燃料補給容器
【課題】燃料電池側のバルブに接合されるバルブ機構を有するカプラーと、補給容器本体の材質を、それぞれの目的に応じて異材質とした場合であっても、補給容器本体からカプラーを簡単に取り外すことができない燃料補給容器を提供する。
【解決手段】内周側にバルブ機構が設けられる筒状部24と、筒状部24の外周側に張り出す天板部23とを有するカプラー20を、その筒状部24がノズル部11の開口部に挿入されるとともに、天板部23とノズル部11の開口端縁との間にシール部材25を介在させた状態で、かしめ部材をカプラー20とノズル部11とに跨らせて固着することによって、カプラー20がノズル部11に密着固定されるようにする。
【解決手段】内周側にバルブ機構が設けられる筒状部24と、筒状部24の外周側に張り出す天板部23とを有するカプラー20を、その筒状部24がノズル部11の開口部に挿入されるとともに、天板部23とノズル部11の開口端縁との間にシール部材25を介在させた状態で、かしめ部材をカプラー20とノズル部11とに跨らせて固着することによって、カプラー20がノズル部11に密着固定されるようにする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、ダイレクトメタノール型燃料電池など、改質器を用いることなくアルコール類などの液体燃料を直接供給して電気化学反応を生じさせる方式の燃料電池において、燃料の残量が少なくなった燃料電池の燃料収容部内に、外部から燃料を注入、補給するための燃料補給容器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、水素(プロトン)を取り出すための改質器を用いることなく、燃料であるメタノールを直接アノード極(燃料極)に供給して、電気化学反応を生じさせることができるダイレクトメタノール型燃料電池(DMFC)が、機器の小型化に適していることから、特に、携帯機器用の燃料電池として注目されている。そして、このようなDMFCにおける燃料の供給手段も種々提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、可撓性を有する樹脂で一体成形され、メタノールが封入された燃料補給器を用いて、この燃料補給器に設けた補給器側バルブを燃料電池のバルブに連結し、燃料電池と燃料補給器とを接続した後に、燃料補給器を押し潰すことで燃料電池の燃料収納部にメタノールを注入することが記載されている。
【0004】
ここで、特許文献1に記載されている燃料補給器は、補給器側バルブをスプリングにてピストンをシール部に押圧する構成とするとともに、このような補給器側バルブを備えて先細り状とされた先端部にねじ部を形成してある。
そして、燃料電池のバルブも、補給器側バルブと同様に構成されており、補給器側バルブのねじ部を燃料電池のバルブのねじ部にねじ込むことで、両者を係合させながらピストンの対向面どうしを当接させ、スプリングにより付勢されている方向とは逆向きにピストンを摺動させることによって両方のバルブを開放し、これによって燃料補給器内のメタノールが、燃料電池の燃料収容部に注入できるようになっている。
【0005】
【特許文献1】特開2005−63726号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、このような特許文献1の燃料補給器は、低コストで簡易に製造し得る反面、燃料補給器が可撓性を有する比較的軟質の材料で一体成形されているため、燃料電池のバルブに燃料補給器をねじ込むためのねじ部の形状がシャープに現れにくかったり、強度が不足したりして、両者の係合が確実に行われないおそれがあるという問題がある。
【0007】
特許文献1の図2などから、ねじ部は、バルブをなすピストンの抜け止めとしても機能するように、燃料補給器の先端に接合一体化された別部材とされていることが伺え、この部材を硬質の素材で形成することによって、ねじ部の形状をシャープにしたり、強度を確保したりすることも考えられる。
【0008】
しかしながら、接着、溶着のいずれの場合であっても、異なる材質のものどうしを接合一体化するには、その組み合わせが制限されてしまうため、可撓性材料からなる燃料補給器に、硬質の素材からなる部材を接合するのは、一般には困難である。特に、補給容器本体を多層化した場合は、これと接合一体化する部材の材料の選択の幅が著しく狭くなってしまう。
また、ねじ締めや、凹凸嵌合によって、機械的に接合一体化することも考えられるが、この場合には、可撓性材料からなる接合部位の強度不足による脱落などのおそれがある。
【0009】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、燃料電池側のバルブに接合されるバルブ機構を有するカプラーと、補給容器本体の材質を、それぞれの目的に応じて異なる材質とした場合であっても、補給容器本体からカプラーを簡単に取り外すことができない燃料補給容器の提案を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決する本発明に係る燃料補給容器は、燃料電池の燃料収容部に、外部から燃料を注入、補給するための燃料補給容器であって、ノズル部を有する容器本体を備え、燃料電池側のバルブに接続されるバルブ機構を有するカプラーが、かしめ部材によって前記ノズル部に密着固定されている構成としてある。
【0011】
このような構成とすることにより、かしめ部材によってカプラーが容器本体のノズル部に押さえつけられるように密着固定されているため、容器本体からカプラーを容易に取り外すことができないようにすることができる。
【0012】
また、本発明に係る燃料補給容器は、可撓性材料からなる前記容器本体が、剛性体からなるホルダーに収納されている構成とすることができる。
このような構成とすれば、燃料補給容器の携帯性が格段に向上するとともに、悪戯などによる容器本体の破断も防止することができる。
【0013】
また、本発明に係る燃料補給容器は、前記かしめ部材が、前記カプラーと前記ノズル部とに跨って固着されている構成とすることができる。
この場合、前記ホルダーに、前記ノズル部の基部側の周囲を覆う立上り部が形成されているとともに、前記立上り部には、蓋体取り付け手段が設けられた筒状部材が装着されている構成とすることができ、これにより、可撓性材料からなる容器本体に直接蓋体を取り付ける場合と異なり、蓋体の取り付けに支障が生じたり、蓋体が脱落してしまったりするのを有効に回避することができる。
【0014】
また、本発明に係る燃料補給容器は、前記ホルダーに、前記ノズル部の周囲を覆う立上り部が形成されているとともに、前記かしめ部材が、前記カプラーと前記立上り部とに跨って固着されている構成とすることができる。
このような構成とすれば、剛性体からなるホルダーの立上り部にかしめ部材が固着されるため、より確実に、カプラーをノズル部に密着固定させることができる。
【0015】
また、本発明に係る燃料補給容器は、前記カプラーに、前記燃料電池の燃料収容部との係合手段が設けられている構成とすることができる。
このような構成とすれば、燃料電池の燃料収容部にカプラーを接合させた状態を容易に維持して、連続的な燃料注入操作が安定して行えるようにすることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、かしめ部材によってカプラーが容器本体のノズル部に密着固定されるようにしたため、容器本体からカプラーを容易に取り外すことができないようにすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の好ましい実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0018】
[第一実施形態]
まず、本発明に係る燃料補給容器の第一実施形態について説明する。
ここで、図1(a)は、本実施形態の概略を示す一部切欠正面図、図1(b)は、本実施形態の概略側面図である。また、図2は、図1(b)のB−B断面図である。
【0019】
本実施形態の燃料補給容器1は、ノズル部11、胴部12及び底部13を有する容器本体10を備えている。
本実施形態において、容器本体10は、その容積を縮減させることによって、内部に充填されたメタノールなどの燃料を、燃料電池の燃料収容部内に所定量注入し、その後に、燃料収容部内の雰囲気ガスを吸入しながら容積が復元され、これを繰り返すことによって連続的な燃料注入操作ができるようにしてある。
【0020】
このような容器本体10は、高密度ポリエチレン(HDPE),低密度ポリエチレン(LDPE),直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE),ポリプロピレン(PP),環状オレフィン(COC)等のオレフィン系樹脂、及びこれらの共重合体や、これらのブレンド樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET),ポリエチレンナフタレート(PEN),ポリ乳酸(PLA)等のポリエステル系樹脂、及びこれらの共重合体や、これらのブレンド樹脂などの合成樹脂材料のなかから、燃料注入操作時の容積の縮減と、復元が容易な可撓性を有する材料を用いて、ダイレクトブロー成形や、二軸延伸ブロー成形などの適宜手段により所定形状に成形することによって得ることができるが、容器本体10内の燃料の残量を目視できるように、透明性のある材料を用いるのが好ましい。
【0021】
このような合成樹脂材料を用いて成形される容器本体10は、単層構成とするに限らず、多層構成とすることもできる。容器本体10を多層構成とする場合には、少なくとも最内層は、上記した合成樹脂材料を用いて形成するのが好ましい。また、中間層として、燃料に対するバリア機能を有する樹脂(例えば、環状オレフィンや、ポリアミド系樹脂など)、接着性樹脂などで形成される機能性樹脂層の他、リグラインド層などを設けてもよい。
