説明

燃料貯蔵プール冷却システムおよび燃料貯蔵プール冷却方法

【課題】燃料貯蔵プール冷却システムにおいて、全ての外部電源が喪失した場合でも、プール水循環機能、熱交換器除熱機能、および、冷却機能を実現する。
【解決手段】プール水循環ポンプ装置9は、外部電源から供給される電力を利用して、または、外部電源の喪失時に供給されるガスを利用して、燃料貯蔵プール1からスキマーサージタンク2、FPCろ過脱塩装置4およびFPC熱交換器10を通して燃料貯蔵プール1までの水流路60に水を循環させる。熱交換器除熱送風機11は、外部電源30から供給される電力を利用してファン13を駆動し、FPC熱交換器10が加熱水を冷却したときに発生する残留熱を除去するための風をFPC熱交換器10の外面に供給する。水供給部12は、外部電源の喪失時に、一般生活用水源40からの生活用水23をFPC熱交換器10の外面に供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、原子力プラントの燃料貯蔵プール冷却システムおよび燃料貯蔵プール冷却方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図8は、従来の燃料貯蔵プール冷却システムの構成を示すブロック図である。
【0003】
その燃料貯蔵プール冷却システムは、燃料貯蔵プール1と、スキマーサージタンク2と、燃料貯蔵プール冷却浄化系(Fuel Pool Cooling and filtering system;以下、FPCと称する)ポンプ3と、FPCろ過脱塩装置4と、FPC熱交換器5と、原子炉補機冷却系(Reactor building closed Cooling Water system;以下、RCWと称する)ポンプ6と、RCW熱交換器7と、常用海水ポンプ8と、を具備している。
【0004】
燃料貯蔵プール1には、使用済燃料を貯蔵するための水であるプール水が溜められる。スキマーサージタンク2には、使用済燃料から発生する崩壊熱によりプール水が加熱された加熱水が溜められる。
【0005】
FPCろ過脱塩装置4は、スキマーサージタンク2内の加熱水から不純物を取り除く。FPC熱交換器5は、不純物が取り除かれた加熱水を冷却する。
【0006】
FPCポンプ3は、外部電源から供給される電力を利用して、燃料貯蔵プール1からスキマーサージタンク2、FPCろ過脱塩装置4およびFPC熱交換器5を通して燃料貯蔵プール1までの水流路100に水を循環させる。
【0007】
RCW熱交換器7は、FPC熱交換器5が加熱水を冷却したときに発生する残留熱を除去する。常用海水ポンプ8は、外部電源から供給される電力を利用して、海からRCW熱交換器7を通して海に海水を循環させる。RCWポンプ6は、外部電源から供給される電力を利用して、RCW熱交換器7からFPC熱交換器5を通してRCW熱交換器7に海水を循環させる。
【0008】
このように、従来の燃料貯蔵プール冷却システムでは、外部電源が使用可能である場合、FPCポンプ3に電力が供給されることにより、燃料貯蔵プール1内のプール水を循環させるプール水循環機能を実現し、RCWポンプ6に電力が供給されることにより、FPC熱交換器5に発生する残留熱を除去する熱交換器除熱機能を実現する。この熱交換器除熱機能により、FPC熱交換器5が加熱水を冷却する冷却機能も実現する。
【0009】
また、外部電源が使用不可能である場合に、すなわち、外部電源の喪失時には、ディーゼルエンジン発電機などの非常用外部電源が使用される。非常用外部電源については特許文献1に記載されている。従来の燃料貯蔵プール冷却システムでは、外部電源が使用不可能であっても、非常用外部電源が使用可能である場合、FPCポンプ3およびRCWポンプ6に電力が供給されることにより、上述のプール水循環機能、熱交換器除熱機能、および、冷却機能を実現できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2008−185572号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
外部電源が使用不可能であっても、非常用外部電源が使用可能である場合を想定すれば、プール水循環機能、熱交換器除熱機能、および、冷却機能を実現できる。
【0012】
しかし、外部電源や非常用外部電源を含む全ての外部電源が喪失する場合も想定される。この場合、FPCポンプ3が動作しないため、燃料貯蔵プール1内のプール水を循環することができず、上述のプール水循環機能が失われる。さらに、RCWポンプ6が動作しないため、FPC熱交換器5に発生する残留熱を除去することができず、上述の熱交換器除熱機能が失われる。熱交換器除熱機能が失われることにより、FPC熱交換器5が加熱水を冷却することができないため、上述の冷却機能が失われる。
【0013】
このように、全ての外部電源が喪失した場合、プール水循環機能、熱交換器除熱機能、および、冷却機能が失われる。
【0014】
熱交換器除熱機能が失われた場合、冷却機能も失われる。燃料貯蔵プール1内に貯蔵された使用済燃料は、常時、崩壊熱を発生しているため、燃料貯蔵プール1内のプール水が蒸発してしまう。そこで、外部から燃料貯蔵プール1内に給水して、燃料貯蔵プール1内の水位を確保する方法が想定される。
【0015】
しかし、プール水循環機能も失われた場合、燃料貯蔵プール1内のプール水が循環されないため、そのプール水の汚れが除去されない。このため、燃料貯蔵プール1内に貯蔵された使用済燃料の腐食等が進むことが懸念される。また、外部から燃料貯蔵プール1への給水が充分でない場合、燃料貯蔵プール1内のプール水が蒸発する。このため、蒸発が進行すると、その蒸発に伴って燃料貯蔵プール1内のプール水の汚濁成分が大気中に放出されることが懸念される。
【0016】
このように、プール水循環機能、熱交換器除熱機能、および、冷却機能が失われた場合、燃料貯蔵プール1内に貯蔵された使用済燃料の健全性を確保することもできない。
【0017】
本発明が解決しようとする課題は、全ての外部電源が喪失した場合でも、燃料貯蔵プール内のプール水を循環させるプール水循環機能と、熱交換器に発生する残留熱を除去する熱交換器除熱機能と、熱交換器が加熱水を冷却する冷却機能とを実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
