説明

燃料電池システム

【課題】バルブ構成部品の種類数を低減でき得る燃料電池システムを提供する。
【解決手段】燃料電池システムには非開閉制御時に閉鎖状態となるNCバルブと、非開閉制御時に開放状態となるNOバルブと、が混在している。両バルブは、いずれも、昇降自在な弁体32と、弁体32の移動に伴い開閉される流路口48が形成された弁座と、弁体32をバルブ開放方向に付勢する圧縮コイルバネ92が組み付けられる凹部40と、弁体32をバルブ閉鎖方向に付勢する圧縮コイルバネ94が組み付けられる凹部44と、を備える。このバルブ24は、圧縮コイルバネ92のみを組み付けることによりNOバルブに、圧縮コイルバネ94のみを組み付けることによりNOバルブになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非開閉制御時に開放状態となるノーマルオープンバルブ、および、非開閉制御時に閉鎖状態となるノーマルクローズバルブの少なくとも一方を備えた燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、乗用車等の駆動源として燃料電池システムが用いられる場合が多い。燃料電池システムは、1以上の配管を介して多数のセルを積層した燃料電池(FCスタック)に燃料ガス(水素ガス)および酸化剤ガス(空気)を供給するとともに、当該燃料電池から反応に用いられなかった水素ガス(水素オフガス)および酸化剤ガス(空気オフガス)を回収することにより電力を生成するシステムである。この燃料電池システムでは、各種ガスを燃料電池に搬入出するために複数のガス経路が設けられている。通常、各ガス経路には、ガスの通過を制御するためのバルブが設けられている。したがって、通常、燃料電池システムには、複数のバルブが設けられることになる。
【0003】
【特許文献1】特開2006−155917号公報
【特許文献2】特開平10−169822号公報
【特許文献3】特開平9−203476号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
かかる複数のバルブを備えた燃料電池システムの中には、非駆動時(非開閉制御時)に開放状態となるノーマルオープンバルブ(以下「NOバルブ」という)と、非駆動時に閉鎖状態となるノーマルクローズバルブ(以下「NCバルブ」という)と、を備えたものがある。例えば、特許文献1には、燃料電池から排出されるアノードオフガス(空気オフガス)を大気へ放出する排気管にはNCバルブを、排気管から分岐された分岐排気管にはNOバルブを、設けた燃料電池システムが開示されている。このNOバルブとNCバルブは、当然ながら、構造上の相違があり、バルブを構成する部品種類等も異なってくる。その結果、NOバルブとNCバルブの両方を設けた場合、燃料電池システム全体としての部品種類数も増加することになる。この部品種類数の増加は、製造コストの増加や部品管理の手間増加などの原因となる。また、NOバルブおよびNCバルブのいずれか一方のみを備える燃料電池システムにおいても、他の燃料電池システムとの間で部品共有化が困難であり、製造コストや部品管理の手間が増加するという問題があった。例えば、NOバルブのみを備える燃料電池システムのバルブ構成部品と、NCバルブのみを備える燃料電池システムのバルブ構成部品と、は全く異なってくるため、結果として、部品の製造コスト増加や部品管理の手間がかかっていた。なお、NOバルブおよびNCバルブの基本構造を共通化する技術は、特許文献2,3などに記載されている。しかし、これらの技術は燃料電池システムに対応したものではないため、燃料電池システムにそのまま適用することはできない。
【0005】
そこで、本発明では、部品種類数を低減でき得る燃料電池システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の燃料電池システムは、1以上のバルブを備えた燃料電池システムであって、前記バルブは、移動可能な弁体と、前記弁体の移動に伴い開閉される流路口が形成された弁座と、前記弁体を前記流路口を開放する方向に付勢する第一弾性体が組み付けられる第一組付部と、第一組付部とは異なる位置に設けられ、前記弁体を前記流路口を閉鎖する方向に付勢する第二弾性体が組み付けられる第二組付部と、を備えており、当該バルブは、前記第一弾性体および第二弾性体のうち第一弾性体のみが組み付けられた場合、非開閉制御時に開放状態となるノーマルオープンバルブとして機能し、前記第一弾性体および第二弾性体のうち第二弾性体のみが組み付けられた場合、非開閉制御時に閉鎖状態となるノーマルクローズバルブとして機能することを特徴とする。
【0007】
