説明

燃料電池の触媒層−電解質膜積層体、電解質膜−電極接合体及び燃料電池

【課題】本発明は、優れた導電性、優れた撥水性及び優れた電解質膜と触媒層との密着性を兼備する触媒層を備えた触媒層−電解質膜積層体、電解質膜−電極接合体及び燃料電池を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明の触媒層−電解質膜積層体は、液状物質含浸電解質膜の一方又は両面上に、滲み出し防止層及び触媒層が順次形成された触媒層−電解質膜積層体であって、前記液状物質含浸電解質膜は液状電解質とペースポリマーとを含有し、前記触媒層は(1)触媒担持カーボン粉、(2)非ポリマー系フッ素材料、(3)水素イオン伝導性高分子材料を含有し、前記滲み出し防止層は前記液状物質含浸電解質膜に含まれるベースポリマーと同種のベースポリマーを含有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池の触媒層−電解質膜積層体、電解質膜−電極接合体及び燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
固体高分子形燃料電池を構成する電解質膜−電極接合体(MEA)は、ガス拡散層、触媒層、イオン伝導性固体高分子電解質膜(以下、単に「電解質膜」という)、触媒層及びガス拡散層が順次積層された構造を有している。最近、固体高分子形燃料電池の中でも、触媒活性を高めるために160℃から200℃の比較的温度の高い領域で発電する燃料電池が注目されている。
【0003】
中でも、電解質膜として、ポリベンゾイミダゾール(PBI)膜等を用い、液状物質であるリン酸をPBI膜中に含浸させた液状物質含浸膜を用いた固体高分子形燃料電池の研究がなされている。
【0004】
ガス拡散層は、セパレータから供給されるガスを触媒層に均一に行き渡らせる役割を果たすため、良好なガス拡散性(ガス透過性)を備えていることが必要とされる。また、触媒層で発生した電子が効率的にセパレータへ輸送されるための導電性を有していることも必要である。このため、ガス拡散層の材質には、カーボンペーパー等の導電性多孔質基材が一般的に使用されている。更にガス拡散層に求められている性能として、撥水性が挙げられる。これは電池反応により触媒層で発生した水がガス拡散層の空隙を埋めてしまうとガス拡散性に悪影響を及ぼすため、水はけを良くし、速やかに水をMEA外部に排出させるためである。
【0005】
ところが、カーボンペーパー等の導電性多孔質基材そのものには、一般的に撥水性が備わっていない。そこで、特許文献1では、導電性多孔質基材撥水性を付与するために、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂からなる撥水層を導電性多孔質基材に形成させる方法が開示されている。
【0006】
また、特許文献2では、触媒成分、導電性粒子、フッ化ピッチ及びフッ素系樹脂(ポリテトラフルオロエチレン等)からなるペーストを使用して触媒層を形成することにより、触媒層の撥水性低下を抑制でき、燃料電池触媒層の長寿命化を図ることが提案されている。
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、電気抵抗が高いフッ素系樹脂を使用するため、ガス拡散層、ひいてはMEA全体の電気抵抗が高くなり、導電性の低下が避けられない。またフッ素系樹脂からなる撥水層では、撥水性が十分に改良されたとは言えない。
【0008】
特許文献2では、フッ化ピッチを用いているものの、結着剤として電気抵抗が高いフッ素系樹脂を使用するために、触媒層の電気抵抗が高くなる、即ち導電性が低下する問題がある。
【0009】
更に、電解質膜が液状物質であるリン酸をPBI膜中に含浸させた液状物質含浸膜である場合、該電解質膜上に触媒層を形成させた際に、液状物質が触媒層中に移行するのを回避できず、その結果、所望の触媒層を電解質膜上に形成できない問題点を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2003−115302号公報
【特許文献2】特開平7−211324号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、優れた導電性、優れた撥水性及び優れた電解質膜と触媒層との密着性を兼備する触媒層を備えた触媒層−電解質膜積層体、電解質膜−電極接合体及び燃料電池を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記問題に鑑み、鋭意研究を重ねてきた。その結果、触媒層と電解質膜との間に特定の成分を含有する滲み出し防止層を形成させることにより、所望の触媒層を備えた触媒層−電解質膜積層体、電解質膜−電極接合体及び燃料電池が得られることを見い出した。本発明は、このような知見に基づき完成されたものである。
【0013】
本発明は、下記に示す触媒層−電解質膜積層体、電解質膜−電極接合体及び燃料電池を提供する。
項1.液状物質含浸電解質膜の一方又は両面上に、滲み出し防止層及び触媒層が順次形成された触媒層−電解質膜積層体であって、前記液状物質含浸電解質膜は液状電解質とペースポリマーとを含有し、前記触媒層は(1)触媒担持カーボン粉、(2)非ポリマー系フッ素材料、(3)水素イオン伝導性高分子材料を含有し、前記滲み出し防止層は前記液状物質含浸電解質膜に含まれるベースポリマーと同種のベースポリマーを含有している、触媒層−電解質膜積層体。
項2.前記非ポリマー系フッ素材料がフッ化ピッチ、フッ化カーボン及びフッ化黒鉛からなる群から選ばれた少なくとも1種である、項1に記載の触媒層−電解質膜積層体。
項3.前記触媒層が導電性炭素繊維を更に含有する、項1又は2に記載の触媒層−電解質膜積層体。
項4.前記滲み出し防止層が触媒及び/又は導電性炭素繊維を更に含有している、項1〜3のいずれかに記載の触媒層−電解質膜積層体。
項5.項1〜4のいずれかに記載の触媒層−電解質膜積層体と、水との接触角が145度以下の導電性多孔質基材とを備えた電解質膜−電極接合体。
項6.項1〜4のいずれかに記載の触媒層−電解質膜積層体を用いた燃料電池。
項7.項5に記載の電解質膜−電極接合体を用いた燃料電池。
【0014】
触媒層形成用ペースト組成物
触媒層形成用ペースト組成物は、燃料電池用の触媒層を形成するために用いられるペースト組成物であって、前記ペースト組成物は、(1)触媒担持カーボン粉、(2)非ポリマー系フッ素材料、(3)水素イオン伝導性高分子材料、並びに(4)アルコール溶剤及び水からなる溶剤を含有している。
【0015】
上記ペースト組成物において、非ポリマー系フッ素材料は前記(4)の溶剤中に分散状態で存在している。非ポリマー系フッ素材料が分散状態で存在していると、触媒層の撥水性及び多孔性が高まり、その結果、触媒層のガス拡散性が向上し、電池性能が向上する。
【0016】
上記ペースト組成物は、イオン非伝導性(イオン伝導性を備えていない)フッ素系樹脂を含有していない。
【0017】