【0022】
また、図示する例において、容器本体10のノズル部11には、燃料注出口21が突出して設けられた、燃料電池側のバルブに接合されるバルブ機構を有するカプラー20が取り付けられている。このカプラー20は、燃料注出口21と連通して内周側にバルブ機構が設けられる筒状部24と、筒状部24の外周側に張り出す天板部23とを有しており、筒状部24をノズル部11の開口部に挿入するとともに、天板部23とノズル部11の開口端縁との間にシール部材25を介在させた状態で、かしめ部材をカプラー20とノズル部11とに跨らせて固着することによって、カプラー20がノズル部11に密着固定されるようになっている。
これにより、カプラー20が、容器本体10のノズル部11に押さえつけられて容易に取り外すことができないようになっており、容器本体10からカプラー20が不用意に外れてしまうのを防止している。
【0023】
ここで、シール部材25は、例えば、熱可塑性エラストマーやゴム、発泡シートなどを材料に用いて形成することができる。
熱可塑性エラストマーとしては、スチレン・ブタジエン・スチレンブロックコポリマー、エポキシ化スチレン系エラストマー、スチレン・イソプレン・スチレンブロックコポリマー、水添スチレンブロックコポリマー、水添SBCコンパウンド、単純ブレンド型オレフィン系エラストマー、架橋型エラストマー、塩ビ系エラストマー、塩素化エチレンコポリマー架橋体アロイ、塩素化ポリエチレン系エラストマー、シンジオタクチック1,2−ポリブタジエン、ウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、フッ素系エラストマー、シリコーン系エラストマーなどを挙げることができる。
また、ゴム(ASTMのゴム分類に基づくもの)としては、1)ポリメチレンタイプの飽和主鎖をもつゴム、例えば、エチレン−プロピレン−ジエン三元系共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、完全水素化アクリルニトリル−ブタジエンゴム、フッ素ゴム、完全水素化スチレン−ブタジエンゴム、完全水素化スチレン−イソプレンゴムなど、2)主鎖に酸素を持つゴム、例えば、エピクロロヒドリンゴムなど、3)主鎖にケイ素と酸素を持つゴム、例えば、ビニルメチルシリコーンゴムなど、4)天然ゴムやジエン系ゴムのように、主鎖に不飽和炭素結合を持つゴム、例えば、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、水素化アクリロニトリル−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、イソブテン−イソプレンゴム、天然ゴム、水素化スチレン−ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、水素化スチレン−イソプレンゴム、スチレン−イソプレンゴムなど、5)主鎖に炭素、酸素、及び窒素を持つゴム、例えば、ポリエーテルウレタンなど、6)主鎖に酸素、又はリンを持たないで窒素を持つゴム、7)主鎖に硫黄を持つゴム、例えば、ポリスルフィドゴムなど、8)主鎖にリン、及び窒素を持つゴム、例えば、フォスファゼンゴムなど、を挙げることができる。
また、発泡シートしては、ポリエチレンを発泡させたものが好適に用いられ、必要に応じて、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂などをフィルムとしたものをラミネートしてもよい。
【0024】
本実施形態において、カプラー20が有するバルブ機構には特に制限はない。例えば、図示するように、内周筒状部24の内周側に弁体211と、この弁体211により燃料注出口が閉塞されるように、弁体211を弁座212に向けて付勢するばね213を挿入し、内周筒状部24の下端にばね受け214を接合することによって構成することができる。
【0025】
ここで、図3は、燃料電池の燃料収容部との間の気密状態を維持しながら、容器本体10に取り付けられたカプラー20の燃料注出口21を、燃料電池の燃料収容部に設けられた燃料注入口60に接合するためのバルブ機構の一例を概念的に示す説明図であり、カプラー20側のバルブ機構の概略断面と、燃料電池側の燃料注入口60に設けられたバルブ機構の概略断面を示している。また、図4は、燃料注入口60に、カプラー20の燃料注出口21を挿入、嵌合させた状態を示している。
【0026】
図示する例において、カプラー20の燃料注出口21が、燃料注入口60に挿入されると、カプラー20側のバルブ機構をなす弁体211と、燃料電池側の燃料注入口60に設けられたバルブ機構をなす弁体61とが当接して互いに押し合うことになる。通常は、燃料注入口60側の弁体61を付勢するバネ61の付勢力が、燃料注出口21側の弁体211を付勢するバネ212の付勢力よりも弱く設定されており、先に、燃料注入口60側の弁体61が弁座62から離れ、燃料注入口60側のバルブ機構を開放する。このとき、カプラー20の燃料注出口21と、燃料収容部に設けられた燃料注入口60とが密に嵌合するように、両者の間に図示しない適当なシール部材を介在させることで、燃料収容部内の気密状態を維持することができる。
【0027】
そして、カプラー20の燃料注出口21をさらに押し込むと、燃料注出口21側の弁体211が弁座212から離れ、燃料注出口21側のバルブ機構も開放される。これにより、燃料電池の燃料収容部と容器本体10とが、気密状態を維持したまま連通し、前述したような燃料注入操作を行うことによって、容器本体10内の燃料を、燃料電池の燃料収容部に、外部から燃料を注入、補給することができるようになっている。
【0028】
このとき、カプラー20には、燃料電池の燃料収容部との係合手段として、図2などに示すような係合突起22を設けておくことにより、燃料電池の燃料収容部に接合させた状態を容易に維持して、連続的な燃料注入操作が安定して行えるようにすることができる。図示する係合突起22は、先端の係合部22aを燃料収容部側に設けられた受け穴に挿入した後に、燃料補給容器1ごと回動させて、係合部22aが燃料収容部の受け穴に係合されるツイストロック機構を採用している。
【0029】
なお、図3、及び図4では、作図上このような係合突起22や、受け穴の図示を省略している。また、係合突起22は、カプラー20と一体とする態様に限らず、カプラー20がノズル部11に密着固定された後に、その位置決めがなされてからカプラー20に接合することができるように、カプラー20とは別体に形成することもできる。また、このようなツイストロック機構は一例であり、燃料電池の燃料収容部との係合手段は、係合突起22と、燃料収容部側に設けられた受け穴との凹凸嵌合のみによるものであってもよい。
【0030】
また、本実施形態の燃料補給容器は、その携帯性を考慮して、容器本体10を剛性体からなるホルダー30に収容してある。これによって、鞄などに入れて携行する際に、鞄のなかで押し潰されるなどして燃料が漏れ出してしまうというような不具合を有効に回避して、携帯時の安全性を高めている。
すなわち、本実施形態にあっては、燃料注入操作時の容積の縮減や、復元が容易となるように、可撓性を有する材料によって容器本体10が形成されているが、このような容器本体10をホルダー30に収容することで、携帯性が格段に向上するとともに、悪戯などによる容器本体10の破断も防止することができる。
【0031】
本実施形態において、ホルダー30は、縦方向に分割される表面部材30aと裏面部材30bとからなっている。そして、図5に示すように、表面部材30a側に設けられた係合爪301aを、裏面部材30b側に設けられた係合孔301bに係合させることによって、一体化された表面部材30aと裏面部材30bとの間に、容器本体10が収容されるようにしてある。このとき、図示するように、表面部材30a側に設けられた隣り合う係合爪301aの間に挿入される突片301cを裏面部材30b側に設けることにより、表面部材30aを変形させて係合爪301aと係合孔301bとの係合を解除しようとする力に抗して、表面部材30aと裏面部材30bとが容易に外れないようにすることができる。
【0032】
ここで、図5は、燃料補給容器1の分解図であり、図6(a)は、図5のF−F要部断面図、図6(b)は、図5のG−G要部断面図、図7(a)は、図5のH−H要部断面図、図7(b)は、図5のI−I要部断面図である。
【0033】
なお、容器本体10に、燃料としてメタノールなどが充填される場合には、安全性確保の観点からホルダー30から容器本体10が容易に取り外せないようにすることが求められるが、表面部材30aと裏面部材30bとのそれぞれに、係合爪301aと係合孔301bとを交互に配置して、これらを互いに係合させるようにしたり、表面部材30aと裏面部材30bとを接着、又は溶着により接合したりすることによっても、表面部材30aと裏面部材30bとが容易に外れないようにすることができる。
【0034】
また、ホルダー30をなす表面部材30aと裏面部材30bは、それぞれのほぼ中央に開口部34を備えており、この開口部34には、下端側を軸にして、これらの部材30a,30bの内側に向かって回動可能とされたレバー40が取り付けられている。このようにして取り付けられたレバー40は、その回動操作によってレバー40を押し下げたときに、レバー40の作用部30aが容器本体10に当接し、レバー40を押し下げた分だけ容器本体10の容積を縮減させて、前述したような燃料注入操作を行うための操作部として機能する(図8参照)。
【0035】
