説明

燃料ポンプ装置

【課題】燃料ポンプの取付構造が簡単で部品点数を減少させることができるとともに、燃料ポンプの組付け取付作業を容易に行うことができる燃料ポンプ装置を提供する。
【解決手段】シリンダヘッド11に固定されたシリンダヘッドカバー14にシール材15を介して燃料ポンプ13を支持する。燃料ポンプ13には、バネ21の付勢力によりカム17に係合するプランジャ20を設ける。カム17の回転に伴うプランジャ20の往復動により、燃料ポンプ13から燃料を圧送するように構成する。燃料ポンプ13のケース13aとシリンダヘッドカバー14との間には、バネ21の付勢力を利用して燃料ポンプ13を支持位置に係止保持するための係止機構22を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、エンジンにおけるカムシャフトの回転力を利用して燃料を加圧するとともに、加圧した燃料をエンジンの燃料蓄圧系に供給する燃料ポンプ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の燃料ポンプ装置としては、例えば特許文献1や特許文献2のような構成が提案されている。この従来構成においては、エンジンのシリンダヘッド上に固定されたシリンダヘッドカバーに、燃料ポンプが複数のボルトにより固定されている。そして、燃料ポンプに設けられたプランジャがバネの付勢力により、シリンダヘッド内に設けられたカムシャフト上のカムに対して圧接され、カムの回転に伴うプランジャの往復動により、燃料ポンプから燃料がエンジンの燃料畜圧系に圧送されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−121576号
【特許文献2】特開2010-138729号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以上のように、前記従来の燃料ポンプ装置においては、燃料ポンプが複数のボルトによってシリンダヘッドカバーに固定されている。このため、支持部材に対する燃料ポンプの取付構造が複雑で部品点数が多くなるとともに、燃料ポンプの組付け作業が煩雑になるという問題があった。
【0005】
この発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的は、燃料ポンプの取付構造が簡単で部品点数を減少させることができるとともに、燃料ポンプの組付け取付作業を容易に行うことができる燃料ポンプ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、この発明は、シリンダヘッドに固定された支持部材にシール材を介して燃料ポンプを支持し、その燃料ポンプには、バネの付勢力によりカムに係合するプランジャを設け、カムの回転に伴うプランジャの往復動により燃料を圧送するようにした燃料ポンプ装置において、前記燃料ポンプのケースと支持部材との間には、前記バネの付勢力を利用して燃料ポンプを支持位置に係止保持するための係止手段を設けたことを特徴としている。
【0007】
従って、この発明の燃料ポンプ装置においては、燃料ポンプが支持部材上に支持された状態で、燃料ポンプに設けられたプランジャがバネの付勢力によりシリンダヘッド内のカムに圧接される。それとともに、係止手段により前記バネの付勢力を利用して、燃料ポンプが支持部材上の支持位置に係止保持される。よって、従来構成とは異なり、燃料ポンプを支持部材上の支持位置に固定するための複数のボルト等を必要とせず、支持部材に対する燃料ポンプの取付構造が簡単であるとともに、部品点数を減少させることができる。また、ボルト締め等の面倒な作業を行う必要がないので、支持部材に対する燃料ポンプの組付け作業を容易に行うことができる。
【0008】
前記の構成において、前記支持部材は、シリンダヘッドカバーによって構成するとよい。
前記の構成において、前記支持部材は、シリンダヘッドに固定した支持金具によって構成するとよい。
【0009】
前記の構成において、前記係止手段は、燃料ポンプのケースと支持部材とのいずれか一方に形成された係止凸部と、その係止凸部と係合可能に対応するように他方に形成された係止凹部と、前記係止凸部を係止凹部と係合する位置に案内させるように係止凹部に連続して形成された案内路とによって構成するとよい。
【発明の効果】
【0010】
以上のように、この発明によれば、燃料ポンプの取付構造が簡単で部品点数を減少させることができるとともに、燃料ポンプの組付け作業を容易に行うことができるという効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】第1実施形態の燃料ポンプ装置を示す要部断面図。
【図2】図1の2−2線におけるシリンダヘッドカバーの支持筒部の部分拡大断面図。
【図3】図2の3−3線における断面図。
【図4】図3と対応する位置における燃料ポンプのケースの断面図。
【図5】第2実施形態の燃料ポンプにおけるシリンダヘッドカバーの支持筒部の部分断面図。
【図6】図5の6−6線における断面図。
【図7】図5のシリンダヘッドカバーの支持筒部に支持される燃料ポンプのケースを示す部分正面図。
【図8】図7の8−8線における断面図。
【図9】第3実施形態の燃料ポンプ装置を示す要部断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1実施形態)
以下に、この発明を具体化した燃料ポンプ装置の第1実施形態を、図1〜図4に従って説明する。
【0013】