実施形態の燃料貯蔵プール冷却システムは、使用済燃料を貯蔵するための水であるプール水を溜める燃料貯蔵プールと、前記使用済燃料から発生する崩壊熱により前記プール水が加熱された加熱水を溜めるスキマーサージタンクと、前記スキマーサージタンク内の前記加熱水から不純物を取り除くろ過脱塩装置と、前記不純物が取り除かれた前記加熱水を冷却する熱交換器と、プール水循環用外部電源から供給される電力を利用して、または、前記プール水循環用外部電源の喪失時にプール水循環用ガス供給部から供給されるガスを利用して、前記燃料貯蔵プールから前記スキマーサージタンク、前記ろ過脱塩装置および前記熱交換器を通して前記燃料貯蔵プールまでの水流路に前記水を循環させるプール水循環ポンプ装置と、ファンを備え、熱交換器除熱用外部電源から供給される電力を利用して前記ファンを駆動し、前記熱交換器が前記加熱水を冷却したときに発生する残留熱を除去するための風を前記熱交換器の外面に供給する熱交換器除熱送風機と、前記熱交換器除熱用外部電源の喪失時に、一般生活用水源からの生活用水を前記熱交換器の外面に供給する水供給部と、を具備することを特徴とする。
【0019】
また、実施形態の燃料貯蔵プール冷却方法は、使用済燃料を貯蔵するための水であるプール水を溜める燃料貯蔵プールと、前記使用済燃料から発生する崩壊熱により前記プール水が加熱された加熱水を溜めるスキマーサージタンクと、前記スキマーサージタンク内の前記加熱水から不純物を取り除くろ過脱塩装置と、前記不純物が取り除かれた前記加熱水を冷却する熱交換器と、プール水循環ポンプ装置と、ファンを備えた熱交換器除熱送風機と、水供給部と、を具備するシステムの燃料貯蔵プール冷却方法において、前記プール水循環ポンプ装置が、プール水循環用外部電源から供給される電力を利用して、または、前記プール水循環用外部電源の喪失時にプール水循環用ガス供給部から供給されるガスを利用して、前記燃料貯蔵プールから前記スキマーサージタンク、前記ろ過脱塩装置および前記熱交換器を通して前記燃料貯蔵プールまでの水流路に前記水を循環させるステップと、前記熱交換器除熱送風機が、熱交換器除熱用外部電源から供給される電力を利用して前記ファンを駆動し、前記熱交換器が前記加熱水を冷却したときに発生する残留熱を除去するための風を前記熱交換器の外面に供給するステップと、前記水供給部が、前記熱交換器除熱用外部電源の喪失時に、一般生活用水源からの生活用水を前記熱交換器の外面に供給するステップと、を具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、全ての外部電源が喪失した場合でも、燃料貯蔵プール内のプール水を循環させるプール水循環機能と、熱交換器に発生する残留熱を除去する熱交換器除熱機能と、熱交換器が加熱水を冷却する冷却機能とを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】第1および第2実施形態に係る燃料貯蔵プール冷却システムの構成を示すブロック図である。
【図2】第1実施形態に係る燃料貯蔵プール冷却システムのプール水循環ポンプ装置の構成を示すブロック図である。
【図3】第1実施形態に係る燃料貯蔵プール冷却システムの熱交換器除熱送風機の構成と、FPC熱交換器および水供給部の配置とを示すブロック図である。
【図4】第1実施形態に係る燃料貯蔵プール冷却システムの動作を示すフローチャートである。
【図5】第2実施形態に係る燃料貯蔵プール冷却システムのプール水循環ポンプ装置の構成を示すブロック図である。
【図6】第2実施形態に係る燃料貯蔵プール冷却システムの熱交換器除熱送風機の構成と、FPC熱交換器および水供給部の配置とを示すブロック図である。
【図7】第2実施形態に係る燃料貯蔵プール冷却システムの動作として電源供給時経路切り替え処理(ステップS1)および電源喪失時経路切り替え処理(ステップS4)が自動的に行われるときのタイミングチャートである。
【図8】従来の燃料貯蔵プール冷却システムの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る燃料貯蔵プール冷却システムの実施形態について、図面を参照して説明する。ここで、互いに同一または類似の部分には共通の符号を付して、重複説明は省略する。
【0023】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態に係る燃料貯蔵プール冷却システムの構成を示すブロック図である。
【0024】
第1実施形態に係る燃料貯蔵プール冷却システムは、燃料貯蔵プール1と、スキマーサージタンク2と、燃料貯蔵プール冷却浄化系(以下、FPCと称する)ろ過脱塩装置4と、プール水循環ポンプ装置9と、FPC熱交換器10と、熱交換器除熱送風機11と、水供給部12と、を具備している。
【0025】
燃料貯蔵プール1には、使用済燃料を貯蔵するための水であるプール水が溜められる。スキマーサージタンク2には、使用済燃料から発生する崩壊熱によりプール水が加熱された加熱水が溜められる。
【0026】
FPCろ過脱塩装置4は、スキマーサージタンク2内の加熱水から不純物を取り除く。FPC熱交換器10は、不純物が取り除かれた加熱水を冷却する。
【0027】
プール水循環ポンプ装置9は、スキマーサージタンク2とFPCろ過脱塩装置4との間に設けられている。プール水循環ポンプ装置9は、外部電源から供給される電力を利用して、または、外部電源の喪失時に供給されるガスを利用して、燃料貯蔵プール1からスキマーサージタンク2、FPCろ過脱塩装置4およびFPC熱交換器10を通して燃料貯蔵プール1までの水流路60に水を循環させる。
【0028】
熱交換器除熱送風機11は、ファン13を備えている。熱交換器除熱送風機11は、外部電源から供給される電力、または、外部電源の喪失時に供給されるガスを利用してファン13を駆動し、FPC熱交換器10が加熱水を冷却したときに発生する残留熱を除去するための風をFPC熱交換器10の外面に供給する。
【0029】
水供給部12は、一般生活用水源40とFPC熱交換器10の外面との間に設けられている。一般生活用水源40は、上水、下水、貯水池、および、非常用タンクなどであり、この水源により生活用水23を供給する。水供給部12としては手動で開閉可能な蛇口やレバーなどが例示され、水供給部12は外部電源の喪失時において作業者により開放される。水供給部12は、作業者により開放されたときに、一般生活用水源40からの生活用水23をFPC熱交換器10の外面に供給する。
【0030】
図2は、第1実施形態に係る燃料貯蔵プール冷却システムのプール水循環ポンプ装置9の構成を示すブロック図である。
【0031】
