデータは、ステップS1の処理及びステップS1で取り扱われるデータと同じである。
【0092】
本実施例において、ステップS21の処理を実行する通信インターフェース11及びCPU12は、画像データを入力する画像データ入力部、及び保護層データを入力する保護層データ入力部の一例である。
【0093】
<ステップS22>
次に、画像処理回路17が、ステップS2の処理と同様に、受信された第一フレームメモリ14内の画像データに対し、シャープネス演算及びガンマ変換などの各種の画像補正処理を実行する(S22)。このステップS22の処理は、CPU12が、画像処理回路17に対して画像データの補正処理の開始指令を出力することによって開始される。
【0094】
<ステップS23>
次に、画像処理回路17が、ステップS12の処理と同様に、第二フレームメモリ15内のオーバーコート用データに基づいて、画像領域の一部の非保護領域42を特定する(S23)。画像処理回路17は、オーバーコート用データにおいて領域区分用しきい値以下の階調データが設定されている領域を非保護領域42として特定する。このステップS23の処理は、CPU12が、画像処理回路17に対して非保護領域を特定する処理の開始指令を出力することによって開始される。
【0095】
<ステップS24>
次に、画像処理回路17が、補正後の画像データにおける非保護領域42内の階調データに基づいて、非保護領域42の画像の色を代表する色である基準色を設定する(S24)。基準色は、グラデーション画像のデータを生成するために用いられる。基準色は、例えば、非保護領域42の画像の色を平均した色、又は、非保護領域42の画像の色において最も頻度の高い色などである。このステップS24の処理は、CPU12が、画像処理回路17に対して基準色設定の開始指令を出力することによって開始される。
【0096】
<ステップS25>
次に、画像処理回路17が、ステップS24で設定された基準色に基づいて、その基準色の経時時間を表すグラデーション画像のデータを生成する(S25)。さらに、画像処理回路17が、第一フレームメモリ14内の画像データにおける保護領域41内の一部の領域のデータをグラデーション画像のデータに置き換えることにより、補正後の画像とグラデーション画像とを合成した画像データを第一フレームメモリ14に格納する(S25)。このステップS25の処理は、CPU12が、画像処理回路17に対してグラデーション画像生成の開始指令を出力することによって開始される。なお、グラデーション画像の具体例については後述する。
【0097】
<ステップS26>
次に、サーマルヘッドコントローラ18が、ステップS3の処理と同様に、第一フレームメモリ14内の補正後の画像データに応じてサーマルヘッド21を制御することにより、インクシート3から記録紙4へ画像を転写させる画像転写処理を実行する(S26)。このステップS26の処理は、CPU12が、サーマルヘッドコントローラ18に対して画像転写指令を出力することによって開始される。
【0098】
ステップS26において記録紙4に転写される画像の保護領域41には、ステップS25で生成されたデータに基づくグラデーション画像が含まれる。即ち、ステップS25及びステップS26において、画像処理回路17及びサーマルヘッドコントローラ18は、記録紙4上の保護領域41内に、画像データの画像の一部に代えてグラデーション画像45を転写させる。
【0099】
図9は、本実施例に係る画像形成処理によって形成される画像の一例を示す図である。図9に、グラデーション画像45の一例が示されている。図9に示されるグラデーション画像45は、グラデーションのゲージ画像43と、印刷時点からの経過時間を表す経過時間情報44と、グラデーションのゲージ画像43とを含む。
【0100】
また、グラデーションのゲージ画像43は、印刷直後の画像の色に相当する基準色のパターン画像と、非保護領域42の基準色が、経過時間情報44が表す時間が経過した時点までに変化した色のパターン画像とを含む。
【0101】
なお、図9に示されるグラデーションのゲージ画像43は、描画精度の都合上、色の経時変化が非常に粗い区分で示されている。しかしながら、グラデーションのゲージ画像43は、より精細な区分で色の経時変化を示す画像であることが望ましい。
【0102】
また、本実施例において、ステップS25及びステップS26の処理を実行する画像処理回路17及びサーマルヘッドコントローラ18は、第一制御部の一例である。
【0103】
<ステップS27>
次に、画像処理回路17が、ステップS4の処理と同様に、第二フレームメモリ15内のオーバーコート用データを補正する処理を実行する(S27)。このステップS27の処理は、CPU12が、画像処理回路17に対してオーバーコート用データの補正処理の開始指令を出力することによって開始される。
【0104】
<ステップS28>
最後に、サーマルヘッドコントローラ18が、ステップS5の処理と同様に、第二フレームメモリ15内の補正後のオーバーコート用データに応じてサーマルヘッド21を制御することにより、インクシート3から記録紙4へオーバーコート層を転写させるオーバーコート層転写処理を実行する(S28)。このステップS16の処理は、CPU12が、サーマルヘッドコントローラ18に対してオーバーコート層転写指令を出力することによって開始される。
【0105】
なお、本実施例において、ステップS28の処理を実行するサーマルヘッドコントローラ18は、第二制御部の一例である。
【0106】
<効果>
以上に示した第3実施例に係る画像形成処理が採用された場合も、第1実施例が採用された場合と同様に、領域ごとの画像の光沢の違い及び画像の経時的な変色の違いを楽しむという娯楽性に富んだ画像の楽しみ方を提供することが可能となる。
【0107】
