熱転写装置及び熱転写方法
【課題】転写後の金属体に転写シートが密着した状態の中間製品を効率よく製造できる熱転写装置及び熱転写方法を提供する。
【解決手段】加飾対象である金属体11に転写シート12を供給するよう、ロール状の転写シート12を保持するシート繰出部と、転写シート12の端部12Aを把持して転写シート12を引き出すシート引出部6とを備え、金属体11と転写シート12とを共に重ねた状態で載置可能な載置部3と、載置部3におかれた金属体11に転写シート12を押し付けて金属体11に模様を転写する転写加圧部4と、転写が終了した後にシート引出部6によって載置部3から金属体11との密着状態を維持したまま引き出された転写シート12を切断するシート切断部5とを備えた。
【解決手段】加飾対象である金属体11に転写シート12を供給するよう、ロール状の転写シート12を保持するシート繰出部と、転写シート12の端部12Aを把持して転写シート12を引き出すシート引出部6とを備え、金属体11と転写シート12とを共に重ねた状態で載置可能な載置部3と、載置部3におかれた金属体11に転写シート12を押し付けて金属体11に模様を転写する転写加圧部4と、転写が終了した後にシート引出部6によって載置部3から金属体11との密着状態を維持したまま引き出された転写シート12を切断するシート切断部5とを備えた。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属体の表面に転写シートを用いて絵付けする熱転写装置及び熱転写方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属体の表面に図柄や文字等からなる絵柄を転写して絵付け製品を製造する熱転写装置として、ロール式熱転写装置やホットスタンプ式熱転写装置がある。特許文献1に示されるロール式熱転写装置は、シート面に転写層を有する転写シートを、回転かつ加熱されている転写ロールの下方に通した状態で、金属体を転写ロール及び転写シートの直下に配置し、転写ロールによって転写シートを金属体に押し付け、その際の圧力と熱とによって転写シートの転写層を金属体に転写する。ホットスタンプ式熱転写装置は、転写ロールに代えて平板状の版を用いてロール式熱転写装置とほぼ同様の動作で熱転写を行うものである。
【0003】
これらの熱転写方法において、ロール状の転写シートを用いる場合には、転写後の金属体には転写シートのうち転写層のみが接着し基体シートは剥離される。一方、シート状の転写シートを用いる場合には、転写前に金属体と転写シートとを順に装入し、転写後に転写シートがそのまま密着した状態の金属体を取り出す必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−104350号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
転写後の金属体には、転写シートのうち転写層が接着して基体シートは剥離されたものと、転写シートがそのまま密着したものとが存在する。ここで、仮に、転写後の金属体をさらに成形加工する場合には、金属体に転写シートがそのまま密着した状態で成形する方が好ましい。なぜなら、金属体に転写シートが密着した状態であると、表面の転写層が基体シートに保護された状態で金属体を成形することができ、表面の転写層へのゴミの付着や成形時における転写層の剥離等の不具合を防止できるからである。しかし、上述の熱転写方法では、転写前の転写シートの取出し、金属体と転写シートとの位置合わせ、転写後の転写シート付き金属体の取り出し等において手間取る可能性があり、転写シート付きの金属体を効率よく製造できない。
【0006】
本発明は、転写後の金属体に転写シートが密着した状態の中間製品を効率よく製造できる熱転写装置及び熱転写方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の熱転写装置の第1特徴構成は、加飾対象である金属体に転写シートを供給するよう、ロール状の前記転写シートを保持するシート繰出部と、前記転写シートの端部を把持して前記転写シートを引き出すシート引出部とを備え、
前記金属体と前記転写シートとを共に重ねた状態で載置可能な載置部と、
前記載置部におかれた前記金属体に前記転写シートを押し付けて前記金属体に模様を転写する転写加圧部と、
前記転写が終了した後に前記シート引出部によって前記載置部から前記金属体との密着状態を維持したまま引き出された前記転写シートを切断するシート切断部とを備えた点にある。
【0008】
従来、転写後の転写シートが密着したままの金属体を搬送するには、金属体を保持して搬送していた。本構成では、転写後の金属体に密着した状態の転写シートがシート引出部によって載置部から引き出され、その後に転写シートがシート切断部によって切断される。シート引出部によって転写シートを引き出した場合、転写シートには金属体の転写面に沿う方向に張力が働き易くなるので、金属体から転写シートの基体シートが剥離し難い。また、シート引出部によって載置部から金属体が密着した転写シートを引き出すことで、同時に載置部に新たな転写シートを供給することができる。
このように、転写シートの金属体への供給及び、転写後の転写シート付きの金属体の取り出しがスムーズに行えるため、転写シート付きの金属体を効率よく製造することができる。
【0009】
本発明の熱転写装置の第2特徴構成は、前記転写シートを引き出す際のシート高さが前記載置部の載置面よりも上方に離間しており、このシート位置をシート基準高さとして前記載置部の載置面の高さと前記シート基準高さとの間で突出引退可能であり、前記金属体の載置状態を、前記載置面に前記金属体を当接させた当接載置状態と、前記載置面から前記転写シートが前記シート基準高さの位置となるまで前記金属体を離間させた離間載置状態とに変更可能であって、前記転写シートの押圧作業が終了した前記金属体および前記転写シートを引き出す際に、前記離間載置状態に設定される載置状態切替機構と、
前記金属体および前記転写シートを前記載置部から引き出す際に、前記金属体の高さを維持しつつ前記金属体を受け取り可能となるよう前記載置部に隣接配置された待機部とを備えた点にある。
【0010】
この構成により、載置状態切替機構が、転写後の転写シート付きの金属体を引き出す際に、載置面から突出して転写シート付きの金属体を持ち上げて、金属体を載置面から転写シートがシート基準高さの位置となるまで離間させた離間載置状態にする。これにより、転写シートは引き出される方向において直線状態で支持されて転写シートの引き出しが円滑となるので、金属体に密着した転写シートは剥がれ難い。
また、金属体及び転写シートを載置部から引き出す際に、載置部に隣接された待機部が、金属体の高さを維持しつつ金属体を受け取り可能であるので、転写シート付きの金属体は転写シートがシート基準高さを維持したままの状態で支持搬送される。このため、金属体および転写シートを載置部から引き出す際に、金属体の自重による転写シートの剥離を防止でき、転写シートが密着した金属体を安定的に製造できる。
【0011】
本発明の熱転写装置の第3特徴構成は、前記シート切断部に前記金属体及び前記転写シートを前記転写シートの引き出し方向において位置決めするよう、前記待機部の下流側に隣接配置した排出部を備えた点にある。
【0012】
本構成は転写シートの切断を最も効率的に行おうとするものである。仮に、載置部から引き出された転写シートを載置部に隣接配置された待機部に引き出された直後に切断することは可能である。しかしながら、この場合、転写加圧部の位置にシート切断部及びシート引出部が近接するため、これを避けるために転写シートの引き出し長さが余分に必要となり歩止まりが悪くなる。
そこで、本構成の如く、載置部に隣接する待機部を設けると共に、その下流側のシート切断部に金属体及び転写シートを転写シートの引き出し方向において位置決めするよう、待機部の下流側に隣接配置した排出部を備えた。これにより、転写加圧部とシート切断部を引き離すことができ、待機部に転写シート付きの金属体を待機させることで、金属体における転写シートのマージンを短くすることができる。また、仮に金属体のサイズが変更されたとしても、待機部の長さを可変することで、金属体における転写シートのマージンを短くすることができる。その結果、転写シートを有効に利用することができる。
【0013】
本発明の熱転写装置の第4特徴構成は、前記排出部が個別に昇降可能な複数の搬送ローラを有し、
前記シート引出部が前記排出部の上方を往復移動可能であって、前記シート引出部が前記排出部の上方を通過する際に前記複数の搬送ローラが前記シート引出部と干渉しない下降位置に維持されるよう構成された点にある。
【0014】
本構成の如く、排出部に個別に昇降可能な複数の搬送ローラを備え、シート引出部が前記排出部の上方を往復移動可能であると、排出部の上下の領域においてシート引出部と搬送ローラとを重畳して配置でき、熱転写装置の設置スペースを小さくすることができる。
シート引出部はシート高さをシート基準高さに維持しつつ転写シートを引き出す必要があり、搬送ローラは転写シート付きの金属体を転写シートの位置がシート基準高さになるよう支持する必要がある。そこで、本構成では、シート引出部が排出部の上方を通過する際に複数の搬送ローラがシート引出部と干渉しない下降位置に維持されるよう構成されている。このため、シート引出部が上方を通過した後に搬送ローラを上昇させることで、排出部において、シート引出部がシート基準高さに維持しつつ転写シートを引き出すことができ、さらに、搬送ローラが転写シートの位置をシート基準高さになるよう転写シート付きの金属体を支持することができる。
【0015】
本発明の熱転写装置の第5特徴構成は、前記載置部の前記転写シートの送り方向の下流側に前記転写シートに向けて突出引退するシート支持部を備え、前記待機部が昇降可能であり、
前記シート引出部により前記転写シートを引き出す際に、前記シート支持部が前記転写シートから引退するとともに前記待機部が上昇位置に保持され、
前記シート引出部による前記転写シートの引き出しが終了したときに、前記シート支持部が前記転写シートに対して突出し、
前記転写加圧部が前記転写シートに近接する際に、前記シート支持部が前記転写シートから引退するとともに前記待機部が下降位置に保持されるよう構成された点にある。
【0016】
この構成により、シート引出部により転写シートを引き出す際に、シート支持部が転写シートから引退するので、転写シート付きの金属体の送りがスムーズになる。また、待機部が上昇位置に保持されることで、転写シートの位置がシート基準高さになるよう転写シート付きの金属体を維持することができるので、転写シート付きの金属体をスムーズに搬送できる。
【0017】
転写シートの引き出しが終了したときは、載置部には金属体が未だ載置されていないため、転写シートが誤って載置部に接触してしまう可能性がある。このとき、例えば載置部がホットプレートで構成された場合には、転写シートが載置部に接触することで転写層が溶解する等の不具合が起こる。本構成では、転写シートの引き出しが終了したときに、シート支持部が転写シートに対して突出するため、転写シートが載置部に接触することを確実に防止することができる。