ここで、図8は、図1(a)のA−A断面に相当し、図8(a)は、レバー40が定常位置にある状態を示しており、図8(b)は、レバー40を押し下げた状態を示している。図8(b)に示すように、レバー40を押し下げることにより、レバー40の作用部40aに押圧されて容器本体10が弾性変形するが、容器本体10はレバー40を押し下げた方向のみならず、図1(a)に一点破線で示すように、レバー40の押し下げ方向に直交する方向にも弾性変形する。このため、ホルダー30の内寸は、このような方向への容器本体10の弾性変形を考慮して設計するのが好ましい。
より具体的には、容器本体10の容積の縮減量の最適化を図り、この最適な縮減量に相当する燃料注出操作を行う際の容器本体10の変形量(通常、容器本体10は、レバー40の押し下げ方向に直交する方向に変形する)を求め、このときの変形量を吸収できる程度の余裕をもつように、ホルダー30の内寸を設計するのが好ましい。
【0036】
また、このようなホルダー30に容器本体10を収納するにあたっては、容器本体10の胴部12の水平断面を楕円形状とするとともに、胴部の長径方向に沿う面にレバー40が対向するようにして、容器本体10がホルダー30に収容されるようにするのが好ましい。
このようにすれば、前述したような手段により容器本体10を成形するに際し、一般には、容器本体10の胴部12の長径方向に沿う面の方が、成形時に短径方向に沿う面に比べて延伸されて肉薄となるので、この面をレバー40の作用部40aが押圧して容器本体10を弾性変形させるようにすれば、容器本体10の容積を縮減させやすくなり、その縮減量の調整なども容易に行うことができる。
【0037】
また、図9に、表面部材30aの内側からみたレバー40の取り付け状態を示すように、本実施形態において、レバー40は、下端側に延長するアーム41を有している。そして、図中鎖線で囲む部分を拡大して示すように、アーム41の先端側に設けられた突部42を、表面部材30aに設けられた突片35の穿孔351に挿通することにより、表面部材30aに対して、レバー40が回動可能となるように取り付けられている。
なお、図示する例において、レバー40は、回動軸が下端側に位置するように取り付けられているが、回動軸は上端側に位置するようにしてもよく、レバー40が燃料注入操作を行うための操作部として機能するかぎり、その具体的な取り付け手段は限定されない。
【0038】
レバー40を押し下げる力を緩めると、容器本体10は、その弾性力と容器本体10内のヘッドスペースの内圧により容積を復元し、これによりレバー40は押し戻されて定常位置に復帰するが、このとき、レバー40の作用部40a側の端縁と、開口部34との間に隙間が生じてしまうと、異物が入り込んでしまったり、レバー40を再度押し下げて燃料注入操作を繰り返す際に、この隙間にレバー40を操作する使用者の手指を挟んでしまったりするなどの不具合が考えられる。
このため、レバー40には、開口部34の縁部に内側から当接するストッパー43が設けられており、これによって、表面部材30aの外側に向かうレバー40の回動範囲を規制して、レバー40の作用部40a側の端縁と、開口部34との間に隙間が生じないようにするとともに、例えば、高温環境下で容器本体10が膨張したとしても、レバー40が外側に突出してしまわないようにしている。
【0039】
なお、特に図示しないが、裏面部材30bに対しても、同様にしてレバー40を取り付けることができる。
【0040】
また、本実施形態において、表面部材30aと裏面部材30bには、図示するように、それぞれその上方及び下方に、レバー40の上端側と下端側の側面を部分的に囲み、かつ、レバー40の操作面と面一となるように基準面33から隆起して形成された隆起部32を設けることができる。これにより、レバー40の操作範囲を、レバー40の中央部分の操作し易い部位に制限し、鞄などに入れて携行する場合や、誤って落としてしまった場合などに、レバー40が不用意に押し下げられないようにしている。
したがって、図示する例にあっては、使用者は、レバー40の中央部分の操作面を、例えば、親指と人差し指とで挟むようにして押し下げることによって、燃料注入操作を行うことができるようになっている。
なお、レバー40の操作範囲を、レバー40の中央部分の操作し易い部位に制限することができれば、隆起部10bは、レバー40の操作面から突出するように隆起して形成されていてもよい。
【0041】
また、ホルダー30には、レバー40を押し下げて燃料注入操作を行うときに、容器本体10の容積の縮減量が一定量を超えないようにする制限機構を設けておくことができる。このような制限機構の具体的な構成は特に限定されないが、例えば、レバー40の押し下げ可能な量、すなわち、レバー40の操作面と、基準面10aとの差tを適宜調整することで、レバー40の押し下げ量が一定以上にならないようにして、容器本体10の容積の縮減量が一定量を超えないように制限することができる。
【0042】
このような制限機構を設けることにより、燃料注入操作時における容器本体10の容積縮減量を一定として、燃料電池本体の燃料収容部内への燃料の注入量が一定となるようにすることができる。燃料注入操作時に、燃料収容部内の圧力が過大となると、燃料収容部に隣接して設けられている燃料電池の起電部を破損してしまうおそれがあるが、燃料の注入量を一定として燃料収容部内の圧力上昇を抑制することで、このような不具合を有効に回避することができる。
【0043】
また、レバー40の横幅は任意に設定することができるが、図10に示すように、レバー40の横幅Wを細く(例えば、13mm以下)することにより、レバー40を押し下げるときに、使用者の指がレバー40の操作面をはみ出して、レバー40を押し切ったときに基準面10aに当たり、それ以上レバー40が押し下げられないようになっているのが好ましい。これにより、よりいっそう確実に、燃料注入時の容器本体10の容積縮減量を一定とすることができる。
【0044】
また、特に図示しないが、操作部としてのレバー40は、ホルダー30の片面だけに設けるようにしてもよい。このような態様は、燃料注入操作の際に、ホルダー30の姿勢を安定させることができるとともに、ホルダー30の他方の面には、使用上の注意などの注意書きを印刷、又は貼り付けるためのスペースとすることができるという利点がある。
【0045】
また、本実施形態では、容器本体10のノズル部11に蓋体70が取り付けられるようにしてあるが(図10参照)、この蓋体70としては、例えば、子どもが誤ってキャップを外してしまったりすることがないように、チャイルドレジスタンス機能を備えたものを用いるのが好ましい。チャイルドレジスタンス機能を備えた蓋体70としては、図12に示すような外キャップ71と、図13に示すような内キャップ72とからなる二重構造を有しているものを、その一例として挙げることができる。
【0046】
図11は、外蓋71の説明図であり、図11(a)は外蓋71の正面図、図11(b)は図11(a)のC−C断面図、図11(c)は外蓋71の底面図である。これらの図に示すように、外蓋71の天面の内側には、複数の垂下片71aが周方向に沿って設けられている。
また、図12は、内蓋72の説明図であり、図12(a)は内蓋72の正面図、図12(b)は図12(a)のD−D断面図、図12(c)は内蓋72の平面図である。これらの図に示すように、内蓋72の内周面にはねじ溝が形成されており、このねじ溝によって、容器本体10のノズル部11に蓋体70が螺着される。さらに、内蓋72の上面側には、立上り面72bと傾斜面72cとに挟まれて溝部72aが形成されており、外蓋71内に内蓋72を挿入したときに、外蓋71の垂下片71aが、内蓋72の溝部72aに入り込むようになっている。
【0047】
このような外蓋71と内蓋72とは、内蓋72が、外蓋71内で相対的に上下動可能となっているとともに、外蓋71の抜け止め71bと、内蓋72の係止部72dとにより、内蓋72が外蓋71から容易に外れないようにしてある。そして、図13に示すように、容器本体10のノズル部11から蓋体70を外そうとして、単に図中矢印方向に蓋体70を回しただけでは、外蓋71の垂下片71aが、内蓋72側の傾斜面72cを乗り上げて(図13(b)参照)、内蓋72に対して外蓋71が空回りするようになっている(図13(c)参照)。
逆に、蓋体70を容器本体10のノズル部11に螺着するときには、図14に示すように、図中矢印方向に外蓋71を回せば、外蓋71の垂下片71aが、内蓋72側の立上り面72bに当接して(図14(b)参照)、外蓋71とともに、内蓋72も回転して、蓋体70を容易に締め付けることができるようになっている。
なお、図13、図14では、着目する一つの垂下片71aのみを図示し、これを斜線で示している。
【0048】
一方、容器本体10のノズル部11から蓋体70を外すには、内蓋72に対して外蓋71が空回りしないように、外蓋71に下向きの力を加えて、外蓋71の垂下片71aの先端を、内蓋72の傾斜面72cに押し付けながら回すようにすればよい。これにより、外蓋71とともに、内蓋72も回転して、蓋体70を容器本体10のノズル部11から外すことができる。
【0049】
本実施形態において、ホルダー30を構成する表面部材30a、裏面部材30b、レバー40、蓋体70は、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(ABS),ポリスチレン(PS),アクリロニトリル−スチレン樹脂(AS),ポリエチレンテレフタレート(PET),ポリブチレンテレフタレート(PBT),ポリエチレンナフタレート(PEN),ポリカーボネート(PC),ポリプロピレン(PP),ポリエチレン(PE),ポリアセタール(POM),ポリメチルメタクリレート(PMMA),変性ポリフェニレンエーテル(PPE)などの合成樹脂材料を単独で、又は二種以上ブレンドして用い、あるいは、これらのものに必要に応じてガラス繊維や、タルクなどの充填材を配合した複合材料として用いて、射出成形などにより所定形状に成形することができるが、少なくともレバー40を透明性の高い材料にて成形して、収容された容器本体10の状態、例えば、容器本体10内に残存する燃料の量などを目視できるようにするのが好ましい。一般に、耐落下衝撃性などの高い材料には、透明性の高いものが少ないので、レバー40を透明性の高い材料で形成するのは、ホルダー30の耐落下衝撃性を確保しつつ、容器本体10内の燃料の残量を目視できるようにする上で、特に好適である。
