説明

燃料電池システム

【課題】システム内の機器の凍結を防止し、寒冷地方などでも適用可能で安全性の高い燃料電池システムを提供する。
【解決手段】筺体6の内部空間SにPEFCスタック4を備える燃料電池システム1において、内部空間Sに配置され、当該内部空間Sを加熱するシーズヒータ13を備え、シーズヒータ13は、筺体6の内部空間Sの底面側に配置されると共に、底面とシーズヒータ13との間に間隔が設けられており、筺体6の内部空間Sには、PEFCスタック4を含む内部機器を搭載する搭載プレート12が設けられ、シーズヒータ13は、搭載プレート12と筺体6の内部空間Sの底面との間に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、寒冷地方で用いられる燃料電池システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の燃料電池システムとして、水素を発生させるために液状炭化水素を改質させる改質部や、酸素と水素との電気化学反応によって発電を行うための燃料電池スタックなどを含んで構成されるものが知られている(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】特開2007−70502号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ここで、上記の燃料電池システムにあっては、改質部で液状炭化水素を改質させる際は水と共に改質させ、また、燃料電池スタックで発電させる際に水が発生し、更に、冷却水を循環させることによって、発生する熱を冷却している。以上のように、燃料電池システムには配管や電池スタックなどに水が含まれるものであるため、気温の低い場所に設置した場合、それらの水(特に、電池スタック内の水)が凍結してしまう可能性があり、寒冷地方などでの使用に適さないという問題がある。
【0004】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、システム内の機器の凍結を防止し、寒冷地方などでも適用可能で安全性の高い燃料電池システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る燃料電池システムは、筺体の内部空間に電池スタックを備える燃料電池システムにおいて、内部空間に配置され、当該内部空間を加熱する加熱手段を備え、加熱手段は、筺体の内部空間の底面側に配置されると共に、底面と加熱手段との間に間隔が設けられており、筺体の内部空間には、電池スタックを含む内部機器を搭載する搭載板が設けられ、加熱手段は、搭載板と筺体の内部空間の底面との間に配置されていることを特徴とする燃料電池システム。
【0006】
この燃料電池システムによれば、加熱手段により筺体の内部空間を加熱することができるため、システム内の機器の凍結を防止し、寒冷地方などでも適用可能とすることができる。また、加熱手段と底面との間に間隔が設けられているため、システム内で万が一に水や燃料などの漏れが発生してしまい、筺体の底面に溜まってしまった場合であっても、短絡や漏電を防止して安全性を高めることができる。また、加熱手段を筺体の底面側に配置することによって、加熱手段からの熱を、筺体の内部空間全体に自然対流させることができ、従って、加熱の効率を向上させることができる。また、加熱手段と電池スタックを含む内部機器とが、搭載板で遮られることとなるため、両者が直接接触してしまうことを防止し、安全性をより高めることができる。
【0007】
本発明に係る燃料電池システムにおいて、搭載板には、複数の貫通孔が設けられていることを特徴としてもよい。このようにすれば、加熱手段からの熱の自然対流を促進し、筐体の内部空間を効率よく加熱することができる。また、搭載板上に水などの液体が溜まるのを防ぐこともできる。
【0008】
本発明に係る燃料電池システムにおいて、電池スタックの周囲に配置され、電池スタックの周囲温度を検知する温度検知手段と、温度検知手段で検知した温度に基づいて、その周囲温度を少なくとも水が凍結する温度以上に保つように、加熱手段を制御する温度制御手段と、を備えることを特徴としてもよい。このようにすれば、システムの中で特に凍結する可能性の高い部品である電池スタックの周囲温度を温度検知手段によって検知し、その検知に基づき温度制御手段で加熱手段を制御することによって加熱手段により筺体の内部空間を加熱し、電池スタックの周囲温度を、凍結のおそれのない温度以上に保つことができる。また、運転中はシステム内で熱が発生するので、電池スタックを始め、システム内の部品が凍結する可能性が低く、運転していないときにそれらの部品が凍結する可能性が高くなる。