説明

燃料電池システム

【課題】ガスを送り出すポンプを効率良く放熱させることが可能な燃料電池システムを提供する。
【解決手段】ケース51内に収容された燃料電池10の燃料電池スタック63と、ケース51内の水素を検出する水素ディテクタ54と、燃料電池スタック63のエンドプレート62に固定された水素ポンプ39とを備えた燃料電池システムにおいて、水素ポンプ39と燃料電池スタック63のエンドプレート62との間に介在された熱伝性媒体82と、この熱伝性媒体82を水素ポンプ39と燃料電池スタック63のエンドプレート62との間に保持させるシール部材81とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池を備えた燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、燃料ガスと酸化ガスとの電気化学反応によって発電する燃料電池をエネルギ源とする燃料電池システムが開発されている。このような燃料電池システムには、燃料電池に燃料ガスを供給するための燃料ガス供給路に、燃料電池から排出された燃料オフガスを燃料オフガス循環路を介して戻すことで、燃料オフガスに含まれる燃料ガス成分を有効利用するものがあり、燃料オフガス循環路には、燃料オフガスを吸引して送り出す燃料オフガス循環ポンプが設けられることになる。
そして、この循環ポンプを燃料電池スタックのエンドプレートに取り付けることが行われている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2008−16402号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように、燃料電池スタックのエンドプレートに燃料オフガス循環用のポンプを取り付けると、ポンプにて発生した熱を燃料電池スタック側へ伝達させて放熱効果を得ることができる。
しかし、単に燃料電池スタックのエンドプレートにポンプを取り付けただけでは、ポンプの熱がエンドプレートに伝わり難い。
特に、低温対策のために、燃料系の配管とともに燃料電池をケース内に収容した構造では、ポンプの放熱が良好に行われないという問題があった。
この場合、ポンプとエンドプレートとの間に熱を伝達させるシリコングリースなどの熱伝性媒体を塗布することが考えられるが、熱伝性媒体が熱で揮発すると、ケース内の水素を検出する水素漏れ検出用の水素ディテクタに揮発物が付着し、水素ディテクタの精度低下を招くおそれがある。
【0005】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、ガスを送り出すポンプを効率良く放熱させつつ、水素ディテクタなどのガスディテクタの汚染を防止することが可能な燃料電池システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成する本発明は、ケース内に収容された燃料電池スタックと、前記ケース内の燃料ガスを検出するガスディテクタと、前記燃料電池スタックに固定されたポンプとを有する燃料電池システムであって、前記ポンプと前記燃料電池スタックとの間に介在された熱伝性媒体と、この熱伝性媒体を前記ポンプと前記燃料電池スタックとの間に保持させる保持部材とを有することを特徴とする。
【0007】
かかる構成によれば、ケース内に設けられた燃料電池スタックに、熱伝性媒体を介してポンプが固定されているので、ポンプの熱を熱伝性媒体によって良好に燃料電池スタックへ放出させ、ポンプを効率良く放熱させることができ、ポンプの性能を長期にわたって良好な状態に維持することができる。
また、熱伝性媒体の揮発ガスがガスディテクタに影響を与えるものであっても、熱伝性媒体が保持部材によってポンプと燃料電池スタックとの間に保持された状態に維持されるので、熱伝性媒体の揮発によるガスディテクタの汚染を防止することができる。
【0008】
前記燃料電池システムにおいて、前記保持部材は、前記ポンプと前記燃料電池スタックの間の前記熱伝性媒体の周囲に配されたシール部材であってもよい。
【0009】
かかる構成によれば、熱伝性媒体の周囲に配されたシール部材によって熱伝性媒体を良好に保持することができる。
【0010】
前記燃料電池システムにおいて、前記シール部材は、前記ポンプあるいは前記燃料電池スタックのいずれか一方に形成された溝部に嵌合されて装着されていてもよい。
【0011】
前記熱伝性媒体は、前記ポンプ又は前記燃料電池スタックのうちの前記シール部材の装着側に設けられていてもよい。
【0012】