かかるペースト組成物を使用し、当該ペースト組成物の乾燥物をイオン伝導性電解質膜、導電性多孔質基材もしくは転写基材上に形成させることにより、優れた導電性と優れた撥水性とを兼備する触媒層を得ることができる。
【0018】
(1)の触媒担持カーボン粉は、公知である。
【0019】
触媒としては、例えば白金、白金化合物等が挙げられる。白金化合物としては、例えば、白金と、ルテニウム、パラジウム、ニッケル、モリブデン、イリジウム、鉄及びコバルトからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属との合金等が挙げられる。
【0020】
一般的には、カソード触媒層として用いられる場合は、触媒粒子は白金であり、アノード触媒層として用いられる場合は、上述した白金化合物である。
【0021】
担持体である炭素粒子としては、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、活性炭、カーボンナノチューブ、フラーレン等を使用できる。
【0022】
カーボン粉の比表面積は限定的でなく、通常は50m/g〜1500m/g程度、より好ましくは500m/g〜1300m/g程度である。この範囲とすることにより、触媒活性を向上させ、より一層高い出力密度の電池が得ることができる。
【0023】
各触媒層の白金の担持量は、通常0.1mg/cm〜2mg/cm程度である。これにより、より一層高い出力密度を達成できる。
【0024】
(2)の非ポリマー系フッ素材料は、フッ素を含有し、且つ重量平均分子量が1000〜5000程度のものであれば特に限定されない。これらは、公知又は市販のものを使用できる。本発明では特に導電性を備えた非ポリマー系フッ素材料が好ましく、例えば、フッ化ピッチ、フッ化カーボン、フッ化黒鉛等が挙げられる。このような非ポリマー系フッ素材料を含有させることにより、形成される触媒層に撥水性を付与することが可能となり、触媒反応で生成される水を効率的に外部に排出することができ、水による触媒層内部の細孔の閉塞を防ぐことができる。また、上記非ポリマー系フッ素材料を含有させることにより、形成される触媒層に優れた導電性を付与することもできる。
【0025】
非ポリマー系フッ素材料のF/C原子は限定的でないが、通常1〜2程度、好ましくは1.1〜1.6程度とすればよい。
【0026】
平均粒子径は、0.5μm〜50μm程度、好ましくは1μm〜30μm程度である。
【0027】
(3)の水素イオン伝導性電解質としては、例えばパーフルオロスルホン酸系のフッ素イオン交換樹脂、炭化水素系のイオン交換樹脂等が挙げられる。パーフルオロスルホン酸系のフッ素イオン交換樹脂としては、例えば、テトラフルオロエチレンに基づく重合単位と、スルホン酸基(−SOH)及びカルボン酸基(−COOH)からなる群より選ばれた少なくとも1種の官能基を有するパーフルオロビニルエーテルに基づく重合単位とを含む共重合体等を例示することができる。電解質の具体例としては、デュポン社製の「Nafion」、旭硝子(株)製の「Flemion」、旭化成(株)製の「Aciplex」膜が挙げられる。水素イオン伝導性電解質は、通常、電解質を1〜30重量%程度含むアルコールないしエーテル水溶液として使用される。ここでアルコールとしてはメタノール、エタノール等が、エーテルとしてはジエチルエーテル等が挙げられる。これにより、触媒粉同士の結着性を向上し、更にはイオン導電性を高めることができる。
【0028】
ペースト組成物は、必要に応じて、更に導電性炭素繊維を含有していてもよい。これにより、ペースト塗布表面でのクラックの発生が抑えられ、且つ導電性が向上するメリットがある。
【0029】
導電性炭素繊維としては、例えば、気相成長法炭素繊維(VGCF)、カーボンナノチューブ、ワイヤーカップ、ワイヤーウォール等が挙げられる。
【0030】
繊維径は限定的でなく、平均繊維径50〜400nm(好ましくは100〜250nm)程度とすればよく、平均繊維長も限定的でなく5〜50μm(好ましくは10〜20μm)程度とすれよい。アスペクト比は、およそ10〜500が好ましい。
【0031】
上記ペースト組成物は、上記(1)、(2)及び(3)以外の成分として(4)アルコール及び水からなる溶剤を含有している。
【0032】
アルコールとしては、公知のアルコールを広く使用できる。例えば、炭素数1〜5程度の1価又は多価のアルコールが挙げられる。具体的には、炭素数が3〜4のアルコールが好ましく使用できる。例えば、沸点80〜200℃の1価ないし多価アルコールが利用できる。1価アルコールは、より具体的には、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、t−ブタノール等が挙げられ、これらの中でも、2−プロパノール、1−ブタノール及びt−ブタノールが好適である。多価アルコールとしては具体的には、イオン伝導性電解質との相溶性、乾燥効率等の問題から、例えば、プロピレングリコール、エチレングリコール等が好ましく、中でもプロピレングリコールが好適である。上記アルコールは、1種単独で又は2種以上混合して使用される。
【0033】
また、上記ペースト組成物は、(5)含フッ素溶剤を含有することもできる。
【0034】
含フッ素溶剤としては、例えば、モノクロロトリフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロトリフルオロエタン、ジクロロテトラフルオロエタン、モノクロロペンタフルオロエタン、ヘキサフルオロベンゼン、パーフルオロアルカン類、パーフルオロアルキルアミン類等の各種フッ化化合物、クロロトリフルオロエチレン等が挙げられる。これらの溶剤は1種又は2種以上使用してもよい。
【0035】
ペースト組成物に含フッ素溶剤を配合したときは、前記の非ポリマー系フッ素材料は、前記(4)と(5)との混合溶剤中、特に(5)の溶剤中に溶解している状態で存在している。非ポリマー系フッ素材料が溶剤に溶解した状態になっていると、多孔質な触媒の細孔や表面への浸透性又は含浸性を高めることができ、より均一に三相界面を形成できる。
【0036】
ペースト組成物の配合割合は上記成分を含有する限り限定的ではないが、ペースト組成物を(1)〜(4)で構成する場合は、例えば、(1)触媒担持カーボン粉100重量部に対して、(2)非ポリマー系フッ素材料5〜450重量部(好ましくは50〜200重量部)程度、(3)水素イオン伝導性高分子材料5〜300重量部(好ましくは10〜200重量部)程度、(4)のアルコール10〜500重量部(好ましくは20〜200重量部)程度、(4)の水50〜2000重量部(好ましくは100〜1000重量部)程度とすればよい。
【0037】
ペースト組成物を(1)〜(5)で構成する場合は、上記配合割合に加え、(1)触媒担持カーボン粉100重量部に対して、含フッ素溶剤を10〜500重量部(好ましくは20〜200重量部)程度加えればよい。
【0038】
ペースト組成物を塗工する基材
触媒層形成用ペースト組成物を塗工する基材としては、導電性多孔質基材、イオン伝導性電解質膜、及び触媒層転写シートを作成するためのシート基材のいずれでもよい。
【0039】
(i) 導電性多孔質基材
