説明

燃料電池システムおよび水回収装置

【課題】 燃料電池の発電部での生成水を回収して、燃料電池反応に用いるか、もしくは、燃料を発生させるための燃料用物質として用いることにより、燃料電池が予め保持する水分量を減量させること、及び、生成水回収から利用までに必要な電力を低減させることにより、燃料電池のエネルギー密度や出力の向上が可能となる生成水の回収装置の提供。
【解決手段】 酸化剤と燃料が電気化学的反応する固体高分子型燃料電池で生成する水を回収する水回収装置を、燃料電池10の電極で生成した生成水を貯留する貯水槽40と、燃料、もしくは、燃料を発生するために用意された燃料用物質とが保持される物質貯蔵部である液体タンク20と、電極と貯水槽40とを連結し、生成水を流す導水管60と、貯水槽40と液体タンク20とに介在して設置される半透膜50とから構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エネルギー密度の向上を図った固体高分子型燃料電池システムに関する。特に生成した生成水を回収し燃料源として用いる、もしくは燃料と混合して用いる燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のエネルギー問題や環境問題の高まりから、より高エネルギー密度で、排出物がクリーンな電源が要求されている。燃料電池は、既存電池の数倍のエネルギー密度を有する発電機であり、エネルギー効率が高く、また、排出ガスに含まれる窒素酸化物や硫黄酸化物が無い、もしくは、少ないといった特徴がある。従って次世代の電源デバイスとしての要求に合った極めて有効なデバイスであると言われている。
【0003】
燃料電池における電極反応は、水素と酸素による水生成反応、もしくは、メタノールと酸素による水と二酸化炭素の生成反応である。いずれの場合においても反応により反応部において水が生成する。この生成水は水蒸気として正極から排出ガスとして外部に排出されると共に、電流密度によっては電極近傍で凝縮して滞留する。以上の水蒸気及び水を回収し、有効に利用する事により、運転条件を良好にしたり、燃料と混合して利用したりして燃料電池のエネルギー密度を向上したりする事ができるため、水の回収及び再利用の技術の開発が進められている。特に、生成水を燃料と混合して利用するとは、例えば、メタノールと生成水とを混合して適正なメタノール濃度にして電極に供給したり、金属水素化物に生成水を供給して水素を発生させたりする事である。これによれば、予め必要な水を燃料電池に保持しておく必要が無くなるため、水を貯蔵しておく部位を無くすか、その容量を極力小さくしておく事が可能になり、エネルギー密度を向上する事が出来る。
【0004】
従来、排出ガス中の水蒸気は、排出ガスをヒートパイプや水中に通すことにより冷却して飽和蒸気圧を低下させ、液化して電極外部で捕捉、回収されていた。また正極近傍で滞留した水は、ガス拡散層を繊維状カーボンで作製し、繊維方向を一方向にすることで水の流れを一定方向に促進させたり、ガス拡散層の撥水度合いを変化させたりして電極近傍に水が滞留しないようにし、電極外部で水を捕捉して回収されていた。更に電極外部で回収された生成水を一旦貯留し、有効部に供給するために、次に示す従来の方法が開発されてきた。
【0005】
例えば、コンプレッサーやポンプにより生成水を送り込む方法が一般に用いられてきた。具体的には、水素発生反応に生成水を利用するために、反応器に生成水を噴射する噴射機や水量を制御する制御ユニット、生成水を噴射機に供給するポンプが用いられる例がある(例えば特許文献1参照。)。
【0006】
特許文献1に示されているシステム構成図を図9に示した。これによると、燃料電池10から流出した生成水は、凝縮器90に回収され、噴射機91により反応器30に送られる。凝縮器90は、反応器30への水供給量を安定にするための水位計92や噴射機91に水を供給するためのポンプ93、水タンク94から凝縮機90に水を送るポンプ95、送る水量を調節するための制御ユニット96から構成されている。
【0007】
【特許文献1】特開2002−080202号公報(第5−8頁、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、生成水を回収し有効利用するために発明された従来の構造では、その目的にも拘らず出力やエネルギー密度が低下する問題を生じる。それは、生成水を回収して利用するために設置されるコンプレッサーやポンプ類、噴射機といった回収用機器は、駆動するための電力を必要とするからである。従ってコンプレッサーやポンプの駆動のために燃料電池の出力の一部を消費することとなり、外部のデバイスで用いることが可能な燃料電池の出力や容量を低下する事となり問題である。
【0009】
更に、これらの回収用機器の体積が大きいため、燃料電池の小型化が困難となる問題がある。
【0010】
また、これらを制御する制御ユニットは、やはり体積増大の原因であり、電力を消費するとともに、部品点数が増すために製造コストが増加する。
【0011】
以上の問題から、ノートパソコンや携帯電話といった携帯機器向けの燃料電池が、体積が小さく、高容量であることを要求されているため、従来の構造は極めて不利である。ここで少なくとも、燃料電池の反応部に燃料を供給することと、生成水を回収することが同一の機器で行うこと、更に好ましくは、こういったポンプ類を一切用いずに燃料の供給及び生成水の回収を行うことが課題である。