プール水循環ポンプ装置9は、プール水循環電動モータ15と、プール水循環電動ポンプ16と、プール水循環アキュムレータ18と、プール水循環空気圧モータ19と、プール水循環ガス駆動ポンプ20と、第1弁41と、第2弁42と、を備えている。
【0032】
プール水循環電動モータ15は、プール水循環用外部電源14とプール水循環電動ポンプ16とに接続されている。プール水循環用外部電源14は交流電力を供給する。プール水循環電動ポンプ16は、その入口が水流路60におけるスキマーサージタンク2の出口側の流路に設けられ、その出口が水流路60におけるFPCろ過脱塩装置4の入口側の流路に設けられている。第1弁41は、水流路60におけるスキマーサージタンク2の出口側の流路とプール水循環電動ポンプ16の入口との間に設けられている。
【0033】
プール水循環アキュムレータ18は、プール水循環用ガス供給部17に接続されている。プール水循環用ガス供給部17はガスを供給する。ガスは、二酸化炭素、窒素および圧縮空気のうちの少なくとも1つを含む不燃性ガスである。プール水循環空気圧モータ19は、プール水循環アキュムレータ18とプール水循環ガス駆動ポンプ20とに接続されている。プール水循環ガス駆動ポンプ20は、その入口が水流路60におけるスキマーサージタンク2の出口側の流路に設けられ、その出口が水流路60におけるFPCろ過脱塩装置4の入口側の流路に設けられている。第2弁42は、水流路60におけるスキマーサージタンク2の出口側の流路とプール水循環電動ポンプ16の入口との間に設けられている。
【0034】
図3は、第1実施形態に係る燃料貯蔵プール冷却システムの熱交換器除熱送風機11の構成と、FPC熱交換器10および水供給部12の配置とを示すブロック図である。
【0035】
熱交換器除熱送風機11は、さらに、熱交換器除熱アキュムレータ28と、熱交換器除熱空気圧モータ29と、熱交換器除熱電動モータ31と、第1スイッチ46と、第2スイッチ47と、を備えている。
【0036】
熱交換器除熱電動モータ31は、熱交換器除熱用外部電源30に接続されている。熱交換器除熱用外部電源30は交流電力を供給する。第1スイッチ46は、熱交換器除熱電動モータ31の出力とファン13との間に設けられている。
【0037】
熱交換器除熱アキュムレータ28は、熱交換器除熱用ガス供給部27に接続されている。熱交換器除熱用ガス供給部27はガスを供給する。ガスは、二酸化炭素、窒素および圧縮空気のうちの少なくとも1つを含む不燃性ガスである。熱交換器除熱空気圧モータ29は、熱交換器除熱アキュムレータ28に接続されている。第2スイッチ47は、熱交換器除熱空気圧モータ29の出力とファン13との間に設けられている。
【0038】
第1実施形態に係る燃料貯蔵プール冷却システムは、さらに、給水台21を具備している。給水台21は、第1支持部21aおよび第2支持部21bと、散水管21cと、を備えている。第1支持部21aおよび第2支持部21bは、FPC熱交換器10の両端部に設けられ、FPC熱交換器10に対して垂直な方向に延びている。散水管21cは、第1支持部21aから第2支持部21bまでFPC熱交換器10に対して平行な方向に延び、FPC熱交換器10から離れた上方に設けられている。
【0039】
散水管21cは水供給部12に接続されている。散水管21cの下方の面、すなわち、FPC熱交換器10に対向する面には、散水管21cの一端から他端まで均等な間隔に配置された給水口22が設けられている。水供給部12が開放された場合、一般生活用水源40からの生活用水23がFPC熱交換器10の外面に供給される。このとき、給水口22から均等な間隔で生活用水23がFPC熱交換器10の外面に供給される。
【0040】
ファン13は、水供給部12からFPC熱交換器10の外面に供給される生活用水23により腐食が生じないように、水供給部12とは離れて設けられている。たとえばファン13がFPC熱交換器10の上方に設けられている場合は、ファン13により生じる風(強制対流気流)は上方から下方のFPC熱交換器10に供給される。ファン13から風がFPC熱交換器10に供給され、かつ、ファン13に生活用水23がかからない位置であれば、ファン13が設けられる位置は限定されない。
【0041】
図4は、第1実施形態に係る燃料貯蔵プール冷却システムの動作を示すフローチャートである。
【0042】
まず、外部電源(プール水循環用外部電源14および熱交換器除熱用外部電源30)が使用可能であることが前提である。
【0043】
スキマーサージタンク2とプール水循環電動ポンプ16とを接続するために、第1弁41は開放される。同時に、スキマーサージタンク2とプール水循環電動ポンプ16との接続を解除するために、第2弁42は作業者により手動で閉じられる。また、熱交換器除熱電動モータ31とファン13とを接続するために、第1スイッチ46は作業者により手動で閉じられる。同時に、熱交換器除熱空気圧モータ29とファン13との接続を解除するために、第2スイッチ47は作業者により手動で開放される(ステップS1;電源供給時経路切り替え処理)。
【0044】
ステップS1の実行後、プール水循環電動モータ15は、プール水循環用外部電源14から供給される電力を利用して駆動する。プール水循環電動ポンプ16は、プール水循環電動モータ15の駆動に応じて、水流路60に水を循環させる。また、熱交換器除熱電動モータ31は、熱交換器除熱用外部電源30から供給される電力を利用してファン13を駆動し、FPC熱交換器10が加熱水を冷却したときに発生する残留熱を除去するための風をFPC熱交換器10の外面に供給する(ステップS2;電力駆動)。
【0045】
外部電源(プール水循環用外部電源14および熱交換器除熱用外部電源30)が使用可能である場合(ステップS3−YES)は、上述のステップS2が繰り返される。
【0046】
外部電源(プール水循環用外部電源14および熱交換器除熱用外部電源30)が使用不可能である場合に、すなわち、外部電源の喪失時(ステップS3−NO)には、以下の処理が行われる。
【0047】
プール水循環用外部電源14の喪失時にスキマーサージタンク2とプール水循環電動ポンプ16との接続を解除するために、第1弁41は作業者により手動で閉じられる。同時に、プール水循環用外部電源14の喪失時にスキマーサージタンク2とプール水循環電動ポンプ16とを接続するために、第2弁42は作業者により手動で開放される。また、熱交換器除熱用外部電源30の喪失時に熱交換器除熱電動モータ31とファン13との接続を解除するために、第1スイッチ46は作業者により手動で開放される。同時に、熱交換器除熱用外部電源30の喪失時に熱交換器除熱空気圧モータ29とファン13とを接続するために、第2スイッチ47は作業者により手動で閉じられる(ステップS4;電源喪失時経路切り替え処理)。