導電性多孔質基材は、公知のものである。燃料電池(特に、固体高分子形燃料電池)で一般的に使用されているものを用いればよく、公知又は市販のものを用いることができる。例えば、カーボンペーパー、カーボンクロス、カーボン不織布(カーボンフェルト)等が挙げられる。
【0040】
導電性多孔質基材の厚みは限定的ではないが、通常50μm〜1000μm程度、好ましくは100μm〜400μm程度とすればよい。
【0041】
導電性多孔質基材は、撥水処理がされていないことが好ましい。ここで、撥水処理としては、例えば、導電性多孔質基材を、フッ素系樹脂等が分散した水分散体中に浸漬する方法等が挙げられる。
【0042】
撥水処理がされていない導電性多孔質基材は、例えば、水との接触角が145度以下の導電性多孔質基材である。このような導電性多孔質基材を使用することにより、触媒層で撥水した生成水を導電性多孔質基材側で吸収し、更に触媒層での撥水性を向上させることができ、その結果、得られる燃料電池の性能を向上させることができる。
【0043】
水との接触角は、自動接触角測定器(FACE接触角計、CA−X型、協和界面化学(株)製)を用い、1μl程度の水滴を導電性多孔質基材表面に滴下し、接触角を観測することにより測定した。
【0044】
上記ペースト組成物を、導電性多孔質基材に塗布し、乾燥することで、導電性多孔質基材に触媒層を形成することができる。
【0045】
(ii) イオン伝導性電解質膜(液状物質含浸電解質膜)
本発明のイオン伝導性電解質膜(液状物質含浸電解質膜)は、液状電解質とベースポリマーを含有する。
【0046】
液状物質含浸電解質膜に含まれるベースポリマーとしては、例えば、塩基性ポリマー、スルホン化されたポリマー等が挙げられる。液状電解質としては、例えば、強酸、イオン液体等が挙げられる。また、上記液状物質含浸電解質は更に金属リン酸塩等を含有していてもよい。
【0047】
塩基性ポリマーとしては、例えば、ポリベンズイミダゾール類、ポリ(ピリジン類)、ポリ(ピリミジン類)、ポリイミダゾール類、ポリベンゾチアゾール類、ポリベンゾオキサゾール類、ポリオキサジアゾール類、ポリキノリン類、ポリキノキサリン類、ポリチアジアゾール類、ポリ(テトラザピレン類)、ポリオキサゾール類、ポリチアゾール類、ポリビニルピリジン類、ポリビニルイミダゾール類等が挙げられる。このうちポリベンズイミダゾール類が好ましく用いられる。
【0048】
機械的強度、粘度等の高分子特性の観点から、塩基性ポリマーの重量平均分子量は、1,000〜1,000,000の範囲が好ましく、更に200,000〜500,000の範囲がより好ましい。塩基性ポリマーの重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)等の公知の任意の手法により測定される。
【0049】
塩基性ポリマーは強酸と複合体を形成できることが好ましく、この複合体は粉体であることが好ましい。塩基性ポリマー−酸複合体粉体の体積平均粒径は、耐久性、成形性、製造コスト等の観点から10〜100μmが好ましい。
【0050】
スルホン化されたポリマーとしては、例えば、スルホン化ポリイミド、スルホン化ポリスルホン、スルホン化ポリエーテルスルホン、スルホン化ポリベンズイミダゾール、スルホン化ポリエーテルエーテルケトン、スルホン化ポリフェニレン等が挙げられる。このうちスルホン化ポリイミドが好ましく用いられる。
【0051】
これらスルホン化ポリマーの分子量は、特に制限はないが、電解質膜の強度及び成形加工性の観点から、好ましくは重量平均分子量が5,000〜250,000、さらに好ましくは10,000〜100,000である。
【0052】
強酸としては、リン酸類、硫酸等の無機酸が挙げられる。なお、強酸としてリン酸を使用する場合には、イオン伝導度濃度、取り扱い性等の観点から、濃度が約85〜122%のリン酸(HPO)水溶液が好ましい。
【0053】
リン酸類(以下、単に「リン酸」ともいう。)とは、オルトリン酸及びリン酸縮合体をいい、リン酸縮合体としては、ピロリン酸、トリリン酸、メタリン酸(ポリリン酸)等が挙げられる。
【0054】
強酸の重量は、イオン伝導性、固体高分子電解質膜としての機能等の観点から、塩基性ポリマー(ベースポリマー)と強酸との総重量の5〜99.9%であることが好ましい。
【0055】
本発明において、イオン液体とは、イオンのみからなる溶融体のうち、常温において液体状態となるものを意味する。イオン液体のカチオン種としては、例えば、以下に示すカチオンを挙げることができる。
【0056】
【化1】

【0057】
[式中、R〜R15は、同一又は異なって、炭素数1〜18のアルキル基を示す。上記式(1)、(2)、(3)及び(4)において、N(窒素原子)はP(リン原子)に置き換わってカチオンを形成してもよい。]
〜R15で示されるアルキル基は、直鎖状でも分岐状であってもよく、具体例として、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−デシル基等が挙げられる。更に、前記で例示した基に、− S − 、− O − で示される結合により、S 、O 等のヘテロ原子が含まれている基等が挙げられる。好ましいアルキル基は炭素数1〜8のアルキル基であり、更に好ましくは炭素数1〜4のアルキル基である。
【0058】
上記カチオンのうち、好ましくは式(2)で示されるカチオンであり、その中でもR、R及びRで示される炭素数1〜18のアルキル基がメチル基又はエチル基であるカチオンが特に好ましい。
【0059】
式(1)で示されるカチオンの中で、好ましくは、R、R及びRが炭素数1〜4のアルキル基、Rが炭素数1〜8のアルキル基であるカチオンである。より好ましい式(1)で示されるカチオンは、R、R及びRがメチル基、Rがn−プロピル基であるカチオン(TMPA)、R及びRがメチル基、Rがイソプロピル基、Rがn−ヘキシル基であるカチオン並びにRがメチル基、R及びRがエチル基、Rが2−メトキシエチル基であるカチオンである。
【0060】
イオン液体のアニオン種としては、例えば、AlCl− 、AlCl−等のクロロアルミネートアニオン;BF−、PF−、F(HF)−等のフッ素系無機アニオン;CFCOO−、CFSO−(TfO) 、(CFSON−(TFSI)、(CFSOC−(TFSM)、HN(Tf)等のフッ素系有機アニオン;NO−;CHCOO−等が挙げられる。これらのうち、フッ素系有機アニオンが好ましい。
【0061】
イオン液体は、上記カチオン種の1種又は2種以上及び上記アニオン種の1種又は2種以上の組み合わせによるものであってよいが、好ましくは、式(1)で示されるカチオンとフッ素系有機アニオンとの組み合わせである。
【0062】
なお、イオン液体は、公知方法( 例えば、C h e m . L e t t . , 2 0 0 0 , 第922頁、J . P h y s . C h e m . B , 1 0 3 , 第4164頁(1999)等参照)によって得ることができる。本発明では、上記方法により製造したイオン液体を使用してもよいし、市販品を使用してもよい。
【0063】
