説明

燃料油の低温流動特性を向上させる組成物

本発明は、1000〜10000g/molの数平均分子量Mnおよび1〜8の多分散度Mw/Mnを有する少なくとも1つのポリアルキル(メタ)アクリレートポリマー、およびアルキル残基に1〜30個の炭素原子を有する少なくとも1つのアルキル(メタ)アクリレートから誘導される単位を含む少なくとも1つのエチレンビニルアセテートコポリマーを含む組成物を記載する。該組成物は、化石燃料油および/またはバイオディーゼル燃料油において、低温流動向上剤として有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、燃料油の低温流動特性を向上させる組成物に関する。さらに、本発明は、本発明組成物の使用を記載する。
【0002】
燃料は、現在、一般に化石源から得られる。しかし、これらの資源は限られているので代替物が求められている。従って、燃料の製造に使用可能な再生可能原料への関心が高まっている。極めて興味深い代替物は、特にバイオディーゼル燃料である。
【0003】
バイオディーゼルという用語は、多くの場合、0〜3個の二重結合を有する14〜24個の炭素原子の脂肪酸フラクションの鎖長を有する脂肪酸エステル、通例、脂肪酸メチルエステル(FAME)の混合物を意味するものと理解される。炭素数が多いほどおよび二重結合が少ないほど、FAMEの融点は高い。一般的な原料は、植物油(即ち、グリセリド)、例えば、ナタネ油、ヒマワリ油、ダイズ油、パーム油、ヤシ油、および稀に使用済植物油である。これらは、通例、塩基性触媒作用下でメタノールを使用して、エステル交換によって、対応するFAMEに変換される。
【0004】
FAME分は、原料油の低温流動特性にも影響を与える。脂肪酸鎖において、炭素数が少ないほどおよび二重結合が多いほど、原料油の低温流動特性は良好である。低温流動性の評価を行なう一般的な方法は、下記の方法である:ASTM D97に記載されている流動点(PP)試験;DIN EN 116またはASTM D6371に従って測定される目詰まり点(CFPP)試験による濾過性限界;および、ASTM D2500に記載されている曇り点(CP)試験。
【0005】
ナタネは、他の油源と比較して土地面積の単位当たりより多くの油を生じるため、ナタネ油メチルエステル(RME)は、現在、ヨーロッパにおいてバイオディーゼル製造用の好ましい原料となっている。しかし、RMEの高価格水準により、RMEと他の原料油、例えばダイズ(SME)またはパームメチルエステル(PME)との混合物も開発されている。100%バイオディーゼルの使用に加えて、化石ディーゼル、即ち原油蒸留の中間留分と、バイオディーゼルとの混合物も、向上した低温特性、良好な燃焼特性から、関心が持たれている。
【0006】
生態学的品質の低下および世界的原油備蓄の現象に鑑み、純粋バイオディーゼル(B100)の使用が、多くの国で重要な目標となっている。しかし、異なる燃焼特性からシール材の腐食にわたる多くの問題点が、化石ディーゼルの代替物としてのバイオディーゼルの使用における障害として報告されている。もう1つの重大な障害は、低温におけるバイオディーゼルの流動挙動である。
【0007】
例えば、RMEは、−13〜−16℃の範囲の目詰まり点(CFPP)を有し、これは、中央ヨーロッパにおける冬期ディーゼル条件(即ち、−20℃以下のCFPP値)を満たすために直接的に使用することはできない。この問題は、より多量の飽和炭素鎖を含有する原料油、例えば、SME、PMEまたは獣脂メチルエステル(TME)が、純粋B100として、またはRMEとの混合物として、使用される場合に、より困難である。従って、先行技術は、低温流動特性を向上させるための添加剤の使用を教示している。
【0008】
鉱油用の流動向上剤として、M(M)Aの存在を伴う(例えば、Rohm & Haas Coの特許:US 5,312,884)またはM(M)Aの存在を伴わない(例えば、Shell Oilの特許:US 3,869,396)ポリアルキル(メタ)アクリレート、PA(M)Aが、広く定着している。バイオディーゼル低温流動向上剤(CFI)としてのヒドロキシ官能基含有PA(M)Aの使用も、文献(例えば、RohMax Additives GmbHの特許:EP 103260)に見出すことができる。さらに、US 2009/0064568は、PA(M)Aを流動向上剤として含有するバイオディーゼル燃料、特にPMEの組成物を開示している。
【0009】
WO 2009/047786(Dai−ichi Karkaria Ltd)は、1〜6%の炭化水素を含有するアルコールブレンドからPA(M)Aコポリマーを合成するためのエステル化および重合法を開示している。そのコポリマーは、燃料油およびバイオディーゼル用の流動点降下剤として使用されている。WO 2008/154558(Arkema Inc)は、制御フリーラジカル法によって合成されるアルキル(メタ)アクリルブロックコポリマーまたはホモポリマーの発明、およびバイオ燃料における低温流動調節剤としての使用を開示している。
【0010】
CFIとして広く使用されている他の成分は、US 5,743,923(Exxon Chemicals)、US 7,276,264(Clariant GmbH)に開示されているエチレンビニルアセテート(EVA)コポリマーである。US 6,565,616(Clariant GmbH)は、EVAと、無水マレイン酸またはアルキルアクリレートを含有するコポリマーとのブレンドを含有する低温流動特性を向上させる添加剤を開示している。EP 406684(Roehm GmbH)は、EVAコポリマーとPA(M)Aとの混合物を含有する流動向上添加剤を開示している。
【0011】
US 4,932,980およびEP 406684(ともにRoehm GmbH)は、80〜20%の主鎖としてのEVAコポリマーおよび20〜80%のグラフトモノマーとしてのアルキル(メタ)アクリレートから成るグラフトポリマーを基剤とする流動向上剤を開示している。US 2007/0161755(Clariant Ltd)は、鉱物およびバイオ−燃料用の流動向上剤としての、EVA−グラフト−(メタ)アクリレートの使用に焦点を当てている。該特許(出願)は、補助添加剤の添加も記載している。
【0012】
既知のポリマーは、低温流動向上剤として許容される有効性を示す。しかし、前記目的に基づいて、低温流動特性のさらなる向上が持続的課題となっている。いくつかの前記添加剤は、燃料油において極めて特定の量で、低温流動特性を向上させる。しかし、その極めて特定の量より少ないとまたは多いと、低温流動特性が有意に低下する。市販の燃料油は、いくつかの側面、例えば、流動特性、燃焼挙動、および燃料油の由来において、標準化されている。しかし、バイオディーゼル燃料油は、脂肪酸エステルの組成に関して標準化されていない。さらに、最近のエンジンは、化石燃料油およびバイオディーゼル燃料油を種々の量で使用しうる。燃料油の価格および入手可能性に基づいて、需要者は、一般に、多様な低温流動向上剤を含有する種々の由来の燃料油を使用する。従って、燃料油添加剤の希釈は避けられず、それによって添加剤の有効性が減少する。従って、これらの添加剤は極めて特定の含有量において許容される有効性を示すが、全般的有効性を向上させる必要がある。
【0013】
さらに、いくつかの添加剤は、極めて特定のタイプの燃料油、例えばナタネ油メチルエステル(RME)に関して、許容される有効性を有しうる。しかし、他の燃料油、例えば、鉱物由来のディーゼル燃料またはパーム油メチルエステル(PME)におけるこれらの添加剤の性能は低い。前記のように、需要者による燃料油の混合は避けられない。従って、添加剤は、極めて多様な燃料油組成物において有用であるべきである。
【0014】
さらに、添加剤は、簡単かつ低コストな方法で製造しうるべきであり、特に、市販成分を使用すべきである。これに関連して、添加剤は、新規プラントまたは複雑な構造のプラントをこの目的のために必要とせずに、工業規模で製造しうるべきである。
【0015】
これらの目的、および明示的に述べられていないが序論として本明細書に論じられている脈絡から直ぐに推論できるまたは認識できる他の目的は、請求項1に記載の全ての特徴を有する組成物によって達成することができる。本発明組成物の適切な改変は、請求項1に言及している請求項において保護される。方法に関して、請求項20は、基本的問題の解決策を提示している。
【0016】
従って、本発明は、下記を含む組成物を提供する:
1000〜10000g/molの数平均分子量Mn、および1〜8の多分散度Mw/Mnを有する、少なくとも1つのポリアルキル(メタ)アクリレートポリマー;および
アルキル残基に1〜30個の炭素原子を有する少なくとも1つのアルキル(メタ)アクリレートから誘導される単位を含む、少なくとも1つのエチレンビニルアセテートコポリマー。