この燃料電池システムでは、電池スタックの周囲に温度検知手段を配置しているため、システムの運転状況に敏感に対応することができる。従って、システムが運転していない場合など、凍結の可能性があるときにのみ加熱手段を作動させることができるため、電力を無駄に消費することを防止することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、システム内の機器の凍結を防止し、寒冷地方などでも適用可能で安全性の高い燃料電池システムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0011】
図1は本発明の実施形態に係る燃料電池システムを示す概略構成図、図2は図1の燃料電池システムの各部品の筺体内での配置を示す概略構成図である。燃料電池システムは、水素製造用原料を用いて発電を行なうものであり、例えば家庭用の電力供給源として採用される。ここでは、水素製造用原料としては、水蒸気改質反応により水素を含む改質ガスを得ることのできる物質であれば使用できる。例えば、炭化水素類、アルコール類、エーテル類など分子中に炭素と水素を有する化合物を用いることができる。工業用あるいは民生用に入手できる水素製造用原料の好ましい例として、メタノール、エタノール、ジメチルエーテル、メタン、都市ガス、LPG(液化石油ガス)を挙げることができ、また石油から得られるガソリン、ナフサ、灯油、軽油などの炭化水素油を挙げることができる。なかでも液体燃料であると好ましく、特に灯油は工業用としても民生用としても入手容易であり、その取り扱いも容易なため、好ましい。
【0012】
図1に示すように、燃料電池システム1は、脱硫器2、燃料処理システム(FPS)3、固体高分子形燃料電池(PEFC)スタック4、インバータ5、及びこれらを収容する筐体6を備えている。
【0013】
脱硫器2は、外部から導入された水素製造用原料を脱硫するものである。この脱硫器2には、ヒータ(不図示)が設けられており、これにより、脱硫器2は、例えば水素製造用原料を130℃〜140℃まで加熱するようになっている。
【0014】
FPS3は、水素製造用原料を改質して改質ガスを生成するためのものであり、改質器8、バーナ9、CO変成器10及び選択酸化器15を有している。改質器8は、脱硫器2から脱硫された水素製造用原料を供給されると共に、外部から水蒸気(水)を供給される。そして、脱硫された水素製造用原料と水蒸気(水)とを改質触媒で水蒸気改質反応させて、水素を含有する改質ガスを生成する。
【0015】
バーナ9は、改質器8の改質触媒を加熱することで、水蒸気改質反応に必要な熱量を供給する。なお、バーナ9の燃料として、装置の起動時には脱硫器2からの水素製造用原料を用い、運転中は、PEFCスタック4からのオフガスを用いることが好ましい。
【0016】
CO変成器10は、改質器8で生成された改質ガスに含まれる一酸化炭素濃度(CO)を低減するため、一酸化炭素を水と反応させ、水素シフト反応により水素と二酸化炭素に転換するためのものである。また、選択酸化器15は、CO変成器10で処理された改質ガスの一酸化炭素濃度を更に低減させるため、改質ガス中の一酸化炭素を選択的に酸化することにより二酸化炭素にするものである。
【0017】
PEFCスタック(電池スタック)4は、複数の電池セル(不図示)が積み重ねられて構成されており、FPS3で得られた改質ガスを用いて発電して直流(DC)電流を出力する。電池セルは、アノードと、カソードと、アノード及びカソード間に配置された固体高分子である電解質とを有しており、アノードに改質ガスを導入させると共に、カソードに空気を導入させることで、各電池セルにおいて電気化学的な発電反応が行われることになる。
【0018】
インバータ5は、出力されたDC電流を交流(AC)電流に変換する。筐体6は、その内部に脱硫器2、FPS3、SOFCスタック4及びインバータ5をモジュール化して収容する。この、筺体6は、ベース6bに蓋体6aを被せることによって構成され、内部空間Sを有する。
【0019】
図2に示すように、筺体6の内部空間Sには、搭載プレート(搭載板)12がベース6bの上面(底面)6cを全体的に覆うように敷かれており、その搭載プレート12上に、FPS3、PEFCスタック4、制御装置(温度制御手段)11、及びその他、燃料電池システム1の補機、熱交換器、配管などの内部機器が搭載されている。また、搭載プレート12は、ベース6b上で脚12aによって支持され、ベース6bから離間しており、いわゆる二重底構造とされている。そして、搭載プレート12とベース6bとの間に、筺体6の内部空間Sを加熱するためのシーズヒータ(加熱手段)13が配置されている。搭載プレート12の外縁部と筺体6の蓋体6aとの間には隙間が設けられており、搭載プレート12から蓋体6aを通って外部へ熱が伝達するのを防いでいる。また、この隙間を通して、シーズヒータ13からの熱が上方へ自然対流により流れるようになっている。