【0050】
[第二実施例]
次に、本発明に係る燃料補給容器の第二実施形態について説明する。
なお、図15は、本実施形態の概略を示す要部断面図であり、前述した第一実施形態の図1(b)B−B断面に相当する。
【0051】
本実施形態において、ホルダー30には、容器本体10のノズル部11の基部側の周囲を覆う立上り部31が形成されており、この立上り部31には、蓋体取り付け手段が設けられた筒状部材80が装着されている。
【0052】
ここで、図示する例では、筒状部材80には嵌合孔81を穿設しておき、この嵌合孔81に立上り部31に形成された嵌合突起312が嵌入することによって、筒状部材80の装着を可能としているが、筒状部材80を装着させるための具体的な手段は、図示する例には限定されない。
【0053】
また、本実施形態にあっては、筒状部材80の外周面には、蓋体取り付け手段としてのねじ部82が形成されており、このねじ部によって、図10に示すように、蓋体70を取り付けることができるようになっている。
【0054】
このように、可撓性材料からなる容器本体10とは別体に構成された筒状部材80に、蓋体取り付け手段としてのねじ部82を形成することにより、筒状部材80に硬質の素材を用いることで、ねじ部82の強度を確保するとともに、形状をシャープに形成し、蓋体70が外れにくくすることができる。
【0055】
これにより、可撓性材料からなる容器本体10に蓋体70を取り付けるようにした場合、蓋体70のねじ締めに対するノズル部11の強度の確保が困難となるため、容器本体10のノズル部11が変形などして、蓋体70のねじ締めに支障が生じたり、蓋体70が脱落してしまったりするが、本実施形態によれば、このような不都合を有効に回避することができる。
【0056】
なお、蓋体取り付け手段としては、図示するようなねじ部82を形成するに限らず、蓋体70を筒状部材80に嵌着するように構成することもできる。
【0057】
本実施形態が前述した第一実施形態と異なるのは、以上の点であり、それ以外は同様の構成を備えているので、他の構成についての詳細な説明は省略する。
【0058】
[第三実施例]
次に、本発明に係る燃料補給容器の第三実施形態について説明する。
なお、図16は、本実施形態の概略を示す要部断面図であり、前述した第一実施形態の図1(b)B−B断面に相当する。
【0059】
前述した第一実施形態において、カプラー20は、かしめ部材をカプラー20とノズル部11とに跨らせて固着することによって、ノズル部11に密着固定されるようにしてあるが、カプラー20をノズル部11に密着固定するための具体的な手段はこれに限られない。
本実施形態では、図16に示すように、容器本体10のノズル部11の周囲を覆うとともに、延長されたカプラー20の天板部23の下端近傍まで延びる立上り部31をホルダー30に形成して、この立上り部31とカプラー20とに、かしめ部材を跨らせて固着することによって、カプラー20をノズル部11に密着固定している。
【0060】
また、本実施形態では、ノズル部11に対してカプラー20が相対的に回転してしまうのを防止するための回り止め手段を、カプラー20と立上り部31との間で形成することができる。
【0061】
例えば、図17に示すように、カプラー20の天板部23の外周縁から垂下する外周筒状部23aの内周面の一部を切り欠いて凹部23bを形成するとともに、この凹部23bと係合する突片31aを立上り部31の上端縁に形成して、カプラー20側の凹部23bと、立上り部31側の突片31aとによって、カプラー20の回り止め手段が構成されるようにすることができる。
【0062】
また、図18に示すように、カプラー20の天板部23の外周縁から垂下する外周筒状部23aに、その一部を切り欠いた切欠部23cを形成するとともに、立上り部31の上端側を、凸部31cを残して薄肉として、カプラー20側の切欠部23cと、立上り部31側の凸部31cとが係合することによって、カプラー20の回り止め手段が構成されるようにしたりすることもきる。
【0063】
特に、燃料電池の燃料収容部との係合手段として、前述したようなツイストロック機構を採用した場合には、このような回り止め手段を設けるのは有効であるが、結果として、カプラー20の回り止めとして機能するものではれば、筒状部材80に設ける回り止め手段の具体的な構成は特に制限されない。
【0064】
ここで、図17は、カプラー20の回り止め手段の一例を示す説明図であり、図17(a)は、カプラーの側面図、図17(b)はカプラーの底面図、図17(c)は、立上り部の側面図、図17(d)は立上り部の上面図である。また。図18は、カプラー20の回り止め手段の他の例を示す説明図であり、図18(a)は、カプラーの側面図、図18(b)はカプラーの底面図、図18(c)は、立上り部の側面図、図18(d)は立上り部の上面図である。
である。
【0065】
さらに、本実施形態にあっては、立上り部31の外周面には、前述した第二実施形態において筒状部材80に形成したのと同様の蓋体取り付け手段としてのねじ部32が形成されており、このねじ部32によって、蓋体70を取り付けることができるようになっている。これによって、第二実施形態の場合と同様に、立上り部31が硬質の素材で形成される場合には、蓋体70のねじ締めに支障が生じたり、蓋体70が脱落してしまったりする不都合を有効に回避することができる。
【0066】
本実施形態が前述した第一実施形態と異なるのは、以上の点であり、それ以外は同様の構成を備えているので、他の構成についての詳細な説明は省略する。
【0067】
以上、本発明について、好ましい実施形態を示して説明したが、本発明は、前述した実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲で種々の変更実施が可能であることは言うまでもない。
【0068】
例えば、前述した実施形態では、縦方向に分割される表面部材30aと裏面部材30bとからなるホルダー30に、容器本体10が収容されるようにしてあるが、ホルダー30の構成はこれに限定されず、特に図示しないが、横方向に分割可能として容器本体10を収容するようにしたものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0069】
以上説明したように、本発明は、ダイレクトメタノール型燃料電池など、改質器を用いることなくアルコール類などの液体燃料を直接供給して電気化学反応を生じさせる方式の燃料電池において、燃料の残量が少なくなった本体側の燃料収容部内に、外部から燃料を注入、補給する燃料補給容器を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明に係る燃料補給容器の第一実施形態の概略を示す説明図である。
【図2】図1(b)のB−B断面図である。
【図3】燃料補給容器を燃料収容部に接合するためのバルブ機構の一例を概念的に示す説明図である。
【図4】燃料収容部の燃料注入口に燃料補給容器の燃料注出口を嵌合させた状態を概念的に示す説明図である。
【図5】本発明に係る燃料補給容器の第一実施形態の分解図である。
【図6】図5のF−F要部断面図、及びG−G要部断面図である。
【図7】図5のH−H要部断面図、及びI−I要部断面図である
【図8】燃料注入操作時のレバーの動作を示す説明図である。
【図9】表面部材の内側からみたレバーの取り付け状態を示す説明図である。
【図10】本発明に係る燃料補給容器の第一実施形態の変形例を示す説明図である。
【図11】キャップを構成する外キャップの一例を示す説明図である。
【図12】キャップを構成する内キャップの一例を示す説明図である。
【図13】内キャップに対して外キャップが空回りする際の動作を示す説明図である。
【図14】キャップを締め付ける際の動作を示す説明図である。
【図15】本発明に係る燃料補給容器の第二実施形態の概略を示す要部断面図である。
【図16】本発明に係る燃料補給容器の第三実施形態の概略を示す要部断面図である。
【図17】カプラーの回り止め手段の一例を示す説明図である。
【図18】カプラーの回り止め手段の他の例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0071】
1 燃料補給容器
10 容器本体
11 ノズル部
20 カプラー
21 燃料注出口
22 係合突起
23 天板部
24 筒状部
30 ホルダー
31 立上り部
50 かしめ部材
80 筒状部材
82 ねじ部
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、ダイレクトメタノール型燃料電池など、改質器を用いることなくアルコール類などの液体燃料を直接供給して電気化学反応を生じさせる方式の燃料電池において、燃料の残量が少なくなった燃料電池の燃料収容部内に、外部から燃料を注入、補給するための燃料補給容器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、水素(プロトン)を取り出すための改質器を用いることなく、燃料であるメタノールを直接アノード極(燃料極)に供給して、電気化学反応を生じさせることができるダイレクトメタノール型燃料電池(DMFC)が、機器の小型化に適していることから、特に、携帯機器用の燃料電池として注目されている。そして、このようなDMFCにおける燃料の供給手段も種々提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、可撓性を有する樹脂で一体成形され、メタノールが封入された燃料補給器を用いて、この燃料補給器に設けた補給器側バルブを燃料電池のバルブに連結し、燃料電池と燃料補給器とを接続した後に、燃料補給器を押し潰すことで燃料電池の燃料収納部にメタノールを注入することが記載されている。
