説明

熱転写印画物の製造方法、および熱転写シート

【課題】キレート可能な昇華性染料を熱転写受像シートの受容層に転写形成した熱転写印画物の色相耐久性に優れ、受容層上に密着性よく保護層を形成でき、かつ生産性に優れた熱転写印画物の製造方法を提供する。
【解決手段】支持基板、及び支持基板上に形成されたバインダー樹脂及びキレート可能な昇華性染料を含む熱転写シートの染料層と、基材、及び基材上に形成されたキレート可能な金属イオンを含む熱転写受像シートの受容層とを対向、加熱し、昇華性染料を受容層に転写させる熱転写工程と、昇華性染料が転写された受容層、及び支持基板と、支持基板上に形成された熱変換物質を含む保護層熱転写シートの保護層を対向、加熱することにより、受容層上に保護層を形成する保護層形成工程と、受容層上に形成された保護層に電磁波の照射を行う電磁波照射工程とを有することを特徴とする熱転写印画物の製造方法により上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キレート可能な昇華性染料を用いた熱転写印画物の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、簡易的に高精細な画像を形成できる方法として熱転写方法が広く知られている。この熱転写方法としては種々の方法のものが公知であるが、そのなかでも昇華性染料を記録材とし、これを紙やプラスチックフィルム等の支持基板に担持させて染料熱転写シートとしたものを、サーマルヘッド等の加熱手段によって紙やプラスチックフィルム等の表面に染料受容層を設けた熱転写受像シートに上記昇華性染料を染着することにより各種のフルカラー画像を形成する昇華転写方法が、より高精細な画像を形成できる方法として知られている。この昇華転写方法は昇華性染料を色材としている為、濃度階調を自由に調節することができ、原稿のフルカラー画像が表現できるという利点を有している。また、染料により形成された画像は非常に鮮明で、かつ透明性に優れているため、中間色の再現性や階調再現性に優れ、銀塩写真に匹敵する高品質の画像を形成することが可能であるという利点を有している。このような利点から、昇華転写方法は、現在、写真プリンター等に広く用いられるに至っている。
【0003】
このような昇華性を有する昇華性染料を用いた熱転写印画物は、画像の安定性、即ち耐光性や定着性がよくないという欠点があった。このような問題に対して、特許文献1は、上記昇華性染料として、キレート形成可能な昇華性染料を用い、かつ上記染料受容層が上記キレート形成可能な昇華性染料と反応してキレート化合物を形成し得る金属イオンを含むものとすることにより、転写された昇華性染料の上記染料受容層における定着性を向上させる方法が開示されている。
【0004】
しかしながら上記キレート形成可能な昇華性染料を用いた熱転写印画物であっても、耐光性、耐候性、耐摩耗性等の耐久性が不十分な場合があった。上記耐久性を改善する手段として、近年、画像が形成された受容層上に、保護層を設ける方法が提案されている。上記受容層上に保護層を設けると、上述のような、耐光性、耐候性、耐摩耗性等の耐久性等の物理耐性を向上させることができる。
このような保護層としては、通常、印画物の鮮明さを損なうことのない透明樹脂からなるものが用いられるが、受容層との密着性が十分でない場合には、時間経過に伴い保護層が剥離し、耐久性が低下するといった問題があった。ここで、一般的な保護層形成方法としては、保護層を形成可能な保護層形成用層を受容層と対向し、接触させた後、加熱することにより保護層を転写・形成する方法が用いられる。そのため、密着性を向上させる方法としては、保護層を形成する際に、保護層としての透明性、耐久性といった特性に影響を与えない範囲で、加熱時間を長くし、受容層との界面部分を十分に可塑化させることが考えられる。しかしながら、通常、保護層の形成に用いられる加熱手段としては、染料の転写と同様にサーマルヘッド等が用いられ、加熱時間を長くしようとした場合には、ライン速度の低下が生じるといった問題があった。
【0005】
また、上述した熱転写印画物の耐久性が不十分なものとなる原因のひとつに、受容層に転写された昇華性染料のキレート反応が不十分であることが知られている。そこで耐久性向上のために、昇華性染料の転写後の熱転写受像シートの加熱処理を行い、キレート反応を進行させる方法が提案されているが、受容層を効果的に加熱する方法がないため、生産性が低くなるといった問題があった。
【0006】
【特許文献1】特開昭59−78893公報
【特許文献2】特開平11−20329公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、キレート可能な昇華性染料が熱転写受像シートの受容層に転写されることで形成される熱転写印画物の色相変化等の耐久性を優れたものとし、熱転写受像シートの受容層上に密着性よく保護層を形成することができ、かつ生産性に優れた熱転写印画物の製造方法を提供することを主目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、支持基板、および上記支持基板上に形成され、バインダー樹脂およびキレート可能な昇華性染料を含む染料層を有する染料熱転写シートの上記染料層と、基材、および上記基材上に形成され、キレート可能な金属イオンを含む受容層を有する熱転写受像シートの上記受容層と、を対向させて加熱することにより、上記キレート可能な昇華性染料を、上記受容層に転写させる熱転写工程と、上記熱転写工程により昇華性染料が転写された上記受容層、および支持基板と、上記支持基板上に形成され、熱変換物質を含む保護層形成用層と、を有する保護層熱転写シートの上記保護層形成用層を対向させて加熱することにより、上記受容層上に保護層を形成する保護層形成工程と、上記熱転写受像シートの上記受容層上に形成された上記保護層に電磁波の照射を行う電磁波照射工程と、を有することを特徴とする熱転写印画物の製造方法を提供する。
【0009】
本発明によれば、上記保護層形成工程によって上記熱転写受像シートの受容層上に形成された熱変換物質を有する保護層に上記熱変換物資が吸収可能な電磁波の照射を行うことで、上記保護層を選択的に加熱し、上記保護層と熱転写受像シートが有する上記受容層との密着性を効率的に向上させることができる。
【0010】
また、従来の熱転写印画物の製造方法において、上記保護層の密着性を向上させるタイミングとしては、保護層形成時のサーマルヘッド等の加熱手段による加熱時を挙げることができるが、このような加熱手段は、移動する上記熱転写受像シートに対して、上記熱転写受像シートの進行方向と垂直方向に並んだ線状、または点状に配置されているため、上記加熱手段によって長時間加熱を行う場合には上記熱転写受像シートの移動速度を低下させる必要があるといった問題があった。一方、本発明によれば上記保護層形成後の電磁波照射工程により上記保護層を効率よく加熱し密着性を上げることができるため、上記保護層形成時において、密着性を上げるための加熱時間を短縮することができる。したがって上記熱転写受像シートの移動速度を上げることが可能となり、熱転写印画物の生産性を優れたものとすることができる。
【0011】
さらに、上記電磁波照射工程において上記保護層を加熱することにより、上記保護層が形成された上記受容層に効率的に熱を伝えることを可能とする。そのため、上記受容層に転写された昇華性染料のキレート反応を効率よく進行させ、熱転写印画物の色相変化等を少ないものとすることができる。
【0012】
本発明においては、上記保護層形成用層が、剥離層と、熱可塑性樹脂からなる接着層とを、上記支持基板上にこの順で積層してなるものであり、かつ上記接着層にのみ上記熱変換物質が含まれるものであることが好ましい。上記接着層のみが熱変換物質を含むことで、上記受容層との密着性に最も寄与する上記接着層のみを選択的に加熱することができる。したがって上記受容層と、上記保護層との密着性をより効率的に高めることができるからである。
また、上記接着層を選択的に加熱することが可能となることにより、上記接着層と接する上記受容層に含まれる昇華性染料のキレート反応をより効率的に促進することができるからである。
【0013】
また、本発明においては、上記電磁波が、マイクロ波、または赤外線であることが好ましい。上記電磁波がマイクロ波、または赤外線であることにより、保護層を効率的に加熱し密着性、生産性に優れたものにできるからである。
さらに、本発明においては、上記電磁波がマイクロ波である場合においては、上記熱変換物質がポリビニルブチラール樹脂であることが好ましく、上記電磁波が赤外線である場合には、上記熱変換物質がジイモニウム類またはシアニン系化合物であることが好ましい。上記熱変換物質を、上記各電磁波を選択的に吸収し熱に変換するものとすることにより、熱転写印画物の生産性をより優れたものにできるからである。
【0014】
本発明は、支持基板と、上記支持基板上に形成され、熱変換物質を含む保護層形成用層と、を有することを特徴とする熱転写シートを提供する。
【0015】
本発明によれば、上記保護層形成用層が熱変換物質を含むことにより、加熱・転写により保護層を形成した後に、上記熱変換物質が選択的に吸収できる電磁波を照射することで、保護層を選択的に加熱することができる。したがって、上記保護層を昇華性染料が転写された熱転写受像シートの受容層上に形成した場合には、電磁波を照射することで上記保護層の密着性の向上、転写された昇華性染料のキレート反応の進行による熱転写印画物の色相変化等の耐久性の向上、および生産性の向上を図ることができる。
【0016】
本発明においては、上記支持基板上に形成され、キレート可能な昇華性染料を含む染料層を有することが好ましい。上記染料層および保護層形成用層を同一支持基板上に有することにより、上記染料層が有する昇華性染料の転写と、保護層の形成を容易なものとすることができるからである。
【0017】
また、本発明においては、上記保護層形成用層が、剥離層と、熱可塑性樹脂からなる接着層とを上記支持基板上にこの順で積層してなるものであり、かつ上記接着層にのみ上記熱変換物質が含まれるものであることが好ましい。上記接着層のみが熱変換物質を含むことで、上記受容層と、上記保護層との密着性をより効率的に高めることができ、さらに上記接着層と接する上記受容層に含まれる昇華性染料のキレート反応をより効率的に促進することができるからである。
【0018】
本発明は、基材、および上記基材上に形成され、金属イオンと昇華性染料とが結合してなるキレート型発色体を含む受容層、を有する熱転写受像シートと、上記受容層上に形成され、熱変換物質を含む保護層と、を有することを特徴とする熱転写印画物を提供する。
【0019】
本発明によれば、上記保護層が熱変換物質を有することにより、例えば、上記熱変換物質が吸収可能な電磁波を照射することにより、上記受容層と上記保護層との密着性を向上させることができる。また上記密着性の向上と共に、上記昇華性染料のキレート反応を促進することができるため、色相変化等が少ないものとすることができる。
【0020】
本発明においては、上記保護層が、熱可塑性樹脂からなる接着層と、剥離層とを上記受容層上にこの順で積層してなるものであり、かつ上記接着層にのみ上記熱変換物質が含まれるものであることが好ましい。上記受容層と接する上記接触層のみが熱変換物質を有することにより、上記受容層と上記保護層との密着性の向上および上記昇華性染料のキレート反応促進が容易に図れるため、色相変化等の耐久性に優れたものとすることができるからである。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、キレート可能な昇華性染料が熱転写受像シートの受容層に転写されることで形成される熱転写印画物の色相変化等の耐久性を優れたものとし、熱転写受像シートの受容層上に密着性よく保護層を形成することができ、かつ生産性に優れた熱転写印画物の製造方法を提供するといった効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明は、熱転写印画物の製造方法と、熱転写印画物の製造に用いられる熱転写シート、および熱転写印画物に関するものである。以下、本発明の熱転写印画物の製造方法、熱転写シート、および熱転写印画物について説明する。
【0023】
A.熱転写印画物の製造方法
まず、本発明の熱転写印画物の製造方法について説明する。本発明の熱転写印画物の製造方法は、支持基板、および上記支持基板上に形成され、バインダー樹脂およびキレート可能な昇華性染料を含む染料層を有する染料熱転写シートの上記染料層と、基材、および上記基材上に形成され、キレート可能な金属イオンを含む受容層を有する熱転写受像シートの上記受容層と、を対向させて加熱することにより、上記キレート可能な昇華性染料を、上記受容層に転写させる熱転写工程と、上記熱転写工程により昇華性染料が転写された上記受容層、および支持基板と、上記支持基板上に形成され、熱変換物質を含む保護層形成用層と、を有する保護層熱転写シートの上記保護層形成用層を対向させて加熱することにより、上記受容層上に保護層を形成する保護層形成工程と、上記熱転写受像シートの上記受容層上に形成された上記保護層に電磁波の照射を行う電磁波照射工程と、を有することを特徴とするものである。
【0024】
次に、このような本発明の熱転写印画物の製造方法について、図を参照して説明する。図1は、本発明の熱転写印画物の製造方法の一例を示した工程図である。図1に例示するように、本発明の熱転写印画物の製造方法は、支持基板1、および上記支持基板1上に形成され、バインダー樹脂およびキレート可能な昇華性染料を含む染料層2を有する染料熱転写シート3の上記染料層2と、基材4、および上記基材4上に形成され、キレート可能な金属イオンを含む受容層5を有する熱転写受像シート6の上記受容層5と、を対向・接触させた状態で加熱することにより、上記キレート可能な昇華性染料を、上記受容層5に転写させる熱転写工程(図1(a))と、上記熱転写工程により昇華性染料が転写された上記受容層5、および支持基板1と、上記支持基板1上に形成され、熱変換物質を含む保護層形成用層12と、を有する保護層熱転写シート10の上記保護層形成用層12を対向・接触させて加熱することにより、上記受容層5上に上記保護層形成用層12を転写する保護層形成工程(図1(b))と、上記熱転写受像シート6の上記受容層5上に保護層形成用層12が転写されたことにより形成された保護層20に電磁波の照射を行う電磁波照射工程(図1(c))と、を有するものである。
【0025】
本発明によれば、上記保護層形成工程によって上記熱転写受像シート上に形成された熱変換物質を有する保護層に上記熱変換物資が吸収可能な電磁波の照射を行うことで、上記保護層を選択的に加熱し、上記保護層と熱転写受像シートが有する上記受容層との密着性を効率的に向上させることができる。
また、通常の熱転写印画物の製造方法において、上記保護層の密着性を向上させるタイミングとしては、保護層形成時のサーマルヘッド等の加熱手段による加熱時を挙げることができるが、このような加熱手段は、移動する上記熱転写受像シートに対して、上記熱転写受像シートの進行方向と垂直方向に並んだ線状、または点状に配置されているため、上記加熱手段によって長時間加熱を行う場合には上記熱転写受像シートの移動速度を低下させる必要がある。しかしながら上記保護層形成後の電磁波照射工程により上記保護層を効率よく加熱し密着性を上げることができるため、上記保護層形成時において、密着性を上げるための加熱時間を短縮することができる。したがって上記熱転写受像シートの移動速度を上げることが可能となり、熱転写印画物の生産性を優れたものとすることができる。
さらに、上記電磁波照射工程において上記保護層を加熱することにより、上記保護層が形成された上記受容層に効率的に熱を伝えることを可能とする。そのため、上記受容層に転写された昇華性染料のキレート反応を効率よく進行させ、熱転写印画物の色相変化等を少ないものとすることができる。
【0026】
本発明の熱転写印画物の製造方法は、熱転写工程、保護層形成工程、電磁波照射工程を有するものである。以下、これらの各工程について詳細に説明する。
【0027】
1.熱転写工程
本発明に用いられる熱転写工程は、支持基板、および上記支持基板上に形成され、バインダー樹脂およびキレート可能な昇華性染料を含む染料層を有する染料熱転写シートの上記染料層と、基材、および上記基材上に形成され、キレート可能な金属イオンを含む受容層を有する熱転写受像シートの上記受容層と、を対向させて加熱することにより、上記キレート可能な昇華性染料を、上記受容層に転写させる工程である。上記昇華性染料がキレート可能な昇華性染料であることにより、上記昇華性染料を上記熱転写受像シートの受容層に転写させてなる熱転写印画物の色相変化等の耐久性を高いものとすることができる。以下、このような熱転写工程について説明する。
【0028】
(1)染料熱転写シート
本工程に用いられる染料熱転写シートは、支持基板と、上記支持基板上に形成された染料層とを有するものである。以下このような染料熱転写シートの各構成について説明する。
【0029】
(a)支持基板
本工程に用いられる支持基板の材料としては、熱転写印画物を形成する際の印画条件等に応じて所望の耐熱性を有するものであれば特に限定されるものではない。本工程に用いられる支持基板としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、1,4−ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリフェニレンサルフィドフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリサルホンフィルム、アラミドフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、セロハン、酢酸セルロース等のセルロース誘導体、ポリエチレンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ナイロンフィルム、ポリイミドフィルム、アイオノマーフィルム等のプラスチックフィルムを挙げることができる。
【0030】
本工程に用いられる支持基板の厚みは、支持基板を構成する材料等に応じて所望の強度を備えることができる範囲内であれば特に限定されないが、通常、0.5μm〜50μmの範囲内が好ましく、特に1μm〜10μmの範囲内が好ましい。
【0031】
また、本工程に用いられる支持基板は、染料層を形成する面に接着処理が施されたものであっても良い。このような接着処理が施されることによって、例えば、上記支持基板としてプラスチックフィルムを用いる場合においても、染料層との密着性を向上することができる。
【0032】
上記接着処理としては、例えば、コロナ放電処理、火炎処理、オゾン処理、紫外線処理、放射線処理、粗面化処理、化学薬品処理、プラズマ処理、低温プラズマ処理、プライマー処理、グラフト化処理等公知の樹脂表面改質技術をそのまま適用することができる。また、それらの処理を二種以上併用することもできる。上記のプライマー処理は、例えばプラスチックフィルムの溶融押出しの成膜時に、未延伸フィルムにプライマー液を塗布し、その後に延伸処理して行なうことができる。
【0033】
(b)染料層
本工程に用いられる染料層は、バインダー樹脂と、キレート可能な昇華性染料を有するものである。
【0034】
(i)バインダー樹脂
本工程に用いられる染料層が有するバインダー樹脂としては、耐熱性が高く、しかも加熱されたときに昇華性染料の移行を妨げないものであれば、特に限定されるものではない。本工程においては、例えば、エチルセルロース、酢酪酸セルロース等のセルロース系樹脂、及びポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアセタール等のビニル系樹脂、またはポリエステル、ポリアクリルアミドなどを挙げることができる。
【0035】
(ii)昇華性染料
本工程に用いられる昇華性染料は、後述する金属イオンとキレート反応するものである。上記昇華性染料は通常、染料熱転写シートの染料層の中に含まれ、上記染料層と上記受容層とを対向するように重ね合わせ、サーマルヘッド等で加熱することによって、上記熱転写受像シートの受容層に転写されるものである。
【0036】
本工程における上記昇華性染料としては、後述する金属イオンとキレート反応可能なものであれば、特に限定されるものではなく、一般的なイエロー染料、マゼンダ染料、シアン染料等を使用することができる。中でも下記一般式(1)〜(8)で表される昇華性染料であることが好ましい。
【0037】
イエロー染料としては、下記一般式(1)〜(3)で表される化合物を挙げることができる。
【0038】
a.一般式(1)で表される昇華性染料
【0039】
【化1】