【0017】
本発明組成物は、広い濃度範囲において、低温流動向上剤として、高い有効性を示す。
【0018】
同時に、本発明ポリマーは、一連のさらなる利点を得ることを可能にする。これらは、下記を包含する。
【0019】
本発明の組成物は、極めて多様な燃料油組成物の低温流動特性を向上させる。本発明の添加剤組成物は、低温流動向上剤として、顕著な有効性を示す。さらに、これらの向上は、低量または高量の組成物を燃料油に適用することによって達成される。本発明の組成物は、特に簡便な方法で製造することができる。通常の工業規模プラントを使用することができる。
【0020】
本発明組成物は、1000〜10000g/molの数平均分子量Mn、および1〜8の多分散度Mw/Mnを有する、少なくとも1つのポリアルキル(メタ)アクリレートポリマーを含む。
【0021】
ポリアルキル(メタ)アクリレートポリマーは、アルキル(メタ)アクリレートモノマーから誘導される単位を含むポリマーである。(メタ)アクリレートという用語は、メタアクリレートおよびアクリレートならびにそれらの混合物を包含する。これらのモノマーは、当該技術分野において周知である。エステル化合物のアルキル残基は、直鎖、環式または分岐鎖でありうる。通例、アルキル残基は、1〜40個、好ましくは5〜30個、より好ましくは7〜15個の炭素原子を含有しうる。モノマーを、個々に、または種々のアルキル(メタ)アクリレートモノマーの混合物として使用して、本発明に有用なポリアルキル(メタ)アクリレートポリマーが得られる。通例、ポリアルキル(メタ)アクリレートポリマーは、少なくとも50質量%、好ましくは少なくとも70質量%、より好ましくは少なくとも90質量%の、アルキル残基に7〜15個の炭素原子を有するアルキル(メタ)アクリレートモノマーを含有する。
【0022】
本発明の好ましい態様によれば、本発明に有用なポリアルキル(メタ)アクリレートポリマーは、式(I):
【化1】

[式中、Rは、水素またはメチルであり、R1は、1〜6個の炭素原子、特に1〜5個、好ましくは1〜3個の炭素原子を有する直鎖、分岐鎖または環式アルキル残基を意味する]
の1つ以上のアルキル(メタ)アクリレートモノマーから誘導される単位を含有しうる。
【0023】
式(I)のモノマーの例は、特に、飽和アルコーから誘導される(メタ)アクリレート、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレートおよびヘキシル(メタ)アクリレート;シクロアルキル(メタ)アクリレート、例えば、シクロペンチル(メタ)アクリレートおよびシクロヘキシル(メタ)アクリレートである。好ましくは、ポリマーは、メチルメタアクリレートから誘導される単位を含む。
【0024】
本発明に有用なポリアルキル(メタ)アクリレートポリマーは、ポリマーの全質量に基づいて0〜40質量%、好ましくは0.1〜30質量%、特に0.5〜20質量%の、式(I)の1つ以上のアルキル(メタ)アクリレートモノマーから誘導される単位を含有しうる。
【0025】
ポリアルキル(メタ)アクリレートポリマーは、好ましくは、ラジカル重合によって得られる。従って、本出願に記載されているポリアルキル(メタ)アクリレートポリマーの単位の質量分率は、本発明ポリマーの製造に使用される対応するモノマーの質量分率の結果である。
【0026】
好ましくは、ポリアルキル(メタ)アクリレートポリマーは、式(II):
【化2】

[式中、Rは、水素またはメチルであり、R2は、7〜15個の炭素原子を有する直鎖、分岐鎖または環式アルキル残基を意味する]
の1つ以上のアルキル(メタ)アクリレートモノマーの単位を含む。
【0027】
成分(II)の例は、下記を包含する:
飽和アルコーから誘導される(メタ)アクリレート、例えば、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、2−t−ブチルヘプチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、3−イソプロピルヘプチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、5−メチルウンデシル(メタ)アクリレート、n−ドデシル(メタ)アクリレート、2−メチルドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、5−メチルトリデシル(メタ)アクリレート、n−テトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート;
不飽和アルコールから誘導される(メタ)アクリレート、例えばオレイル(メタ)アクリレート;
シクロアルキル(メタ)アクリレート、例えば、環置換基を有するシクロヘキシル(メタ)アクリレート、例えば、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレートおよびトリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレートおよびイソボルニル(メタ)アクリレート。
【0028】
ポリアルキル(メタ)アクリレートポリマーは、好ましくは、ポリマーの全質量に基づいて少なくとも10質量%、特に少なくとも20質量%の、式(II)の1つ以上のアルキル(メタ)アクリレートから誘導される単位を含む。本発明の好ましい態様によれば、ポリマーは、好ましくは約25〜100質量%、より好ましくは約70〜99質量%の、式(II)のモノマーから誘導される単位を含む。
【0029】
さらに、本発明に有用なポリアルキル(メタ)アクリレートポリマーは、式(III):
【化3】

[式中、Rは、水素またはメチルであり、R3は、16〜40個の炭素原子、好ましくは16〜30個の炭素原子を有する直鎖、分岐鎖または環式アルキル残基を意味する]
の1つ以上のアルキル(メタ)アクリレートモノマーから誘導される単位を含有しうる。
【0030】
成分(III)の例は、下記を包含する:
飽和アルコールから誘導される(メタ)アクリレート、例えば、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、2−メチルヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、5−イソプロピルヘプタデシル(メタ)アクリレート、4−t−ブチルオクタデシル(メタ)アクリレート、5−エチルオクタデシル(メタ)アクリレート、3−イソプロピルオクタデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、ノナデシル(メタ)アクリレート、エイコシル(メタ)アクリレート、セチルエイコシル(メタ)アクリレート、ステアリルエイコシル(メタ)アクリレート、ドコシル(メタ)アクリレートおよび/またはエイコシルテトラトリアコンチル(メタ)アクリレート;
シクロアルキル(メタ)アクリレート、例えば、2,4,5−トリ−t−ブチル−3−ビニルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、2,3,4,5−テトラ−t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート。
【0031】
本発明に有用なポリアルキル(メタ)アクリレートポリマーは、ポリマーの全質量に基づいて0〜40質量%、好ましくは0.1〜30質量%、特に0.5〜20質量%の、式(III)の1つ以上のアルキル(メタ)アクリレートモノマーから誘導される単位を含有しうる。
【0032】
本発明の特定の態様によれば、アルコール基に7〜15個の炭素原子を含有する式(II)のエステル化合物と、アルコール基に16〜40個の炭素原子を含有する式(III)のエステル化合物との質量比は、好ましくは100:1〜1:1、より好ましくは50:1〜2:1、特に好ましくは10:1〜5:1である。
【0033】
長鎖アルコール残基を有するエステル化合物、特に、式(II)および(III)のモノマーは、例えば、(メタ)アクリレートおよび/または対応する酸を長鎖脂肪アルコールと反応させることによって得られ、該反応において、一般に、種々の長鎖アルコール残基を有する(メタ)アクリレートのようなエステルの混合物が生じる。これらの脂肪アルコールは、特に下記を包含する:Oxo Alcohol(登録商標)7911およびOxo Alcohol(登録商標)7900、Oxo Alcohol(登録商標)1100(Monsanto);Alphanol(登録商標)79(ICI);Nafol(登録商標)1620、Alfol(登録商標)610およびAlfol(登録商標)810(Sasol);Epal(登録商標)610およびEpal(登録商標)810(Ethyl Corporation);Linevol(登録商標)79、Linevol(登録商標)911およびDobanol(登録商標)25L(Shell AG);Lial 125(Sasol);Dehydad(登録商標)およびDehydad(登録商標)およびLorol(登録商標)(Cognis)。