【0012】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、燃料電池の反応部での生成水を回収して、燃料電池反応に用いるか、もしくは、燃料を発生させるための燃料用物質として用いることにより、燃料電池が予め保持する水分量を減量できること、及び、生成水回収から利用までに必要な電力を低減できることにより、燃料電池のエネルギー密度や出力の向上が可能となる生成水の回収装置を提供することを目的とする。
【0013】
また、本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、アノード極あるいはカソード極で発生した水を安定して排出することができる燃料電池システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために、本発明においては、酸化剤と燃料が電気化学的反応する固体高分子型燃料電池で生成する水を回収する水回収装置において、燃料電池の電極で生成した生成水を貯留する貯水槽と、燃料、もしくは、燃料を発生するために用意された燃料用物質とが保持される物質貯蔵部と、電極と貯水槽とを連結し、生成水を流す導水管と、貯水槽と物質貯蔵部とに介在して設置される半透膜とからなる事を特徴としている。
【0015】
これにより、貯水槽に貯留される生成水が半透膜を透過して、物質貯蔵部に移動する事が出来るようになる。これは貯水槽に貯留される生成水と、物質貯蔵部に保持される燃料もしくは燃料用物質とが、半透膜に接する構造である。従って浸透圧が発生し、この浸透圧で生成水を物質貯蔵部に移動する事が出来る。つまり電力を使うことなく生成水を回収し、燃料用物質と混合、もしくは、化学反応するなどして利用する事が可能となる。また半透膜により物質貯蔵部内の物質や反応生成物が外部に漏洩する事が無い。この事から、燃料電池の出力や燃料の燃料電池への供給といった燃料電池の機能を損失することがなく、更に生成水量の水分を物質貯蔵部に保持する必要が無くなるため、燃料電池全体の体積を小さくする事が出来る。言い換えると、体積エネルギー密度を向上する事が出来るようになる。更に生成水を回収し利用する際に、電力を用いないため、燃料電池の出力を全て外部のデバイスで用いることが可能となり、生成水を回収して用いる従来の構造に比して高い出力を得る事が出来るようになる。
【0016】
本発明に用いる半透膜の種類は特に限定するものではない。酢酸セルロース、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアクリロニトリル、 ポ
リアミド 、ポリアミドイミド、ポリビニルアルコール、 PVDF 、 フッ素樹脂系などのいずれの樹脂を用いる事も可能である。但し、生成水回収速度を上げるために膜厚を少なくとも2mm以下、更には体積エネルギー密度を減じないために500μm以下に抑える事が好ましい。
【0017】
貯水槽から電極への水の流れを阻止する逆止弁を、導水管の間に具備する事を特徴としている。
【0018】
これにより、貯水槽に貯留された水が電極に逆流して、電極面を水で覆う事が無くなるため、燃料電池の発電能力を減じる事が無くなる。
【0019】
燃料が水素であり、燃料電池には、水素を発生する燃料用物質が具備されており、物質貯蔵部は、液体の燃料用物質を保持する液体タンクと、水素発生反応を行う反応器から成ることを特徴としている。
【0020】
更に、燃料用物質が、金属水素化物、水、触媒であり、反応器に金属水素化物が保持されており、液体タンクに少なくとも水が保持されており、水が金属水素化物に供給されて加水分解して水素を発生する事を特徴としている。
【0021】
詳しくは、金属水素化物と水とが反応して、両者の水素原子から水素分子が発生する。金属水素化物に水素化ホウ素ナトリウムを選ぶと、容易に水と反応して水素が得られる。更に、触媒としてルテニウム系、白金系、チタニア系や、クエン酸やリンゴ酸などの有機酸、硫酸などの無機酸、塩化鉄や塩化コバルトなどの金属塩を用いる事により、所望の反応速度とする事が出来るようになる。本反応系の重量当りの水素発生量は極めて高く、10重量%を超えるため、極めて有効な水素発生材料である。
【0022】
液体タンクに水、もしくは、触媒を混合した触媒水溶液を保持し、半透膜は液体タンクと貯水槽とに介在して、触媒水溶液に接して設置される事を特徴としている。
【0023】
これは、半透膜を介して浸透圧が生じ、触媒水溶液に生成水が移動することができるようになる構造の例である。生成水の移動先は液体タンクであり、移動した生成水は液体タンクで保持している触媒水溶液と混合される。生成水を水素発生反応に用いる事が出来るため、生成水量の水分を物質貯蔵部に保持する必要が無くなる。従って、体積エネルギー密度を向上する事が出来るようになる。ここで、生成水が液体タンク内に流入する事により、液体タンク内に予め保持されていた水、触媒水溶液と同様に扱えるようになるため、生成水の供給量を制御することは不要である。
【0024】
反応器は少なくとも金属水素化物が保持されており、半透膜は反応器と貯水槽とに介在して、金属水素化物に接して設置されることを特徴としている。
【0025】