【0048】
また、外部電源(プール水循環用外部電源14および熱交換器除熱用外部電源30)の喪失時において、水供給部12が開放される(ステップS5;電源喪失時生活用水切り替え処理)。
【0049】
電源喪失時経路切り替え処理(ステップS4)の実行後、電源喪失時生活用水切り替え処理(ステップS5)の実行完了を待たずに、以下の処理が行われる。
【0050】
プール水循環アキュムレータ18は、プール水循環用外部電源14の喪失時にプール水循環用ガス供給部17から供給されるガスを利用して空気圧を供給する。プール水循環空気圧モータ19は、プール水循環アキュムレータ18から供給される空気圧を利用して駆動する。プール水循環ガス駆動ポンプ20は、プール水循環空気圧モータ19の駆動に応じて、水流路60に水を循環させる。また、熱交換器除熱アキュムレータ28は、熱交換器除熱用外部電源30の喪失時に熱交換器除熱用ガス供給部27から供給されるガスを利用して空気圧を供給する。熱交換器除熱空気圧モータ29は、熱交換器除熱アキュムレータ28から供給される空気圧を利用してファン13を駆動し、FPC熱交換器10が加熱水を冷却したときに発生する残留熱を除去するための風をFPC熱交換器10の外面に供給する(ステップS6;ガス駆動)。
【0051】
電源喪失時生活用水切り替え処理(ステップS5)の実行後、一般生活用水源40からの生活用水23が水供給部12を介してFPC熱交換器10の外面に供給される(ステップS7;生活用水供給)。
【0052】
外部電源(プール水循環用外部電源14および熱交換器除熱用外部電源30)が使用不可能な状態が続いている場合(ステップS8−NO)は、上述のステップS6およびS7が繰り返される。
【0053】
一方、外部電源(プール水循環用外部電源14および熱交換器除熱用外部電源30)が使用可能である場合は、すなわち、外部電源が復旧した場合(ステップS8−YES)は、水供給部12が閉じられ(ステップS9;電源供給時生活用水切り替え処理)、上述の電源供給時経路切り替え処理(ステップS1)が行われる。
【0054】
以上の説明により、第1実施形態に係る燃料貯蔵プール冷却システムでは、プール水循環ポンプ装置9は、プール水循環用外部電源14から供給される電力を利用して、燃料貯蔵プール1からスキマーサージタンク2、FPCろ過脱塩装置4およびFPC熱交換器10を通して燃料貯蔵プール1までの水流路60に水を循環させる。熱交換器除熱送風機11は、熱交換器除熱用外部電源30から供給される電力を利用してファン13を駆動し、FPC熱交換器10が加熱水を冷却したときに発生する残留熱を除去するための風をFPC熱交換器10の外面に供給する。このように、第1実施形態に係る燃料貯蔵プール冷却システムでは、外部電源(プール水循環用外部電源14および熱交換器除熱用外部電源30)が使用可能である場合、プール水循環ポンプ装置9に電力が供給されることにより、燃料貯蔵プール1内のプール水を循環させるプール水循環機能を実現する。また、熱交換器除熱送風機11に電力が供給されることにより、FPC熱交換器10に発生する残留熱を除去する熱交換器除熱機能を実現する。この熱交換器除熱機能により、FPC熱交換器10が加熱水を冷却する冷却機能も実現する。
【0055】
このように、第1実施形態に係る燃料貯蔵プール冷却システムによれば、熱交換器除熱送風機11から供給する風により、FPC熱交換器10に発生する残留熱を除去する空冷方式としている。このため、従来の燃料貯蔵プール冷却システムのようにFPC熱交換器5の二次側にRCW熱交換器7を設けて、RCW熱交換器7の二次側に常用海水ポンプ8を設けるようなシステムに比べて、簡素な構成となり、プール水循環機能、熱交換器除熱機能、および、冷却機能を維持するための保守点検の負担を軽減することができる。
【0056】
一方、第1実施形態に係る燃料貯蔵プール冷却システムでは、外部電源(プール水循環用外部電源14および熱交換器除熱用外部電源30)の喪失時において、プール水循環ポンプ装置9は、プール水循環用ガス供給部17から供給されるガスを利用して、燃料貯蔵プール1からスキマーサージタンク2、FPCろ過脱塩装置4およびFPC熱交換器10を通して燃料貯蔵プール1までの水流路60に水を循環させる。熱交換器除熱送風機11は、熱交換器除熱用ガス供給部27から供給されるガスを利用してファン13を駆動し、FPC熱交換器10が加熱水を冷却したときに発生する残留熱を除去するための風をFPC熱交換器10の外面に供給する。また、外部電源の喪失時において、水供給部12は、一般生活用水源40からの生活用水23をFPC熱交換器10の外面に供給する。このように、第1実施形態に係る燃料貯蔵プール冷却システムによれば、外部電源(プール水循環用外部電源14および熱交換器除熱用外部電源30)の喪失時においても、プール水循環ポンプ装置9にガスが供給されることにより、上述のプール水循環機能を実現することができる。また、熱交換器除熱送風機11にガスが供給されることにより、上述の熱交換器除熱機能を実現することができる。さらに、FPC熱交換器10の外面に生活用水23が供給されることにより、上述の熱交換器除熱機能を実現することができる。この熱交換器除熱機能により、上述の冷却機能も実現することができる。
【0057】
したがって、第1実施形態に係る燃料貯蔵プール冷却システムによれば、全ての外部電源が喪失した場合でも、燃料貯蔵プール1内のプール水を循環させるプール水循環機能と、FPC熱交換器10に発生する残留熱を除去する熱交換器除熱機能と、FPC熱交換器10が加熱水を冷却する冷却機能とを実現することができる。
【0058】
また、全ての外部電源が喪失したときに、何らかの事情により熱交換器除熱送風機11のファン13が回転しなくなる場合や、断水により一般生活用水源40から生活用水23が供給されない場合が想定される。この場合でも、第1実施形態に係る燃料貯蔵プール冷却システムでは、熱交換器除熱送風機11にガスを供給する方法と、FPC熱交換器10の外面に生活用水23を供給する方法と、の少なくとも1つの方法により、上述の熱交換器除熱機能および上述の冷却機能が確保される。
【0059】
また、第1実施形態に係る燃料貯蔵プール冷却システムによれば、熱交換器除熱機能や冷却機能が失われないため、燃料貯蔵プール1内の水位を確保することができる。このため、外部から燃料貯蔵プール1内に給水する必要がない。また、プール水循環機能が失われないため、燃料貯蔵プール1内のプール水が循環されて、そのプール水の汚れが除去されない。このため、燃料貯蔵プール1内に貯蔵された使用済燃料は腐食しない。したがって、燃料貯蔵プール1内に貯蔵された使用済燃料の健全性を確保することもできる。