【0040】
(式中、R11は置換基を表し、R12はアルキル基、アルケニル基、アルキニル基またはシクロアルキル基を表し、R13及びR14は水素原子または置換基を表し、R15、R16、R17及びR18は水素原子、アルキル基またはアリール基を表す。Z11は5又は6員の含窒素複素環を形成するために必要な非金属原子群を表す。)
【0041】
上記R11で表される置換基は、特に制限はないが、例えば、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、トリフルオロメチル基等)、シクロアルキル基(例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等)、アリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基等)、アシルアミノ基(例えば、アセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基等)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、エチルチオ基等)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ基、ナフチルチオ基等)、アルケニル基(例えば、2−プロペニル基、3−ブテニル基、1−メチル−3−プロペニル基、3−ペンテニル基、1−メチル−3−ブテニル基、4−ヘキセニル基、シクロヘキセニル基等)、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、沃素原子等)、アルキニル基(例えば、プロパルギル基等)、ヘテロ環基(例えば、ピリジル基、チアゾリル基、オキサゾリル基、イミダゾリル基等)、アルキルスルホニル基(例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基等)、アリールスルホニル基(例えば、フェニルスルホニル基、ナフチルスルホニル基等)、アルキルスルフィニル基(例えば、メチルスルフィニル基等)、アリールスルフィニル基(例えば、フェニルスルフィニル基等)、ホスホノ基、アシル基(アセチル基、ピバロイル基、ベンゾイル基等)、カルバモイル基(例えば、アミノカルボニル基、メチルアミノカルボニル基、ジメチルアミノカルボニル基、ブチルアミノカルボニル基、シクロヘキシルアミノカルボニル基、フェニルアミノカルボニル基、2−ピリジルアミノカルボニル基等)、スルファモイル基(例えば、アミノスルホニル基、メチルアミノスルホニル基、ジメチルアミノスルホニル基、ブチルアミノスルホニル基、ヘキシルアミノスルホニル基、シクロヘキシルアミノスルホニル基、オクチルアミノスルホニル基、ドデシルアミノスルホニル基、フェニルアミノスルホニル基、ナフチルアミノスルホニル基、2−ピリジルアミノスルホニル基等)、スルホンアミド基(例えば、メタンスルホンアミド基、ベンゼンスルホンアミド基等)、シアノ基、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等)、複素環オキシ基、シロキシ基、アシルオキシ基(例えば、アセチルオキシ基、ベンゾイルオキシ基等)、スルホン酸基、スルホン酸の塩、アミノカルボニルオキシ基、アミノ基(例えば、アミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ブチルアミノ基、シクロペンチルアミノ基、2−エチルヘキシルアミノ基、ドデシルアミノ基等)、アニリノ基(例えばフェニルアミノ基、クロロフェニルアミノ基、トルイジノ基、アニシジノ基、ナフチルアミノ基、2−ピリジルアミノ基等)、イミド基、ウレイド基(例えば、メチルウレイド基、エチルウレイド基、ペンチルウレイド基、シクロヘキシルウレイド基、オクチルウレイド基、ドデシルウレイド基、フェニルウレイド基、ナフチルウレイド基、2−ピリジルアミノウレイド基等)、アルコキシカルボニルアミノ基(例えば、メトキシカルボニルアミノ基、フェノキシカルボニルアミノ基等)、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、フェノキシカルボニル等)、アリールオキシカルボニル基(例えば、フェノキシカルボニル基等)、複素環チオ基、チオウレイド基、カルボキシル基、カルボン酸の塩、ヒドロキシル基、メルカプト基、ニトロ基等の各基が挙げられる。
【0042】
これらの置換基は、同様の置換基によって更に置換されていてもよい。
【0043】
12が表すアルキル基、アルケニル基、アルキニル基またはシクロアルキル基は、上記R11で表される置換基と同様の基によって置換されていてもよい。
【0044】
一般式(1)において、R13及びR14は水素原子または置換基を表す。R13及びR14が表す置換基としては、上記R11で表される置換基と同様の基を挙げることができ、これらの置換基は、さらに同様の置換基によって置換されていてもよい。
【0045】
一般式(1)において、R15、R16、R17及びR18は水素原子、アルキル基またはアリール基を表す。R15、R16、R17及びR18が表すアルキル基及びアリール基は、上記R11におけるアルキル基及びアリール基と同様の基を挙げることができる。
【0046】
15、R16、R17及びR18が表すアルキル基及びアリール基は、上記R11で表される置換基と同様の置換基によって置換されていてもよい。
【0047】
一般式(1)において、Z11は5又は6員の含窒素複素環を形成するために必要な非金属原子群を表す。
【0048】
このような複素環の具体例として、ピリジン環、ピラゾール環、イミダゾール環、ピラジン環、ピリミジン環、トリアジン環、チアゾール環、オキサゾール環、キノリン環、ベンゾチアゾール環、ベンゾオキサゾール環等の各環を挙げることができる。これらの環は置換基を有していてもよく、置換基としては、上記R11で表される置換基と同様の基を挙げることができる。
【0049】
b.一般式(2)で表される昇華性染料
【0050】
【化2】

【0051】
(式中、R21は、トリフルオロメチル基、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシル基、アシルオキシ基、アミド基、カルバモイル基、アミノ基、シアノ基を表し、R22は、アルキル基、アシル基、カルバモイル基、アルコキシカルボニル基を表し、R23は、アルキル基、アルケニル基、アリール基を表す。但し、R21とR22の炭素数の総和は3以上である。X21は、−CR2425−、−S−、−O−、−NR26−を表し、R24、R25は、水素原子、ハロゲン原子、置換基を表し、R26は、水素原子、置換基を表す。Y21は、5〜6員環を形成するのに必要な原子群を表す。)
【0052】
一般式(2)中、R21は、トリフルオロメチル基、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシル基、アシルオキシ基、アミド基、カルバモイル基、アミノ基、シアノ基を表す。
上記R21として、好ましくは、アルキル基、トリフルオロメチル基、アルコキシカルボニル基、アシル基、カルバモイル基、シアノ基であり、更に好ましくはアルキル基である。
【0053】
22は、アルキル基、アシル基、カルバモイル基、アルコキシカルボニル基を表す。
【0054】
23は、アルキル基、アルケニル基、アリール基を表す。
【0055】
上記X21は、−CR2425−、−S−、−O−、−NR26−を表し、好ましくは、−CR2425−、−S−、−O−である。
【0056】
24、R25は、水素原子、ハロゲン原子、置換基を表す。
置換基としては、上述した一般式(1)における置換基と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0057】
上記置換基として、好ましくは、水素原子、アルキル基、アリール基である。
【0058】
26は、水素原子、置換基を表す。
置換基としては上記R24、R25の例として挙げたものと同様の置換基が挙げられる。
【0059】
21は、5〜6員環を形成するのに必要な原子群を表す。好ましくは、6員環を形成するのに必要な原子群である。例えば、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、ベンゼン環、ピリジン環、ナフタレン環などが挙げられる。
【0060】
c.一般式(3)で表される昇華性染料
【0061】
【化3】