かかる構成によれば、熱伝性媒体が、ポンプあるいは燃料電池スタックのシール部材の装着側に設けられているので、シール部材と同じ部材に熱伝性媒体を設けた状態でポンプを燃料電池スタックへ固定することができる。これにより、燃料電池スタックへのポンプの固定時に、シール部材に熱伝性媒体が付着するような不具合を抑制することができ、良好なシール性を確保することができる。
【0013】
前記燃料電池システムにおいて、前記ポンプは、モータ部と、このモータ部によって駆動されて流体を送り出すポンプ部とを備え、前記モータ部と前記燃料電池スタックとが固定されていてもよい。
【0014】
かかる構成によれば、発熱するモータ部を燃料電池スタックへ固定することができ、燃料電池スタックへの放熱効率を高めることができる。
【0015】
前記燃料電池システムにおいて、前記ポンプのポンプ部と前記燃料電池スタックとを位置決めする位置決め手段を備えていてもよい。
【0016】
かかる構成によれば、ポンプ部を高精度に位置決めした状態にてポンプを燃料電池スタックに固定することができ、精度が要求されるポンプ部への配管の接続を良好に行うことができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ガスを送り出すポンプを効率良く放熱させつつ、ガスディテクタの汚染を防止することが可能な燃料電池システムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る燃料電池システムについて説明する。
【0019】
まず、図1を用いて、燃料電池10を用いた発電システムである燃料電池システム1の構成について説明する。
【0020】
燃料電池システム1は、反応ガス(酸化ガス及び燃料ガス)の供給を受けて電力を発生する燃料電池10を備えるとともに、燃料電池10に酸化ガスとしての空気を供給する酸化ガス配管系2、燃料電池10に燃料ガスとしての水素ガスを供給する水素ガス配管系3、燃料電池10を冷却する冷却系4等を備えている。
【0021】
酸化ガス配管系2は、図示略の加湿器により加湿された空気を燃料電池10に供給する空気供給流路20と、燃料電池10から排出された空気のオフガスを希釈器21に導く空気排出流路22と、希釈器21から車外に空気のオフガスを導くための排気流路23とを備えている。空気供給流路20には、空気を燃料電池10に圧送するエアコンプレッサ24と、空気供給流路20を開閉する入口弁25とが設けられている。空気排出流路22には空気圧を調整するエア調圧弁26と、空気排出流路22を開閉する出口弁27とが設けられている。
【0022】
水素ガス配管系3は、高圧の水素ガスを貯留した燃料供給源である水素タンク(燃料ガス供給源)30から水素ガスを燃料電池10に供給するための水素供給流路31と、燃料電池10から排出された水素ガスのオフガスを水素供給流路31に戻すための循環流路32とを備えている。
【0023】
水素供給流路31には、循環流路32の合流位置よりも上流側に水素タンク30からの水素ガスの供給を制御するインジェクタ33が設けられている。インジェクタ33は、弁体を電磁駆動力で直接的に所定の駆動周期で駆動して弁座から離隔させることによりガス流量やガス圧を調整することが可能な電磁駆動式の開閉弁である。
【0024】
循環流路32には、気液分離器36および排気排水弁(排気弁)37を介して、排出流路38が接続されている。気液分離器36は、水素ガスのオフガスから水分を回収するものである。排気排水弁37は、気液分離器36で回収した水分と、循環流路32内の不純物を含む水素ガスのオフガスとを外部に排出(パージ)するものである。また、循環流路32には、燃料電池10から排出された循環流路32内の水素ガスのオフガスを加圧して水素供給流路31側へ送り出して燃料電池10に戻す水素ポンプ(循環ポンプ)39が設けられている。この水素ポンプ39は、後述すように燃料電池10のケース内に設けられている。なお、排気排水弁37および排出流路38を介して排出される水素ガスのオフガスは、希釈器21によって空気排出流路22の空気のオフガスと合流して希釈されるようになっている。
【0025】
上記した燃料電池システム1の通常運転時においては、水素タンク30からインジェクタ33で制御されて水素ガスが水素供給流路31を介して燃料電池10の燃料極に供給されるとともに、エアコンプレッサ24の駆動により空気が空気供給流路20を介して燃料電池10の酸化極に供給されることにより、発電が行われる。そして、水素ガスの燃料電池10から排出されたオフガスが、水素ポンプ39の駆動により、気液分離器36で水分が除去されてから水素供給流路31に導入され、水素タンク30側の水素ガスと適宜混合されて再び燃料電池10に供給される。
