説明

燃料油製造方法

【課題】ワックス分の留出を低減でき、低粘度で、流動点および目詰まり点が低い燃料油を、従来の方法に比べて効率良く製造し得る、燃料油の製造方法の提供。
【解決手段】パーム果房、パーム果実、パーム粉末、パーム油、ココヤシの果実、ココナッツ油、ジャトロファの果実、植物性廃食用油および動物性廃食用油からなる群から選択される少なくとも1種の油糧をアルカリ性化合物と混合し、300〜550℃で熱分解して燃料油を得る燃料油製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は燃料油製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、世界的規模で地球温暖化現象が重大な問題となっており、その解決策の一つとして、化石燃料の代替燃料となり得るバイオマスエネルギーが盛んに研究されて実用化されつつある。
バイオマスエネルギーの中でもバイオディーゼル燃料(BDF)が、軽油代替燃料として注目されている。BDFの原料としては主に大豆が使用されているが、大豆は多くの国で主食として利用されている他、家畜の飼料としても利用されている。そのため、BDFへの大豆の利用により、世界各国で食糧難を引き起こす可能性や、大豆以外にも日常品価格の高騰等が現実に問題となっている。
【0003】
従来、BDFは、動植物の油脂に、メタノール、アルカリ性化合物等を加えて60〜260℃程度でエステル交換反応を行う方法により製造されている(例えば、特許文献1〜2参照)。従来のBDFの製造方法は、パーム油、大豆油、廃食物油等のオイルをエステル交換してBDFを得る方法であり、例えば、パームを原料とする場合は、パームの房実(Fresh Fruit Bunch、以下「FFB」ともいう。)にスチームを当てる蒸煮法により果実の状態にし、その果実から搾油、洗浄して得られる粗パーム油(CPO)にする工程が必要であるためコストが高くなる。また、FFBから果実を得る際に生じる廃水が問題となる。
更に、CPOを原料とする場合は、CPOの前段階のパームの果実の質量を100%としたとき、得られるBDFは20%程度であった。この収率では、パームの果実が比較的安価であるといっても結果としてコストが高くなり、商品化するためには収率の向上が必要である。
【0004】
【特許文献1】特開2005−29715号公報
【特許文献2】特開2008−81730号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1〜2等に記載の従来のエステル交換によるBDFの製造方法は、油糧のエステル交換を行っているが熱分解は行っていないため、粘度が高くなる、流動点および目詰まり点が高くなり寒冷地での使用が困難になる等の品質上の問題や、グリセリンを分離する工程が必要であるため製造コストが高くなるという問題や、分離したグリセリンは廃棄物となるという環境上の問題がある。
【0006】
一方、主原料であるパーム油等の植物性油脂や動物性油脂を熱分解しようとすると、通常の熱分解反応条件では多量のワックス分が留出してしまい製品とすることが難しい。また、得られる熱分解油は、臭気が強く、酸価が高いため短時間で着色する。
【0007】
そこで、本発明は、ワックス分の留出を低減でき、低粘度で、流動点および目詰まり点が低い燃料油を、従来の方法に比べて最小の前処理で効率良く製造し得る、燃料油の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、鋭意検討した結果、パーム油等の油糧をアルカリ性化合物と混合し、300〜550℃で熱分解することにより、ワックス分の留出を低減でき、低粘度で、流動点および目詰まり点が低い燃料油を得ることができ、熱分解反応時間も短縮できることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
すなわち、本発明は、以下の(1)〜(6)を提供する。
(1)パーム果房、パーム果実、パーム粉末、パーム油、ココヤシの果実、ココナッツ油、ジャトロファの果実、植物性廃食用油および動物性廃食用油からなる群から選択される少なくとも1種の油糧をアルカリ性化合物と混合し、300〜550℃で熱分解して燃料油を得る燃料油製造方法。
