説明

熱電対とそれを利用した測温器

【課題】
本発明は、溶融部が団子状に肥大化していない熱電対とその製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】
上記課題を解決するために、本発明の熱電対は、2本の熱電対素線の突合せ狭角が100°以上であることを特徴とし、測温接点は、2本の熱電対素線が相互に接触した部分が溶融されて一体化され、当該溶融箇所の大きさが素線の太さと同等か2倍以下であることを特徴とする手段を採用した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2本の熱電対素線を溶融接合してなる測温接点を有する熱電対とその測温接点形成方法に関し、微小域での温度変化を検出するためにその素線径が細くされているものに関する。
【背景技術】
【0002】
MEMSや携帯電子機器の進展に伴い、該機器等に対する熱管理の要求も高度化している。そのような機器に対する熱管理の特徴は、測定対象域が微小であり、かつ熱容量が小さいことにあり、機器等の熱管理に用いられる温度センサーとしては、熱電対、サーミスター、半導体型測温体が一般的である。熱電対は、構成する2本の熱電対素線を溶融接合し、測温接点を形成することで温度測定の基本機能が得られる。このため熱電対の素線の細線化と測温接点の微小化により、上記のような測定対象域が微小で熱容量が小さい場合の温度センサーに適用可能となる。すなわち素線の細線化により、素線の熱抵抗が大きくなり、測定対象物からの熱流失が小さくなる。また測温接点が微小であると、小さな熱量で測定対象と同じ温度まで達するので、熱容量の小さな微小領域の温度測定が可能になる。
近年の微細加工の発展により、1mm程度あるいはそれ以下のミクロンオーダーの管径の流路や反応容器等は容易に形成できるようになった。このような微小流路や微小反応容器では、たとえばスケールが1/100になるとその熱容量が1/106になるので、入・出熱量が変化した場合、反応容器中の温度変化は非常に大きくなる。また微小流路を流れる流体の温度測定においては、通常スケールの流路とは異なる観点からの熱電対設置が要求される。通常スケールの流路の場合、図13(a)のように熱電対(17)が流路(15)に対して垂直方向に挿入され、かつ測温接点(16)が流路(15)の中心に配置されるのが通常である。しかしながら微小流路(15)を流れる流体の温度測定においては、熱電対(17)の測温接点(16)が大きいため、熱電対自身が流体のスムースな流れの障害物となり、測温接点(16)と素線(16a)(16b)の境界部分に非常に大きな力を受けて、熱電対が破損する恐れも考えられる。このため図13(b)は流路(15)に対して素線(16a)(16b)を平行に配置した例である。図13(c)は測温接点(16)を流路内壁上に配置した例である。図13(b)および(c)の配置は、流体抵抗を極力小さくするように計らうとの考え方にたったものであるので、当然、熱電対の測温接点(16)の肥大化は極力防ぐことが望まれる。
【0003】
このような実情において、熱電対は、構成する2本の熱電対素線を溶融接合した測温接点(16)を有している。応答性を向上させるには、素線径を細くすると共に測温接点の体積を小さくするのが良いとされているが、線径の細さと性能の向上とが必ずしも関連しているとは言えないのが現状であった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、このような実情に鑑み、その素線径を基準単位とした場合、従来にはない高い応答性を有する溶融部(測温接点)を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明1の熱電対は、2本の熱電対素線を溶融接合してなる測温接点を有する熱電対であって、測温接点を中心とした2本の素線の突合せ挟角が90°以上であることを特徴とする。
発明2は、発明1の熱電対において、前記熱電対素線の線径が100μm以下であることを特徴とする。
発明3は、発明1又は2の熱電対において、前記測温接点の直径が素線の直径の2倍以下であることを特徴とする。
【0006】
発明4は、発明1から3のいずれかの熱電対を製造する方法であって、2本の熱電対素線の先端を突合せ、その突合せ箇所を溶融して測温接点を形成するに当たり、その突合せ角が溶融後に前記突合せ挟角と成るように設定してあることを特徴とする。
発明5は、発明4の熱電対の製造方法において、前記素線の突合せ箇所を高電圧マイクロ放電により溶融するに当たり、その放電を間欠的に行うことを特徴とする。
【0007】
発明6の測温器は、その熱電対が発明1から3のいずれかの熱電対であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
