説明

熱転写印字可能なヒートシール性帯封紙

【課題】
食品、スーパー、コンビニなどのそば、お弁当、おにぎり、お総菜などの包装、ほうれん草、ネギなどの野菜、その他花類などの結束などに使用する帯封紙などとして、ヒートシール性を持ち、適度な強度を有しつつ、手によって容易に切断することができ、かつ熱転写プリンタにて印字することが可能なヒートシール性の帯封紙を得ること。
【解決手段】
基材に紙を用い、その表面および裏面に、ポレオレフィンからなる薄膜樹脂層を形成した帯封紙であって、前記樹脂層が熱転写印字可能な耐熱性ならびに表面性を有し、かつ、該表面と裏面を接触させ加熱することで溶融接着するヒートシール性を有し、かつ、手で容易に切断できることを特徴とする熱転写印字可能なヒートシール性帯封紙。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は帯封紙に関し、さらに詳しくは、ヒートシール性を持ち、適度な強度を有しつつ、手によって容易に切断することができ、かつ熱転写プリンタにて印字することが可能なヒートシール性の帯封紙に関するものである。
【背景技術】
【0002】
食品包装分野において、野菜や草花、和菓子やケーキ類などの箱やプラケースを商品情報や日付などの情報を印刷した結束テープや帯封シートにて包装するものが存在する。
【0003】
例えば特許文献1にあるように、熱転写プリンタにて印字可能なフィルムなどの樹脂製であってヒートシールする構造の結束テープや帯封シートは提案されているが、開封するときに手で切断できずに、ハサミなどの刃物を使用するか、あらかじめ点線切れ込みを入れておくなどの前工程を踏むか、ヒートシールしたところから剥がして使用するかなどの手間がかかり、不便であった。
【0004】
また、紙製で感熱接着剤をコーティングしたタイプのヒートシール性を有する帯封紙もあるが、強度が弱く、運送時などに切れる恐れがあった。
特許文献2や特許文献3などには、特別な紙を用いその上に感熱接着剤をコーティングしたタイプや特別な樹脂層を積層して強度を上げた、ヒートシール性を有する結束用紙バンドなるものもあるが、荷物用のもので、逆に手で容易に切ることができないものであった。
さらに、紙の表面に感熱接着剤をコーティングしているものは、熱転写プリンタで印字をするとリボンが熱接着されてしまい、追加情報を印字することが不可能であった。
【0005】
特許文献4などには、紙にバリヤ層を設けて接着剤層を形成する銀行券用帯紙が提案されているが、やはり、熱転写プリンタで印字をするとリボンが熱接着されてしまい、追加情報を印字することが不可能であった。
【0006】
【特許文献1】特開2007−261638号公報
【特許文献2】特開2006−8196号公報
【特許文献3】特開平10−29262号公報
【特許文献4】特開2002−178433号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ヒートシール性を持ち、適度な強度を有しつつ、手によって容易に切断することができ、かつ熱転写プリンタにて印字することが可能なヒートシール性の帯封紙を得ることなどを本発明の目的とし、そのような課題の解決手段を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、基材に紙を用い、その表面および裏面に特定の薄膜樹脂層を形成した構成の帯封紙とすることなどにより本発明を完成した。
すなわち、本発明は、
「1.基材に紙を用い、その表面および裏面に、ポレオレフィンからなる薄膜樹脂層を形成した帯封紙であって、前記樹脂層が熱転写印字可能な耐熱性ならびに表面性を有し、かつ、該表面と裏面を接触させ加熱することで溶融接着するヒートシール性を有し、かつ、手で容易に切断できることを特徴とする熱転写印字可能なヒートシール性帯封紙。
2.全体の厚みが130μm以下であることを特徴とする第1項に記載の熱転写印字可能なヒートシール性帯封紙。
3.引張強度が2kN/m以上、引裂強度が600〜1500mN以下である、第1項または第2項のいずれか1項に記載の熱転写印字可能なヒートシール性帯封紙。」に関する。
【発明の効果】
【0009】
上記発明によれば、ヒートシール性を持ち、適度な強度を有しつつ、手によって容易に切断することができ、かつ熱転写プリンタにて印字することが可能なヒートシール性の帯封紙を得ることができる優れた効果を奏するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の帯封紙の基本構成は、基材に紙を用い、その表面および裏面に特定の薄膜樹脂層を形成する紙と特定の薄膜樹脂層の融合物である。