(2)前記油糧が、パーム果房、パーム果実、ココヤシの果実およびジャトロファの果実からなる群から選択される少なくとも1種である上記(1)に記載の燃料油製造方法。
(3)前記油糧がパーム果房である上記(2)に記載の燃料油製造方法。
(4)前記アルカリ性化合物が、グリセリンに溶解し得るアルカリ性化合物である上記(1)〜(3)のいずれかに記載の燃料油製造方法。
(5)前記アルカリ性化合物を前記油糧100質量部に対して2〜15質量部添加する上記(1)〜(4)のいずれかに記載の燃料油製造方法。
(6)前記油糧を熱分解して気化されたガスから分留した熱分解油について溶剤抽出を行い、燃料油を得る上記(1)〜(5)のいずれかに記載の燃料油製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の燃料油製造方法によれば、ワックス分の留出を低減でき、低粘度で、流動点および目詰まり点が低い燃料油を、従来の方法に比べて最小の前処理で効率良く製造し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明をより詳細に説明する。
本発明の燃料油製造方法(以下「本発明の製造方法」という。)は、パーム果房、パーム果実、パーム粉末、パーム油、ココヤシの果実、ココナッツ油、ジャトロファの果実、植物性廃食用油および動物性廃食用油からなる群から選択される少なくとも1種の油糧をアルカリ性化合物と混合し、300〜550℃で熱分解して燃料油を得る燃料油製造方法である。
【0012】
本発明の製造方法において燃料油の原料として用いる油糧は、パーム果房、パーム果実、パーム粉末、パーム油、ココヤシの果実、ココナッツ油、ジャトロファの果実、植物性廃食用油および動物性廃食用油からなる群から選択される少なくとも1種である。
前記植物性廃食用油や前記動物性廃食用油としては、例えば、大豆油、菜種油、ひまわり油、綿実油、胡麻油、落花生油、椿油等の植物性油脂の使用済み廃油;牛脂、豚脂、馬脂、魚油、鯨油等の動物性油脂の使用済み廃油;等が挙げられる。本発明は、従来は廃棄されていた廃食用油を用いても良質な燃料油を得ることができるため、省資源の観点からも環境上の観点からも大きなメリットがあり、極めて有用である。
【0013】
また、本発明においては、従来の方法と異なり、アルカリ性化合物存在下高温で熱分解するため、前記油糧として、オイルに加工されていない、パーム果房、パーム果実、ココヤシの果実およびジャトロファの果実からなる群から選択される少なくとも1種を用いても良質な燃料油を得ることができ、かつ、収率も向上できる。この方法ではオイルに加工する工程が不要であるため、効率良く製造することができ、コストを抑えることができる。
【0014】
前記房実は、Fresh Fruit Bunch(FFB)とも呼ばれ、通常、パームの木から採取されるのはFFBの状態である。このFFBを蒸煮法等により処理することにより果実とすることができる。さらに、果実を搾油、洗浄してパーム油(CPO)を得ることができる。本発明の製造方法においては、FFBをそのまま熱分解することができる。また、FFBを粉砕した後に熱分解してもよい。
ここで、FFBを果実に加工する際の凝縮水量は多く、BOD値(Biochemical−Oxygen−Demand)も高いため通常の廃水処理方法では処理が難しいため環境問題となり、処理コストが多大であった。一方、本発明の製造方法において、特に、前記油糧としてパームのFFBを用いた場合、FFBを果実やパーム油に加工する前処理工程が一切不要となり、コストを大幅に低減でき、廃水もでないため環境面でのメリットも大きい。さらに、FFBの状態で、またはFFBを粉砕したものを熱分解すると、従来、実や油に加工する際に捨てていた部分に含まれる油分も使用することとなるため、燃料油の収率が極めて高くなる。
【0015】
本発明の製造方法においては、前記油糧の熱分解をアルカリ性化合物と混合した状態で行うことにより、ワックス分の留出を低減でき良質な燃料油を得ることができる。
