説明

熱電対装置

【目的】充分な電気的絶縁性および耐久性を有して信頼性に優れた熱電対装置を提供する。
【構成】金属製の保護外管21と、金属製の保護管23の内部に熱電対素線24と絶縁粉末25を設けてなり、前記保護外管21の内部に挿通されるとともに検出端部が前記保護外管21の開口端から外部に突出したシース型熱電対22と、前記保護外管の内部において前記シース型熱電対22を囲んで設けられた絶縁粉末26とを具備することを特徴とするものである。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は保護外管の内部にシース型熱電対を設けた熱電対装置に関する。
【0002】
【従来の技術】例えば航空機エンジンにおいて排気ガス温度を測定するため用いられる熱電対装置は、厳しい振動や衝撃に耐えることが必要であるために、金属製の保護管の内部に熱電対と絶縁粉末を設けてなるシース型熱電対を、金属製の保護外管の内部に設けた形式のものが用いられることがある。
【0003】従来、この形式の熱電対装置としては図4および図5に示すものがある。図4に示すものは次に述べるように構成されている。すなわち、図中1は金属製の保護外管で、これらは先端部が閉塞されている。2はシース型熱電対で、これは金属製の保護管3の内部に2本の熱電対素線4と絶縁粉末5を設けて一体に加圧成形したものであり、保護管3の先端部(検出端側端部)は先細り部として小径にして形成されている。このシース型熱電対2は保護外管1の内部に挿入されて保護外管1に直接嵌着されている。
【0004】なお、シース型熱電対2の検出端に面する保護外管1の端部には複数の窓6が形成され、ガスがこれらの窓6を通して保護外管1の内部を通ることによりシース型熱電対2の検出端に触れるようになっている。
【0005】図5に示すものは次に述べるように構成されている。すなわち、図中11は金属製の保護外管であり、これは先端部が閉塞されている。12はシース型熱電対であり、これは金属製の保護管13の内部に2本の熱電対素線14と絶縁粉末15を設けて一体に加圧成形したものであり、保護管13の直径が保護外管11の直径に比較して細いものである。シース型熱電対12は保護外管11の内部に挿通して配置され、金属製の支持部材16により支持されている。支持部材16は保護外管11とシース型熱電対12の保護管13にろう付けなどにより支持されている。保護外管11とシース型熱電対12との間は空間部となっている。
【0006】なお、シース型熱電対12の検出端に面する保護外管11の端部には複数の窓17が形成され、ガスがこれらの窓17を通しての保護外管11の内部を通ってシース型熱電対12の検出端部に触れるようになっている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このような従来の熱電対装置には次に述べる問題がある。前者の構成の熱電対装置では、シース型熱電対2の保護管3が保護外管1に直接嵌着しているので、保護外管1とシース型熱電対2の熱電対素線4における保護外管1の外部に対する電気的絶縁は、保護管3に充填された絶縁粉末5による一重によるものであるから、保護管3の先細り部の内部にある熱電対素線4との間の距離により決定され、高い電気的絶縁を確保することができない。
【0008】後者の構成の熱電対装置では、シース型熱電対12と保護外管11との間が空間部となっていて絶縁粉末が存在していないので、保護外管11とシース型熱電対12の熱電対素線における保護外管11の外部に対する電気的絶縁は、前者と同様に高い電気的絶縁を確保することができない。
【0009】また、後者の構成の熱電対装置では、シース型熱電対12の保護管13が支持部材14によって支持されているが、例えばジエットエンジンの排気ガスの温度の測定に用いられる場合、頻繁に変化するジエットエンジンの排気ガスの温度により保護外管11とシース型熱電対12の保護管13は熱膨脹により軸方向の変位を生じる。この場合、加わる温度の時間差、材料の熱膨張率の差により変位にずれを生じるため、支持部材16のろう付け部には繰り返し加重が加わり破損に至ることがある。その結果、シース型熱電対12の支持が不安定となり、振動により短時間で熱電対装置の破損へと発展する。本発明は前記事情に基づいてなされたもので、充分な電気的絶縁性および耐久性を有して信頼性に優れた熱電対装置を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するために本発明の熱電対装置は、金属製の保護外管と、金属製の保護管の内部に熱電対素線と絶縁粉末を設けてなり前記保護外管の内部に挿通されるとともに検出端が前記保護外管の開口端から外部に突出したシース型熱電対と、前記保護外管の内部において前記シース型熱電対を囲んで充填された絶縁粉末とを具備することを特徴とする。