金属リン酸塩としては、オルトリン酸の金属塩、ピロリン酸の金属塩等を挙げることができる。具体的には、リン酸スズ、リン酸ジルコニウム、リン酸セシウム等を挙げることができる。好ましくは、スズ、ジルコニウム、セシウム等の金属の一部がインジウム、アルミニウム、アンチモン等のドーピング金属元素で置換されたピロリン酸金属塩であるのがよい。
【0064】
本発明において、金属リン酸塩は、下記式(9)で表される化合物で構成されるのが好ましい。
【0065】
1−X ・・・(9)
[式中、Xは0≦X<0.5であり、Mは、Zr,Cs,Sn,Ti,Si,Ge,Pb,Ca,Mg及びAlの群から選ばれる1種の金属元素であり、Nは、Al,In,B,Ga,Sc,Yb,Ce,La及びSbの群から選ばれる1種のドーピング金属元素である。]
電解質膜の膜厚は、通常20〜350μm程度、好ましくは50〜300μm程度である。
【0066】
(iii) 転写シート
転写シートの基材としては、例えば、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリパルバン酸アラミド、ポリアミド(ナイロン)、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテル・エーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリアリレート、ポリエチレンナフタレート等の高分子フィルムを挙げることができる。
【0067】
また、エチレンテトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等の耐熱性フッ素樹脂を用いることもできる。
【0068】
更に、基材は、高分子フィルム以外に、アート紙、コート紙、軽量コート紙等の塗工紙、ノート用紙、コピー用紙等の非塗工紙等の紙であってもよい。
【0069】
基材の厚さは、取り扱い性及び経済性の観点から、通常6〜100μm程度、好ましくは6〜30μm程度、より好ましくは6〜15μm程度とするのがよい。
【0070】
従って、基材としては、安価で入手が容易な高分子フィルムが好ましく、ポリエチレンテレフタレート等がより好ましい。
【0071】
触媒層
基材の少なくとも一方面上に、触媒層を形成させるに当たっては、形成される触媒層が所望の層厚になるように、触媒層形成用ペースト組成物を公知の方法に従い基材上に塗布するのがよい。
【0072】
触媒層形成用ペースト組成物の塗布方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、ナイフコーター、バーコーター、スプレー、ディップコーター、スピンコーター、ロールコーター、ダイコーター、カーテンコーター、スクリーン印刷等の一般的な方法を適用できる。
【0073】
触媒層形成用ペースト組成物を塗布した後、乾燥することにより、触媒層が形成される。乾燥温度は、通常40〜100℃程度、好ましくは60〜80℃程度である。乾燥時間は、乾燥温度にもよるが、通常5分〜2時間程度、好ましくは30分〜1時間程度である。
【0074】
触媒層の膜厚は、通常10〜50μm程度、好ましくは15〜30μm程度がよい。
【0075】
滲み出し防止層
液状含浸電解質膜が液状電解質とベースポリマーとを含有している場合、滲み出し防止層は液状物質含浸電解質膜に含まれるベースポリマーと同種のベースポリマーを含有しているのが望ましい。
【0076】
滲み出し防止層を電解質膜と触媒層との間に形成させることにより、電解質膜からの液状物質の染み出しを防止できるため触媒層の変質を防止することができ、優れた触媒層の性能を維持しつつ、電解質膜と触媒層との密着性を向上させることができる。
【0077】
滲み出し防止層は触媒を含有してもよい。これにより導電性が向上する。また、滲み出し防止層は導電性炭素繊維を含有してもよい。これにより電解質膜と触媒層との密着性が一段と向上する。
【0078】
滲み出し防止層に含有される触媒としては、公知の触媒担持カーボン粉の形で用いられることが好ましい。触媒としては、例えば、白金、白金化合物等が挙げられる。白金化合物としては、例えば、白金と、ルテニウム、パラジウム、ニッケル、モリブデン、イリジウム、鉄及びコバルトからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属との合金等が挙げられる。
【0079】
カソード触媒層の触媒粒子に白金が用いられる場合は、滲み出し防止層に含まれる触媒粒子は白金が、アノード触媒層の触媒粒子に白金化合物が用いられる場合は、滲み出し防止層に含まれる触媒粒子は白金化合物が好ましい。
【0080】
担持体である炭素粒子として、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、活性炭、カーボンナノチューブ、フラーレン等を使用できる。
【0081】
カーボン粉の比表面積は限定的でなく、通常は50m/g〜1500m/g程度、より好ましくは500m/g〜1300m/g程度である。この範囲とすることにより、触媒活性を向上させ、より一層高い出力密度の電池を得ることができる。
【0082】
滲み出し防止層の白金の担持量は、通常0.1mg/cm〜2mg/cm程度である。これにより、より一層高い出力密度を達成できる。
【0083】
導電性炭素繊維としては、例えば、気相成長法炭素繊維(VGCF)、カーボンナノチューブ、ワイヤーカップ、ワイヤーウォール等が挙げられる。
【0084】
繊維径は限定的でなく、平均繊維径が通常50〜400nm(好ましくは100〜250nm)程度とすればよい。平均繊維長も限定的でなく、通常5〜50μm(好ましくは10〜20μm)程度とすればよい。
【0085】
滲み出し防止層を形成する方法は限定的でなく、滲み出し防止層を形成するための滲み出し防止層形成用ペースト組成物を用意し、これを液状物質含浸電解質膜上に塗工し、乾燥後、別途調製した触媒層とホットプレス等により積層してもよいし、触媒層上に塗工し、乾燥後に電解質膜と積層してもよいし、或いは、転写用基材上に塗工し、乾燥後に触媒層又は電解質膜に転写した後、電解質又は触媒層と積層してもよい。
【0086】
滲み出し防止層の厚みは、限定的ではないが、好ましくは0.001μm〜30μm程度、より好ましくは0.01μm〜10μm程度とすればよい。
【0087】
触媒層−電解質膜積層体
本発明の触媒層−電解質膜積層体は、電解質膜の両面に滲み出し防止層を介して触媒層が形成されている。
【0088】
本発明の触媒層−電解質膜積層体は、例えば、両面に滲み出し防止層が形成された電解質膜の一方面に触媒層形成用ペースト組成物を塗工後、乾燥し、触媒層を形成した後、反対面にも塗工する方法や、両面同時に塗工することにより製造される。
【0089】
触媒層転写シートを用いる場合、例えば、転写シート上に形成された触媒層面が電解質膜面に対面するように転写シートを配置し、加圧した後、該転写シートの基材を触媒層面から剥離することにより製造される。この操作を2回繰り返すことにより、触媒層面が電解質膜の両面に積層された触媒層−電解質膜積層体が製造される。この際、滲み出し防止層は、転写シートの触媒層上又は電解質膜上のいずれに形成されていてもよい。