【0062】
上記一般式(3)において、R31及びR32で表される各々の置換基としては、例えば、ハロゲン原子、アルキル基(炭素数1〜12のアルキル基で、酸素原子、窒素原子、硫黄原子もしくはカルボニル基で連結する置換基が置換するか、またはアリール基、アルケニル基、アルキニル基、ヒドロキシル基、アミノ基、ニトロ基、カルボキシル基、シアノ基もしくはハロゲン原子等他の置換基で置換していてもよい。例えば、メチル、イソプロピル、t−ブチル、トリフルオロメチル、メトキシメチル、2−メタンスルホニルエチル、2−メタンスルホンアミドエチル、シクロヘキシル等の各基)、アリール基(例えば、フェニル、4−t−ブチルフェニル、3−ニトロフェニル、3−アシルアミノフェニル、2−メトキシフェニル等の各基)、シアノ基、アルコキシル基、アリールオキシ基、アシルアミノ基、アニリノ基、ウレイド基、スルファモイルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルコキシカルボニルアミノ基、スルホンアミド基、カルバモイル基、スルファモイル基、スルホニル基、アルコキシカルボニル基、複素環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、シリルオキシ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、イミド基、複素環チオ基、ホスホニル基、アシル基等が挙げられる。
【0063】
33で表されるアルキル基及びアリール基としては、R31及びR32で表されるアルキル基、アリール基と同じものを挙げることができる。
【0064】
31で表される2個の炭素原子と共に構成される5〜6員の芳香族環としては、具体的には、ベンゼン、ピリジン、ピリミジン、トリアジン、ピラジン、ピリダジン、ピロール、フラン、チオフェン、ピラゾール、イミダゾール、トリアゾール、オキサゾール、チアゾールなどの環を挙げることができ、これらの環は更に他の芳香族環と縮合環を形成してもよい。これらの環上には置換基を有していてもよく、該置換基としてはR31及びR32で表される置換基と同じものを挙げることができる。
【0065】
マゼンタ染料としては、下記一般式(4)〜(6)で表される化合物を挙げることができる。
【0066】
d.一般式(4)で表される昇華性染料
【0067】
【化4】

【0068】
一般式(4)において、Y41はアルキル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルファモイル基、シアノ基、パーフルオロアルキル基を表す。Z41、Z42は−CR42=または−N=を表し、L41は下記一般式(4−a)で表される基を表し、X41は、無置換または置換されたアルキルアミノ基を表し、R41は置換または無置換のアルキル基を表し、nは0以上の整数を表す。R42は水素原子または置換基を表す。
【0069】
【化5】

【0070】
(式中、B41は複素環を形成するのに必要な非金属原子群を表す。)
【0071】
41は一般式(4−a)で表される基を表し、複素環を形成するのに必要な非金属原子群B41を含む。一般式(4−a)で表される基としては、2−ピロリル基、イミダゾリル基、イソチアゾリル基、イソオキサゾリル基、3−ピラゾリル基、ピラジニル基、トリアゾリル基、2−ピリジル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、3H−インドドリル基、1H−インダゾリル基、プリニル基、イソキノリル基、キノリル基、フタラジニル基、ナフチリジニル基、キノザリニル基、キナゾリニル基等を表す。これら複素環は更に置換基を有してもよく、該置換基としては、例えば、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子等)、アルキル基(例えば、メチル、エチル、ブチル、ペンチル、2−メトキシエチル、トリフルオロメチル、2−エチルヘキシル等)、アリール基(例えば、フェニル、p−トリル、ナフチル等)、アシル基(例えば、アセチル、プロピオニル、ベンゾイル等)、アルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、ブトキシ等)、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル、i−プロポキシカルボニル等)、アシルオキシ基(例えば、アセチルオキシ、エチルカルボニルオキシ等)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ、エチルチオ、オクチルチオ等)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ、p−トリルチオ等)、アミノ基(例えば、メチルアミノ、ジエチルアミノ、メトキシエチルアミノ等)、シアノ基、ニトロ基、複素環基(例えば、ピリジル、ピラゾリル、イミダゾリル、フリル、チエニル等)が挙げられる。
【0072】
41は無置換または置換されたアルキルアミノ基を表し、置換基としては、アリール基(例えば、フェニル、p−トリル、ナフチル等)、アシル基(例えば、アセチル、プロピオニル、ベンゾイル等)、アルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、ブトキシ等)、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル、i−プロポキシカルボニル等)、アシルオキシ基(例えば、アセチルオキシ、エチルカルボニルオキシ等)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ、エチルチオ、オクチルチオ等)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ、p−トリルチオ等)、アミノ基(例えば、メチルアミノ、ジエチルアミノ等)、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、スルホン酸基、スルホンアミド基(例えば、メタンスルホンアミド、エタンスルホンアミド等)、アシルアミノ基(例えば、アセチルアミノ、ベンゾイルアミノ等)、カルバモイル基(メチルカルバモイル、フェニルカルバモイル等)、スルファモイル基(例えば、メチルスルファモイル、フェニルスルファモイル等)が挙げられる。
【0073】
41は置換または無置換のアルキル基を表す。R42は水素原子または置換基を表し、置換基としてはアルキル基(例えば、メチル、エチル、ブチル、ペンチル、2−メトキシエチル、トリフルオロメチル、2−エチルヘキシル等)、アリール基(例えば、フェニル、p−トリル、ナフチル等)、アシル基(例えば、アセチル、プロピオニル、ベンゾイル等)、アルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、ブトキシ等)、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル、i−プロポキシカルボニル等)、アシルオキシ基(例えば、アセチルオキシ、エチルカルボニルオキシ等)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ、エチルチオ、オクチルチオ等)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ、p−トリルチオ等)、アミノ基(例えば、メチルアミノ、ジエチルアミノ等)、シアノ基、ニトロ基等が挙げられる。
【0074】
e.一般式(5)で表される昇華性染料
【0075】
【化6】

【0076】
(式中、Y51は上述したY41と同様の置換基を表し、Z51、Z52は−CR53=または−N=を表し、L51は一般式(5−a)、(5−b)で表される基を表し、X51は、無置換または置換されたアルキルアミノ基を表し、R51は置換または無置換のアルキル基を表し、R53は水素原子または置換基を表し、nは0以上の整数を表す。)
【0077】
【化7】

【0078】
(式中、R52は水酸基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基を表し、Rは置換基を表し、pは0〜4の整数を表し、B51は−CR52=と共に複素環を形成するのに必要な非金属原子群を表す。)
【0079】
51は一般式(5−a)、(5−b)で表される基を表し、一般式(5−a)で表される−CR52=およびB51と共に複素環を形成した基としては、ピロリル基、イミダゾリル基、イソチアゾリル基、イソオキサゾリル基、ピラゾリル基、ピラジニル基、トリアゾリル基、ピリジル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、3H−インドドリル基、1H−インダゾリル基、プリニル基、イソキノリル基、キノリル基、フタラジニル基、ナフチリジニル基、キノザリニル基、キナゾリニル基等が挙げられる。R52は水酸基、アルコキシ基(例えばメトキシ、エトキシ、ブトキシ等)、アリールオキシ基、アミノ基(例えばメチルアミノ、ジエチルアミノ、メトキシエチルアミノ等)、メルカプト基、アルキルチオ基(例えばメチルチオ、エチルチオ、オクチルチオ等)、アリールチオ基(例えばフェニルチオ、p−トリルチオ等)を表す。これら複素環は更に置換基を有してもよく、該置換基としては、例えばハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子等)、アルキル基(例えばメチル、エチル、ブチル、ペンチル、2−メトキシエチル、トリフルオロメチル、2−エチルヘキシル等)、アリール基(例えばフェニル、p−トリル、ナフチル等)、アシル基(例えばアセチル、プロピオニル、ベンゾイル等)、アルコキシ基(例えばメトキシ、エトキシ、ブトキシ等)、アリールオキシ基(例えばフェノキシ、ナフトキシ等)、アルコキシカルボニル基(例えばメトキシカルボニル、i−プロポキシカルボニル等)、アシルオキシ基(例えばアセチルオキシ、エチルカルボニルオキシ等)、アルキルチオ基(例えばメチルチオ、エチルチオ、オクチルチオ等)、アリールチオ基(例えばフェニルチオ、p−トリルチオ等)、アミノ基(例えばメチルアミノ、ジエチルアミノ、メトキシエチルアミノ等)、シアノ基、ニトロ基、複素環基(例えばピリジル、ピラゾリル、イミダゾリル、フリル、チエニル等)が挙げられる。
【0080】
51は無置換または置換されたアルキルアミノ基を表し、置換基としては、アリール基(例えば、フェニル、p−トリル、ナフチル等)、アシル基(例えば、アセチル、プロピオニル、ベンゾイル等)、アルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、ブトキシ等)、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル、i−プロポキシカルボニル等)、アシルオキシ基(例えば、アセチルオキシ、エチルカルボニルオキシ等)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ、エチルチオ、オクチルチオ等)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ、p−トリルチオ等)、アミノ基(例えば、メチルアミノ、ジエチルアミノ等)、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、スルホン酸基、スルホンアミド基(例えば、メタンスルホンアミド、エタンスルホンアミド等)、アシルアミノ基(例えば、アセチルアミノ、ベンゾイルアミノ等)、カルバモイル基(メチルカルバモイル、フェニルカルバモイル等)、スルファモイル基(例えば、メチルスルファモイル、フェニルスルファモイル等)が挙げられる。
【0081】
51は置換または無置換のアルキル基を表す。R52は水素原子または置換基を表し、置換基としてはアルキル基(例えばメチル、エチル、ブチル、ペンチル、2−メトキシエチル、トリフルオロメチル、2−エチルヘキシル等)、アリール基(例えばフェニル、p−トリル、ナフチル等)、アシル基(例えばアセチル、プロピオニル、ベンゾイル等)、アルコキシ基(例えばメトキシ、エトキシ、ブトキシ等)、アリールオキシ基(例えばフェノキシ、ナフトキシ等)、アルコキシカルボニル基(例えばメトキシカルボニル、i−プロポキシカルボニル等)、アシルオキシ基(例えばアセチルオキシ、エチルカルボニルオキシ等)、アルキルチオ基(例えばメチルチオ、エチルチオ、オクチルチオ等)、アリールチオ基(例えばフェニルチオ、p−トリルチオ等)、アミノ基(例えばメチルアミノ、ジエチルアミノ等)、シアノ基、ニトロ基等が挙げられる。
【0082】
で表される置換基としては、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子等)、アルキル基(例えばメチル、エチル、ブチル、ペンチル、2−メトキシエチル、トリフルオロメチル、2−エチルヘキシル等)、アリール基(例えばフェニル、p−トリル、ナフチル等)、アシル基(例えばアセチル、プロピオニル、ベンゾイル等)、アルコキシ基(例えばメトキシ、エトキシ、ブトキシ等)、アリールオキシ基(例えばフェノキシ、ナフトキシ等)、アルコキシカルボニル基(例えばメトキシカルボニル、i−プロポキシカルボニル等)、アシルオキシ基(例えばアセチルオキシ、エチルカルボニルオキシ等)、アルキルチオ基(例えばメチルチオ、エチルチオ、オクチルチオ等)、アリールチオ基(例えばフェニルチオ、p−トリルチオ等)、アミノ基(例えばメチルアミノ、ジエチルアミノ、メトキシエチルアミノ等)、シアノ基、ニトロ基、複素環基(例えばピリジル、ピラゾリル、イミダゾリル、フリル、チエニル等)等が挙げられる。
【0083】
f.一般式(6)で表される昇華性染料
【0084】
【化8】

【0085】
上記一般式(6)において、X61は少なくとも2座のキレート形成可能な基または原子の集まりを表し、Y61は5員もしくは6員の芳香族炭化水素環または複素環を形成する原子の集まりを表し、R61、R62は各々水素原子、ハロゲン原子または1価の置換基を表す。nは0、1、2を表す。
【0086】
61は少なくとも2座のキレート形成可能な基または原子の集まりを表し、一般式(6)として色素を形成できるものなら何でもよく、例えば、5−ピラゾロン、イミダゾール、ピラゾロピロール、ピラゾロピラゾール、ピラゾロイミダゾール、ピラゾロトリアゾール、ピラゾロテトラゾール、バルビツール酸、チオバルビツール酸、ローダニン、ヒダントイン、チオヒダントイン、オキサゾロン、イソオキサゾロン、インダンジオン、ピラゾリジンジオン、オキサゾリジンジオン、ヒドロキシピリドン、またはピラゾロピリドンが好ましい。
【0087】
61として特に好ましくは、下記一般式(6−a)で表される基である。
【0088】
【化9】

