説明

燃料電池システム

【課題】燃料電池の大型化を抑えつつ、せん断力に対する燃料電池の強度を確保する。
【解決手段】この発明の燃料電池は、電解質と、電解質の両側に配置された一対の電極とを含む発電部がセパレータを介して積層されたスタックと、スタックの積層方向両側に、スタックを挟んで配置された第1エンドプレートと第2エンドプレートとを有している。第1エンドプレートと第2エンドプレートとは、両エンドプレート間を連絡する第1締結部材により締結されている。また、第1エンドプレート又は第2エンドプレートの少なくとも一箇所と、第1締結部材の少なくとも一箇所とは、第1エンドプレート又は第2エンドプレートと、第1締結部材とを、積層方向に対して斜めに連絡する第2締結部材によって締結されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は燃料電池に関する。更に、具体的には、発電部がセパレータを介して複数積層されたスタックを備える燃料電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、複数の発電部がセパレータを介して積層されたスタックを有する燃料電池が開示されている。この燃料電池においてスタックの積層方向両側には、一対のエンドプレートが配置されている。また、スタックの四隅に、一方のエンドプレートと他方のエンドプレートを連絡するようにしてL字型の締結部材が配置されている。この締結部材は、各エンドプレートの四隅(角)にそれぞれボルトによって固定されている。特許文献1の燃料電池は、このようにエンドプレート間をL字型の締結部材により締結することによりある程度の締結力で保持されている。
【0003】
【特許文献1】特開2002−42852号公報
【特許文献2】特開2006−140007号公報
【特許文献3】特開2003−317792号公報
【特許文献4】特開2004−63172号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、スタック構造を有する燃料電池が外力等により加振されると、スタック内にせん断力が発生し積層された発電部にズレやすべりを生じさせる場合がある。このため、例えば特許文献1のようにスタック四隅に締結部材を配置して燃料電池を締結することにより、せん断力の低減を図っている。
【0005】
しかし、燃料電池の要求出力の増大等により発電部の積層数が増加する場合、スタックの積層方向の長さが長くなる。スタック積層方向の長さが長くなると、外力等により生じるせん断力はより大きなものとなる。従って、締結部材にかかる応力もより大きなものとなるため、締結部材にはこの応力に耐え得る大きな強度が要求される。
【0006】
その一方で、燃料電池の小型化の要求から締結部材についても小型化、軽量化が望まれる。従って、締結部材の強度を、締結部材の大型化、重量化により高めることは、燃料電池の小型化の観点から好ましいものではない。
【0007】
この発明は、このような課題を解決するためになされたもので、燃料電池の大型化を抑えつつ、せん断力に対しても燃料電池の強度を確保できるよう改良した燃料電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明は、上記の目的を達成するため、燃料電池であって、
電解質と、前記電解質の両側に配置された一対の電極とを含む発電部がセパレータを介して積層されたスタックと、
前記スタックの積層方向両側に、前記スタックを挟んで配置された第1エンドプレートと第2エンドプレートと、
前記第1エンドプレートと前記第2エンドプレートとを連絡し、前記第1エンドプレートと前記第2エンドプレートとを締結する第1締結部材と、
前記第1エンドプレート又は前記第2エンドプレートの少なくとも一箇所と、前記第1締結部材の少なくとも一箇所とを連絡し、前記第1エンドプレート又は前記第2エンドプレートと、前記第1締結部材とを、前記積層方向に対して斜めに締結する第2締結部材と、
を備えることを特徴とする。
【0009】
第2の発明は、第1の発明において、前記第2締結部材は、線状部材であることを特徴とする。
【0010】
第3の発明は、第2の発明において、前記第2締結部材は、前記第2締結部材の張力を調整する調整手段を備えることを特徴とする。
【0011】
第4の発明は、第1から第3のいずれかの発明において、前記第1締結部材は、前記スタックの四隅にそれぞれ配置された4本の締結部材を含み、