【0060】
また、第1実施形態に係る燃料貯蔵プール冷却システムによれば、外部電源の喪失時においてプール水循環ポンプ装置9および熱交換器除熱送風機11に供給されるガスが不燃性ガスであるため、ディーゼルエンジン発電機などの燃料のように引火性がない。このため、火災などの二次災害を防止することができ、燃料貯蔵プール冷却システムの保守管理が容易になる。また、上述のガスが不燃性ガスであるため、可燃性ガスに比べて安価である。さらに、不燃性ガスが圧縮空気である場合は現地(燃料貯蔵プール冷却システムの設置場所)で生成することもできる。
【0061】
また、第1実施形態に係る燃料貯蔵プール冷却システムによれば、外部電源の喪失時においてディーゼルエンジン発電機などの非常用外部電源を使用しないため、燃料貯蔵プール冷却システム以外のシステムなどの他の用途で非常用外部電源を使用することができる。
【0062】
なお、第1実施形態に係る燃料貯蔵プール冷却システムでは、外部電源の喪失時において、FPC熱交換器10の外面に生活用水23を供給しているが、外部電源が使用可能である場合でもFPC熱交換器10の外面に生活用水23を供給してもよい。たとえば、外部電源が使用可能である場合でも、何らかの事情により熱交換器除熱送風機11のファン13が回転しなくなる場合が想定される。この場合でも、第1実施形態に係る燃料貯蔵プール冷却システムでは、FPC熱交換器10の外面に生活用水23を供給することにより、上述の熱交換器除熱機能および上述の冷却機能が確保される。
【0063】
[第2実施形態]
第1実施形態に係る燃料貯蔵プール冷却システムでは、上述の電源供給時経路切り替え処理(ステップS1)および上述の電源喪失時経路切り替え処理(ステップS4)は作業者により手動で行われる。
【0064】
そこで、第2実施形態に係る燃料貯蔵プール冷却システムでは、上述の電源供給時経路切り替え処理(ステップS1)および上述の電源喪失時経路切り替え処理(ステップS4)は自動的に行われる。第2実施形態について、第1実施形態の変更点のみ説明する。
【0065】
図5は、第2実施形態に係る燃料貯蔵プール冷却システムのプール水循環ポンプ装置9の構成を示すブロック図である。
【0066】
プール水循環ポンプ装置9は、プール水循環電動ポンプ16およびプール水循環ガス駆動ポンプ20に代えて、プール水循環駆動ポンプ26を備えている。
【0067】
プール水循環電動ポンプ16とプール水循環ガス駆動ポンプ20は同一のポンプであり、そのポンプはプール水循環駆動ポンプ26として設けられる。プール水循環駆動ポンプ26は、プール水循環電動モータ15またはプール水循環空気圧モータ19の駆動に応じて、水流路60に水を循環させる。
【0068】
プール水循環ポンプ装置9は、第1弁41および第2弁42に代えて、プール水循環電動モータ用電磁クラッチ43と、プール水循環空気圧モータ用電磁クラッチ44と、を備えている。
【0069】
プール水循環電動モータ用電磁クラッチ43は、プール水循環電動モータ15の出力とプール水循環駆動ポンプ26との間に設けられている。プール水循環電動モータ用電磁クラッチ43には、直流電力が供給されたときに電磁石により電磁力を発生させる電磁カップリングが用いられる。プール水循環電動モータ用電磁クラッチ43は、プール水循環電動モータ15の出力側に接続された第1駆動部(図示しない)と、プール水循環駆動ポンプ26の入力側に接続された第1出力部(図示しない)と、を備えている。プール水循環電動モータ用電磁クラッチ43は、直流電力が供給されたときに発生する電磁力により第1駆動部と第1出力部とを接続し、プール水循環電動モータ15の駆動力をプール水循環駆動ポンプ26に伝達する。プール水循環電動モータ用電磁クラッチ43は、直流電力が供給されていないときに第1駆動部と第1出力部との接続を解除し、プール水循環電動モータ15の駆動力をプール水循環駆動ポンプ26に伝達しない。
【0070】
プール水循環空気圧モータ用電磁クラッチ44は、プール水循環空気圧モータ19の出力とプール水循環駆動ポンプ26との間に設けられている。プール水循環空気圧モータ用電磁クラッチ44には、直流電力が供給されたときに電磁石により電磁力を発生させる電磁カップリングが用いられる。プール水循環空気圧モータ用電磁クラッチ44は、プール水循環空気圧モータ19の出力側に接続された第2駆動部(図示しない)と、プール水循環駆動ポンプ26の入力側に接続された第2出力部(図示しない)と、を備えている。第2駆動部および第2出力部には、付勢力により第2駆動部と第2出力部とを接続するためのバネ(図示しない)が設けられている。バネの付勢力は電磁力よりも弱いものが用いられる。プール水循環空気圧モータ用電磁クラッチ44は、直流電力が供給されていないときにバネの付勢力により第2駆動部と第2出力部とを接続し、プール水循環空気圧モータ19の駆動力をプール水循環駆動ポンプ26に伝達する。プール水循環空気圧モータ用電磁クラッチ44は、直流電力が供給されたときに発生する電磁力により第2駆動部と第2出力部との接続を解除し、プール水循環空気圧モータ19の駆動力をプール水循環駆動ポンプ26に伝達しない。
【0071】
プール水循環ポンプ装置9は、さらに、プール水循環用電力変換器45を備えている。
【0072】
プール水循環用電力変換器45は、プール水循環用外部電源14から供給される交流電力を直流電力に変換して、その直流電力をプール水循環電動モータ用電磁クラッチ43およびプール水循環空気圧モータ用電磁クラッチ44に供給する。
【0073】
図6は、第2実施形態に係る燃料貯蔵プール冷却システムの熱交換器除熱送風機11の構成と、FPC熱交換器10および水供給部12の配置とを示すブロック図である。
【0074】
熱交換器除熱送風機11は、第1スイッチ46および第2スイッチ47に代えて、熱交換器除熱電動モータ用電磁クラッチ48と、熱交換器除熱空気圧モータ用電磁クラッチ49と、を備えている。
【0075】