これは、半透膜を介して浸透圧が生じ、金属水素化物に生成水が移動する事が出来るようになる構造の例である。半透膜は生成水で湿潤し、金属水素化物と半透膜との界面において金属水素化物が半透膜と金属水素化物の界面に存在する水分に溶解する事となる。その結果、半透膜を介して浸透圧が生じ、生成水は金属水素化物側に移動する事となる。続いて、金属水素化物と生成水が反応して、連続的に水素を発生する事となる。また生成水量の水分を物質貯蔵部に保持する必要が無くなる。つまり本構造により、体積エネルギー密度を向上できると共に、連続して水素を発生し続ける事が可能となる。この場合、半透膜にはpH9以上の耐塩基性が要求される。また、触媒に有機酸や無機酸を用いる場合、
pH3以下の耐酸性を有する事が好ましい。
【0026】
反応器に金属水素化物、及び、触媒が保持されており、半透膜は反応器と貯水層とに介在して、触媒に接して設置されることを特徴としている。
【0027】
これは、半透膜を介して浸透圧が生じ、触媒に生成水が移動する事が出来るようになる構造の例である。半透膜は生成水で湿潤し、触媒と半透膜の界面において触媒が半透膜中の水分に溶解する事となる。その結果、半透膜を介して浸透圧が生じ、生成水は触媒側に移動する事となる。続いて、触媒を溶解した生成水は反応器中で金属水素化物と接して、水素を発生する事となる。従って、体積エネルギー密度の向上と共に、所望の反応速度で水素を連続して発生する事が出来るようになる。触媒に有機酸や無機酸を用いる場合、半透膜はpH3以下の耐酸性を有する事が好ましい。
【0028】
更に、触媒は反応器内に設けられた触媒室に保持されており、半透膜を透過した生成水は触媒と混合され、金属水素化物に供給されることを特徴としている。
【0029】
これにより、触媒側に移動して触媒を溶解した生成水は、一旦触媒室に保持される事となり、ここで生成水は一定の触媒濃度とする事が出来るようになる。従ってこの触媒を含有した生成水と金属水素化物との水素発生反応速度が安定するようになる。触媒に有機酸や無機酸を用いる場合、半透膜はpH3以下の耐酸性を有する事が好ましい。
【0030】
燃料が金属水素化物、もしくは、金属水素化物の水溶液であり、燃料は物質貯蔵部から燃料電池に供給され発電に用いられることを特徴としている。
【0031】
これは、半透膜を介して浸透圧が生じ、金属水素化物、もしくは、金属水素化物水溶液に生成水が移動し、ここで金属水素化物、生成水とが混合され、燃料電池に供給される構造の例である。この場合、燃料電池では直接金属水素化物水溶液が燃料電池反応を起こす事が可能となる。つまり、金属水素化物水溶液に生成水が加わる事で、燃料電池反応に必要な水分を補う事が出来るようになる。燃料電池を直接型とした場合でも、初期水分量を少なくする事ができ、体積エネルギー密度を向上する事が出来るようになる。尚、半透膜はpH9以上の耐塩基性を有する事が好ましい。
【0032】
燃料が、アルコール類、エーテル類から成る群から選ばれる少なくとも一種の液体燃料、水、及び、不揮発性固体物質で、且つ、分子量が18より大きい水溶性化学物質を含み、燃料が物質貯蔵部から燃料電池に供給され発電に用いられることを特徴としている。
【0033】
この場合、半透膜が物質貯蔵部と貯水層とに介在して設置されるため、ここで浸透圧が生じ、生成水が物質貯蔵部側に移動する事が出来るようになる。これにより、直接メタノール型燃料電池に類する型の燃料電池を用いる事が出来るようになる。直接メタノール型燃料電池では液体燃料と水とが反応するため、本構造により、生成水を反応に用いることで初期の水分量を低下し、体積エネルギー密度を向上する事が可能となる。
【0034】
化学物質は、浸透圧を生じるために混合するものであり、燃料電池反応に用いられないものが好ましい。限定するものではないが、具体的には、硫酸塩や硝酸塩、塩化物など電気化学において一般的に支持電解質として用いられる物質や、糖類が挙げられる。
【0035】
物質貯蔵部が、化学物質を溶解した水溶液を保持する水溶液タンクと、少なくとも液体燃料を保持する燃料タンクから成り、半透膜は、貯水層と水溶液タンクとに介在して設置されており、水溶液と液体燃料とが同時に燃料電池に供給されることを特徴としている。
【0036】
これにより、半透膜を介して浸透圧が生じ、水溶液に生成水が移動し、燃料電池に供給する事が出来るようになる。ここで、液体燃料と水溶液の供給量比率を一定にすることが可能となり、燃料電池の発電効率を向上する事が出来るようになる。
【0037】
化学物質が、非電解質であることを特徴としている。
【0038】
化学物質が電解質の場合、イオンが燃料電池の高分子電解質膜を透過して正極に移動する恐れがあるが、非電解質であるため、負極、物質貯蔵部、及び、その連結管内に閉じ込める事が可能となる。
【0039】
貯水槽の内容積が変化可能であり、燃料電池の電極で生成した生成水が貯水槽に移動する際に容積が増大することを特徴としている。
【0040】
これにより、生成水の貯水槽への流入を妨げなくなる。
【0041】
詳しくは、貯水槽が水不透過性の樹脂フィルムで形成された袋状容器であることを特徴としている。
【0042】
これにより、容積が変化できる貯水槽を簡便に作製する事が出来るようになる。
【0043】
導水管に、親水性繊維が挿入されている事を特徴としている。
【0044】
これにより、導水管内を生成水が流れやすくなる。特に限定するものではないが、親水性繊維とは、例えば、綿繊維、レーヨン繊維、ポリビニルアルコール系繊維などの吸水性繊維、アクリル、ナイロン等からなる合成繊維材料、或いは多孔質のセラミック材料或いはカーボン、ガラス等、素材そのものは吸水性を持たなくても毛管力によって吸水性を付与した材料が挙げられる。以上の材料を用いる事により、毛管力や吸水性から導水管内を生成水を移動しやすくする事が出来るようになる。