前記第2締結部材は、前記スタックの前記積層方向に平行な側面のうち、少なくとも対向する2側面に配置され、前記2側面のそれぞれの側面において、
前記第1エンドプレートと、前記4本の締結部材のうち該側面側に配置される2本の締結部材のそれぞれとに接続し、かつ、前記第2エンドプレートと、前記2本の締結部材のそれぞれとに接続することを特徴とする。
【0012】
第5の発明は、第4の発明において、前記第2締結部材は、前記2側面のそれぞれの側面において、
前記第1エンドプレートの該側面側の箇所と、前記2本の締結部材それぞれの該側面側の箇所と、にそれぞれ接続する2つの第1部材と、
前記第2エンドプレートの該側面側の箇所と、前記2本の締結部材それぞれの該側面側の箇所と、にそれぞれ接続する2つの第2部材と、
を備えることを特徴とする。
【0013】
第6の発明は、第5の発明において、前記2つの第1部材のそれぞれは、前記第1エンドプレートの異なる箇所に接続され、
前記2つの第2部材のそれぞれは、前記第2エンドプレートの異なる箇所に接続されていることを特徴とする。
【0014】
第7の発明は、第6の発明において、前記2つの第1部材は、該側面において互いに交差するように配置され、
前記2つの第2部材は、該側面において互いに交差するように配置されていることを特徴とする。
【0015】
第8の発明は、第5から第7の発明において、前記第2締結部材は、前記2側面のそれぞれの側面において、
前記第1エンドプレートの該側面側の箇所と、前記2本の締結部材それぞれの前記第1部材との接続箇所とは異なる箇所と、にそれぞれ接続する2つの第3部材と、
前記第2エンドプレートの該側面側の箇所と、前記2本の締結部材それぞれの前記第2部材との接続箇所とは異なる箇所と、にそれぞれ接続する2つの第4部材と、
を備えることを特徴とする。
【0016】
第9の発明は、第8の発明において、
前記2つの第3部材のそれぞれは、前記第1エンドプレートの異なる箇所に接続され、
前記2つの第4部材のそれぞれは、前記第2エンドプレートの異なる箇所に接続されていることを特徴とする。
【0017】
第10の発明は、第5から9のいずれかの発明において、
前記2本の締結部材のうち一方の締結部材において、前記2つの第1部材のうち一方の第1部材と、前記2つの第2部材のうち一方の第2部材とが接続する箇所は、同一箇所であり、
他方の締結部材において、他方の第1部材と、他方の第2部材とが接続する箇所は、同一箇所であることを特徴とする。
【0018】
第11の発明は、第5から9のいずれかの発明において、
前記2本の締結部材のうち一方の締結部材において、前記2つの第1部材のうち一方の第1部材と、前記2つの第2部材のうち一方の第2部材とが接続する箇所は、異なる箇所であり、
他方の締結部材において、他方の第1部材と他方の第2部材とが接続する箇所は、異なる箇所であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
第1の発明の燃料電池は、スタック両側の第1又は第2エンドプレートと、第1、第2エンドプレートを連絡する第1締結部材とを、積層方向に対して斜めに締結する第2締結部材を有する。これにより、第1締結部材に対してかかる積層方向に対して垂直な方向の力を、第1締結部材に対して斜めに締結された第2締結部材によって緩和することができる。従って、第1締結部材の積層方向の断面積が比較的小さなものとしても、第1締結部材の必要強度を確保できると共に、せん断力を抑えて燃料電池に生じるずれを抑制することができる。
【0020】
第2の発明によれば、第2締結部材を線状部材とすることにより、第1締結部材を張力により支持することができる。これにより燃料電池の大型化を抑えつつ、確実に第1締結部材にかかる力を緩和することができる。
【0021】
第3の発明によれば、第2締結部材の張力を調整することができる。これにより第2締結部材が第1締結部材を補強する力を調整することができる。従って、より確実に第1締結部材を支持し、第1締結部材にかかる力を緩和することができる。
【0022】
第4〜第11の発明によれば、第2締結部材は、第1エンドプレートと4つの締結部材のそれぞれ、及び、第2エンドプレートと4つの締結部材のそれぞれとに接続する。従って、第1締結部材である4つの締結部材にかかる力をより確実に緩和することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、各図において、同一または相当する部分には同一符号を付してその説明を簡略化ないし省略する。
【0024】
実施の形態.
