説明

熱陰極蛍光ランプ

【課題】発光効率に優れ、かつ長寿命の熱陰極蛍光ランプを提供する。
【解決手段】熱陰極蛍光ランプは、両端にステム4が設けられた発光管(不図示)と、発光管の両端部に配置されたフィラメント2と、電子放射性物質であるエミッタ3と、を有する熱陰極蛍光ランプにおいて、絶縁性材料で形成され、各フィラメント2と各ステム4との間にそれぞれ配置された保持部材1をさらに有しており、エミッタ3は保持部材1およびフィラメント2によって保持されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱陰極蛍光ランプに関する。
【背景技術】
【0002】
図4は本発明に関連する熱陰極蛍光ランプの長手方向断面図である。この熱陰極蛍光ランプは、ガラスで形成された発光管17と、発光管17の両端に設けられた封止部であるステム14と、各ステム14にそれぞれ気密に挿通されたリード線15と、発光管17の内部に収容されたリード線15の端部に取り付けられたフィラメント12と、発光管17の両端に取り付けられた口金19と、を有している。フィラメント12には電子放射性物質であるエミッタが塗布されている。発光管17の内壁には蛍光体層18が形成されており、発光管17の内部には少量の希ガスおよび水銀が封入されている。
【0003】
この熱陰極蛍光ランプは、発光管17の両端から外側へ延びた各リード線15の間に電圧が印加されると、フィラメント12に塗布されたエミッタが熱電子を放出し、その熱電子が陰極から陽極へと移動する際に発光管17内の水銀原子に衝突することにより水銀原子が紫外線を発し、その紫外線が発光管17の内壁に形成された蛍光体層18によって可視光に変換されることにより発光するように構成されている。
【0004】
フィラメント12は発光時に大きな熱を発するため、この熱によりステム14が損傷を受けないように、フィラメント12はステム14から離した位置に配置されている。また、フィラメント12の発熱によりこの熱陰極蛍光ランプの端部の口金19等が過熱されて損傷を受けないように、ステム14は発光管17の内部へ大きく隆起するように形成されている。
【0005】
フィラメント12には、酸化バリウム(BaO),酸化カルシウム(CaO),酸化ストロンチウム(SrO)を主成分とする三元酸化物がエミッタとして塗布されている。この熱陰極蛍光ランプの製造工程におけるエミッタの塗布工程では、まずフィラメント12に炭酸バリウム(BaCO3),炭酸カルシウム(CaCO3),炭酸ストロンチウム(SrCO3)を主成分とする三元炭酸塩粉末を有機溶剤によりペースト状にしたものがフィラメント12に塗布される。その後、排気が行われフィラメント12に通電されて加熱されることにより、有機溶剤が除去されるとともに、炭酸塩が酸化物に分解される排気電極活性(分解)工程を経て、塗布工程が完了する。
【0006】
本願発明に関連する技術は、例えば、特許文献1に記載されている。
【特許文献1】特開平11−345596号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
熱陰極蛍光ランプは、環境の観点から、省エネルギー化を図ることにより二酸化炭素等の温室効果ガスの排出量を削減させることができるように構成されていることが望ましい。熱陰極蛍光ランプは、発光時の陽光柱の長さが長くなるように構成することにより、同等の電力で発光面を拡大できるため発光効率が向上し、省エネルギー化を図ることができる。発光時の陽光柱の長さを長くするためには、発光管の両端部のフィラメントをより離して配置させる必要がある。
【0008】
また、熱陰極蛍光ランプを長寿命化することは、廃棄物の量を削減することにつながり省資源化に寄与するため、環境の観点から望ましい。熱陰極蛍光ランプは、発光時に電子放射性物質であるエミッタが消耗して枯渇することにより寿命を迎えることが多い。そのため熱陰極蛍光ランプを長寿命化するには、エミッタの量を増加させる必要がある。
【0009】
