説明

熱転写媒体の欠陥検査装置およびそれを用いた熱転写媒体の製造装置

【課題】画像品質に優れた印画物が得られるように、熱転写媒体の着色転写層のピンホールや色ムラなどの欠陥を、実用的な信頼性で検知する検査手段を備える熱転写媒体の欠陥検査装置およびそれを用いた製造装置を提供する。
【解決手段】基体シートの片面に、着色熱転写層を設けた熱転写媒体の欠陥検査装置において、基体シートへ塗布された着色熱転写層の色相と、該色相の補色であるカラーフィルタを介してCCDカメラで透過光を検出する画像検出部と、該検出値と予め設定した基準値とを比較して良否判定する判定部と、前記画像を記録する映像メモリとからなる検査処理部と、該判定結果から着色熱転写層の欠陥の有無と位置情報を表示または出力し、欠陥の発生警報を発する出力部とを具備することを特徴とする。また、該欠陥検査装置を設けた製造装置で、欠陥の有無を製造時にリアルタイムで警告し、該警告を基に矯正しながら製造することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、熱転写媒体の欠陥検査装置およびそれを用いた製造装置関し、更に詳しくは、熱転写媒体の着色熱転写層のピンホールなどの欠陥部分を除去するために、該欠陥部分を検出できる実用的な検査手段を持つ欠陥検査装置、およびそれを用いて、リアルタイムで欠陥を検出する熱転写媒体の製造装置に関するものである。
【0002】
【従来技術】従来、基体シートに着色転写層を形成した熱転写媒体の着色転写層面と、被転写体とを重ねて、基体シート側からサーマルヘッドなどにより、画像情報をドット状に加熱して、文字・図形・模様および写真などの画像を得る熱転写記録方法が知られている。熱転写記録方法には、着色転写層の構成によって、昇華転写型と熱溶融転写型の2方式に大別される。昇華転写型は、熱によって昇華または移行する染料を適当なバインダで、基体シートに着色転写層として担持させた熱転写媒体と被転写体とを重ねて、熱転写媒体側から加熱して、着色転写層中の染料を被転写体の表面へ熱移行させるものである。熱溶融転写型は、基体シートに、加熱で容易に軟化、溶融して転写可能な着色転写層を担持させた熱転写媒体と被転写体とを重ねて、熱転写媒体側から加熱して、着色転写層を被転写体の表面へ転写移行させるものである。
【0003】両方法ともに、モノカラー・多色およびカラー画像の形成が可能であり、例えば、イエロー・マゼンタ・シアン、さらに必要に応じてブラックの3色ないしは4色の熱転写媒体を用意し、被転写体の表面に希望する色相になるように、着色転写層を熱転写して、カラー画像を形成できる。しかしながら、このようにして得られたカラー画像の印画物が、該画像の1部が色が抜けていたり、ムラが発生して画像品質が劣化していると、元の画像と異なって印象が悪く、実用に耐えないという問題がある。
【0004】該画像の1部の色抜けや色ムラの発生の原因は、熱転写媒体と被転写体にゴミなどの異物が付着したり、サーマルヘッドの不良の場合もあるが、熱転写媒体を製造する製造工程で、着色転写層自身にピンホールや色ムラなどの欠陥が発生していて、該欠陥がそのまま転写されて、印画物の画像品質を劣化させている。そして、このような欠陥は、熱転写媒体の製造工程中で、印刷された着色転写層を肉眼で観察する検査を行って、ピンホールや色ムラなどの欠陥を除去しているが、該検査方法では人手によるもので、完全に欠陥部を除去できず信頼性に欠けるという欠点がある。さらに、該欠陥を人手によらない検査方法として、光学的な機械で行うことが試みられているが、未だに実用できるレベルには至っていない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】そこで、本発明は、この様な問題を解決し、画像品質に優れた印画物が得られるように、熱転写媒体の着色転写層のピンホールや色ムラなどの欠陥を、実用的な信頼性で検知する検査手段を備える欠陥検査装置、およびそれを用いた熱転写媒体の製造装置を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記の課題を解決する第1の発明は、基体シートの片面に着色熱転写層を設けた熱転写媒体を、光源で照明し、該着色熱転写層の透過光をCCDカメラで検出し、該着色熱転写層の欠陥を検査する欠陥検査装置において、基体シートへ塗布された着色熱転写層の色相と、該色相の補色であるカラーフィルタを介してCCDカメラで透過光を検出する画像検出部と、該検出値と予め設定した基準値とを比較をして、予め設定した判定値および判定周期で判定する判定部と、前記画像を記録する映像メモリとからなる検査処理部と、該判定結果から着色熱転写層の欠陥の有無と位置情報を表示または出力し、欠陥の発生警報を発する出力部とを具備することを特徴とする。