前記アルカリ性化合物としては、水酸化物、炭酸塩、硫酸塩、ハロゲン化物、アミン類等が使用可能であるが、ワックス分の留出を低減する効果が高い点から、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物であることが好ましい。
また、ワックス分の留出を低減する効果が高い点から、グリセリンに溶解し得るアルカリ性化合物であるのが好ましい。このようなアルカリ性化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等が好適に挙げられる。
【0016】
本発明の製造方法においては、前記アルカリ性化合物を、前記油糧100質量部に対して、2〜15質量部添加するのが好ましく、5〜10質量部添加するのがより好ましい。添加量がこの範囲であると、ワックス分の留出をより低減できる。
【0017】
本発明の製造方法は、前記油糧を前記アルカリ性化合物と混合した状態で300〜550℃、好ましくは350〜500℃で熱分解を行う。
本発明の製造方法では、反応温度を従来のエステル交換反応のものよりも高くすることによって、前記油糧を熱分解することができ、その結果、従来の燃料油に比べて、比重が小さくなり、粘度も低くなり、流動点および目詰まり点も低い燃料油を得ることができる。
【0018】
温度以外の熱分解反応の条件は、特に限定されないが、圧力は0〜5kg/cm2が好ましく、反応時間は1〜6時間が好ましい。
【0019】
また、熱分解して気化したガスからワックス分を分留し、再び熱分解を行うのが好ましい。このようにすることで、よりワックス分が少ない燃料油を得ることができ、収率も向上できる。
熱分解槽(前記油糧の熱分解が行われる容器)の出口の気化部に還流機能をもたせるか、ワックス分を熱分解槽へ戻す構造とすることにより、熱分解油の品質は更に改善される。
【0020】
また、熱分解反応を行うと、熱分解槽の内壁にコークが生成して熱伝達が悪化するため、熱分解槽内に回転流動機能をもたせるか、熱分解槽内に熱分解油と過熱蒸気を混合させた高温ガスを直接吹き込むのが好ましい。これらの方法以外に、撹拌しながら熱分解を行うことにより槽内壁にコークが付着することを防止できる方法も好ましい。
【0021】
系外に移送された重質液は、更に高温域で油分を蒸発し、カーボン残渣とするのが好ましい。このカーボン残渣は付加価値のある活性炭原料として使用し得る。
【0022】
本発明の製造方法においては、前記油糧を熱分解して気化されたガスから分留した熱分解油について溶剤抽出を行い、燃料油を得るのが好ましい。熱分解油は、そのままでは酸価(mgKOH/g)値が高いが、溶剤を混合して不純物を抽出(洗浄)することにより適度な酸価にすることができ、また、臭気も低減することができる。また、前記油糧を熱分解して気化されたガスから中質油を分留し、前記中質油について溶剤抽出を行い、燃料油を得るのがより好ましい。
溶剤抽出は2回以上行ってもよい。複数回行うことにより、酸価がより改善される。
【0023】
溶剤抽出に使用する溶剤の種類としては、例えば、メタノール、エタノール等のアルコール類、アセトン等のケトン類等、ジメチルエーテル等のエーテル類等が挙げられるが、抽出効果が高く、入手し易い点からもアルコール類が好ましい。
抽出(洗浄)方法は、例えば、前記中質油と溶剤とを十分に混合した後静置し、分離した不純物を含む溶剤層を取り除くことにより行うことができる。取り除かれた不純物を含む溶剤は、蒸発して分離することにより再度利用することができる。
【0024】
溶剤抽出法の一例としてメタノールを使用した例を以下に示す。
熱分解油にメタノールを1:1の割合で加え、常温下で2分〜15分間接触撹拌した後、約30分静置分離する。分離された熱分解油に少量含まれ得るメタノールを蒸発回収する。不純物を含んだメタノールは蒸発させ、メタノールは凝縮回収して再利用する。蒸発槽の底には不純物が濃縮して残存する。メタノールの回収率は約97%である。この工程を1〜2回経ることにより、酸価が適度に低くなり、熱分解油は安定化する。
【0025】