好適な態様では、前記第一弾性体および第二弾性体は、同一構成である。他の好適な態様では、前記第二弾性体の組付け位置は、前記バルブの構成部材の一つを挟んで、第一弾性体の組付け位置の反対側である。他の好適な態様では、前記第一弾性体および第二弾性体は、いずれも、流体の通過する空間である流路空間から遮蔽された領域に設けられる。
【0008】
他の好適な態様では、前記バルブは、弁体に接続された膜体で仕切られた一対の圧力室間の差圧により弁体を駆動するダイアフラム式バルブであり、各圧力室は、燃料電池に搬入出されるガスの一部が送り込まれることにより加圧され、送り込まれたガスを当該燃料電池システムの外部に放出することで減圧される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、NOバルブおよびNCバルブの基本的構造が同一であるため、NOバルブとNCバルブとが混在する場合であっても部品種類数を低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1は、本発明の実施形態である燃料電池システム10の概略構成を示す図である。この燃料電池システム10は、燃料電池12と、当該燃料電池12に空気を搬入出するエア搬入出機構と、当該燃料電池12に水素ガスを搬入出する燃料搬入出機構(図示せず)と、を備えている。
【0011】
燃料電池12は、複数のセルを積層したFCスタックから構成される。各セルは、イオン交換膜からなる電解質膜を燃料極(アノード極)および空気極(カソード極)で挟持してMEAを構成し、このMEAをさらに一対のセパレータで挟持したものである。燃料極には、拡散層と触媒層とが形成されており、水素ガスである燃料ガスが供給される。供給された燃料ガスは、拡散層で拡散された後、触媒層に到達する。触媒層では、水素がプロトン(水素イオン)と電子とに分離される。水素イオンは電解質膜を通過して空気極に移動し、電子は外部回路を通って空気極に移動する。
【0012】
空気極にも拡散層と触媒層とが形成されており、空気等の酸化剤ガスが供給される。空気極に供給された酸化剤ガスは、拡散層で拡散され触媒層に到達する。触媒層では、酸化剤ガスと、固体高分子電解質膜を通って空気極に到達した水素イオンと、外部回路を通って空気極に到達した電子とによる反応により水が生成される。このような燃料極及び空気極における反応の際に外部回路を通る電子が、FCスタックの両端子間に接続される負荷に対する電力として使用される。
【0013】
エア搬入出機構は、外部から取り入れた空気を燃料電池12に供給するエア供給路18、エア供給路18から分岐したバイパス路22、および、燃料電池12で消費し切れなかった空気(空気オフガス)を燃料電池12から回収するエア回収路20を備えている。
【0014】
エア供給路18には、外部から取り入れた空気を圧縮するエアコンプレッサ16が設けられている。エアコンプレッサ16により圧縮された空気の一部は、バイパス路22に流れ込み、残りは、そのままエア供給路18を通じて、加湿モジュール14に供給される。加湿モジュール14は、エア供給路18を通じて供給された空気(これから燃料電池12に供給される空気)を加湿する。加湿された空気は、バイパス路22を経由した未加湿の空気とともに、燃料電池12に供給される。
【0015】
バイパス路22は、加湿モジュール14より上流側の位置においてエア供給路18から分岐し、加湿モジュール14より下流側の位置においてエア供給路18に合流する経路である。このバイパス路22に流入した空気は、加湿モジュール14を経由しないため、乾燥した状態のまま燃料電池12に供給されることになる。
【0016】
エア回収路20は、燃料電池12で消費しきれず余った空気を空気オフガスとして回収するための経路である。エア回収路20を通じて回収された空気オフガスは、加湿モジュール14に供給される。加湿モジュール14では、熱と水分との交換作業が行われる。当該交換処理が施された空気オフガスは、その後、エア回収路20に出力され、外部に放出される。
【0017】
このエア供給路18、バイパス路22、エア回収路20には、それぞれ、空気の通過を制御するためのバルブ、すなわち、エア供給用バルブ24a、バイパス用バルブ24b、エア回収用バルブ24cが設けられている。本実施形態では、この三つのバルブ24a,24b,24cを適宜、開閉することで、燃料電池12への空気の供給、および、回収を実現している。
【0018】
また、この燃料電池システム10には、燃料電池12に水素ガスを搬入出するための燃料搬入出機構も設けられている。この燃料搬入出機構は、公知の従来技術を適用することにより構成できるため、ここでの詳説は省略する。
【0019】