【0020】
PEFCスタック4は、制御装置11の上方に配置されており、断熱材4aを介して温度センサ(温度検知手段)14が取り付けられている。この温度センサ14によって、PEFCスタック4の周囲温度が検知される。
【0021】
制御装置11は、筺体6の内部空間Sの温度を検知してシーズヒータ13を制御する温度制御機能を備えている。この温度制御機能は、具体的にはバイメタル式サーモスタットにより実現されていると、コスト面から好ましい。なお、制御装置11は、温度制御と共に、燃料電池システム1全体の制御を行う機能も有している。
【0022】
搭載プレート12は、図3に示すように、矩形の板材であり、複数の同径の貫通孔12bが規則的に配列されて形成されているものが好ましい。これによって、下方に配置されたシーズヒータ13からの熱が、貫通孔12bを通過して上方へ自然対流することが可能となるため、効率よく内部空間Sを加熱することができる。また、搭載プレート12上に水などの液体が溜まるのを防ぐこともできる。
【0023】
シーズヒータ13は、図4に示すように、一本の電熱線をベース6b上でまんべんなく張り巡らし、固定具16で固定することにより構成されている。水素製造用原料となる灯油の発火温度やシステム中の電子部品の耐熱温度などを考慮し、シーズヒータ13の発熱時の周囲温度は、養生込みで50〜100℃、好ましくは60℃程度となるようにする。また、図5に示すように、シーズヒータ13は、固定具16a,16bで上下方向から挟みこまれることによって固定され、脚部17で支持されることによって、ベース6bとの間に間隔18が設けられている。
【0024】
次に、制御装置11における制御方法について、図6を参照して説明する。
【0025】
まず、温度センサ14でPEFCスタック4の周囲温度を検知する(S100)。このとき、燃料電池システム1が運転状態にある場合など、システム内の各部品からの発熱により内部空間Sの温度が5℃以上であると検知されたときは、シーズヒータ13のON−OFFを切り替えることなく、引き続き周囲温度を検知する。一方、燃料電池システム1が運転休止状態にある場合などに内部空間Sの温度が下がり、温度センサ14が、PEFCスタック4の周囲温度は5℃以下であることを検知すると(S105)、制御装置11は、シーズヒータ13をONとし(S110)、内部空間Sを加熱させる。そして、再度温度を検知して(S115)、シーズヒータ13からの発熱により内部空間Sの温度があがり、温度センサ14で、PEFCスタック4の周囲温度が10℃以上となっていることを検知すると(S120)、制御装置11は、シーズヒータ13をOFFとし(S125)、発熱を休止させる。一方、S120で、周囲温度が10℃を超えていないと検知した場合は、シーズヒータ13をONとした状態を維持する。このような制御を行った場合は、PEFCスタック4の周囲温度が5℃から10℃のときは、シーズヒータ13がONであるかOFFであるかに関わらず、現状の状態が維持されるようになっており、このように温度にヒステリシスを設けることで、シーズヒータ13の無駄なON、OFFの繰り返しを低減している。なお、シーズヒータ13を5℃以上でONとしているのは、PEFCスタック4の周囲温度を少なくとも水が凍結する温度以上に保つためである。
【0026】
以上によって、システムの中で特に凍結する可能性の高い部品であるPEFCスタック4の周囲温度を温度センサ14によって検知し、その検知に基づき制御装置11でシーズヒータ13を制御することによって筺体6の内部空間Sを加熱し、PEFCスタック4の周囲温度を、凍結のおそれのない温度以上に保つことができる。これによって、システム内の部品で、少なくとも、凍結する可能性の高いPEFCスタック4の凍結を防止し、寒冷地方などでも適用可能とすることができる。
【0027】
また、運転中はシステム内で熱が発生するので、PEFCスタック4を始め、システム内の部品が凍結する可能性が低く、運転していないときにそれらの部品が凍結する可能性が高くなる。特に、PEFCスタック4は他の部品よりも凍結の可能性が高く、更に、凍結した場合に性能にも影響があるため、PEFCスタック4の凍結を防止する必要性がある。しかし、温度センサ14の配置場所によっては、システムの運転中などのPEFCスタック4の凍結のおそれのないときまでシーズヒータ13を作動させてしまう場合もあり、電力の無駄が生じる可能性がある。ここで、この燃料電池システム1では、PEFCスタック4の周囲に温度センサを配置しているため、システムの運転状況に敏感に対応することができる構成とされている。従って、システムが運転していない場合など、凍結の可能性があるときにのみシーズヒータ13を作動させることができるため、電力を無駄に消費することを防止することができる。