熱交換器除熱電動モータ用電磁クラッチ48は、熱交換器除熱電動モータ31の出力とファン13との間に設けられている。熱交換器除熱電動モータ用電磁クラッチ48には、直流電力が供給されたときに電磁石により電磁力を発生させる電磁カップリングが用いられる。熱交換器除熱電動モータ用電磁クラッチ48は、熱交換器除熱電動モータ31の出力側に接続された第3駆動部(図示しない)と、ファン13の入力側に接続された第3出力部(図示しない)と、を備えている。熱交換器除熱電動モータ用電磁クラッチ48は、直流電力が供給されたときに電磁石が発生する電磁力により第3駆動部と第3出力部とを接続し、熱交換器除熱電動モータ31の駆動力をファン13に伝達する。熱交換器除熱電動モータ用電磁クラッチ48は、直流電力が供給されていないときに第3駆動部と第3出力部との接続を解除し、熱交換器除熱電動モータ31の駆動力をファン13に伝達しない。
【0076】
熱交換器除熱空気圧モータ用電磁クラッチ49は、熱交換器除熱空気圧モータ29の出力とファン13との間に設けられている。熱交換器除熱空気圧モータ用電磁クラッチ49には、直流電力が供給されたときに電磁石により電磁力を発生させる電磁カップリングが用いられる。熱交換器除熱空気圧モータ用電磁クラッチ49は、熱交換器除熱空気圧モータ29の出力側に接続された第4駆動部(図示しない)と、ファン13の入力側に接続された第4出力部(図示しない)と、を備えている。第4駆動部および第4出力部には、付勢力により第4駆動部と第4出力部とを接続するためのバネ(図示しない)が設けられている。バネの付勢力は電磁力よりも弱いものが用いられる。熱交換器除熱空気圧モータ用電磁クラッチ49は、直流電力が供給されていないときにバネの付勢力により第4駆動部と第4出力部とを接続し、熱交換器除熱空気圧モータ29の駆動力をファン13に伝達する。熱交換器除熱空気圧モータ用電磁クラッチ49は、直流電力が供給されたときに電磁石が発生する電磁力により第4駆動部と第4出力部との接続を解除し、熱交換器除熱空気圧モータ29の駆動力をファン13に伝達しない。
【0077】
熱交換器除熱送風機11は、さらに、熱交換器除熱用電力変換器50を備えている。
【0078】
熱交換器除熱用電力変換器50は、熱交換器除熱用外部電源30から供給される交流電力を直流電力に変換して、その直流電力を熱交換器除熱電動モータ用電磁クラッチ48および熱交換器除熱空気圧モータ用電磁クラッチ49に供給する。
【0079】
図7は、第2実施形態に係る燃料貯蔵プール冷却システムの動作として電源供給時経路切り替え処理(ステップS1)および電源喪失時経路切り替え処理(ステップS4)が自動的に行われるときのタイミングチャートである。
【0080】
まず、電源供給時経路切り替え処理(ステップS1)において、プール水循環用電力変換器45は、プール水循環用外部電源14から供給される交流電力を直流電力に変換して、その直流電力をプール水循環電動モータ用電磁クラッチ43およびプール水循環空気圧モータ用電磁クラッチ44に供給する。このとき、プール水循環電動モータ用電磁クラッチ43は、プール水循環用電力変換器45から供給される直流電力を利用して電磁力が発生し、その電磁力によりプール水循環電動モータ15とプール水循環駆動ポンプ26とを接続する。また、プール水循環空気圧モータ用電磁クラッチ44は、プール水循環用電力変換器45から供給される直流電力を利用して電磁力が発生し、その電磁力によりプール水循環空気圧モータ19とプール水循環駆動ポンプ26との接続を解除する。
【0081】
また、電源供給時経路切り替え処理(ステップS1)において、熱交換器除熱用電力変換器50は、熱交換器除熱用外部電源30から供給される交流電力を直流電力に変換して、その直流電力を熱交換器除熱電動モータ用電磁クラッチ48および熱交換器除熱空気圧モータ用電磁クラッチ49に供給する。このとき、熱交換器除熱電動モータ用電磁クラッチ48は、熱交換器除熱用電力変換器50から供給される直流電力を利用して電磁力が発生し、その電磁力により熱交換器除熱電動モータ31とファン13とを接続する。また、熱交換器除熱空気圧モータ用電磁クラッチ49は、熱交換器除熱用電力変換器50から供給される直流電力を利用して電磁力が発生し、その電磁力により熱交換器除熱空気圧モータ29とファン13との接続を解除する。
【0082】
ステップS1の実行後、プール水循環電動モータ15は、プール水循環用外部電源14から供給される電力を利用して駆動する。プール水循環駆動ポンプ26は、プール水循環電動モータ15の駆動に応じて、水流路60に水を循環させる。また、熱交換器除熱電動モータ31は、熱交換器除熱用外部電源30から供給される電力を利用してファン13を駆動し、FPC熱交換器10が加熱水を冷却したときに発生する残留熱を除去するための風をFPC熱交換器10の外面に供給する(ステップS2;電力駆動)。
【0083】
外部電源(プール水循環用外部電源14および熱交換器除熱用外部電源30)が使用可能である場合(ステップS3−YES)は、上述のステップS2が繰り返される。
【0084】
外部電源(プール水循環用外部電源14および熱交換器除熱用外部電源30)が使用不可能である場合に、すなわち、外部電源の喪失時(ステップS3−NO)には、以下の処理が自動的に行われる。
【0085】
プール水循環用外部電源14から交流電力が供給されていないため、プール水循環用電力変換器45から直流電力が供給されない。この場合、プール水循環電動モータ用電磁クラッチ43は、プール水循環用外部電源14の喪失時において電磁力が発生しないため、プール水循環電動モータ15とプール水循環駆動ポンプ26との接続を解除する。また、プール水循環空気圧モータ用電磁クラッチ44は、プール水循環用外部電源14の喪失時において電磁力が発生しないため、プール水循環空気圧モータ19とプール水循環駆動ポンプ26とを接続する(ステップS4;電源喪失時経路切り替え処理)。
【0086】
また、電源喪失時経路切り替え処理(ステップS4)において、熱交換器除熱用外部電源30から交流電力が供給されていないため、熱交換器除熱用電力変換器50から直流電力が供給されない。この場合、熱交換器除熱電動モータ用電磁クラッチ48は、熱交換器除熱用外部電源30の喪失時において電磁力が発生しないため、熱交換器除熱電動モータ31とファン13との接続を解除する。また、熱交換器除熱空気圧モータ用電磁クラッチ49は、熱交換器除熱用外部電源30の喪失時において電磁力が発生しないため、熱交換器除熱空気圧モータ29とファン13とを接続する。
【0087】
また、外部電源(プール水循環用外部電源14および熱交換器除熱用外部電源30)の喪失時において、水供給部12が開放される(ステップS5;電源喪失時生活用水切り替え処理)。
【0088】
電源喪失時経路切り替え処理(ステップS4)の実行後、電源喪失時生活用水切り替え処理(ステップS5)の実行完了を待たずに、以下の処理が行われる。
【0089】