【0011】
【作用】前記の構成によれば、シース型熱電対における保護管の内部に絶縁粉末が設けられ、この保護管と保護外管との間に絶縁粉末が設けられている。このため、シース型熱電対の熱電対素線における保護外管の外部に対する電気的絶縁は、シース型熱電対における熱電対素線と保護管との間に存在する絶縁粉末で施され、さらにこれに加えて保護管と保護外管との間に存在する絶縁粉末で施される。すなわち、シース型熱電対の熱電対素線における保護外管の外部に対する電気的絶縁は絶縁粉末により二重にわたって施される。
【0012】従って、本発明の熱電対装置は従来の熱電対装置のように熱電対素線と保護外管との間の絶縁粉末が一重であるもの、あるいはシース型熱電対と保護外管との間に絶縁粉末が存在しないものに比較して高い電気絶縁性を有している。
【0013】また、シース型熱電対は保護外管の内部に充填された絶縁粉末により支持されているので、保護管が軸方向に伸縮、変位が可能な状態で設けられている。このため、外部からの熱によりシース型熱電対の保護管が膨脹する時に、保護管を支持する部材、すなわち絶縁粉末による支持を損なうことなく膨脹することが可能となる。従って、保護管の膨脹によりシース型熱電対の支持を不安定にすることがなく耐久性に優れている。
【0014】
【実施例】本発明の一実施例について図1ないし図2を参照して説明する。図において21は金属製の保護外管であり、これは両端が開放された円筒体を成している。22はシース型熱電対であり、これは保護外管21の直径に比較して小さい直径と、保護外管21の軸方向長さより長い軸方向長さを有し、且つ一端(先端)を閉じた円筒形をなす金属製の保護管23を備えている。この保護管23の内部には2本の熱電対素線24が軸方向に挿通されており、その一端(検出端)は保護管23の先端において接合され、他端は保護管23に開放された他端開口から外部に延出している。保護管23の内部には耐熱性を有する絶縁粉末25が充填されており、これら保護管23、熱電対素線24および絶縁粉末25は外部から加圧されて一体となっている。
【0015】保護管13は保護外管21の内部にその軸方向に沿って挿通されており、先端は保護外管11の先端開口から外部に延出し、基端は保護外管21の基端開口から外部に延出している。
【0016】あるいはシース型熱電対22としては、保護管13の先端部を開口せずに熱電対素子24のみを外部に突出した構成としたものを使用しても良い。また、保護外管21の内部には耐熱性を有する絶縁粉末26が充填されている。絶縁粉末26は保護外管21の内部でシース型熱電対における保護管23を囲んで充填されており、保護外管21とともに外部から加圧されていて保護管23を支持している。
【0017】なお、保護外管21の基端はフランジ27に取り付けられ、フランジ27には端子箱28が取り付けられている。この端子箱28にはシース型熱電対における2本の熱電対素線24が接続される一対の端子29が設けられている。
【0018】シース型熱電対における2本の熱電対素線24の材料の組み合わせとしては、白金ー白金ロジウム、アルメルークロメルなどが挙げられる。シース型熱電対22における保護管23を形成する金属としては、ステンレス鋼、インコネルなどが挙げられ、保護外管21を形成する金属としては、ステンレス鋼、インコネル、ハステロイなどが挙げられる。
【0019】シース型熱電対22における保護管23の内部に充填する絶縁粉末25としては、マグネシア、アルミナなどが挙げられ、保護外管21の内部に充填する絶縁粉末26としてはマグネシア、アルミナなどが挙げられ、これら保護管23の内部に充填する絶縁粉末25と保護外管21の内部に充填する絶縁粉末26とは自由に組み合わせることができる。そして、熱電対素線24の材料により、最適な絶縁粉末を選択することができる。例えば、熱電対素線24としてアルメルークロメルを使用した場合には、アツミナは高温においておいてアルメルと組み合わせると好ましくないため、絶縁粉末25にはマグネシアを使用し、絶縁粉末26には絶縁性の高いアルミナを使用することなどが検討される。
【0020】また、保護外管21の直径とシース型熱電対における保護管の直径の大きさの関係は、保護管の直径の大きさを1とした場合、保護外管21の直径の大きさは3〜7である。具体的には保護管の直径は1〜3.2mm、保護外管21の直径は4〜10mmである。
【0021】この熱電対装置を製作するためには次に述べる方法が挙げられる。はじめに保護管23の内部に熱電対素線と絶縁粉末を設け、全体を加圧して一体に成形してシース型熱電対22を製作する。製作したシース型熱電対22を保護外管21の内部に挿通して配置するとともに、保護外管21の内部に絶縁粉末26を充填し、保護外管21と絶縁粉末26を加圧して全体を一体に成形する。または、保護管23の内部に熱電対素線24と絶縁粉末25を設け、この保護管23を保護外管21の内部に配置するとともに絶縁粉末26を充填し、最後に保護管23、熱電対素線24、絶縁粉末26、保護外管21および絶縁粉末を加圧して全体を一体に成形する。