【0089】
上記一般式(6−a)において、Z61は少なくとも一つのキレート化可能な窒素原子を含む基で置換された芳香族性含窒素複素環を形成するに必要な原子群を表す。該環の具体例としてはピリジン、ピリミジン、チアゾール、イミダゾール等の各環が挙げられる。これらの環は、更に他の炭素環(ベンゼン環等) や複素環(ピリジン環等)と縮合環を形成しても良い。
【0090】
上記一般式(6)において、Y61は5員もしくは6員の芳香族炭化水素環または複素環を形成する原子の集まりを表し、該環上には更に置換基を有していても良く、縮合環を有していても良い。該環の具体例としては、3H−ピロール環、オキサゾール環、イミダゾール環、チアゾール環、3H−ピロリジン環、オキサゾリジン環、イミダゾリジン環、チアゾリジン環、3H−インドール環、ベンズオキサゾール環、ベンズイミダゾール環、ベンゾチアゾール環、キノリン環、ピリジン環等が挙げられる。これらの環は更に他の炭素環(例えば、ベンゼン環)や複素環(例えば、ピリジン環)と縮合環を形成してもよい。環上の置換基としてはアルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、アシルアミノ基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、アルコキシカルボニル基、ハロゲン原子等であり、それらの基は更に置換されていても良い。
【0091】
61、R62は各々水素原子、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子) または1価の置換基を表すが、1価の置換基としては、例えば、アルキル基、アルコキシ基、シアノ基、アルコキシカルボニル基、アリール基、ヘテロ環基、カルバモイル基、ヒドロキシ基、アシル基、アシルアミノ基等が挙げられる。
【0092】
シアン色素としては、下記一般式(7)〜(8)で表される化合物を挙げることができる。
【0093】
g.一般式(7)で表される昇華性染料
【0094】
【化10】

【0095】
(式中、R71及びR72はそれぞれ、置換又は無置換の脂肪族基を表し、R73は置換基を表す。nは0〜4の整数を表し、nが2以上の時、複数のR73は同じでも異なってもよい。R74、R75はアルキル基を表す。但し、R74、R75の少なくとも1つは2級アルキル基を表す。)
【0096】
一般式(7)において、R71およびR72は置換または無置換の脂肪族基を表し、R71およびR72は同じでも異なっていてもよい。脂肪族基の例としては、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基等が挙げられる。アルキル基の例としてはメチル基、エチル基、プロピル基、i−プロピル基などを挙げることができ、これらのアルキル基を置換しうる基としては、直鎖あるいは分岐のアルキル基(例えばメチル基、エチル基、i−プロピル基、t−ブチル基、n−ドデシル基、および1−ヘキシルノニル基等)、シクロアルキル基(例えばシクロプロピル基、シクロヘキシル基、ビシクロ[2.2.1]ヘプチル基、およびアダマンチル基等)、およびアルケニル基(例えば2−プロピレン基、オレイル基等)、アリール基(例えばフェニル基、オルト−トリル基、オルト−アニシル基、1−ナフチル基、9−アントラニル基等)、複素環基(例えば2−テトラヒドロフリル基、2−チオフェニル基、4−イミダゾリル基、および2−ピリジル基等)、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子等)、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、カルボニル基(例えばアセチル基、トリフルオロアセチル基、ピバロイル基等のアルキルカルボニル基、ベンゾイル基、ペンタフルオロベンゾイル基、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾイル基等のアリールカルボニル基等)、オキシカルボニル基(例えばメトキシカルボニル基、シクロヘキシルオキシカルボニル基、n−ドデシルオキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基、2,4−ジ−t−アミルフェノキシカルボニル基、1−ナフチルオキシカルボニル基等のアリールオキシカルボニル基、および2−ピリジルオキシカルボニル基、1−フェニルピラゾリル−5−オキシカルボニル基などの複素環オキシカルボニル基等)、カルバモイル基(例えばジメチルカルバモイル基、4−(2,4−ジ−t−アミルフェノキシ)ブチルアミノカルボニル基等のアルキルカルバモイル基、フェニルカルバモイル基、1−ナフチルカルバモイル基等のアリールカルバモイル基)、アルコキシ基(例えばメトキシ基、2−エトキシエトキシ基等)、アリールオキシ基(例えばフェノキシ基、2,4−ジ−t−アミルフェノキシ基、4−(4−ヒドロキシフェニルスルホニル)フェノキシ基等)、複素環オキシ基(例えば4−ピリジルオキシ基、2−ヘキサヒドロピラニルオキシ基等)、カルボニルオキシ基(例えばアセチルオキシ基、トリフルオロアセチルオキシ基、ピバロイルオキシ基等のアルキルカルボニルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、ペンタフルオロベンゾイルオキシ基等のアリールオキシ基等)、ウレタン基(例えばN,N−ジメチルウレタン基等のアルキルウレタン基、N−フェニルウレタン基、N−(p−シアノフェニル)ウレタン基等のアリールウレタン基)、スルホニルオキシ基(例えばメタンスルホニルオキシ基、トリフルオロメタンスルホニルオキシ基、n−ドデカンスルホニルオキシ基等のアルキルスルホニルオキシ基、ベンゼンスルホニルオキシ基、p−トルエンスルホニルオキシ基等のアリールスルホニルオキシ基)、アミノ基(例えばジメチルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基、n−ドデシルアミノ基等のアルキルアミノ基、アニリノ基、p−t−オクチルアニリノ基等のアリールアミノ基等)、スルホニルアミノ基(例えばメタンスルホニルアミノ基、ヘプタフルオロプロパンスルホニルアミノ基、n−ヘキサデシルスルホニルアミノ基等のアルキルスルホニルアミノ基、p−トルエンスルホニルアミノ基、ペンタフルオロベンゼンスルホニルアミノ等のアリールスルホニルアミノ基)、スルファモイルアミノ基(例えばN,N−ジメチルスルファモイルアミノ基等のアルキルスルファモイルアミノ基、N−フェニルスルファモイルアミノ基等のアリールスルファモイルアミノ基)、アシルアミノ基(例えばアセチルアミノ基、ミリストイルアミノ基等のアルキルカルボニルアミノ基、ベンゾイルアミノ基等アリールカルボニルアミノ基)、ウレイド基(例えばN,N−ジメチルアミノウレイド基等のアルキルウレイド基、N−フェニルウレイド基、N−(p−シアノフェニル)ウレイド基等のアリールウレイド基)、スルホニル基(例えばメタンスルホニル基、トリフルオロメタンスルホニル基等のアルキルスルホニル基、およびp−トルエンスルホニル基等のアリールスルホニル基)、スルファモイル基(例えばジメチルスルファモイル基、4−(2,4−ジ−t−アミルフェノキシ)ブチルアミノスルホニル基等のアルキルスルファモイル基、フェニルスルファモイル基等のアリールスルファモイル基)、アルキルチオ基(例えばメチルチオ基、t−オクチルチオ基等)、アリールチオ基(例えばフェニルチオ基等)、および複素環チオ基(例えば1−フェニルテトラゾール−5−チオ基、5−メチル−1,3,4−オキサジアゾール−2−チオ基等)等が挙げられる。
【0097】
シクロアルキル基、アルケニル基の例としては、上記置換基と同様である。また、アルキニル基の例としては、1−プロピン、2−ブチン、1−ヘキシン等が挙げられる。
【0098】
71、R72で非芳香族性の環状構造(例えばピロリジン環、ピペリジン環、モルホリン環等)を形成するのも好ましい。
【0099】
73は置換基を表し、置換基の例としては、上記R71、R72の置換基の例が挙げられる。上記置換基の中でもアルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アシルアミノ基が好ましい。nは0〜4の整数を表し、nが2以上の場合、複数のR73は同じでも異なっていてもよい。
【0100】
74およびR75はアルキル基を表し、その例としてはメチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−へプチル基、イソプロピル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、3−ヘプチル基、2−エチルヘキシル基などが挙げられる。R74、R75の少なくとも1つは2級アルキル基を表し、2級のアルキル基の例としてはイソプロピル基、sec−ブチル基、3−ヘプチル基、2−エチルヘキシル基、などが挙げられる。R74、R75の2級アルキル基として最も好ましい置換基はイソプロピル基である。R75の2級アルキル基は、置換されていても良いが、すべて炭素原子と水素原子からなる置換基で置換されており、その他の原子を含む置換基で置換されるものではない。R74とR75は同じでも良いし、異なっていても良い。
【0101】
h.一般式(8)で表される昇華性染料
【0102】
【化11】