【0034】
ポリマーは、コモノマーから誘導される単位を任意成分として含有しうる。
【0035】
これらのコモノマーは、下記を包含する:ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、例えば、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3,4−ジヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2,5−ジメチル−1,6−ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオール(メタ)アクリレート;
アミノアルキル(メタ)アクリレートおよびアミノアルキル(メタ)アクリルアミド、例えば、N−(3−ジメチルアミノプロピル)メタクリルアミド、3−ジエチルアミノペンチル(メタ)アクリレート、3−ジブチルアミノヘキサデシル(メタ)アクリレート;
(メタ)アクリル酸のニトリル、および他の窒素含有(メタ)アクリレート、例えば、N−(メタクリロイルオキシエチル)ジイソブチルケチミン、N−(メタクリロイルオキシエチル)ジヘキサデシルケチミン、(メタ)アクリロイルアミドアセトニトリル、2−メタクリロイルオキシエチルメチルシアナミド、シアノメチル(メタ)アクリレート;
アリール(メタ)アクリレート、例えば、ベンジル(メタ)アクリレートまたはフェニル(メタ)アクリレート(各場合に、該アクリル残基は、非置換であるか、または4回まで置換することができる);
カルボニル含有(メタ)アクリレート、例えば、2−カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシメチル(メタ)アクリレート、オキサゾリジニルエチル(メタ)アクリレート、N−メタクリロイルオキシ)ホルムアミド、アセトニル(メタ)アクリレート、N−メタクリロイルモルホリン、N−メタクリロイル−2−ピロリジノン、N−(2−メタクリロキシオキシエチル)−2−ピロリジノン、N−(3−メタクリロイルオキシプロピル)−2−ピロリジノン、N−(2−メタクリロイルオキシペンタデシル(−2−ピロリジノン、N−(3−メタクリロイルオキシヘプタデシル−2−ピロリジノン;
エーテルアルコールの(メタ)アクリレート、例えば、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、メトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、1−ブトキシプロピル(メタ)アクリレート、シクロヘキシルオキシエチル(メタ)アクリレート、プロポキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジルオキシエチル(メタ)アクリレート、フルフリル(メタ)アクリレート、2−ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシ−2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、2−メトキシ−2−エトキシプロピル(メタ)アクリレート、エトキシル化(メタ)アクリレート、1−エトキシブチル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシ−2−エトキシ−2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸とメトキシポリエチレングリコールとのエステル;
ハロゲン化アルコールの(メタ)アクリレート、例えば、2,3−ジブロモプロピル(メタ)アクリレート、4−ブロモフェニル(メタ)アクリレート、1,3−ジクロロ−2−プロピル(メタ)アクリレート、2−ブロモエチル(メタ)アクリレート、2−ヨードエチル(メタ)アクリレート、クロロメチル(メタ)アクリレート;
オキシラニル(メタ)アクリレート、例えば、2,3−エポキシブチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシブチル(メタ)アクリレート、10,11−エポキシウンデシル(メタ)アクリレート、2,3−エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、オキシラニル(メタ)アクリレート、例えば、10,11−エポキシヘキサデシル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート;
リン−、ホウ素−および/またはケイ素−含有(メタ)アクリレート、例えば、2−(ジメチルホスファト)プロピル(メタ)アクリレート、2−(エチルホスフィト)プロピル(メタ)アクリレート、2−ジメチルホスフィノメチル(メタ)アクリレート、ジメチルホスホノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルメタクリロイルホスホネート、ジプロピルメタクリロイルホスフェート、2−(ジブチルホスホノ)エチル(メタ)アクリレート、2,3−ブチレンメタクリロイルエチルボレート、メチルジエトキシメタクリロイルエトキシシラン、ジエチルホスファトエチル(メタ)アクリレート;
硫黄含有(メタ)アクリレート、例えば、エチルスルフィニルエチル(メタ)アクリレート、4−チオシアナトブチル(メタ)アクリレート、エチルスルホニルエチル(メタ)アクリレート、チオシアナトメチル(メタ)アクリレート、メチルスルフィニルメチル(メタ)アクリレート、ビス(メタクリロイルオキシエチル)スルフィド;
複素環式(メタ)アクリレート、例えば、2−(1−イミダゾリル)エチル(メタ)アクリレート、2−(4−モルホリニル)エチル(メタ)アクリレート、および1−(2−メタクリロイルオキシエチル)−2−ピロリドン;
マレイン酸およびマレイン酸誘導体、例えば、マレイン酸のモノ−およびジエステル、無水マレイン酸、メチルマレイン酸無水物、マレインイミド、メチルマレインイミド;
フマル酸およびフマル酸誘導体、例えば、フマル酸のモノ−およびジエステル;
ハロゲン化ビニル、例えば、塩化ビニル、フッ化ビニル、塩化ビニリデンおよびフッ化ビニリデン;
ビニルエステル、例えば、酢酸ビニル;
芳香族基を含有するビニルモノマー、例えば、スチレン、側鎖にアルキル置換基を有する置換スチレン、例えば、α−メチルスチレンおよびα−エチルスチレン、環上にアルキル置換基を有する置換スチレン、例えば、ビニルトルエンおよびp−メチルスチレン、ハロゲン化スチレン、例えば、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、トリブロモスチレンおよびテトラブロモスチレン;
複素環式ビニル化合物、例えば、2−ビニルピリジン、3−ビニルピリジン、2−メチル−5−ビニルピリジン、3−エチル−4−ビニルピリジン、2,3−ジメチル−5−ビニルピリジン、ビニルピリミジン、ビニルピペリジン、9−ビニルカルバゾール、3−ビニルカルバゾール、4−ビニルカルバゾール、1−ビニルイミダゾール、2−メチル−1−ビニルイミダゾール、N−ビニルピロリドン、2−ビニルピロリドン、N−ビニルピロリジン、3−ビニルピロリジン、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルブチロラクタム、ビニルオキソラン、ビニルフラン、ビニルチオフェン、ビニルチオラン、ビニルチアゾールおよび水素化ビニルチアゾール、ビニルオキサゾールおよび水素化ビニルオキサゾール;
ビニルおよびイソプレニルエーテル;
メタクリル酸およびアクリル酸。
【0036】
コモノマー、ならびに式(I)、(II)および(III)のエステルモノマーは、それぞれ、個々に、または混合物として、使用することができる。
【0037】
コモノマーの比率は、ポリマーの用途および特性プロフィールに依存して変化させることができる。一般に、この比率は、0〜60質量%、好ましくは0.01〜20質量%、より好ましくは0.1〜10質量%であってよい。燃焼特性により、かつ生態学的理由から、芳香族基、複素環式芳香族基、窒素含有基、燐含有基および硫黄含有基を有するモノマーの率は、最小限にすべきである。従って、これらのモノマーの比率は、1質量%、特に0.5質量%、好ましくは0.01質量%に限定することができる。