【0018】
転写加圧部が転写シートに近接する際には、シート支持部が転写シートから引退するとともに待機部が下降位置に姿勢変化するため、金属体の下流側の転写シートの下方への撓みが許容される。このため、転写シートが自重により下方に撓む場合には、待機部に位置する転写シートに対する転写加圧部の熱の影響を抑制できる。すなわち、待機部に位置する転写シートの加熱による送り方向の長さ変化を抑えて、転写シートの送り方向の位置精度の低下を抑制することができる。
【0019】
本発明の熱転写装置の第6特徴構成は、前記シート切断部に前記金属体及び前記転写シートを前記転写シートの引き出し方向において位置決めするよう、前記待機部の下流側に隣接配置した排出部を備え、
前記シート引出部が上下の挟持部を有する移動クランプで構成され、
前記排出部に固定され上下の挟持部を有する固定クランプを前記移動クランプに対して前記転写シートの送り方向の上流側に備え、
前記固定クランプの下側挟持部の前記移動クランプに対向する面に凹状受け部を前記転写シートの幅方向に複数形成し、
前記移動クランプの下側挟持部の前記固定クランプに対向する面に前記凹状受け部に嵌合する凸状爪部を前記転写シートの幅方向に複数形成した点にある。
【0020】
転写シートはシート切断部によって切断され、端部が固定クランプの下流側にはみ出る。この転写シートの端部は自重により垂れ下がり、例えばカール状になる場合がある。そうなると、転写シートの端部が移動クランプに適正に挿入されなくなり、移動クランプによる転写シートの端部の把持状態に支障をきたすことにもなる。
【0021】
そこで、本構成では、固定クランプの下側挟持部の移動クランプに対向する面に凹状受け部を形成し、移動クランプの下側挟持部の固定クランプに対向する面に凹状受け部に嵌合する凸状爪部を形成する。凹状受け部と凸状爪部とを形成することで、移動クランプが固定クランプに向けて復帰移動して凹状受け部に凸状爪部が嵌合する際に、転写シートの端部は凸状爪部の傾斜面に案内されて移動クランプの上下の挟持部の間に挿入される。このため、固定クランプの下流側にはみ出た転写シートの端部が垂れ下がった状態でも、移動クランプの上下の挟持部によって転写シートの端部が確実に把持することができる。
【0022】
本発明の熱転写装置の第7特徴構成は、前記待機部の前記転写シートの送り方向に直角な幅方向に複数の搬送列部を備え、前記待機部の前記送り方向の長さを変更できるよう前記複数の搬送列部のうち少なくとも一組の隣接する搬送列部を前記送り方向に沿って相対移動可能に構成した点にある。
【0023】
本構成のように、搬送列部を複数設け、そのうち少なくとも一組の隣接する搬送列部を送り方向に沿って相対移動可能に構成したので、隣接する一組の搬送列部を相対移動させることで、搬送列部の両者の重複領域が変更されて、待機部の送り方向の長さを変更調節することができる。
すなわち、加飾対象の金属体のサイズに合わせて待機部の送り方向の長さを簡易に変更することができ、結果的に、待機部とシート切断部との距離を調節することができるため、金属体から張出す転写シートのマージンを短くすることができる。これにより、転写シートの歩止まりを高めることができる。
【0024】
本発明の熱転写方法の特徴手段は、ロール状の転写シートを保持するシート繰出部から前記転写シートの端部を把持して前記転写シートを引き出す工程と、
前記シート繰出部から引き出された前記転写シートに重ねた状態で加飾対象である金属体を載置部に配置する工程と、
前記載置部におかれた前記金属体に前記転写シートを押し付けて前記金属体に模様を転写する転写する工程と、
前記転写が終了した後に前記載置部から前記金属体との密着状態を維持したまま前記転写シートを引き出す工程と、
前記金属体との密着状態を維持したまま引き出された前記転写シートを切断する工程と、を備えた点にある。
【0025】
本構成により、転写後の金属体に密着したままの転写シートがシート引出部によって載置部から引き出され、その後に転写シートがシート切断部によって切断される。シート引出部によって転写シートを引き出した場合、転写シートには金属体の転写面に沿う方向に張力が働き易くなるので、金属体から転写シートの基体シートが剥離し難い。また、シート引出部によって載置部から金属体が密着した転写シートを引き出すことで、同時に載置部に新たな転写シートを供給することができる。
このように、転写シートの金属体への供給及び、転写後の転写シート付きの金属体の取り出しがスムーズに行えるため、転写シート付きの金属体を効率よく製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】熱転写装置の側面図
【図2】熱転写装置の平面図
【図3】金属体載置工程を示す図であって、(a)は金属体の載置前、(b)は金属体の載置後の状態を示す。
【図4】転写工程を示す図であって、(a)は転写前の状態、(b)は転写後の状態を示す。
【図5】シート引き出し工程を示す図であって、(a)は転写シートの引き出し前の状態、(b)は転写シートの引き出し途中の状態を示す。
【図6】待機部の動作を示す図
【図7】シート切断工程を示す図であって、(a)は切断準備段階、(b)はシートが切断される状態を示す。
【図8】取り出し工程を示す図
【図9】固定クランプ及び移動クランプの斜視図
【図10】固定クランプ及び移動クランプの動作を示す図であって,(a)が離間状態、(b)が近接状態を示す。
【図11】待機領域の長さ調節機構を示す図
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
【0028】
本発明の熱転写装置1は、転写シート12によって加飾される金属体11を転写シート12が密着したままの状態で取り出す。熱転写装置1は、図1及び図2に示すように、ロール状の転写シート12を保持するシート繰出部2と、金属体11を載置する載置部3と、転写加圧部(転写ロール)4と、転写シート12を切断するシート切断部5と、転写シート12の端部を把持するシート引出部(移動クランプ)6と、を備える。
【0029】
金属体11の載置部3は転写シート12の送り方向にスライド移動する転写テーブル8に配置されている。転写テーブル8には、載置部3以外に、載置部3の上流側にシート繰出部2が配置され、載置部3の下流側に固定クランプ14、シート切断部5、及び移動クランプ6が配置されている。また、載置部3の下流側には待機部9と排出部10とが順に隣接配置されている。転写後の転写シート12付きの金属体11は載置部3から待機部9に移される。待機部9の転写シート12付きの金属体11は、排出部10に移されてシート切断部5で転写シート12が切断された後、外部に排出される。
【0030】
シート繰出部2には、転写シート12が支軸21にロール巻きされた状態で装填されている。金属体11の載置部3は、図2に示されるように、下部に設けられたレール体31によって転写シート12の送り出し方向に垂直な一側方側にスライド自在に構成されている。シート繰出部2に装填された転写シート12の端部12Aは移動クランプ6に保持される。移動クランプ6が転写シート12を引き出す際のシート高さは載置部3において金属体11が載置される載置面32よりも上方に離間しており、このときの転写シート12の位置をシート基準高さHと定義する。
【0031】
載置面32には、載置面32の高さとシート基準高さHとの間で突出引退可能な複数のピン部材33が備えられている。載置面32は、その内部に埋設されたヒータ(不図示)によって加熱されるホットプレートである。載置面32とピン部材33とは金属体11の載置状態切替機構として機能し、載置面32からピン部材33を引退させて載置面32に金属体11を当接させる当接載置状態と、ピン部材33を突出させて載置面32から転写シート12がシート基準高さHの位置となるまで金属体11を離間させる離間載置状態とに切替可能である。
【0032】
載置状態切替機構は、金属体11に対する転写シート12の押圧作業が終了し、金属体11及び転写シート12を載置部3から引き出す際に、離間載置状態に設定される。これにより、転写シート12は引き出される方向において直線状態で支持されて転写シート12の引き出しが円滑となるので、金属体11に密着した転写シート12は剥がれ難い。
なお、金属体11に接するピン部材33の先端部には平滑加工がなされている。また、載置面32にはピン部材33とは別に吸引孔34が複数設けられており、転写ロール4による熱転写がなされる際は、載置面32に載置された金属体11が吸引保持される。
【0033】
熱転写装置1には、転写シート12の送り方向センサ(不図示)と、転写シート12の幅方向センサ(不図示)とが備えられている。送り方向センサはシート繰出部2又は載置部3に設けられ、幅方向センサは載置部3に設けられる。
送り方向センサは、転写する図柄に合わせて一定の間隔で転写シート12に形成された点状の送り方向マークを検出するセンサである。送り方向センサがこの送り方向マークを検出することで、移動クランプ(シート引出部)6による転写シート12の引き出し動作が停止する。幅方向センサは、転写シート12の側部において長手方向に形成された線状の幅方向マークを検出するセンサである。例えば載置部3の上手側に設置された幅方向センサと載置部3の下手側に設置された幅方向センサの2つのセンサにより幅方向マークを検出することで、転写シート12の送り方向に対する傾きが調整される。
【0034】
転写加圧部である転写ロール4は図示しない加熱装置によって加熱されており、エアーシリンダー41によって昇降可能である。下降した転写ロール4に対して、転写テーブル8の移動により金属体11及び転写シート12が転写シート12の送り方向に前進する。その結果、転写ロール4は前進する転写シート12に回転接触しながら載置部3に載置された金属体11に転写シート12を押し付ける。
【0035】
載置部3に隣接配置された待機部9は、載置部3から引き出される金属体11及び転写シート12を受け取る。載置部3から金属体11及び転写シート12が引き出される際に、待機部9は金属体11の高さを維持しつつ金属体11を支持して受け取り可能な位置に保持される。待機部9には、金属体11を支持搬送する複数の搬送ローラ15が設けられている。複数の搬送ローラ15は一体的に昇降可能に構成されており、載置部3から金属体11及び転写シート12が引き出される際には、搬送ローラ15が上昇位置に保持される。
【0036】
待機部9の下流側には、転写シート12の引き出し方向においてシート切断部5に金属体11及び転写シート12を位置決めするよう、排出部10が隣接配置されている。排出部10には、金属体11を支持搬送する複数の搬送ローラ16が設けられている。複数の搬送ローラ16は個別に昇降可能に構成されており、載置部3から金属体11及び転写シート12が引き出される際には、複数の搬送ローラ16が順次上昇し、その上昇位置に保持される。排出部10を備えることで、転写ロール4とシート切断部5を引き離すことができ、待機部9に転写シート12付きの金属体11を待機させることにより、金属体11における転写シート12のマージンを短くすることができる。