次に、各経路上に設けられたバルブ24a,24b,24cの構成について説明する。
この三つのバルブ24a,24b,24cのうち、エア供給用バルブ24aおよびエア回収用バルブ24cは、バルブが駆動制御されていないフリーの状態(非開閉制御時)においては開放状態となるノーマルオープンバルブ(以下「NOバルブ」という)である。これは、何らかの問題が原因で、エア供給用バルブ24aおよびエア回収用バルブ24cの駆動制御が一時的に不可能な状態になったとしても、燃料電池12への空気の搬入出を可能とするためである。一方、バイパス用バルブ24bは、バルブが駆動制御されていないフリーの状態(非開閉制御時)においては閉鎖状態となるノーマルクローズバルブ(以下「NCバルブ」という)である。これは、何らかの問題が原因で、バイパス用バルブ24bの駆動制御が一時的に不可能な状態になったときに、乾燥した空気が大量に燃料電池12に供給されることを防止するためである。
【0020】
つまり、本実施形態では、NOバルブとNCバルブという、二種類のバルブが設けられていることになる。通常、NOバルブおよびNCバルブは、構造上の相違があり、バルブを構成する部品種類等も異なってくる。そのため、NOバルブとNCバルブの両方を設けた場合、燃料電池システム10全体としての部品種類数が増加することになる。かかる部品種類数の増加は、製造コストの増加や部品管理の手間増加などの原因となり、望ましくなかった。
【0021】
そこで、本実施形態では、NOバルブおよびNCバルブともに、その基本的構造を共通とし、部品種類数の増加を防止している。図2は、本実施形態で用いられる三つのバルブ24a,24b,24c(すなわちNOバルブおよびNCバルブ)の共通部分の構成を示す概略断面図である。
【0022】
このバルブ24は、中空の箱状部材である筐体30と、当該筐体30の内部に設けられた昇降可能な弁体32と、を備えている。弁体32は、後述する流路口48を開閉するべく昇降する部材である。弁体32の底面には、弁座50との密着性(シール性)を向上するために、弾性部材34(ゴム)が設けられている。この弁体32の上側には、後述する密閉空間まで伸びる軸部材である弁軸36が形成されている。また、弁軸36の上端近傍には、膜体74が貼着される鍔部38が形成されている。
【0023】
筐体30の側面には、流体の入口である流路口46が形成されており、筐体30の底面には流体の出口である流路口48が形成されている。そして、この二つの流路口46,48の間が流体(本実施形態では空気)が通過する流路空間52となる。底面に形成された流路口48の周囲は、弁座50として機能するもので、この弁座50の上面に、下降した弁体32の底面が密着することでバルブ24が閉鎖状態となる。
【0024】
流路空間52の上側には、中間室68が形成されている。中間室68は、流路空間52および後述する密閉空間69から遮断された空間であり、その内圧が常に大気圧に保たれた空間である。具体的には、中間室68は、弾性シート54、および、仕切壁56により仕切られた空間である。弾性シート54は、弾性材料からなるシート状部材で、その一端は筐体30の内側面に、他端は弁体32に貼着されている。そして、この弾性シート54は、弁体32の昇降に応じて変形し、中間室68の体積を変更する。なお、本実施形態では、弾性シート54を用いているが、可撓性を備えているのであれば、弾性を備えていないシート状部材を用いてもよい。仕切壁56は、筐体30の内側面から内側に向かって水平に延びる壁である。この仕切壁56は、ベアリング57を介して弁軸36に接続されている。ベアリング57は、弁軸36を摺動自在に軸支しているため、弁軸36は仕切壁56に対して昇降自在となっている。また、中間室68の側面には、外部空間に連通する通気穴76が形成されており、体積変化が生じても内圧が大気圧に保たれるようになっている。なお、ベアリング57の内周側(弁軸36側)にはガスシールのためのゴムパッキンが設けられている。
【0025】
中間室68の上側には、密閉された空間である密閉空間69が形成されている。この密閉空間69は、一端が弁軸36の鍔部38に、他端が筐体30の内側面に貼着された膜体74により二つの圧力室、すなわち、開放用圧力室70および閉鎖用圧力室72に分けられる。膜体74より上側にある閉鎖用圧力室72は、バルブ24を閉鎖する際にエアが送り込まれ、バルブ24を開放する際に大気圧開放される密室である。この閉鎖用圧力室72にエアが送り込まれ、当該閉鎖用圧力室72が高圧となると、膜体74が下向きに押圧され、変形する。そして、この膜体74の変形に伴い、弁軸36および弁体32が下降することにより、バルブ24が閉鎖状態となる。また、膜体74より下側にある開放用圧力室70は、バルブ24を開放する際にエアが送り込まれ、バルブ24を閉鎖する際に大気圧開放される密室である。この開放用圧力室70にエアが送り込まれ、当該開放用圧力室70が高圧となると、膜体74が上向きに押圧され、変形する。そして、この膜体74の変形に伴い、弁軸36および弁体32が上昇することにより、バルブ24が開放状態となる。