【0011】
薄膜樹脂層を構成する樹脂としては、ポリエチレンやポリプロピレンといったポリオレフィンが用いられる。中でも、ヒートシール性を持ち、適度な強度を有しつつ、手によって容易に切断することができ、かつ熱転写プリンタにて印字することが可能な材料という観点から見てポリプロピレンが好ましい。
【0012】
該ポリオレフィンの熱物性としては、軟化点が120℃を超え150℃以下であると好ましい。この範囲を上回ると、熱を与えて表面を一時的に溶融させて熱溶着する、いわゆるヒートシール性能に劣る傾向にあり、この範囲を下回ると、熱転写プリンタにおける印字の際にプリントヘッドから与えられる熱で帯封紙表面が熱溶融してしまい、印字リボンと熱接着してしまうので、リボンが搬送されず印字不良となってしまう傾向があり好ましくない。
表面および裏面の両方に同種の材料を用いると、塗り分けの手間が入らず、ヒートシール時の相性等の面においても有利であるが、異種の材料を用いてもかまわない。異種の材料を用いる場合は、少なくとも表面側(プリンタ印字する側)に、軟化点が120℃を超え150℃以下であるポレオレフィンを用いた層とすることが好ましい。
【0013】
基材とその表面および裏面に薄膜樹脂層を形成した本発明の帯封紙において、引張強度が2kN/m以上、引裂強度が600〜1500mN以下の帯封紙であると、通常時は適度な強度を有しつつ、開封時には手で容易に切断することができる帯封紙を得ることができるので、好ましい。
【0014】
この範囲を上回ると、開封時に手で容易に切れず、ハサミなどの道具を使わないといけないのでわずらわしく、刃物を使用するのである程度の危険性も生ずる傾向となる。あらかじめ点線切れ込みや側端部に切れ込みを入れて容易に切りやすいようにすることも可能であるが、工程が増えることでコストアップになるなどの不具合がある。また、その部分だけ、他と比べて強度が落ちるので、物流途上で誤って切れてしまうなど商品価値を下げてしまう確率が上がってしまう。
一方、この範囲を下回ると、全体的な強度が不足するので、上記同様、物流途上でどの部分からも切れてしまう不具合が危惧される。
より好ましくは、引張強度が2〜11kN/mであり、引張強度2〜5kN/mが最適である。
【0015】
本発明において帯封紙全体の厚みが130μm以下であると好ましい。この範囲を上回ると、上記同様、開封時に手で容易に切れず、ハサミなどの道具を使わないといけないのでわずらわしく、刃物を使用するのである程度の危険性もある上、厚みが厚すぎてバネ剛性力が発生し、商品を巻回し包装する際に商品に密着しない傾向がある。また、厚すぎると同様にバネ剛性力が発生するので、プリンタ印字の際、浮きが発生しやすく、印字不良となる場合がある。
一方、例えば50μmを下回るなどあまりに薄すぎると、全体的な強度が不足するので、上記同様、物流途上などでの強度不足で切れてしまう不具合が危惧される。
【0016】
本発明の帯封紙の裏面、すなわちプリンタ印字する面の逆面には、熱接着性の樹脂材料等により接着補強する強ヒートシール層を設けてもよい。
【0017】
また、各層の間には各種中間機能層を設けてもよい。
【0018】
また、本発明の帯封紙の表面、すなわちプリンタ印字する面側には、熱転写プリンタによる印字を妨げない範囲で、加飾印刷等も可能である。その際、通常の印刷を施す場合は、ヒートシールの際に使用しない部分に加飾することが好ましい。
【0019】
やむを得ずヒートシールする部分にも加飾したい場合には、加飾印刷等の印刷ビヒクルをヒートシール可能な材料で形成し、該加飾印刷表面もヒートシール性を有するようにしておけばより好ましい。また、その際、熱転写印刷可能な材料で加飾印刷しておけば加飾部分にも熱転写印刷ができるので、より好ましい。
【実施例】
【0020】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。
【0021】
実施例1
紙基材の表面および裏面に融点140℃のポリプロピレンに酸化チタンを練り込んだ薄膜樹脂層を全体の厚みが80μmになるように配設し、本発明の熱転写印字可能なヒートシール性帯封紙を完成した。
該帯封紙は、引張強度(MD4.7kN/m、CD2.2kN/m)で、引裂強度(MD620mN、CD770mN)であった。
該帯封紙に市販の熱転写プリンタにてセミレジン系リボンならびにワックス系リボンの2種類を用い商品名や日付などの印字試験を行ったところ、良好な印字を得ることができた。
また、該帯封紙をおにぎり包装に用い、商品を巻回した後に該表面と同裏面を接触させ、ヒートシーラーにて加熱したところ、良好に溶融接着し、強度のあるヒートシールができた。