【0037】
図3(a)に示すように、載置部3と待機部9との間には、転写シート12に対して突出引退するシート支持部13が備えられている。待機部9と排出部10との間に固定クランプ14が配置され、固定クランプ14の下流側にシート切断部5が隣接配置されている。固定クランプ14は上下の挟持部14A,14Bを有しており、上下の挟持部14A,14Bで転写シート12を把持する。移動クランプ6は、固定クランプ14の下流側であって排出部10の上方を往復移動する。移動クランプ6は上下の挟持部6A,6Bを有しており、この上下の挟持部6A,6Bで転写シート12の端部12Aを把持する。シート切断部5は、固定クランプ14と移動クランプ6との間に保持された転写シート12を幅方向に切断する。なお、シート切断部5には、シート切断用のロータリーカッター等が備えられている。
【0038】
[転写シート]
転写シート12は、基体シート12bと基体シート12b上に形成された転写層12aとを備えている。基体シート12bは、転写層12aを支持するシート体である。基体シート12bは、公知の転写シートの基体シートを使用することができる。基体シート12bの構成材料としては、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、オレフィン系樹脂、ウレタン系樹脂及びアクリロニトリルブタジエンスチレン系樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の合成樹脂が好ましく挙げられる。基体シート12bは、上記の合成樹脂から形成された単層シート、単層シートを2以上積層した積層シート、上記の合成樹脂を用いた共重合シート等が挙げられる。特に、この発明の各実施形態において用いられる転写シート12には、寸法安定性のよい、印刷乾燥により変形しにくいポリエチレンテレフタレート樹脂等の基体シートを容易に選択することができる。
【0039】
転写層12aは、例えば、文字や絵柄を表現する図柄層、被加飾体と転写層との接着性を向上させる接着層を備えている。金属体11の表面の強度を確保し耐擦傷性を向上させるハードコート層や層間密着性を向上させるアンカー層を備えたり、複数の図柄層等同種の層を複数備えたりしてもよい。基体シート12bと転写層12aとの間に基体シート12bからの転写層12aの剥離性を向上させる離型層を備えてもよい。図柄層等は、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法等の印刷法、グラビアコート法、ロールコート法、コンマコート法等のコート法により基体シート12b上に形成される。
【0040】
[金属体]
金属体11は、例えば、金属プレス板等である。金属体11の表面には、何ら前処理はなされないか、または以下の処理がなされる。例えば、金属体11の表面に、アルマイト処理(金属体11がアルミの場合)、フレーム処理、プラズマ処理等の表面処理、転写層12aが形成され易いように予め接着剤の塗付等の表面処理等がなされたり、転写層12aが接着し易いシートが予め貼り付けられたりする。金属体11の表面処理や表面の被覆材は、金属体11とその表面に転写される転写層12aとの各組合せに応じて適合する材質を選択する必要がある。
【0041】
以下に、熱転写装置1の動作工程を図3〜図11を用いて説明する。
[金属体載置工程]
図3(a)は、シート繰出部2から転写シート12が載置部3に供給された状態であり、後述の転写後のシート引き出し工程によって実現される。この状態から載置部3を転写シート12の下方位置から側方位置に引き出し、載置面32に金属体11を載置する。その後、金属体11が載置された載置部3を転写シート12の下方位置に戻すことで、図3(b)に示されるように、金属体11が転写シート12に重ねた状態となる。このとき、転写シート12の端部は固定クランプ14の上下の挟持部14A,14Bによって把持されており、移動クランプ6は開放状態にある。また、シート支持部13は転写シート12から引退し、待機部9の搬送ローラ15は下降位置に保持されている。
【0042】
[転写工程]
次に、図4(a)に示すように、上昇位置の転写ロール4を下降させる。その後、転写テーブル8を転写シート12の送り方向(図4(a)の右方向)に移動させる。これにより、転写ロール4が転写シート12を介して金属体11の上を転動し、そのときの転写ロール4の熱と圧力とによって転写シート12の絵柄(転写層12a)が金属体11の表面に転写される。転写ロール4を下降させる際に、シート支持部13は転写シート12から引退し、待機部9の搬送ローラ15は下降位置に保持されている。これにより、金属体11の下流側の転写シート12の下方への撓みを許容し、待機部9に位置する転写シート12への転写ロール4の熱の影響を抑制する。図4(b)に示すように、転写ロール4が金属体11の上流側端部の位置まで移動すると転写が終了する。
【0043】
[シート引き出し工程]
次に、図5(a)に示されるように、転写ロール4が上昇し、載置部3のピン部材33が突出して金属体11の載置状態を離間載置状態にし、待機部9の搬送ローラ15を上昇位置に保持する。このとき、シート支持部13は引退している。固定クランプ14の上下の挟持部14A,14Bが開いて転写シート12を開放し、移動クランプ6の上下の挟持部6A,6Bが閉じて転写シート12の端部12Aを把持する。その後、移動クランプ6は排出部10の搬送ローラ16の上方を転写シート12の送り方向に沿って走行する(図5(b))。金属体11は載置部3の載置面32から離間してピン部材33の上を滑り、待機部9の搬送ローラ15及び排出部10の搬送ローラ16によって支持されつつ搬送される。
【0044】
移動クランプ6の走行により、待機部9の転写シート12付きの金属体11は排出部10に移され、載置部3の転写シート12付きの金属体11は待機部9に移されるとともに、載置部3にはシート繰出部2から新たな転写シート12が引き出される。このとき、載置部3の載置面32に複数配置されたピン部材33は金属体11に向けて突出し、待機部9の搬送ローラ15は上昇してその位置に保持される。
【0045】
こうして、載置部3における金属体11の載置状態は離間載置状態に設定され、待機部9の金属体11の高さが載置部3の金属体11の高さに維持された状態で、待機部9が金属体11を受け取ることができる。その結果、転写シート12付きの金属体11は転写シート12がシート基準高さHを維持したままの状態で支持搬送されて、金属体11の自重による転写シート12の剥離を防止できる。シート支持部13は転写シート12から引退しているので、転写シート12付きの金属体11の送りはスムーズになる。また、待機部9が上昇位置に保持されているので、転写シート12の位置がシート基準高さHになるよう転写シート12付きの金属体11を維持することができ、転写シート12付きの金属体11をスムーズに搬送できる。
【0046】
図6(a)〜図6(e)に示されるように、排出部10の個別の搬送ローラ16は、移動クランプ6がその上方を通過する前は移動クランプ6と干渉しない下降位置に保持されており、移動クランプ6がその上方を通過すると順次上昇してその位置に保持される。
【0047】
このため、排出部10の上下の領域において移動クランプ6と搬送ローラ16とを重畳して配置でき、熱転写装置の設置スペースを小さくすることができる。
また、移動クランプ6が上方を通過した後に搬送ローラ16を順次上昇させることで、排出部10において、移動クランプ6が転写シート12をシート基準高さHに維持しつつ引き出すことができ、さらに、搬送ローラ16が転写シート12の位置をシート基準高さHになるよう転写シート12付きの金属体11を支持することができる。
【0048】
なお、移動クランプ6による転写シート12の引き出し動作の際に、転写テーブル8が転写シート12の送り方向とは反対の方向(図5(b)の左方向)に復帰移動する。このため、転写ロール4は載置部3の下流側の位置に戻る。
【0049】
[シート切断工程]
図7(a)に示すように、シート引き出し工程が終了すると、固定クランプ14の上下の挟持部14A,14Bを閉じ、転写シート12を固定クランプ14及び移動クランプ6で把持する。その後、図7(b)に示すように、シート切断部5によって排出部10に位置する金属体11の上流側端部からはみ出した部分の転写シート12を幅方向に切断する。こうして、転写シート12の連続体から金属体11に密着した状態の転写シート12が切り離される。
【0050】
なお、転写シート12の引き出しが終了したときは、載置部3には金属体11が未だ載置されていないため、転写シート12が誤って載置部3に接触してしまう可能性がある。このとき、例えば載置部3がホットプレートで構成された場合には、転写シート12が載置部3に接触することで転写層12aが溶解する等の不具合が起こる。そこで、本実施形態では、転写シート12の引き出しが終了したときに、シート支持部13を転写シート12に対して突出させ、転写シート12が載置部3の載置面32に接触することを確実に防止している。
【0051】
[取り出し工程]
次に、図8に示されるように、移動クランプ6の上下の挟持部6A,6Bを開いて、排出部10において切り離された転写シート12付きの金属体11を取り出す。その後、搬送ローラ16を全て下降させてから、移動クランプ6を転写シート12の送り方向とは反対の方向に走行させて固定クランプ14の近傍位置(転写シート12の端部12Aの位置)まで戻し、載置面32のピン部材33を引退させ(図3(a))、新たな金属体11を載置部3に載置する(図3(b))。以後、上記工程を繰り返すことで、転写シート12が密着したままの金属体11を連続的に製造することができる。
【0052】
こうして、転写後の金属体11に密着した状態の転写シート12が移動クランプ6によって載置部3から引き出され、その後に転写シート12がシート切断部5によって切断される。移動クランプ6によって転写シート12を引き出した場合、転写シート12には金属体11の転写面に沿う方向に張力が働き易くなるので、金属体11から転写シート12の基体シート12bが剥離し難い。また、移動クランプ6によって載置部3から金属体11が密着した転写シート12を引き出すことで、同時に載置部3に新たな転写シート12を供給することができる。
このように、転写シート12の金属体11への供給及び、転写後の転写シート12付きの金属体11の取り出しがスムーズに行えるため、転写シート12付きの金属体11を効率よく製造することができる。
【0053】
転写シート12はシート切断部5によって切断され、端部12Aが固定クランプ14の下流側にはみ出る。この転写シート12の端部12Aは自重により垂れ下がり、例えばカール状になる場合がある。そうなると、転写シート12の端部12Aが移動クランプ6の上下の挟持部6A,6Bの間に適正に挿入されなくなり、移動クランプ6による転写シート12の端部12Aの把持状態に支障をきたすことにもなる。
