説明

熱風の排出手段を含む航空機のナセル

【課題】 本発明の目的は、ナセルの内側と外側とを連絡することのできる排出手段および2つの要素(54、56)が重なり合うレベルで2の前記要素(54、56)間の接続区域を含む航空機のナセルであり、
【解決手段】
2つの要素が、それぞれ接続区域の両側で、ナセルの外面を形成する表面があり、前記排出手段(50)が、2の部分、すなわちナセルの内側と外側とを連絡させるために、両パネル間に通路を配設できる少なくとも1つの突出および/または凹状要素を含む、重なり合わせてあるパネル間に挿入してある第1部分、および過度の温度から保護するために、接続区域のレベルで、内側に配置してある単一のパネルと水平になっている第2部分からなるかいもの(52)を含むことを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナセルの空気取入口の唇部の除霜に特に利用される熱風の排出手段を含む航空機のナセルに関する。
【背景技術】
【0002】
空港に近接しているところの騒音の影響を制限すべく、国際規格は、騒音の発生についてますます制約が厳しくなっている。
【0003】
とりわけヘルムホルツ共鳴の原理を利用することによって、騒音のエネルギーの一部を吸収することを狙いとする被覆材をナセルの導管の壁面のレベルに特に配置することによって、航空機が発生する騒音を減らすための技術開発が行われた。既知の方法で、その被覆材は、効果的であるために、外側から内側に向かって、耐久性消音用多孔質層、蜂窩状構造体および音波に不透過性の反射層を含んでいる。
【0004】
今のところ、種々の制約、例えばその形成、あるいは他の装置との相容性のために、処理される面積は限られている。したがって、この区域に必要な被覆材は、氷および/または霜の形成および/または蓄積を避けることのできる諸方式と両立するのは困難である。
【0005】
その方式は、2の大きな系統に分かれていて、前者は、氷および/または霜の形成を制限する防霜方式と呼ばれており、後者は、氷および/または霜の蓄積を制限し、形成した氷および/または霜の形成後に作用する方式であり、除霜方式と呼ばれている。今後の記述では、霜処理方式または方法とは、防霜方式または方法、あるいは除霜方式または方法を指すものとする。
【0006】
本発明は、もっと特に、エンジンのレベルで取り込んだ熱風を翼前縁の内壁のレベルに送り出すことからなる霜処理方式に関する。
【0007】
図1に示した実施態様では、ナセル10は、少なくとも1つの導管12、周縁壁面14および前方に、導管12と周縁壁面14とを連結している唇部16で画定されている空気取入口を含んでいる。
【0008】
導管12は、既知の方法で、内側から外側に向かって、反射層、少なくとも1つの蜂窩状構造体および少なくとも1つの耐久性消音構造体を含む消音処理用被覆材18が備わっている。
【0009】
ナセルの構造を強化するために、前枠20が導管12と周縁壁面14とを連結しており、唇部16は、前記前枠20に固定されている。
【0010】
唇部16を形成するパネルと周縁壁14を形成するパネルとの連結を確立するための一実施態様では、2の前記パネルの縁部は、重ね合わせてあり、ぴったり付けられて、次いで適切ななんらかの方法で前枠20の縁部22に固定されている。
【0011】
唇部を形成するパネルと導管12を画定する1つのパネルとの間の連結を確立するために、前記パネルの縁部は重なり合って、適切ななんらかの方法で相互にぴったり付けられた状態で保持される。図1に示したように、前枠20は、縁部24を含んでおり、唇部のパネルの内面が適切ななんらかの方法でぴったり付けられて、固定されている。
【0012】
パネルの重なり合い区域に当る接続区域は、消音面では、処理されていない表面を形成する。
【0013】
有利なことに、消音処理用被覆材26は、唇部の表面を少なくとも部分的に被覆している。
【0014】
補足として、唇部のレベルに、動力機構に由来する熱風である熱風を噴射するための手段が予定されている。熱風を前記壁面に維持するために、唇部の壁面の内面のレベルに手段、例えば導管が予定されている。FR-070055586号特許出願に記載されているように、この導管は、消音処理のために、蜂窩状構造体と被覆材26の耐久性消音用構造体との間に介在している。