図1は、この発明の実施の形態における燃料電池の構成について説明するための模式図である。図1の燃料電池は例えば車両等の移動体に搭載して用いることができる。図1に示すように、燃料電池は複数のセル10が積層されて構成されるスタックを有している。各セル10は電解質膜(電解質)及びその両側に配置された一対の電極(アノード極及びカソード極)からなる発電部と、その両側に配置された一対のセパレータとを有している。
【0025】
なお、この実施の形態において、図1の左右方向がセル10の積層方向であり、この方向を単に「積層方向」と称することとする。また、図1に示す面は、燃料電池の積層方向に平行な側面である。この燃料電池において、この側面に対向する側面との構成は同一であり、説明の簡略化のため、図1に示す一側面側の構成について説明する。
【0026】
スタックの積層方向両外側(即ち、図1における左右側)には、それぞれ集電板12が配置され、更にその外側に、絶縁体14を介してエンドプレート16a、16b(第1エンドプレート、第2エンドプレート)がそれぞれ配置されている。スタックの角(四隅)には4つの角材18a、18b(第1締結部材、4本の締結部材)が、それぞれ絶縁シート20a、20bを介して配置されている。角材18a、18bは、それぞれ第1エンドプレート16aと第2エンドプレート16bを連絡し、エンドプレート16a、16bは、4つの角材18a、18bそれぞれの両端に、ボルト等(図示せず)によって締結されている。これにより燃料電池は所定の締結力により締結されて保持されている。
【0027】
エンドプレート16a、16bの、図1の側面に現れる部分の中央部一箇所には、後述する固定部22a、22bがそれぞれ設けられている。一方、角材18a、18bの、図1の側面に現れる部分の中央部一箇所には、後述する固定部24a、24がそれぞれ設けられている。
【0028】
燃料電池のこの側面には、固定部22a、22b、24a、24bに支持されたワイヤ(第2締結部材)26a〜26dによる補強機構が取り付けられている。なお各ワイヤ26a〜26dは絶縁材によるコーティングが施されており、短絡が防止されている。
【0029】
具体的に、エンドプレート16aの固定部22aは、ワイヤ26a、26b(第1部材)それぞれの一方の端部を支持している。ワイヤ26a、26bの他端は、2本の角材18a、18bの固定部24a、24bにそれぞれ支持されている。同様に、エンドプレート16bの固定部22bは、ワイヤ26c、26d(第2部材)それぞれの一方の端部を支持している。ワイヤ26c、26dの他端は、2本の角材18a、18bの固定部24a、24bにそれぞれ支持されている。
【0030】
つまり、図1の側面において2本のワイヤ26a、26bは、エンドプレート16aの一箇所(固定部22a)と、角材18a又は角材18bの一箇所(固定部24a又は固定部24b)とにそれぞれ接続し、2本のワイヤ26c、26dは、エンドプレート16bの一箇所(固定部22b)と、角材18a又は18bの一箇所(固定部24a又は24b)とにそれぞれ接続している。ワイヤ26a〜26は、エンドプレート16a、16b及び角材18a、18bに対して斜め方向に配置され、所定の張力で支持されている。詳細は後述するが、ワイヤ26a〜26dは、それぞれ中央付近に、各ワイヤ26a〜26dの張力を調整するための張力調整部材30を有している。
【0031】
図2は、この発明の実施の形態における燃料電池の、セル10のセパレータについて説明するための模式図である。図2は、積層方向に垂直な面であって、アノード極側に配置されるセパレータのアノード極に接する面を表している。図2に示すように、セパレータは、外周辺の一辺(図2では左辺)付近において、水素入口32を有し、この一辺に対向する辺(右辺)付近に水素出口34を有している。セパレータは、水素入口32及び水素出口34が形成された一対の辺とは異なる一対の辺(下辺、上辺)に、それぞれ酸素入口36と酸素出口38とを有している。水素入口32下方には冷却剤入口40が設けられ、水素出口34上方には、冷却剤出口42が形成されている。
【0032】
このセパレータの、各ガスや水の入口、出口(32〜42)に使用されていない四隅(角)の部分には切り欠き44a、44bが形成されている。ここでスタック内のアノード極側及びカソード極側のセパレータ及び発電部は、全て図2に示すセパレータと同一の位置に同一形状の各ガスや水の入口、出口(32〜42)及び、切り欠き44a、44bを有している。従ってセル10が積層されたスタックは、その四隅に、この切り欠き44a、44bが連結することで構成される凹部を有している。
【0033】
一方、角材18a、18bの積層方向の断面形状は、切り欠き44a、44bの形状とほぼ一致する。角材18a、18bは、切り欠き44a、44bによって構成されるスタック四隅の凹部に、絶縁シート20a、20bを介して嵌めこまれている。従って、角材18a、18bはスタックから突出しない構成となっている。
【0034】