同様な直径の測温接点を想定した場合、突合せ挟角が90°未満のものと比較すると、熱応答速度が高速であることが実験により明らかとなった。
このことは、下記実施例によって確認できたものであるが、その要因を明らかにはできていない。発明者がその要因に関して推測した結果、おそらく、このような大きな突合せ挟角となるには、溶融直前の突合せ角度も、それに相応する大きな角度を有しているので、突合せ接点には、両素線を突合せる力が集中され、高い圧力を受けているものと思われる。
そして、その圧力により溶融が開始されると、両素線の混合溶融が従来に比べ急速に行われることとなり、結果として、両素線の成分が測温接点において、従来、均質に混合されているからではないかと考えられる。
【0009】
さらに、このような現象は素線の径が100μm以下の微小域測定用のものにおいて顕著に表れるので、微小域用熱電対に最適な構造である。
【0010】
また、測温接点の直径による影響も堅持されていることより、素線の直径の2倍以下とするのが最も高速な応答速度の熱電対を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施例1の装置を示す正面図。
【図2】実施例1の素線取付け構造を示す分解斜視図。
【図3】実施例2で示す金属針と素線の位置を示す写真。
【図4】実施例2で示す1回目から23回目までの高電圧放電炎の写真。
【図5】実施例2で示す24回目から31回目までの高電圧放電炎の写真。
【図6】実施例2で示す32回目の高電圧放電の連続写真。
【図7】実施例2で示す放電前後の熱電対の変化を示す写真。
【図8】実験No.3の突合せ角35°で溶融した、突合せ挟角52°の測温接点の外観を示すSEM写真。
【図9】実験No.1の突合せ角26°で溶融した、突合せ挟角31°の測温接点の外観を示すSEM写真。
【図10】実験No.5の突合せ角80°で溶融した、突合せ挟角110°の測温接点の外観を示すSEM写真。
【図11】実験No.6の突合せ角101°で溶融した、突合せ挟角101°の測温接点の外観を示すSEM写真。
【図12】実験No.8の突合せ角125°で溶融した、突合せ挟角133°の測温接点の外観を示すSEM写真。
【図13】実施例2で示す極細熱電対を用いた微小流路を流れる流体の温度測定の概略説明図。
【図14】実施例3で示す極細熱電対性能評価を行う装置の模式図。
【図15】実施例3で示す極細熱電対の熱応答性の実測結果を示す図。
【図16】図15で示す結果を単純移動平均法により平準化した図。
【図17】実施例4で示す素線径50μm極細熱電対と素線径0.65mm市販熱電対の熱応答性を比較した図。
【図18】市販の素線径50μm極細熱電対の外観を示す写真。
【図19】突合せ挟角(α)の測定基準を示す概略正面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下の実施例では、K熱電対(+脚:クロメル合金、−脚:アルメル合金)の測温接点を形成する方法を主に述べるが、この方法を適用して、R熱電対およびB熱電対等の白金系熱電対やWRe5:26型等の超高温用熱電対であっても、素線径が数十μmの極細熱電対であれば、これらの熱電対の測温接点形成にも適用できる。また、実施例では、測温接点形成の前段階として2本の素線先端部を顕微鏡で観察しながら、それぞれの素線が独自に移動できるような装置を用いて、素線をセットした。先行特許(特開2009−25294)では、2本の素線を交差して接触させている。一方、本発明では、2本の素線の先端を所定の角度で、交差させずに突合せて接触させている。
【実施例1】
【0013】
本発明の装置の実施例を図1,2を参照して説明する。
基盤(11)とこれに立設した柱(P)とを構造枠として構成した。
図1中右上に示すとおりX方向およびZ方向を定め、この両方向に直交する方向をY方向として、以下説明する。
前記基盤(11)上にX方向に長いレール(11a)が設置され、このレール上に、左右のステージ(5a)(5b)が載置されている。
前記各ステージ(5a)(5b)は、前記レール(11a)上にX方向に移動可能なXステージ(5Xa)(5Xb)と、このXステージ上においてY方向で移動可能なYステージ(5Ya)(5Yb)と、このYステージ上でZ方向に昇降させることができるZステージ(5Za)(5Zb)から構成してある。
そして、各ステージには、それぞれその移動量を調整するノブ(Xa)(Xb)、(Ya)(Yb)及び(Za)(Zb)が設けてある。
これらノブによる位置調整構造については、従来、周知のスライド構造を適宜用いたものであるから、詳しい説明は省略する。
前記Zステージ(5Za)(5Zb)の上端には、作業台(7a)(7b)がそれぞれ設けてあり、この作業台(7a)(7b)にはア−スケーブル(10a)(10b)がそれぞれ接続されている。