【0026】
なお、各圧力室70,72に送り込まれるエアは、エア供給路18で搬送される圧縮空気が利用される。すなわち、図1に図示するように、燃料電池12に圧縮空気を搬送するエア供給路18には、バルブ制御用エア路25が接続されている。このバルブ制御用エア路25は、三つのバルブ24a,24b,24cそれぞれに対応する三つのエア路26a,26b,26cに分岐される。分岐後のエア路26は、さらに、図2に図示するように、閉鎖用圧力室72に接続される閉鎖用エア路84と、開放用圧力室70に接続される開放用エア路86に分岐される。この分岐位置には三方弁82が設けられており、閉鎖用エア路84および開放用エア路86のうち、いずれか一方にのみエアが供給されるようになっている。また、閉鎖用エア路84および開放用エア路86には、それぞれ、大気圧開放弁88,90が設けられており、当該大気圧開放弁88,90を開放することで接続されている圧力室70,72が大気圧開放されるようになっている。このように、エア供給路18で搬送される圧縮空気を各バルブの開閉制御に用いることにより、別途、バルブ専用のエア供給機構を設ける必要が無く、簡易な構成で燃料電池システム10を構成することができる。また、一度、圧力室70,72に供給されたエアは、大気圧開放弁88,90を通じて外部に放出され、燃料電池システム10に還流されることはない。そのため、バルブ24内で生じる粉塵、特に、後述する圧縮スプリングバネの磨耗粉の燃料電池12への注入が確実に防止され、燃料電池12の寿命低下などを防止できる。
【0027】
ここで、本実施形態では、このバルブ24に、さらに、弾性体である圧縮コイルバネを組み付け、フリー状態におけるバルブ24の開閉状態を規定している。図3(A)は、NOバルブとして圧縮コイルバネを組み付けた状態を示す図であり、図3(B)はNCバルブとして圧縮コイルバネを組み付けた状態を示す図である。
【0028】
バルブ24をNOバルブ、すなわち、エア供給用バルブ24aまたはエア回収用バルブ24cとして使用する場合には、仕切壁56と弁体32の鍔部38との間に圧縮コイルバネ92を組み付ける。この場合、圧縮コイルバネ92は、弁体32をバルブ24を解放する方向に付勢する第一弾性体として機能する。そして、鍔部38の底面には、この第一弾性体として機能する圧縮コイルバネ92が組み付けられる第一組付部となる鍔部側凹部40が形成されている。この鍔部側凹部44に圧縮コイルバネ92が組み付けられると、弁体32は当該圧縮コイルバネ92によりバルブ開放方向(上方向)に付勢される。この場合、バルブ24が駆動制御されていない状態、すなわち、圧力室70,72へのエアの搬入出制御が行われていないフリーの状態では、圧縮コイルバネ92の付勢力により弁体32は上方向に移動し、バルブ開放状態となる。一方、閉鎖用圧力室72にエアが送り込まれた場合、膜体74の変形に伴い弁体32が圧縮コイルバネ92の付勢力に抗して、閉鎖方向(下方向)に移動し、バルブ24は閉鎖状態となる。
【0029】
また、バルブ24をNCバルブ、すなわち、バイパス用バルブ24bとして使用する場合には、仕切壁56と弁体32との間に圧縮コイルバネ94を組み付ける。この場合、圧縮コイルバネ94は、弁体32をバルブ閉鎖方向に付勢する第二弾性体として機能する。そして、弁体32の上面には、第一弾性体として機能する当該圧縮コイルバネ94が組み付けられる弁体側凹部44が形成されている。この弁体側凹部44に圧縮コイルバネ94が組み付けられると、弁体32は当該圧縮コイルバネ94によりバルブ閉鎖方向(下方向)に付勢される。この場合、バルブ24が駆動制御されていない状態では、圧縮コイルバネ94の付勢力により弁体32は下方向に移動し、バルブ閉鎖状態となる。一方、開放用圧力室70にエアが送り込まれた場合、膜体74の変形に伴い弁体32が圧縮コイルバネ94の付勢力に抗して、上方向に移動し、バルブ24は開放状態となる。
【0030】