【0103】
上記一般式(8)において、R81及びR82は各々置換または無置換の脂肪族基を表し、R81及びR82は同じでも異なっていてもよい。脂肪族基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基等が挙げられる。これらのアルキル基を置換しうる基としては、直鎖あるいは分岐のアルキル基、シクロアルキル基、及びアルケニル基、アリール基、複素環基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、カルボニル基、オキシカルボニル基、カルバモイル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、複素環オキシ基、カルボニルオキシ基、ウレタン基、スルホニルオキシ基、アミノ基、スルホニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アシルアミノ基、ウレイド基、スルホニル基、スルファモイル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、複素環チオ基等が挙げられる。
【0104】
シクロアルキル基、アルケニル基の例としては、上記置換基と同様である。
【0105】
81、R82として、非芳香族性の環状構造(例えば、ピロリジン環、ピペリジン環、モルホリン環等)を形成する基も好ましい。
【0106】
83は上記置換基の中でもアルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アシルアミノ基が好ましい。nは0〜4の整数を表し、nが2以上の場合、複数のR83は同じでも異なっていてもよい。
【0107】
84はアルキル基であり、好ましくは2級または3級アルキル基である。R84のアルキル基は、置換されていても良いが、すべて炭素原子と水素原子からなる置換基で置換されており。その他の原子を含む置換基で置換されるものではない。
【0108】
85はアルキル基であり、好ましくは2級または3級アルキル基である。 R85のアルキル基は、置換されていても良いが、すべて炭素原子と水素原子からなる置換基で置換されており。その他の原子を含む置換基で置換されるものではない。
【0109】
86はアルキル基を表し、特に好ましい置換基は、炭素数3以上の直鎖のアルキル基である。なお、R86のアルキル基は、置換されていても良いが、すべて炭素原子と水素原子からなる置換基で置換されており、その他の原子を含む置換基で置換されるものではない。
【0110】
(iii)その他化合物
本工程に用いられる染料層には必要に応じて、上記バインダー樹脂および上記昇華性染料以外の他の化合物が含まれていても良い。本工程に用いられる他の化合物としては、離型剤を挙げることができる。本工程においては染料熱転写シートの染料層に離型剤が含まれることにより、上記染料層と、後述する熱転写受像シートの受容層とが融着すること防止できるため、上記他の化合物として離型剤を用いることが好ましい。
【0111】
上記離型剤としては、例えば、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤などが挙げられる。上記シリコーン系界面活性剤とは、疎水性部分がシリコーン樹脂からなり、これの末端及び/又は側鎖に親水性基が導入された化合物である。シリコーン樹脂には、その代表としてポリ(ジメチル)シロキサンが挙げられ、メチルフェニルジメチルポリシロキサン、テトラメチルテトラフェニルポリシロキサン、ジメチルポリシロキサン・ポリメチルフェニルシロキサンコポリマー、ポリメチルシロキサン、テトラメチルポリメチルシロキサン、ポリメチルシロキサン・ポリジメチルシロキサンコポリマーなど、側鎖のメチル基の一部或いは、全てがフェニル基や水素原子等に置換されたものなどが挙げられる。また、このシリコーン樹脂に導入される親水性基としてはポリエーテル基、ポリグリセリン基、ピロリドン基、ベタイン基、硫酸塩基、水酸基、カルボキシル基、リン酸塩基、4級アンモニウム塩基等を挙げることができる。
【0112】
これらのシリコーン樹脂に導入される親水性基は、適宜組合せて使用することができる。また、界面活性剤の構造に関しても、上記のシリコーン樹脂の末端及び/又は側鎖に親水性基を単に導入するだけでなく、親水性基を導入したポリマーと導入しないポリマーをランダム共重合、ブロック共重合するなどしてコポリマー化する等してもよい。これらの中でも、シリコーン樹脂としてポリジメチルシロキサンを、親水性基として、ポリエーテル基、ポリグリセリン基、又はピロリドン基を導入したシリコーン系界面活性剤が好ましく用いられる。
【0113】
上記離型剤以外に、本工程における染料層に含むことができる他の化合物としては、例えば、後述する熱転写受像シートとの離型性やインキの塗工適性を向上させるために、ポリエチレンワックス等の有機微粒子や無機微粒子等を挙げることができる。
【0114】
(c)染料熱転写シート
本工程に用いられる染料熱転写シートは、上記染料層および支持基板以外に必要に応じて他の構成を有していても良い。このような他の構成としては、例えば、上記染料層と上記支持基板との間に形成され、染料層と支持基板とを接着する機能を有する易接着層、および、支持基板の上記染料層が形成された面とは反対の面に、サーマルヘッドの熱によるステッキングや印字しわ等の悪影響を防止する機能を有する背面層(耐熱滑性層と称する場合もある)を挙げることができる。
【0115】
上記易接着層を構成する材料としては、上記染料層と上記支持基板とを所望の強度で接着できるものであれば特に限定されない。このような材料としては、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリアクリル酸エステル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、スチレンアクリレート系樹脂、ポリアクリルアミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂やポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルピロリドン等のビニル系樹脂、ポリビニルアセトアセタールやポリビニルブチラール等のポリビニルアセタール系樹脂等を挙げることができる。
【0116】
上記背面層としては、通常、樹脂材料に滑り性付与剤が添加された材料から構成されるものが用いられる。上記樹脂材料としては、例えば、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアセトアセタール樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエーテル樹脂、ポリブタジエン樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリルポリオール、ポリウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、エポキシアクリレート、ウレタン又はエポキシのプレポリマー、ニトロセルロース樹脂、セルロースナイトレート樹脂、セルロースアセテートプロピオネート樹脂、セルロースアセテートブチレート樹脂、セルロースアセテートヒドロジエンフタレート樹脂、酢酸セルロース樹脂、芳香族ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂等を挙げることができる。
【0117】
また、上記滑り性付与剤としては、リン酸エステル、シリコーンオイル、グラファイトパウダー、シリコーン系グラフトポリマー、フッ素系グラフトポリマー、アクリルシリコーングラフトポリマー、アクリルシロキサン、アリールシロキサン等のシリコーン重合体を挙げることができる。
【0118】
また、本工程においては、上記背面層として、ポリアルコール高分子化合物とポリイソシアネート化合物及びリン酸エステル系化合物からなる層であり、さらに充填剤を添加したものを用いても良い。
【0119】
本工程に用いられる染料熱転写シートは、上記支持基板上に、上記染料層が形成されたものであるが、上記染料層の態様としては、上記支持基板上に1色の単一層で構成されても良く、あるいは、色相の異なる染料を含む複数の染料層を同一支持基板の同一面に面順次に繰り返し形成されていても良い。
【0120】
また、本工程に用いられる染料熱転写シートは、上記支持基板上に上記染料層以外の他の層を有する熱転写シートとしてもよい。上記熱転写シートとしては、例えば、上記支持基板上に、上記染料層および後述する保護層形成用層が形成されたものを挙げることができる。このような熱転写シートとしては、図2(a)に例示するように、上記熱転写シート40が、上記染料層2と上記保護層形成用層12が同一支持基板1の同一面に面順次に繰り返し配置されたものを挙げることができる。ここで、上記染料層が、複数の染料層を有する場合においては、例えば、複数の染料層として、Y染料層、M染料層、C染料層、である場合には、図2(b)に例示するように、上記熱転写シート40は、Y染料層31、M染料層32、C染料層33からなる染料層30と、上記保護層形成用層12とが、交互に配置されたものを挙げることができる。
この場合、本工程と、後述する保護層形成工程は、同一の加熱手段を用いて実施することが容易になり、熱転写印画物の製造装置を簡略化することができる。
【0121】
(d)染料熱転写シートの製造方法
次に、本工程に用いられる染料熱転写シートの製造方法について説明する。本工程に用いられる染料熱転写シートは、例えば、適当な溶剤中に上記バインダー樹脂、昇華性染料、および、必要に応じて他の化合物を溶解または分散させて染料層形成用塗工液を調製し、その後、この染料層形成用塗工液を支持基板上に塗布、乾燥させて、支持基板上に染料層を形成することにより製造することができる。上記染料層形成用塗工液を支持基板上に塗布する塗布方法としては、例えば、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、グラビア版を用いたリバースロールコーティング法等の公知の手段を用いることができる。このようにして形成された染料層は、乾燥時の塗工量が0.2g/m〜6.0g/mの範囲内が好ましく、特に0.3g/m〜2.0g/mの範囲内が好ましい。
【0122】
本工程に用いられる染料熱転写シートとして上記背面層を有する染料熱転写シートを用いる場合、上記背面層の形成方法としては、上記支持基板上に、上記樹脂材料、滑り性付与剤、さらに充填剤を、適当な溶剤により溶解又は分散させて、背面層形成用塗工液を調整し、これを、例えば、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、グラビア版を用いたリバースロールコーティング法等の形成手段により塗工し、乾燥して形成することができる。背面層の塗工量は、固形分で、0.1g/m〜3.0g/mが好ましい。
【0123】
(2)熱転写受像シート
本工程に用いられる熱転写受像シートは、基材と、上記基材上に形成され、キレート可能な金属イオンを含む受容層を有するものである。以下、このような熱転写受像シートの各構成について説明する。
【0124】
(a)受容層
本工程に用いられる受容層を構成する樹脂としては、キレート可能な金属イオンを含み、かつ色素が染着しやすいものであれば特に限定されるものではなく、公知のものを使用することができる。具体的には、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンなどのハロゲン化樹脂;塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂などのハロゲン化樹脂と他のビニル系モノマーとの共重合体;ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸エステル、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラールなどのビニル系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂;ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、フェノキシ樹脂、エチレンやプロピレンなどのオレフィンと他のビニル系モノマーとの共重合体;ポリウレタン;ポリカーボネート;アクリル樹脂;アイオノマー;セルロース誘導体等を用いることができ、これらの中でもハロゲン化樹脂と他のビニル系モノマーとの共重合樹脂、ポリエステル系樹脂およびビニル系樹脂が好ましい。なお、上記樹脂は、単体で用いても良く、混合物で用いても良い。
【0125】
本工程に用いられる受容層に含まれる金属イオンは、上述した昇華性染料とキレート可能な金属イオンである。上記金属イオンは、金属イオン含有化合物として供給されるのが一般的である。このような金属イオン含有化合物としては、特に限定されるものではないが、例えば、金属イオンの無機または有機の塩、および金属錯体が挙げられ、中でも有機酸の塩および錯体が好ましく、下記一般式(I)で表される金属含有化合物を特に好ましく用いることができる。
【0126】
一般式(I) M2+(X)
【0127】
上記式において、M2+は2価の金属イオンを表す。Xは、金属イオンM2+に配位結合して錯体を形成することが出来る配位化合物を表し、mは2または4を表す。複数の配位化合物Xは互いに同じであっても異なっていてもよい。Yは金属イオンM2+の対イオンを表し、nは0、1、または2の整数の表す。また、上記式で表される化合物は中心金属に応じて中性の配位子を有してもよく、代表的な配位子としてはHO、NH、ピリジン、N−メチルイミダゾール等が挙げられる。
【0128】
上記式で表される化合物において、M2+は二価の金属イオンを表すが、この金属イオンとしては例えばMg2+、Co2+、Ni2+、Cu2+、Zn2+、Fe2+等を挙げることができる。これらの中でも、特にCo2+、Ni2+が好ましい。上記式で表される化合物において、Yは金属イオンM2+の対アニオンを表すが、この対アニオンは有機、又は無機のアニオンであり特に、金属イオンM2+と配位化合物(X)mにより形成される錯体を、例えばメチルエチルケトン、テトラヒドロフラン(THF)等の有機溶媒に溶解可能にする化合物が好ましい。この対アニオンの具体例としては、アルキルカルボン酸、アリールカルボン酸、アルキルスルホン酸、アリールスルホン酸、アルキルリン酸、アリールリン酸、アリールホウ酸等の有機塩を挙げることができる。
【0129】
上記金属イオン含有化合物の受容層における含有量としては、染料熱転写シートから転写されてくる昇華性染料の量によって増減するため、限定されるものではないが、受容層を構成する全固形分に対して50質量%以下が好ましく、特に40質量%以下がより好ましい。金属イオン含有化合物を50質量%以上導入すると、受容層と基材との密着性が低下し、また熱転写受像シートを巻いた場合に、熱転写受像シートの裏面と受容層がブロッキングを起こす可能性があるからである。
【0130】
(b)基材
本工程に用いられる基材を構成する材料としては、画像形成時に加えられる熱に耐え、取り扱い上支障のない機械的特性を有するものであれば特に限定されない。このような材料としては、例えば、ポリエステル、ポリアリレート、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、セルロース誘導体、ポリエチレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリプロピレン、ポリスチレン、アクリル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ナイロン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル、ポリビニルフルオライド、テトラフルオロエチレン・エチレン、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド等の樹脂材料からなるプラスチックフィルムまたはシートを用いることができる。
【0131】
また、本工程に用いられる基材としては、上記のプラスチックフィルムまたはシート、および上記樹脂材料に白色顔料や充填剤を加えて成膜した白色フィルム、あるいは基材内部にミクロボイドを有するシート、他にコンデンサーペーパー、グラシン紙、硫酸紙、合成紙(ポリオレフィン系、ポリスチレン系)、上質紙、アート紙、コート紙、キャストコート紙、合成樹脂又はエマルジョン含浸紙、合成ゴムラテックス含浸紙、合成樹脂内添紙、セルロース繊維紙等を用いることができる。
【0132】
本工程に用いられる基材の構成としては、単一の層からなる構成であってもよく、または、複数の層が積層された構成を有していても良い。複数の層が積層された構成としては、例えば、セルロース繊維紙と合成紙とが積層された構成や、セルロース繊維紙とプラスチックフィルムとが積層された構成を例示することができる。
【0133】
本工程に用いられる基材は、少なくとも片方の表面に接着処理が施されたものであっても良い。このような接着処理としては、上記「1.染料熱転写シート」の項に記載したものと同様であるためここでの説明は省略する。
【0134】
本工程に用いられる基材の厚みは、基材を構成する材料に応じて、所望の自己支持性が得られる範囲内であれば特に限定されないが、通常、3μm〜300μmの範囲内が好ましく、特に100μm〜250μmの範囲内が好ましい。
【0135】
(c)熱転写受像シート
本工程に用いられる熱転写受像シートは、上記受容層および上記基材以外に他の構成を有していても良い。このような他の構成としては、例えば、基材の受容層を設けた面と反対の面に、熱転写受像シートの搬送性の向上やカール防止などを目的として形成される裏面層や、上記受容層と上記基材との間に所定の機能を付与すること目的として形成される中間層を例示することができる。
【0136】
上記裏面層を構成する材料としては、裏面層に所望の機能を付与できる材料であれば特に限定されるものではないが、通常、樹脂材料にフィラーが添加された材料が用いられる。
【0137】
裏面層を構成する上記樹脂材料としては、例えば、アクリル系樹脂、セルロース系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ハロゲン化ポリマー等を挙げることができる。また、このような樹脂材料をイソシアネート化合物等の硬化剤により硬化したものも使用することができる。
【0138】
また、裏面層に含まれる上記フィラーとしては、例えば、アクリル系フィラー、ポリアミド系フィラー、フッ素系フィラー、ポリエチレンワックス等の有機系フィラー、アミノ酸系粉体や、二酸化珪素や金属酸化物などの無機フィラーを挙げることができる。
【0139】
上記中間層としては、例えば、帯電防止層、クッション層、白色顔料および蛍光増白剤を添加した中間層や易接着層等を挙げることができる。
【0140】
また、本工程においては上記裏面層に替えて、帯電防止層、筆記層等を形成してもよい。
【0141】
(d)熱転写受像シートの製造方法
本工程に用いられる熱転写受像シートの製造方法について説明する。本工程に用いられる熱転写受像シートを製造する方法としては、上述した構成を有する熱転写受像シートを製造できる方法であれば特に限定されないが、通常、上記受容層を構成する樹脂、上記金属イオン、および必要に応じて添加剤等を任意に添加し、溶剤、希釈剤等で、十分に混練して受容層形成用塗工液を調整した後、これを、上記基材の上に、例えば、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、グラビア版を用いたリバースロールコーティング法等の形成手段により、塗布・乾燥して受容層を形成することにより製造する方法が用いられる。受容層形成用塗工液の塗工量は、乾燥時で0.5g/m〜4.0g/mであることが好ましい。塗工量が上記範囲よりも少ないと、染料の定着においてムラが生じ、染料受容性が低下する場合があるからである。また、塗工量が上記範囲よりも多いと、生産性等が低下する可能性があるからである。
【0142】
(3)熱転写工程
本工程は、上記染料熱転写シートの上記染料層と、上記熱転写受像シートの上記受容層とを対向させて加熱することにより、上記染料層に含まれるキレート可能な昇華性染料を上記受容層に転写することができるものであれば特に限定されるものではない。
本工程においては、加熱手段としては特に限定されるものではないが、一般的な熱転写プリンターに用いられるサーマルヘッド等を用いることができる。
【0143】
上記染料層および上記受容層は、加熱・転写時において、接触していてもよく、接触していなくても良いが、本工程においては、接触していることが好ましい。所望の箇所に所望量の昇華性染料を転写させることが容易となるからである。
また上記染料層および上記受容層が、加熱・転写時において、接触している場合は、上記染料熱転写シートおよび上記熱転写受像シートを、加圧してもよい。加圧することで、上記染料層および上記受容層が十分に密着することができ、昇華性染料の転写が容易になり、また転写位置のずれを防止することができるからである。
【0144】
2.保護層形成工程
次に、本工程に用いられる保護層形成工程について説明する。本工程は、上述した熱転写工程により昇華性染料が転写された上記熱転写受像シートの上記受容層、および支持基板と、上記支持基板上に形成され、熱変換物質を含む保護層形成用層と、を有する保護層熱転写シートの上記保護層形成用層を対向させて加熱することにより、上記受容層上に保護層を形成する工程である。本工程においては、上記保護層形成用層が熱変換物質を含むことにより、後述する電磁波照射工程で上記受容層と上記保護層との密着性を上げることができる。以下、このような保護層形成工程について説明する。
【0145】
(1)保護層熱転写シート
本工程に用いられる保護層熱転写シートは、支持基板と、上記支持基板上に形成され、熱変換物質を含む保護層形成用層と、を有するものである。以下、このような保護層熱転写シートの各構成について詳細に説明する。
【0146】
(a)保護層形成用層
本工程に用いられる保護層形成用層は、後述する支持基板上に形成され、熱変換物質を含み、かつ受容層上に転写されることで、熱変換物質を含む保護層を形成するものであれば特に限定されるものではなく、単層であっても良く、複数層であってもよい。以下、上記保護層形成用層について単層の場合と、複数層の場合について、分けて説明する。
【0147】
(i)単層の場合
本工程に用いられる保護層形成用層が単層の場合においては、上記保護層形成用層が、耐光性、耐候性、耐摩耗性等の耐久性を有し、さらに透明性が良く熱転写印画物の画像の鮮明さを損なわない透明樹脂からなり、かつ熱変換物質を含むものを挙げることができる。
【0148】
本工程において、上記保護層形成用層に用いられる透明樹脂としては、例えば、ポリエステル、ポリスチレン、アクリル樹脂、ポリウレタン、アクリルウレタン樹脂、および、これらの樹脂のシリコーン変性樹脂、そして、これらの透明樹脂の混合物等を挙げることができる。
【0149】
本工程において、上記保護層形成用層に含まれる熱変換物質としては、後述する電磁波を吸収し、熱に変換することができるものであれば特に限定されるものではない。このような熱変換物質としては、照射する電磁波によって異なるが、例えば、上記電磁波がマイクロ波である場合には、材料中に水酸基を有している樹脂がマイクロ波の特性から好ましい。樹脂としては、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、ポリウレタンポリオール、ポリエーテルポリオール、アクリル、アクリルーポリエステル共重合物、アルキド、シリコンポリエステル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、エポキシのエポキシ基をアルカノールアミンで開環してOH基などにしたものがあるが、各波長の電磁波を選択的に吸収し熱へと効率的に変換できる事及び受像層への密着性の観点からポリビニルブチラール、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、アクリルが望ましく、特にポリビニルブチラールが好ましい。
また、上記電磁波が赤外線である場合には、具体的には、酸化スズ、酸化インジウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化クロム、酸化ジルコニウム、酸化ニッケル、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化アンチモン、酸化鉛、酸化ビスマス等の無機赤外線吸収剤、シアニン系化合物、フタロシアニン系化合物、ナフタロシアニン系化合物、ナフトキノンン系化合物、アントラキノン系化合物、アルミニウム系化合物、ピリリウム系化合物、セリリウム系化合物、スクワリリウム系化合物、ジイモニウム類、銅錯体類、ニッケル錯体類、ジチオール系錯体類等の有機赤外線吸収剤を1種類、または2種類以上混合して用いることができる。通常、対イオン構造の赤外線吸収剤を用いた場合には、その赤外線吸収剤が含有される透明樹脂が水酸基やカルボキシル基、重合開始剤等を有する場合には、その水酸基やカルボキシル基、重合開始剤等により対イオンの均衡状態が崩れ、赤外線吸収の機能を果たすことが困難となる場合がある。
本発明においては、上述した透明樹脂を用いることから、対イオン構造の赤外線吸収剤であっても、反応等することがなく、本発明の効果をより発揮することができるという面から、上記の中でも対イオン構造を有するジイモニウム類、ニッケル錯体類、ジチオール系錯体類、アルミニウム化合物、シアニン系化合物、ピリリウム系化合物であることが好ましく、特にジイモニウム類またはシアニン系化合物が好ましい。