また、第2の発明の要旨は、請求項1記載の熱転写媒体の欠陥検査装置を設けた熱転写媒体の製造装置において、欠陥の有無を製造時にリアルタイムで警告し、該警告を基に矯正しながら製造することを特徴とする。
【0007】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。第1図は、本発明の製造装置で製造する熱転写媒体の1例を示す断面図である。図1に図示した熱転写媒体10は、基体シート11と、基体シートの表面に着色熱転写層12を、基体シートのもう一方の面には耐熱保護層13から構成されている。該耐熱保護層13は適宜設ければ良く、設けない場合もある。熱転写層12の色としては、通常イエロー、マゼンタ、シアン、およびブラックであり、こららの4色を掛け合わせることで、フルカラーを表現できる。熱転写媒体10は、広幅で長尺で製造されるので、適宜所定の幅および長さに裁断して、カセットに入れてインクリボンとなり、熱転写型プリンタに供せられる。
【0008】基体シート11として使用できるプラスチックフイルムは、任意で特に制限されるものではない。例えば、ポリエステル、ポリプロピレン、セロハン、ポリカーボネート、酢酸セルロース、ポリイミドなどのプラスチックフィルムなどがあり、また、これらを複合したフィルムであってもよい。該プラスチックフィルムの厚さは、その強度および熱伝導性が適切になるように材料に応じて適宜変更することができるが、その厚さは、例えば、1〜25μmである。
【0009】着色熱転写層12は、着色剤とバインダーとからなり、さらに必要に応じて種々の添加剤を加えたものでもよい。着色剤としては、非加熱時には無色であるが加熱時に発色するものや、被転写体に塗布されているものと接触することにより発色するような物質でもよい。シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックを形成する着色剤のほかに、種々の着色剤をも用いることができる。熱溶融性インキと感熱昇華性インキの2種類があるが、本発明ではいずれの種類にも適用することができる。
【0010】熱溶融性インキは、着色剤として、カーボンブラックまたは各種の染料、顔料を、インキに与えようとする色に応じて選んで添加する。この着色剤としては、有機または無機の顔料もしくは染料のうち、記録材料として良好な特性を有するもの、たとえば十分な着色濃度を有し、光、熱、湿度などによって変退色しないものが好ましい。
【0011】上記熱溶融性インキのバインダーとしては、ワックス、乾性油、樹脂、鉱油、セルロースおよびゴムの誘導体など、およびこれらの混合物が用いられる。ここで、ワックスの代表例としては、マイクロクリスタリンワックス、カルナバワックス、パラフィンワックスなどがある。また、樹脂としては、エチレンー酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレンーアクリル酸エチル共重合体(EEA)などが用いられる。
【0012】基体シート11上へ熱溶融性インキを塗布する方法としては、ホットメルトコートのほか、ホットラッカーコート、グラビアコート、グラビアオフセットコート、グラビアリバースコート、ロールコートそのほか多くの公知の手段で実施できる。該熱溶融性インキの厚さは、必要な印字の濃度と熱感度との調和がとれるように適宜選択すれば良い。一般的には、0.1〜30μの範囲、好ましくは1〜20μの範囲内にある。該熱溶融性インキは、公知の技術によって製造することが出来る。着色剤は通常バインダーの5〜30重量%に相当する量で添加する。