【0015】
図1に示したように、熱風の排出手段が、導管12で、ナセルの構造体の外に排出されるために予定されている。
【0016】
一実施態様では、排出手段は、唇部の壁面のレベルに配設してある穿孔または微細穿孔28の形状を呈している。
【0017】
この実施態様の第1の欠点は、消音面で無処理の排出手段が占めている区域の表面が、同じく無処理の接続区域の表面に加わって、消音処理の最適化ができないことにある。
【0018】
別の欠点として、唇部の金属性薄板の微細穿孔が熱風の孔内流通に耐え難いので、微細亀裂現象が発生し易く、空気の取入口の寿命が著しく短縮される。
【0019】
なお、別の欠点として、消音処理用被覆材の外皮が高熱に弱い合成材料製であるので、排出手段は、合成材料の焼け焦げの危険を抑えるために、消音面で処理してある区域に関して、適切な方法で位置付けされなければならない。
【0020】
US−5088.277号文書に、排出手段の別の実施態様が記載されている。この文書によれば、前枠は、その中央部に、唇部を形成する壁面がぴったり付く支承面を含んでいる。排出手段を形成すべく、唇部を形成する壁面は、前枠との接続区域のレベルにふくらみ部を含んでいる。したがって、排出手段のレベルで、唇部を形成する壁面は、熱風を通らせるために前枠から引き離されて、導管の表面に平行に排出される熱風を通過させる。この実施態様では、導管を形成する壁面の外面は、前枠の支承の延長部に来るので、ふくらみ部の外側の区域でも、導管の表面と唇部の表面との間にずれが存在する。
【0021】
この実施態様は、次の理由により、満足すべきではない。すなわち、この排出手段は、ナセルの導管内を流動する空気の流束に、大きな航空力学的擾乱を発生させる。事実、ふくらみ部は、導管と唇部に対して突出した形状を呈し、前方に配置してある動力機構または送風器にとって許容できない航空力学的擾乱を生ずることがあり得る。
【0022】
ふくらみ部によってナセルの導管の中を流動する空気の流束が常時擾乱されるので、除霜装置の機能が規則正しいだけに、この擾乱は迷惑である。
【0023】
別の欠点として、導管の表面と唇部の表面との間のずれは、表面の欠陥になって、同じく航空力学的擾乱を発生させる。
【0024】
なお、熱風の流束が導管の表面に平行して排出されているので、前記流束は、導管の表面の消音処理に使用されている合成材料を焦がす恐れがある。したがって、US−5088.277号文書に示されているように、消音処理用被覆材は、排出手段から引き離されているので、消音用に処理される表面を減少させる傾向がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0025】
【特許文献1】FR-070055586号特許出願
【特許文献2】US−5088.277号文書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
したがって、本発明は、大きな航空力学的擾乱を発生させることなく、消音処理表面を増加させるとともに、消音処理を最適にすることを可能にする、除霜に使用する熱風の排出システムを内蔵するナセルを提案することによって、従来の技術の欠点の排除を狙いとしている。
【課題を解決するための手段】
【0027】
そのために、本発明は、ナセルの内側と外側を連結させることを可能にする排出手段および2つの要素が重なり合うレベルで、2つの要素間に連絡区域を含んでおり、2つの要素は、連絡区域の両側に、ナセルの外面を形成する表面を有し、前記排出手段が、2の部分からなるかいものを含んでおり、その第1部分は、ナセルの内側と外側を連結させるための少なくとも1つの突出および/または凹形要素、ならびにそれは前記パネルを過剰な温度から保護するために、連結区域のレベルで内側に配置してある一方だけのパネルと水平の第2部分を含むことを特徴とする、航空機のナセルを目的としている。
【0028】
したがって、熱風の排出システムは、熱すぎる空気と被覆材との接触危険を制限することによって、消音処理に使用される被覆材を保護することができる。
【0029】