図4に示す熱陰極蛍光ランプでは、上述のように、ステム14が発光管17の内部へ大きく隆起するように形成され、さらにフィラメント12がステム14から離した位置に配置されている。発光時の陽光柱の長さを長くするために、発光管17の両端部のフィラメント12を離して配置させると、フィラメント12がステム14や口金19等に近接するので、フィラメント12の発熱によってステム14や口金19等が過熱されることにより損傷を受ける場合がある。そのため、この熱陰極蛍光ランプは、発光管の長さを変更することなく、発光時の陽光柱の長さを長くすることにより発光効率を向上させることは困難である。
【0010】
また、この熱陰極蛍光ランプは、フィラメント12にエミッタが塗布されているが、保持されることができるエミッタの量はフィラメント12の長さにより決まり、塗布されたエミッタの量が多すぎると、エミッタはフィラメント12に保持されることができずにフィラメント12から脱落してしまう。フィラメント12は渦巻状などに形状が変更されることにより長く形成されることもできるが、フィラメント12の形状が大きくなると、フィラメント12の形状自体が不安定になるのみならず、フィラメント12はリード線15のみにより支持されているためリード線15が変形することがある。これにより、フィラメント12が蛍光体層18に近接または当接することによって、フィラメント12の発熱により蛍光体層18が損傷を受けるなどの不具合が生じることがある。そのため、この熱陰極蛍光ランプではフィラメントはこのような不具合が生じない長さにとどめなければならない。このように、この熱陰極蛍光ランプでは、エミッタの量を大幅に増加させることにより長寿命化することは困難である。
【0011】
また、この熱陰極蛍光ランプのエミッタの塗布工程では、炭酸塩粉末がペースト化され、炭酸塩ペーストがフィラメント12に塗布され、次に排気電極活性(分解)工程にてフィラメント12に通電されることにより炭酸塩が酸化物に分解される。この工程は、個々のフィラメント12について別々に行う必要があるため生産性が良くない。
【0012】
また、熱陰極蛍光ランプは、フィラメントにエミッタがなくなり寿命を迎えた際に、エミッタのなくなったフィラメントや発光管内のリード線から依然として放電が継続されることがある。熱陰極蛍光ランプの陰極降下電圧は、通常時は数10Vであるところ、このような場合にはおよそ100Vまで上昇する。そのため、このような場合には、コイル状の抵抗体であるフィラメントが大きなジュール熱を発し、これにより熱陰極蛍光ランプの端部が過熱されて損傷を受けることがある。そのため、熱陰極蛍光ランプは、フィラメントの発熱により損傷を受けにくいように構成されていることが望ましい。
【0013】
また、熱陰極蛍光ランプは、発光中に、フィラメントを形成しているタングステン(W)等の物質や、エミッタ材料や、リード線を形成している金属材料が飛散し、それらが徐々にステムの表面に堆積する。ステムに挿通された2本のリード線は絶縁されているが、ステムの表面に導電性を有する飛散物質が堆積することにより、ステムの表面に堆積した飛散物質を介して2本のリード線が電気的に接続されることがある。このような状態で、熱陰極蛍光ランプが通電されると、ステムの表面の飛散物質に大きな電流が流れることによりジュール熱が発生し、ステムが過熱されて損傷を受けることがある。そのため、熱陰極蛍光ランプは、発光時にステムの表面に飛散物質が堆積することが防止できるように構成されていることが望ましい。
【0014】
上述の問題点に鑑み、本発明は、発光効率に優れ、かつ長寿命の熱陰極蛍光ランプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するため、本発明の熱陰極蛍光ランプは、両端に封止部が設けられた発光管と、該発光管の両端部に配置された電極と、電子放射性物質であるエミッタと、を有する熱陰極蛍光ランプにおいて、絶縁性材料で形成され、各々の前記電極と、各々の前記電極に近接する前記封止部との間にそれぞれ配置された保持部材をさらに有しており、前記エミッタは、前記保持部材および前記電極によって保持されている。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、発光効率に優れ、かつ長寿命の熱陰極蛍光ランプを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
(第1の実施形態)
図1は本発明の第1の実施形態に係る熱陰極蛍光ランプの長手方向断面図、図2はその熱陰極蛍光ランプの電極部の拡大断面図およびその電極部のフィラメントを示した図である。