【0038】
好ましくは、ポリアルキル(メタ)アクリレートポリマーは、ヒドロキシル含有モノマーおよび/またはエーテルアルコールの(メタ)アクリレートから誘導される単位を含む。本発明の好ましい態様によれば、ポリアルキル(メタ)アクリレートポリマーは、好ましくは、ポリマーの質量に基づいて0.1〜40質量%、特に1〜20質量%、より好ましくは2〜10質量%の、ヒドロキシル含有モノマーおよび/またはエーテルアルコールの(メタ)アクリレートを含有する。ヒドロキシル含有モノマーは、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートおよびビニルアルコールを包含する。これらのモノマーは、前記に詳しく開示されている。
【0039】
本発明に従って使用されるポリアルキル(メタ)アクリレートポリマーは、1000〜10000g/mol、好ましくは2000〜7000g/mol、より好ましくは3000〜6000g/molの数平均分子量Mnを有する。
【0040】
ポリアルキル(メタ)アクリレートポリマーの多分散度Mw/Mnは、1〜8、好ましくは1.05〜6.0、より好ましくは1.1〜5.0、最も好ましくは1.3〜2.5である。重量平均分子量Mw、数平均分子量Mn、および多分散度Mw/Mnは、メチルメタクリレートポリマーを標準として使用し、GPCによって測定することができる。
【0041】
ポリアルキル(メタ)アクリレートポリマーの構造は、多くの適用および特性にとって重要ではない。従って、これらのポリマーは、ランダムコポリマー、グラジエントコポリマー、ブロックコポリマーおよび/またはグラフトコポリマーであってよい。ブロックコポリマーおよびグラジエントコポリマーは、例えば、連鎖成長の間にモノマー組成を非連続的に変化させることによって、得られる。
【0042】
前記モノマーからのポリアルキル(メタ)アクリレートポリマーの製造は、それ自体既知である。従って、これらのポリマーは、特に、ラジカル重合および関連法、例えば、ATRP(原子移動ラジカル重合)、RAFT(可逆的付加開裂連鎖移動)、またはNMP法(ニトロオキシド媒介重合)によって得られる。これらに加えて、これらのポリマーをアニオン重合によっても得られる。
【0043】
通常のフリーラジカル重合が、特に、Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry, Sixth Editionに記載されている。一般に、重合開始剤がこの目的に使用される。使用可能な開始剤は、下記を包含する:当該技術分野において周知のアゾ開始剤、例えば、2,2’−アゾ−ビス−イソブチロニトリル(AIBN)、2,2’−アゾ−ビス−(2−メチルブチロニトリル)(AMBN)および1,1−アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、ならびにペルオキシ化合物、例えば、メチルエチルケトンペルオキシド、アセチルアセトンペルオキシド、ジラウリルペルオキシド、t−ブチルペルオキシピバレート、t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−アミルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、ケトンペルオキシド、t−ブチルペルオクトエート、メチルイソブチルケトンペルオキシド、シクロヘキサノンペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、t−ブチルペルオキシベンゾエート、t−ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、2,5−ビス(2−エチルヘキサノイルペルオキシ)−2,5−ジメチルヘキサン、t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルペルオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、ジクミルペルオキシド、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、クミルヒドロペルオキシド、t−ブチルヒドロペルオキシド、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート、2つ以上の前記化合物の相互の混合物、前記化合物と記載されていないが同様に遊離基を形成可能な化合物との混合物。さらに、連鎖移動剤も使用することができる。好適な連鎖移動剤は、特に、油溶性メルカプタン、例えば、ドデシルメルカプタンまたは2−メルカプトエタノール、またはテルペン類からの連鎖移動剤、例えばテルピネオールである。
【0044】
好ましくは、ポリマーは、高量の開始剤および低量の連鎖移動剤を使用することによって得られる。特に、本発明に有用なポリアルキル(メタ)アクリレートポリマーを得るための混合物は、モノマーの量に基づいて1〜15質量%、好ましくは2〜10質量%、より好ましくは4〜8質量%の開始剤を含有しうる。連鎖移動剤は、モノマーの量に基づいて0〜2質量%、好ましくは0.01〜1質量%、より好ましくは0.02〜0.1質量%の量で使用することができる。
【0045】
ATRP法は、それ自体既知である。それは「リビング」フリーラジカル重合であると推測されるが、これはそのメカニズムの記述を限定するものではない。これらの方法において、遷移金属化合物を、移動可能原子団を有する化合物と反応させる。これは移動可能原子団を遷移金属化合物に移動させ、それにより該金属を酸化する。この反応は、エチレン性基に付加する基を形成する。しかし、遷移金属化合物への原子団の移動は可逆性であり、従って、原子団は成長ポリマー鎖に戻り、それにより制御重合系を形成する。ポリマーの構造、分子量および分子量分布を、相応して制御することができる。この反応は、例えば、J S.Wang et al., J.Am.Chem.Soc.,vol.117,p.5614−5615(1995);Matyjaszewski,Macromolecules,vol.28,p.7901−7910(1995)に記載されている。さらに、特許出願WO 96/30421、WO 97/47661、WO 97/18247、WO 98/40415およびWO 99/10387は、先に説明したATRPの変形を開示している。
【0046】
好ましくは、US 4,694,054(Du Pont Co)またはUS 4,526,945(SCM Co)に開示されているように、コバルト(II)キレート錯体を使用する触媒連鎖移動法を使用して、本発明に有用なポリマーを製造することができる。前記文献US 4,694,054(Du Pont Co)[米国特許商標庁に1986年1月27日に出願番号821,321で出願]、およびUS 4,526,945(SCM Co)[米国特許商標庁に1984年3月21日に出願番号591,804で出願]は、参考として本明細書で援用される。
【0047】
さらに、本発明のポリマーは、例えばRAFT法によっても得られる。この方法は、例えばWO 98/01478およびWO 2004/083169に詳しく示されており、開示する目的をもってそれらが明示的に参照される。
【0048】
さらに、ポリアルキル(メタ)アクリレートポリマーはNMP法(ニトロオキシド媒介重合)によっても得られ、該方法は、特に、米国特許第4,581,429号に記載されている。
【0049】
これらの方法は、特に、K.Matyjazewski,T.P.Davis,Handbook of Raical Polymerization,Wiley Interscience、Hoboken 2002において、包括的に、特に付加的文献を用いて記述されており、開示する目的をもってそれらが明示的に参照される。
【0050】
アニオン重合は当該技術分野において周知であり、特に、Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry,Sixth Editionに記載されている。本発明の好ましい態様によれば、ポリアルキル(メタ)アクリレートポリマーは、US 4,056,559(Rohm & Haas Co)[米国特許商標庁に1974年10月23日に出願番号517,336で出願]に記載されている方法に従って得られる。該文献US 4,056,559は、参考として本明細書で援用される。特に、カリウムメトキシド溶液を、開始剤として使用することができる。
【0051】
重合は、標準圧力、減圧または高圧において行ないうる。重合温度も重要でない。しかし、それは一般に−200℃〜200℃、特に0℃〜190℃、好ましくは60℃〜180℃、より好ましくは120℃〜170℃である。高量の開始剤を使用するフリーラジカル重合において、より高い温度が特に好ましい。