【0013】熱昇華性インキは、昇華性の染料をバインダー樹脂中に含有させたものであり、厚さが0.2〜5.0μ程度の層に形成される。この熱昇華インキにおける染料としては、分散染料であることが望ましく、この染料としては約150〜400程度の分子量を有するものが望ましい。染料は、熱昇華温度、色相、耐候性、バインダー樹脂中での安定性などを考慮して選択すれば良い。例えば、黄色染料としてはホロンブリリアントイエローS−6GL、PTY−52等が、赤色染料としてはMSレッド、マクロレックスレッドバイオレットR等が、さらに、青色染料としてはカヤセットブルー14、ワクソリンブルーAP−FW等が挙げられる。また、上記の各色相の昇華性染料を組み合わせることにより、ブラックなどの任意の色相の染料層を形成することができる。
【0014】熱昇華転写インキ中への染料の含有量は、染料の昇華温度や発色した状態でのカバリングパワーの大小にもよるが、約5〜70重量%、好ましくは10〜60重量%程度を含有させる。また、バインダーとしては、通常耐熱性が高く、しかも加熱されたときに染料の移行を妨げないものを選択すれば良い。例えば、エチルセルロース、酢酸セルロース等のセルロース系樹脂、及びポリ酢酸ビニル、ポリビニルブチラール等のビニル系樹脂、またはポリエステル、ポリアクリルアミド等が用いられる。
【0015】耐熱保護層13は、耐熱性のある熱可塑性樹脂バインダーと、熱離型剤または滑剤のはたらきをする物質とから構成されている。該バインダーとしては、広い範囲から選ぶことが出来るが、例えばアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、セルロースアセテートプロピオネート、フッ化ビニリデン樹脂、塩化ゴム、環化ゴム及びポリビニルアルコールなどが好適である。これらの樹脂は、ガラス転移点が60℃以上のもの、またはOH基またはCOOH基を有する熱可塑性樹脂にアミノ基を2個以上有する化合物またはジイソシアネートもしくはトリイソシアネートを加えて若干の架橋硬化を起させたものが好ましい。
【0016】上記の熱可塑性樹脂に配合する熱離型剤または滑剤は、ポリエチレンワックス、パラフィンワックスの様なワックス類、高級脂肪酸のアミド、エステル又は塩類、高級アルコール及びレシチン等のリン酸エステル類ような加熱により溶融してその作用をするものと、フッ素樹脂や無機物質の粉末のように、固体のままで役立つものとがある。
【0017】耐熱保護層13を形成する組成物は前記の熱可塑性樹脂バインダー100重量部に対し、上記の滑剤又は熱離型剤の作用をする物質を10〜100重量部の割合で配合して形成する。基材シートへの適用は適宜の溶剤で練ってインキとして、グラビアコーティング、ロールコーティングなどの公知のコーティング方法が適用できる。特に耐熱性の点から厚さ0.5〜50μのポリエステルフィルムからなる基体シート11の着色熱転写層12の反対面に、固形分0.1〜4g/m2程度により塗布し、乾燥することによって行えばよい。基材シート11と耐熱保護層13の付着を確実にするために、予め基体シート11上にプライマー層を設けることもある。
【0018】図2は、本発明の1実施例を示す欠陥検査装置を設けた製造装置の構成図である。図2は、本発明の1実施例を示し、給紙部31から基体シート11が繰り出されて、1つまたは複数の印刷ユニット40を通過する間に、熱転写媒体10が形成される。引き続き本発明の欠陥検査装置で検査された後に、排紙部37へ巻き取る熱転写媒体の製造装置の構成である。給紙部31には、熱転写媒体10となる材料の透明フィルムである基体シート11の巻取りがセットされている。
【0019】該基体シート11はガイドローラ32を経由して印刷ユニット40に送られ、版胴41と圧胴42との間を通過して印刷されて、着色熱転写層が塗布される。基体シート11を、熱溶融性インキまたは熱昇華性インキを溜めるインキパン43からインキの供給を受け、ドクタ刃44で余分なインキを除去された印刷用の版胴41と、押圧する圧胴42との間に挟み込むことにより、版胴41のインキを基体シート11へ転移させて印刷する。この後、印刷ユニット40の一部を構成するドライヤ33で乾燥された後に、次の印刷ユニットに移動しまたは事前に、他の色またはプライマーなどの無色の層が印刷される。図2では、基体シート11の片面に2色を印刷するように例示しているが、印刷ユニット40を多数設けて多数色を印刷したり、印刷ユニットを間で基体シート11を折り返して、裏表印刷したりすることも当業者では一般的である。