【0004】
ここで、特許文献1に記載されている燃料補給器は、補給器側バルブをスプリングにてピストンをシール部に押圧する構成とするとともに、このような補給器側バルブを備えて先細り状とされた先端部にねじ部を形成してある。
そして、燃料電池のバルブも、補給器側バルブと同様に構成されており、補給器側バルブのねじ部を燃料電池のバルブのねじ部にねじ込むことで、両者を係合させながらピストンの対向面どうしを当接させ、スプリングにより付勢されている方向とは逆向きにピストンを摺動させることによって両方のバルブを開放し、これによって燃料補給器内のメタノールが、燃料電池の燃料収容部に注入できるようになっている。
【0005】
【特許文献1】特開2005−63726号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、このような特許文献1の燃料補給器は、低コストで簡易に製造し得る反面、燃料補給器が可撓性を有する比較的軟質の材料で一体成形されているため、燃料電池のバルブに燃料補給器をねじ込むためのねじ部の形状がシャープに現れにくかったり、強度が不足したりして、両者の係合が確実に行われないおそれがあるという問題がある。
【0007】
特許文献1の図2などから、ねじ部は、バルブをなすピストンの抜け止めとしても機能するように、燃料補給器の先端に接合一体化された別部材とされていることが伺え、この部材を硬質の素材で形成することによって、ねじ部の形状をシャープにしたり、強度を確保したりすることも考えられる。
【0008】
しかしながら、接着、溶着のいずれの場合であっても、異なる材質のものどうしを接合一体化するには、その組み合わせが制限されてしまうため、可撓性材料からなる燃料補給器に、硬質の素材からなる部材を接合するのは、一般には困難である。特に、補給容器本体を多層化した場合は、これと接合一体化する部材の材料の選択の幅が著しく狭くなってしまう。
また、ねじ締めや、凹凸嵌合によって、機械的に接合一体化することも考えられるが、この場合には、可撓性材料からなる接合部位の強度不足による脱落などのおそれがある。
【0009】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、燃料電池側のバルブに接合されるバルブ機構を有するカプラーと、補給容器本体の材質を、それぞれの目的に応じて異なる材質とした場合であっても、補給容器本体からカプラーを簡単に取り外すことができない燃料補給容器の提案を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決する本発明に係る燃料補給容器は、燃料電池の燃料収容部に、外部から燃料を注入、補給するための燃料補給容器であって、ノズル部を有する容器本体を備え、燃料電池側のバルブに接続されるバルブ機構を有するカプラーが、かしめ部材によって前記ノズル部に密着固定されている構成としてある。
【0011】
このような構成とすることにより、かしめ部材によってカプラーが容器本体のノズル部に押さえつけられるように密着固定されているため、容器本体からカプラーを容易に取り外すことができないようにすることができる。
【0012】
また、本発明に係る燃料補給容器は、可撓性材料からなる前記容器本体が、剛性体からなるホルダーに収納されている構成とすることができる。
このような構成とすれば、燃料補給容器の携帯性が格段に向上するとともに、悪戯などによる容器本体の破断も防止することができる。
【0013】
また、本発明に係る燃料補給容器は、前記かしめ部材が、前記カプラーと前記ノズル部とに跨って固着されている構成とすることができる。
この場合、前記ホルダーに、前記ノズル部の基部側の周囲を覆う立上り部が形成されているとともに、前記立上り部には、蓋体取り付け手段が設けられた筒状部材が装着されている構成とすることができ、これにより、可撓性材料からなる容器本体に直接蓋体を取り付ける場合と異なり、蓋体の取り付けに支障が生じたり、蓋体が脱落してしまったりするのを有効に回避することができる。
【0014】
また、本発明に係る燃料補給容器は、前記ホルダーに、前記ノズル部の周囲を覆う立上り部が形成されているとともに、前記かしめ部材が、前記カプラーと前記立上り部とに跨って固着されている構成とすることができる。
このような構成とすれば、剛性体からなるホルダーの立上り部にかしめ部材が固着されるため、より確実に、カプラーをノズル部に密着固定させることができる。
【0015】
また、本発明に係る燃料補給容器は、前記カプラーに、前記燃料電池の燃料収容部との係合手段が設けられている構成とすることができる。
このような構成とすれば、燃料電池の燃料収容部にカプラーを接合させた状態を容易に維持して、連続的な燃料注入操作が安定して行えるようにすることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、かしめ部材によってカプラーが容器本体のノズル部に密着固定されるようにしたため、容器本体からカプラーを容易に取り外すことができないようにすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の好ましい実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0018】
[第一実施形態]
まず、本発明に係る燃料補給容器の第一実施形態について説明する。
ここで、図1(a)は、本実施形態の概略を示す一部切欠正面図、図1(b)は、本実施形態の概略側面図である。また、図2は、図1(b)のB−B断面図である。
【0019】
本実施形態の燃料補給容器1は、ノズル部11、胴部12及び底部13を有する容器本体10を備えている。
本実施形態において、容器本体10は、その容積を縮減させることによって、内部に充填されたメタノールなどの燃料を、燃料電池の燃料収容部内に所定量注入し、その後に、燃料収容部内の雰囲気ガスを吸入しながら容積が復元され、これを繰り返すことによって連続的な燃料注入操作ができるようにしてある。
【0020】
このような容器本体10は、高密度ポリエチレン(HDPE),低密度ポリエチレン(LDPE),直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE),ポリプロピレン(PP),環状オレフィン(COC)等のオレフィン系樹脂、及びこれらの共重合体や、これらのブレンド樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET),ポリエチレンナフタレート(PEN),ポリ乳酸(PLA)等のポリエステル系樹脂、及びこれらの共重合体や、これらのブレンド樹脂などの合成樹脂材料のなかから、燃料注入操作時の容積の縮減と、復元が容易な可撓性を有する材料を用いて、ダイレクトブロー成形や、二軸延伸ブロー成形などの適宜手段により所定形状に成形することによって得ることができるが、容器本体10内の燃料の残量を目視できるように、透明性のある材料を用いるのが好ましい。
【0021】
このような合成樹脂材料を用いて成形される容器本体10は、単層構成とするに限らず、多層構成とすることもできる。容器本体10を多層構成とする場合には、少なくとも最内層は、上記した合成樹脂材料を用いて形成するのが好ましい。また、中間層として、燃料に対するバリア機能を有する樹脂(例えば、環状オレフィンや、ポリアミド系樹脂など)、接着性樹脂などで形成される機能性樹脂層の他、リグラインド層などを設けてもよい。
【0022】
また、図示する例において、容器本体10のノズル部11には、燃料注出口21が突出して設けられた、燃料電池側のバルブに接合されるバルブ機構を有するカプラー20が取り付けられている。このカプラー20は、燃料注出口21と連通して内周側にバルブ機構が設けられる筒状部24と、筒状部24の外周側に張り出す天板部23とを有しており、筒状部24をノズル部11の開口部に挿入するとともに、天板部23とノズル部11の開口端縁との間にシール部材25を介在させた状態で、かしめ部材をカプラー20とノズル部11とに跨らせて固着することによって、カプラー20がノズル部11に密着固定されるようになっている。
これにより、カプラー20が、容器本体10のノズル部11に押さえつけられて容易に取り外すことができないようになっており、容器本体10からカプラー20が不用意に外れてしまうのを防止している。
【0023】
ここで、シール部材25は、例えば、熱可塑性エラストマーやゴム、発泡シートなどを材料に用いて形成することができる。
熱可塑性エラストマーとしては、スチレン・ブタジエン・スチレンブロックコポリマー、エポキシ化スチレン系エラストマー、スチレン・イソプレン・スチレンブロックコポリマー、水添スチレンブロックコポリマー、水添SBCコンパウンド、単純ブレンド型オレフィン系エラストマー、架橋型エラストマー、塩ビ系エラストマー、塩素化エチレンコポリマー架橋体アロイ、塩素化ポリエチレン系エラストマー、シンジオタクチック1,2−ポリブタジエン、ウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、フッ素系エラストマー、シリコーン系エラストマーなどを挙げることができる。