【0054】
そこで、本実施形態では、図9に示すように、固定クランプ14の下側挟持部14Bの移動クランプ6に対向する面に凹状受け部17を形成し、移動クランプ6の下側挟持部6Aの固定クランプ14に対向する面に凹状受け部17に嵌合する凸状爪部18を形成する。凹状受け部17及び凸状爪部18はともに、転写シート12の幅方向に複数形成されている。また、凸状爪部18は、転写シート12を案内する側(上方側)に転写シート12から離間する方向(下方)に傾斜する傾斜面18Aを有している。
【0055】
図10(a)に示すように固定クランプ14は移動クランプ6が離間した状態から、図10(b)のように、移動クランプ6が固定クランプ14に向けて復帰移動する。固定クランプ14に移動クランプ6が近接すると、凹状受け部17に凸状爪部18が嵌合し、その際に転写シート12の端部12Aは凸状爪部18の傾斜面18Aに案内されて移動クランプ6の上下の挟持部6A,6Bの間に挿入される。このため、固定クランプ14の下流側にはみ出た転写シート12の端部12Aが垂れ下がった状態でも、移動クランプ6の上下の挟持部6A,6Bによって転写シート12の端部12Aを確実に把持することができる。
【0056】
待機部9は転写シート12の送り方向の長さを変更できるよう構成されている。図11(a)に示されるように、待機部9の搬送ローラ15は、転写シート12の送り方向に直角な幅方向に3列の搬送列部15L,15C,15Rを備える。中央の搬送列部15Cは載置部3側に固定されており、両側の搬送列部15L,15Rは中央の搬送列部15Cに対して転写シート12の送り方向に沿って移動可能である。
両側の搬送列部15L,15Rを移動させることで、図11(a)の状態の待機部9の送り長さを拡大させたり、図11(b)にように縮小させたりすることができる。すなわち、中央の搬送列部15Cと両側の搬送列部15L,15Rの重複領域を変更することにより、結果的に待機部9の送り長さを調節することができる。
【0057】
図1に示されるように、シート繰出部2には、転写シート12の基体シート12b側のゴミ取りロール22と、転写層12aの側のゴミ取りロール23とが配置されている。ゴミ取りロール22、23は、いずれも粘着性を有する材料で表面処理されている。ただし、ゴミ取りロール23が転写シート12の転写層12aに接することから、ゴミ取りロール23の粘着性は基体シート12bの側のゴミ取りロール22の粘着性よりも低く設定されている。
【0058】
転写シート12は、シート繰出部2から繰出されて待機部9から排出部10へと送られる際に摩擦力を受けることで静電気が発生することがある。このように、転写シート12に静電気が発生すると、転写シート12にゴミ等が吸い寄せられて付着することにもなる。このため、熱転写装置1には、シート繰出部2や、シート切断部5に除電器(不図示)が設置されている。例えば、シート繰出部2では、転写シート12の転写層12aの側に対して除電器を照射し、シート切断部5では転写シート12の基体シート12bの側に除電器を照射して、転写シート12の両面を除電するとよい。
【0059】
[別実施形態]
(1)上記の実施形態では転写ロール4は昇降するのみであり、転写テーブル8の移動に伴って金属体11が転写シート12の送り方向に移動する例を説明したが、転写テーブル8を移動させずに、転写ロール4が昇降及び転写シート12の送り方向への移動を行うよう構成してもよい。また、転写ロールに代えてホットスタンプ式の熱転写装置であってもよい。
【0060】
(2)上記の実施形態では、排出部10の搬送ローラ16が昇降する構成を示したが、排出部10の搬送ローラ16は昇降せずに所定の高さに保持されたままであってもよい。ただ、この場合には、移動クランプ6が排出部10の上方を走行できないため、排出部10の下流側に移動クランプ6の走行領域を確保する必要があり、装置全体の設置スペースは大きくなる。
【0061】
(3)上記の実施形態では、金属体11の載置部3に待機部9及び排出部10を順に隣接配置する構成を示したが、待機部9を設けずに載置部3に直接排出部10を隣接配置する構成であってもよい。
【0062】
(4)上記の実施形態では、金属体11として平板状のものを用いて説明したが、金属体11は平板状のものに限定されず、多少の盛り上がり部を有する立体的形状のものでもよい。なお、金属体11が立体的形状である場合には、金属体11の転写(加飾)領域の形状に転写加圧部(転写ロール)4の形状を対応させる必要である。
【0063】
(5)上記の実施形態では、待機部9の転写シート12の送り方向の長さを変更可能にするために、待機部9に複数の搬送列部15L,15C,15Rを備える構成を示したが、これに代えて、待機部9の全体が転写シート12の送り方向に伸縮自在となるよう構成してもよい。
【0064】
(6)上記の実施形態では、転写シート12の送り方向と幅方向の位置を合わせるために送り方向センサと幅方向センサとを備える例を示したが、転写シート12の位置合わせは、これらセンサによる方式に限られず、例えばCCDカメラによって転写シート12の位置合わせを行ってもよいし、載置部3に位置合わせ機構を付加してもよい。
【0065】
(7)上記の実施形態では、ローラを用いて転写シート12付きの金属体11を搬送する例を示したが、転写シート12付きの金属体11は、ベルトを用いて搬送してもよいし、単に金属体11を支持する部材上を滑らせるようにして搬送してもよい。
【0066】
(8)載置状態切替機構を構成するピン部材33は、転写シート12の支持部分の径が5mm以下であることが好ましい。ピン部材33の径が5mm以下であると、転写ローラ4による熱転写の際に、ピン部材33の及びピン部材33を収納する孔部による金属体11の変形が起き難い。また、載置状態切替機構は、ピン部材33に代えて、ローラ、ワイヤー、ベルト等で構成してもよい。
【0067】
(9)上記の実施形態では、シート切断部5がロータリーカッターを備える例を示したが、シート切断部5は、ロータリーカッターに限らず、ヒートカッター等、転写シート12が切断できるものであれば、どのようなタイプのカッターでもよい。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は、自動車、家庭用電化製品、携帯電話、パーソナルコンピュータ等、さまざまな分野において、内装品、外装品を問わず、使用される金属製品において、金属体の表面に加飾層が形成する際に広く利用可能である。
【符号の説明】
【0069】
1 熱転写装置
2 シート繰出部
3 載置部
4 転写ロール(転写加圧部)
5 シート切断部
6 移動クランプ(シート引出部)
8 転写テーブル
9 待機部
10 排出部
11 金属体
12 転写シート
13 シート支持部
14 固定クランプ
15 搬送ローラ
16 搬送ローラ
17 凹状受け部
18 凸状爪部
32 載置面(載置状態切替機構)
33 ピン部材(載置状態切替機構)
H シート基準高さ
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属体の表面に転写シートを用いて絵付けする熱転写装置及び熱転写方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属体の表面に図柄や文字等からなる絵柄を転写して絵付け製品を製造する熱転写装置として、ロール式熱転写装置やホットスタンプ式熱転写装置がある。特許文献1に示されるロール式熱転写装置は、シート面に転写層を有する転写シートを、回転かつ加熱されている転写ロールの下方に通した状態で、金属体を転写ロール及び転写シートの直下に配置し、転写ロールによって転写シートを金属体に押し付け、その際の圧力と熱とによって転写シートの転写層を金属体に転写する。ホットスタンプ式熱転写装置は、転写ロールに代えて平板状の版を用いてロール式熱転写装置とほぼ同様の動作で熱転写を行うものである。
【0003】
これらの熱転写方法において、ロール状の転写シートを用いる場合には、転写後の金属体には転写シートのうち転写層のみが接着し基体シートは剥離される。一方、シート状の転写シートを用いる場合には、転写前に金属体と転写シートとを順に装入し、転写後に転写シートがそのまま密着した状態の金属体を取り出す必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−104350号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
転写後の金属体には、転写シートのうち転写層が接着して基体シートは剥離されたものと、転写シートがそのまま密着したものとが存在する。ここで、仮に、転写後の金属体をさらに成形加工する場合には、金属体に転写シートがそのまま密着した状態で成形する方が好ましい。なぜなら、金属体に転写シートが密着した状態であると、表面の転写層が基体シートに保護された状態で金属体を成形することができ、表面の転写層へのゴミの付着や成形時における転写層の剥離等の不具合を防止できるからである。しかし、上述の熱転写方法では、転写前の転写シートの取出し、金属体と転写シートとの位置合わせ、転写後の転写シート付き金属体の取り出し等において手間取る可能性があり、転写シート付きの金属体を効率よく製造できない。
【0006】
本発明は、転写後の金属体に転写シートが密着した状態の中間製品を効率よく製造できる熱転写装置及び熱転写方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の熱転写装置の第1特徴構成は、加飾対象である金属体に転写シートを供給するよう、ロール状の前記転写シートを保持するシート繰出部と、前記転写シートの端部を把持して前記転写シートを引き出すシート引出部とを備え、
前記金属体と前記転写シートとを共に重ねた状態で載置可能な載置部と、
前記載置部におかれた前記金属体に前記転写シートを押し付けて前記金属体に模様を転写する転写加圧部と、
前記転写が終了した後に前記シート引出部によって前記載置部から前記金属体との密着状態を維持したまま引き出された前記転写シートを切断するシート切断部とを備えた点にある。
【0008】
従来、転写後の転写シートが密着したままの金属体を搬送するには、金属体を保持して搬送していた。本構成では、転写後の金属体に密着した状態の転写シートがシート引出部によって載置部から引き出され、その後に転写シートがシート切断部によって切断される。シート引出部によって転写シートを引き出した場合、転写シートには金属体の転写面に沿う方向に張力が働き易くなるので、金属体から転写シートの基体シートが剥離し難い。また、シート引出部によって載置部から金属体が密着した転写シートを引き出すことで、同時に載置部に新たな転写シートを供給することができる。
このように、転写シートの金属体への供給及び、転写後の転写シート付きの金属体の取り出しがスムーズに行えるため、転写シート付きの金属体を効率よく製造することができる。
【0009】
