説明

燃料蒸気回収制御弁装置

【目的】 給油時における燃料第1蒸気流入口のダイアフラム弁による封止性が良好である燃料蒸気回収制御弁装置を提供すること。
【構成】 給油口12を備えた燃料タンク14から燃料蒸気の放出を制御する燃料蒸気回収制御弁装置。ハウジング16と、該ハウジング16を上部・下部室18、20に区画するダイアフラム42により上下動する第1弁組立体22と、下部室20に内設される第2弁組立体24とからなる。ダイアフラム42が、中央節部42cと、該中央節部42cと外周縁部42bの間に中間節部42dとを備えた二重作動膜構造である。上部室18が、第1蒸気入口28と連通する上部内側室18aと、信号口26と連通する上部外側室18bとに、ダイアフラム42の中央節部42cと当接する筒状隔壁16cを介して区画されている。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、燃料蒸気回収車両搭載システムにおける燃料蒸気回収制御弁装置に関する。
【0002】
【従来の技術】自動車の燃料蒸気回収車両搭載システムとして、例えば、図1に示す構成のものが提案されている(国際公開公報PCT/US93/00719)。
【0003】給油口12を備えた燃料タンク14からの燃料蒸気の放出を制御する燃料蒸気回収弁装置であって、下記構成を有する。
【0004】ハウジング16と、ハウジング16を上部室18と下部室20とに区画するダイアフラム42で上下動する第1弁組立体22と、下部室20に内設される第2弁組立体(正圧弁)24とからなる。ここで、ハウジング16は、キャニスター30と連通する蒸気回収口32と、上部室18側に信号口26と第1蒸気流入口28とを備え、また、下部室20側に第2弁組立体24によって開閉する第2蒸気流入口34を備えている。信号口26は、給油口12と連通され、第1蒸気流入口28は、燃料遮断弁(フュエルカットオフバルブ)36を介して、第2蒸気流入口34は満タン規制バルブ38を介して、それぞれ燃料タンク14と連通されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】そして、第1蒸気流入口28のシール点は、図例の如く蒸気流入口28の下端で、ダイアフラム42の大径の支持板40の配設部位の中心部に形成されており、ダイアフラム42の作動膜部42aからの距離が大きい。
【0006】このため、支持板40に対するばね44の付勢力が偏心などしたりして、支持板40が傾斜したような場合、その傾斜を吸収しがたく、ダイアフラム42の第1蒸気流入口28に対するシール性に問題が発生しやすかった。
【0007】また、ダイアフラム42で区画された上部・下部室18、20は、直接的な導通口は有せず、燃料遮断弁36から第1蒸気流入口28を介して流入したときに蒸気が凝集して、液状態で滞留したまま、放置されるおそれがあった。
【0008】本発明の目的は、上記にかんがみて、給油時における燃料第1蒸気流入口のダイアフラム弁による封止性が良好である燃料蒸気回収制御弁装置を提供することにある。
【0009】本発明の他の目的は、ダイアフラム弁上に貯溜する燃料の排出が可能な燃料蒸気回収制御装置を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
(1) 本発明は上記第1の目的を請求項1に係る下記構成により解決する。
【0011】給油口を備えた燃料タンクから燃料蒸気の放出を制御する燃料蒸気回収制御弁装置であって、ハウジングと、該ハウジングを上部・下部室に区画するダイアフラムにより上下動する第1弁組立体と、下部室に内設される第2弁組立体とからなり、ハウジングは、上部室側に信号口と第1蒸気流入口とを備え、下部側に、キャニスターと導通する燃料回収口と、第2弁組立体によって開閉する第2蒸気流入口を備え、信号口は、給油口と連通され、第1蒸気流入口は、燃料遮断弁を介して、第2蒸気流入口は満タン規制バルブを介して、それぞれ燃料タンクと導通されている構成であって、ダイアフラムは、中央節部と、該中央節部と外周保持部の間に中間節部とを備えた2重作動膜構造であり、上部室が、第1蒸気入口と連通する上部内側室と、信号と連通する上部外側室とに、ダイアフラムの中央節部と当接する筒状隔壁を介して区画されている、(2) 本発明は、上記第2の目的を、請求項2に係る下記構成により解決するものである。
【0012】請求項1において、ダイアフラムの中央節部に上部室から下部室への導通孔が形成されるとともに、該導通孔を下面側で開閉する正圧弁体が配設されている。
【0013】