【0090】
作業性を考慮すると、触媒層面を電解質膜の両面に同時に積層するのがよい。この場合には、例えば、転写シートの触媒層面が電解質膜の両面に対面するように転写シートを配置し、加圧した後、該転写シートの基材を剥離すればよい。
【0091】
加圧レベルは、転写不良を避けるために、通常0.5〜20Mpa程度、好ましくは1〜10Mpa程度がよい。また、この加圧操作の際に、転写不良を避けるために、加圧面を加熱するのが好ましい。加熱温度は、電解質膜の破損、変性等を避けるために、通常200℃以下、好ましくは20〜150℃程度がよい。
【0092】
電極−電解質膜接合体
電極−電解質膜接合体は、上記で製造された触媒層−電解質膜積層体の両面に導電性多孔質基材を配置し、加圧することにより製造される。
【0093】
また、導電性多孔質基材上に触媒層を形成し、次いで導電性多孔質基材に形成した触媒層面が電解質膜面に対面するように導電性多孔質基材を配置し、加圧する操作により、触媒層面が電解質膜の両面に積層された電極−電解質膜接合体が製造される。
【0094】
導電性多孔質基材に形成した触媒層上に滲み出し防止層が形成されている場合は、滲み出し防止層面が電解質膜面に対面するように導電性多孔質基材を配置し、加圧する操作により滲み出し防止層付き触媒層が電解質膜の両面に積層された電極−電解質膜接合体が製造される。
【0095】
また、電解質膜上に滲み出し防止層が形成されている場合は、触媒層面が滲み出し防止層面に対面するように導電性多孔質基材を配置し、加圧する操作により触媒層が滲み出し防止層付き電解質膜の両面に積層された電極−電解質膜接合体が製造される。
【0096】
作業性を考慮すると、触媒層面を電解質膜の両面に同時に積層するのがよい。この場合には、例えば、本発明転写シートの触媒層面が電解質膜の両面に対面するように転写シートを配置し、加圧した後、該転写シートの基材を剥離すればよい。
【0097】
加圧レベルは、転写不良を避けるために、通常0.5〜20Mpa程度、好ましくは1〜10Mpa程度がよい。また、この加圧操作の際に、転写不良を避けるために、加圧面を加熱するのが好ましい。加熱温度は、電解質膜の破損、変性等を避けるために、通常200℃以下、好ましくは20〜150℃程度がよい。
【発明の効果】
【0098】
液状物質含浸電解質膜と、電極触媒層と、上記記載の触媒層と上記記載の液状物質含浸電解質膜の間に滲み出し防止層を有している触媒層-電解質膜積層体であって、上記液状物質含浸電解質膜は液状電解質とペースポリマーを含有し、上記触媒層は(1)触媒担持カーボン粉、(2)非ポリマー系フッ素材料、(3)水素イオン伝導性高分子材料を含有し、上記滲み出し防止層は上記の液状物質含浸電解質膜に含まれるベースポリマーと同種のベースポリマーを含有していることで、優れた導電性と優れた撥水性と優れた電解質膜と触媒層の密着性を兼備する触媒層−電解質膜積層体を提供できる。
【0099】
上記触媒層が導電性炭素繊維をさらに含有することにより、触媒ペースト塗布表面でのクラックの発生が抑えられ且つ導電性が向上した触媒層−電解質膜積層体を提供できる。
【0100】
上記滲み出し防止層が触媒を更に含有することにより、導電性が向上した触媒層−電解質膜積層体を提供できる。
【0101】
上記滲み出し防止層が導電性炭素繊維を更に含有することにより、クラックの発生が抑えられ且つ導電性及び電解質膜と触媒層との密着性が向上した触媒層−電解質膜積層体を提供できる。
【0102】
また、上記の触媒層−電解質膜積層体と撥水処理がされていない導電性多孔質基材とを接合することにより、更に触媒層での撥水性を向上させることができる。
【0103】
従って、本発明により得られる触媒層−電解質膜積層体を用いると、優れた電池性能を有する固体高分子形燃料電池を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0104】
以下に実施例を挙げて、本発明をより詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されない。
【0105】
参考例1(触媒層形成用ペースト組成物の調製)
触媒として47wt%の白金コバルト担持カーボン(TEC35E51、田中貴金属工業製)20g、5wt%水素イオン伝導性電解質材料(Nafion溶液、DE520、Dupont社製)100g、非ポリマーフッ素材料としてフッ化ピッチ(大阪ガス社製、平均分子量は3000程度、粒径は1.2〜30μm)40g、蒸留水60g、1−ブタノール50g及び3−ブタノール50gを配合し、分散機にて攪拌混合することで、触媒層形成用ペースト組成物を調製した。
【0106】
参考例2(触媒層形成用ペースト組成物の調製)
フッ化ピッチ40gの代わりに、フッ化ピッチ10gを用いる以外は参考例1と同様にして触媒層形成用ペースト組成物を調製した。
【0107】
参考例3(触媒層形成用ペースト組成物の調製)
フッ化ピッチ40gの代わりに、フッ化ピッチ2gを用いる以外は参考例1と同様にして触媒層形成用ペースト組成物を調製した。
【0108】
参考例4(触媒層形成用ペースト組成物の調製)
導電性炭素繊維として、カーボンナノファイバー(VGCF、昭和電工製)1.4gを更に添加した以外は、参考例2と同様にして触媒層形成用ペースト組成物を調製した。
【0109】
参考例5(触媒層形成用ペースト組成物の調製)
フッ化ピッチ40gの代わりに、フッ化カーボンとして、フッ素化したカーボンナノチューブ(BuckyPlus、住友商事製)7gを用いた以外は参考例1と同様にして触媒層形成用ペースト組成物を調製した。
【0110】
参考例6(触媒層形成用ペースト組成物の調製)
フッ化ピッチ40gの代わりに、フッ化黒鉛(CEFBON CMA 平均粒径2μm、セントラル硝子社製)7gを用いた以外は参考例1と同様にして触媒層形成用ペースト組成物を調製した。
【0111】
参考例7(触媒層形成用ペースト組成物の調製)
含フッ素溶剤としてヘキサフルオロベンゼン10gを更に添加した以外は、参考例1と同様にして触媒層形成用ペースト組成物を調製した。
【0112】
参考例8(触媒層形成用ペースト組成物の調製)
含フッ素溶剤としてヘキサフルオロベンゼン10gを更に添加した以外は、参考例2と同様にして触媒層形成用ペースト組成物を調製した。
【0113】
参考例9(触媒層形成用ペースト組成物の調製)
導電性炭素繊維としてカーボンナノファイバー(VGCF、昭和電工製)1.4gを更に添加した以外は、参考例8と同様にして触媒層形成用ペースト組成物を調製した。
【0114】
参考例10(触媒層形成用ペースト組成物の調製)
フッ化ピッチ10gの代わりに、フッ化カーボンとしてフッ素化したカーボンナノチューブ(BuckyPlus、住友商事製)10gを使用し、含フッ素溶剤としてヘキサフルオロベンゼン10gを更に添加した以外は、参考例2と同様にして触媒層形成用ペースト組成物を調製した。
【0115】
参考例11(触媒層形成用ペースト組成物の調製)