本発明の熱転写装置の第2特徴構成は、前記転写シートを引き出す際のシート高さが前記載置部の載置面よりも上方に離間しており、このシート位置をシート基準高さとして前記載置部の載置面の高さと前記シート基準高さとの間で突出引退可能であり、前記金属体の載置状態を、前記載置面に前記金属体を当接させた当接載置状態と、前記載置面から前記転写シートが前記シート基準高さの位置となるまで前記金属体を離間させた離間載置状態とに変更可能であって、前記転写シートの押圧作業が終了した前記金属体および前記転写シートを引き出す際に、前記離間載置状態に設定される載置状態切替機構と、
前記金属体および前記転写シートを前記載置部から引き出す際に、前記金属体の高さを維持しつつ前記金属体を受け取り可能となるよう前記載置部に隣接配置された待機部とを備えた点にある。
【0010】
この構成により、載置状態切替機構が、転写後の転写シート付きの金属体を引き出す際に、載置面から突出して転写シート付きの金属体を持ち上げて、金属体を載置面から転写シートがシート基準高さの位置となるまで離間させた離間載置状態にする。これにより、転写シートは引き出される方向において直線状態で支持されて転写シートの引き出しが円滑となるので、金属体に密着した転写シートは剥がれ難い。
また、金属体及び転写シートを載置部から引き出す際に、載置部に隣接された待機部が、金属体の高さを維持しつつ金属体を受け取り可能であるので、転写シート付きの金属体は転写シートがシート基準高さを維持したままの状態で支持搬送される。このため、金属体および転写シートを載置部から引き出す際に、金属体の自重による転写シートの剥離を防止でき、転写シートが密着した金属体を安定的に製造できる。
【0011】
本発明の熱転写装置の第3特徴構成は、前記シート切断部に前記金属体及び前記転写シートを前記転写シートの引き出し方向において位置決めするよう、前記待機部の下流側に隣接配置した排出部を備えた点にある。
【0012】
本構成は転写シートの切断を最も効率的に行おうとするものである。仮に、載置部から引き出された転写シートを載置部に隣接配置された待機部に引き出された直後に切断することは可能である。しかしながら、この場合、転写加圧部の位置にシート切断部及びシート引出部が近接するため、これを避けるために転写シートの引き出し長さが余分に必要となり歩止まりが悪くなる。
そこで、本構成の如く、載置部に隣接する待機部を設けると共に、その下流側のシート切断部に金属体及び転写シートを転写シートの引き出し方向において位置決めするよう、待機部の下流側に隣接配置した排出部を備えた。これにより、転写加圧部とシート切断部を引き離すことができ、待機部に転写シート付きの金属体を待機させることで、金属体における転写シートのマージンを短くすることができる。また、仮に金属体のサイズが変更されたとしても、待機部の長さを可変することで、金属体における転写シートのマージンを短くすることができる。その結果、転写シートを有効に利用することができる。
【0013】
本発明の熱転写装置の第4特徴構成は、前記排出部が個別に昇降可能な複数の搬送ローラを有し、
前記シート引出部が前記排出部の上方を往復移動可能であって、前記シート引出部が前記排出部の上方を通過する際に前記複数の搬送ローラが前記シート引出部と干渉しない下降位置に維持されるよう構成された点にある。
【0014】
本構成の如く、排出部に個別に昇降可能な複数の搬送ローラを備え、シート引出部が前記排出部の上方を往復移動可能であると、排出部の上下の領域においてシート引出部と搬送ローラとを重畳して配置でき、熱転写装置の設置スペースを小さくすることができる。
シート引出部はシート高さをシート基準高さに維持しつつ転写シートを引き出す必要があり、搬送ローラは転写シート付きの金属体を転写シートの位置がシート基準高さになるよう支持する必要がある。そこで、本構成では、シート引出部が排出部の上方を通過する際に複数の搬送ローラがシート引出部と干渉しない下降位置に維持されるよう構成されている。このため、シート引出部が上方を通過した後に搬送ローラを上昇させることで、排出部において、シート引出部がシート基準高さに維持しつつ転写シートを引き出すことができ、さらに、搬送ローラが転写シートの位置をシート基準高さになるよう転写シート付きの金属体を支持することができる。
【0015】
本発明の熱転写装置の第5特徴構成は、前記載置部の前記転写シートの送り方向の下流側に前記転写シートに向けて突出引退するシート支持部を備え、前記待機部が昇降可能であり、
前記シート引出部により前記転写シートを引き出す際に、前記シート支持部が前記転写シートから引退するとともに前記待機部が上昇位置に保持され、
前記シート引出部による前記転写シートの引き出しが終了したときに、前記シート支持部が前記転写シートに対して突出し、
前記転写加圧部が前記転写シートに近接する際に、前記シート支持部が前記転写シートから引退するとともに前記待機部が下降位置に保持されるよう構成された点にある。
【0016】
この構成により、シート引出部により転写シートを引き出す際に、シート支持部が転写シートから引退するので、転写シート付きの金属体の送りがスムーズになる。また、待機部が上昇位置に保持されることで、転写シートの位置がシート基準高さになるよう転写シート付きの金属体を維持することができるので、転写シート付きの金属体をスムーズに搬送できる。
【0017】
転写シートの引き出しが終了したときは、載置部には金属体が未だ載置されていないため、転写シートが誤って載置部に接触してしまう可能性がある。このとき、例えば載置部がホットプレートで構成された場合には、転写シートが載置部に接触することで転写層が溶解する等の不具合が起こる。本構成では、転写シートの引き出しが終了したときに、シート支持部が転写シートに対して突出するため、転写シートが載置部に接触することを確実に防止することができる。
【0018】
転写加圧部が転写シートに近接する際には、シート支持部が転写シートから引退するとともに待機部が下降位置に姿勢変化するため、金属体の下流側の転写シートの下方への撓みが許容される。このため、転写シートが自重により下方に撓む場合には、待機部に位置する転写シートに対する転写加圧部の熱の影響を抑制できる。すなわち、待機部に位置する転写シートの加熱による送り方向の長さ変化を抑えて、転写シートの送り方向の位置精度の低下を抑制することができる。
【0019】
本発明の熱転写装置の第6特徴構成は、前記シート切断部に前記金属体及び前記転写シートを前記転写シートの引き出し方向において位置決めするよう、前記待機部の下流側に隣接配置した排出部を備え、
前記シート引出部が上下の挟持部を有する移動クランプで構成され、
前記排出部に固定され上下の挟持部を有する固定クランプを前記移動クランプに対して前記転写シートの送り方向の上流側に備え、
前記固定クランプの下側挟持部の前記移動クランプに対向する面に凹状受け部を前記転写シートの幅方向に複数形成し、
前記移動クランプの下側挟持部の前記固定クランプに対向する面に前記凹状受け部に嵌合する凸状爪部を前記転写シートの幅方向に複数形成した点にある。
【0020】
転写シートはシート切断部によって切断され、端部が固定クランプの下流側にはみ出る。この転写シートの端部は自重により垂れ下がり、例えばカール状になる場合がある。そうなると、転写シートの端部が移動クランプに適正に挿入されなくなり、移動クランプによる転写シートの端部の把持状態に支障をきたすことにもなる。
【0021】
そこで、本構成では、固定クランプの下側挟持部の移動クランプに対向する面に凹状受け部を形成し、移動クランプの下側挟持部の固定クランプに対向する面に凹状受け部に嵌合する凸状爪部を形成する。凹状受け部と凸状爪部とを形成することで、移動クランプが固定クランプに向けて復帰移動して凹状受け部に凸状爪部が嵌合する際に、転写シートの端部は凸状爪部の傾斜面に案内されて移動クランプの上下の挟持部の間に挿入される。このため、固定クランプの下流側にはみ出た転写シートの端部が垂れ下がった状態でも、移動クランプの上下の挟持部によって転写シートの端部が確実に把持することができる。
【0022】
本発明の熱転写装置の第7特徴構成は、前記待機部の前記転写シートの送り方向に直角な幅方向に複数の搬送列部を備え、前記待機部の前記送り方向の長さを変更できるよう前記複数の搬送列部のうち少なくとも一組の隣接する搬送列部を前記送り方向に沿って相対移動可能に構成した点にある。
【0023】
本構成のように、搬送列部を複数設け、そのうち少なくとも一組の隣接する搬送列部を送り方向に沿って相対移動可能に構成したので、隣接する一組の搬送列部を相対移動させることで、搬送列部の両者の重複領域が変更されて、待機部の送り方向の長さを変更調節することができる。
すなわち、加飾対象の金属体のサイズに合わせて待機部の送り方向の長さを簡易に変更することができ、結果的に、待機部とシート切断部との距離を調節することができるため、金属体から張出す転写シートのマージンを短くすることができる。これにより、転写シートの歩止まりを高めることができる。
【0024】
本発明の熱転写方法の特徴手段は、ロール状の転写シートを保持するシート繰出部から前記転写シートの端部を把持して前記転写シートを引き出す工程と、
前記シート繰出部から引き出された前記転写シートに重ねた状態で加飾対象である金属体を載置部に配置する工程と、
前記載置部におかれた前記金属体に前記転写シートを押し付けて前記金属体に模様を転写する転写する工程と、
前記転写が終了した後に前記載置部から前記金属体との密着状態を維持したまま前記転写シートを引き出す工程と、
前記金属体との密着状態を維持したまま引き出された前記転写シートを切断する工程と、を備えた点にある。
【0025】
本構成により、転写後の金属体に密着したままの転写シートがシート引出部によって載置部から引き出され、その後に転写シートがシート切断部によって切断される。シート引出部によって転写シートを引き出した場合、転写シートには金属体の転写面に沿う方向に張力が働き易くなるので、金属体から転写シートの基体シートが剥離し難い。また、シート引出部によって載置部から金属体が密着した転写シートを引き出すことで、同時に載置部に新たな転写シートを供給することができる。
このように、転写シートの金属体への供給及び、転写後の転写シート付きの金属体の取り出しがスムーズに行えるため、転写シート付きの金属体を効率よく製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】熱転写装置の側面図
【図2】熱転写装置の平面図
【図3】金属体載置工程を示す図であって、(a)は金属体の載置前、(b)は金属体の載置後の状態を示す。
【図4】転写工程を示す図であって、(a)は転写前の状態、(b)は転写後の状態を示す。
【図5】シート引き出し工程を示す図であって、(a)は転写シートの引き出し前の状態、(b)は転写シートの引き出し途中の状態を示す。
【図6】待機部の動作を示す図
【図7】シート切断工程を示す図であって、(a)は切断準備段階、(b)はシートが切断される状態を示す。
【図8】取り出し工程を示す図
【図9】固定クランプ及び移動クランプの斜視図