【0150】
また、上記熱変換物質の保護層形成用層における含有量としては、所望の熱量に変換することができ、かつ上記保護層形成用層が転写されて保護層が形成された際に、熱転写印画物の鮮明さ、耐久性等の保護層としての機能を妨げるものでなければ特に限定されるものではないが、例えば、ジイモニウム類のように透明性に影響を与えるものを用いる場合には、上記保護層形成用層の全固形分に対して、0.1質量%〜10質量%の範囲内、中でも1質量%〜6質量%の範囲内であることが好ましい。
【0151】
単層の場合の保護層形成用層の厚みは、所望の耐久性等を得ることができれば特に限定されるものではないが、具体的には0.3μm〜5μmの範囲内、中でも0.5μm〜1.5μmの範囲内であることが好ましい。
【0152】
(ii)複数層の場合
本工程に用いられる保護層形成用層が複数層である場合の層構成としては、2層以上であれば特に限定されるものではない。本工程においては、上記保護層形成用層が剥離層と接着層と、を上記支持基板上にこの順で積層したものを好ましく用いることができる。
上記保護層形成用層が上記剥離層と接着層を有することにより、受容層上に転写され保護層を形成した際に、上記保護層は、上記受容層上に形成された接着層と、上記接着層上に形成された剥離層とを有することになる。そのため、上記接着層が保護層と受容層との密着性を高める機能を発揮し、上記剥離層が、上記受容層に転写された印画物の耐久性等を向上させる機能を発揮することになる。そのため、時間経過に伴う剥離の可能性の少ない保護層を形成することが可能となるからである。
【0153】
上記剥離層の材料としては、上記「(i)単層の場合」の項に記載した透明樹脂と同様のものを用いることができるため、ここでの記載は省略する。
上記剥離層の厚みとしては、所望の耐久性等を得ることができれば特に限定されるものではなく、上記保護層形成用層を構成する他の層に応じて設定することができる。
【0154】
上記接着層の材料としては、所望の強度で接着できる熱可塑性樹脂であれば特に限定されない。このような熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、スチレン−アクリル共重合樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂等を挙げることができる。
上記接着層の厚みとしては、0.1μm〜3μmの範囲が好ましい。上記範囲より薄いと上記受容層に形成された保護層が剥離する可能性があるためであり、上記範囲より厚いと上記接着層に用いられる熱可塑性樹脂を加熱により溶融させるのに要する時間が長いものとなり、熱転写印画物の生産性が低下するためである。
【0155】
複数層の場合の保護層形成用層の厚みは、所望の耐久性等を得ることができれば特に限定されるものではないが、具体的には0.3μm〜5μmの範囲内、中でも0.5μm〜1.5μmの範囲内であることが好ましい。なお上記厚みは、上記保護層形成用層を構成する全ての層を合計した厚みである。
【0156】
上記熱変換物質の種類、およびその含有量については、上記「(i)単層の場合」の項に記載したものと同様のものを用いることができるため、ここでの記載は省略する。
なお熱変換物質の含有量とは、上記保護層形成用層を構成する全ての層の全固形分に対する含有量のことである。
【0157】
上記熱変換物質は、上記保護層形成用層が複数層である場合においては、少なくともいずれかの層に含まれていれば特に限定されるものではない。本工程においては、上記保護層形成用層が熱転写受像シートの受容層上に転写され、保護層を形成した際に上記受容層と接する層に含まれるものとすることが好ましく、なかでも上記受容層と接する層にのみ含まれるものとすることが好ましい。
ここで、上記保護層形成用層が、本工程において好適に用いられる層構成である剥離層と、接着層とを上記支持基板上にこの順で積層したものである場合においては、上記熱手変換物質が、上記剥離層または上記接着層のいずれか一方の層に含まれていれば良く、少なくとも接着層に含まれているものとすることが好ましく、なかでも上記接着層にのみ含まれるものとすることが好ましい。
上記剥離層と上記接着層とを有する保護層形成用層を熱転写受像シートの受容層上に転写し保護層を形成した際には、図3に例示するように、上記熱転写受像シート6の受容層5上に、接着層14と、上記接着層14上に形成された剥離層13とからなる保護層20が形成されることになる。
上記保護層を形成する接着層のみが熱変換物質を含むことで、後述する電磁波照射工程において、上記保護層のうち上記受容層と接する接着層のみを選択的に加熱することができる。したがって上記受容層と、上記保護層との密着性をより効率的に高めることができるからである。また、上記受容層と接する接着層のみを選択的に加熱することが可能となることにより、上記接着層と接する上記受容層に含まれる昇華性染料のキレート反応をより効率的に促進することができるからである。
【0158】
(iii)その他成分
本工程に用いられる保護層形成用層は、上記熱変換物質のほかに、光安定化剤、酸化防止剤、蛍光増白剤、充填材等を含有していても良い。
上記紫外線吸収剤としては、黄色味を帯びない保護層を得ることができる限り特に限定されるものではないが、具体的には、サリシレート系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系、置換アクリロニトリル系、ニッケルキレート系、ヒンダートアミン系等の紫外線吸収剤を挙げることができるが、中でも、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が好ましい。上記紫外線吸収剤の使用量は、黄色味を帯びない保護層を得ることができれば特に限定されるものではなく、任意に選択することができる。
【0159】
また、本工程に用いられる光安定化剤は、光の照射等によって生成するラジカルを捕捉し、保護層の耐光性をより向上させるために用いられるものである。このような光安定化剤としては、具体的には、ヒンダードアミン系、フェノール系、ホスファイト系等の光安定化剤を挙げることができ、中でも、ヒンダードアミン系光安定化剤が好ましい。上記光安定化剤の使用量は、透明性、耐久性を阻害しない阻害しない限り特に限定されるものではなく、任意に選択することができる。
【0160】
(b)支持基板
上記支持基板としては、上記保護層形成用層を形成することができ、かつ加熱により上記保護層形成用層を上記熱転写受像シートの上記受容層に転写することで保護層を形成できるものであれば特に限定されるものでない。このような支持基板としては、上記「1.熱転写工程」の、「(1)染料熱転写シート」の、「(a)支持基板」と同様のものを用いることができるので、ここでの記載は省略する。
【0161】
(c)保護層熱転写シート
本工程に用いられる保護層熱転写シートは、必要に応じて、上記保護層形成用層以外の層構成を有するものであってもよい。例えば、上記保護層熱転写シートが背面層および離型層を有するものを挙げることができる。
上記背面層としては、上記「(1)染料熱転写シート」の「(c)染料熱転写シート」の項に記載したものと同様のものを用いることができる。
上記離型層としては、上記保護層形成用層と支持基板との間に形成され、上記保護層形成用層を上記熱転写受像シートの上記受容層上に熱転写する際の、上記保護層形成用層と支持基板との離型性を向上させる目的で設けられるものである。このような離型層としては、例えば、特開2001−347759号公報に記載されたものを挙げることができる。
【0162】
本工程に用いられる保護層熱転写シートの製造方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、保護層形成用層を構成する上記熱変換物質、透明樹脂、およびその他添加剤等を含有する塗工液を作製し、基材上に塗布する方法が挙げられる。この際の塗布方法としては、例えば、グラビアコート法、グラビアリバースコート法、ロールコート法等を挙げることができる。
【0163】
(2)保護層形成工程
本工程は、上記保護層熱転写シートの上記保護層形成用層と、上記熱転写受像シートの上記受容層とを対向させて加熱し、上記保護層形成用層を転写することにより、上記受容層上に保護層を形成することができるものであれば特に限定されるものではない。
本工程において、加熱手段としては特に限定されるものではないが、一般的な熱転写プリンターに用いられるサーマルヘッド等を用いることができる。
【0164】
上記保護層形成用層および上記受容層は、加熱により、上記受容層上に保護層が形成されるものであれば接触していてもよく、接触していなくても良いが、本工程においては、接触していることが好ましい。保護層の形成を確実なものとするためである。また上記保護層形成用層および上記受容層が、加熱・転写時において、接触している場合は、上記保護層熱転写シートおよび上記熱転写受像シートを、加圧してもよい。加圧することで、上記保護層形成用層の上記受容層上への転写が容易になったり、エアー噛みを防止することができるからである。
【0165】
3.電磁波照射工程
次に、本工程に用いられる電磁波照射工程について説明する。本工程は、上記保護層形成工程によって、熱転写受像シートの受容層上に形成された上記熱変換物質を含む保護層に電磁波を照射することにより、上記保護層を加熱する工程である。上記保護層を加熱することにより、上記保護層と上記受容層との密着性を高めることができ、さらに上記保護層が形成された受容層へも熱を効率的に伝えることにより、転写された昇華性染料のキレート反応を進行させ、熱転写印画物の色相変化等を少ないものとすることができる。以下、このような電磁波照射工程について説明する。
【0166】
(1)電磁波
本工程に用いられる電磁波としては、電波(波長1m以上)、マイクロ波(波長1mm〜1m程度)、赤外線(波長1μm〜1mm程度)、可視光線(波長400nm〜1mm程度)、紫外線(波長10nm〜400nm程度)、X線(波長1pm〜10nm程度)、ガンマ線(波長10pm以下)等を挙げることができる。本工程においては、上記電磁波のなかでも、マイクロ波、赤外線を用いることが好ましい。上述した保護層を効率的に加熱することができるためである。
【0167】
本工程においては、上記電磁波の出力は、上記保護層を構成する材料、熱変換物質等に応じて適宜設定することができる。
【0168】
本工程のおいては、上記電磁波の1種類のみを用いても良く、また、2種類以上を同時に照射しても良い。
【0169】
(2)電磁波照射工程
本工程は、熱転写受像シートの受容層上に形成された上記熱変換物質を含む保護層に電磁波を照射することにより、上記保護層を加熱する工程であり、熱転写受像シート上に形成された保護層の表面に、均一な照射量で照射できる方法であれば特に限定されない。このような電磁波の照射方法としては、例えば、熱転写受像シートの保護層が形成されている全面に同時に照射する方法、および、電磁波の照射源または熱転写受像シートの少なくとも一方を移動させながら、順次に照射する方法を挙げることができる。
本工程においてはこれらの態様のいずれであっても好適に用いることができるが、なかでも後者の方法を用いることが好ましい。上記後者の方法によれば熱転写印画物のサイズ、製造速度が変化したとしても、保護層が形成された熱転写受像シートの全面に対して均一に照射することが容易になるからである。
【0170】
また、本工程に用いられる電磁波の照射源の数は、1つであってもよく、または、複数個を用いても良い。
【0171】
4.熱転写印画物の製造方法
本工程の熱転写印画物の製造方法は、上述した熱転写工程、保護層形成工程、電磁波照射工程を有するものであれば、特に限定されるものではなく、その他の工程を含むものであっても良い。本発明においては、その他の工程として上記熱転写工程の前に、上記染料熱転写シートおよび熱転写受像シートを予め加熱する予備加熱工程を有するものであってもよい。上記予備加熱工程を有することで、上記熱転写工程での加熱時間の短縮や、上記熱転写受像シートの受容層に転写された昇華性染料のキレート化の促進を図れるからである。
【0172】
B.熱転写シート
次に、本発明の熱転写シートについて説明する。本発明の熱転写シートは、支持基板と、上記支持基板上に形成され、少なくとも熱変換物質を含む保護層形成用層と、を有するものである。
【0173】
次に、本発明の熱転写シートを図を参照しながら説明する。図4は本発明の熱転写シートの一例を示す概略断面図である。図4に例示するように、本発明の熱転写シート50は、支持基板51と、上記支持基板51上に形成され、熱変換物質を含む保護層形成用層52と、を有するものである。
【0174】
本発明によれば、上記保護層形成用層が熱変換物質を含むことにより、加熱・転写により保護層を形成した後に、上記熱変換物質が選択的に吸収できる電磁波を照射することで、保護層を選択的に加熱することができる。したがって、上記保護層を昇華性染料が転写された熱転写受像シートの受容層上に形成した場合には、電磁波を照射することで上記保護層の密着性の向上、転写された昇華性染料のキレート反応の進行による熱転写印画物の色相変化の等耐久性の向上、および生産性の向上を図ることができる。
【0175】
本発明の熱転写シートは、支持基板、および保護層形成用層を有するものである。以下このような熱転写シートの各構成について説明する。
【0176】
1.支持基板
本発明に用いられる支持基板は、後述する保護層形成用層を形成することができ、加熱により上記保護層形成用層を転写することが可能であり、かつ安定的に支持することができるものであれば特に限定されるものではない。このような支持基板としては、上記「A.熱転写印画物の製造方法」の、「1.熱転写工程」の、「(1)染料熱転写シート」の、「(a)支持基板」の項に記載したものと内容と同様のものを用いることができるため、ここでの記載は省略する。
【0177】
2.保護層形成用層
本発明に用いられる保護層形成用層は上述した支持基板上に形成され、熱変換物質が含まれ、かつ受容層上に転写されることで、熱変換物質を含む保護層を形成するものであれば特に限定されるものではなく、単層であっても良く、複数層であっても良い。
【0178】
本発明においては、上記保護層形成用層が、剥離層と、熱可塑性樹脂からなる接着層とを上記支持基板上にこの順で積層した複数層からなるものであり、かつ上記接着層にのみ熱変換物質が含まれるものであることが好ましい。このような剥離層と接着層とを有する保護層形成用層を用いて、熱転写受像シートの受容層上に保護層を形成した場合には、図3に例示するように、上記熱転写受像シート6の受容層5上に、接着層14と、上記接着層14上に形成された剥離層13とからなる保護層20が形成されることになる。そのため上記接着層のみが熱変換物質を含むことで、上記受容層と、上記保護層との密着性をより効率的に高めることができ、さらに上記接着層と接する上記受容層に含まれる昇華性染料のキレート反応をより効率的に促進することができるからである。また、サーマルヘッド等によって受容層に転写の際に要する、受容層と保護層との密着性向上のための加熱時間の短縮が可能となることで、ライン速度の向上が図ることができる。
【0179】
このような保護層形成用層としては、上記「A.熱転写印画物の製造方法」の、「2.保護層形成工程」の、「(1)保護層熱転写シート」の、「(a)保護層形成用層」の項に記載したものと同様のものを用いることができる。
【0180】
3.熱転写シート
本発明の熱転写シートは、支持基板と、熱変換物質を含む保護層形成用層と、を有するものであれば特に限定されるものではない。
本発明においては、上記支持基板上に、上記保護層形成用層以外の層を有してもよい。本発明の熱転写シートに用いることができる層としては、キレート可能な昇華性染料を含む染料層を有するものが挙げられる。このような染料層を有することにより昇華性染料の転写と、保護層の形成を容易なものとすることができる点において、染料層を有することが好ましい。
【0181】
上記染料層を上記支持基板上に有する態様としては、上記染料層に含まれる昇華性染料を転写し所望の画像を形成し、かつ上記保護層形成用層の転写することにより熱変換物質を含む保護層形成ができるものであれば特に限定されない。このような態様としては、上記支持基板上に1色の単一層で構成されても良く、あるいは、色相の異なる染料を含む複数の染料層を同一支持基板上の同一面に面順次に繰り返し形成されていても良い。上記支持基板上に1色の単一層で構成されている態様としては、例えば、既に説明した図2(a)に例示するように、支持基板1上に、染料層2と保護層形成用層12とを、交互に配置したものを挙げることができる。また同一支持基板上に複数の染料層を有する態様として、例えば染料層が、Y染料層、M染料層、C染料層、である場合においては、既に説明した図2(b)に例示するようにY染料層31、M染料層32、C染料層33からなる染料層30と保護層形成用層12とが、交互に配置されたものを挙げることができる。
【0182】
本発明においては、上記染料層としては、上記「A.熱転写印画物の製造方法」の「1.熱転写工程」の、「(1)染料熱転写シート」の、「(b)染料層」の項に記載したものと同様のものを用いることができるので、ここでの記載は省略する。
【0183】
また、本発明の熱転写シートは、上記以外の層を有するものであってもよい。このような層としては、背面層および離型層を挙げることができる。上記背面層および上記離型層については、上記「A.熱転写印画物の製造方法」の、「2.保護層形成工程」の、「(1)保護層熱転写シート」の、「(c)保護層熱転写シート」の項に記載したものと同様であるため、ここでの記載は省略する。
【0184】
本発明の熱転写シートの製造方法は、上記支持基板上に上記保護層形成用層が密着性良く積層されているものであれば特に限定されるものではない。このような保護層付染料熱転写シートの製造方法としては、例えば、保護層形成用層を構成する材料を含有する塗工液を作製し、基材上に塗布する方法が挙げられる。この際の塗布方法としては、例えば、グラビアコート法、グラビアリバースコート法、ロールコート法等を挙げることができる。
【0185】
C.熱転写印画物
次に、本発明の熱転写印画物について説明する。本発明の熱転写印画物は、基材、および上記基材上に形成され、金属イオンと昇華性染料とが結合してなるキレート型発色体を含む受容層、を有する熱転写受像シートと、上記受容層上に形成され、熱変換物質を含む保護層と、を有することを特徴とするものである。
【0186】
次に、本発明の熱転写印画物について図を参照しながら説明する。図5は本発明の熱転写印画物の一例を示す概略断面図である。図5に示すように、本発明の熱転写印画物60は、基材61と、上記基材61上に形成され、金属イオンと昇華性染料とが結合してなるキレート型発色体を含む受容層62を有する熱転写受像シート63と、上記受容層62上に形成され、熱変換物質を含む保護層64と、を有するものである。
【0187】
本発明によれば、上記保護層が熱変換物質を有することにより、例えば、上記熱変換物質が吸収可能な電磁波を照射することにより、上記受容層と上記保護層との密着性を向上させることができる。また上記密着性の向上と共に、上記昇華性染料のキレート反応を促進することができるため、色相変化等が少ないものとすることができる。
【0188】
本発明の熱転写印画物は、熱転写受像シートと、保護層と、を有するものである。以下、このような熱転写印画物の各構成について詳細に説明する。
【0189】
1.熱転写受像シート
本発明に用いられる熱転写受像シートは、基材と、上記基材上に形成され、金属イオンと昇華性染料とが結合してなるキレート型発色体を含む受容層と、を有するものであれば特に限定されるものではない。
【0190】
(1)受容層
本発明に用いられる受容層は、後述するキレート型発色体を安定的に含むものであれば特に限定されるものではなく、公知のものを使用することができる。
このような受容層を構成する樹脂としては、上記「A.熱転写印画物の製造方法」の、「(2)熱転写受像シート」の「(a)受容層」の項に記載したものを用いることができる。
【0191】
本発明に用いられるキレート型発色体は、昇華性染料と金属イオンとが結合してなり、昇華性染料の種類に応じて所望の発色性を有するものであれば特に限定されない。
【0192】
上記昇華性染料としては、上記「A.熱転写印画物の製造方法」の、「1.熱転写工程」の「(1)染料熱転写シート」の「(b)染料層」の「(ii)昇華性染料」の項に記載したものと同様のものを用いることができる。
また、上記金属イオン化合物としては、上記「A.熱転写印画物の製造方法」の、「1.熱転写工程」の、「(2)熱転写受像シート」の、「(a)受容層」の項に記載したものと同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0193】
(2)基材
本発明に用いられる基材は、上記「A.熱転写印画物の製造方法」の、「1.熱転写工程」の、「(2)熱転写受像シート」の、「(b)基材」の項に記載したものと同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0194】
(3)熱転写受像シート
本発明に用いられる熱転写受像シートのその他の層構成および製造方法については、上記「B.熱転写シート」の、「1.熱転写工程」の、「(2)熱転写受像シート」の項に記載したものと同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0195】
2.保護層
本発明に用いられる保護層は、熱変換物質を有し、かつ上記熱転写受像シートを保護し、色相変化、耐磨耗性といった耐久性に優れたものとするものであれば特に限定されるものではない。このような保護層としては、単層であっても良く、複数の層からなるものであってもよい。
【0196】
本発明においては、上記保護層が、熱可塑性樹脂からなる接着層と、剥離層と、を上記受容層上にこの順で積層した複数層からなり、かつ上記接着層にのみ熱変換物質が含まれるものであることが好ましい。
上記保護層が、接着層と、剥離層と、を上記受容層上にこの順で積層したものである場合には、図3に例示するように、上記熱転写受像シート6の受容層5上に、接着層14と、上記接着層14上に形成された剥離層13とからなる保護層20が形成されることになる。そのため上記接着層のみが熱変換物質を含むことで、上記熱変換物質が選択的に吸収し、熱に変換することができる電磁波を照射した際に、上記受容層との密着性に最も寄与する上記接着層のみを選択的に加熱することができるからである。また、上記接着層を選択的に加熱することが可能となることにより、上記接着層と接する上記受容層に含まれる昇華性染料のキレート反応をより効率的に促進することができるからである。したがって、上記受容層と上記保護層との密着性を向上および上記昇華性染料のキレート反応促進が容易に図れるため、色相変化等の耐久性に優れたものとすることができるからである。
【0197】
本発明に用いられる熱変換物質を含む保護層としては、上記「B.熱転写シート」の、「2.保護層形成用層」に記載の保護層形成用層と同様のものを用いることができるため、ここでの記載は省略する。
【0198】
3.熱転写印画物
本発明の熱転写印画物は、基材と、上記基材上に形成され、金属イオンと昇華性染料とが結合してなるキレート型発色体を含む受容層を有する熱転写受像シートと、上記受容層上に形成され、熱変換物質を含む保護層と、を有するものであれば特に限定されるものではない。
このような熱転写印画物の製造方法としては、上記熱転写印画物の各構成が密着性よく積層されたものとすることができるものであれば、特に限定されるものではないが、上記「A.熱転写印画物の製造方法」に記載した方法を最も好ましく用いることができる。上記保護層が熱変換物質を有するものであるため、上記熱変換物質が吸収可能な電磁波を照射することで、上記受容層と上記保護層との密着性を向上させることができるからである。また上記密着性の向上と共に、上記昇華性染料のキレート反応を促進することができるため、色相変化等が少ないものとすることができるからである。
【0199】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と、実質的に同一の構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなる場合であっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0200】
次に、実施例及び比較例を挙げて、本発明についてさらに具体的に説明する。
【0201】
[実施例1]
【0202】
1.熱転写受像シートの作製
基材として、コート紙(王子製紙(株)製OKトップコート、127.9g/m)の表裏に厚さ50μmの白色PET(東レ(株)製ルミラーE63S)を、ウレタン系接着剤(三井武田ケミカル(株)製タケラックA−969V / タケネートA−5(質量比3/1))を乾燥後の塗布量が4g/mとなるように塗布し貼り合わせた。
【0203】
次いで、下記組成の受容層形成用塗工液を、該基材の一方の面に乾燥後の塗布量2.5g/mとなるようにミヤバーにて塗工し、130℃、2分乾燥することにより、熱転写受像シートを作製した。
【0204】
(受容層形成用塗工液の組成)
下記組成物をメチルエチルケトン/トルエン(質量比1/1)溶媒で、固形分濃度が10質量%となるように希釈し、調製した。
ポリビニルブチラール樹脂 50重量部
(商品名:BX−1、積水化学工業社製)
ポリビニルアセタール樹脂 19重量部
(商品面:BX−L、積水化学工業社製)
下記構造式の金属イオン化合物 30重量部
アクリル変性シリコーン 1重量部
(商品名:モディパーFS730、日本油脂社製)
【0205】
【化12】