図1に示すように、この実施形態の燃料ポンプ装置においては、エンジンのシリンダヘッド11上にシリンダヘッドカバー14が固定されている。このシリンダヘッドカバー14は、鉄やアルミニウム合金等の金属材料により形成され、燃料ポンプ13を支持するための支持部材を構成している。シリンダヘッドカバー14の頂壁内側には、支持筒部14aが突出形成されている。そして、燃料ポンプ13における円筒状のケース13aの下端部がシリンダヘッドカバー14の支持筒部14aに挿通されることにより、燃料ポンプ13がシリンダヘッドカバー14上に支持されている。前記ケース13aの外周面には支持筒部14aの内面の開口側端部に接合する環状のシール材15が設けられている。
【0014】
前記シリンダヘッド11内にはカムシャフト16が回転可能に支持され、そのカムシャフト16の外周にはカム17が固定されている。燃料ポンプ13のケース13aのカム17側の位置にはホルダ18が図1の上下方向に移動可能に設けられ、そのホルダ18にはカム17に係合するカムフォロワとしてのローラ19が回転可能に支持されている。燃料ポンプ13のケース13a内には、ホルダ18及びローラ19を介してカム17に係合するプランジャ20が軸線方向に移動可能に配設されている。プランジャ20とケース13aとの間には、プランジャ20をカム17側に向かって付勢して、ローラ19をカム17に圧接させるバネ21が介装されている。そして、カム17が回転されると、ローラ19及びホルダ18を介してプランジャ20が往復動され、燃料ポンプ13で燃料が加圧されてエンジンの蓄圧系に供給される。
【0015】
図2〜図4に示すように、前記燃料ポンプ13のケース13aとシリンダヘッドカバー14の支持筒部14aとの間には、前記バネ21の付勢力を利用して燃料ポンプ13をシリンダヘッドカバー14上の支持位置に係止保持するための係止手段としての係止機構22が設けられている。この係止機構22は、燃料ポンプ13のケース13aの下端外周面に180度隔てて形成された一対の係止凸部23と、その係止凸部23と係合可能に対応するようにシリンダヘッドカバー14の支持筒部14aの内周面に形成された一対の係止凹部24と、係止凸部23を係止凹部24と係合する位置に案内するように係止凹部24に連続して支持筒部14aの内周面に形成された一対の溝状の案内路25とによって構成されている。各案内路25には、支持筒部14aの内周面の上下両端部間に形成され、プランジャ20の軸線方向に延びる第1案内部25aと、その第1案内部25a及び係止凹部24の下端部間に形成され、円周方向に延びる第2案内部25bとが設けられている。
【0016】
次に、前記のように構成された燃料ポンプ装置において、シリンダヘッドカバー14よりなるシリンダヘッドカバー14上に燃料ポンプ13を組み付ける場合の組み付け方法について説明する。
【0017】
さて、この燃料ポンプ13の組み付け時には、図2に示すように、燃料ポンプ13のケース13a側の係止凸部23をシリンダヘッドカバー14の支持筒部14a側の案内路25の上端部に対応配置した状態で、燃料ポンプ13のケース13aをシリンダヘッドカバー14の支持筒部14a内に挿入する。すると、係止凸部23が案内路25の第1案内部25a内に進入して、図2に鎖線で示すように、第1案内部25aの下端部まで移動される。このとき、図1に示すように、燃料ポンプ13側のプランジャ20がバネ21の付勢力により、シリンダヘッド11内のカム17側に押圧されて、ホルダ18を介してローラ19がカム17に圧接される。
【0018】
その後、燃料ポンプ13を一方向に回動させると、係止凸部23が案内路25の第2案内部25bに沿って円周方向に移動されて、係止凹部24の下端部に対応配置される。この状態で、燃料ポンプ13の組み付け操作を解放すると、燃料ポンプ13のケース13aがバネ21の付勢力により上方へ僅かに移動されて、図2に鎖線で示すように、係止凸部23が係止凹部24に係合される。この係合により、燃料ポンプ13のケース13aがシリンダヘッドカバー14の支持筒部14aに対する嵌合位置に固定されて保持される。
【0019】
従って、この実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1) この燃料ポンプ装置においては、燃料ポンプ13がシリンダヘッドカバー14上に支持された状態では、燃料ポンプ13に設けられたローラ19がバネ21の付勢力により、シリンダヘッド11内のカム17に圧接される。それとともに、係止機構22によりバネ21の付勢力を利用して、燃料ポンプ13がシリンダヘッドカバー14上の所定位置に固定される。よって、従来構成とは異なり、複数のボルト等を必要としない。このため、シリンダヘッドカバー14に対する燃料ポンプ13の取付構造が簡単であるとともに、部品点数を減少させることができる。また、ボルト締め等の面倒な作業を行う必要がないので、シリンダヘッドカバー14に対する燃料ポンプ13の組付け作業を容易に行うことができる。
【0020】
(2) この燃料ポンプ装置においては、前記シリンダヘッドカバー14が金属材料によって構成されている。このため、バネ21の付勢力が強力であっても、燃料ポンプ13を金属材料製のシリンダヘッドカバー14上に直接に取り付け支持することができる。
【0021】
(3) この燃料ポンプ装置においては、前記係止機構22が、燃料ポンプ13のケース13aの外周面に形成された係止凸部23と、シリンダヘッドカバー14の支持筒部14aの内周面に形成された係止凹部24と、係止凹部24に連続して支持筒部14aの内周面に形成された案内路25とによって構成されている。このため、専用部品を必要としない。従って、係止機構22の構成が簡単であるだけではなく、燃料ポンプ13のケース13aをシリンダヘッドカバー14の支持筒部14aに組み付ける際に、係止凸部23を案内路25から係止凹部24との係合位置へ容易に移動させることができて、燃料ポンプ13の組付け作業を一層容易に行うことができる。