【0018】
図1に示すように、本実施形態に係る熱陰極蛍光ランプは、ガラスで形成された発光管7と、発光管7の両端部に配置された電極部10と、発光管7の両端に取り付けられた口金9と、を有している。発光管7は、電極部10に備えられたステム4が封止部として発光管7の両端に取り付けられて封止されている。発光管7の内壁には蛍光体層8が形成されており、発光管7の内部には少量の希ガスおよび水銀が封入されている。
【0019】
また、図2に示すように、本実施形態に係る熱陰極蛍光ランプの電極部10は、各ステム4にそれぞれ2本ずつ気密に挿通されたリード線5と、絶縁性および耐熱性を有するセラミックスでカップ状に形成され、発光管7の内側両端部に収容された保持部材1と、渦巻状に形成され各保持部材1の内部にそれぞれ収容されたフィラメント2と、各保持部材1の内部にそれぞれ充填されたエミッタ3と、発光管7の両端から外側に延びた端部が封止された排気管6と、を有している。
【0020】
保持部材1は、アルミナ(Al23)やジルコニア(ZrO2)や窒化アルミニウム(AlN)などのセラミックスで形成されている。保持部材1を形成する材料は絶縁性および耐熱性を有していればセラミックスでなくてもよい。図1に示すように、保持部材1は開口部が互いに対向するように発光管7の両端部に配置されている。保持部材1はステム4に支持された2本のリード線5に挿通されることにより保持されている。
【0021】
フィラメント2は、純タングステンやレニウム(Re)添加タングステンなどで、渦巻状に形成されており、リード線5の端部に取り付けられて保持部材1の内部に収容されている。
【0022】
エミッタ3としては、アルミン酸バリウム(BaAl24)を含むアルカリ土類アルミン酸塩などの電子放射性物質が用いられる。エミッタ3は、例えば、粉末の状態で、フィラメント2が収容された保持部材1内に充填され、水素炉で加熱焼成されるなどの方法により保持部材1内に固着される。この熱陰極蛍光ランプは、エミッタ3がカップ状の保持部材1の内部に充填されていることにより、エミッタがフィラメントに塗布されている熱陰極蛍光ランプに比べて、格段に多くのエミッタを保持することができる。このようにこの熱陰極蛍光ランプは長寿命化されている。
【0023】
また、エミッタ3は、フィラメント2を保持部材1内に固定してフィラメント2の形状を維持する働きもしており、フィラメント2が渦巻状に長く形成されていても保持部材1内に安定して保持される。
【0024】
また、この熱陰極蛍光ランプでは、エミッタ3を保持部材1に充填する工程を多量に一括して行うことができるため、エミッタをフィラメントに個別に塗布する工程を有する熱陰極蛍光ランプに比べて生産性の向上が図れる。
【0025】
また、この熱陰極蛍光ランプでは、フィラメント2が発する熱がステム4側に伝わることを保持部材1が抑制しており、フィラメント2の発熱によってステム4や口金9等が過熱されることが防止されている。したがって、この熱陰極蛍光ランプでは、フィラメント2をステム4に近い位置に配置させ、また、ステム4の発光管7の内部への隆起を低くすることが可能である。これにより、この熱陰極蛍光ランプでは、両端部のフィラメント2間の距離を長くすることができ、その分、発光時の陽光柱の長さを長くすることができるため発光効率が向上する。
【0026】
また、この熱陰極蛍光ランプは、ステム4に近い位置にフィラメント2が配置されているので、リード線5の、ステム4とフィラメント2とをつないでいる部分の長さが短い。そのため、リード線5は大きく変形することがなく、フィラメント2および保持部材1を安定して保持することができる。
【0027】
また、この熱陰極蛍光ランプは、フィラメント2とステム4との間のステム4に近接した位置に保持部材1が配置されているので、発光中にフィラメント2やエミッタ3から飛散する物質がステム4の表面に堆積することが抑制されている。これにより、この熱陰極蛍光ランプでは、ステム4に挿通された2本のリード線5がステム4の表面を介して電気的に接続されることが防止されている。
【0028】
また、この熱陰極蛍光ランプは、フィラメント2が発する熱がステム4側に伝わることを保持部材1が抑制しており、フィラメント2にエミッタがなくなり寿命を迎えた際に、エミッタがなくなったフィラメント2から依然として放電が継続された場合にも、フィラメント2の発熱によりステム4や口金9等が損傷を受けにくい。