【図10】固定クランプ及び移動クランプの動作を示す図であって,(a)が離間状態、(b)が近接状態を示す。
【図11】待機領域の長さ調節機構を示す図
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
【0028】
本発明の熱転写装置1は、転写シート12によって加飾される金属体11を転写シート12が密着したままの状態で取り出す。熱転写装置1は、図1及び図2に示すように、ロール状の転写シート12を保持するシート繰出部2と、金属体11を載置する載置部3と、転写加圧部(転写ロール)4と、転写シート12を切断するシート切断部5と、転写シート12の端部を把持するシート引出部(移動クランプ)6と、を備える。
【0029】
金属体11の載置部3は転写シート12の送り方向にスライド移動する転写テーブル8に配置されている。転写テーブル8には、載置部3以外に、載置部3の上流側にシート繰出部2が配置され、載置部3の下流側に固定クランプ14、シート切断部5、及び移動クランプ6が配置されている。また、載置部3の下流側には待機部9と排出部10とが順に隣接配置されている。転写後の転写シート12付きの金属体11は載置部3から待機部9に移される。待機部9の転写シート12付きの金属体11は、排出部10に移されてシート切断部5で転写シート12が切断された後、外部に排出される。
【0030】
シート繰出部2には、転写シート12が支軸21にロール巻きされた状態で装填されている。金属体11の載置部3は、図2に示されるように、下部に設けられたレール体31によって転写シート12の送り出し方向に垂直な一側方側にスライド自在に構成されている。シート繰出部2に装填された転写シート12の端部12Aは移動クランプ6に保持される。移動クランプ6が転写シート12を引き出す際のシート高さは載置部3において金属体11が載置される載置面32よりも上方に離間しており、このときの転写シート12の位置をシート基準高さHと定義する。
【0031】
載置面32には、載置面32の高さとシート基準高さHとの間で突出引退可能な複数のピン部材33が備えられている。載置面32は、その内部に埋設されたヒータ(不図示)によって加熱されるホットプレートである。載置面32とピン部材33とは金属体11の載置状態切替機構として機能し、載置面32からピン部材33を引退させて載置面32に金属体11を当接させる当接載置状態と、ピン部材33を突出させて載置面32から転写シート12がシート基準高さHの位置となるまで金属体11を離間させる離間載置状態とに切替可能である。
【0032】
載置状態切替機構は、金属体11に対する転写シート12の押圧作業が終了し、金属体11及び転写シート12を載置部3から引き出す際に、離間載置状態に設定される。これにより、転写シート12は引き出される方向において直線状態で支持されて転写シート12の引き出しが円滑となるので、金属体11に密着した転写シート12は剥がれ難い。
なお、金属体11に接するピン部材33の先端部には平滑加工がなされている。また、載置面32にはピン部材33とは別に吸引孔34が複数設けられており、転写ロール4による熱転写がなされる際は、載置面32に載置された金属体11が吸引保持される。
【0033】
熱転写装置1には、転写シート12の送り方向センサ(不図示)と、転写シート12の幅方向センサ(不図示)とが備えられている。送り方向センサはシート繰出部2又は載置部3に設けられ、幅方向センサは載置部3に設けられる。
送り方向センサは、転写する図柄に合わせて一定の間隔で転写シート12に形成された点状の送り方向マークを検出するセンサである。送り方向センサがこの送り方向マークを検出することで、移動クランプ(シート引出部)6による転写シート12の引き出し動作が停止する。幅方向センサは、転写シート12の側部において長手方向に形成された線状の幅方向マークを検出するセンサである。例えば載置部3の上手側に設置された幅方向センサと載置部3の下手側に設置された幅方向センサの2つのセンサにより幅方向マークを検出することで、転写シート12の送り方向に対する傾きが調整される。
【0034】
転写加圧部である転写ロール4は図示しない加熱装置によって加熱されており、エアーシリンダー41によって昇降可能である。下降した転写ロール4に対して、転写テーブル8の移動により金属体11及び転写シート12が転写シート12の送り方向に前進する。その結果、転写ロール4は前進する転写シート12に回転接触しながら載置部3に載置された金属体11に転写シート12を押し付ける。
【0035】
載置部3に隣接配置された待機部9は、載置部3から引き出される金属体11及び転写シート12を受け取る。載置部3から金属体11及び転写シート12が引き出される際に、待機部9は金属体11の高さを維持しつつ金属体11を支持して受け取り可能な位置に保持される。待機部9には、金属体11を支持搬送する複数の搬送ローラ15が設けられている。複数の搬送ローラ15は一体的に昇降可能に構成されており、載置部3から金属体11及び転写シート12が引き出される際には、搬送ローラ15が上昇位置に保持される。
【0036】
待機部9の下流側には、転写シート12の引き出し方向においてシート切断部5に金属体11及び転写シート12を位置決めするよう、排出部10が隣接配置されている。排出部10には、金属体11を支持搬送する複数の搬送ローラ16が設けられている。複数の搬送ローラ16は個別に昇降可能に構成されており、載置部3から金属体11及び転写シート12が引き出される際には、複数の搬送ローラ16が順次上昇し、その上昇位置に保持される。排出部10を備えることで、転写ロール4とシート切断部5を引き離すことができ、待機部9に転写シート12付きの金属体11を待機させることにより、金属体11における転写シート12のマージンを短くすることができる。
【0037】
図3(a)に示すように、載置部3と待機部9との間には、転写シート12に対して突出引退するシート支持部13が備えられている。待機部9と排出部10との間に固定クランプ14が配置され、固定クランプ14の下流側にシート切断部5が隣接配置されている。固定クランプ14は上下の挟持部14A,14Bを有しており、上下の挟持部14A,14Bで転写シート12を把持する。移動クランプ6は、固定クランプ14の下流側であって排出部10の上方を往復移動する。移動クランプ6は上下の挟持部6A,6Bを有しており、この上下の挟持部6A,6Bで転写シート12の端部12Aを把持する。シート切断部5は、固定クランプ14と移動クランプ6との間に保持された転写シート12を幅方向に切断する。なお、シート切断部5には、シート切断用のロータリーカッター等が備えられている。
【0038】
[転写シート]
転写シート12は、基体シート12bと基体シート12b上に形成された転写層12aとを備えている。基体シート12bは、転写層12aを支持するシート体である。基体シート12bは、公知の転写シートの基体シートを使用することができる。基体シート12bの構成材料としては、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、オレフィン系樹脂、ウレタン系樹脂及びアクリロニトリルブタジエンスチレン系樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の合成樹脂が好ましく挙げられる。基体シート12bは、上記の合成樹脂から形成された単層シート、単層シートを2以上積層した積層シート、上記の合成樹脂を用いた共重合シート等が挙げられる。特に、この発明の各実施形態において用いられる転写シート12には、寸法安定性のよい、印刷乾燥により変形しにくいポリエチレンテレフタレート樹脂等の基体シートを容易に選択することができる。
【0039】
転写層12aは、例えば、文字や絵柄を表現する図柄層、被加飾体と転写層との接着性を向上させる接着層を備えている。金属体11の表面の強度を確保し耐擦傷性を向上させるハードコート層や層間密着性を向上させるアンカー層を備えたり、複数の図柄層等同種の層を複数備えたりしてもよい。基体シート12bと転写層12aとの間に基体シート12bからの転写層12aの剥離性を向上させる離型層を備えてもよい。図柄層等は、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法等の印刷法、グラビアコート法、ロールコート法、コンマコート法等のコート法により基体シート12b上に形成される。
【0040】
[金属体]
金属体11は、例えば、金属プレス板等である。金属体11の表面には、何ら前処理はなされないか、または以下の処理がなされる。例えば、金属体11の表面に、アルマイト処理(金属体11がアルミの場合)、フレーム処理、プラズマ処理等の表面処理、転写層12aが形成され易いように予め接着剤の塗付等の表面処理等がなされたり、転写層12aが接着し易いシートが予め貼り付けられたりする。金属体11の表面処理や表面の被覆材は、金属体11とその表面に転写される転写層12aとの各組合せに応じて適合する材質を選択する必要がある。
【0041】
以下に、熱転写装置1の動作工程を図3〜図11を用いて説明する。
[金属体載置工程]
図3(a)は、シート繰出部2から転写シート12が載置部3に供給された状態であり、後述の転写後のシート引き出し工程によって実現される。この状態から載置部3を転写シート12の下方位置から側方位置に引き出し、載置面32に金属体11を載置する。その後、金属体11が載置された載置部3を転写シート12の下方位置に戻すことで、図3(b)に示されるように、金属体11が転写シート12に重ねた状態となる。このとき、転写シート12の端部は固定クランプ14の上下の挟持部14A,14Bによって把持されており、移動クランプ6は開放状態にある。また、シート支持部13は転写シート12から引退し、待機部9の搬送ローラ15は下降位置に保持されている。
【0042】
[転写工程]
次に、図4(a)に示すように、上昇位置の転写ロール4を下降させる。その後、転写テーブル8を転写シート12の送り方向(図4(a)の右方向)に移動させる。これにより、転写ロール4が転写シート12を介して金属体11の上を転動し、そのときの転写ロール4の熱と圧力とによって転写シート12の絵柄(転写層12a)が金属体11の表面に転写される。転写ロール4を下降させる際に、シート支持部13は転写シート12から引退し、待機部9の搬送ローラ15は下降位置に保持されている。これにより、金属体11の下流側の転写シート12の下方への撓みを許容し、待機部9に位置する転写シート12への転写ロール4の熱の影響を抑制する。図4(b)に示すように、転写ロール4が金属体11の上流側端部の位置まで移動すると転写が終了する。
【0043】
[シート引き出し工程]