好ましいことに、排出手段は、熱風を、導管内を流動する航空力学的流束と混合させて、熱風を冷却するために、ナセルの外側の表面に平行でない方向に前記熱風を排出する適切な形状を有する。熱風の排出角度は、前記熱風の冷却と、導管内で流動する航空力学的流れに対して前記熱風の流束で生ずる航空力学的擾乱との折り合いが得られるように決定される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
その他の特性と利点は、添付図に照らして、例としてのみ示した記述である本発明の以後の記述で明らかになるだろう。すなわち、
【図1】従来の技術によるナセルの前部の断面図である。
【図2】本発明による熱風の排出手段の詳細を示す断面図である。
【図3】従来の技術および本発明による前枠の位置、ならびに除霜および消音面で処理された区域の境を示すナセルの前部の断面図である。
【図4】別の変形態様によるかいものの斜視図である。
【図5】唇部を形成するパネル上に取り付けた、図5のかいものの斜視図である。
【図6】排出システムの排気口を示す、図5のかいものを示す斜視図である。
【図7】別の変形態様によるかいものの斜視図である。
【図8】唇部を形成するパネルに取り付けた、図7のかいものを示す斜視図である。
【図9】別の変形態様によるかいものの斜視図である。
【図10】別の変形態様によるかいものの斜視図である。
【図11】図10のかいものの側面図である。
【図12】かいもの無しの本発明による排出システムの諸種変形態様を示す断面図である。
【図13】かいもの無しの本発明による排出システムの諸種変形態様を示す断面図である。
【図14】かいもの無しの本発明による排出システムの諸種変形態様を示す断面図である。
【図15】一方では、唇部を形成するパネルとかいものとの間、他方では、前記かいものと導管を形成するパネルとの間の連続的2の接続部を有する本発明による変形態様を示す断面図である。
【図16】接続区域のレベルにおける2つのパネル間に介在する座金付きの本発明による排出システムの変形態様を示す断面図である。
【図17】接続区域のレベルにおける2つのパネル間に介在する座金付きの本発明による排出システムの変形態様を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図2と図3に、導管32、周縁壁面34、ならびに前記導管32と前記周縁壁面34を連結し、空気取入口を画定する唇部36を含むナセルを30で示した。ナセルのその他の要素は、当業者に知られているので、記述しないことにする。
【0032】
一般に、導管(または唇部)の壁面は、複数のパネル、複数のプレート、複数の表皮または類似のものの集合からなる。引き続く記述では、壁面のこのすべての形状のものは、パネルという用語で示すことにする。
【0033】
ナセル30の構造体は、周縁壁面34と導管32とを連結し、唇部36を支承する前枠38を含んでいる。前枠は、同じく当業者に知られているので、これ以上詳述しないことにする。
【0034】
前枠38は、周縁壁面34と唇部36の接続部のレベルに配置してある第1縁部および導管32と唇部36の接続部のレベルに配置してある第2縁部を含んでいる。
【0035】
第1の縁部のレベルで、前枠38は、支承面40を含んでいて、そのレベルで、周縁壁面34および/または唇部36が固定してある。
【0036】
一実施態様によれば、抗力の影響を減らすために、周縁壁面および唇部のパネルは、重ね合わせないで、縁と縁を繋ぎ合わせて、両方とも支承面40に固定してある。
【0037】
第2の縁部のレベルで、前枠38は、導管32および/または唇部36が固定してあるレベルで支承面42を含んでいる。
【0038】
一実施態様では、唇部36の壁面は、支承面42に固定され、向かい合わせの導管と唇部の端部は重なり合って、なんらかの適切な方法で固定してある。抗力に対する影響を減らすため、導管のパネル(または唇部のパネル)は、屈曲部を含んでおり、その高さは、重なり合わせ区域の両側で、2つのパネルの航空力学的表面が同一平面に配置されるように、唇部のパネル(または導管のパネル)の厚みに合わせてある。
【0039】