【0026】
また、適宜のタイミングで排気排水弁37が開弁させられると、気液分離器36で回収した水分と、循環流路32内の不純物を含む水素ガスのオフガスとが希釈器21に導入される。すると、希釈器21では、水分と水素ガスのオフガスを、燃料電池10から空気排出流路22を介して排出された空気のオフガスを混合することで希釈した後、排気流路23を介して車外に排気する。
【0027】
冷却系4は、燃料電池10に冷却水を循環させる冷却流路40を有している。冷却流路40には、冷却水の熱を外部に放熱するラジエータ41、および冷却水を加圧して循環させる冷却水ポンプ42が設けられている。
【0028】
図2に示すように、燃料電池10は、ケース51内に収容されている。このケース51は、下部ケース52と上部ケース53とからなる上下半割り構造であり、下部ケース52のフランジ部52aと上部ケース53のフランジ部53aとが互いに接合されている。
また、ケース51には、その上部ケース53に、水素漏れ検出用の水素ディテクタ54が取り付けられており、この水素ディテクタ54は、ケース51内の水素を検出する。
【0029】
燃料電池10は、反応ガスの供給を受けて発電するセル61を所要数積層し、この積層方向の両端部がエンドプレート62で支持された燃料電池スタック63を有している。
【0030】
図3に示すように、一方のエンドプレート62には、循環ポンプである水素ポンプ39が取り付けられている。
水素ポンプ39は、気液二相流体用の圧縮機であって、モータ部71と、このモータ部71に一体的に並設されてモータ部71により駆動されるポンプ部72とを有している。
【0031】
そして、この水素ポンプ39には、ポンプ部72の接続部72a,72bに、循環流路32の配管が接続され、モータ部71によりポンプ部72が駆動されることにより、燃料電池10のアノード側から水素オフガスを吸引し、圧縮して水素供給流路31に送り出す。
【0032】
この水素ポンプ39のポンプ部72には、位置決め孔(位置決め手段)77が形成されており、この位置決め孔77には、図4にも示すように、エンドプレート62に設けられた位置決めピン(位置決め手段)78が嵌合される。
また、この水素ポンプ39のモータ部71は、両側部へ突出するステー73を有している。これらステー73には、ボルト挿通孔74が形成されている。また、エンドプレート62には、エンドプレート62の位置決めピン78をポンプ部72の位置決め孔77に嵌合させた状態にて、ステー73のボルト挿通孔74と合致するボルト孔76が形成されている。
【0033】
そして、エンドプレート62の位置決めピン78をポンプ部72の位置決め孔77に嵌合させ、ステー73のボルト挿通孔74とボルト孔76とを合致させた状態にて、ボルト挿通孔74に固定ボルト75を挿入し、当該固定ボルト75をエンドプレート62のボルト孔76にねじ込むことにより、水素ポンプ39はエンドプレート62に位置決めされて固定される。
【0034】
エンドプレート62と水素ポンプ39のモータ部71との間(接触面)には、環状のOリングからなるシール部材81が配設されている。
また、このシール部材81の内周側には、シリコングリースからなる熱伝性媒体82が塗布されており、エンドプレート62と水素ポンプ39のモータ部71とが、熱伝性媒体82を介して互いに密着されている。
【0035】
本実施の形態では、エンドプレート62に、環状の溝部83が形成されており、その溝部82にシール部材81が嵌合されている。熱伝性媒体82は、そのシール部材81が装着されたエンドプレート62に塗布されている。つまり、熱伝性媒体82は、シール部材81が装着された部材に塗布されている。
【0036】
以上、説明したように、上記実施形態に係る燃料電池システムによれば、ケース51内に設けられた燃料電池スタック63のエンドプレート62に、熱伝性媒体82を介して水素ポンプ39が固定されているので、水素ポンプ39の熱を熱伝性媒体82によって良好に燃料電池スタック63側に放出させ、水素ポンプ39を効率良く放熱させることができる。よって、水素ポンプ39の性能を長期にわたって良好な状態に維持することができる。
【0037】
また、熱伝性媒体82がシール部材81によって水素ポンプ39と燃料電池スタック63のエンドプレート62との間に保持された状態に維持されるので、熱伝性媒体82の揮発による水素ディテクタ54の汚染を防止することができる。
【0038】