フッ化ピッチ10gの代わりにフッ化黒鉛(CEFBON CMA 平均粒径2μm、セントラル硝子社製)10gを使用し、含フッ素溶剤としてヘキサフルオロベンゼン10gを更に添加した以外は、参考例2と同様にして触媒層形成用ペースト組成物を調製した。
【0116】
比較参考例1(触媒層形成用ペースト組成物の調製)
触媒として47wt%の白金コバルト担持カーボン(TEC35E51、田中貴金属工業製)20g、ポリテトラフルオロエチレン(60wt%PTFE分散液、ダイキン社製)90g、蒸留水60g、1−ブタノール50g及び3−ブタノール50gを配合し、分散機にて攪拌混合することで比較のためのペースト組成物を調製した。
【0117】
比較参考例2(触媒層形成用ペースト組成物の調製)
ポリテトラフルオロエチレンの水分散液(60wt%PTFE分散液、ダイキン社製)90gの代わりにポリテトラフルオロエチレンの水分散液16.6gを用いる以外は比較参考例1と同様にして比較のためのペースト組成物を調製した。
【0118】
比較参考例3(触媒層形成用ペースト組成物の調製)
導電性炭素繊維としてカーボンナノファイバー(VGCF、昭和電工製)1.4gを更に添加した以外は、比較参考例2と同様にして比較のためのペースト組成物を調製した。
【0119】
実施例1
(触媒層−電解質膜積層体の作製)
90gのN,N’−ジメチルアセトアミドに、10gのPBI(重量平均分子量:約70,000)を加え、10重量%のPBI溶液を作製した。室温にて、200mlビーカー中の115%リン酸90gに10重量%PBI溶液100gを撹拌しながら徐々に添加した。得られた混合物を、170℃の温度で2〜3日乾燥して、残存しているN,N’−ジメチルアセトアミドを除去した。続いて、PBI及びリン酸を含む固形物を、ジェットミルにて粉体状にした。粒径分布測定装置を用いて、得られた粉体の体積平均粒径を測定したところ、50μmであった。
【0120】
次に、上記工程によって得られたPBI及びリン酸を含む粉体15gとPTFE 3gを室温で湿式混合した。得られた混合物を、圧延機を用いて圧延し、厚みが320μmのシートを作製した。このシートを120℃の温度で2時間乾燥して、残存している溶媒を除去することにより、リン酸含浸電解質膜を得た。
【0121】
(滲み出し防止層形成用ペースト組成物の調製)
90gのN,N’−ジメチルアセトアミドに、10gのPBI(重量平均分子量:約70,000)を加え、10重量%のPBI溶液を調製した。
【0122】
(滲み出し防止層の形成)
実施例1で作製したリン酸電解質膜の両面に、上記で調製したPBI溶液をドクターブレードにより乾燥後の膜厚が0.1μmとなるように塗布し、乾燥して、残存しているN,N’−ジメチルアセトアミドを除去した。
【0123】
(触媒層−電解質膜積層体の作製)
上記で得られた滲み出し防止層付き電解質膜に、上記参考例1で調製した触媒層形成用ペースト組成物をドクターブレードにより、乾燥後の触媒重量が1g/cmとなるように塗布し、これを減圧乾燥機にて、減圧雰囲気にて室温(25℃)で30分間乾燥させた。この工程を二回繰り返すことで、リン酸含浸電解質膜上に形成される滲み出し防止層の両面に触媒層が形成された触媒層−電解質膜積層体を製造した。
【0124】
実施例2(触媒層−電解質膜積層体の作製)
参考例2で調製した触媒層形成用ペースト組成物を用いる以外は実施例1と同様にして本発明の触媒層−電解質膜積層体を製造した。
【0125】
実施例3(触媒層−電解質膜積層体の作製)
参考例3で調製した触媒層形成用ペースト組成物を用いる以外は実施例1と同様にして本発明の触媒層−電解質膜積層体を製造した。
【0126】
実施例4(触媒層−電解質膜積層体の作製)
参考例4で調製した触媒層形成用ペースト組成物を用いる以外は実施例1と同様にして本発明の触媒層−電解質膜積層体を製造した。
【0127】
実施例5(触媒層−電解質膜積層体の作製)
参考例5で調製した触媒層形成用ペースト組成物を用いる以外は実施例1と同様にして本発明の触媒層−電解質膜積層体を製造した。
【0128】
実施例6(触媒層−電解質膜積層体の作製)
参考例6で調製した触媒層形成用ペースト組成物を用いる以外は実施例1と同様にして本発明の触媒層−電解質膜積層体を製造した。
【0129】
実施例7(触媒層−電解質膜積層体の作製)
参考例7で調製した触媒層形成用ペースト組成物を用いる以外は実施例1と同様にして本発明の触媒層−電解質膜積層体を製造した。
【0130】
実施例8(触媒層−電解質膜積層体の作製)
参考例8で調製した触媒層形成用ペースト組成物を用いる以外は実施例1と同様にして本発明の触媒層−電解質膜積層体を製造した。
【0131】
実施例9(触媒層−電解質膜積層体の作製)
参考例9で調製した触媒層形成用ペースト組成物を用いる以外は実施例1と同様にして本発明の触媒層−電解質膜積層体を製造した。
【0132】
実施例10(触媒層−電解質膜積層体の作製)
参考例10で調製した触媒層形成用ペースト組成物を用いる以外は実施例1と同様にして本発明の触媒層−電解質膜積層体を製造した。
【0133】
実施例11(触媒層−電解質膜積層体の作製)
参考例11で調製した触媒層形成用ペースト組成物を用いる以外は実施例1と同様にして本発明の触媒層−電解質膜積層体を製造した。
【0134】
比較例1(触媒層−電解質膜積層体の作製)
比較参考例1で調製した触媒層形成用ペースト組成物を用いる以外は実施例1と同様にして比較のための触媒層−電解質膜積層体を製造した。
【0135】
比較例2(触媒層−電解質膜積層体の作製)
比較参考例2で調製した触媒層形成用ペースト組成物を用いる以外は実施例1と同様にして比較のための触媒層−電解質膜積層体を製造した。
【0136】
比較例3(触媒層−電解質膜積層体の作製)
比較参考例3で調製した触媒層形成用ペースト組成物を用いる以外は実施例1と同様にして比較のための触媒層−電解質膜積層体を製造した。
【0137】
試験例1
実施例1〜11及び比較例1〜3で得られた触媒層−電解質膜積層体の性能を次の方法で調べた。
【0138】
(1)燃料電池の製造
作製した触媒層−電解質膜積層体の両面に、カーボンペーパ(TGP−H−090、東レ製、厚さ275μm)を積層させることにより、電極−電解質膜接合体(MEA)を得た。次いで、得られたMEAを燃料電池セルに組み込むことにより、固体高分子形燃料電池を製造した。
【0139】
(2)電池性能評価
実施例1〜11及び比較例1〜3の触媒層−電解質膜積層体を用いて作製した燃料電池の電池性能評価は、以下の条件により検討した。
【0140】
セル温度:80℃、加湿温度:カソード80℃、アノード70℃、ガス利用率:カソード40%、アノード70%とし、負荷電流を0mA〜500mAまで変動させた時のセル電圧値の測定を行った。
【0141】
これらの結果を表1に示す。
【0142】
【表1】

【0143】
表1から、実施例1〜11の触媒層−電解質膜積層体を用いて作製した燃料電池は、比較例1〜3の触媒層−電解質膜積層体を用いて作製した燃料電池に比べて、高電流領域での電流を取り出すことができており、電解質膜中のリン酸及び発生水による触媒層の閉塞(フラッディング現象)が見られないことから、導電性が高く、かつ撥水性の点で優れていることがわかる。