【0045】
また、触媒水溶液を貯留する触媒槽と、燃料電池によって生成された生成水を貯留する貯水槽と、触媒槽と貯水槽の間に設けられ浸透圧により生成水を触媒槽から貯水槽へ移動させる半透膜とからなる液体タンクと、金属水素化物を貯蔵し、触媒水溶液と反応させて水素を発生させる反応器と、液体タンクと反応器を接続し、触媒水溶液を反応器に送る送液管と、水素により発電を行う固体高分子型燃料電池と、反応器と燃料電池とを接続し、水素を燃料電池に供給するガス供給管と、燃料電池と貯水タンクとを接続し、燃料電池で生成した生成水を燃料電池から貯水槽への一方向に送り、生成水の逆流を防止する逆止弁を有する導水管とを有する構成としている。
【0046】
また、水素と酸素の電気化学反応により発電を行う燃料電池システムにおいて、アノード極に水素を供給する水素供給手段と、電気化学反応により発生した水を浸透圧により移動させてアノード極の外部に排出する水回収手段とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0047】
以上説明したように、貯水槽に貯留される生成水が半透膜を透過して、物質貯蔵部に移動する事が出来るようになる。これは貯水槽に貯留される生成水と、物質貯蔵部に保持される燃料もしくは燃料用物質とが、半透膜に接する構造である。従って浸透圧が発生し、この浸透圧で生成水を物質貯蔵部に移動する事が出来る。つまり電力を使うことなく生成水を回収し、燃料用物質と混合、もしくは、化学反応するなどして利用する事が可能となる。この事から、生成水量の水分を物質貯蔵部に保持する必要が無くなるため、燃料電池全体の体積を小さくする事が出来る。言い換えると、体積エネルギー密度を向上する事が出来るようになる。更に生成水を回収し利用する際に電力を用いないため、燃料電池の出力を全て外部のデバイスで用いることが可能となり、生成水を回収して用いる従来の構造に比して高い出力を得る事が出来るようになる。また、アノード極あるいはカソード極で発生した水を安定して排出することができる燃料電池システムとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0048】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0049】
図1は、本発明による水回収装置を燃料電池と接続した場合の構成図である。構成は、水素と酸素を反応して発電する燃料電池10、水素を発生させるための物質を貯蔵する物質貯蔵部として、触媒水溶液21を貯蔵する液体タンク20及び金属水素化物31を貯蔵する反応器30、燃料電池10で発生する生成水を貯蔵する貯水槽40を具備し、触媒水溶液21を液体タンク20から反応器30に送液するための送液管22にて液体タンク20と反応器30とを連結し、水素を反応器30から燃料電池10に送るためのガス供給管32にて反応器30と燃料電池10とを連結し、燃料電池10で発生する生成水を貯水槽40に送液するために導水管60にて燃料電池10と貯水槽40とを連結している構成である。ここで導水管60には生成水が燃料電池10に逆流しないようにするために逆止弁70を設けた。そして半透膜50を液体タンク20と貯水槽40の間に備え、半透膜50の対向する面に、液体タンク20に貯蔵する触媒水溶液21と貯水槽40に至った生成水とが接するように配置した。また導水管60には吸水性を有する綿繊維を挿入した。
【0050】
本例においては、金属水素化物31として水素化ホウ素ナトリウムを10g、及び、触媒水溶液21としてリンゴ酸水溶液を20g用いた。触媒水溶液21を反応器30に供給すると、金属水素化物31と接触して加水分解反応が起き、水素を発生する。この水素が燃料電池10に移動して、燃料電池10で反応し発電する。触媒水溶液21の反応器30への供給は、燃料電池10における水素消費に伴い反応器30内が減圧するために、液体タンク20から触媒水溶液21を反応器30側に引き込む現象を用いた。これによれば、触媒水溶液21送液に電力が必要なくなるためである。また半透膜50にはNafion(商標)、膜厚210μmを用いた。
【0051】
さて、燃料電池10での反応により生成水が生成した。生成水は、導水管60内に挿入した綿繊維にしみ込みながら貯水槽40に至り、半透膜50に接触した。ここで半透膜50の生成水と対向する面に液体タンク20の触媒水溶液21が存在するため、浸透圧が生じ、生成水が触媒水溶液21に移動する現象が発生した。最終的に生成水は17g程度回収されたため、触媒水溶液21が不足することなく反応器30に移動し、水素発生反応に供された。これまでの実験から、効率的に水素化ホウ素ナトリウムから水素を発生するためには、水素化ホウ素ナトリウム10gに対し、リンゴ酸水溶液を少なくとも35g程度必要とする事が分かっている。それに対し本実施例においてはリンゴ酸水溶液の重量が20gであったことから、リンゴ酸水溶液を15g減量しても反応が効率的に進行する事が示された。従って、液体タンク20の体積を10cc程度小型化でき、重量及び体積のエネルギー密度を向上する事が出来た。
【0052】
また、図2は本発明による水回収装置を燃料電池の図1と異なる部位に接続した場合の構成図である。半透膜50を反応器30と貯水槽40の間に備え、半透膜50の対向する面に、反応器30に貯蔵する金属水素化物31と貯水槽40に至った生成水とが接するように配置した。また導水管60には吸水性を有する綿繊維を挿入した。これにより、金属水素化物31に生成水が移動し、金属水素化物31の水素発生反応において必要な水を供給できたため、燃料電池10の運転に伴い連続して水素発生を行い、燃料電池10に水素を供給する事が出来た。