一般的に、2つの要素、とりわけ2つのパネルまたは2つのパネルの部分が重なり合うレベルでの区域を接続区域と呼ぶ。本発明は、接続区域の両側でナセルの外面を形成する、それぞれが表面を有する2つの要素間の接続区域を特に取り扱っている。
【0040】
引き続く記述では、ナセルの内部とは、周縁壁面、唇部および航空機の外部を流動する航空力学的流束と接触していない導管で画定されているナセルの区域を指しており、ナセルの外部は、航空力学的流束、すなわち周縁壁面の外面またはターボエンジンが必要とする空気が流動する導管の内部の外面と接触しているレベルでの補足的区域に当たる。
【0041】
騒音を減らすべく、導管32は、内側から外側に向かって、反射層、少なくとも1つの蜂窩状構造体および少なくとも1つの耐久性消音用構造体を含む、消音処理用被覆材44を含んでいる。消音処理用被覆材は、同じく当業者に知られているので、これ以上詳述しないことにする。航空力学的表面を形成する消音処理用構造体は、通常、合成材料製である。
【0042】
消音処理を改善するには、唇部は、消音性被覆材46を含むこともできる。
【0043】
一方では、前枠と唇部との間、および他方では、唇部と導管との間の接続区域は、前記両要素の重なり合いの故に、消音面では、処理されていない。
【0044】
ナセルは、唇部36のレベルで、霜処理システムも含んでいる。
【0045】
本発明は、とりわけ熱風による霜の処理システムが組み込まれているナセルに関する。この場合、熱風が、唇部の内面に接触して、霜の形成または蓄積を阻止すべく、唇部の内面に吹き込まれるための手段が予定されている。
【0046】
一実施態様では、熱風は、動力機構のレベルで採取され、熱風を前枠と唇部で画定されている空間に送るための管路が予定されている。この諸要素は、当業者に知られているので、これ以上記述しないことにする。
【0047】
有利なことに,霜処理の効果を強化するために、唇部の内面に近接して、熱風を導管で送るための手段が予定されている。FR−070055586号特許出願に記述されている実施態様では、導管48が、消音処理のための被覆材の耐久性消音構造体と蜂窩状構造体との間に介在している。
【0048】
ナセルは、霜の処理に使用された熱風を前記ナセルの外部に排出することを可能にする手段50を含んでいる。
【0049】
本発明では、この熱風排出手段50は、接続区域のレベルに予定されており、接続区域を形成する2つの要素間に介在する。本発明では、熱風排出手段50は、ナセルの内側と外側とを連結して、ナセルの内側から外側に熱風の流動を許すために、前記両要素間に通路を配設できる接続区域の2つの要素間に配置してある、少なくとも1つの突出および/または凹状形態を含んでいる。
【0050】
排出手段を接続区域と水平に予定することにより、無処理表面を減らし、排出手段が占める面積は、接続区域の表面に加算されないので、消音処理を最適にすることを可能にする。
【0051】
本発明では、接続区域のレベルで外側に配置してある要素は、接続区域のレベルで変形されていず、航空力学的擾乱を発生させる可能性のあるふくらみ部を全く含まない。場合によって、接続区域のレベルで、前記2つの要素の接触面のレベルに1または複数の溝部を形成するために、2の内の少なくとも1つの要素の厚みが減らされ、あるいは接続区域のレベルで内側に配置してある要素が、接触面のレベルで、突出状の形状体または少なくとも1つの取り付け要素と接続できるように内側に変形されている。
【0052】
本発明の重要な特性によれば、排出手段は、導管内を流動する航空力学的流束と熱風とを混合させて、熱風を冷ますために、ナセルの外面に平行でない方向に熱風を排出できる適切な形状を有する。
【0053】
有利なことに、排出される熱風の流束の方向が外面と5度ないし60度の変異のある角度を形成している。熱風を冷却させ、導管内を流動する航空力学的流束の擾乱との間に良好な折り合いが得られるために、角度が5度ないし30度であることが好ましい。
【0054】
本発明の重要な点として、接続区域のレベルで内側に配置してある要素は、前記要素の外面がもうひとつの要素の内面にぴったり付けられているレベルにおける区域と、前記要素の外面がナセルの外面と形成している区域との間に傾斜面を含んでおり、前記傾斜面は、熱風の流束を、ナセルの外面に平行でない方向に方向付けることを可能にしている。