【0028】
また、システム内で万が一に水や液体系の水素製造用原料などの漏れが発生してしまい、筺体6のベース6b上に溜まってしまった場合であっても、シーズヒータ13とベース6bとの間に間隔18を設けることによって、短絡や漏電を防止し安全性を高めることができる。また、シーズヒータ13を内部空間Sの下部に配置することによって、シーズヒータ13からの熱を、筺体6の内部空間S全体に自然対流させることができ、従って、加熱の効率を向上させることができる。
【0029】
更に、シーズヒータ13とPEFCスタック4とが、搭載プレート12で遮られることとなるため、両者が直接接触してしまうことを防止し、安全性をより高めることができる。また、搭載プレート12の下部にシーズヒータ13を配置することで、空間の有効利用を図ることができ、装置のコンパクト化を図ることができる。
【0030】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではない。
【0031】
例えば、温度センサ14は、PEFCスタック4の周囲であればどこに配置されていてもよい。
【0032】
また、搭載プレート12は、複数の貫通孔12bが設けられているものを適用しているが、図7に示すような搭載プレート22であってもよく、すなわち、搭載プレート22をプレート22a及びプレート22bに分割し、更に、支持する部品配置にあわせて貫通孔22cを設けるような構成としたものでもよい。これによって、プレート22a,22bの間の隙間22d及び貫通孔22cから、部品配置に合わせて効率よく熱を通過させることができる。
【0033】
更に、スタックは、PEFCスタックに限らず、アルカリ電解質形、リン酸形、溶融炭酸塩形あるいは固体酸化物形などの他の形式のスタックであってもよい。
【0034】
また、シーズヒータ13をON―OFFする温度を5℃−10℃としているが、これに限らず、PEFCスタック4の周囲温度を水が凍結しない温度に保つことができればよく、他の閾値T,Tとしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施形態に係る燃料電池システムを示す概略構成図である。
【図2】図1の燃料電池システムの各部品の筺体内での配置を示す概略構成図である。
【図3】図2に示す搭載プレートの正面図である。
【図4】図2に示すシーズヒータの正面図である。
【図5】図4に示すV−V線に沿う断面図である。
【図6】制御装置における処理手順を示すフローチャートである。
【図7】他の実施形態に係る搭載プレートの正面図である。
【符号の説明】
【0036】
1…燃料電池システム、4…PEFCスタック(電池スタック)、6…筺体、6a…蓋体、6c…上面(底面)、11…制御装置(温度制御手段)、12,22…搭載プレート(搭載板)、13…シーズヒータ(加熱手段)、14…温度センサ(温度検知手段)、18…間隔、S…内部空間。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筺体の内部空間に電池スタックを備える燃料電池システムにおいて、
前記内部空間に配置され、当該内部空間を加熱する加熱手段を備え、
前記加熱手段は、前記筺体の前記内部空間の底面側に配置されると共に、前記底面と前記加熱手段との間に間隔が設けられており、
前記筺体の前記内部空間には、前記電池スタックを含む内部機器を搭載する搭載板が設けられ、
前記加熱手段は、前記搭載板と前記筺体の前記内部空間の底面との間に配置されていることを特徴とする燃料電池システム。
【請求項2】
前記搭載板には、複数の貫通孔が設けられていることを特徴とする請求項1記載の燃料電池システム。
【請求項3】
前記電池スタックの周囲に配置され、該電池スタックの周囲温度を検知する温度検知手段と、
前記温度検知手段で検知した温度に基づいて、前記周囲温度を少なくとも水が凍結する温度以上に保つように、前記加熱手段を制御する温度制御手段と、
を備えることを特徴とする請求項1又は2記載の燃料電池システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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