次に、図5(a)に示されるように、転写ロール4が上昇し、載置部3のピン部材33が突出して金属体11の載置状態を離間載置状態にし、待機部9の搬送ローラ15を上昇位置に保持する。このとき、シート支持部13は引退している。固定クランプ14の上下の挟持部14A,14Bが開いて転写シート12を開放し、移動クランプ6の上下の挟持部6A,6Bが閉じて転写シート12の端部12Aを把持する。その後、移動クランプ6は排出部10の搬送ローラ16の上方を転写シート12の送り方向に沿って走行する(図5(b))。金属体11は載置部3の載置面32から離間してピン部材33の上を滑り、待機部9の搬送ローラ15及び排出部10の搬送ローラ16によって支持されつつ搬送される。
【0044】
移動クランプ6の走行により、待機部9の転写シート12付きの金属体11は排出部10に移され、載置部3の転写シート12付きの金属体11は待機部9に移されるとともに、載置部3にはシート繰出部2から新たな転写シート12が引き出される。このとき、載置部3の載置面32に複数配置されたピン部材33は金属体11に向けて突出し、待機部9の搬送ローラ15は上昇してその位置に保持される。
【0045】
こうして、載置部3における金属体11の載置状態は離間載置状態に設定され、待機部9の金属体11の高さが載置部3の金属体11の高さに維持された状態で、待機部9が金属体11を受け取ることができる。その結果、転写シート12付きの金属体11は転写シート12がシート基準高さHを維持したままの状態で支持搬送されて、金属体11の自重による転写シート12の剥離を防止できる。シート支持部13は転写シート12から引退しているので、転写シート12付きの金属体11の送りはスムーズになる。また、待機部9が上昇位置に保持されているので、転写シート12の位置がシート基準高さHになるよう転写シート12付きの金属体11を維持することができ、転写シート12付きの金属体11をスムーズに搬送できる。
【0046】
図6(a)〜図6(e)に示されるように、排出部10の個別の搬送ローラ16は、移動クランプ6がその上方を通過する前は移動クランプ6と干渉しない下降位置に保持されており、移動クランプ6がその上方を通過すると順次上昇してその位置に保持される。
【0047】
このため、排出部10の上下の領域において移動クランプ6と搬送ローラ16とを重畳して配置でき、熱転写装置の設置スペースを小さくすることができる。
また、移動クランプ6が上方を通過した後に搬送ローラ16を順次上昇させることで、排出部10において、移動クランプ6が転写シート12をシート基準高さHに維持しつつ引き出すことができ、さらに、搬送ローラ16が転写シート12の位置をシート基準高さHになるよう転写シート12付きの金属体11を支持することができる。
【0048】
なお、移動クランプ6による転写シート12の引き出し動作の際に、転写テーブル8が転写シート12の送り方向とは反対の方向(図5(b)の左方向)に復帰移動する。このため、転写ロール4は載置部3の下流側の位置に戻る。
【0049】
[シート切断工程]
図7(a)に示すように、シート引き出し工程が終了すると、固定クランプ14の上下の挟持部14A,14Bを閉じ、転写シート12を固定クランプ14及び移動クランプ6で把持する。その後、図7(b)に示すように、シート切断部5によって排出部10に位置する金属体11の上流側端部からはみ出した部分の転写シート12を幅方向に切断する。こうして、転写シート12の連続体から金属体11に密着した状態の転写シート12が切り離される。
【0050】
なお、転写シート12の引き出しが終了したときは、載置部3には金属体11が未だ載置されていないため、転写シート12が誤って載置部3に接触してしまう可能性がある。このとき、例えば載置部3がホットプレートで構成された場合には、転写シート12が載置部3に接触することで転写層12aが溶解する等の不具合が起こる。そこで、本実施形態では、転写シート12の引き出しが終了したときに、シート支持部13を転写シート12に対して突出させ、転写シート12が載置部3の載置面32に接触することを確実に防止している。
【0051】
[取り出し工程]
次に、図8に示されるように、移動クランプ6の上下の挟持部6A,6Bを開いて、排出部10において切り離された転写シート12付きの金属体11を取り出す。その後、搬送ローラ16を全て下降させてから、移動クランプ6を転写シート12の送り方向とは反対の方向に走行させて固定クランプ14の近傍位置(転写シート12の端部12Aの位置)まで戻し、載置面32のピン部材33を引退させ(図3(a))、新たな金属体11を載置部3に載置する(図3(b))。以後、上記工程を繰り返すことで、転写シート12が密着したままの金属体11を連続的に製造することができる。
【0052】
こうして、転写後の金属体11に密着した状態の転写シート12が移動クランプ6によって載置部3から引き出され、その後に転写シート12がシート切断部5によって切断される。移動クランプ6によって転写シート12を引き出した場合、転写シート12には金属体11の転写面に沿う方向に張力が働き易くなるので、金属体11から転写シート12の基体シート12bが剥離し難い。また、移動クランプ6によって載置部3から金属体11が密着した転写シート12を引き出すことで、同時に載置部3に新たな転写シート12を供給することができる。
このように、転写シート12の金属体11への供給及び、転写後の転写シート12付きの金属体11の取り出しがスムーズに行えるため、転写シート12付きの金属体11を効率よく製造することができる。
【0053】
転写シート12はシート切断部5によって切断され、端部12Aが固定クランプ14の下流側にはみ出る。この転写シート12の端部12Aは自重により垂れ下がり、例えばカール状になる場合がある。そうなると、転写シート12の端部12Aが移動クランプ6の上下の挟持部6A,6Bの間に適正に挿入されなくなり、移動クランプ6による転写シート12の端部12Aの把持状態に支障をきたすことにもなる。
【0054】
そこで、本実施形態では、図9に示すように、固定クランプ14の下側挟持部14Bの移動クランプ6に対向する面に凹状受け部17を形成し、移動クランプ6の下側挟持部6Aの固定クランプ14に対向する面に凹状受け部17に嵌合する凸状爪部18を形成する。凹状受け部17及び凸状爪部18はともに、転写シート12の幅方向に複数形成されている。また、凸状爪部18は、転写シート12を案内する側(上方側)に転写シート12から離間する方向(下方)に傾斜する傾斜面18Aを有している。
【0055】
図10(a)に示すように固定クランプ14は移動クランプ6が離間した状態から、図10(b)のように、移動クランプ6が固定クランプ14に向けて復帰移動する。固定クランプ14に移動クランプ6が近接すると、凹状受け部17に凸状爪部18が嵌合し、その際に転写シート12の端部12Aは凸状爪部18の傾斜面18Aに案内されて移動クランプ6の上下の挟持部6A,6Bの間に挿入される。このため、固定クランプ14の下流側にはみ出た転写シート12の端部12Aが垂れ下がった状態でも、移動クランプ6の上下の挟持部6A,6Bによって転写シート12の端部12Aを確実に把持することができる。
【0056】
待機部9は転写シート12の送り方向の長さを変更できるよう構成されている。図11(a)に示されるように、待機部9の搬送ローラ15は、転写シート12の送り方向に直角な幅方向に3列の搬送列部15L,15C,15Rを備える。中央の搬送列部15Cは載置部3側に固定されており、両側の搬送列部15L,15Rは中央の搬送列部15Cに対して転写シート12の送り方向に沿って移動可能である。
両側の搬送列部15L,15Rを移動させることで、図11(a)の状態の待機部9の送り長さを拡大させたり、図11(b)にように縮小させたりすることができる。すなわち、中央の搬送列部15Cと両側の搬送列部15L,15Rの重複領域を変更することにより、結果的に待機部9の送り長さを調節することができる。
【0057】
図1に示されるように、シート繰出部2には、転写シート12の基体シート12b側のゴミ取りロール22と、転写層12aの側のゴミ取りロール23とが配置されている。ゴミ取りロール22、23は、いずれも粘着性を有する材料で表面処理されている。ただし、ゴミ取りロール23が転写シート12の転写層12aに接することから、ゴミ取りロール23の粘着性は基体シート12bの側のゴミ取りロール22の粘着性よりも低く設定されている。
【0058】
転写シート12は、シート繰出部2から繰出されて待機部9から排出部10へと送られる際に摩擦力を受けることで静電気が発生することがある。このように、転写シート12に静電気が発生すると、転写シート12にゴミ等が吸い寄せられて付着することにもなる。このため、熱転写装置1には、シート繰出部2や、シート切断部5に除電器(不図示)が設置されている。例えば、シート繰出部2では、転写シート12の転写層12aの側に対して除電器を照射し、シート切断部5では転写シート12の基体シート12bの側に除電器を照射して、転写シート12の両面を除電するとよい。
【0059】
[別実施形態]
(1)上記の実施形態では転写ロール4は昇降するのみであり、転写テーブル8の移動に伴って金属体11が転写シート12の送り方向に移動する例を説明したが、転写テーブル8を移動させずに、転写ロール4が昇降及び転写シート12の送り方向への移動を行うよう構成してもよい。また、転写ロールに代えてホットスタンプ式の熱転写装置であってもよい。
【0060】
(2)上記の実施形態では、排出部10の搬送ローラ16が昇降する構成を示したが、排出部10の搬送ローラ16は昇降せずに所定の高さに保持されたままであってもよい。ただ、この場合には、移動クランプ6が排出部10の上方を走行できないため、排出部10の下流側に移動クランプ6の走行領域を確保する必要があり、装置全体の設置スペースは大きくなる。
【0061】
(3)上記の実施形態では、金属体11の載置部3に待機部9及び排出部10を順に隣接配置する構成を示したが、待機部9を設けずに載置部3に直接排出部10を隣接配置する構成であってもよい。
【0062】
(4)上記の実施形態では、金属体11として平板状のものを用いて説明したが、金属体11は平板状のものに限定されず、多少の盛り上がり部を有する立体的形状のものでもよい。なお、金属体11が立体的形状である場合には、金属体11の転写(加飾)領域の形状に転写加圧部(転写ロール)4の形状を対応させる必要である。
【0063】
(5)上記の実施形態では、待機部9の転写シート12の送り方向の長さを変更可能にするために、待機部9に複数の搬送列部15L,15C,15Rを備える構成を示したが、これに代えて、待機部9の全体が転写シート12の送り方向に伸縮自在となるよう構成してもよい。
【0064】
(6)上記の実施形態では、転写シート12の送り方向と幅方向の位置を合わせるために送り方向センサと幅方向センサとを備える例を示したが、転写シート12の位置合わせは、これらセンサによる方式に限られず、例えばCCDカメラによって転写シート12の位置合わせを行ってもよいし、載置部3に位置合わせ機構を付加してもよい。
【0065】
(7)上記の実施形態では、ローラを用いて転写シート12付きの金属体11を搬送する例を示したが、転写シート12付きの金属体11は、ベルトを用いて搬送してもよいし、単に金属体11を支持する部材上を滑らせるようにして搬送してもよい。