また、シール部材81が燃料電池スタック63のエンドプレート62に形成された溝部83に嵌合されて装着され、熱伝性媒体82がシール部材81の装着側であるエンドプレート62に塗布されているので、熱伝性媒体82をシール部材81と同じ部材に塗布した状態で、水素ポンプ39を燃料電池スタック63へ固定することができる。これにより、燃料電池スタック63への水素ポンプ39の固定時に、シール部材81に熱伝性媒体82が付着するような不具合を抑制することができ、良好なシール性を確保することができる。
【0039】
なお、水素ポンプ39のモータ部71に溝部83を形成してシール部材81を嵌合させて装着した場合は、熱伝性媒体82は、シール部材81の装着側である水素ポンプ39のモータ部71に塗布してもよい。
【0040】
また、水素ポンプ39を構成するモータ部71と燃料電池スタック63のエンドプレート62とを締結固定したので、発熱するモータ部71を燃料電池スタック63のエンドプレート62へ強固に固定することができ、燃料電池スタック63のエンドプレート62への放熱効率を高めることができる。
【0041】
さらに、配管との接続のために高精度な位置決めを要する水素ポンプ39のポンプ部72と燃料電池スタック63のエンドプレート62とを位置決めする位置決め手段である位置決め孔77と位置決めピン78とを備えているので、ポンプ部72を高精度に位置決めした状態にて水素ポンプ39を燃料電池スタック63のエンドプレート62に固定することができ、ポンプ部72への配管の接続を良好に行うことができる。
【0042】
なお、熱伝性媒体82としては、シリコングリースに限らず、例えば、フッ素ジェルでも良い。さらに、熱伝性媒体82としてシリコンシートを介在させても良い。
また、熱伝性媒体82を保持する保持部材としては、揮発した熱伝性媒体82を吸着する吸着剤や揮発した熱伝性媒体82を溜めておくような溜り部であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の実施形態に係る燃料電池システムの構成図である。
【図2】ケースに収容された燃料電池の概略断面図である。
【図3】水素ポンプが固定された燃料電池スタックの正面図である。
【図4】水素ポンプが固定される燃料電池スタックの正面図である。
【符号の説明】
【0044】
1 燃料電池システム
39 水素ポンプ(ポンプ)
51 ケース
54 水素ディテクタ
63 燃料電池スタック
71 モータ部
72 ポンプ部
77 位置決め孔(位置決め手段)
78 位置決めピン(位置決め手段)
81 シール部材(保持部材)
82 熱伝性媒体
83 溝部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケース内に収容された燃料電池スタックと、前記ケース内の燃料ガスを検出するガスディテクタと、前記燃料電池スタックに固定されたポンプとを有する燃料電池システムであって、
前記ポンプと前記燃料電池スタックとの間に介在された熱伝性媒体と、この熱伝性媒体を前記ポンプと前記燃料電池スタックとの間に保持させる保持部材とを有することを特徴とする、燃料電池システム。
【請求項2】
前記保持部材は、前記ポンプと前記燃料電池スタックの間の前記熱伝性媒体の周囲に配されたシール部材であることを特徴とする、請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項3】
前記シール部材は、前記ポンプあるいは前記燃料電池スタックのいずれか一方に形成された溝部に嵌合されて装着されていることを特徴とする、請求項2に記載の燃料電池システム。
【請求項4】
前記熱伝性媒体は、前記ポンプ又は前記燃料電池スタックのうちの前記シール部材の装着側に設けられることを特徴とする、請求項3に記載の燃料電池システム。
【請求項5】
前記ポンプは、モータ部と、このモータ部によって駆動されて流体を送り出すポンプ部とを備え、前記モータ部と前記燃料電池スタックとが固定されていることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の燃料電池システム。
【請求項6】
前記ポンプのポンプ部と前記燃料電池スタックとを位置決めする位置決め手段を備えることを特徴とする、請求項5に記載の燃料電池システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−295511(P2009−295511A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−149782(P2008−149782)
【出願日】平成20年6月6日(2008.6.6)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】