油糧が、油(液体)、粉末、果実の場合は、竪型反応器、流動床式反応器を使用するのが好ましい。パ−ムのFFBまたは果実の状態で処理する場合は、破砕なし若しくは粗破砕のまま乾燥機(ロ−タリ−キルン)で水分を脱水後にアルカリ性化合物と一緒に無酸素状態で熱分解反応器(ロ−タリ−キルン)に投入するのが好ましい。乾燥機の熱は乾燥機を回転させながら過熱蒸気を原料に直接接触させる。熱分解は熱分解油と過熱蒸気混合流体を加熱炉で430〜500℃に加熱した高温ガスを回転機能を有する熱分解反応器に直接吹き込む事が好ましい。
【0026】
熱分解反応器の平均温度は、常圧の場合、約430℃で運転するのが好ましい。炭化する温度は約520℃である。
【0027】
油糧が、油(液体)、粉末の場合、水分は少ないがFFBまたは果実では20〜50質量%の多量の水分を含むので熱分解する前に乾燥脱水を行なうことが好ましい。熱分解反応器で熱分解された気化流体は3基の凝縮器で重質油/中質油/軽質油・水分/分解ガスに分離される。重質油は熱分解反応器に戻され、中質油は高品質化(溶剤抽出)工程に送られBDFに、分解ガスと軽質油の一部は自家燃料に、排水は活性炭処理後にボイラ−給水と冷却水に使用する。
【0028】
熱分解反応器の底に溜まる気化しない液体は別途小型ロ−タリ−キルン等でハ−ド(高温)熱分解して炭化物とする事が好ましい。油分を含まない炭化物は冷却用スクリュ−コンベア−で排出粉砕し活性炭原料とする事が好ましい。
【0029】
本発明の製造方法は、前記油糧をアルカリ性化合物と混合し、300〜550℃で熱分解することにより、ワックス分の留出を低減でき、良質な燃料油を得ることができる。さらに、得られる燃料油は、低粘度であるため取扱い性に優れ、流動点および目詰まり点が低いため従来使用できなかった寒冷地でも使用できるため、極めて有用である。また、本発明の製造方法では、アルカリ性化合物を添加することにより熱分解反応時間を短縮できるため、このような燃料油を従来の方法に比べて効率良く製造できる。
また、本発明の製造方法は、植物または廃食油から燃料油を得るため、CO2削減に大きく寄与し、かつ、化石燃料の依存率を下げることが可能である。また、高価な触媒と高温高圧水素添加方式でなく、本発明に用いる装置は分散型設置も可能な低コストの処理法である。
【0030】
本発明の製造方法により得られる熱分解油は主に、軽質油(沸点150℃未満)、中質油(沸点150℃以上)に分けられるが、主体である中質油は、バイオディーゼル燃料として使用できる。本発明により得られる中質油は、セタン価が65、流動点、目詰まり点が−17.5℃、硫黄分2ppmとなり得るので、自動車用ディーゼル燃料、ボイラー用燃料、発電機用燃料として極めて有用であり、大気汚染防止にも有効である。
【0031】
植物性油脂や動物性油脂の熱分解油は酸価が高いために変質(変色、臭気、沈殿物)するがメタノール等による溶剤抽出を採用することにより、油質は安定し、長期保存が可能となる。
また、パームのFFBまたは果実を原料とした場合の熱分解残渣は、ヤシ殻炭であるので付加価値の高い粒状活性炭の原料となる。
【実施例】
【0032】
以下、実施例を示して、本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)
油糧として、パームを粉末化したものとパーム果実を使用した。
図1は、実施例1に用いた装置の概念図である。図1に示すように、粉末化したパームを、定量供給機1にて撹拌機付きの溶融槽2に投入し、約90℃に加熱して溶融した。その後、溶融したパームを原料供給ポンプ3にて中質油凝縮器5および重質油(ワックス)凝縮器6にて加熱され、重質油槽7に移送した。重質油槽7において竪型熱分解槽12または小型キルン装置14から送られてきた熱分解ガスと熱交換し加熱したパームを加熱炉供給ポンプ10にて管式加熱炉11に移送し、450℃に加熱した。管内コーキングを抑制するために、フィード量に対して約2質量%のスチームと15℃換算で約5m/secの管内流速を維持し、管式加熱炉11内のHEAT FLAXを22000kal/m2・Hrとした。420℃の流体は、竪型熱分解槽12に入り、2〜5時間の滞留時間を与えた。ここに、パームの果実を竪型熱分解槽12の上部から定量供給機13を使用して供給した。水酸化カルシウム(Ca(OH)2)をパーム油およびパームの果実の合計100質量部に対して10質量部加え、無酸素の状態で熱分解した。