【0066】
(8)載置状態切替機構を構成するピン部材33は、転写シート12の支持部分の径が5mm以下であることが好ましい。ピン部材33の径が5mm以下であると、転写ローラ4による熱転写の際に、ピン部材33の及びピン部材33を収納する孔部による金属体11の変形が起き難い。また、載置状態切替機構は、ピン部材33に代えて、ローラ、ワイヤー、ベルト等で構成してもよい。
【0067】
(9)上記の実施形態では、シート切断部5がロータリーカッターを備える例を示したが、シート切断部5は、ロータリーカッターに限らず、ヒートカッター等、転写シート12が切断できるものであれば、どのようなタイプのカッターでもよい。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は、自動車、家庭用電化製品、携帯電話、パーソナルコンピュータ等、さまざまな分野において、内装品、外装品を問わず、使用される金属製品において、金属体の表面に加飾層が形成する際に広く利用可能である。
【符号の説明】
【0069】
1 熱転写装置
2 シート繰出部
3 載置部
4 転写ロール(転写加圧部)
5 シート切断部
6 移動クランプ(シート引出部)
8 転写テーブル
9 待機部
10 排出部
11 金属体
12 転写シート
13 シート支持部
14 固定クランプ
15 搬送ローラ
16 搬送ローラ
17 凹状受け部
18 凸状爪部
32 載置面(載置状態切替機構)
33 ピン部材(載置状態切替機構)
H シート基準高さ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加飾対象である金属体に転写シートを供給するよう、ロール状の前記転写シートを保持するシート繰出部と、前記転写シートの端部を把持して前記転写シートを引き出すシート引出部とを備え、
前記金属体と前記転写シートとを共に重ねた状態で載置可能な載置部と、
前記載置部におかれた前記金属体に前記転写シートを押し付けて前記金属体に模様を転写する転写加圧部と、
前記転写が終了した後に前記シート引出部によって前記載置部から前記金属体との密着状態を維持したまま引き出された前記転写シートを切断するシート切断部とを備えた熱転写装置。
【請求項2】
前記転写シートを引き出す際のシート高さが前記載置部の載置面よりも上方に離間しており、このシート位置をシート基準高さとして前記載置部の載置面の高さと前記シート基準高さとの間で突出引退可能であり、前記金属体の載置状態を、前記載置面に前記金属体を当接させた当接載置状態と、前記載置面から前記転写シートが前記シート基準高さの位置となるまで前記金属体を離間させた離間載置状態とに変更可能であって、前記転写シートの押圧作業が終了した前記金属体および前記転写シートを引き出す際に、前記離間載置状態に設定される載置状態切替機構と、
前記金属体および前記転写シートを前記載置部から引き出す際に、前記金属体の高さを維持しつつ前記金属体を受け取り可能となるよう前記載置部に隣接配置された待機部とを備えた請求項1に記載の熱転写装置。
【請求項3】
前記シート切断部に前記金属体及び前記転写シートを前記転写シートの引き出し方向において位置決めするよう、前記待機部の下流側に隣接配置した排出部を備えた請求項2記載の熱転写装置。
【請求項4】
前記排出部が個別に昇降可能な複数の搬送ローラを有し、
前記シート引出部が前記排出部の上方を往復移動可能であって、前記シート引出部が前記排出部の上方を通過する際に前記複数の搬送ローラが前記シート引出部と干渉しない下降位置に維持されるよう構成された請求項3記載の熱転写装置。
【請求項5】
前記載置部の前記転写シートの送り方向の下流側に前記転写シートに向けて突出引退するシート支持部を備え、前記待機部が昇降可能であり、
前記シート引出部により前記転写シートを引き出す際に、前記シート支持部が前記転写シートから引退するとともに前記待機部が上昇位置に保持され、
前記シート引出部による前記転写シートの引き出しが終了したときに、前記シート支持部が前記転写シートに対して突出し、
前記転写加圧部が前記転写シートに近接する際に、前記シート支持部が前記転写シートから引退するとともに前記待機部が下降位置に保持されるよう構成された請求項2〜4のいずれか一項に記載の熱転写装置。
【請求項6】
前記シート切断部に前記金属体及び前記転写シートを前記転写シートの引き出し方向において位置決めするよう、前記待機部の下流側に隣接配置した排出部を備え、
前記シート引出部が上下の挟持部を有する移動クランプで構成され、
前記排出部に固定され上下の挟持部を有する固定クランプを前記移動クランプに対して前記転写シートの送り方向の上流側に備え、
前記固定クランプの下側挟持部の前記移動クランプに対向する面に凹状受け部を前記転写シートの幅方向に複数形成し、
前記移動クランプの下側挟持部の前記固定クランプに対向する面に前記凹状受け部に嵌合する凸状爪部を前記転写シートの幅方向に複数形成した請求項4又は5に記載の熱転写装置。
【請求項7】
前記待機部の前記転写シートの送り方向に直角な幅方向に複数の搬送列部を備え、前記待機部の前記送り方向の長さを変更できるよう前記複数の搬送列部のうち少なくとも一組の隣接する搬送列部を前記送り方向に沿って相対移動可能に構成した請求項2〜6のいずれか一項に記載の熱転写装置。
【請求項8】
ロール状の転写シートを保持するシート繰出部から前記転写シートの端部を把持して前記転写シートを引き出す工程と、
前記シート繰出部から引き出された前記転写シートに重ねた状態で加飾対象である金属体を載置部に配置する工程と、
前記載置部におかれた前記金属体に前記転写シートを押し付けて前記金属体に模様を転写する工程と、
前記転写が終了した後に前記載置部から前記金属体との密着状態を維持したまま前記転写シートを引き出す工程と、
前記金属体との密着状態を維持したまま引き出された前記転写シートを切断する工程と、を備えた熱転写方法。
【請求項1】
加飾対象である金属体に転写シートを供給するよう、ロール状の前記転写シートを保持するシート繰出部と、前記転写シートの端部を把持して前記転写シートを引き出すシート引出部とを備え、
前記金属体と前記転写シートとを共に重ねた状態で載置可能な載置部と、
前記載置部におかれた前記金属体に前記転写シートを押し付けて前記金属体に模様を転写する転写加圧部と、
前記転写が終了した後に前記シート引出部によって前記載置部から前記金属体との密着状態を維持したまま引き出された前記転写シートを切断するシート切断部とを備えた熱転写装置。
【請求項2】
前記転写シートを引き出す際のシート高さが前記載置部の載置面よりも上方に離間しており、このシート位置をシート基準高さとして前記載置部の載置面の高さと前記シート基準高さとの間で突出引退可能であり、前記金属体の載置状態を、前記載置面に前記金属体を当接させた当接載置状態と、前記載置面から前記転写シートが前記シート基準高さの位置となるまで前記金属体を離間させた離間載置状態とに変更可能であって、前記転写シートの押圧作業が終了した前記金属体および前記転写シートを引き出す際に、前記離間載置状態に設定される載置状態切替機構と、
前記金属体および前記転写シートを前記載置部から引き出す際に、前記金属体の高さを維持しつつ前記金属体を受け取り可能となるよう前記載置部に隣接配置された待機部とを備えた請求項1に記載の熱転写装置。
【請求項3】
前記シート切断部に前記金属体及び前記転写シートを前記転写シートの引き出し方向において位置決めするよう、前記待機部の下流側に隣接配置した排出部を備えた請求項2記載の熱転写装置。
【請求項4】
前記排出部が個別に昇降可能な複数の搬送ローラを有し、
前記シート引出部が前記排出部の上方を往復移動可能であって、前記シート引出部が前記排出部の上方を通過する際に前記複数の搬送ローラが前記シート引出部と干渉しない下降位置に維持されるよう構成された請求項3記載の熱転写装置。
【請求項5】
前記載置部の前記転写シートの送り方向の下流側に前記転写シートに向けて突出引退するシート支持部を備え、前記待機部が昇降可能であり、
前記シート引出部により前記転写シートを引き出す際に、前記シート支持部が前記転写シートから引退するとともに前記待機部が上昇位置に保持され、
前記シート引出部による前記転写シートの引き出しが終了したときに、前記シート支持部が前記転写シートに対して突出し、
前記転写加圧部が前記転写シートに近接する際に、前記シート支持部が前記転写シートから引退するとともに前記待機部が下降位置に保持されるよう構成された請求項2〜4のいずれか一項に記載の熱転写装置。
【請求項6】
前記シート切断部に前記金属体及び前記転写シートを前記転写シートの引き出し方向において位置決めするよう、前記待機部の下流側に隣接配置した排出部を備え、
前記シート引出部が上下の挟持部を有する移動クランプで構成され、
前記排出部に固定され上下の挟持部を有する固定クランプを前記移動クランプに対して前記転写シートの送り方向の上流側に備え、
前記固定クランプの下側挟持部の前記移動クランプに対向する面に凹状受け部を前記転写シートの幅方向に複数形成し、
前記移動クランプの下側挟持部の前記固定クランプに対向する面に前記凹状受け部に嵌合する凸状爪部を前記転写シートの幅方向に複数形成した請求項4又は5に記載の熱転写装置。
【請求項7】
前記待機部の前記転写シートの送り方向に直角な幅方向に複数の搬送列部を備え、前記待機部の前記送り方向の長さを変更できるよう前記複数の搬送列部のうち少なくとも一組の隣接する搬送列部を前記送り方向に沿って相対移動可能に構成した請求項2〜6のいずれか一項に記載の熱転写装置。
【請求項8】
ロール状の転写シートを保持するシート繰出部から前記転写シートの端部を把持して前記転写シートを引き出す工程と、
前記シート繰出部から引き出された前記転写シートに重ねた状態で加飾対象である金属体を載置部に配置する工程と、
前記載置部におかれた前記金属体に前記転写シートを押し付けて前記金属体に模様を転写する工程と、
前記転写が終了した後に前記載置部から前記金属体との密着状態を維持したまま前記転写シートを引き出す工程と、
前記金属体との密着状態を維持したまま引き出された前記転写シートを切断する工程と、を備えた熱転写方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−218784(P2012−218784A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−87466(P2011−87466)
【出願日】平成23年4月11日(2011.4.11)
【出願人】(000231361)日本写真印刷株式会社 (477)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月11日(2011.4.11)
【出願人】(000231361)日本写真印刷株式会社 (477)
【Fターム(参考)】
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