【0022】
(第2実施形態)
次に、この発明を具体化した燃料ポンプ装置の第2実施形態を、前記第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0023】
この第2実施形態の係止機構22においては、図5〜図8に示すように、前記第1実施形態の場合とは逆に、係止凸部23がシリンダヘッドカバー14の支持筒部14aの内周面に形成されるとともに、係止凹部24及び案内路25が燃料ポンプ13のケース13aの外周面に形成されている。
【0024】
従って、この第2実施形態によれば、燃料ポンプ13のケース13aをシリンダヘッドカバー14の支持筒部14aに組み付ける際に、案内路25の第1案内部25aが係止凸部23に対応するように、ケース13aを支持筒部14a内に挿入して、第2案内部25bが係止凸部23に接したところで、燃料ポンプ13を一方向へ回せばよい。このようにすれば、バネ21の付勢力により、係止凹部24が係止凸部23に係合して、燃料ポンプ13が固定される。
【0025】
従って、この第2実施形態においても、前記第1実施形態と同様な効果を得ることができる。
(第3実施形態)
次に、この発明を具体化した燃料ポンプ装置の第3実施形態を、前記第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0026】
さて、この第3実施形態においては、図9に示すように、シリンダヘッドカバー14が合成樹脂により形成され、その頂壁には燃料ポンプ13を挿通するための孔部31が形成されている。シリンダヘッドカバー14の孔部31と対応するように、シリンダヘッド11上には鉄やアルミニウム合金等の金属材料よりなる支持金具32が複数のボルト33により固定されている。そして、この支持金具32により燃料ポンプ13を支持するための支持部材が構成され、その支持金具32上にシリンダヘッドカバー14の孔部31と連続する支持筒部14aが形成されている。さらに、前記第1実施形態と同様に、燃料ポンプ13のケース13aと支持筒部14aとの間に、バネ21の付勢力を利用して燃料ポンプ13を支持位置に係止保持するための係止機構22が設けられている。
【0027】
従って、この第3実施形態によれば、前記第1実施形態における(1)及び(3)に記載の効果に加えて、以下のような効果を得ることができる。
(4) この燃料ポンプ装置においては、前記支持部材がシリンダヘッド11に固定した支持金具32によって構成されている。このため、シリンダヘッドカバー14が合成樹脂により形成されている場合でも、燃料ポンプ13を金属材料よりなる支持金具32上に堅固に固定することができる。
【0028】
(変更例)
なお、この実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
・ 合成樹脂よりなるシリンダヘッドカバー14に厚肉部等の補強部を設け、その補強部に前記各実施形態と同様な係止機構22を介して燃料ポンプ13を支持すること。
【0029】
・ 前記各実施形態において、ホルダ18及びローラ19を省略して、カム17を直接プランジャ20に係合させること。
【符号の説明】
【0030】
11…シリンダヘッド、13…燃料ポンプ、13a…ケース、14…シリンダヘッドカバー、14a…支持筒部、15…シール材、16…カムシャフト、17…カム、20…プランジャ、21…バネ、22…係止手段としての係止機構、23…係止凸部、24…係止凹部、25…案内路、32…支持金具。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダヘッドに固定された支持部材にシール材を介して燃料ポンプを支持し、その燃料ポンプには、バネの付勢力によりカムに係合するプランジャを設け、カムの回転に伴うプランジャの往復動により燃料を圧送するようにした燃料ポンプ装置において、
前記燃料ポンプのケースと支持部材との間には、前記バネの付勢力を利用して燃料ポンプを支持位置に係止保持するための係止手段を設けたことを特徴とする燃料ポンプ装置。
【請求項2】
前記支持部材は、シリンダヘッドカバーによって構成されていることを特徴とする請求項1に記載の燃料ポンプ装置。
【請求項3】
前記支持部材は、シリンダヘッドに固定した支持金具によって構成されていることを特徴とする請求項1に記載の燃料ポンプ装置。
【請求項4】
前記係止手段は、燃料ポンプのケースと支持部材とのいずれか一方に形成された係止凸部と、その係止凸部と係合可能に対応するように他方に形成された係止凹部と、前記係止凸部を係止凹部と係合する位置に案内させるように係止凹部に連続して形成された案内路とによって構成されていることを特徴とする請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の燃料ポンプ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−122401(P2012−122401A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−273611(P2010−273611)
【出願日】平成22年12月8日(2010.12.8)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)