次に、竪型熱分解槽12で気化した油と未分解残油を得た。未分解油は、小型キルン装置14に移送した。気化したガスは中質油凝縮器5および重質油凝縮器6と軽質油凝縮器4で中質油を中質油槽8に、軽質油と水分を軽質油槽9に、分解ガスを分解ガス槽15に分留した。分解ガス槽15に分留された分解ガスはシールポットを介して管式加熱炉11に送られ、また、軽質油の一部は軽質油槽9からポンプ20により管式加熱炉11に送られ、それぞれ燃料として利用した。また、水分は活性炭処理し、冷却水として利用した。中質油槽8に分留された中質油は、ポンプ19により高品質化装置16に送られ、そこでメタノールを使用して溶剤抽出が行われ、酸価が改善された。
また、重質油槽7に溜まったワックス分を含む液は、原料と一緒に再度管式加熱炉11にフィードした。
小型キルン装置14に移送された残油は約500℃まで加熱され、気化したガスは重質油槽7に移送した。また、固化した残渣は冷却器付きスクリューコンベアで残渣受槽18に移送され、このカーボン化した残渣は活性炭原料として利用できる。
なお、原料のパーム粉末の代わりにパーム油を使用してもよい。
【0033】
(実施例2)
油糧としてパ−ムのFFBを用いた。
図2は、実施例2に用いた装置を示す概念図である。パームのFFBを破砕なしでそのままFFB投入機101を介して横型回転式乾燥機(ロ−タリ−キルン)102に投入した。熱は過熱蒸気と向流接触しパ−ムのFFBに含まれる水分を蒸発分離した。蒸発分離した蒸気はサイクロン103で固形物と分離後一部はブロアー104を介して加熱器105で再過熱蒸気にし、横型回転式乾燥機(ロ−タリ−キルン)102に供給した。残りの一部は蒸気凝縮器106を介して水受槽107に送り冷却水となった。この水は活性炭排水処理装置119にて処理後ボイラ−水、冷却水として使用した。横型回転式乾燥機(ロ−タリ−キルン)102で乾燥されたパ−ムのFFBは破砕機能をもつ移送機で横型回転式熱分解反応器(ロ−タリ−キルン)109に投入した。同時にアルカリ化合物添加器108にてアルカリ化合物を2〜15質量%添加した。熱分解に必要な熱は重質油を加熱炉117で過熱蒸気と一緒に再加熱し気化(約470℃)させて横型回転式熱分解反応器(ロ−タリ−キルン)109に吹込んだ。横型回転式熱分解反応器(ロ−タリ−キルン)109で約450℃、反応時間3〜6時間与えることによりパ−ムは熱分解し、気化したガスは重質油凝縮器110で重質油槽111にて重質油ワックスが、中質油凝縮器112で中質油槽113にて中質油が凝縮し、軽質油凝縮器114で軽質油/水槽115にて軽質油と水が凝縮した。重質油ワックスは重質油加熱炉供給ポンプ116を介して加熱炉117に過熱蒸気とともに供給され出口温度は約450〜500℃にガス化され横型回転式熱分解反応器(ロ−タリ−キルン)109の熱源とした。中質油は冷却されて高品質化装置(溶剤抽出)120で酸化値を改善した。軽質油は加熱炉等の燃料油として使用され、水は活性炭配水処理装置119で処理され一部はボイラー121の水とし一部は冷却水として利用した。熱分解ガスは加熱炉117等の燃料として利用した。横型回転式熱分解反応器(ロ−タリ−キルン)109内で気化しない固形物残渣は炭化物抜出冷却器118で排出冷却され活性炭原料として利用した。
【0034】
実施例1〜2の燃料油製造方法によれば、ワックス分の留出を低減でき、低粘度で、流動点および目詰まり点が低い燃料油を、従来の方法に比べて効率良く製造できた。
【0035】
(実施例3)
パ−ムのFFB253.11gと水酸化カルシウム15gとを、バッチ式熱分解テスト機に装入し、熱分解、溶剤抽出および蒸留を行った。
熱分解反応は、370℃〜505℃で約4時間かけて常圧で実施した。370℃迄は水分が留出し、その後1時間半は水分と油分の混合液が留出し、その後2時間半は油分が留出した。留出物と残渣の合計100質量%中、FFBを原料としたために水分が47.4質量%と多いが、油分31.7質量%、熱分解ガスが8.5質量%、残渣が12.4質量%得られた。