【0144】
実施例12
(電解質膜の作製)
Ar雰囲気のグローブボックス中で、ジエチルメチルアミンとトリフルオロメタンスルホン酸とが等モル量となるよう秤量した。秤量後、液体窒素で冷却しながら、秤量したジエチルメチルアミンとトリフルオロメタンスルホン酸を混合し、攪拌することでジエチルメチルアンモニウムトリフルオロメタンスルフォネートのイオン伝導体を得た。得られたイオン伝導体と、ナフタレンテトラカルボン酸二無水和物を出発原料として6員環構造を有するスルホン化ポリイミドとm−クレゾールを混合し、キャスト法によって複合電解質膜を得た。
【0145】
(滲み出し防止層の形成)
上記で作製した電解質膜の両面に、上記スルホン化ポリイミド(5wt%m−クレゾール溶液)を乾燥後の膜厚が0.1μmとなるように塗布し、乾燥して滲み出し防止層を形成した。
【0146】
(触媒層−電解質膜積層体の作製)
上記で得られた滲み出し防止層付き電解質膜に、上記参考例1で作製した触媒層形成用ペースト組成物をドクターブレードにより、乾燥後の触媒重量が1g/cmとなるように塗布し、これを減圧乾燥機にて、減圧雰囲気にて室温(25℃)で30分間乾燥させた。この工程を二回繰り返すことで、電解質膜上に形成される滲み出し防止層の両面に触媒層が形成された触媒層−電解質膜積層体を製造した。
【0147】
実施例13(触媒層−電解質膜積層体の作製)
白金触媒担持カーボン(47wt%白金コバルト担持カーボン、TEC35E51、田中貴金属社製)2gに、1−ブタノール10g、3−ブタノール10g、実施例12で用いたスルホン酸化ポリイミド(5wt%m−クレゾール溶液)20g及び水6gを加え、これらを分散機にて攪拌混合することにより、滲み出し防止層形成用ペーストを調製した。次に、実施例12で作製した電解質膜の両面に、滲み出し防止層形成用ペーストを乾燥後の膜厚が0.1μmとなるように塗布し、乾燥して滲み出し防止層を形成した。以下、実施例12と同様に触媒層−電解質膜積層体を製造した。
【0148】
実施例14(触媒層−電解質膜積層体の作製)
白金触媒担持カーボン(47wt%白金コバルト担持カーボン、TEC35E51、田中貴金属社製)1.5gに、VGCF(標準品)(昭和電工(株)製)0.5g、1−ブタノール10g、3−ブタノール10g、実施例12で用いたスルホン酸化ポリイミド(5wt%m−クレゾール溶液)20g及び水6gを加え、これらを分散機にて攪拌混合することにより、滲み出し防止層形成用ペーストを調製した。次に、実施例12で作製した電解質膜の両面に、滲み出し防止層形成用ペーストを乾燥後の膜厚が0.1μmとなるように塗布し、乾燥して滲み出し防止層を形成した。以下、実施例12と同様に触媒層−電解質膜積層体を製造した。
【0149】
実施例15(触媒層−電解質膜積層体の作製)
VGCF(標準品)(昭和電工(株)製)0.5g、1−ブタノール10g、3−ブタノール10g、実施例12で用いたスルホン酸化ポリイミド(5wt%m−クレゾール溶液)20g及び水6gを加え、これらを分散機にて攪拌混合することにより、滲み出し防止層形成用ペーストを調製した。次に、実施例12で作製した電解質膜の両面に、滲み出し防止層形成用ペーストを乾燥後の膜厚が0.1μmとなるように塗布し、乾燥して滲み出し防止層を形成した。以下、実施例12と同様に触媒層−電解質膜積層体を製造した。
【0150】
実施例16
(触媒転写フィルムの作製)
転写用基材としてケイ素酸化物からなる蒸着層を設けたポリエステルフィルム(IB−PET−C、大日本印刷(株)製)を準備し、この転写用基材上に上記参考例1で調製した本発明のペースト組成物を乾燥後の触媒重量が1g/cmとなるように塗工し、乾燥し、転写用基材上に触媒層を作製した。
【0151】
(滲み出し防止層の形成)
次に、実施例14で調製した滲み出し防止層形成用ペーストを実施例12で作製した電解質膜の表面に乾燥後の膜厚が0.1μmとなるように塗工し、乾燥して、滲み出し防止層を形成した。
【0152】
(触媒層−電解質膜積層体の作製)
触媒転写フィルムの触媒層を、上記で作製した電解質膜の両面上に形成された滲みだし防止層に合うように配置した。次いで、135℃、2MPa、150秒の条件で熱プレスすることで、電解質膜の両面に滲み出し防止層を介して触媒層を形成し、触媒層−電解質膜積層体を作製した。
【0153】
実施例17
(触媒層付き電極の作製)
導電性多孔質基材(カーボンペーパー、TGP−H−090、東レ製、厚さ275μm、水との接触角:123度)上に、上記参考例1で調製した本発明のペースト組成物を乾燥後の触媒重量が1g/cmとなるように塗工し、乾燥し、導電性多孔質基材上に触媒層を作製した。
【0154】
(滲み出し防止層の形成)
次に、実施例14で調製した滲みだし防止層形成用ペーストを、実施例12で作製した電解質膜の表面に乾燥後の膜厚が0.1μmとなるように塗工し、乾燥して、滲み出し防止層を形成した。
【0155】
(電極−電解質膜接合体の作製)
触媒層付き電極を、上記で作製した電解質膜の両面に形成された滲み出し防止層に合うように配置し、電極−電解質膜接合体を作製した。
【0156】
実施例18
(触媒層付き電極の作製)
導電性多孔質基材としてSGL35BA(SGL社製、厚さ300μm、水との接触角:150度以上)を使用する以外は、上記実施例17と同様にして電極−電解質膜接合体を作製した。
【0157】
比較例4(触媒層−電解質膜積層体の作製)
参考例1で調製した触媒層形成用ペースト組成物の代わりに比較参考例1で調製した触媒層形成用ペースト組成物を用いた以外は、実施例12と同様にして触媒層−電解質膜積層体を作製した。
【0158】
実施例19
(電解質膜の作製)
まず、金属リン酸塩を以下のようにして調製した。即ち、酸化スズ(SnO:Nano Tec社製)13.56g(0.09モル)及び酸化インジウム(In:ナカライテスク社製)1.40g(0.0050モル)にリン酸水素2アンモニウム(ナカライテスク社製)27.99g(0.212モル)を加え、これらを薬さじで混合した。得られた混合物を坩堝に投入し、約650℃で約2時間程度焼成し、焼結後得られた生成物をめのうばちで粉砕し、金属リン酸塩(Sn0.9In0.1)を得た。
【0159】
得られた金属リン酸塩5gをめのう鉢で粉砕し、これに85%リン酸水溶液1.8gを混合し、160℃で30分間熱処理を行い、金属リン酸塩とリン酸の混合物を作製した。
【0160】
次に、上記で得られた金属リン酸塩とリン酸の混合物5g、Nafion(DE2020CS、デュポン社製)4g及び溶媒(水/アルコール=1/1混合液)3gを混合し、分散機により約24時間混合し電解質膜形成用ペーストを作製した。これをブレードコーターを用いて、実施例16で得られた触媒転写フィルムの触媒層表面に乾燥後の膜厚が50μmとなるように塗工し、約95℃で約20分間乾燥し、電解質膜付き触媒転写フィルムを作製した。
【0161】
(滲み出し防止層の形成)
実施例16で作製した触媒転写フィルムの触媒層側に、上記で用いたNafionを乾燥後の膜厚が0.1μmとなるように塗布し、乾燥して滲み出し防止層を形成した。
【0162】