また、ゴム(ASTMのゴム分類に基づくもの)としては、1)ポリメチレンタイプの飽和主鎖をもつゴム、例えば、エチレン−プロピレン−ジエン三元系共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、完全水素化アクリルニトリル−ブタジエンゴム、フッ素ゴム、完全水素化スチレン−ブタジエンゴム、完全水素化スチレン−イソプレンゴムなど、2)主鎖に酸素を持つゴム、例えば、エピクロロヒドリンゴムなど、3)主鎖にケイ素と酸素を持つゴム、例えば、ビニルメチルシリコーンゴムなど、4)天然ゴムやジエン系ゴムのように、主鎖に不飽和炭素結合を持つゴム、例えば、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、水素化アクリロニトリル−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、イソブテン−イソプレンゴム、天然ゴム、水素化スチレン−ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、水素化スチレン−イソプレンゴム、スチレン−イソプレンゴムなど、5)主鎖に炭素、酸素、及び窒素を持つゴム、例えば、ポリエーテルウレタンなど、6)主鎖に酸素、又はリンを持たないで窒素を持つゴム、7)主鎖に硫黄を持つゴム、例えば、ポリスルフィドゴムなど、8)主鎖にリン、及び窒素を持つゴム、例えば、フォスファゼンゴムなど、を挙げることができる。
また、発泡シートしては、ポリエチレンを発泡させたものが好適に用いられ、必要に応じて、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂などをフィルムとしたものをラミネートしてもよい。
【0024】
本実施形態において、カプラー20が有するバルブ機構には特に制限はない。例えば、図示するように、内周筒状部24の内周側に弁体211と、この弁体211により燃料注出口が閉塞されるように、弁体211を弁座212に向けて付勢するばね213を挿入し、内周筒状部24の下端にばね受け214を接合することによって構成することができる。
【0025】
ここで、図3は、燃料電池の燃料収容部との間の気密状態を維持しながら、容器本体10に取り付けられたカプラー20の燃料注出口21を、燃料電池の燃料収容部に設けられた燃料注入口60に接合するためのバルブ機構の一例を概念的に示す説明図であり、カプラー20側のバルブ機構の概略断面と、燃料電池側の燃料注入口60に設けられたバルブ機構の概略断面を示している。また、図4は、燃料注入口60に、カプラー20の燃料注出口21を挿入、嵌合させた状態を示している。
【0026】
図示する例において、カプラー20の燃料注出口21が、燃料注入口60に挿入されると、カプラー20側のバルブ機構をなす弁体211と、燃料電池側の燃料注入口60に設けられたバルブ機構をなす弁体61とが当接して互いに押し合うことになる。通常は、燃料注入口60側の弁体61を付勢するバネ61の付勢力が、燃料注出口21側の弁体211を付勢するバネ212の付勢力よりも弱く設定されており、先に、燃料注入口60側の弁体61が弁座62から離れ、燃料注入口60側のバルブ機構を開放する。このとき、カプラー20の燃料注出口21と、燃料収容部に設けられた燃料注入口60とが密に嵌合するように、両者の間に図示しない適当なシール部材を介在させることで、燃料収容部内の気密状態を維持することができる。
【0027】
そして、カプラー20の燃料注出口21をさらに押し込むと、燃料注出口21側の弁体211が弁座212から離れ、燃料注出口21側のバルブ機構も開放される。これにより、燃料電池の燃料収容部と容器本体10とが、気密状態を維持したまま連通し、前述したような燃料注入操作を行うことによって、容器本体10内の燃料を、燃料電池の燃料収容部に、外部から燃料を注入、補給することができるようになっている。
【0028】
このとき、カプラー20には、燃料電池の燃料収容部との係合手段として、図2などに示すような係合突起22を設けておくことにより、燃料電池の燃料収容部に接合させた状態を容易に維持して、連続的な燃料注入操作が安定して行えるようにすることができる。図示する係合突起22は、先端の係合部22aを燃料収容部側に設けられた受け穴に挿入した後に、燃料補給容器1ごと回動させて、係合部22aが燃料収容部の受け穴に係合されるツイストロック機構を採用している。
【0029】
なお、図3、及び図4では、作図上このような係合突起22や、受け穴の図示を省略している。また、係合突起22は、カプラー20と一体とする態様に限らず、カプラー20がノズル部11に密着固定された後に、その位置決めがなされてからカプラー20に接合することができるように、カプラー20とは別体に形成することもできる。また、このようなツイストロック機構は一例であり、燃料電池の燃料収容部との係合手段は、係合突起22と、燃料収容部側に設けられた受け穴との凹凸嵌合のみによるものであってもよい。
【0030】
また、本実施形態の燃料補給容器は、その携帯性を考慮して、容器本体10を剛性体からなるホルダー30に収容してある。これによって、鞄などに入れて携行する際に、鞄のなかで押し潰されるなどして燃料が漏れ出してしまうというような不具合を有効に回避して、携帯時の安全性を高めている。
すなわち、本実施形態にあっては、燃料注入操作時の容積の縮減や、復元が容易となるように、可撓性を有する材料によって容器本体10が形成されているが、このような容器本体10をホルダー30に収容することで、携帯性が格段に向上するとともに、悪戯などによる容器本体10の破断も防止することができる。
【0031】
本実施形態において、ホルダー30は、縦方向に分割される表面部材30aと裏面部材30bとからなっている。そして、図5に示すように、表面部材30a側に設けられた係合爪301aを、裏面部材30b側に設けられた係合孔301bに係合させることによって、一体化された表面部材30aと裏面部材30bとの間に、容器本体10が収容されるようにしてある。このとき、図示するように、表面部材30a側に設けられた隣り合う係合爪301aの間に挿入される突片301cを裏面部材30b側に設けることにより、表面部材30aを変形させて係合爪301aと係合孔301bとの係合を解除しようとする力に抗して、表面部材30aと裏面部材30bとが容易に外れないようにすることができる。
【0032】
ここで、図5は、燃料補給容器1の分解図であり、図6(a)は、図5のF−F要部断面図、図6(b)は、図5のG−G要部断面図、図7(a)は、図5のH−H要部断面図、図7(b)は、図5のI−I要部断面図である。
【0033】
なお、容器本体10に、燃料としてメタノールなどが充填される場合には、安全性確保の観点からホルダー30から容器本体10が容易に取り外せないようにすることが求められるが、表面部材30aと裏面部材30bとのそれぞれに、係合爪301aと係合孔301bとを交互に配置して、これらを互いに係合させるようにしたり、表面部材30aと裏面部材30bとを接着、又は溶着により接合したりすることによっても、表面部材30aと裏面部材30bとが容易に外れないようにすることができる。
【0034】
また、ホルダー30をなす表面部材30aと裏面部材30bは、それぞれのほぼ中央に開口部34を備えており、この開口部34には、下端側を軸にして、これらの部材30a,30bの内側に向かって回動可能とされたレバー40が取り付けられている。このようにして取り付けられたレバー40は、その回動操作によってレバー40を押し下げたときに、レバー40の作用部30aが容器本体10に当接し、レバー40を押し下げた分だけ容器本体10の容積を縮減させて、前述したような燃料注入操作を行うための操作部として機能する(図8参照)。
【0035】
ここで、図8は、図1(a)のA−A断面に相当し、図8(a)は、レバー40が定常位置にある状態を示しており、図8(b)は、レバー40を押し下げた状態を示している。図8(b)に示すように、レバー40を押し下げることにより、レバー40の作用部40aに押圧されて容器本体10が弾性変形するが、容器本体10はレバー40を押し下げた方向のみならず、図1(a)に一点破線で示すように、レバー40の押し下げ方向に直交する方向にも弾性変形する。このため、ホルダー30の内寸は、このような方向への容器本体10の弾性変形を考慮して設計するのが好ましい。
より具体的には、容器本体10の容積の縮減量の最適化を図り、この最適な縮減量に相当する燃料注出操作を行う際の容器本体10の変形量(通常、容器本体10は、レバー40の押し下げ方向に直交する方向に変形する)を求め、このときの変形量を吸収できる程度の余裕をもつように、ホルダー30の内寸を設計するのが好ましい。
【0036】
また、このようなホルダー30に容器本体10を収納するにあたっては、容器本体10の胴部12の水平断面を楕円形状とするとともに、胴部の長径方向に沿う面にレバー40が対向するようにして、容器本体10がホルダー30に収容されるようにするのが好ましい。
このようにすれば、前述したような手段により容器本体10を成形するに際し、一般には、容器本体10の胴部12の長径方向に沿う面の方が、成形時に短径方向に沿う面に比べて延伸されて肉薄となるので、この面をレバー40の作用部40aが押圧して容器本体10を弾性変形させるようにすれば、容器本体10の容積を縮減させやすくなり、その縮減量の調整なども容易に行うことができる。
【0037】
また、図9に、表面部材30aの内側からみたレバー40の取り付け状態を示すように、本実施形態において、レバー40は、下端側に延長するアーム41を有している。そして、図中鎖線で囲む部分を拡大して示すように、アーム41の先端側に設けられた突部42を、表面部材30aに設けられた突片35の穿孔351に挿通することにより、表面部材30aに対して、レバー40が回動可能となるように取り付けられている。
なお、図示する例において、レバー40は、回動軸が下端側に位置するように取り付けられているが、回動軸は上端側に位置するようにしてもよく、レバー40が燃料注入操作を行うための操作部として機能するかぎり、その具体的な取り付け手段は限定されない。
【0038】