ここで、NOバルブに用いられる圧縮コイルバネ92と、NCバルブに用いられる圧縮コイルバネ94は、いずれも、同程度のバネ定数や長さ、径を備えた同種のコイルバネである。つまり、本実施形態では、全く同種類の圧縮コイルバネ92,94の組み付け位置を変更することで、バルブの特性をNOまたはNCに変更している。換言すれば、本実施形態では、NOバルブおよびNCバルブの構成部品種類を全て同一にしている。その結果、燃料電池システム10に、NOバルブおよびNCバルブの両方を設ける場合であっても、部品種類数を低減することができ、燃料電池システム10の製造コストや製造の手間などを低減できる。また、NOバルブのみが設けられる燃料電池システムにおいても、NCバルブのみが設けられる他の燃料電池システムと部品を共有化できる。そして、部品共有化により、一つの部品製造にかかる費用を低減でき、また、部品管理に要する手間を低減できる。
【0031】
さらに、図3から明らかなとおり、本実施形態では、NOバルブ、NCバルブのいずれの場合であっても、圧縮コイルバネ92,94は、流路空間52から遮蔽された空間、すなわち、中間室68または密閉空間69のいずれかに組みつけられている。その結果、圧縮コイルバネ92,94の磨耗により生じる粉塵等(磨耗粉)が流路空間52に侵入する恐れがなく、燃料電池12に搬入出される空気に粉塵が混じる恐れがない。その結果、燃料電池12の損傷や寿命低下を防止することができる。
【0032】
なお、このバルブ24の筐体30は、互いに着脱自在の複数の部材から構成されており、適宜、その上面および底面が取り外し可能になっている。そして、NOバルブとして使用するために圧縮コイルバネ92を組み付ける際には、筐体30の上面を取り外し、膜体74を筐体30から一時的に分離させた上で、鍔部38と仕切壁56との間に、圧縮コイルバネ92を配置する。また、NCバルブとして使用するために圧縮コイルバネ94を組み付ける際には、筐体30の底面を取り外し、弾性シート54を筐体30から一時的に分離させた上で、弁体32と仕切壁56との間に、圧縮コイルバネ94を配置する。
【0033】
以上の説明から明らかなとおり、本実施形態によれば、NOバルブおよびNCバルブの基本的構造を同一としているため、部品種類数の増加を防止でき、燃料電池システム10の製造コストの増加や製造の手間増加などを防止できる。また、弁体を付勢する圧縮コイルバネを流路空間から遮蔽した位置に組み付けているため、磨耗粉の燃料電池への流入を確実に防止できる。
【0034】
なお、以上で説明した構成は、一例であり、弾性体(コイルバネ)の組み付け位置を変更することで、NOバルブおよびNCバルブのいずれか一つとして機能するバルブを有するのであれば、他の構成の燃料電池システムであってもよい。例えば、NOバルブのみを有し、NCバルブを有さない燃料電池システムであってもよい。この場合であっても、他のNCバルブのみを有する燃料電池システムと部品の共通化ができるため、各部品の製造コストを低減でき、また、部品管理の手間も削減できる。
【0035】
また、バルブの構成も、NCバルブおよびNOバルブのいずれとしても使用できるのであれば、当然、他の構成であってもよい。例えば、上述の説明では、第一弾性体および第二弾性体として圧縮コイルバネを用いているが、他の弾性体、例えば、引っ張りコイルバネや板バネ等を用いてもよい。また、上述の説明では、鍔部38および弁体32に形成された凹部40,44を、各圧縮コイルバネ92,94が組み付けられる第一組付部および第二組付部とする例を説明しているが、弾性体が組み付けられるのであれば、他の構成、例えば、コイルバネに挿通される軸などを組付部として用いてもよい。
【0036】
また、図4(A)に図示するように、仕切壁56に仕切壁側凹部42を形成し、当該仕切壁側凹部42を第一弾性体が組み付けられる第一組付部として利用してもよい。この仕切壁凹部42は、仕切壁56の上面に形成されており、その深さは、弁軸36に装着されたベアリング57の高さとほぼ同じである。圧縮コイルバネ92は、この仕切壁凹部42に挿入されることでバルブ24に組み付けられる。また、図面では判別しづらいが、この仕切壁凹部42の側面は、上側に向かって徐々に内径が広がるべく僅かな傾斜が形成されている。これは、当該仕切壁凹部42の側面と、圧縮コイルバネ92との接触により生じるバネ応答性の低下や磨耗等を防止するためである。なお、この図4(A)では、NOバルブとして圧縮コイルバネ92を組み付けた状態を図示しているが、当然ながら、仕切壁56と弁体32との間に第二弾性体として機能する圧縮コイルバネを組み付けることで、NCバルブとしても機能する。
【0037】
ここで、仕切壁56に、第一組付部として機能する仕切壁凹部42を形成した場合、圧縮コイルバネ92の長さを低減させることなく、バルブ開放時における仕切壁56から鍔部38までの距離、ひいては、圧力室69の高さを低減できる。すなわち、仕切壁凹部42を形成することにより、当該凹部42の深さ分だけ、鍔部38までの距離を稼ぐことができる。その結果、バルブ開放時における鍔部38の高さ(位置)を、当該凹部42の深さ分だけ低くすることができる。これは、結果として、バルブ24の高さを、当該凹部42の深さ分だけ低減できることを意味している。つまり、このバルブ24では、弁軸36に装着されたベアリング57の高さ相当の深さの仕切壁凹部42を形成することにより、バルブ24の高さを低減することができる。