【0020】また、図2の印刷ユニットは、グラビア印刷を例示しているが、印刷ユニット40を前述した印刷方式に応じて変えることで、種々の印刷方式が適用できる。このように、1色毎に印刷されて最終印刷ユニットでの印刷が完了され、少なくとも着色熱転写層が印刷された後、上記欠陥検査装置にて熱転写媒体10の検査を行う。つまり、最終印刷ユニットの版胴の回転と連動しているロータリエンコーダ55のパルスジェネレータから発生するタイミング信号で、熱転写媒体10の絵柄を読み取るタイミングを決める。
【0021】続いて、熱転写媒体10の絵柄の画像データを検出するために、画像検出部60と熱転写媒体10を挟んで相対するように配置した光源51が、一対のタッチローラ34でたるみなく伸張された熱転写媒体10を均一に照明する。該照明光が熱転写媒体10の絵柄を透過し、該透過光を上記タイミング信号に従い、画像検出部60が読み取り、該画像データを検査処理部70にて良否判定し、該結果を出力部80へ出力する。
【0022】照明光は、電源53から調光回路52を経た光源51から均一に出射される。光源51としては、ハロゲンランプ、タングステン光源、キセノン光源、蛍光灯などが適用できるが、点光源より線または面光源の方が好適である。また、ストロボ等の瞬時発光光源を用いて必要箇所を間欠的に監視してもよい。
【0023】図5は、本発明の欠陥検査装置の機能要素のブロック図である。画像検出部60は、レンズ61と、カラーフィルタ20と、照明光が熱転写媒体10を透過してきた透過光を受光するCCDセンサ62と、CCD駆動回路63と、ビデオアンプ64とからなっている。熱転写媒体10の絵柄は、カラーフィルタ20とレンズ61を透して、CCDセンサ62の上に結像する。CCDセンサ62は、ロータリエンコーダ55からのスタートパルスを受けたCCD駆動回路63の指示に従って、画像を取り込みビデオアンプ64へ送る。ビデオアンプ64は、画像を増幅して検査処理部70の映像メモリ77へ送り記録し、一方、画像データを検出値として検査処理部70の検出値メモリ71へ送り記録する。
【0024】レンズ61を透してCCDセンサ62が透過光を受光する際に、欠陥検査をしようとする色相の補色に該当するカラーフィルタ20を介することで、CCDセンサ62の受光する光強度値の差を大幅に向上させることができる。図3は、カラーフィルタがない場合の透過光の波長を説明する説明図である。図4は、カラーフィルタがある場合の透過光の波長を説明する説明図である。図3(A)は、マゼンタ色10Mの熱転写媒体10を印刷している場合で、絵柄部10Aは正常印刷状態であり、絵柄部10Bは着色熱転写層12が部分的に欠落した色抜け状態の欠陥が発生している。
【0025】このような部分的な色抜けを、外観的に小さな穴のように見えることから「ピンホール」欠陥と呼んでいる。一般に熱転写媒体10の印刷においては、インクがない「ピンホール」と、インクが余分に付着して濃色となった「インクダマ」色ムラ欠陥が比較的多く発生する。特に「ピンホール」欠陥は着色熱転写層が欠落して存在していないので、該熱転写媒体10を使用した印画物にも色が出ず、ピンホールの大きさによっては致命的な欠陥である。
【0026】図3(A)は、マゼンタ色10Mの熱転写媒体10の絵柄部10Aが正常な印刷状態である。光源51からの白色照明光が、正常なマゼンタ色10Mを透過してきた光は、図3(A)のように「B」と「R」の波長の光である。ここで、「R(赤)」、「G(緑)」、および「B(青)」の波長は、それぞれ600〜700nm、500〜600nm、および400〜500nmである。また、図3(B)は、「ピンホール」欠陥部分で色がなく透明な部分で、ここを透過した透過光は、「B」、「G」、および「R」のすべての波長を含む光である。
【0027】このようにCCDセンサ62で受光した光は、図3(A)の「B」と「R」とを加算した光強度と、図3(B)の「B」と「G」と「R」とを加算した光強度とを、後述する基準値とを比較して、印刷物の良否を判定するために、光強度の差は大きければ大きいほど有利となり、精度良く欠陥を検出できる。