プール水循環アキュムレータ18は、プール水循環用外部電源14の喪失時にプール水循環用ガス供給部17から供給されるガスを利用して空気圧を供給する。プール水循環空気圧モータ19は、プール水循環アキュムレータ18から供給される空気圧を利用して駆動する。プール水循環駆動ポンプ26は、プール水循環空気圧モータ19の駆動に応じて、水流路60に水を循環させる。また、熱交換器除熱アキュムレータ28は、熱交換器除熱用外部電源30の喪失時に熱交換器除熱用ガス供給部27から供給されるガスを利用して空気圧を供給する。熱交換器除熱空気圧モータ29は、熱交換器除熱アキュムレータ28から供給される空気圧を利用してファン13を駆動し、FPC熱交換器10が加熱水を冷却したときに発生する残留熱を除去するための風をFPC熱交換器10の外面に供給する(ステップS6;ガス駆動)。
【0090】
ステップS5の実行後、一般生活用水源40からの生活用水23が水供給部12を介してFPC熱交換器10の外面に供給される(ステップS7;生活用水供給)。
【0091】
外部電源(プール水循環用外部電源14および熱交換器除熱用外部電源30)が使用不可能な状態が続いている場合(ステップS8−NO)は、上述のステップS6およびS7が繰り返される。
【0092】
一方、外部電源(プール水循環用外部電源14および熱交換器除熱用外部電源30)が使用可能である場合は、すなわち、外部電源が復旧した場合(ステップS8−YES)は、水供給部12が閉じられ(ステップS9;電源供給時生活用水切り替え処理)、上述の電源供給時経路切り替え処理(ステップS1)が行われる。
【0093】
電源供給時経路切り替え処理(ステップS1)は、電源供給時生活用水切り替え処理(ステップS9)の実行完了を待たずに自動的に行われる。
【0094】
このように、第2実施形態に係る燃料貯蔵プール冷却システムによれば、第1実施形態の効果に加えて、上述の電源供給時経路切り替え処理(ステップS1)および上述の電源喪失時経路切り替え処理(ステップS4)が自動的に行われる。このため、作業者が上述の電源供給時経路切り替え処理(ステップS1)および上述の電源喪失時経路切り替え処理(ステップS4)を手動で行う必要がなく、作業者の安全性が確保される。
【0095】
[他の実施形態]
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、また各実施形態の特徴を組み合わせることができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0096】
1 … 燃料貯蔵プール
2 … スキマーサージタンク
3 … 燃料貯蔵プール冷却浄化系(FPC)ポンプ
4 … FPCろ過脱塩装置
5 … FPC熱交換器
6 … 原子炉補機冷却系(RCW)ポンプ
7 … RCW熱交換器
8 … 常用海水ポンプ
9 … プール水循環ポンプ装置
10 … FPC熱交換器
11 … 熱交換器除熱送風機
12 … 水供給部
13 … ファン
14 … プール水循環用外部電源
15 … プール水循環電動モータ
16 … プール水循環電動ポンプ
17 … プール水循環用ガス供給部
18 … プール水循環アキュムレータ
19 … プール水循環空気圧モータ
20 … プール水循環ガス駆動ポンプ
21 … 給水台
21a … 第1支持部
21b … 第2支持部
21c … 散水管
22 … 給水口
23 … 生活用水
26 … プール水循環駆動ポンプ
27 … 熱交換器除熱用ガス供給部
28 … 熱交換器除熱アキュムレータ
29 … 熱交換器除熱空気圧モータ
30 … 熱交換器除熱用外部電源
31 … 熱交換器除熱電動モータ
40 … 一般生活用水源
41 … 第1弁
42 … 第2弁
43 … プール水循環電動モータ用電磁クラッチ
44 … プール水循環空気圧モータ用電磁クラッチ
45 … プール水循環用電力変換器
46 … 第1スイッチ
47 … 第2スイッチ
48 … 熱交換器除熱電動モータ用電磁クラッチ
49 … 熱交換器除熱空気圧モータ用電磁クラッチ
50 … 熱交換器除熱用電力変換器
60 … 水流路
100 … 水流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用済燃料を貯蔵するための水であるプール水を溜める燃料貯蔵プールと、
前記使用済燃料から発生する崩壊熱により前記プール水が加熱された加熱水を溜めるスキマーサージタンクと、
前記スキマーサージタンク内の前記加熱水から不純物を取り除くろ過脱塩装置と、
前記不純物が取り除かれた前記加熱水を冷却する熱交換器と、
プール水循環用外部電源から供給される電力を利用して、または、前記プール水循環用外部電源の喪失時にプール水循環用ガス供給部から供給されるガスを利用して、前記燃料貯蔵プールから前記スキマーサージタンク、前記ろ過脱塩装置および前記熱交換器を通して前記燃料貯蔵プールまでの水流路に前記水を循環させるプール水循環ポンプ装置と、
ファンを備え、熱交換器除熱用外部電源から供給される電力を利用して前記ファンを駆動し、前記熱交換器が前記加熱水を冷却したときに発生する残留熱を除去するための風を前記熱交換器の外面に供給する熱交換器除熱送風機と、
前記熱交換器除熱用外部電源の喪失時に、一般生活用水源からの生活用水を前記熱交換器の外面に供給する水供給部と、
を具備することを特徴とする燃料貯蔵プール冷却システム。
【請求項2】
前記プール水循環ポンプ装置は、
前記プール水循環用外部電源から供給される電力を利用して駆動するプール水循環電動モータと、
前記プール水循環電動モータの駆動に応じて、前記水流路に前記水を循環させるプール水循環電動ポンプと、
前記プール水循環用外部電源の喪失時に前記プール水循環用ガス供給部から供給される前記ガスを利用して空気圧を供給するプール水循環アキュムレータと、
前記プール水循環アキュムレータから供給される空気圧を利用して駆動するプール水循環空気圧モータと、
前記プール水循環空気圧モータの駆動に応じて、前記水流路に前記水を循環させるプール水循環ガス駆動ポンプと、
を備えていることを特徴とする請求項1に記載の燃料貯蔵プール冷却システム。
【請求項3】
前記プール水循環電動ポンプは、その入口が前記水流路における前記スキマーサージタンクの出口側の流路に設けられ、その出口が前記水流路における前記ろ過脱塩装置の入口側の流路に設けられ、
前記プール水循環ガス駆動ポンプは、その入口が前記水流路における前記スキマーサージタンクの出口側の流路に設けられ、その出口が前記水流路における前記ろ過脱塩装置の入口側の流路に設けられ、