【0022】このように構成された熱電対装置では、保護外管21の先端から突出したシース型熱電対22における保護管23の先端にガスが触れることにより温度を計測する、前記の構成によれば、シース型熱電対22を保護外管21の内部に充填した絶縁粉末26で支持するので、例えば航空機エンジンにおいて排気ガス温度を測定するため用いられる熱電対装置は、厳しい振動や衝撃に耐えることができる。シース型熱電対22における保護管23の内部に絶縁粉末25が設けられ、この保護管23と保護外管21との間に絶縁粉末26が設けられている。このため、シース型熱電対22の熱電対素線24における保護外管21の外部に対する電気的絶縁は、シース型熱電対22における熱電対素線24と保護管23との間に存在する絶縁粉末25で施され、さらにこれに加えて保護管23と保護外管21との間に存在する絶縁粉末26で施される。すなわち、シース型熱電対22の熱電対素線24における保護外管21の外部に対する電気的絶縁は絶縁粉末により二重にわたって施される。従って、本発明の熱電対装置は従来の熱電対装置のように熱電対素線24と保護外管21との間の絶縁粉末が一重であるもの、あるいはシース型熱電対22と保護外管21との間に絶縁粉末が存在しないものに比較して高い電気絶縁性を有している。
【0023】また、シース型熱電対22は保護外管21の内部に充填された絶縁粉末26により支持されているので、保護管23が軸方向に伸縮、変位が可能な状態で設けられている。このため、外部からの熱によりシース型熱電対22の保護管23が膨脹する時に、保護管23を支持する部材、すなわち絶縁粉末26による支持を損なうことなく膨脹することが可能となる。このため、保護管23の膨脹によりシース型熱電対22の支持を不安定にすることがなく耐久性が良好である。
【0024】なお、本発明は前述した実施例に限定されずに種々変形して実施することができる。例えば図3に示すように前述した実施例の熱電対装置において、保護外管21の基端の端末に絶縁性を有する材料、ガラスを溶融して形成した端板29を設置することにより熱電対素線24に対する電気的絶縁性を一層高めることができる。
【0025】
【発明の効果】以上説明したように本発明の熱電対装置によれば、シース型熱電対の熱電対素線における保護外管の外部に対する電気的絶縁は、シース型熱電対における熱電対素線と保護管との間に存在する絶縁粉末と、て保護管と保護外管との間に存在する絶縁粉末とにより二重にわたって施されるので大変電気的絶縁性に優れている。
【0026】また、シース型熱電対は保護外管の内部に充填された絶縁粉末により軸方向に伸縮、変位が可能な状態で支持されており、外部からの熱により保護管が膨脹する時に、保護管を支持する部材、すなわち絶縁粉末による支持を損なうことなく膨脹することが可能でシース型熱電対の支持を不安定にすることがないので、大変耐久性に優れている。従って、本発明によれば信頼性に優れた熱電対装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかわる一実施例の熱電対装置を示す外観図。
【図2】同実施例の熱電対装置を示す断面図。
【図3】同実施例の熱電対装置において保護外管の基端末を閉じた例を示す断面図。
【図4】従来の一例の熱電対装置を示す断面図。
【図5】従来の他の例の熱電対装置を示す断面図。
【符号の説明】
21…保護外管、 22…シース型熱電対、23…保護管、 24…熱電対素線、25…絶縁粉末、 26…絶縁粉末。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 金属製の保護外管と、金属製の保護管の内部に熱電対素線と絶縁粉末を設けてなり前記保護外管の内部に挿通されるとともに検出端が前記保護外管の開口端から外部に延出したシース型熱電対と、前記保護外管の内部において前記シース型熱電対を囲んで充填された絶縁粉末とを具備することを特徴とする熱電対装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開平7−174637
【公開日】平成7年(1995)7月14日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平5−322425
【出願日】平成5年(1993)12月21日
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)