レバー40を押し下げる力を緩めると、容器本体10は、その弾性力と容器本体10内のヘッドスペースの内圧により容積を復元し、これによりレバー40は押し戻されて定常位置に復帰するが、このとき、レバー40の作用部40a側の端縁と、開口部34との間に隙間が生じてしまうと、異物が入り込んでしまったり、レバー40を再度押し下げて燃料注入操作を繰り返す際に、この隙間にレバー40を操作する使用者の手指を挟んでしまったりするなどの不具合が考えられる。
このため、レバー40には、開口部34の縁部に内側から当接するストッパー43が設けられており、これによって、表面部材30aの外側に向かうレバー40の回動範囲を規制して、レバー40の作用部40a側の端縁と、開口部34との間に隙間が生じないようにするとともに、例えば、高温環境下で容器本体10が膨張したとしても、レバー40が外側に突出してしまわないようにしている。
【0039】
なお、特に図示しないが、裏面部材30bに対しても、同様にしてレバー40を取り付けることができる。
【0040】
また、本実施形態において、表面部材30aと裏面部材30bには、図示するように、それぞれその上方及び下方に、レバー40の上端側と下端側の側面を部分的に囲み、かつ、レバー40の操作面と面一となるように基準面33から隆起して形成された隆起部32を設けることができる。これにより、レバー40の操作範囲を、レバー40の中央部分の操作し易い部位に制限し、鞄などに入れて携行する場合や、誤って落としてしまった場合などに、レバー40が不用意に押し下げられないようにしている。
したがって、図示する例にあっては、使用者は、レバー40の中央部分の操作面を、例えば、親指と人差し指とで挟むようにして押し下げることによって、燃料注入操作を行うことができるようになっている。
なお、レバー40の操作範囲を、レバー40の中央部分の操作し易い部位に制限することができれば、隆起部10bは、レバー40の操作面から突出するように隆起して形成されていてもよい。
【0041】
また、ホルダー30には、レバー40を押し下げて燃料注入操作を行うときに、容器本体10の容積の縮減量が一定量を超えないようにする制限機構を設けておくことができる。このような制限機構の具体的な構成は特に限定されないが、例えば、レバー40の押し下げ可能な量、すなわち、レバー40の操作面と、基準面10aとの差tを適宜調整することで、レバー40の押し下げ量が一定以上にならないようにして、容器本体10の容積の縮減量が一定量を超えないように制限することができる。
【0042】
このような制限機構を設けることにより、燃料注入操作時における容器本体10の容積縮減量を一定として、燃料電池本体の燃料収容部内への燃料の注入量が一定となるようにすることができる。燃料注入操作時に、燃料収容部内の圧力が過大となると、燃料収容部に隣接して設けられている燃料電池の起電部を破損してしまうおそれがあるが、燃料の注入量を一定として燃料収容部内の圧力上昇を抑制することで、このような不具合を有効に回避することができる。
【0043】
また、レバー40の横幅は任意に設定することができるが、図10に示すように、レバー40の横幅Wを細く(例えば、13mm以下)することにより、レバー40を押し下げるときに、使用者の指がレバー40の操作面をはみ出して、レバー40を押し切ったときに基準面10aに当たり、それ以上レバー40が押し下げられないようになっているのが好ましい。これにより、よりいっそう確実に、燃料注入時の容器本体10の容積縮減量を一定とすることができる。
【0044】
また、特に図示しないが、操作部としてのレバー40は、ホルダー30の片面だけに設けるようにしてもよい。このような態様は、燃料注入操作の際に、ホルダー30の姿勢を安定させることができるとともに、ホルダー30の他方の面には、使用上の注意などの注意書きを印刷、又は貼り付けるためのスペースとすることができるという利点がある。
【0045】
また、本実施形態では、容器本体10のノズル部11に蓋体70が取り付けられるようにしてあるが(図10参照)、この蓋体70としては、例えば、子どもが誤ってキャップを外してしまったりすることがないように、チャイルドレジスタンス機能を備えたものを用いるのが好ましい。チャイルドレジスタンス機能を備えた蓋体70としては、図12に示すような外キャップ71と、図13に示すような内キャップ72とからなる二重構造を有しているものを、その一例として挙げることができる。
【0046】
図11は、外蓋71の説明図であり、図11(a)は外蓋71の正面図、図11(b)は図11(a)のC−C断面図、図11(c)は外蓋71の底面図である。これらの図に示すように、外蓋71の天面の内側には、複数の垂下片71aが周方向に沿って設けられている。
また、図12は、内蓋72の説明図であり、図12(a)は内蓋72の正面図、図12(b)は図12(a)のD−D断面図、図12(c)は内蓋72の平面図である。これらの図に示すように、内蓋72の内周面にはねじ溝が形成されており、このねじ溝によって、容器本体10のノズル部11に蓋体70が螺着される。さらに、内蓋72の上面側には、立上り面72bと傾斜面72cとに挟まれて溝部72aが形成されており、外蓋71内に内蓋72を挿入したときに、外蓋71の垂下片71aが、内蓋72の溝部72aに入り込むようになっている。
【0047】
このような外蓋71と内蓋72とは、内蓋72が、外蓋71内で相対的に上下動可能となっているとともに、外蓋71の抜け止め71bと、内蓋72の係止部72dとにより、内蓋72が外蓋71から容易に外れないようにしてある。そして、図13に示すように、容器本体10のノズル部11から蓋体70を外そうとして、単に図中矢印方向に蓋体70を回しただけでは、外蓋71の垂下片71aが、内蓋72側の傾斜面72cを乗り上げて(図13(b)参照)、内蓋72に対して外蓋71が空回りするようになっている(図13(c)参照)。
逆に、蓋体70を容器本体10のノズル部11に螺着するときには、図14に示すように、図中矢印方向に外蓋71を回せば、外蓋71の垂下片71aが、内蓋72側の立上り面72bに当接して(図14(b)参照)、外蓋71とともに、内蓋72も回転して、蓋体70を容易に締め付けることができるようになっている。
なお、図13、図14では、着目する一つの垂下片71aのみを図示し、これを斜線で示している。
【0048】
一方、容器本体10のノズル部11から蓋体70を外すには、内蓋72に対して外蓋71が空回りしないように、外蓋71に下向きの力を加えて、外蓋71の垂下片71aの先端を、内蓋72の傾斜面72cに押し付けながら回すようにすればよい。これにより、外蓋71とともに、内蓋72も回転して、蓋体70を容器本体10のノズル部11から外すことができる。
【0049】
本実施形態において、ホルダー30を構成する表面部材30a、裏面部材30b、レバー40、蓋体70は、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(ABS),ポリスチレン(PS),アクリロニトリル−スチレン樹脂(AS),ポリエチレンテレフタレート(PET),ポリブチレンテレフタレート(PBT),ポリエチレンナフタレート(PEN),ポリカーボネート(PC),ポリプロピレン(PP),ポリエチレン(PE),ポリアセタール(POM),ポリメチルメタクリレート(PMMA),変性ポリフェニレンエーテル(PPE)などの合成樹脂材料を単独で、又は二種以上ブレンドして用い、あるいは、これらのものに必要に応じてガラス繊維や、タルクなどの充填材を配合した複合材料として用いて、射出成形などにより所定形状に成形することができるが、少なくともレバー40を透明性の高い材料にて成形して、収容された容器本体10の状態、例えば、容器本体10内に残存する燃料の量などを目視できるようにするのが好ましい。一般に、耐落下衝撃性などの高い材料には、透明性の高いものが少ないので、レバー40を透明性の高い材料で形成するのは、ホルダー30の耐落下衝撃性を確保しつつ、容器本体10内の燃料の残量を目視できるようにする上で、特に好適である。
【0050】
[第二実施例]
次に、本発明に係る燃料補給容器の第二実施形態について説明する。
なお、図15は、本実施形態の概略を示す要部断面図であり、前述した第一実施形態の図1(b)B−B断面に相当する。
【0051】
本実施形態において、ホルダー30には、容器本体10のノズル部11の基部側の周囲を覆う立上り部31が形成されており、この立上り部31には、蓋体取り付け手段が設けられた筒状部材80が装着されている。
【0052】
ここで、図示する例では、筒状部材80には嵌合孔81を穿設しておき、この嵌合孔81に立上り部31に形成された嵌合突起312が嵌入することによって、筒状部材80の装着を可能としているが、筒状部材80を装着させるための具体的な手段は、図示する例には限定されない。
【0053】
また、本実施形態にあっては、筒状部材80の外周面には、蓋体取り付け手段としてのねじ部82が形成されており、このねじ部によって、図10に示すように、蓋体70を取り付けることができるようになっている。
【0054】
このように、可撓性材料からなる容器本体10とは別体に構成された筒状部材80に、蓋体取り付け手段としてのねじ部82を形成することにより、筒状部材80に硬質の素材を用いることで、ねじ部82の強度を確保するとともに、形状をシャープに形成し、蓋体70が外れにくくすることができる。
【0055】
これにより、可撓性材料からなる容器本体10に蓋体70を取り付けるようにした場合、蓋体70のねじ締めに対するノズル部11の強度の確保が困難となるため、容器本体10のノズル部11が変形などして、蓋体70のねじ締めに支障が生じたり、蓋体70が脱落してしまったりするが、本実施形態によれば、このような不都合を有効に回避することができる。
【0056】
なお、蓋体取り付け手段としては、図示するようなねじ部82を形成するに限らず、蓋体70を筒状部材80に嵌着するように構成することもできる。
【0057】