流出した熱分解油にメタノールを混合し、不純物を含むメタノール層を取り除いた(溶剤抽出)。パーム油の熱分解油は、好ましくは炭素数5〜25の液体である。その熱分解油を110℃未満、110℃以上150℃未満、150℃以上に蒸留分離し、150℃以上の留分(中質油)について分析した結果を下記表1および表2に示す。
得られた油分の収率は、原料(FFB)の質量100%に対して31.7質量%であった。
【0036】
【表1】

【0037】
【表2】

【0038】
得られた実施例3の中質油のガスクロマトグラフ分析を行った。得られたチャートを図3に示す。
また、比較試料として軽油のガスクロマトグラフ分析を行った。得られたチャートを図4に示す。
【0039】
なお、熱分解で留出した水分と軽質油は活性炭で処理し、水分は透明になり、軽質油も安定した黄色となった。
残渣は完全な炭化物となっており、活性炭原料となり得る事を確認した。
また、分解ガスも熱量が8000kcal/kgあり、燃料として使用できることを確認した。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】図1は、本発明の燃料油製造方法に用いる装置の好適な態様の一例を示す概念図である。
【図2】図2は、本発明の燃料油製造方法に用いる装置の好適な態様の一例を示す概念図である。
【図3】図3は、実施例3で得られた中質油のガスクロマトグラフ分析の結果を示すチャートである。
【図4】図4は、軽油のガスクロマトグラフ分析の結果を示すチャートである。
【符号の説明】
【0041】
1 定量供給器
2 溶融槽
3 原料供給ポンプ
4 軽質油凝縮器
5 中質油凝縮器
6 重質油凝縮器
7 重質油槽
8 中質油槽
9 軽質油槽
10 加熱炉供給ポンプ
11 加熱炉
12 竪型熱分解槽
13 定量供給機
14 小型キルン装置
15 分解ガス槽
16 高品質化装置
18 残渣受槽
19 ポンプ
20 ポンプ
101 FFB投入機
102 横型回転式乾燥機
103 サイクロン
104 ブロアー
105 加熱器
106 蒸気凝縮器
107 水受槽
108 アルカリ化合物添加器
109 横型回転式熱分解反応器
110 重質油凝縮器
111 重質油槽
112 中質油凝縮器
113 中質油槽
114 軽質油凝縮器
115 軽質油/水槽
116 重質油加熱炉供給ポンプ
117 加熱炉
118 炭化物抜出冷却器
119 活性炭廃水処理装置
120 高品質化装置(溶剤抽出)
121 ボイラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パーム果房、パーム果実、パーム粉末、パーム油、ココヤシの果実、ココナッツ油、ジャトロファの果実、植物性廃食用油および動物性廃食用油からなる群から選択される少なくとも1種の油糧をアルカリ性化合物と混合し、300〜550℃で熱分解して燃料油を得る燃料油製造方法。
【請求項2】
前記油糧が、パーム果房、パーム果実、ココヤシの果実およびジャトロファの果実からなる群から選択される少なくとも1種である請求項1に記載の燃料油製造方法。
【請求項3】
前記油糧がパーム果房である請求項2に記載の燃料油製造方法。
【請求項4】
前記アルカリ性化合物が、グリセリンに溶解し得るアルカリ性化合物である請求項1〜3のいずれかに記載の燃料油製造方法。
【請求項5】
前記アルカリ性化合物を前記油糧100質量部に対して2〜15質量部添加する請求項1〜4のいずれかに記載の燃料油製造方法。
【請求項6】
前記油糧を熱分解して気化されたガスから分留した熱分解油について溶剤抽出を行い、燃料油を得る請求項1〜5のいずれかに記載の燃料油製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−1400(P2010−1400A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−162118(P2008−162118)
【出願日】平成20年6月20日(2008.6.20)
【出願人】(507262811)
【出願人】(597010307)
【Fターム(参考)】