【0206】
2.熱転写シートの作製
支持基板として準備した、厚さ6μmのPETフィルム(商品名ルミラー 東レ製)を用い、この表面上に予め下記組成に調製した背面層塗工液をグラビアコーティングにより、乾燥塗布量が1.0g/mとなるように塗布し、背面層を形成した。
【0207】
(背面層塗工液の組成)
ポリビニルブチラール樹脂) 13.6重量部
(商品名:エスレックBX−1、積水化学工業(株)製
ポリイソシアネート硬化剤 0.6重量部
(商品名:タケネートD218、武田薬品工業(株)製)
リン酸エステル 0.8重量部
(商品名:プライサーフA208S、第一工業製薬(株)製)
トルエン 42.5重量部
メチルエチルケトン 42.5重量部
【0208】
次に、上記背面層が形成された表面とは逆の支持基板表面に、下記組成に調製した剥離層形成用層塗工液を、グラビアコーティングにより乾燥後膜厚が1.0μmとなるように塗布した。なお、上記保剥離層形成用層の乾燥に際しては、ドライヤーによる乾燥を行い、さらに、温度100℃のオーブン中に1分間静置し、支持基板上に剥離層を形成した。
次いで、上記剥離層上に、下記接着層形成用塗工液を塗工・乾燥させることで支持基板上に、剥離層、接着層がこの順で積層された保護層形成用層を形成した。
【0209】
(剥離層形成用層塗工液の組成)
アクリル樹脂(商品名:BR−83、三菱レイヨン(株)社製) 20重量部
トルエン 40重量部
メチルエチルケトン 40重量部
【0210】
(接着層形成用塗工液の組成)
塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体系樹脂 19重量部
(商品名:#1000ALK、電気化学工業製)
ジイモニウム類(商品名:IR−2MF、昭和電工(株)社製) 1重量部
トルエン 40重量部
メチルエチルケトン 40重量部
【0211】
次に、上記背面層が形成された表面とは逆の支持基板表面の保護層形成用層の未形成部分に、下記組成の染料層形成用塗工液を、グラビアコーティングにより、乾燥塗布量が0.5g/mになるように塗布、乾燥して染料層を形成し、イエロー、マゼンダ、シアンの各色の染料層を有する熱転写シートを作製した。
【0212】
(イエロー染料層形成用塗工液の組成)
昇華性染料(下記式化合物i) 1.4重量部
セルロースアセテートブチレート樹脂 1.0重量部
(CAB381−2 イーストマンケミカル社製 分子量38000)
メチルエチルケトン/トルエン(質量比1/1) 97.6重量部
【0213】
【化13】