【0055】
一実施態様では、排出手段は、ナセルの導管の全円周または円周の1つまたは複数の部分に予定してある。
【0056】
よりよい一実施態様では、熱風の排出角度は、円周に沿って一様でないことができる。したがって、導管の円周における排出手段の位置に応じて、排出角度を最適化することができる。
【0057】
一実施態様では、排出手段は、接続区域の2つの要素間に配置した、少なくとも1つの突出および/または凹状要素と共に少なくとも1つのかいもの52を含んでいる。
【0058】
好ましい実施態様では、かいもの52は、唇部36のパネル54と導管32つのパネル56との間に挿入してある部分を含んでおり、前枠38の支承面42は、図2に詳細に示してあるように、前記2つのパネル54と56の重なり合い区域と水平に配置してある。
【0059】
前枠38、唇部36、導管32および排出手段50が重なり合っているので、この配置構成は、消音処理を向上させ、無処理表面を更に減らす。
【0060】
この配置構成は、前枠38に対して排出手段50が前方に(航空力学的流れの流動方向による)ずれているように予定されていないので、霜処理をさらに最適化できる。
【0061】
別の利点として、排出手段には穿孔または微細穿孔がもはや含まれていないので、空気圧による破断の危険の可能性が無くなって、そのおかげで、排出手段の寿命が著しく伸びる。
【0062】
この配置構成の利点として、空気がこの排出システムから排出されるように仕向けられるので、唇部の霜の処理が著しく向上する。
【0063】
図3に示したように、この配置構成は、場合によって前枠をずらせることができるので、前枠を傾斜させることができ、したがって、唇部に、より大きい衝撃強さを付与できる。
【0064】
有利なことに、排出手段50は、重ね合わせたパネル間に挿入してある第1部分58および単一のパネルである、導管32つのパネルに当たる、接続区域のレベルで内側に配置してあるパネルと水平の第2部分60を有するかいもの52を含んでいる。この配置構成は、通常、少なくとも部分的に合成材料製である、導管32を形成するパネルを保護することを可能にする。
【0065】
図10と図11に示した第1つの変形態様では、排出手段50は、2つのパネル54と56間に挿入してあるかいもの52および前記かいものの少なくとも1つの面のレベルに予定してあるこま62を含んでおり、前記こまは、内側から外側への熱風の通過を許す突出要素を形成する。有利なことに、この実施態様では、かいもの52は、2つのパネル54と56の間に介在しているこま62が取り付けてあるレベルに第1部分58を含んでおり、および導管32つのパネルだけと接触している第2部分60を含んでいる。霜の処理が長く続けられ、通常、少なくとも部分的に使用されている、熱に弱い合成材料で製作されている、内部導管のパネル56を保護するために、熱風が前記パネル54だけと接触できるように、こま62は、唇部のパネル54と向かい合わせのかいもの52の面に配置してある。
【0066】
有利なことに、第2部分60の自由端部64は、前記第2部分60の自由端部が唇部と導管を形成する両パネルの航空力学的表面のレベルに配置されるように、第1部分58に対して傾斜している。好ましいことに、自由端部64は、表面が、唇部と導管32を形成する両パネルの航空力学的表面のレベルに配置してある側面66ができるように、斜角の形状を含んでいる。
【0067】
傾斜している第2部分60は、熱風が、導管内を流動している航空力学的流束と混合して、冷却するように入射角をなすよう、熱風をナセルの外部に排出することを可能にしている。
【0068】
熱風の流通を保証するために、第1部分58は、両パネル54と56の重なり合い区域の全長Lに伸びている。
【0069】
図4から図9までに示してある別の変形態様では、排出手段50は、ナセルの内側から外側に熱風の流動を可能にするかいもの52の少なくとも1つの面に、少なくとも1つの溝部68を有する、かいものと呼ばれているプレート52を含んでいる。
【0070】