【0028】図4は、図3にカラーフィルタ20としてマゼンタの補色である「G(緑)」カラーフィルタ20Gを介してCCDセンサ62で受光した場合である。図4(A)はマゼンタ色10Mの熱転写媒体10の絵柄部10Aが正常な印刷状態である。光源51からの照明光が、正常なマゼンタ色10Mを透過し、さらにG(緑)カラーフィルタ20Gを透過させた光で、図4(A)のようにすべての波長の光が吸収されて、光強度がなくなる。また、図4(B)は、「ピンホール」欠陥部分で色がなく透明な部分を透過し、さらに「G(緑)」カラーフィルタ20Gを透過させた光で、図4(B)のようにBとRの波長の光が吸収されて、「G」の波長の光のみである。
【0029】このようにカラーフィルタ20を用いることで、CCDセンサ62が受光した図4(A)の光強度「0」と、図4(B)の「G」の光強度と、基準値とを比較すれば良い。比喩的に比較すると、2対3より、0対1の差の方が大きく比較し易く、また、片方の値が0というのは、機械で極めて扱い易く、さらに、通常はこの値を増幅するが、0対1の方が増幅してもノイズが発生しにくいという特徴もある。熱転写媒体10の絵柄部がイエローの場合には「B(青)」フィルタを、シアンの場合には「R(赤)」フィルタを用いることで、同様の効果が得られる。
【0030】熱転写媒体10(以下、印刷物と称す)の絵柄は、画像検出部60内のカラーフィルタ20およびレンズ61を介してCCDセンサ62の上に結像されるが、該CCDセンサ62の概観図はICのパッケージのような形状であり、センサを保護するガラス付き検出窓を持っている。通常1列のセンサには1024個の受光素子があり、受光素子列が外部からのスタートパルスでCCDセンサ62の上に結像された画像を光電変換し、走査パルスで受光素子が長手方向にわたって順番に駆動され画像出力される。
【0031】スタートパルスおよび走査パルスは、図5に示すようにロータリーエンコーダ55の出力信号に基づき、印刷物の絵柄状態を光学的に監視する画像検出部60のCCD駆動回路63に送信される。ロータリーエンコーダ55は最終印刷ユニットにタイミング信号発生部として設けられ、印刷機の版胴の回転と同期させ印刷物の走行状態を検出している。ロータリーエンコーダ55からは版胴1回転に2000パルス等の所定のパルス数が一定間隔で出力されるほか、さらに版胴1回転毎に1パルス出力され、前者をA相、後者をZ相とよぶ。
【0032】A相およびZ相を合わせてタイミング信号とし、A相からスタートパルスを作り、Z相から印刷物の絵柄の頭を示すパルスを作る。ロータリーエンコーダ55の設置方法としては、印刷物を挟んで配置させた2本のタッチローラ34のどちらか一方のローラに接続して設けても良い。
【0033】印刷物の走行状態を検出したロータリーエンコーダ55からのタイミング信号に基づき、スタートパルスと走査パルスが出力され、画像検出部60のレンズ61を介してCCDセンサ62上に結像した印刷絵柄の画像を、前記スタートパルスに従って前記センサ62により光電変換し、走査パルスに従って画像信号としてビデオアンプ64に出力する。画像信号はビデオアンプ64により必要な電圧レベルに増幅され、検査処理部70に送信される。
【0034】図5の検査処理部70は、本発明の印刷物の検査装置に関する検査処理部の一実施例を示したブロック図である。検査処理部70は、ビデオアンプ64からの映像を記録する映像メモリ77と、ビデオアンプ64からの検出値を記録する検出値メモリ71と、基準レベルを設定する基準レベル設定部72と、該設定された基準値を記録しておく基準値メモリ73と、検出値と基準値とを比較する比較部74と、該比較値をサイズ設定および周期設定部75の設定に従って良否判定する判定部76とからなっている。画像検出部60のビデオアンプ64から画像信号は、映像メモリ77に記憶した後、検出値メモリ71に記憶し、予め設定し記憶されている基準値メモリ73と比較して良否判定を行う。
【0035】印刷物の走行状態を検出したロータリーエンコーダ55からのタイミング信号をCCDセンサ62のCCD駆動回路63に入力し、画像検出部60のレンズ61を介してCCDセンサ62上に結像した印刷絵柄の画像を、前記スタートパルスに従って前記センサ62により光電変換し、走査パルスに従って画像信号としてビデオアンプ64に出力する。スタートパルスはロータリーエンコーダ55のA相パルスを基に形成され、走査パルスは前記駆動回路63に設けた水晶振動子により形成される。