【0052】
重合は、溶媒を使用して、または使用せずに、行ないうる。溶媒という用語は、この場合、広い意味で理解されるものとする。
【0053】
重合は、好ましくは、非極性溶媒中で行なわれる。これらは、炭化水素溶媒、例えば、芳香族溶媒、例えば、トルエン、ベンゼンおよびキシレン、飽和炭化水素、例えば、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ドデカンを包含し、これらは、分岐形態でも存在しうる。これらの溶媒は、個々に、および混合物として、使用しうる。特に好ましい溶媒は、鉱油、鉱物由来のディーゼル燃料、天然植物および動物油、バイオディーゼル燃料および合成油(例えば、アジピン酸ジノニルのようなエステル油)、ならびにそれらの混合物である。これらの中で、特に好ましいのは、鉱油および鉱物ディーゼル燃料である。
【0054】
前記ポリアルキル(メタ)アクリレートポリマーに加えて、本発明の組成物は、アルキル残基に1〜30個の炭素原子を有する少なくとも1つのアルキル(メタ)アクリレートから誘導される単位を含む、少なくとも1つのエチレンビニルアセテートコポリマーを含有する。前記のように、ポリアルキル(メタ)アクリレートポリマーは、エチレンおよびビニルアセテートから誘導される単位も、コモノマーとして含有しうる。しかし、エチレンビニルアセテートコポリマーは、ポリアルキル(メタ)アクリレートコポリマーと異なる。特に、エチレンビニルアセテートコポリマー中の、エチレンおよび/またはビニルアセテートの量は、ポリアルキル(メタ)アクリレートポリマーにおける量より多い。従って、本発明組成物は、エチレンおよび/またはビニルアセテート比率が異なる少なくとも2つのポリマーを含有する。
【0055】
エチレン、ビニルアセテート、およびアルキル残基に1〜30個の炭素原子を有する少なくとも1つのアルキル(メタ)アクリレートから誘導される単位を含むポリマーは、対応するモノマー組成物の重合によって得られる。エチレンおよびビニルアセテートは、多くの供給会社によって市販されている。アルキル残基に1〜30個の炭素原子を有するアルキル(メタ)アクリレートは、先に記載されており、それらが参照される。
【0056】
これらのエチレンビニルアセテートコポリマーは、反復単位の合計に基づいて1〜60質量%、特に5〜40質量%、好ましくは10〜20質量%の、エチレンから誘導される単位を含有しうる。反復単位の合計に基づいて好ましくは0.5〜60質量%、特に2〜30質量%、より好ましくは5〜10質量%のビニルアセテートを含有するエチレンビニルアセテートコポリマーが特に好ましい。好ましくは、アルキル残基に1〜30個の炭素原子を有するアルキル(メタ)アクリレートの量は、反復単位の合計に基づいて10質量%〜90質量%、特に30〜80質量%、より好ましくは60〜80質量%である。
【0057】
本発明の特定の実施形態によれば、エチレンビニルアセテートコポリマーは、好ましくは30〜90質量%、より好ましくは60〜80質量%の、アルキル残基に7〜15個の炭素原子を有する少なくとも1つのアルキル(メタ)アクリレートから誘導される単位を含む。
【0058】
好ましくは、エチレンビニルアセテートコポリマーのエチレン/ビニルアセテートのモル比は、100:1〜1:2、より好ましくは20:1〜2:1、特に好ましくは10:1〜3:1でありうる。エチレンビニルアセテートコポリマーの[アルキル残基に1〜30個の炭素原子を有するアルキル(メタ)アクリレート]/[ビニルアセテート]のモル比は、好ましくは50:1〜1:2、より好ましくは10:1〜1:1、特に好ましくは5:1〜2:1である。特に、エチレンビニルアセテートコポリマーの[エチレン]/[アルキル残基に1〜30個の炭素原子を有するアルキル(メタ)アクリレート]のモル比は、好ましくは10:1〜1:20、より好ましくは2:1〜1:10、特に好ましくは1:1〜1:5である。
【0059】
前記モノマーに加えて、エチレンビニルアセテートコポリマーは、付加的コモノマーを含有しうる。これらのモノマーは、先に記載されており、それらが参照される。特に好ましいのは、ビニルエステルおよびオレフィンである。好適なビニルエステルは、2〜30個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖アルキル基を有する脂肪酸から誘導される。その例は下記を包含する:ビニルプロピオネート、ビニルブチレート、ビニルヘキサノエート、ビニルヘプタノエート、ビニルオクタノエート、ビニルラウレートおよびビニルステアレート、ならびに、分岐鎖脂肪酸に基づくビニルアルコールのエステル、例えば、ビニルイソブチレート、ビニルピバレート、ビニル2−エチルヘキサノエート、ビニルイソノナノエート、ビニルネオノナノエート、ビニルネオデカノエートおよびビニルネオウンデカノエート。好適なオレフィンは、プロペン、ブテン、イソブチレン、ヘキセン、4−メチルペンテン、オクテン、ジイソブチレンおよび/またはノルボルネンである。
【0060】
特に、エチレンビニルアセテートコポリマーは、0〜20質量%、より好ましくは1〜10質量%の、コモノマーから誘導される単位を含有しうる。
【0061】
エチレンビニルアセテートコポリマーの構造は、多くの用途および特性にとって重要ではない。従って、エステル含有ポリマーは、ランダムコポリマー、グラジエントコポリマー、ブロックコポリマーおよび/またはグラフトコポリマーであってよい。
【0062】
本発明の特定の態様によれば、エチレンビニルアセテートコポリマーは、グラフトコポリマーであって、エチレンビニルアセテートコポリマーをグラフトベースとして有し、アルキル残基に1〜30個の炭素原子を有するアルキル(メタ)アクリレートをグラフトレイヤーとして有する。好ましくは、グラフトベース/グラフトレイヤーの質量比は、1:1〜1:8、より好ましくは1:2〜1:6である。
【0063】
本発明に従って使用されるエチレンビニルアセテートコポリマーは、好ましくは1000〜120000g/mol、特に5000〜90000g/mol、より好ましくは20000〜70000g/molの、数平均分子量Mnを有する。
【0064】
特に、エチレンビニルアセテートコポリマーの多分散度Mw/Mnは、1〜8、好ましくは1.05〜6.0、最も好ましくは1.2〜5.0であってよい。重量平均分子量Mw、数平均分子量Mnおよび多分散度Mw/Mnは、メチルメタクリレートポリマーを標準として使用し、GPCによって測定することができる。
【0065】
本発明に従って使用されるエチレンビニルアセテートコポリマーは、前記フリーラジカル重合法によって製造することができ、該方法が参照される。好ましくは、エチレンビニルアセテートコポリマーは、EP−A 406684[欧州特許庁に1990年6月27日に出願番号90112229.1で出願]に記載されている方法に従って製造することができ、開示する目的をもって該文献が明示的に参照される。
【0066】
本発明の好ましい態様によれば、エチレンビニルアセテートコポリマーは、エチレンビニルアセテートコポリマーをグラフトベースとして有するグラフトコポリマーである。グラフトベースとして有用なエチレンビニルアセテートコポリマーは、好ましくは1000〜100000g/mol、特に5000〜80000g/mol、より好ましくは10000〜50000g/molの数平均分子量Mnを有する。
【0067】
本発明の組成物は、少なくとも1つのエチレンビニルアセテートコポリマー、および少なくとも1つのポリアルキル(メタ)アクリレートポリマーを含有する。両ポリマーの質量比は、広範囲にわたりうる。好ましくは、[1000〜10000g/molの数平均分子量Mnおよび1〜8の多分散度Mw/Mnを有するポリアルキル(メタ)アクリレートポリマー]/[アルキル残基に1〜30個の炭素原子を含有する少なくとも1つのアルキル(メタ)アクリレートから誘導される単位を含むエチレンビニルアセテートコポリマー]の質量比は、40:1〜1:10、特に20:1〜1:2、特に15:1〜1:1、より好ましくは10:1〜3:1、最も好ましくは6:1〜5:1である。
【0068】
好ましくは、本発明組成物は、前記ポリマーを混合することによって製造することができる。混合を行なうために、希釈油を使用することができる。好ましい希釈油は、180℃超の引火点、−15℃未満の流動点(ASTM D97による)、および50ppm未満の硫黄含有量を有する。そのような希釈油は、鉱油を脱蝋することによって得られる。得られた混合物を、添加剤組成物として使用することができる。好ましくは、添加剤組成物は、多くても70質量%、特に50質量%、より好ましくは30質量%の希釈油を含有する。