本実施形態が前述した第一実施形態と異なるのは、以上の点であり、それ以外は同様の構成を備えているので、他の構成についての詳細な説明は省略する。
【0058】
[第三実施例]
次に、本発明に係る燃料補給容器の第三実施形態について説明する。
なお、図16は、本実施形態の概略を示す要部断面図であり、前述した第一実施形態の図1(b)B−B断面に相当する。
【0059】
前述した第一実施形態において、カプラー20は、かしめ部材をカプラー20とノズル部11とに跨らせて固着することによって、ノズル部11に密着固定されるようにしてあるが、カプラー20をノズル部11に密着固定するための具体的な手段はこれに限られない。
本実施形態では、図16に示すように、容器本体10のノズル部11の周囲を覆うとともに、延長されたカプラー20の天板部23の下端近傍まで延びる立上り部31をホルダー30に形成して、この立上り部31とカプラー20とに、かしめ部材を跨らせて固着することによって、カプラー20をノズル部11に密着固定している。
【0060】
また、本実施形態では、ノズル部11に対してカプラー20が相対的に回転してしまうのを防止するための回り止め手段を、カプラー20と立上り部31との間で形成することができる。
【0061】
例えば、図17に示すように、カプラー20の天板部23の外周縁から垂下する外周筒状部23aの内周面の一部を切り欠いて凹部23bを形成するとともに、この凹部23bと係合する突片31aを立上り部31の上端縁に形成して、カプラー20側の凹部23bと、立上り部31側の突片31aとによって、カプラー20の回り止め手段が構成されるようにすることができる。
【0062】
また、図18に示すように、カプラー20の天板部23の外周縁から垂下する外周筒状部23aに、その一部を切り欠いた切欠部23cを形成するとともに、立上り部31の上端側を、凸部31cを残して薄肉として、カプラー20側の切欠部23cと、立上り部31側の凸部31cとが係合することによって、カプラー20の回り止め手段が構成されるようにしたりすることもきる。
【0063】
特に、燃料電池の燃料収容部との係合手段として、前述したようなツイストロック機構を採用した場合には、このような回り止め手段を設けるのは有効であるが、結果として、カプラー20の回り止めとして機能するものではれば、筒状部材80に設ける回り止め手段の具体的な構成は特に制限されない。
【0064】
ここで、図17は、カプラー20の回り止め手段の一例を示す説明図であり、図17(a)は、カプラーの側面図、図17(b)はカプラーの底面図、図17(c)は、立上り部の側面図、図17(d)は立上り部の上面図である。また。図18は、カプラー20の回り止め手段の他の例を示す説明図であり、図18(a)は、カプラーの側面図、図18(b)はカプラーの底面図、図18(c)は、立上り部の側面図、図18(d)は立上り部の上面図である。
である。
【0065】
さらに、本実施形態にあっては、立上り部31の外周面には、前述した第二実施形態において筒状部材80に形成したのと同様の蓋体取り付け手段としてのねじ部32が形成されており、このねじ部32によって、蓋体70を取り付けることができるようになっている。これによって、第二実施形態の場合と同様に、立上り部31が硬質の素材で形成される場合には、蓋体70のねじ締めに支障が生じたり、蓋体70が脱落してしまったりする不都合を有効に回避することができる。
【0066】
本実施形態が前述した第一実施形態と異なるのは、以上の点であり、それ以外は同様の構成を備えているので、他の構成についての詳細な説明は省略する。
【0067】
以上、本発明について、好ましい実施形態を示して説明したが、本発明は、前述した実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲で種々の変更実施が可能であることは言うまでもない。
【0068】
例えば、前述した実施形態では、縦方向に分割される表面部材30aと裏面部材30bとからなるホルダー30に、容器本体10が収容されるようにしてあるが、ホルダー30の構成はこれに限定されず、特に図示しないが、横方向に分割可能として容器本体10を収容するようにしたものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0069】
以上説明したように、本発明は、ダイレクトメタノール型燃料電池など、改質器を用いることなくアルコール類などの液体燃料を直接供給して電気化学反応を生じさせる方式の燃料電池において、燃料の残量が少なくなった本体側の燃料収容部内に、外部から燃料を注入、補給する燃料補給容器を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明に係る燃料補給容器の第一実施形態の概略を示す説明図である。
【図2】図1(b)のB−B断面図である。
【図3】燃料補給容器を燃料収容部に接合するためのバルブ機構の一例を概念的に示す説明図である。
【図4】燃料収容部の燃料注入口に燃料補給容器の燃料注出口を嵌合させた状態を概念的に示す説明図である。
【図5】本発明に係る燃料補給容器の第一実施形態の分解図である。
【図6】図5のF−F要部断面図、及びG−G要部断面図である。
【図7】図5のH−H要部断面図、及びI−I要部断面図である
【図8】燃料注入操作時のレバーの動作を示す説明図である。
【図9】表面部材の内側からみたレバーの取り付け状態を示す説明図である。
【図10】本発明に係る燃料補給容器の第一実施形態の変形例を示す説明図である。
【図11】キャップを構成する外キャップの一例を示す説明図である。
【図12】キャップを構成する内キャップの一例を示す説明図である。
【図13】内キャップに対して外キャップが空回りする際の動作を示す説明図である。
【図14】キャップを締め付ける際の動作を示す説明図である。
【図15】本発明に係る燃料補給容器の第二実施形態の概略を示す要部断面図である。
【図16】本発明に係る燃料補給容器の第三実施形態の概略を示す要部断面図である。
【図17】カプラーの回り止め手段の一例を示す説明図である。
【図18】カプラーの回り止め手段の他の例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0071】
1 燃料補給容器
10 容器本体
11 ノズル部
20 カプラー
21 燃料注出口
22 係合突起
23 天板部
24 筒状部
30 ホルダー
31 立上り部
50 かしめ部材
80 筒状部材
82 ねじ部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池の燃料収容部に、外部から燃料を注入、補給するための燃料補給容器であって、
ノズル部を有する容器本体を備え、
燃料電池側のバルブに接続されるバルブ機構を有するカプラーが、かしめ部材によって前記ノズル部に密着固定されていることを特徴とする燃料補給容器。
【請求項2】
可撓性材料からなる前記容器本体が、剛性体からなるホルダーに収納されている請求項1に記載の燃料補給容器。
【請求項3】
前記かしめ部材が、前記カプラーと前記ノズル部とに跨って固着されている請求項1〜2のいずれか1項に記載の燃料補給容器。
【請求項4】
前記ホルダーに、前記ノズル部の基部側の周囲を覆う立上り部が形成されているとともに、
前記立上り部には、蓋体取り付け手段が設けられた筒状部材が装着されている請求項3に記載の燃料補給容器。
【請求項5】
前記ホルダーに、前記ノズル部の周囲を覆う立上り部が形成されているとともに、
前記かしめ部材が、前記カプラーと前記立上り部とに跨って固着されている請求項2に記載の燃料補給容器。
【請求項6】
前記カプラーに、前記燃料電池の燃料収容部との係合手段が設けられている請求項1〜5のいずれか1項に記載の燃料補給容器。
【請求項1】
燃料電池の燃料収容部に、外部から燃料を注入、補給するための燃料補給容器であって、
ノズル部を有する容器本体を備え、
燃料電池側のバルブに接続されるバルブ機構を有するカプラーが、かしめ部材によって前記ノズル部に密着固定されていることを特徴とする燃料補給容器。
【請求項2】
可撓性材料からなる前記容器本体が、剛性体からなるホルダーに収納されている請求項1に記載の燃料補給容器。
【請求項3】
前記かしめ部材が、前記カプラーと前記ノズル部とに跨って固着されている請求項1〜2のいずれか1項に記載の燃料補給容器。
【請求項4】
前記ホルダーに、前記ノズル部の基部側の周囲を覆う立上り部が形成されているとともに、
前記立上り部には、蓋体取り付け手段が設けられた筒状部材が装着されている請求項3に記載の燃料補給容器。
【請求項5】
前記ホルダーに、前記ノズル部の周囲を覆う立上り部が形成されているとともに、
前記かしめ部材が、前記カプラーと前記立上り部とに跨って固着されている請求項2に記載の燃料補給容器。
【請求項6】
前記カプラーに、前記燃料電池の燃料収容部との係合手段が設けられている請求項1〜5のいずれか1項に記載の燃料補給容器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2007−317527(P2007−317527A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−146367(P2006−146367)
【出願日】平成18年5月26日(2006.5.26)
【出願人】(000003768)東洋製罐株式会社 (1,150)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年5月26日(2006.5.26)
【出願人】(000003768)東洋製罐株式会社 (1,150)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
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