【0036】受光素子列はスタートパルスと走査パルスで駆動される。つまり、スタートパルスは受光素子列の画像検出開始を指示し、走査パルスは受光素子の個数分のパルスを出力し1パルス毎各受光素子が変換した信号を順番に出力させる。そして受光素子列において画像出力が終わると次のスタートパルスと走査パルスで次の画像の検出及び出力を行い、版胴1回転分の印刷物上の絵柄を検出する。例えば、版胴の円周長が1mであれば版胴1回転でスタートパルスは1000パルスつまり1mm回転する毎に1パルス出力する。該パルスの発生については、版胴の円周長、判定レベル、CCDセンサの台数、およびCCDセンサの画素数などによって、適宜設定することができる。
【0037】画像検出部60は、カラーフィルタ20とレンズ61を介して印刷物上の絵柄をCCDセンサ62の上に結像後、光電変換し画像信号として取り出し、ビデオアンプ64で種々の信号処理を行ってデータとして検査処理部70へ送信される。送信されたデータは、検査処理部70の映像メモリ77および検出値メモリ71に記憶される。該メモリは、数から数百メガバイトの公知のメモリが適用できる。また、ここではCCDセンサ62として、白黒ラインセンサを使用した例を説明しているが、カラーCCDセンサ、CCD素子が複数列のエリアセンサでも良いし、フォトダイオードを幅方向に複数並べたマルチヘッド型でも良い。
【0038】次に基準値メモリ73について説明する。オペレータが良品と判断した印刷物上の絵柄を基準画像データとして、リアルタイムで欠陥検査しながら熱転写媒体10の製造を開始する前に、予め設定を行う。まず、良品と判断した印刷物の絵柄を、上記CCD駆動回路63に従いながら、CCDセンサ62から画像信号として取り込んで、基準値として基準値メモリ73へ記憶する。または、基準値レベル設定部72から、前記良品印刷物から得た画像信号、従来の経験値および理論値から直接設定することもできる。さらには、検査および製造中に、オペレータにより図示していない基準値入力スイッチを押し基準値メモリ73に記憶した画像データを更新することもできる。
【0039】印刷物が良品か不良品か判定するために、基準値メモリ73に記憶された基準値と、検出値メモリ71に記憶された検査画像の検出値とを、比較部74にて減算する。この結果が良品として許容できるレベルかどうかを判定するために、基準値に対応した判定レベルを、サイズ設定周期設定部75から設定する。つまり、基準画像と比較して良品として許容できる上限および下限の判定値を設定する。また、上限および下限のそれぞれに、複数の中間限度の判定値を判定レベルとして設定することもできる。
【0040】比較部74および判定部76はCPUおよびメモリからなる。該判定部76は、前記減算結果とサイズ設定周期設定部75に設定されている判定値とを比較して、減算結果が上限判定値より大きい場合は不良品と判定し、小さい場合には、さらに下限判定値と比較して、下限より小さい場合は不良品と判定し、大きい場合は良品と判定する。つまり前記減算結果がその上限、下限の範囲内にあれば良品、無ければ不良品と判定する。
【0041】この減算方法は、画像を分割した画素毎の比較でも良いし、また長方形、正方形、同一直線等の所定の範囲内にある画素の総和を比較しても良いし、また同じ絵柄が隣に配列されていればその絵柄の同一箇所との比較でもよい。また、判定値は、画素毎に設けてもよいし、画像全体をいくつかに分割し分割画像毎に良否判定してもよし、画像全体で良否判定してもよい。もちろん減算結果の絶対値をとり上限、下限ではなく一律に1つの判定レベルで行ってもよい。
【0042】以上のように、検査処理部70で判定された結果は、出力部80から出力される。出力部80は、判定表示部81と、警報部82と、印字部83と、画像表示部84とからなっており、機器的には所謂パソコン周辺部品から適宜選択すれば良い。判定表示部81は判定結果を一覧表形式に画面へ表示し、警報部82は不良の発生状況に応じて警報を発し、印字部83は判定結果をプリントアウトする。
【0043】画像表示部84は欠陥が検出された場合に欠陥を画像として表示し、丸形、長方形、歪形などから欠陥の状態を知ることで適切な処置を図れる。警報は、大ヤレは1回検出したら、小ヤレは連続3回発生したらなどと設定することができる。該処置の矯正方法としては、手作業でも、機械による方法でも良い。