【実施例】以下、本発明の実施例を図例に基づいて説明をする。従来例と対応部分については、同一図符号を付すと共に、それらの説明の全部または一部を省略する。
【0014】A.本実施例の制御弁装置の基本構成は次の通りである。
【0015】ハウジング16と、ハウジング16を上部室18と下部室20とに区画するダイアフラム42により上下動する第1弁組立体22と、下部室20に内設される正負圧形の第2弁組立体24とからなる。ハウジング16は、上部室18側に信号口26と第1蒸気流入口28とを備えている。また、下部室側20側に、キャニスター30と連通する蒸気回収口32と、第2弁組立体24によって開閉する第2蒸気流入口34とを備えている。
【0016】そして、信号口26は給油口12と連通され、第1蒸気流入口28は、燃料遮断弁36を介して、第2蒸気流入口34は満タン規制バルブ38を介してそれぞれ燃料タンク14と連通されている。
【0017】ここまでは、従来例の構成と、ダイアフラムによって、上部室と下部室は、全域に区画されている以外は同じである。
【0018】なお、ハウジング16は、上下分割され、ダイアフラム42の外周縁部42bを挟持することにより、分割部位のシール構造を構成している。
【0019】B.本実施例の制御弁装置は、上記基本構成において、ダイアフラム42は、中央節部(中央厚肉部)42cと、該中央節部42cと外周縁部42bとの間に中間節部(中間厚肉部)42dとを備えている2重作動膜構造である。上部室18は、第1蒸気流入口28と連通する上部内側室18aと、信号口26と連通する上部外側室18bとに、ダイアフラム42の中央節部42cと当接する筒状隔壁16aで区画されている。
【0020】そして、ダイアフラム42の中央節部42cには、上部室18から下部室20への導通孔50が形成されるとともに、導通孔50を下面側で開閉する正圧弁体48が配設されている。
【0021】具体的には、ダイアフラム42の中間肉厚リング部42dは、上支持板52と、補助弁体48の収納ケースを兼ねる下支持板54とで挟持して保持され、上支持板52とハウジング上壁との間には、上押えばね56、下保持板54とハウジング16底壁との間には、第2弁組立体24の収納ケースを備える筒状ばね座58を介して下押えばね60が介装されている。下押えばね60と上押えばね56とで、中間節部42dをハウジング16の分割面位置にバランスをとって保持される結果となる。
【0022】なお、第2弁組立体24は、正負圧弁であって、弾性シール体62の弁口64を閉じ方向へばね66で付勢された負圧弁体68と、第2蒸気流入口34の上端開口縁34aを弁座とし前述のした押えばね60で閉じ方向に付勢されて弾性シール体62からなる正圧弁体とで構成されている。なお、第2弁組立体は従来例の如く正圧弁であってもよい。
【0023】C.次に、上記実施例の使用態様を説明する。
【0024】(1) 給油開始前、即ち、給油キャップ13を取り外した状態では、図3に示す如くになる。タンク14内が給油口12を介して大気と導通し、上部内側室18a、上部外側室18b及び下部室20が全て大気圧となり、ダイアフラム42の中央節部42cが筒状隔壁16aの下端開口縁に当接するとともに、中間節部42dが平衡位置にある。
【0025】(2) 給油時においては、図4に示す如くになる。上部外側室18bは信号口26及び給油口12を介して外気と導通して大気圧である。一方、燃料タンク14内は給油により燃料蒸気が発生して、正圧である。燃料タンク14内が一定圧以上となると、第2蒸気流入口34を閉じている第2弁組立体24が、上押えばね56及び下押えばね60の付勢力に抗して上方へ移動して、正圧弁体62が弁座34aから離れ第2蒸気流入口34が開(導通状態)となり、タンク14内の燃料蒸気は下部室20から蒸気回収口32を経て、キャニスター30へ導入される。このとき、中間節部42dは、上方へ移動する。
【0026】(3) 給油キャップ13を閉じたときには、上部内側室18a、上部外側室18b及び第2燃料蒸気流入口34が全てタンク14内と導通し、タンク14内圧と等しくなる。他方、下部室20は、キャニスター30を介して外気と導通しているので大気圧となる。
【0027】従って、タンク内圧が正圧の場合で、図5に示す如く、タンク内圧が第一段所定値以上のときは、ダイアフラム42の中間節部42dが、下押えばね60の付勢力に抗して、下方へ移動して、中央節部42cは、筒状隔壁16aの下端開口縁から離隔した状態にある。このとき、第1弁組立体22の正圧弁体48及び第2弁組立体(正負圧弁)24は、それぞれ中央節部42の導通孔50及び第2蒸気流入口34を閉じた状態にある。