また、その前面には、Y方向に軸芯を向けた取付け軸(71a)(71b)が突設してある。
このようにして、前記取付け軸(71a)(71b)の位置を、三次元で相対的に位置調整可能としてある。
【0014】
さらに、前記取付け軸(71a)(71b)を挿入する透孔(22a)(22b)が形成してある素線固定板(21a)(21b)と、前記取付け軸(71a)(71b)に螺合して、前記素線固定板(21a)(21b)を作業台(7a)(7b)に任意の角度(Y軸周り)で固定するナット(23a)(23b)と、この固定板に素線を押し付ける磁石製の押さえ板(24a)(24b)とにより構成した素線固定構造(20a)(20b)が設けてある。
前記柱(P)には、上下所定位置にホルダ(H)が固定してあり、このホルダの下端にはタングステンからなる放電用の金属針(6)が設けてあり、その周囲にはガスホース(9h)から送られたガスを前記金属針(6)の周囲を囲むように噴出するガス噴射口(図外)が設けてある。
なお(8)は、前記金属針(6)に電力を供給するケーブルである。
このように構成してある装置を用いて、熱電対を創製する方法を以下に説明する。
【0015】
前記左右の素線固定構造を作業台(7a)(7b)から取り外し、それぞれの素線固定板(21a)(21b)に用いる素線(2a)(2b)の一端をハンダ付け(3a)(3b)する。
そして、この素線(2a)(2b)の他端を図2に示す所定の方向に引っ張って直線化し、その上を押さえ板(24a)(24b)にて押さえつけて、素線(2a)(2b)を素線固定構造(20a)(20b)に取り付ける。
次に、この素線固定構造(20a)(20b)を、素線(2a)(2b)の先端が互いに向かい合うようにして、ナット(23a)(23b)にて、前記取付け軸(71a)(71b)に固定する。
そして、前記ステージ(5a)(5b)を調整して、前記金属針(6)の直下にて、両素線(2a)(2b)の先端が対向接触(1)するように調整する。
そして、所定の電力を投入するとともに不活性ガス流れ(9)を形成して、不活性ガス中で前記金属針(6)と対向接触箇所(1)との間に放電を発生させて、両素線を接触箇所で溶融一体化する。
【0016】
前記装置を用いた熱電対の創製例を以下に説明する。
素線(2a)として線径50μmのアルメル合金線を、素線(2b)として線径50μmのクロメル合金線を用いた例を説明する。
この両素線は、互いの融点に大きな差があり、さらに高温で酸化しやすいために接合しにくい材料である。
前記素線固定構造(20a)(20b)に、この素線の先端が5mmほど突出するようにして取り付けた。
そして、ステージ(5a)(5b)の操作により、図1に示すように前記素線(2a)(2b)を対向接触させた。
このとき、クロメル合金線がアルメル合金線方向へ20ミクロン移動する程度に押しつけて、先端同士を接触させる。アルメル合金のヤング率を70GPaとして計算すると、素線先端に作用する荷重は1mgとなる。対向接触位置(1)の直上約50ミクロン以下の位置に印加電極とする軸径0.125mmの金属針(6)の先端がくるように、金属針を垂直に配置する。パルス方式の高電圧電源の電圧印加側を金属針(6)に、接地電位は素線固定板(21a)(21b)と同電位とした。金属針の上方から不活性ガス(9)を流しながら、金属針に高電圧を0.5秒以下で繰り返し印加して、金属針−接触部の間で放電させて接触部を溶融・接合する。
【0017】
なお、放電が生じると電圧が高速に復帰するコッククロフト・ウォルトン回路をもつ電源を使っており、放電中には、実際には電流が10kHz程度のパルスで流れている。
このようにして、熱電対素線を放電接合して作製された測温接点を図8から図12に示す。
次の実施例2にて、これら熱電対について考察した。
【実施例2】
【0018】
図3は熱電対素線とその直上に配置した金属針の位置関係を示す。金属針先端は素線先端から約50μm直上にある。この状態で定格電流8mA、1回の放電時間は0.5秒以下とし、5kVを印加して繰り返し放電を行った。その結果、32回目の放電で、2本の素線が溶融接合した。なお、不活性ガスは炭酸ガスを放電開始前から放電終了後まで、毎分1リットルの割合で流した。
繰り返し放電の様子をビデオで確認すると、最初から23回目までは、図4に示すような金属針と熱電対素線の最先端部間に生じる放電炎のみであった。1画面に2つの画像があるのは同じものを別方向から同時に撮影しているためで、これは次の図5および図6も同様である。
24回目から31回目までの放電は、図5に示した2種類の放電炎が順番に現れる。最初、23回目までと同じ、金属針と熱電対素線最先端部間に生じる放電炎(図5左端の写真)であったのが、途中で素線を包み込むような放電炎に変わる。すなわち、素線の周囲にも放電炎が現れる(図5右端の写真)。
32回目の放電は、最初から最後までのビデオ画像を図6に示した。図中の各写真は1/30秒間隔で撮影されたものである。