図3は、この発明の実施の形態における燃料電池の固定部について説明するための図である。図3に示すように固定部22aはボルトであって、エンドプレート16aにねじ込まれることで固定されている。一方、図3(b)に示されるように、各ワイヤ26a、26bそれぞれの両端部はリング状に形成されている。ワイヤ26a、26bのリング状の一端部に、固定部22aであるボルトの軸部が挿入されている。これによりワイヤ26a、26bはエンドプレート16aに固定されている。
【0035】
全ての固定部22a、22b、24a、24bは同様の構成によりワイヤ26a〜26dを支持する。即ち、エンドプレート16bの固定部22bのボルト軸部は、ワイヤ26c、26dの一端部に挿入され、ワイヤ26c、26dの端部をエンドプレート16bに固定している。また角材18aの固定部24aのボルト軸部は、ワイヤ26a、26cの一端部に挿入され、ワイヤ26a、26cの端部を角材18aに固定している。角材18bの固定部24bのボルト軸部は、ワイヤ26b、26dの一端部に挿入され、ワイヤ26b、26dの端部を角材18bに固定している。
【0036】
図4は、この発明の実施の形態における張力調整機構を説明するための図である。ワイヤ26aは、固定部22aと固定部24aとの間を接続するが、ワイヤ26a自体は実際には一続きになっておらず、中央部付近に切断部を有し、その切断部において張力調整機構30が接続している。
【0037】
具体的にワイヤ26aは、その切断部において左ボルト52と右ボルト54とのそれぞれに連結し固定されている。左ボルト52、右ボルト54の、ワイヤ26aとの連結部とは反対側は、それぞれナット56に捩じ込まれて固定される。つまりワイヤ26aはその切断部において左ボルト52又は右ボルト54とに連結し、両ボルト52、54がナット56に挿入されて連結することで、ワイヤ26aと張力調整機構30とが一続きとなって、固定部22aと固定部24bとの間を連絡している。
【0038】
ここで、左ボルト52または右ボルト54のナット56への捩じ込み量を調整することで、ワイヤ26aの張力が調整される。これによりワイヤ26aが第1エンドプレート16aと角材18aとの間を補強する力の大きさを調節することができる。
【0039】
他のワイヤ26b〜26dは、ワイヤ26aと同じ構成を有しており、ワイヤ26b〜26dそれぞれに張力調整機構30が取り付けられている。これにより各ワイヤ26a〜26dの張力が調整され、エンドプレート16a又はエンドプレート16bと、角材18a又は角材18bとの間を補強する力の強度をそれぞれ調節することができる。
【0040】
このように燃料電池においては、エンドプレート16a、16b間を拘束部材である角材18a、18bにより締結して支持すると共に、角材18a、18bとエンドプレート16a、16bとの間をワイヤ26a〜26dにより斜めに締結して支持ししている。これにより燃料電池が外力等により加振され、せん断力が生じた場合にも、角材18a、18bによりそのせん断力が低減される。また角材18a、18bにはせん断力による応力が発生するが、ワイヤ26a〜26dの張力によって角材18a、18bはそれぞれエンドプレート16a、16bの斜め方向に支持されている。従って、角材18a、18bに生じる応力は、ワイヤ26a〜26dによる補強によって緩和される。従って、この実施の形態の燃料電池においてはせん断力によるセル10のズレを抑制することができる。
【0041】
また、実施の形態の燃料電池においては、角材18a、18bに生じる応力をワイヤ26a〜26dの張力により緩和している。従って、角材18a、18bに要求される強度は小さくなり、角材18a、18bの積層方向に垂直な断面の面積を小さくすることができる。従って、この実施の形態では、角材18a、18bを小さくして、セパレータの不使用部分(この実施の形態では4角の切り欠き44a、44b)に配置している。これにより、燃料電池のせん断力に対する強度、及び角材18a、18bの強度を確保しつつ、燃料電池の角材18a、18bの外部への突出を抑えることができる。従って、燃料電池の強度を確保しつつ燃料電池の小型化を図ることができる。
【0042】
なお、この発明において、ワイヤ等の線状部材の配置形状は、この実施の形態に説明したワイヤ26a〜26dの配置形状に限るものではない。図5〜図8は、この発明の実施の形態における他のワイヤ配置の例を説明する模式図である。
【0043】
例えば、図5に示す燃料電池は、エンドプレート16aの図5に現れる側面において、下側、上側の端部付近にそれぞれ固定部122a、122bを有している。ワイヤ126aは、上側の角材18aの固定部24aと、エンドプレート16aの下側の固定部122aとを接続し、ワイヤ126bは、下側の角材18bの固定部24bとエンドプレート16aの上側の固定部122bとを締結する。各ワイヤ126a、126bには、それぞれ張力調整部材30が設けられている。即ち、ワイヤ126a、126bは、エンドプレート16aの比較的離れた位置に設けられた異なる固定部122a、122bに接続し、互いに交差するように配置されている。
【0044】
なお、この構造は図1において左右対称となっており、エンドプレート16bにも同様に上下2箇所の固定部122b、122aが形成され、この固定部122aと角材18aの固定部24a、固定部122bと角材18bの固定部24bとが、それぞれワイヤ126a、126bにより締結されている。また、図5の側面に対向する側面も同様の構成となっている。