【0069】
本発明の組成物は、燃料油組成物の低温流動特性を向上させるのに有用である。通例、燃料油組成物は、少なくとも70質量%、より好ましくは少なくとも90質量%、最も好ましくは少なくとも98質量%の燃料油を含有する。有用な燃料油は、鉱物由来のディーゼル燃料、およびバイオディーゼル燃料油を包含する。これらの燃料油は、個々に、または混合物として、使用することができる。
【0070】
本発明の燃料組成物は、鉱物由来のディーゼル燃料、即ち、ディーゼル、ガス油またはディーゼル油を含有しうる。鉱物ディーゼル燃料は、それ自体周知であり、市販されている。これは、ディーゼルエンジン用の燃料として好適な種々の炭化水素の混合物を意味するものと理解される。ディーゼルは、特に原油蒸留による、中間留分として得られる。ディーゼル燃料の主成分は、好ましくは、1分子当たり約10〜22個の炭素原子を有するアルカン、シクロアルカンおよび芳香族炭化水素を包含する。
【0071】
好ましい鉱物由来ディーゼル燃料は、120℃〜450℃、より好ましくは170℃〜390℃で沸騰する。0.05質量%以下の硫黄、より好ましくは350ppm未満の硫黄、特に200ppm未満の硫黄、特別な場合に50ppm未満の硫黄、例えば10ppm未満の硫黄を含有する中間留分を使用するのが好ましい。それらは好ましくは、水素化条件下で精製に掛けられ、従ってごく少ない比率のポリ芳香族および極性化合物を含有している中間留分である。それらは好ましくは、370℃未満、特に350℃未満、特別な場合に330℃未満の95%蒸留温度を有する中間留分である。例えばフィッシャー・トロプシュ法または天然ガスの液化燃料化法(GTL)によって得られる合成燃料も、鉱物由来ディーゼル燃料として好適である。
【0072】
好んで使用される鉱物由来ディーゼル燃料の動粘度は、ASTM D445に従って40℃で測定して0.5〜8mm2/s、より好ましくは1〜5mm2/s、特に好ましくは1.5〜3mm2/sである。
【0073】
本発明の燃料組成物は、少なくとも20質量%、特に少なくとも30質量%、好ましくは少なくとも50質量%、より好ましくは少なくとも70質量%、最も好ましくは少なくとも80質量%の鉱物由来ディーゼル燃料を含有しうる。
【0074】
さらに、本発明の燃料組成物は、少なくとも1つのバイオディーゼル燃料成分を含有しうる。バイオディーゼル燃料は、原則的に鉱物ディーゼル燃料の代替物として使用可能な、植物性または動物性原料またはそれらの両方から得られる物質、特に油、またはその誘導体である。
【0075】
好ましい実施形態において、「バイオディーゼル」または「バイオ燃料」とも称されることが多いバイオディーゼル燃料は、6〜30個、より好ましくは12〜24個の炭素原子を有する脂肪酸および1〜4個の炭素原子を有する一価アルコールから形成される脂肪酸アルキルエステルを含有する。多くの場合、いくつかの脂肪酸は、1個、2個または3個の2重結合を含有しうる。一価アルコールは、特に、メタノール、エタノール、プロパノールおよびブタノールを包含し、メタノールが好ましい。
【0076】
動物性または植物性原料に由来し、本発明に従って使用可能な油の例は、下記の油である:パーム油、ナタネ油、コリアンダー油、ダイズ油、綿実油、ヒマワリ油、ヒマシ油、オリーブ油、落花生油、トウモロコシ油、アーモンド油、パーム核油、ヤシ油、カラシ油;獣脂、特に牛脂、骨油、魚油および使用済み調理用油から誘導される油。他の例として、穀類、コムギ、ジュート、ゴマ、籾殻、ヤトロファ、アラキス油およびアマニ油に由来する油が挙げられる。好んで使用される脂肪酸アルキルエステルは、当該技術分野において既知の方法によって、これらの油から得られる。
【0077】
本発明によれば、高C16:0/C18:0−グルセリド含有油、例えば、パーム油および獣脂から誘導される油、ならびにそれらの誘導体、特に、一価アルコールから誘導されるパーム油アルキルエステルが好ましい。パーム油(パーム脂肪とも称す)は、パーム果実の果肉から得られる。果実は滅菌され圧縮される。その高カロテン含有量により、果実および油は橙赤色であり、この色は精製で除去される。油は、80%までのC18:0−グルセリドを含有しうる。
【0078】
特に好適なバイオディーゼル燃料は、脂肪酸の低級アルキルエステルである。この場合、有用な例は、6〜30個、好ましくは12〜24個、より好ましくは14〜22個の炭素原子を有する脂肪酸の、エチル、プロピル、ブチル、特にメチルエステルの市販混合物であり、該脂肪酸は、例えば下記の脂肪酸である:カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、オレイン酸、エライジン酸、ペトロセリン酸、リシノール酸、エレオステアリン酸、リノール酸、リノレン酸、エイコサン酸、ガドレイン酸、ドコサン酸、またはエルカ酸。
【0079】
本発明の特定の態様において、好ましくは少なくとも10質量%、より好ましくは少なくとも30質量%、最も好ましくは少なくとも40質量%の、メタノールおよび/またはエタノールから誘導される飽和脂肪酸エステルを含有するバイオディーゼル燃料が使用される。特に、これらのエステルは、脂肪酸基に少なくとも16個の炭素原子を有する。これらは、特に、パルミチン酸およびステアリン酸のエステルを包含する。
【0080】
コスト上の理由により、これらの脂肪酸エステルは、一般に、混合物として使用される。本発明に従って使用可能なバイオディーゼル燃料は、好ましくは、多くても150、特に多くても125、より好ましくは多くても70、最も好ましくは多くても60の、ヨウ素価を有する。ヨウ素価は、脂肪または油における不飽和化合物の含有量のそれ自体既知の測度であり、これはDIN 53241−1に従って測定することができる。この結果、本発明の燃料組成物は、ディーゼルエンジンにおいて、特に低いレベルの付着物を形成する。さらに、これらの燃料組成物は、特に高いセタン価を有する。
【0081】
一般に、本発明の燃料組成物は、少なくとも0.5質量%、特に少なくとも3質量%、好ましくは少なくとも5質量%、より好ましくは少なくとも15質量%のバイオディーゼル燃料を含有しうる。本発明の他の態様によれば、本発明の燃料組成物は、少なくとも80質量%、より好ましくは少なくとも95質量%のバイオディーゼル燃料を含有しうる。
【0082】
好ましくは、1000〜10000g/molの数平均分子量Mnおよび1〜8の多分散度Mw/Mnを有する少なくとも1つのポリアルキル(メタ)アクリレートポリマー、およびアルキル残基に1〜30個の炭素原子を有する少なくとも1つのアルキル(メタ)アクリレートから誘導される単位を含む少なくとも1つのエチレンビニルアセテートコポリマーの合計量は、本発明の燃料組成物の0.01〜5質量%、特に0.05〜1質量%、好ましくは0.1〜0.5質量%、より好ましくは0.2〜0.4質量%を占める。
【0083】
本発明の燃料組成物は、課題に対する特定の解決策を得るために、付加的添加剤を含有しうる。これらの添加剤は、分散剤、例えば、ワックス分散剤および極性物質用分散剤、抗乳化剤、脱泡剤、潤滑性添加剤、酸化防止剤、セタン価向上剤、清浄剤、染料、腐食抑制剤および/または臭気剤を包含する。
【0084】
少なくとも20質量%の鉱物由来ディーゼル燃料、少なくとも3質量%のバイオディーゼル燃料および0.05〜5質量%の本発明組成物を含有する燃料組成物により、意外にも、鉱物ディーゼル燃料に極めて類似した特性プロフィールを有し、極めて高い比率の再生可能原料を含有する燃料組成物を提供することができる。
【0085】
少なくとも20質量%の鉱物由来ディーゼル燃料、および少なくとも3質量%のバイオディーゼル燃料を含有するこれらの組成物は、慣例的に使用されるシール材を腐食させずに、従来のディーゼルエンジンに使用することができる。
【0086】
さらに、現在のディーゼルエンジンは、エンジンコントロールを変える必要なしに、本発明の燃料を使用して作動させることができる。
【0087】
好ましい燃料組成物は、下記から成る:
20.0〜97.95質量%、特に70〜94.95質量%の、鉱物ディーゼル燃料;
2.0〜79.95質量%、特に5.0〜29.95質量%の、バイオディーゼル燃料;
0.05〜5質量%、特に0.1〜1質量%の、ポリアルキル(メタ)アクリレートポリマーおよびアルキル残基に1〜30個の炭素原子を有する少なくとも1つのアルキル(メタ)アクリレートから誘導される単位を含むエチレンビニルアセテートコポリマー;および
0〜60質量%、特に0.1〜10質量%の、添加剤。
【0088】
本発明の燃料組成物は、好ましくは多くても30、より好ましくは多くても20、最も好ましくは多くても10のヨウ素価を有する。
【0089】