放電開始後約0.2秒で、金属針と熱電対素線の最先端部間に生じる放電炎から、素線を包み込むような放電炎に変わり、さらに素線全体が白熱化し、最終的に溶融接合したので終了した。32回目の放電は約0.3秒である。他の接合例でも、放電開始時において素線先端部に放電炎が集中し、ある時間経過した後に包み込むような放電に変化し、最後に素線の白熱化と溶融・接合が起こるという経過を示す。
【0019】
図7は放電前と放電後の素線の様子を示したビデオ画像の1コマである。放電接合前の素線同士の突合せ角(θ)は35°で、放電終了後の突合せ挟角(α)は52°である。さらに、素線が溶融・接合すると、プローブ先端と形成された測温接点(素線の接触部)の距離は約200μm広がった。
なお、突合せ挟角(α)は図19に示すように、測温接点の中央(C)から延びる両素線の軸中心によって形成される挟角(α)とした。
表1に示すのはすべて線径が50μmの素線の接合例であり、放電後に素線の突合せ狭角が大きくなる傾向が認められる。距離が広がる理由は、素線が白熱化して軟化して、放電圧力で溶融部が下方に下がったためと推測されるが明確な理由を明らかにはできていない。なお線径50μmの市販熱電対の写真を図18に示す。この写真に前記図19で示す基準の線を引いて市販品の突合せ挟角(α)を求めて、表1の最下段に示している。
図8〜図12は形成された極細熱電対の外観を示すSEM写真である。
放電接合して素線の先端を溶融すると、一部はスパッタされて飛散し、一部は溶融して丸くなるので、全体として素線の長さが短くなる。ある程度の接触圧で押していると短くなっても、素線全体がバネとしてはたらき、先端同士を押しつけるので、離れることはない。素線の先端で溶融した金属が界面張力の働きで、先端の接触部を覆うように丸くなっており、放電を停止した時点から急速に冷却されて固化する。これで測温接点が形成される。
【表1】



【実施例3】
【0020】
以上の熱電対についての性能を評価した。
図14は本発明の極細熱電対の性能を評価するための装置模式図で、極細熱電対の測温接点(16)を、周囲の物体に接触させることなくシャッター(33)からの距離が一定の空中の所定の点で固定し、上方から温風を吹き付け、それぞれの熱起電力を増幅器(19)を通して高速のデジタルオシロスコープ(30)で計測する。
この際、シャッター(33)を閉じたままヒーター(32)に通電し、一定速度で風(31)を送る。充分に時間をおいて、温風の温度が定常状態になってから、シャッター(33)を開けて、熱起電力が一定になるまで極細熱電対(18)に温風を送る。この操作を、表1に示したすべての熱電対について行った。すなわち表1に示したすべての熱電対を同じ条件で急速加熱し、その熱起電力の上昇速度(熱応答速度)を調べた。
図15はデジタルオシロスコープに取り込まれた生データ(表1の実験No.6)をグラフ化したものの一例である。熱起電力は非常に小さく100倍の増幅を行っているので、ノイズが大きい。
そこでこのデータからノイズを除去して熱応答速度を求めるため、単純移動平均法を用いた。すなわち、時系列に並んだデータ(熱起電力)の最初の5点の平均を計算する。次いで、時系列の次のデータを加えるとともに、一番古いデータを削除して、新たな5点のデータの平均を計算する。これを熱起電力が上昇し始めた点から、熱起電力が最大値の半分に達するまでのデータについて繰り返し行う。得られた平均をグラフ化したのが図16である。まだノイズの影響が残っているので、さらにこのグラフの勾配を最小自乗法で求めて、熱応答速度とした。
得られた結果は表1に示したが、突合せ狭角(α)が90°以上の時に、同様な素線径の市販品を上回る性能を示し、素線径の2倍以下の直径の測温接点では熱応答速度が1000deg/秒以上となった。
なお表1の実験番号1から4は、発明1の比較例であり、実験番号5は、発明3の比較例である。
【実施例4】
【0021】
次に素線径0.65mmの市販品と、本発明品の熱電対を同じ装置を用いて比較した。
今度は上記の2つの熱電対測温接点を、できるだけ近づけて固定しておき、両者が同時に同じ条件で加熱されるようにし、シャッターを開けてから0.7秒で閉じた。
図17に温風吹きつけ前後の熱起電力の時間変化を示す。温風を吹き付けるまでは、市販品も発明品も熱起電力は0であった。しかし、シャッターが開いて温風が吹き付けられた瞬間に、発明品の起電力は急激に上昇し、約0.2秒後に一定値となり、温風の温度に対応した起電力を示している。さらに、シャッターを閉じた直後から起電力は、上昇する時ほどではないがそれでも急速に低下する。
一方、市販品の起電力も吹き付け直後から上昇し始めるが、その速度は発明品に比べるとはるかに遅く、シャッターを閉じた時にはまだ発明品の半分以下の起電力にしか達していない。シャッターを閉じたあとも起電力は下がっていない。