【0214】
(マゼンダ染料層形成用塗工液の組成)
昇華性染料(下記式化合物ii) 0.8重量部
セルロースアセテートブチレート樹脂 1.0重量部
(CAB381−2 イーストマンケミカル社製 分子量38000)
メチルエチルケトン/トルエン(質量比1/1) 98.2重量部
【0215】
【化14】

【0216】
(シアン染料層形成用塗工液の組成)
昇華性染料(下記式化合物iii) 0.9重量部
セルロースアセテートブチレート樹脂 1.0重量部
(CAB381−2 イーストマンケミカル社製 分子量38000)
メチルエチルケトン/トルエン(質量比1/1) 98.1重量部
【0217】
【化15】

【0218】
3.熱転写印画物の作製
(印画条件)
発熱体平均抵抗値;5285(Ω)
主走査方向印字密度;300dpi
副走査方向印字密度;300dpi
印加電圧;22(V)
1ライン周期;2(msec./line)
印字開始温度;27(℃)
印加パルス(階調制御方法);1ライン周期中に、1ライン周期を256に等分割したパルス長をもつ分割パルスの数を0から255個まで可変できるマルチパルス方式のテストプリンターを用い、各分割パルスのDuty比を90%に固定し、ライン周期当たりのパルス数を0から255個を18ステップに分割した。これにより、18段階に異なるエネルギーを与えることができる。
イエロー、マゼンダ、シアンの各色の染料を、この順で、熱転写受像シートの受容層に転写してブラック画像を形成した。次いで、保護層形成用層を、印加電圧20V、パルス数255個で印画することにより保護層を形成した。
【0219】
4.電磁波照射
上記保護層が形成された熱転写受像シートに対して、下記IRヒーターにより、電磁波として赤外線照射を行った。
(IRヒーター)
IRヒーター:出力2KW×2灯
照射距離:100mm
照射時間:10秒
【0220】
[実施例2]
接着層形成用塗工液を下記の組成とした以外は実施例1と同様に、上記IRヒーターにより電磁波として赤外線照射を行った。
【0221】
(接着層形成用塗工液の組成)
ポリビニルブチラール 19重量部
(商品名:BL−10、積水化学工業(株)社製)
ジイモニウム類(商品名:IR−2MF、昭和電工(株)社製) 1重量部
トルエン 40重量部
メチルエチルケトン 40重量部
【0222】
[実施例3]
接着層形成用塗工液を下記の組成とし、電磁波としてマイクロ波を照射した以外は実施例1と同様にして熱転写印画物を作製した。なお、マイクロ波の照射には下記に示す市販の電子レンジを用いマイクロ波の照射時間を60秒とした。
(電子レンジ)
シャープ株式会社製 RE−T21−W5P
【0223】
(接着層形成用塗工液の組成)
ポリビニルブチラール 20重量部
(商品名:BL−10、積水化学工業(株)社製)
トルエン 40重量部
メチルエチルケトン 40重量部
【0224】
[比較例1]
電磁波を照射しなかった以外は実施例1と同様にして熱転写印画物を作製した。
【0225】
[評価]
上記実施例および比較例における熱転写印画物について(1)色濃度測定、(2)耐光性試験、(3)保護層密着性について評価をおこなった。
【0226】
(1)色濃度測定
イエロー、マゼンダ、シアンを用いて黒(Bk)画像を形成した場合において、シアン染料のみ色濃度が低いことが知られている。そこで、シアン染料の色濃度を測定することで、キレート反応の進行状態の確認を実施した。測定には分光測定器(グレタグマクベス社製 spectrolino)を用いて、BkのODが1.5付近でのBk中のシアン濃度を測定した。なお、シアン濃度測定には、Ansi Status Aに基づき、D65光源にて濃度評価した。
【0227】
(2)耐光性試験
耐光性評価の条件は以下の通りである。
・照射試験器:アトラス社製Ci35
・光源:キセノンランプ
・フィルター:内側=IRフィルタ
外側=ソーダライムガラス
・ブラックパネル温度:45(℃)
・照射強度:1.2(W/m)―420(nm)での測定値
・照射エネルギー:400(kJ/m)−420(nm)での積算値
【0228】
上記耐光性条件の照射前後の画像の色差を、分光測定器(グレタグマクベス社製 spectrolino)により測定した。測定に際しては照射前のBkのODが1.5付近で測定を行った。得られた結果を基に下記式により色差を算出し耐光性を評価した。
色差ΔE*ab=((Δa*)+(Δb*)1/2
CIE1976 La*b*表色系(JIS Z8729 (1980))参照
Δa*=a*(照射後)−a*(照射前)
Δb*=b*(照射後)−b*(照射前)
【0229】
(3)保護層密着性
上記転写された保護層の密着性の評価として、セロハンテープ剥離試験を行った。セロハンテープ剥離試験の試験方法は、保護層上にセロハンテープ(住友スリーエム社製 Scotch メンディングテープ MP−12)を貼った後、セロハンテープを剥がす作業を実施例、比較例毎に10回行い、セロハンテープと共に保護層が剥離する回数を測定し、以下の基準にて評価を行なった。
○:保護層は剥離しなかった(保護層剥離回数0〜1回)。
△:保護層は時々剥離した(保護層剥離回数:2〜4回)。
×:保護層はほとんど剥離した(保護層剥離回数5回以上)。
【0230】
上記実施例および比較例における熱転写印画物の評価結果を表1に示す。
【0231】
【表1】

【0232】
熱転写印画物について、色濃度の測定を実施したところ、実施例においては、電磁波を照射することにより、Bk中のシアンの色濃度が増加し、キレート反応が進行していることが確認できた。また、耐光性試験を実施したところ、実施例においては、電磁波が未照射である比較例と比較して色差が低下しており、耐光性が改善されていることが確認できた。また、実施例で作製した熱転写印画物においては、保護層が上記熱転写受像シートの受容層上に密着性良く形成されていた。
【図面の簡単な説明】
【0233】
【図1】本発明の熱転写印画物の製造方法の一例を示す工程図である。
【図2】本発明に用いられる熱転写シートの一例を示す概略断面図である。
【図3】本発明に用いられる保護層が形成された熱転写受像シートの一例を示す概略断面図である。
【図4】本発明の熱転写シートの一例を示す概略断面図である。
【図5】本発明の熱転写印画物の一例を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0234】
1、51 … 支持基板
2、30 … 染料層
3 … 染料熱転写シート
4 … 基材
5 … 受容層
6 … 熱転写受像シート
10 … 保護層熱転写シート
12、52 … 保護層形成用層
13 … 剥離層
14 … 接着層
20 … 保護層
40、50 … 熱転写シート
60 … 熱転写印画物
61 … 基材
62 … 受容層
63 … 熱転写受像シート
64 … 保護層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持基板、および前記支持基板上に形成され、バインダー樹脂およびキレート可能な昇華性染料を含む染料層を有する染料熱転写シートの前記染料層と、基材、および前記基材上に形成され、キレート可能な金属イオンを含む受容層を有する熱転写受像シートの前記受容層と、を対向させて加熱することにより、前記キレート可能な昇華性染料を、前記受容層に転写させる熱転写工程と、
前記熱転写工程により前記昇華性染料が転写された前記受容層、および支持基板と、前記支持基板上に形成され、熱変換物質を含む保護層形成用層と、を有する保護層熱転写シートの前記保護層形成用層を対向させて加熱することにより、前記受容層上に前記熱変換物質を有する保護層を形成する保護層形成工程と、
前記熱転写受像シートの前記受容層上に形成された前記保護層に電磁波の照射を行う電磁波照射工程と、
を有することを特徴とする熱転写印画物の製造方法。
【請求項2】
前記保護層形成用層が、剥離層と、熱可塑性樹脂からなる接着層とを、前記支持基板上にこの順で積層してなるものであり、かつ前記接着層にのみ前記熱変換物質が含まれることを特徴とする請求項1に記載の熱転写印画物の製造方法。
【請求項3】
前記電磁波がマイクロ波または赤外線であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の熱転写印画物の製造方法。
【請求項4】
前記電磁波がマイクロ波であり、かつ前記熱変換物質がポリビニルブチラールであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の熱転写印画物の製造方法。
【請求項5】
前記電磁波が赤外線であり、かつ前記熱変換物質がジイモニウム類またはシアニン系化合物であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の熱転写印画物の製造方法。
【請求項6】
支持基板と、前記支持基板上に形成され、熱変換物質を含む保護層形成用層と、を有することを特徴とする熱転写シート。
【請求項7】
前記支持基板上に形成され、キレート可能な昇華性染料を含む染料層を有することを特徴とする請求項6に記載の熱転写シート。
【請求項8】
前記保護層形成用層が、剥離層と、熱可塑性樹脂からなる接着層とを、前記支持基板上にこの順で積層してなるものであり、かつ前記接着層にのみ前記熱変換物質が含まれることを特徴とする請求項6または請求項7に記載の熱転写シート。
【請求項9】
基材、および前記基材上に形成され、金属イオンと昇華性染料とが結合してなるキレート型発色体を含む受容層、を有する熱転写受像シートと、前記受容層上に形成され、熱変換物質を含む保護層と、を有することを特徴とする熱転写印画物。
【請求項10】
前記保護層が、熱可塑性樹脂からなる接着層と、剥離層とを前記受容層上にこの順で積層してなるものであり、かつ前記接着層にのみ前記熱変換物質が含まれることを特徴とする請求項9に記載の熱転写印画物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−80735(P2008−80735A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−265620(P2006−265620)
【出願日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】