【0044】
【実施例】基体シート11として厚さ6μmのポリエステルフイルム(東レ製ルミラー)を用い、その一方の面に、まず、下記の組成(「部」は重量部、以下同じ)のプライマーインキをグラビアコート法により、0.15g/m2(乾燥時)の塗布量になるように塗布し乾燥してプライマー層とする。
プライマー層用インキの組成:・スルホン化ポリアニリン(三菱レイヨン(株)製) 0.25部・ポリエステル樹脂 (バイロン220、東洋紡績(株)製、固形分40%) 4.75部・水 44.8部・イソプロピルアルコール 50.0部
【0045】この該プライマー層に、下記の組成の耐熱滑性層インキを、やはりグラビアコート法により0.4g/m2(乾燥時)の塗布量になるように塗布し乾燥して、耐熱滑性層とし、上記のプライマ層と合わせて耐熱保護層13となる。
耐熱滑性層インキの組成:・ポリアミドイミド樹脂 (HRー15ET、東洋紡績(株)製、固形分25%) 27.0部・ポリアミドイミドシリコーン樹脂 (HRー14ET、東洋紡績(株)製、固形分25%) 27.0部・ジンクステアリルホスフェート(LBT1830、堺化学(株)製)3.0部・タルク(ミクロエースP−3:日本タルク(株)製) 2.0部・ポリエステル樹脂 (バイロン220、東洋紡績(株)製、固形分40%) 0.6部・トルエン 20.2部・エチルアルコール 20.2部
【0046】次に、下記の配合の着色熱転写層12用の熱昇華性インキをペイントシェイカーを用い、6時間混練して調製し、基体フイルム11の他方の面に、図2の欠陥検査装置を装備したグラビア印刷機を用いて、後述する条件でグラビア印刷する。乾燥時の塗布量が0.8g/m2なるように塗布し乾燥して、着色熱転写層とする。
熱昇華性インキ組成:・M染料(C.I.DisperseRed60) 4.5部・アセトアセタール樹脂(積水化学工業(株)製 KS−5) 3.5部・ポリエチレンパウダー(ASTORWAX Co.製MF8F)0.1部・トルエン 45部・メチルエチルケトン 45部
【0047】図2の欠陥検査装置を装備したグラビア印刷機で、欠陥検査をしながら着色熱転写層12を印刷する。予め耐熱保護層13を設けた基体シート11は、シート幅が940mm、M色の着色熱転写層12の印刷幅が910mm、最終的に製品となる有効幅が890mmとし、印刷は毎分150mのスピードで製造する。該M色の絵柄は、印刷幅および長尺方向に連続した全面ベタ塗布である。
【0048】欠陥検査装置は、光源51として白色蛍光灯を用い、G(緑)フィルタ20Gとレンズを介して、1024素子からなるCCDラインセンサ62を有する画像検出部(CCDカメラ)は6台を印刷物の幅方向に直列に配した。ついで、検査処理部70の設定を行う。基準レベルは、良品と判断した印刷物の絵柄をCCDで読んだ値を0Vとし、上限(ピンホール欠陥を検出する)を+1V、下限(色ムラ欠陥を検出する)を−1Vとし、基準レベル設定部72で設定した。判定レベルは、隣接して連続した画素数で設定し、4画素数以上を大ヤレ、2および3画素数を小ヤレ、1画素数以下を良品とし、また、流れ方向の検出周期は、版胴円周長1mで10000回とし、サイズ設定周期設定部75で設定した。
【0049】但し、印画物に影響の大きいピンホール欠陥を主にし、インキダマによる色ムラ欠陥は参考表示とし、発生した場合には画像表示部で程度を確認して決定することにした。ここで、大ヤレとは製品に混入させてはいけない限度外の不良品で、小ヤレとは不良ではあるが、容認される範囲の所謂限度内の程度のものである。ただし、該小ヤレでも、さらに拡大して大ヤレとなる危険をはらんでおり、小ヤレを検出して監視、および原因の調査を行い、また、該調査の結果によっては、原因を取り除く処置を行う。
【0050】以上にように、設定を行い製造を開始した。進行に従って、「表1」のように欠陥が検出されるたびに、検査結果が出力部80の判定表示部81へ順次表示される。CCDカメラ4号機が監視している箇所で、474m進行した時点からピンホールと思われる大ヤレが連続的に検出され、警報部82からブザーがなった。画像表示部84で画像を表示させ、かつ、印字部83からプリントアウトした印画物から明らかにピンホール欠陥であった。原因は、圧胴42に異物が付着しており、これを取り除くことで矯正されて、1197mの時点ところで、検出されなくなった。この欠陥部分は、該検出データを基に検査工程で確実に除去した。