したがって、発明品の極細熱電対は市販の素線径0.65mmの熱電対と比較して、非常に速い応答性を示し、さらに外界温度の低下にも効果的に応答していることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明による熱電対は、従来では不可能であった高速応答性を備えた測定が可能であり、そのような特徴を持つ熱電対は以下の分野で有用であると考える。電子部品:CPUやその他の集積回路素子等の高度集積化が進むとともに、素子の安定動作確保のため、マイクロプロセッサーやその他の集積回路部品の表面温度測定。マイクロタス分野:微細加工技術を駆使して、チップ上にポンプやバルブ、流路等を作製し、高速で生体分子の解析、微量血液による診断、医薬の効果測定、化学物質の合成・分析、環境モニタリングをオンチップで行うマイクロケミストリー技術が研究されている。このようなものでは対象物が小さくかつ熱容量が小さいので、チップ上での温度測定・制御に使用可能である。一般家庭:電子体温計、調理温度計や調理器具への組み込み。その他プラントでの温度測定および熱に関する研究一般:直接の温度測定および温度シミュレーションの確認。また、示差熱分析、熱重量分析等の各種の熱分析においても、測定精度の向上や測定時間の短縮、使用する試料量を減らす効果などが期待できる。
【符号の説明】
【0023】
(1) 対向接触箇所
(10a)(10b) ア−スケーブル
(11) 基盤
(11a) レール
(15) 流路
(16) 測温接点
(17)(18) 熱電対
(19) 増幅器
(20a)(20b) 素線固定構造
(21a)(21b) 素線固定板
(22a)(22b) 透孔
(23a)(23b) ナット
(24a)(24b) 押さえ板
(2a)(2b)(16a)(16b) 素線
(30) デジタルオシロスコープ
(31) 風
(32) ヒーター
(33) シャッター
(3a)(3b) ハンダ付け
(5Xa)(5Xb) Xステージ
(5Ya)(5Yb) Yステージ
(5Za)(5Zb) Zステージ
(5a)(5b) 左右のステージ
(6) 金属針
(71a)(71b) 取付け軸
(7a)(7b) 作業台
(8) 電力供給ケーブル
(9) ガス流れ
(9h) ガスホース
(H) ホルダ
(P) 柱
(Xa)(Xb) X調整ノブ
(Ya)(Yb) Y調整ノブ
(Za)(Zb) Z調整ノブ
(θ) 突合せ角
【先行技術文献】
【特許文献】
【0024】
【特許文献1】特開2009−25294

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2本の熱電対素線を溶融接合してなる測温接点を有する熱電対であって、測温接点を中心とした2本の素線の突合せ挟角が90°以上であることを特徴とする熱電対。
【請求項2】
請求項1に記載の熱電対において、前記熱電対素線の線径が100μm以下であることを特徴とする熱電対。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の熱電対において、前記測温接点の直径が素線の直径の2倍以下であることを特徴とする熱電対。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の熱電対を製造する方法であって、2本の熱電対素線の先端を突合せ、その突合せ箇所を溶融して測温接点を形成するに当たり、その突合せ角が溶融後に前記挟角と成るように設定してあることを特徴とする熱電対の製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載の熱電対の製造方法において、前記素線の突合せ箇所を高電圧マイクロ放電により溶融するに当たり、その放電を間欠的に行うことを特徴とする熱電対の製造方法。
【請求項6】
熱電対の測温接点で発生した電流値を、その素線を介して計測して、前記測温接点周囲の温度を計測する測温器であって、前記熱電対が請求項1から3のいずれかに記載の熱電対であることを特徴とする測温器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2011−2286(P2011−2286A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−144105(P2009−144105)
【出願日】平成21年6月17日(2009.6.17)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成21年2月18日〜20日 nano tech 実行委員会主催の「nano tech 2009」において文書をもって発表
【出願人】(301023238)独立行政法人物質・材料研究機構 (1,333)
【Fターム(参考)】