また、該帯封紙は、商品搬送において十分な強度を有するものであり、かつ、開封時には手で容易に切断し、開封できる優れたものであった。
【0022】
実施例2〜5および比較例1〜2
表1ならびに下記に示した事項を除き、実施例1と同様にして帯封紙を完成し、その物性値ならびにその評価を表1に記載した。
【0023】
実施例2
全体の厚みを100μmにした以外は実施例1と同様にして本発明の熱転写印字可能なヒートシール性帯封紙を完成した。
実施例2の帯封紙は、実施例1と同様に良好な評価を得られるものであった。
【0024】
実施例3
裏面側の薄膜樹脂層を融点106℃のポリエチレンからなる薄膜樹脂層とし、全体の厚みを100μmにした以外は実施例1と同様にして本発明の熱転写印字可能なヒートシール性帯封紙を完成した。
実施例3の帯封紙は、ヒートシール性を除き実施例1、2と同様の評価であったが、該ヒートシール性においては、材質面ならびに表面と裏面の材質の違い等から表面を鏡面仕上げにした場合にのみ満足できるヒートシール性を有するものであった。
【0025】
実施例4
実施例1と同様の層構成で、紙基材の厚みを増やし、全体の厚みを220μmにした以外は実施例1と同様にして帯封紙を完成した。
実施例4の帯封紙は、厚みが厚すぎてバネ剛性力が発生し、商品を巻回し包装する際に商品に密着しにくく帯封のし易さにやや劣るものであり、開封時、手で切る際にやや力がいるものであり、開封のし易さにやや劣るものであった。また、熱転写プリンタ印字の際、浮きが発生し、印字不良となる場合があった。
【0026】
実施例5
実施例1と同様の層構成で、紙基材の厚みを増やし、全体の厚みを300μmにした以外は実施例1と同様にして帯封紙を完成した。
実施例5の帯封紙は、実施例5に比べてもさらに厚みが厚すぎてバネ剛性力が発生し、商品を巻回し包装する際に商品に密着しにくく帯封のし易さに劣るものであり、開封時、手で切る際に力がいるものであり、開封のし易さに劣るものであった。また、熱転写プリンタ印字の際、浮きが発生し、印字不良となる場合があった。
【0027】
比較例1
実施例1における表面ならびに裏面の薄膜樹脂層に代えて、それぞれTg0℃のSBRに無機顔料を練り込んだ薄膜樹脂層を配設し帯封紙を完成した。
比較例1の帯封紙は、印字適正に優れたものであったが、ヒートシーラーで加熱しても接着できなかった。
【0028】
比較例2
実施例1における薄膜樹脂層に代えて、Tg40℃のアクリルバインダーからなる表面側の薄膜樹脂層を配設し、Tg20℃のアクリルバインダーに無機顔料を練り込んだ裏面側の薄膜樹脂層を配設し、帯封紙を完成した。
比較例2の帯封紙は、比較例1同様、印字適正に優れたものであったが、ヒートシーラーで加熱しても接着できなかった。
【0029】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は、食品、スーパー、コンビニなどのそば、お弁当、おにぎり、お総菜などを包装する帯封紙、ほうれん草、ネギなどの野菜、その他花類などを結束する帯封紙などとして利用可能である。
特に大ロット印刷による大量資材供給が不向きな少量多品種の商材で日付などの日々変更される情報属性を有し、熱転写プリンタによる情報付与に適する帯封紙としてより好適に利用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材に紙を用い、その表面および裏面に、ポレオレフィンからなる薄膜樹脂層を形成した帯封紙であって、前記樹脂層が熱転写印字可能な耐熱性ならびに表面性を有し、かつ、該表面と裏面を接触させ加熱することで溶融接着するヒートシール性を有し、かつ、手で容易に切断できることを特徴とする熱転写印字可能なヒートシール性帯封紙。
【請求項2】
全体の厚みが130μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の熱転写印字可能なヒートシール性帯封紙。
【請求項3】
引張強度が2kN/m以上、引裂強度が600〜1500mN以下である、請求項1または2のいずれか1項に記載の熱転写印字可能なヒートシール性帯封紙。

【公開番号】特開2010−64763(P2010−64763A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−231577(P2008−231577)
【出願日】平成20年9月9日(2008.9.9)
【出願人】(303022891)株式会社パイロットコーポレーション (647)
【出願人】(000145068)株式会社寺岡精工 (317)
【Fターム(参考)】