【0053】
また、図3は本発明による水回収装置を燃料電池の図1、図2と異なる部位に接続した場合の構成図である。半透膜50を設置する部位を、反応器30と貯水槽40の間とした。そして半透膜50の対向する面に、反応器30に貯蔵する触媒33と貯水槽40に至った生成水とが接するように配置した。これによっても同様の効果が得られた。
【実施例2】
【0054】
図4は、本発明による水回収装置を燃料電池と接続した場合の構成図である。構成は実施例1と同様であるが、半透膜50を設置する部位を、触媒33を保持するために反応器30内に設けた触媒室34と貯水槽40の間とした。そして、半透膜50の対向する面に、触媒室34に貯蔵する触媒33と貯水槽40に至った生成水とが接するように配置した。
【0055】
触媒室34には、浸透圧により移動した生成水に触媒33が溶解し触媒水溶液となる。開口部35を触媒室34上部に設置する事により、触媒水溶液が一定量生成するまで開口部35から触媒水溶液が流出しなかった。従って触媒濃度が低下して、反応器30内の金属水素化物31に供給され、その結果安定した水素発生速度を得る事が可能となった。
【実施例3】
【0056】
図5は、本発明による水回収装置を燃料電池と接続した場合の構成図である。構成は、液体状の燃料と酸素を反応して発電する燃料電池10、液体状の燃料を貯蔵する物質貯蔵部である液体タンク20、燃料電池10で発生する生成水を貯蔵する貯水槽40を具備し、液体状の燃料を液体タンク20から燃料電池10に送液するための送液管22にて液体タンク20と燃料電池10とを連結し、燃料電池10で発生する生成水を貯水槽40に送液するために導水管60にて燃料電池10と貯水槽40とを連結している構成である。ここで導水管60には生成水が燃料電池10に逆流しないようにするために逆止弁70を設けた。そして半透膜50を液体タンク20と貯水槽40の間に備え、半透膜50の対向する面に、液体タンク20に貯蔵する液体状の燃料と貯水槽40に至った生成水とが接するように配置した。また導水管60には吸水性を有する綿繊維を挿入した。
【0057】
本実施例では液体状の燃料として、金属水素化物水溶液24を用いた。金属水素化物として、具体的には、水素化ホウ素ナトリウムを用い、水溶液を安定化するために水酸化ナトリウムを混合した。この金属水素化物水溶液24を燃料電池10に供給することで、水素を介さずに燃料電池反応を進行して、発電をする事が出来る。水回収装置を設けない場合は、水素化ホウ素ナトリウム10gに対し、金属水素化物水溶液24を全量で50gとすることで、高効率で水素化ホウ素ナトリウムを使用する事が出来る。本実施例では、水素化ホウ素ナトリウムを10gにて金属水素化物水溶液24を30g調製し、液体タンク20に貯蔵した。燃料電池10の運転に伴い発生した水は、導水管60を経て貯水槽40に至り、金属水素化物水溶液24との間に発生した浸透圧により、液体タンク20に回収された。これにより、効率良く燃料電池10を発電し続ける事が可能となり、体積エネルギー密度を向上できた。
【実施例4】
【0058】
図6は、本発明による水回収装置を燃料電池と接続した場合の構成図である。構成は、液体状の燃料と酸素を反応して発電する燃料電池10、液体状の燃料を貯蔵する物質貯蔵部である水溶液タンク25及び燃料タンク27、燃料電池10で発生する生成水を貯蔵する貯水槽40を具備し、液体状の燃料を水溶液タンク25及び燃料タンク27から燃料電池10に送液するための送液管22にて水溶液タンク25及び燃料タンク27と燃料電池10とを連結し、燃料電池10で発生する生成水を貯水槽40に送液するために導水管60にて燃料電池10と貯水槽40とを連結している構成である。ここで導水管60には生成水が燃料電池10に逆流しないようにするために逆止弁70を設けた。そして半透膜50を水溶液タンク25と貯水槽40の間に備え、半透膜50の対向する面に、水溶液タンク25に貯蔵する液体状の燃料と貯水槽40に至った生成水とが接するように配置した。また、導水管60には吸水性を有する綿繊維を挿入した。
【0059】
本実施例の燃料電池10は直接メタノール型燃料電池である。また液体状の燃料を、水溶液タンク25に貯蔵するショ糖の水溶液26と、燃料タンク27に貯蔵するメタノール燃料28とした。燃料電池10の運転に伴い、ショ糖の水溶液26とメタノール燃料28とを送液管22にて混合しながら燃料電池10に供給する。燃料電池10にて生成した生成水は貯水槽40に貯蔵されるが、ここに設置した半透膜50に生成水とショ糖水溶液26とが接するため、浸透圧が生じ、生成水がショ糖の水溶液26側に移動する。ここでショ糖は燃料電池反応に全く寄与せず、浸透圧を発生させるために水溶液26に混合されるものである。ここで、水溶液タンク25と燃料タンク27からそれぞれに貯蔵されている液体を燃料電池10に送液するために、送液管22を毛細管とした。但し正確な量を送るためにそれぞれポンプを用いて送液したり、また、逆流を防ぐために逆止弁70を送液管22に設置したりしても良い。
【0060】