さらに、本発明の燃料組成物は、顕著な低温特性を有する。特に、ASTM D97による流動点(PP)は、好ましくは、0℃以下、好ましくは−5.0℃以下、より好ましくは−10.0℃以下の値を有する。DIN EN 116に従って測定される濾過性限界(目詰まり点、CFPP)は、好ましくは高くても0℃、より好ましくは高くても−5℃、より好ましくは高くても−10℃である。さらに、好ましい燃料組成物のASTM D2500による曇り点(CP)は、0℃以下、好ましくは−5℃以下、より好ましくは−10℃以下と考えられる。
【0090】
本発明の燃料組成物のDIN 51773によるセタン価は、好ましくは少なくとも50、より好ましくは少なくとも53、特に少なくとも55、最も好ましくは少なくとも58である。
【0091】
本発明の燃料組成物の粘度は、広範囲にわたることができ、この特徴は使用目的に応じて調節することができる。この調節は、例えば、バイオディーゼル燃料または鉱物ディーゼル燃料を選択することによって行なうことができる。さらに、粘度は、使用されるエステル含有ポリマーの量および分子量によっても変化させられる。好ましい本発明の燃料組成物の動粘度は、ASTM D445に従って40℃で測定して1〜10mm2/s、より好ましくは2〜5mm2/s、特に好ましくは2.5〜4mm2/sである。
【0092】
従って、1000〜10000g/molの数平均分子量Mnおよび1〜8の多分散度Mw/Mnを有するポリアルキル(メタ)アクリレートポリマー、およびアルキル残基に1〜30個の炭素原子を有する少なくとも1つのアルキル(メタ)アクリレートから誘導される単位を含むエチレンビニルアセテートコポリマーを、鉱物由来ディーゼル燃料および/またはバイオディーゼル燃料を含有する燃料組成物において、0.05〜5質量%の濃度で流動向上剤として使用することは、非常に優れた特性を有する燃料組成物を与える。
【0093】
本発明を実施例および比較例に関して以下に詳しく説明するが、決して限定することを意図するものではない。他に規定されない限り、パーセンテージは質量パーセントである。
【0094】
PAMA−1の製造
US 4056559に開示されているアニオン重合法を使用して、ポリアルキル(メタ)アクリレートポリマーを調製した。
【0095】
346.50gのドデシルペンタデシルメタクリレート(DPMA)、3.50gのメチルメタクリレート(MMA)および38.90gの希釈油を含有する混合物を、1L4口反応器に乾燥窒素下で装填した。その撹拌溶液を60℃に加熱した。1.75gのカリウムメトキシド溶液(メタノール中32質量%の溶液)を添加した。混合物の色がオレンジ色になった。混合物を93℃にさらに加熱した。温度が75〜80℃に達した後、発熱反応によって温度が約110〜120℃に上昇した。さらに3時間、混合物を撹拌することによって、反応を93℃に維持した。混合物を60℃に冷却した。CH3OKを含有するPAMAポリマー溶液を、酸(例えば、HCl、酢酸)で鎮めて、実質的に全ての色を除去した。混合物の色が、オレンジ色から無色に変化したが、カリウム塩および少量の水の存在により濁りをおびていた。溶液をさらに30分撹拌した。約1質量%の高吸収剤Favor SXM 7500をポリマー混合物に添加し、混合物をさらに10〜15分撹拌した。デカライト床を濾過助剤として真空濾過器を使用し、ポリマー溶液を精製した。少なくとも12標準(Polymer Standards ServiceまたはPolymer Laboratories)の組から成るポリメチルメタクリレート較正曲線(そのMピークは、1x106〜2x102g/molにわたって対数的に均一に分布していた)を使用して、分子量を、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)によってテトラヒドロフラン中35℃で分析した。4つのカラムの組合せ(Polymer Standards SDV 100Å/2xSDV LXL/SDV 100Å)を使用した。
【0096】
数平均分子量Mn=4,000Daであり、重量平均分子量Mw=6,000Daであり、多分散度指数PDI(Mw/Mn)=1.50であった。以下、得られたポリマーをPAMA−1と称す。
【0097】
PAMA−2の製造
US 4,694,054またはUS 4,526,945に開示されている触媒連鎖移動重合法を使用して、ポリアルキル(メタ)アクリレートポリマーを調製した。
【0098】
コバルト(II)キレート錯体触媒ビス−(ジメチルグリオキシムボロンジフルオリド)−コバルト(II)を、A.Bakac et al., J.Am.Chem.Soc.,106,5197−5202(1984)の方法によって調製した。
【0099】
346.50gのドデシルペンタデシルメタクリレート(DPMA)、3.50gのメチルメタクリレート(MMA)および55ppmのコバルト(II)錯体触媒を含有する混合物を、1L4口反応器に乾燥窒素下で装填した。その撹拌混合物を95℃に加熱した。THF中に10%のベンゾイルペルオキシド溶液を含有する19.25gの開始剤溶液を、6.1mL/時の一定流量で90分間にわたって反応器に導入した。
【0100】
開始剤を添加した後、反応を75℃でさらに15分撹拌した。7gの開始剤(10%溶液)を添加する。混合物をさらに3時間撹拌する。
【0101】
分子量を、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)によって分析した。数平均分子量Mn=3,960Daであり、重量平均分子量Mw=5,750Daであり、多分散度指数PDI(Mw/Mn)=1.45であった。以下、得られたポリマーをPAMA−2と称す。
【0102】
PAMA−3の製造
108.8gの希釈油を、1L4口反応器に乾燥窒素化で装填し、160℃で撹拌した。445.5gのドデシルペンタデシルメタクリレート(DPMA)、4.5gのメチルメタクリレート(MMA)および26.1gのジ−t−ブチル−ペルオキシドを含有するモノマー混合物を調製した。モノマーを、160℃で5時間にわたって希釈油に添加した。反応を、さらに75分、160℃で維持した。混合物を110℃の温度に冷却した。次に、20%t−ブチルペルオキシ−2−エチル−エキサノエートを含有する4.5gの希釈油を、15分間にわたって添加した。混合物を110℃でさらに90分撹拌した。
【0103】
分子量を、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)によって分析した。数平均分子量Mn=4,800Daであり、重量平均分子量Mw=7,640Daであり、多分散度指数PDI(Mw/Mn)=1.58であった。以下、得られたポリマーをPAMA−3と称す。
【0104】
EVA−1の製造
約33質量%ビニルアセテートおよび数平均分子量Mn=47,600Daを有する20gのEVAコポリマー(商品名Miravithen 33−025でInnospec Leuna GmbHにより市販されている)を、100℃で一晩にわたる混合物の撹拌によって、150gの希釈油に溶解した。温度を90℃に調節した。次に、0.5%t−ブチルペルオキシ−2−エチル−ヘキサノエートを含有する80gのドデシルペンタデシルメタクリレート(DPMA)を、EVAコポリマー溶液に3.5時間にわたって添加した。90℃でさらに2時間混合物を撹拌することによって、反応を維持した。次に、0.2%t−ブチルペルオキシ−2−エチル−ヘキサノエートを添加し、混合物をさらに45分維持した。数平均分子量Mn=53,000Daであり、重量平均分子量Mw=124,000Daであり、多分散度指数PDI(Mw/Mn)=2.33であった。以下、得られたポリマーをEVA−1と称す。
【0105】
EVA−2の製造
約28質量%ビニルアセテートおよび数平均分子量Mn=33,200Daを有する20gのEVAコポリマー(商品名Evatane 28−150でArkema Incにより市販されている)を、100℃で一晩にわたる混合物の撹拌によって、150gの希釈油に溶解した。温度を90℃に調節した。次に、20gのヘキシルオクチルデシルメタクリレート(HODMA)、および0.5%t−ブチルペルオキシ−2−エチル−ヘキサノエートを含有する60gのドデシルテトラデシルヘキサデシルメタクリレート(LIMA)を、EVAコポリマー溶液に3.5時間にわたって添加した。90℃でさらに2時間混合物を撹拌することによって、反応を維持した。次に、0.2%t−ブチルペルオキシ−2−エチル−ヘキサノエートを添加し、混合物をさらに45分維持した。数平均分子量Mn=50,400Daであり、重量平均分子量Mw=111,000Daであり、多分散度指数PDI(Mw/Mn)=2.20であった。以下、得られたポリマーをEVA−2と称す。
【0106】
実施例1〜6および比較例1〜7