【0038】
なお、図4(B)は、バルブの高さ比較用に図示した仕切壁56が平坦面となっているバルブ24(すなわち、図3(A)に図示したバルブ)である。この図4(B)と図4(A)との比較から明らかなとおり、仕切壁凹部42が形成されているバルブ24の高さH1は、組み付けられる圧縮コイルバネ92の長さが同じであっても、仕切壁凹部42が形成されていないバルブ24の高さH2に比べて、明らかに小さくなっていることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】燃料電池システムの構成を示す図である。
【図2】NOバルブおよびNCバルブの共通構造を示す概略断面図である。
【図3】(A)はNCバルブとして使用する際の様子を、(B)はNOバルブとして使用する際の様子を示す概略断面図である。
【図4】(A)は仕切壁凹部が形成されたバルブを、(B)は仕切壁凹部が形成されていないバルブの概略断面図である。
【符号の説明】
【0040】
10 燃料電池システム、12 燃料電池、14 加湿モジュール、16 エアコンプレッサ、18 エア供給路、20 エア回収路、22 バイパス路、24c エア回収用バルブ、24a エア供給用バルブ、24b バイパス用バルブ、26 エア路、30 筐体、32 弁体、38 鍔部、42 仕切壁凹部、46,48 流路口、50 弁座、52 流路空間、54 弾性シート、56 仕切壁、68 中間室、69 密閉空間、70 開放用圧力室、72 閉鎖用圧力室、74 膜体、84 閉鎖用エア路、86 開放用エア路、88,90 大気圧開放弁、92,94 圧縮コイルバネ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1以上のバルブを備えた燃料電池システムであって、
前記バルブは、
移動可能な弁体と、
前記弁体の移動に伴い開閉される流路口が形成された弁座と、
前記弁体を前記流路口を開放する方向に付勢する第一弾性体が組み付けられる第一組付部と、
第一組付部とは異なる位置に設けられ、前記弁体を前記流路口を閉鎖する方向に付勢する第二弾性体が組み付けられる第二組付部と、
を備えており、当該バルブは、
前記第一弾性体および第二弾性体のうち第一弾性体のみが組み付けられた場合、非開閉制御時に開放状態となるノーマルオープンバルブとして機能し、
前記第一弾性体および第二弾性体のうち第二弾性体のみが組み付けられた場合、非開閉制御時に閉鎖状態となるノーマルクローズバルブとして機能することを特徴とする燃料電池システム。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料電池システムであって、
前記第一弾性体および第二弾性体は、同一構成であることを特徴とする燃料電池システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の燃料電池システムであって、
前記第二弾性体の組付け位置は、前記バルブの構成部材の一つを挟んで、第一弾性体の組付け位置の反対側であることを特徴とする燃料電池システム。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の燃料電池システムであって、
前記第一弾性体および第二弾性体は、いずれも、流体の通過する空間である流路空間から遮蔽された領域に設けられることを特徴とする燃料電池システム。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の燃料電池システムであって、
前記バルブは、弁体に接続された膜体で仕切られた一対の圧力室間の差圧により弁体を駆動するダイアフラム式バルブであり、
各圧力室は、燃料電池に搬入出されるガスの一部が送り込まれることにより加圧され、送り込まれたガスを当該燃料電池システムの外部に放出することで減圧されることを特徴とする燃料電池システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−218290(P2008−218290A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−56379(P2007−56379)
【出願日】平成19年3月6日(2007.3.6)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】