本実施例において、ショ糖水溶液26を20g、メタノール燃料を15gとして運転を行ったところ、全量で45g程度の生成水を回収した。回収した生成水は、投入したメタノール量から燃料電池反応で生成した水量を大きく超えるものである。理由として、燃料電池反応で発生した水、及び、燃料電池の電解質膜を通って負極から正極に移動した同伴水などが含まれているためと考えられる。一方、本水回収装置を用いない場合メタノール燃料15gに対し、水分量が60g〜140g程度必要であった。以上より、初期の液体投入量を40g以上減じる事が出来た。
【実施例5】
【0061】
図7は、本発明による水回収装置を燃料電池と接続した場合の構成図である。構成は、水素と酸素を反応して発電する燃料電池10、水素を発生させるための物質を貯蔵する物質貯蔵部として、触媒水溶液21を貯蔵する液体タンク20及び金属水素化物31を貯蔵する反応器30、燃料電池10で発生する生成水を貯蔵する貯水槽40を具備し、触媒水溶液21を液体タンク20から反応器30に送液するための送液管22にて液体タンク20と反応器30とを連結し、水素を反応器30から燃料電池10に送るためのガス供給管32にて反応器30と燃料電池10とを連結し、燃料電池10で発生する生成水を貯水槽40に送液するために導水管60にて燃料電池10と貯水槽40とを連結している構成である。そして半透膜50を液体タンク20と貯水槽40の間に備え、半透膜50の対向する面に、液体タンク20に貯蔵する触媒水溶液21と貯水槽40に至った生成水とが接するように配置した。また導水管60には吸水性を有する綿繊維を挿入した。
【0062】
本実施例の燃料電池10は、負極11、正極12、負極11及び正極12に介在する固体高分子電解質膜13を発電部分とし、負極11側に設けた負極室14がある。負極室14は水素を一旦保持する部位であり、これにより出力が大きく変化した場合に水素の使用量が増加した場合でも水素を過不足なく負極11に供給できるようになっている。
【0063】
本実施例では、燃料電池10の負極室14及び正極12と導水管60を連結し、負極室14及び正極12で発生する生成水を導水管60を通して貯水槽40に送れるようにした。尚、導水管60には、負極室14に生成水が逆流しないようにするために、貯水槽40と負極室14の間に第一の逆止弁71を設けた。更に生成水が正極12に逆流しないようにするために、負極室14に連結した導水管60と正極12に連結した導水管60の合流部と正極12との間に第二の逆止弁72を設けた。
【0064】
さて、実施例1に記した通り水回収装置が無い場合、水素化ホウ素ナトリウム15gに対し、リンゴ酸水溶液は少なくとも50g程度必要である。ここで本実施例による水回収装置を設置した結果、負極室14及び正極12で発生した水を液体タンク20に回収する事が出来た。水分回収量は30g程度であり、燃料電池反応で生成した水及び水素発生反応で気化した水分を回収した。本構造は負極11、正極12によらず燃料電池で凝縮した水を回収する装置として適用することが可能である。
【実施例6】
【0065】
図8は、本発明による燃料電池システムの概略構成図である。
【0066】
図に示すように、固体高分子型燃料電池システム175は、発電部102と水素発生部103から構成される。発電部102は、カソード極104、MEA105、アノード極106から構成され、カソード極104はカソードエンドプレート107と図示しないガス拡散層、集電体層を備え、MEA105は図示しない電解質の両面に触媒層がそれぞれ配置される構成である。またアノード極106はアノードエンドプレート108とアノード室109と図示しないガス拡散層から構成される。
【0067】
アノード極106には図示しない集電体層が含まれていても良い。アノード極106に集電体層を含まない構成とする場合は、アノードエンドプレート108に導線を接続して集電する構成としても良い。アノード室109には、水素発生部103から水素リッチガスを供給する供給口111が設けられている。また、アノード極106の滞留水を水素発生部103に導水するための導水路110を備えている。
【0068】
水素発生部103は、水素発生物質112が格納される第1の容器113と、水素発生促進物質114が格納される第2の容器115と、第1の容器113と第2の容器115を接続し第1の容器113側の先端にノズル116を備えた管117から構成される。
【0069】
導水路110はアノード室109の内部と第2の容器115の内部とに亘って設けられている。導水路110の末端には、水溶液タンク115と隣接した貯水槽176が設置され、貯水槽176と水溶液タンク115の境界に半透膜177が設置されている。尚、図中の符号で165は凝集水を貯留するための貯水部である。
【0070】
導水路110の第2の容器115側の管口120は水素発生促進物質114に向けて開口し、導水路110には逆止弁121が設けられている。逆止弁121によりアノード室109側から第2の容器115側にのみ流体の流通が許容されている。つまり、アノード室109の内圧が、第2の容器115の内圧よりも低くなったときに、水素発生促進物質114がアノード室109内へ逆流することを防ぐ構成とされている。
【0071】
尚、図中の符号で122は、アノード室109内の水を導水路110に排出するために導水路110に形成された排出口である。
【0072】
逆止弁121は、アノード室109の内圧が第2の容器115の内圧よりも減圧状態となったときに閉じられる構造であれば、全て適用可能であるが、好ましくは2枚の板バネ先端を重ね合わせた構成である。板バネのバネ係数は、水素発生時のアノード室109の内圧と大気圧の差圧で逆止弁121が開かれるよう調整され、好ましくは、5kPa以上の差圧で開かれるよう調整されたバネ係数である。またバネの材質は、耐食性、耐酸性に優れた材質であれば全て適用可能であるが、好ましくはステンレス鋼を用いる。