前記製造例に従って得たポリマーを使用して、本発明組成物を調製した。ポリマーを、60〜80℃で最低1時間撹拌することによってブレンドした。無色混合物は安定であり、燃料添加剤として直接的に使用した。以下の試験のために、CFPP=−14℃を有するADM Hamburg AGのRME(2008/518)を、燃料油として使用した。
【0107】
比較例6は、US 2005/0183326に従って行なった。約27質量%のビニルアセテートを含有するEVAコポリマーおよびジアルキルマレエートの添加剤混合物を使用した。添加剤混合物は、約30質量%のジアルキルマレエートおよび70質量%のEVAを含有していた。ポリマーの分子量は、およそ以下の通りであった:Mn=4,350、Mw=9,750Da、PDI=2.24。
【0108】
比較例7は、US 5,743,923に従って行なった。33質量%のビニルアセテートを含有するEVAコポリマーおよび約10質量%のC16-18フタルイミド塩の添加剤混合物を使用した。ポリマーの分子量は、およそ以下の通りであった:Mn=2,200Da、Mw=8,300Da、PDI=3.69。
【0109】
第1表は、前記ポリマーを使用した場合の、RMEの低温流動特性の向上を示す。種々の量のポリマーを含有する燃料油の低温流動特性を、ASTM D6371に従って測定される目詰まり点(CFPP)試験によって判定した。
【0110】
第1表
【表1】

【0111】
【表2】

【0112】
【表3】

【0113】
結果は、新規低温流動向上剤の使用の明らかな利点を明確に示している。新規組成物は、極めて低い目詰まり点を与える。目詰まり点の温度は、各成分の温度よりかなり低い。その問題点に関して、補助添加剤を用いずに使用したEVA−1は、比較例1に示されるように何らの向上も与えない。そのデータは、従来のPAMA基剤またはEVA基剤添加剤と比較して、新規添加剤が有意な便益を与えることも示した。先行技術の組成物は、極めて特定の濃度においてのみ、許容される低温性能を与える。従来の添加剤と比較して、新規添加剤の作用処理率は、かなり広範囲である。さらに、ごく少量の高価格EVAコポリマーを使用して、高い性能が得られる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記:
1000〜10000g/molの数平均分子量Mn、および1〜8の多分散度Mw/Mnを有する、少なくとも1つのポリアルキル(メタ)アクリレートポリマーと、
アルキル残基に1〜30個の炭素原子を有する少なくとも1つのアルキル(メタ)アクリレートから誘導される単位を含む、少なくとも1つのエチレンビニルアセテートコポリマーと
を含む組成物。
【請求項2】
前記ポリアルキル(メタ)アクリレートポリマーが、少なくとも50質量%の、アルキル残基に7〜15個の炭素原子を有するアルキル(メタ)アクリレートから誘導される単位を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ポリアルキル(メタ)アクリレートポリマーの多分散度Mw/Mnが1.1〜5の範囲である、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記ポリアルキル(メタ)アクリレートポリマーが、ヒドロキシル含有モノマーおよび/またはエーテルアルコールの(メタ)アクリレートから誘導される単位を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記エチレンビニルアセテートコポリマーが、2〜30質量%のビニルアセテートを含有する、請求項1から4までのいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記エチレンビニルアセテートコポリマーが、30〜80質量%の、アルキル残基に1〜30個の炭素原子を有する少なくとも1つのアルキル(メタ)アクリレートから誘導される単位を含む、請求項1から5までのいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記エチレンビニルアセテートコポリマーが、5〜40質量%の、エチレンから誘導される単位を含む、請求項1から6までのいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記エチレンビニルアセテートコポリマーが、0〜20質量%の、コモノマーから誘導される単位を含む、請求項1から7までのいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記エチレンビニルアセテートコポリマーが、1000〜120000g/molの数平均分子量Mnを有する、請求項1から8までのいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記エチレンビニルアセテートコポリマーが、30〜90質量%の、アルキル残基に7〜15個の炭素原子を有する少なくとも1つのアルキル(メタ)アクリレートから誘導される単位を含む、請求項1から9までのいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記エチレンビニルアセテートコポリマーがグラフトコポリマーであって、エチレンビニルアセテートコポリマーをグラフトベースとして有し、かつアルキル残基に1〜30個の炭素原子を有するアルキル(メタ)アクリレートをグラフトレイヤーとして有するグラフトコポリマーである、請求項1から10までのいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
グラフトベースとグラフトレイヤーとの質量比が1:1〜1:8である、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記ポリアルキル(メタ)アクリレートポリマーと前記エチレンビニルアセテートコポリマーとの質量比が、15:1〜1:1である、請求項1から12までのいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
多くても70質量%の希釈油を含有する添加剤組成物である、請求項1から13までのいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
少なくとも70質量%の燃料油を含有する燃料油組成物である、請求項1から14までのいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
前記燃料油が鉱油を含有する、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
前記燃料油がバイオディーゼル油を含有する、請求項15または16に記載の組成物。
【請求項18】
前記バイオディーゼルが、1〜4個の炭素原子を有する一価アルコールから誘導される脂肪酸エステルを含有する、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
前記バイオディーゼルが、少なくとも10質量%の、メタノールおよび/またはエタノールおよび飽和脂肪酸から誘導される脂肪酸エステルを含有する、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
1000〜10000g/molの数平均分子量Mnおよび1〜8の多分散度Mw/Mnを有する少なくとも1つのポリアルキル(メタ)アクリレートポリマー、およびアルキル残基に1〜30個の炭素原子を有する少なくとも1つのアルキル(メタ)アクリレートから誘導される単位を含む少なくとも1つのエチレンビニルアセテートコポリマーを含む組成物を、燃料組成物における流動向上剤として使用する方法。

【公表番号】特表2013−506018(P2013−506018A)
【公表日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−530186(P2012−530186)
【出願日】平成22年7月21日(2010.7.21)
【国際出願番号】PCT/EP2010/060518
【国際公開番号】WO2011/035947
【国際公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(399020957)エボニック ローマックス アディティヴス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (38)
【氏名又は名称原語表記】Evonik RohMax Additives GmbH
【住所又は居所原語表記】Kirschenallee, D−64293 Darmstadt, Germany
【Fターム(参考)】