【0029】
なお、本実施形態に係る熱陰極蛍光ランプは、封止部としてフレア形状のステム4を備えているが、封止部としてガラスビーズ等の他の部材を備えていても同様の効果を得ることができる。
(第2の実施形態)
図3は本発明の第2の実施形態に係る熱陰極蛍光ランプの電極部の拡大断面図およびその電極部のフィラメントを示した図である。本実施形態に係る熱陰極蛍光ランプは、ディスク状に形成された保持部材1aと、保持部材1aに係合して配置されたフィラメント2aと、フィラメント2aを覆うように保持部材1aに固着されたエミッタ3aと、を有している。なお、本実施形態に係る熱陰極蛍光ランプは、以下に示す構成以外は第1の実施形態に係る熱陰極蛍光ランプと同様に構成されている。
【0030】
保持部材1aは、絶縁性および耐熱性を有するセラミックスでディスク状に形成されている。この熱陰極蛍光ランプでは、エミッタ3aがフィラメント2aのみでなく保持部材1aにも保持されているため、エミッタがフィラメントに塗布されている熱陰極蛍光ランプに比べて多くのエミッタを保持することができる。
【0031】
また、この熱陰極蛍光ランプでは、フィラメント2aが保持部材1aに係合していることによりフィラメント2aの形状が維持されており、フィラメント2aが渦巻状に長く形成されていても安定して保持される。
【0032】
なお、本実施形態に係る熱陰極蛍光ランプでは、エミッタ3aが保持部材1aに固着されて保持されているが、エミッタはフィラメント2aに塗布されることにより保持されていてもよい。この場合でも、本熱陰極蛍光ランプは、フィラメント2aが渦巻状に長く形成されており、かつ保持部材1aがエミッタを保持する補助的な働きをするため、より多くのエミッタを保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る熱陰極蛍光ランプの長手方向断面図である。
【図2】図1に示した熱陰極蛍光ランプの電極部の拡大断面図およびその電極部のフィラメントを示した図である。
【図3】本発明の第2の実施形態に係る熱陰極蛍光ランプの電極部の拡大断面図およびその電極部のフィラメントを示した図である。
【図4】本発明に関連する熱陰極蛍光ランプの長手方向断面図である。
【符号の説明】
【0034】
1,1a 保持部材
2,2a フィラメント
3,3a エミッタ
4 ステム
5 リード線
6 排気管
7 発光管
8 蛍光体層
9 口金
10 電極部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端に封止部が設けられた発光管と、該発光管の両端部に配置された電極と、電子放射性物質であるエミッタと、を有する熱陰極蛍光ランプにおいて、
絶縁性材料で形成され、各々の前記電極と、各々の前記電極に近接する前記封止部との間にそれぞれ配置された保持部材をさらに有しており、
前記エミッタは、前記保持部材および前記電極によって保持されていることを特徴とする熱陰極蛍光ランプ。
【請求項2】
前記絶縁性材料はセラミックスである、請求項1に記載の熱陰極蛍光ランプ。
【請求項3】
各々の前記保持部材はカップ状に形成され、開口部が互いに対向するように配置されており、
前記電極は各々の前記保持部材の内部に配置され、各々の前記保持部材の内部には前記エミッタが充填されている、請求項1または2に記載の熱陰極蛍光ランプ。
【請求項4】
前記電極は各々の前記保持部材に係合して配置されている、請求項1から3のいずれか1項に記載の熱陰極蛍光ランプ。

【図1】
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【図4】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−170298(P2009−170298A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−8064(P2008−8064)
【出願日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願人】(300022353)NECライティング株式会社 (483)
【Fターム(参考)】