【0073】
尚、逆止弁121に代えて、管口120の形状を逆止構造にすることも可能である。
【0074】
また、第2の容器115には圧力調整機構として、ガス抜きの貫通孔123が備えられ、貫通孔123には伸張性に富む膜体124が設置されている。膜体124が設置されることで、第2の容器115の内圧が高圧になる場合は、膜体124が膨らむことで第2の容器115の内圧を大気圧相当に維持することができる。膜体124は伸張性に優れた材料であれば全て適用可能であるが、好ましくは低弾性ゴム、シリコンゴム、ブチルゴム等のゴム材料を用いる。
【0075】
尚、膜体124を設けない構成とすることも可能である。
【0076】
圧調整機構としては、アノード室109の内圧が規定の圧力以上となったときに開いて水素を逃がすベント構造として、通常のシール性は、ベントと第2の容器115にそれぞれ備えられた磁石の引力によって確保される構造としても良い。また通常のシール性を、ベントと第2の容器115に接続されたバネによって確保される構造としても良い。
【0077】
水素発生物質112としては、好ましくは水素化ホウ素ナトリウムであり、水素発生促進物質114としては、好ましくはリンゴ酸水溶液であり、以下で水素化ホウ素ナトリウムとリンゴ酸水溶液を用いる例を記載するが、水素発生物質は加水分解型の金属水素化物であれば全て適用可能で、水素発生促進物質は有機酸および無機酸あるいはルテニウムなど、水素発生触媒であれば全て適用可能である。さらに、水素発生物質112が水素化ホウ素ナトリウム水溶液で水素発生促進物質114がリンゴ酸粉末というように、水素発生物質112と水素発生促進物質114の組み合わせは、混合することによって水素を発生する物質であれば全て適用可能である。
【0078】
また、水素発生部に用いられる反応としては、金属と塩基性あるいは酸性水溶液の組み合わせであっても良い。さらに水素発生部においては、アルコール、エーテル、ケトン類を水蒸気改質して水素を得るメタノール改質型や、ガソリン、灯油、天然ガスといった炭化水素を水蒸気改質して水素を得る炭化水素改質型など、加水により水素を発生する構成であれば全て適用可能である。
【0079】
水素発生部103で発生した水素は発電部102のアノード室109に備えられた供給口111を介してアノード室109に導入され、発電のために消費される。水素が消費されるとアノード室109と、アノード室と接続される第1の容器113の内圧が減圧され、第2の容器115の内圧との差圧によって第2の容器115に格納される水素発生促進物質114(リンゴ酸水溶液)が第1の容器113に導入されて次の水素発生が生じる。
【0080】
ノズル116のノズル径は、前回発生した水素により発電が持続中に次の水素発生が生じる周期で水素発生促進物質114(リンゴ酸水溶液)が第1の容器113に導入されるように調整され、好ましくは差圧が5kPa以下で水素発生促進物質114(リンゴ酸水溶液)が導入されるように調整される。
【0081】
発電時にアノード室109にはカソード側の触媒層で発生した水が逆拡散して凝縮される水、MEA105を透過した酸素とアノード室109に存在する水素がアノード側の触媒層で反応して生成した水、水素発生部103から発生した水素に含まれる水蒸気が凝縮した水等をあわせたアノード極滞留水が蓄積される。アノード室109の底面は、図に示すように平面であってもよいし、アノード極滞留水を一箇所に収集するために勾配を持っていても良い。
【0082】
導水路110には逆止弁121が設けられているので、アノード室109の内圧が第2の容器115の内圧よりも低くなったときに水素発生促進物質114(リンゴ酸水溶液)がアノード室109内へ逆流することを防ぐ構成とされる。第2の容器115はガス抜きの貫通孔123を備えるため、常に大気圧相当に保たれるのに対し、アノード室109は発電で水素が消費され減圧状態となるが、このとき逆止弁121は閉じられるので水素を発生するために必要な、第2の容器115とアノード室109の差圧が得られ、水素発生部103は正常に駆動する。
【0083】
従って、上述した実施形態例では、内部エネルギー(発電により発生する水素の圧力差及び浸透圧)により、燃料を循環させる系で水を回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明による水回収装置と燃料電池との接続構成図である。
【図2】本発明による水回収装置と燃料電池との接続構成図である。
【図3】本発明による水回収装置と燃料電池との接続構成図である。
【図4】本発明による水回収装置と燃料電池との接続構成図である。
【図5】本発明による水回収装置と燃料電池との接続構成図である。
【図6】本発明による水回収装置と燃料電池との接続構成図である。
【図7】本発明による水回収装置と燃料電池との接続構成図である。
【図8】本発明による燃料電池システムの概略構成図である。
【図9】従来の水回収器と燃料電池との接続構成図である。
【符号の説明】
【0085】
10 燃料電池
11 負極
12 正極
13 高分子電解質膜
14 負極室
20 液体タンク
21 触媒水溶液
22 送液管
24 金属水素化物水溶液
25 水溶液タンク
26 水溶液
27 燃料タンク
28 燃料
30 反応器
31 金属水素化物
32 ガス供給管
33 触媒
34 触媒室
35 開口部
40 貯水槽
50 半透膜