また、第3実施例において、非保護領域42に転写される画像の色の経時変化を表すグラデーション画像45を含む画像が、記録紙4における保護領域41内に転写される。そのため、画像の鑑賞者は、非保護領域42の画像とグラデーション画像45との比較により、印刷時点からの経過時間を推定することが可能である。このように、第3実施例に係る画像形成処理を実行する熱転写プリンタ1は、印刷時点からの経過時間を推定するという従来にない画像の楽しみ方を提供することができる。
【0108】
<その他>
以上に示された実施形態においては、CPU12が、通信インターフェース11を通じて、ホスト計算機5から画像データ及びバーコード用データを入力する。しかしながら、CPU12が、他の経路で画像データ及びバーコード用データを入力することも考えられる。
【0109】
例えば、熱転写プリンタ1が、画像データ及びオーバーコート用データを記憶する外部メモリからデータを読み取るメモリドライブ装置を備えることが考えられる。この場合、CPU12は、メモリドライブ装置を通じて画像データ及びオーバーコート用データを読み取り、各データを第一フレームメモリ14及び第二フレームメモリ15各々へ記録する。そのような処理を実行するCPU12及びメモリドライブ装置も、画像データ入力部及び保護層データ入力部の一例である。
【0110】
また、以上に示された実施形態においては、CPU12が、ホスト計算機5から画像データ及びバーコード用データを連続的に入力する。しかしながら、CPU12が、画像データの補正処理の前にホスト計算機5から画像データを入力し、画像データの補正処理の後、オーバーコート用データの補正処理の前に、ホスト計算機5からバーコード用データを入力することも考えられる。
【0111】
また、以上に示された実施形態において、グラデーション画像45は、保護領域41の画像の色を代表する基準色に基づいて生成された。しかしながら、グラデーション画像45が、予め定められた色、例えば、イエロー、シアン及びマゼンタの3原色各々を基準にして生成されることも考えられる。
【0112】
また、第3実施例に係る画像形成処理におけるグラデーション画像45の生成及び合成の処理(S25)を、第2実施例に係る画像形成処理に適用することも考えられる。
【符号の説明】
【0113】
1 熱転写プリンタ、3 インクシート、3a,3b,3c インク形成部、3d 保護材形成部、3y オーバーコート層、3x インク画像の層、4 記録紙、5 ホスト計算機、11 通信インターフェース、12 CPU、13 メモリコントローラ、14 第一フレームメモリ、15 第二フレームメモリ、16 不揮発性メモリ、17 画像処理回路、18 サーマルヘッドコントローラ、19 バス、20 画像形成部、21 サーマルヘッド、22 プラテンローラ、23 ペーパーロール、30 インクシートユニット、41 保護領域、42 非保護領域、43 グラデーションのゲージ画像、44 経過時間情報、45 グラデーション画像、S1〜S5,S11〜S16,S21〜S28 ステップ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
現像体に形成された複数の色の現像剤の部分各々と透明な保護材の部分とを順次加熱することによって前記現像体から被転写体へ画像と透明な保護層とを重ねて転写するサーマルヘッドを備えた面順次方式の熱転写プリンタであって、
画像データを入力する画像データ入力部と、
前記被転写体における前記保護層が転写される保護領域及びそれ以外の非保護領域を特定する保護層データを入力する保護層データ入力部と、
前記画像データに応じて前記サーマルヘッドによる前記現像体の前記現像剤の部分の加熱エネルギーを制御することにより、前記現像体から前記被転写体へ画像を転写させる第一制御部と、
前記保護層データに応じて前記サーマルヘッドによる前記現像体の前記保護材の部分の加熱エネルギーを制御することにより、前記現像体から前記被転写体の一部の前記保護領域に対してのみ前記保護層を転写させる第二制御部と、を備えることを特徴とする熱転写プリンタ。
【請求項2】
前記第一制御部は、前記サーマルヘッドによる前記現像体の前記現像剤の部分の加熱エネルギーを、前記被転写体における前記保護領域と前記非保護領域とで異なる制御規則に従って制御する、請求項1に記載の熱転写プリンタ。
【請求項3】
前記第一制御部は、前記サーマルヘッドによる前記現像体の前記現像剤の部分の加熱エネルギーを、前記被転写体における前記保護領域での加熱エネルギーが前記非保護領域での加熱エネルギーよりも小さくなる制御規則に従って制御する、請求項2に記載の熱転写プリンタ。
【請求項4】
前記第一制御部は、前記サーマルヘッドによる前記現像体の前記現像剤の部分の加熱エネルギーを、前記被転写体における前記保護領域での加熱エネルギーが前記非保護領域での加熱エネルギーよりも大きくなる制御規則に従って制御する、請求項2に記載の熱転写プリンタ。
【請求項5】
前記被転写体における前記非保護領域に転写される画像の色の経時変化を表すグラデーション画像のデータを生成するグラデーション画像データ生成部をさらに備え、
前記第一制御部は、前記被転写体における前記保護領域内に前記画像データの画像の一部に代えて前記グラデーション画像を転写させる、請求項1から請求項4のいずれかに記載の熱転写プリンタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−131054(P2012−131054A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−283029(P2010−283029)
【出願日】平成22年12月20日(2010.12.20)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】