【表1】


【0051】
【発明の効果】本発明の欠陥検査装置へよれば、印刷物の色調の補色にあたるカラーフィルタを介してCCDセンサで画像を検出することで、画像のデータを抽出、増幅および比較をすることが容易となって、着色熱転写層の欠陥部分を確実に検出することができる。該欠陥のうち、印画物へ悪影響の大きいピンホール欠陥を、熱転写媒体から製品化したインクリボンへ混入させることが、極めて少なくできる。
【0052】また、本発明の欠陥検査装置を装備した熱転写媒体の製造装置を用いて、製造した熱転写媒体は、リアルタイムで欠陥を検出しながら、加工をしているので、欠陥の発生と同時に除去などの処置を行うことで、不良品が少なく、生産効率が向上し、資源の節約にもなる。さらに、万が一、発生してしまった欠陥も、該欠陥データによって欠陥箇所と欠陥の種類が判り、検査工程で確実に除去できる。
【0053】欠陥を人手によらない検査方法として、光学的な機械で行うことが試みられているが、補色にあたるカラーフィルタを介してCCDセンサで画像を検出す本発明によって、欠陥を確実に検出する実用レベルに達した。本発明の欠陥検査装置を装備した製造装置で製造した熱転写媒体を用いれば、画像品質に優れた印画物が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の製造装置で製造する熱転写媒体の1例を示す断面図である。
【図2】 本発明の1実施例を示す欠陥検査装置を設けた製造装置の構成図である。
【図3】 カラーフィルタがない場合の透過光の波長を説明する説明図である。
【図4】 カラーフィルタがある場合の透過光の波長を説明する説明図である。
【図5】 本発明の欠陥検査装置の機能要素のブロック図である。
【符号の説明】
11 基体シート
12 熱転写性インキ層
13 耐熱保護層
20 カラーフィルタ
31 給紙部
32 ガイドローラ
33 ドライヤ
34 タッチローラ
37 排紙部
41 版胴
42 圧胴
43 インキパン
44 ドクタ刃
51 光源
52 調光回路
53 電源
55 ロータリエンコーダ
60 画像検出部
61 レンズ
62 CCDセンサ
63 CCD駆動回路
64 ビデオアンプ
70 検査処理部
71 検出値メモリ
72 基準レベル設定部
73 基準値メモリ
74 比較部
75 サイズ設定周期設定部
76 判定部
77 映像メモリ
80 出力部
81 判定表示部
82 警報部
83 印字部
84 画像表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】 基体シートの片面に着色熱転写層を設けた熱転写媒体を、光源で照明し、該着色熱転写層の透過光をCCDカメラで検出し、該着色熱転写層の欠陥を検査する欠陥検査装置において、基体シートへ塗布された着色熱転写層の色相と、該色相の補色であるカラーフィルタを介してCCDカメラで透過光を検出する画像検出部と、該検出値と予め設定した基準値とを比較をして、予め設定した判定値および判定周期で判定する判定部と、前記画像を記録する映像メモリとからなる検査処理部と、該判定結果から着色熱転写層の欠陥の有無と位置情報を表示または出力し、欠陥の発生警報を発する出力部とを具備することを特徴とする熱転写媒体の欠陥検査装置。
【請求項2】 請求項1記載の熱転写媒体の欠陥検査装置を設けた熱転写媒体の製造装置において、欠陥の有無を製造時にリアルタイムで警告し、該警告を基に矯正しながら製造することを特徴とする熱転写媒体の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2002−283686(P2002−283686A)
【公開日】平成14年10月3日(2002.10.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−83284(P2001−83284)
【出願日】平成13年3月22日(2001.3.22)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】