60 導水管
70 逆止弁
71 第一の逆止弁
72 第二の逆止弁
90 凝縮器
91 噴射機
92 水位計
93、95 ポンプ
94 水タンク
96 制御ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化剤と燃料が電気化学的反応する固体高分子型燃料電池で生成する水を回収する水回収装置において、
該燃料電池の電極で生成した生成水を貯留する貯水槽と、
燃料、もしくは、燃料を発生するために用意された燃料用物質とが保持される物質貯蔵部と、
前記電極と前記貯水槽とを連結し、前記生成水を流す導水管と、
前記貯水槽と前記物質貯蔵部とに介在して設置される半透膜と
からなる事を特徴とする水回収装置。
【請求項2】
前記貯水槽から前記電極への水の流れを阻止する逆止弁を、前記導水管の間に具備する事を特徴とする請求項1記載の水回収装置。
【請求項3】
前記燃料が水素であり、該燃料電池には、水素を発生する燃料用物質が具備されており、前記物質貯蔵部は、液体の燃料用物質を保持する液体タンクと、水素発生反応を行う反応器から成ることを特徴とする請求項1または2に記載の水回収装置。
【請求項4】
前記燃料用物質が、金属水素化物、水、触媒であり、前記反応器に金属水素化物が保持されており、前記液体タンクに少なくとも水が保持されており、水が金属水素化物に供給されて加水分解して水素を発生する事を特徴とする請求項3記載の水回収装置。
【請求項5】
前記液体タンクに水、もしくは、触媒を混合した触媒水溶液を保持し、前記半透膜は前記液体タンクと前記貯水槽とに介在して、前記触媒水溶液に接して設置される事を特徴とする請求項4記載の水回収装置。
【請求項6】
前記反応器は少なくとも金属水素化物が保持されており、前記半透膜は前記反応器と前記貯水槽とに介在して、前記金属水素化物に接して設置されることを特徴とする請求項4記載の水回収装置。
【請求項7】
前記反応器に金属水素化物、及び、触媒が保持されており、前記半透膜は前記反応器と前記貯水層とに介在して、前記触媒に接して設置されることを特徴とする請求項4記載の水回収装置。
【請求項8】
前記触媒は前記反応器内に設けられた触媒室に保持されており、前記半透膜を透過した前記生成水は前記触媒と混合され、前記金属水素化物に供給されることを特徴とする請求項7記載の水回収装置。
【請求項9】
前記燃料が金属水素化物、もしくは、前記金属水素化物の水溶液であり、前記燃料は前記物質貯蔵部から該燃料電池に供給され発電に用いられることを特徴とする請求項1または2に記載の水回収装置。
【請求項10】
前記燃料が、アルコール類、エーテル類から成る群から選ばれる少なくとも一種の液体燃料、水、及び、不揮発性固体物質で、且つ、分子量が18より大きい水溶性化学物質を含み、前記燃料が前記物質貯蔵部から該燃料電池に供給され発電に用いられることを特徴とする請求項1または2に記載の水回収装置。
【請求項11】
前記物質貯蔵部が、前記化学物質を溶解した水溶液を保持する水溶液タンクと、少なくとも前記液体燃料を保持する燃料タンクから成り、前記半透膜は、前記貯水層と前記水溶液タンクとに介在して設置されており、前記水溶液と前記液体燃料とが同時に該燃料電池に供給されることを特徴とする請求項10記載の水回収装置。
【請求項12】
前記化学物質が、非電解質であることを特徴とする請求項10または11に記載の水回収装置。
【請求項13】
貯水槽の内容積が変化可能であり、該燃料電池の電極で生成した生成水が貯水槽に移動する際に容積が増大することを特徴とする請求項1〜12のいずれか一項に記載の水回収装置。
【請求項14】
前記貯水槽が水不透過性の樹脂フィルムで形成された袋状容器であることを特徴とする請求項13記載の水回収装置。
【請求項15】
前記導水管に、親水性繊維が挿入されている事を特徴とする請求項1〜14のいずれか一項に記載の水回収装置。
【請求項16】
触媒水溶液を貯留する触媒槽と、燃料電池によって生成された生成水を貯留する貯水槽と、前記触媒槽と前記貯水槽の間に設けられ浸透圧により前記生成水を前記触媒槽から前記貯水槽へ移動させる半透膜とからなる液体タンクと、
金属水素化物を貯蔵し、前記触媒水溶液と反応させて水素を発生させる反応器と、
前記液体タンクと前記反応器を接続し、前記触媒水溶液を前記反応器に送る送液管と、
前記水素により発電を行う固体高分子型燃料電池と、
前記反応器と前記燃料電池とを接続し、前記水素を前記燃料電池に供給するガス供給管と、
前記燃料電池と前記貯水タンクとを接続し、前記燃料電池で生成した前記生成水を前記燃料電池から前記貯水槽への一方向に送り、前記生成水の逆流を防止する逆止弁を有する導水管と、
を有する燃料電池システム。
【請求項17】
水素と酸素の電気化学反応により発電を行う燃料電池システムにおいて、
アノード極に水素を供給する水素供給手段と、
電気化学反応により発生した水を浸透圧により移動させてアノード極の外部に排出する水回収手段と
を備えたことを特徴とする燃料電池システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−185896(P2006−185896A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−223327(P2005−223327)
【出願日】平成17年8月1日(2005.8.1)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】