図7から図9までに示してある一実施態様では、プレート52は、両パネル54と56の重なり合い区域の少なくとも全長に伸びている、両パネル54と56の間に挿入してある第1部分70、ならびに第2部分72の自由端部74が、唇部と導管32を形成する両パネル54と56の航空力学的表面のレベルに配置してあるように、第1部分70に対して傾斜している第2部分72を含んでいる。
【0071】
好ましいことに、自由端部74は、表面が、唇部と導管32を形成する両パネルの航空力学的表面のレベルに配置してある側面76ができるように、斜面の形状を含んでいる。
【0072】
好ましいことに、唇部36のパネル54は、表面がプレート52の第2部分72の表面に平行している側面ができるように、斜角の形状を有する端部78を含んでいる。
【0073】
かいもの52は、唇部36のパネル54と向かい合わせの面のレベルのみに溝部68を含んでいる。したがって、熱風は、かいもの52および唇部36のパネル54との間に誘導されて、それによって熱に弱い合成材料製で少なくとも部分的に製造されている導管32つのパネル56を保護できる。
【0074】
溝部68は、図7と図9に示したように、幅が広くも狭くもあり得る。
【0075】
溝部68は、プレート52の厚さよりも少ない深さを有し、第1の側面80から第2の側面76まで伸びている。
【0076】
したがって、溝部68は、一方では、孔部82を経由してナセルの内側に通じる側面80のレベル、そして他方では、ナセルの外側に通じる孔部84を経由して側面76に口を開けている。
【0077】
第2部分が傾斜しているので、溝部68の底部もまた前記第2部分のレベルで傾斜しており、それによって熱風は、入射角があって、導管内を流動する航空力学的流束と混合し、冷却されて、ナセルの外側に排出されることができる。
【0078】
図4から図6までに示した別の実施態様では、プレートすなわちかいもの52は、両パネル54と56の重なり合い区域の少なくとも全長に伸びている、前記2つのパネル54と56間に挿入してある薄い板の形状での第1部分88、ならびに表面が唇部と内側の導管を形成する両パネルの航空力学的表面のレベルに配置してある側面92および導管32つのパネル56がぴったり付いている傾斜面94で斜角の形状の第2部分90を画定している、唇部のパネル54の厚さとほぼ同一の肩部86を含んでいる。
【0079】
かいもの52は、唇部36のパネル54と向かい合わせの面のレベルだけに溝部96を含んでいる。したがって、熱風は、かいもの52と、唇部36のパネル54との間に誘導されて、通常、少なくとも部分的に熱に弱い合成材料製である導管32つのパネル56を保護することができる。
【0080】
溝部96は、幅が広くも狭くもあり得る。
【0081】
溝部96は、プレート52の厚さよりも浅い深さのものであり、第1側面98から第2側面92まで伸びている。
【0082】
したがって、溝部96は、一方では、ナセルの内側に通じている孔部100を経由して側面98のレベルに口が開いており、他方では、ナセルの外側に通じている孔部102を経由して側面92のレベルに口が開いている。
【0083】
前記と同じく、第2部分が傾斜しているので、溝部68の底部が、前記第2部分のレベルで同じく傾斜しており、熱風は、入射角があって、導管内を流動する航空力学的流れと混合して、冷却し、ナセルの外側に排出されることができる。
【0084】
各種変形態様では、プレートすなわちかいもの52は、適切ななんらかの方法で定位置に保持されている。一実施態様では、複数の孔部104が、ねじまたはリベットを通すために予定されることができる。
【0085】
図12と図13では、排出手段50は、唇部36を形成するパネル54に直接製作された突出および/または凹状形態106を含んでいる。一実施態様では、パネル54の内面は、第1端部でナセルの内側に通じており、第2端部でナセルの外側に通じている全接続区域に伸びている溝部106を含んでいる。
【0086】
図13に示した一実施態様では、パネル56は、接続区域のレベルで、前枠38と、唇部を形成するパネル54との間に延長されている。
【0087】