【0028】タンク内圧がさらに上昇して、第2段所定値以上となると、正圧弁体48がばね46の付勢力に抗して開き、タンク内の燃料蒸気が第1蒸気流入口28から下部室20及び蒸気回収口32を経てキャニスター30へ導入される。このとき、ダイアフラム42上に凝集貯留した燃料は下部室20に流入する。
【0029】タンク内圧が負圧で一定値以下の場合は、図6に示す如くになる。即ち、ダイアフラム42の中間節部42dがばね56に抗して上方へ移動するとともに、第2弁組立体24の負圧弁体68が開き、タンク内がキャニスター30を介して外気と導通して、タンク14内にエアが流入する。
【0030】図7に示すものは、上記実施例において、付勢ばね体46Aを上部室18側に配して正圧弁体48Aの構造を替えたものである。上記実施例に比して、下記のような長所を有する。
【0031】第1弁組立体22をダイアフラム42に直に取付けることにより、正圧弁体48の開弁圧精度が向上するとともに、ダイアフラムの中間節部42dの上下方向位置にかかわらず、安定した開弁圧となる。即ち、上記実施例では、図6に示す如く、ダイアフラム42が上方へ持ち上がったとき、第1弁組立体22の押し付け力が増加し閉じ力が増大する。
【0032】使用態様は、上記実施例と同様である。
【0033】
【発明の作用・効果】本発明の燃料蒸気回収制御弁装置は、上記のような構成なので、下記のような効果を奏する。
【0034】(1) 第1弁組立体を上下動させるダイアフラムが中間節部を有する二重作動膜構造なので、上部内側室を上部外側室と区画する筒状隔壁下端と中央節部とのシール性が、付勢ばねのバランス不良等により阻害されることがない。
【0035】(2) 中央節部に上部室から下部室に導通する正圧弁により開閉する導通孔が形成されているため、ダイアフラム上に蒸気が凝縮貯溜することがない。
【図面の簡単な説明】
【図1】燃料蒸気回収制御弁装置の従来例を示す断面図。
【図2】本発明の燃料蒸気回収制御弁装置の一例を示す全体システム断面図。
【図3】同じく給油開始前の弁位置関係を示す断面図。
【図4】同じく給油時の弁位置関係を示す断面図。
【図5】同じく一般時でタンク内圧が正圧で第一段所定値以上の状態を示す断面図。
【図6】同じく一般時でタンク内圧が所定値以下の負圧の状態を示す断面図。
【図7】本発明の燃料蒸気回収制御弁装置の別の一例を示す断面図(給油開始前)。
【符号の説明】
12 給油口
14 燃料タンク
16 ハウジング
16a 筒状隔壁(弁座)
18 上部室
18a 上部内側室
18b 上部外側室
20 下部室
22 第1弁組立体
24 第2弁組立体
26 信号口
28 第1蒸気流入口
30 キャニスター
32 蒸気回収口
34 第2燃料蒸気流入口
36 燃料遮断弁
38 満タン規制バルブ
42 ダイアフラム
42c 中央節部
42d 中間節部
48 正圧弁体
50 導通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】 給油口を備えた燃料タンクから燃料蒸気の放出を制御する燃料蒸気回収制御弁装置であって、ハウジングと、該ハウジングを上部・下部室に区画するダイアフラムにより上下動する第1弁組立体と、下部室に内設される第2弁組立体とからなり、前記ハウジングは、上部室側に信号口と第1蒸気流入口とを備え、下部側に、キャニスターと導通する燃料回収口と、前記第2弁組立体によって開閉する第2蒸気流入口を備え、前記信号口は、給油口と連通され、前記第1蒸気流入口は、燃料遮断弁を介して、前記第2蒸気流入口は満タン規制バルブを介して、それぞれ燃料タンクと導通されている構成であって、前記ダイアフラムが、中央節部と、該中央節部と外周保持部の間に中間節部とを備えた二重作動膜構造であり、前記上部室が、前記第1蒸気入口と連通する上部内側室と、前記信号口と連通する上部外側室とに、前記ダイアフラムの中央節部と当接する筒状隔壁を介して区画されている、ことを特徴とする燃料蒸気回収制御装置。
【請求項2】 請求項1において、前記ダイアフラムの中央節部に上部室から下部室への導通孔が形成されるとともに、該導通孔を下面側で開閉する正圧弁体が配設されている、ことを特徴とする燃料蒸気回収制御装置。
【請求項3】 請求項1または2において、前記第2弁組立体が正負圧弁であることを特徴とする燃料蒸気回収制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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