(触媒層−電解質膜積層体の作製)
上記で得られた滲み出し防止層付き触媒転写フィルムの滲み出し防止層側に、上記で調製した電解質膜形成用ペーストをブレードコーターを用いて乾燥後の膜厚が50μmとなるように塗工し、約95℃で約20分間乾燥し、電解質膜付き触媒転写フィルムを作製した。
【0163】
次に、得られた電解質膜付き触媒転写フィルムを2枚、電解質膜側を対向させて、圧力約4MPa、加熱温度約150℃の条件で120秒ホットプレスにより接合して、触媒層−電解質膜積層体を製造した。
【0164】
実施例20(触媒層−電解質膜積層体の作製)
白金触媒担持カーボン(47wt%白金コバルト担持カーボン、TEC35E51、田中貴金属社製)2gに、1−ブタノール10g、3−ブタノール10g、実施例19で用いたNafion(DE2020CS、デュポン社製)20g及び水6gを加え、これらを分散機にて攪拌混合することにより、滲み出し防止層形成用ペーストを調製した。次に、実施例16で作製した触媒転写フィルムの触媒層側に、滲み出し防止層形成用ペーストを乾燥後の膜厚が0.1μmとなるように塗布し、乾燥して滲み出し防止層を形成した。以下、実施例19と同様に触媒層−電解質膜積層体を製造した。
【0165】
実施例21(触媒層−電解質膜積層体の作製)
白金触媒担持カーボン(47wt%白金コバルト担持カーボン、TEC35E51、田中貴金属社製)1.5gに、VGCF(標準品)(昭和電工(株)製)0.5g、1−ブタノール10g、3−ブタノール10g、実施例19で用いたNafion(DE2020CS、デュポン社製)20g及び水6gを加え、これらを分散機にて攪拌混合することにより、滲み出し防止層形成用ペーストを調製した。次に、実施例16で作製した触媒転写フィルムの触媒層側に、滲み出し防止層形成用ペーストを乾燥後の膜厚が0.1μmとなるように塗布し、乾燥して滲み出し防止層を形成した。以下、実施例19と同様に触媒層−電解質膜積層体を製造した。
【0166】
実施例22(触媒層−電解質膜積層体の作製)
VGCF(標準品)(昭和電工(株)製)0.5g、1−ブタノール10g、3−ブタノール10g、実施例19で用いたNafion(DE2020CS、デュポン社製)20g及び水6gを加え、これらを分散機にて攪拌混合することにより、滲み出し防止層形成用ペーストを調製した。次に、実施例16で作製した触媒転写フィルムの触媒層側に、滲み出し防止層形成用ペーストを乾燥後の膜厚が0.1μmとなるように塗布し、乾燥して滲み出し防止層を形成した。以下、実施例19と同様に触媒層−電解質膜積層体を製造した。
【0167】
実施例23(電極−電解質膜接合体の作製)
次に、実施例21で調製した滲み出し防止層形成用ペーストを、実施例17で作製した触媒層付き電極の触媒層上に乾燥後の膜厚が0.1μmとなるように塗工し、乾燥して滲み出し防止層を形成した。
【0168】
上記で得られた滲み出し防止層及び触媒層付き電極の滲み出し防止層側に、実施例19で作製した電解質膜形成用ペーストをブレードコーターを用いて乾燥後の膜厚が50μmとなるように塗工し、約95℃で約20分間乾燥し、電解質膜付き触媒転写フィルムを作製した。
【0169】
上記で得られた電解質膜付き触媒層付き電極を2枚、電解質膜側を対向させて配置して電極−電解質膜接合体を製造した。
【0170】
比較例5(触媒層−電解質膜積層体の作製)
参考例1で調製した触媒層形成用ペースト組成物の代わりに比較参考例1で調製した触媒層形成用ペースト組成物を用いた以外は、実施例19と同様にして触媒層−電解質膜積層体を製造した。
【0171】
試験例2
実施例12〜23及び比較例4〜5で得られた触媒層−電解質膜積層体及び電極−電解質膜接合体の性能を次の方法で調べた。
【0172】
(1)燃料電池の製造
実施例12〜16及び19〜22並びに比較例4〜5で作製した各触媒層−電解質膜積層体の両面に、カーボンペーパ(TGP−H−090、東レ製、厚さ275μm)を積層させることにより、電極−電解質膜接合体(MEA)を得た。次いで、得られたMEAを燃料電池セルに組み込むことにより、固体高分子形燃料電池を製造した。
【0173】
(2)電池性能評価
実施例12〜16、実施例19〜22及び比較例4〜5の触媒層−電解質膜積層体並びに実施例17、18及び23の電極−電解質膜接合体を用いて作製した燃料電池の電池性能評価は、以下の条件により検討した。
【0174】
セル温度:80℃、加湿温度:カソード80℃、アノード70℃、H流量一定(0.015nl/min)、空気流量一定(0.062nl/min)、負荷電流を0mA〜100mAまで変動させた時のセル電圧値の測定を行った。
【0175】
これらの結果を表2及び表3に示す。
【0176】
【表2】

【0177】
【表3】

【0178】
表2及び表3から、各電解質の系で比較すると実施例12〜23で得られた触媒層−電解質膜積層体及び電極−電解質膜接合体を用いて作製した燃料電池は、比較例4及び5の触媒層−電解質膜積層体を用いて作製した燃料電池に比べて、電流を取り出すことができており、電解質膜中の液体及び発生水による触媒層の閉塞(フラッディング現象)が見られないことから、導電性が高く、かつ撥水性の点で優れていることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液状物質含浸電解質膜の一方又は両面上に、滲み出し防止層及び触媒層が順次形成された触媒層−電解質膜積層体であって、
前記液状物質含浸電解質膜は液状電解質とペースポリマーとを含有し、
前記触媒層は(1)触媒担持カーボン粉、(2)非ポリマー系フッ素材料、(3)水素イオン伝導性高分子材料を含有し、
前記滲み出し防止層は前記液状物質含浸電解質膜に含まれるベースポリマーと同種のベースポリマーを含有している、
触媒層−電解質膜積層体。
【請求項2】
前記非ポリマー系フッ素材料がフッ化ピッチ、フッ化カーボン及びフッ化黒鉛からなる群から選ばれた少なくとも1種である、請求項1に記載の触媒層−電解質膜積層体。
【請求項3】
前記触媒層が導電性炭素繊維を更に含有する、請求項1又は2に記載の触媒層−電解質膜積層体。
【請求項4】
前記滲み出し防止層が触媒及び/又は導電性炭素繊維を更に含有している、請求項1〜3のいずれかに記載の触媒層−電解質膜積層体。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の触媒層−電解質膜積層体と、水との接触角が145度以下の導電性多孔質基材とを備えた電解質膜−電極接合体。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれかに記載の触媒層−電解質膜積層体を用いた燃料電池。
【請求項7】
請求項5に記載の電解質膜−電極接合体を用いた燃料電池。

【公開番号】特開2011−23225(P2011−23225A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−167611(P2009−167611)
【出願日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】