図12に示した別の実施態様では、唇部を形成するパネル54、導管を形成するパネル56および前枠38を連結するための中間部材108が予定してある。この中間部材108は、2の枝部、すなわち唇部36を形成するパネル54の内面にぴったり付いている第1枝部110および導管32を形成するパネル56の外面にぴったり付いている第2枝部112を含んでいる。この変形態様では、排出手段50は、パネル56と中間部材108との間に配置してある。場合に応じて、突出および/または凹状形態は、パネル54の内面と接触している中間部材108の枝部110の表面のレベルで製作でき、および/または前記形態は、中間部材108の枝部110と接触しているパネル54の内面のレベルに製作できる。
【0088】
図104に示した別の変形態様では、前枠38は、唇部36を形成するパネル54と、導管32を形成するパネル56との間に延長されている。一実施態様では、排出手段50は、パネル54と接触している前枠38のレベルに直接製作してある突出および/または凹状形態114を含んでおり、突出および/または凹状形態は、ナセルの内側、とりわけ前枠と唇部で画定している区域とナセルの外側とを連絡させるため、十分な長さに亘って伸びている。
【0089】
図15に、薄板またはプレート116が、唇部36を形成するパネル54と導管32を形成するパネル56との間の接続を確立する別の変形態様を示した。したがって、この実施態様は、パネル54とプレート116との間の第1接続区域およびプレート116とパネル56との間の第2接続区域を含んでいる。一実施態様では、排出手段50は、パネル54とプレート116との間に介在する突出および/または凹状形態118を含んでいる。場合によって、突出および/または凹状形態は、パネル54と接触しているプレート116の表面のレベル、またはプレート116と接触しているパネル54の内面のレベルに配設してある。
【0090】
図16と図17に示した別の諸実施態様では、排出手段50は、接続区域の諸要素間に配置してある、とりわけ座金の形状の複数の要素120を含んでいる。
【0091】
したがって、図16に示したように、座金120は、中間部材108の枝部110と、唇部36のパネル54との間に介在している。
【0092】
図17に示したように、座金120は、唇部36を形成するパネル54と前枠38との間、および導管32を形成するパネル56と唇部36を形成するパネル54との間に介在している。
【0093】
もちろん、本発明は、諸図に示した諸実施態様に限定されているのではなく、排出手段の突出および/または凹状形態は、接続区域および/または接続区域を形成する2の部材間に配置してある、かいものと呼ばれている中間部材上に直接予定してある。
【符号の説明】
【0094】
10.ナセル
12.導管
14.周縁壁面
16.唇部
18.被覆材
20.前枠
22.縁部
30.ナセル
32.導管
34.周縁壁面
36.唇部
38.前枠
40.支承面
42.支承面
44.消音処理用被覆材
46.消音性被覆材
48.導管
50.熱風排出手段
52.かいもの
54.第1パネル
56.第2パネル
58.第1部分
60.第2部分
62.こま
64.自由端部
66.側面
68.溝部
70.第1部分
72.第2部分
74.自由端部
76.第2側面
78.端部
80.第1側面
82.孔部
84.孔部
86.肩部
88.第1部分
90.第2部分
92.第2側面
94.傾斜面
96.溝部
98.第1側面
100.孔部
102.孔部
104.孔部
106.溝部
108.中間部材
110.第1枝部
112.第2枝部
114.突出および/または凹状形態
116.プレート
118.突出および/または凹状形態
120.座金
L.重なり合い区域の全長

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナセルの内側と外側とを連絡できる排出手段(50)および2つの要素(54、56)が重なり合っている区域のレベルで、2の前記要素間の接続区域を含んでおり、2の前記要素が、接続区域の両側でナセルの外面を形成する表面をそれぞれ有する航空機のナセルであって、前記排出手段(50)が、2の部分からなるかいもの(52)、すなわちナセルの内側と外側とを連絡させるための2つのパネル間に通路を配設できる突出および/または凹状の少なくとも1つの要素を含む、重なり合っているパネル間に挿入してある第1部分(58、70、88)および過度の温度から保護するために、接続区域のレベルの内側に配置してある単一パネルと水平にある第2部分(60、72、90)を含むことを特徴とする航空機のナセル。