前記プール水循環ポンプ装置は、
前記水流路における前記スキマーサージタンクの出口側の流路と前記プール水循環電動ポンプの入口との間に設けられ、前記スキマーサージタンクと前記プール水循環電動ポンプとを接続するために手動で開放され、前記プール水循環用外部電源の喪失時に前記スキマーサージタンクと前記プール水循環電動ポンプとの接続を解除するために手動で閉じられる第1弁と、
前記水流路における前記スキマーサージタンクの出口側の流路と前記プール水循環電動ポンプの入口との間に設けられ、前記スキマーサージタンクと前記プール水循環電動ポンプとの接続を解除するために手動で閉じられ、前記プール水循環用外部電源の喪失時に前記スキマーサージタンクと前記プール水循環電動ポンプとを接続するために手動で開放される第2弁と、
をさらに備えていることを特徴とする請求項2に記載の燃料貯蔵プール冷却システム。
【請求項4】
前記プール水循環電動ポンプと前記プール水循環ガス駆動ポンプは同一のポンプであり、前記プール水循環電動モータまたは前記プール水循環空気圧モータの駆動に応じて前記水流路に前記水を循環させるプール水循環駆動ポンプとして設けられ、
前記プール水循環ポンプ装置は、
前記プール水循環用外部電源から供給される電力を利用して前記プール水循環電動モータと前記プール水循環駆動ポンプとを接続し、前記プール水循環用外部電源の喪失時に前記プール水循環電動モータと前記プール水循環駆動ポンプとの接続を解除するプール水循環電動モータ用電磁クラッチと、
前記プール水循環用外部電源から供給される電力を利用して前記プール水循環空気圧モータと前記プール水循環駆動ポンプとの接続を解除し、前記プール水循環用外部電源の喪失時に前記プール水循環空気圧モータと前記プール水循環駆動ポンプとを接続するプール水循環空気圧モータ用電磁クラッチと、
をさらに備えていることを特徴とする請求項2に記載の燃料貯蔵プール冷却システム。
【請求項5】
前記熱交換器除熱送風機は、
前記熱交換器除熱用外部電源から供給される電力、または、前記熱交換器除熱用外部電源の喪失時に熱交換器除熱用ガス供給部から供給される前記ガスを利用して前記ファンを駆動し、前記風を前記熱交換器の外面に供給する、
ことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の燃料貯蔵プール冷却システム。
【請求項6】
前記熱交換器除熱送風機は、
前記熱交換器除熱用外部電源から供給される電力を利用して前記ファンを駆動し、前記風を前記熱交換器の外面に供給する熱交換器除熱電動モータと、
前記熱交換器除熱用外部電源の喪失時に熱交換器除熱用ガス供給部から供給される前記ガスを利用して空気圧を供給する熱交換器除熱アキュムレータと、
前記熱交換器除熱アキュムレータから供給される空気圧を利用して前記ファンを駆動し、前記風を前記熱交換器の外面に供給する熱交換器除熱空気圧モータと、
をさらに備えていることを特徴とする請求項5に記載の燃料貯蔵プール冷却システム。
【請求項7】
前記熱交換器除熱送風機は、
前記熱交換器除熱電動モータの出力と前記ファンとの間に設けられ、前記熱交換器除熱電動モータと前記ファンとを接続するために手動で閉じられ、前記熱交換器除熱用外部電源の喪失時に前記熱交換器除熱電動モータと前記ファンとの接続を解除するために手動で開放される第1スイッチと、
前記熱交換器除熱空気圧モータの出力と前記ファンとの間に設けられ、前記熱交換器除熱空気圧モータと前記ファンとの接続を解除するために手動で開放され、前記熱交換器除熱用外部電源の喪失時に前記熱交換器除熱空気圧モータと前記ファンとを接続するために手動で閉じられる第2スイッチと、
をさらに備えていることを特徴とする請求項6に記載の燃料貯蔵プール冷却システム。
【請求項8】
前記熱交換器除熱送風機は、
前記熱交換器除熱用外部電源から供給される電力を利用して前記熱交換器除熱電動モータと前記ファンとを接続し、前記熱交換器除熱用外部電源の喪失時に前記熱交換器除熱電動モータと前記ファンとの接続を解除する熱交換器除熱電動モータ用電磁クラッチと、
前記熱交換器除熱用外部電源から供給される電力を利用して前記熱交換器除熱空気圧モータと前記ファンとの接続を解除し、前記熱交換器除熱用外部電源の喪失時に前記熱交換器除熱空気圧モータと前記ファンとを接続する熱交換器除熱空気圧モータ用電磁クラッチと、
をさらに備えていることを特徴とする請求項6に記載の燃料貯蔵プール冷却システム。
【請求項9】
前記ガスは、二酸化炭素、窒素および圧縮空気のうちの少なくとも1つを含む不燃性ガスである、
ことを特徴とする請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載の燃料貯蔵プール冷却システム。
【請求項10】
使用済燃料を貯蔵するための水であるプール水を溜める燃料貯蔵プールと、前記使用済燃料から発生する崩壊熱により前記プール水が加熱された加熱水を溜めるスキマーサージタンクと、前記スキマーサージタンク内の前記加熱水から不純物を取り除くろ過脱塩装置と、前記不純物が取り除かれた前記加熱水を冷却する熱交換器と、プール水循環ポンプ装置と、ファンを備えた熱交換器除熱送風機と、水供給部と、を具備するシステムの燃料貯蔵プール冷却方法において、
前記プール水循環ポンプ装置が、プール水循環用外部電源から供給される電力を利用して、または、前記プール水循環用外部電源の喪失時にプール水循環用ガス供給部から供給されるガスを利用して、前記燃料貯蔵プールから前記スキマーサージタンク、前記ろ過脱塩装置および前記熱交換器を通して前記燃料貯蔵プールまでの水流路に前記水を循環させるステップと、
前記熱交換器除熱送風機が、熱交換器除熱用外部電源から供給される電力を利用して前記ファンを駆動し、前記熱交換器が前記加熱水を冷却したときに発生する残留熱を除去するための風を前記熱交換器の外面に供給するステップと、
前記水供給部が、前記熱交換器除熱用外部電源の喪失時に、一般生活用水源からの生活用水を前記熱交換器の外面に供給するステップと、
を具備することを特徴とする燃料貯蔵プール冷却方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−108783(P2013−108783A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−252440(P2011−252440)
【出願日】平成23年11月18日(2011.11.18)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)