【請求項2】
排出された熱風の方向が、前記熱風の冷却と、導管内を流動する航空力学的流束の擾乱との間の良好な折り合いが得られるために最適化する、外面に対して5度ないし30度の違いのあり得る角度をなすことを特徴とする、請求項1による航空機のナセル。
【請求項3】
接続区域のレベルで内側に配置してある要素が、前記要素の外面がもう一方の要素の内面にぴったり付けられているレベルの区域と、前記要素の外面がナセルの外面を形成するレベルの区域との間に傾斜面をなしており、前記傾斜面が熱風の流束をナセルの外面に平行でない方向に方向付けられることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の航空機のナセル。
【請求項4】
側面(66、76、92)の表面がパネル(54、56)の航空力学的表面のレベルに配置してあるように、前記第2部分(66、72、90)が、斜角の形状を含むことを特徴とする、請求項1ないし請求項3のいずれか一項による航空機のナセル。
【請求項5】
排出手段(50)が、かいものの少なくとも1つの面のレベルに予定してあるこま(62)の付いている前記かいもの(52)を含んでおり、前記こま(62)が、内側から外側への空気の流通を許す突出状要素を形成することを特徴とする、請求項1ないし請求項4のいずれか一項による航空機のナセル。
【請求項6】
前記排出手段(50)が、ナセルの内側から外側へ空気の流動を可能にする少なくとも1つの面に、少なくとも1つの溝部(68、96)のついているかいもの(52)を含むことを特徴とする、請求項1ないし請求項4のいずれか一項による航空機のナセル。
【請求項7】
前記溝部(68、96)が、一方では、ナセルの内側と連絡している孔部(82、100)を経由して第1側面(80、98)のレベルで口が開いており、他方では、ナセルの外側と連絡している孔部(84、102)を経由して第2側面(76、92)のレベルで口が開いていることを特徴とする、請求項6による航空機のナセル。
【請求項8】
かいもの(52)が、2つのパネル(54,56)の重なり合い区域の少なくとも全長に伸びている、前記両パネル(54,56)間に挿入してある薄いプレートの形状の第1部分(88)、および表面が、前記両パネル(54、56)の航空力学的表面および第2パネル(56)がぴったり付いている傾斜面(94)のレベルに配置してある側面(92)を有する、斜角の形状の第2部分(90)を画定する、第1パネル(54)の厚さとほぼ同じ高さの肩部(86)を含んでいて、前記かいもの(52)が、第1パネル(54)と向かい合わせのレベルだけに溝部(96)を含んでいることを特徴とする、請求項6または請求項7による航空機のナセル。
【請求項9】
内部導管(32)、外面(34)、空気の取入口を画定する外面(34)と内部導管(32)とを前方で連結している唇部(36)、前記外面(34)と前記内部導管(32)とを連結しており、前記唇部(36)を支承している前枠(38)、前記唇部(36)内に吹き込まれる熱風を利用する除霜システムおよび内部導管(32)を形成するパネル(56)と唇部(36)を形成するパネル(54)との間に挿入してある、請求項1〜8のいずれか一項による熱風排出手段(50)を含んでいる航空機のナセル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公表番号】特表2011−505289(P2011−505289A)
【公表日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−535438(P2010−535438)
【出願日】平成20年12月1日(2008.12.1)
【国際出願番号】PCT/FR2008/052164
【国際公開番号】WO2009/077688
【国際公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【出願人】(509323440)エアバス オペレイションズ エスエーエス (13)