【0045】
図5に示す構造では、ワイヤ126a、126bと角材18a、18bとの締結角度が鋭角となる。これにより、角材18a、18bに生じる積層方向に垂直な方向の力に対するワイヤ126a、126bの補強力をより大きくすることができ、角材18a、18bに生じる応力をより確実に緩和することができる。従って燃料電池の強度をより高く確保することができ、あるいは、角材18a、18bの更なる小型化を図ることができる。
【0046】
なお、図5における構造では、固定部122a、122bはエンドプレート16a、16bの上下、即ち、エンドプレート16a、16bと角材18a、18bとの締結位置付近に設けられる。このような場合、エンドプレート16a、16b及び角材18a、18bを締結するボルト等の締結部材と、固定部122a、122bとが接触しないよう、かつ、この締結部付近の強度を確保できるように考慮して、固定部122a、122bの設置位置を決定すべきである。また、図5の構造のように、ワイヤ126a、126bが交差する場合には、ワイヤ同士が互いに干渉しないように、ワイヤのスタックからの距離に差をつけることが望ましい。
【0047】
図6に示す構造では、図1の4本のワイヤ26a〜26dに加えて、更に4本のワイヤ226a、226bが配置されている。具体的には、角材18a、18bの固定部24a、24bと、角材18a、18bのエンドプレート16a側の端部との中間位置付近に、それぞれ固定部224a、224bが設けられている。ワイヤ226a、226bは、この固定部224a、224bと、エンドプレートの固定部22aとに、それぞれ固定される。また、各ワイヤ226a、226bには、それぞれ、ワイヤ26a〜26dと同様の張力調整部材30が設置されている。
【0048】
なお、図6の燃料電池は、図6の側面において左右対称の構成となっており、エンドプレート16b側にも、2つの固定部224a、224b及びそれに固定される2本のワイヤ226a、226bが追加された構造となっている。また、図6の側面に対向する側面も同様の構成となっている。このように、補強部材であるワイヤの本数を増加させることで、燃料電池の強度をより大きくすることができ、あるいは、角材18a、18bの更なる小型化を図ることができる。
【0049】
また、実施の形態においては、エンドプレート16a、16b又は角材18a、18bの同一の固定部に、それぞれ複数のワイヤが固定される場合について説明した。しかし、この発明において、固定部が支持するワイヤの数は、1以上であればその数を限定されるものでない。
【0050】
例えば、図7に示される例では、エンドプレート16a、16bそれぞれには、2箇所ずつ固定部322a、332bが設置されている。また、同様に、角材18a、18bのそれぞれには、2箇所ずつの固定部324a、324bが設置されている。ワイヤ26a〜26dは、それぞれ異なる固定部322a、322b、324a、324bによって固定される。具体的に例えば、ワイヤ26a、26bは、固定部322a、322bにおいてそれぞれエンドプレート16aに固定されている。また、ワイヤ26a、26cは、異なる2つの固定部324a、324bにおいて、それぞれ角材18aに固定されている。
【0051】
なお、図7の燃料電池は、図7の側面において左右、上下に対称の構造となっており、各固定部に1本ずつのワイヤが固定されている。また、図7の側面に対向する側面も同様の構成となっている。このように各ワイヤ26a〜26dを固定する固定部をそれぞれ別なものとすることで、固定部322a、322b、324a、324bの突出量をワイヤの太さ分小さくすることができ、燃料電池の更なる小型化を図ることができる。
【0052】
但し、このように異なる固定部を設ける場合にも、角材18a、18bそれぞれに対するワイヤの角度が大きくなることが望ましい。従って、例えば図7のようにワイヤ26a、26bを交差させない場合、角材18a、18bのそれぞれと各固定部322aとの積層方向に垂直な方向の距離を大きく取れるように、2つの固定部322aは共に、エンドプレート16aの中央部付近に設置することが望ましい。
【0053】
また、例えば、図8は、図6の構成において追加された4本のワイヤ226a、226bを支持するエンドプレート側の固定部を増加した例を示すものである。具体的に、図8の燃料電池において、エンドプレート16aには、固定部22a上下かつ固定部22aに近い位置に、2つの固定部422a、422bが設けられている。ワイヤ226a、226bの一端は、この固定部422a、442bにおいてエンドプレート16aにそれぞれ接続されている。なお、角材18a、18b側の固定箇所は図6と同様の固定部224a、224bである。
【0054】
また、この燃料電池も図8の側面において左右対称の構成となっており、エンドプレート16b側にも、固定部22bを挟んで配置された固定部422a、422bが設けられ、各固定部に1本ずつのワイヤ226a、226bが固定されている。また、図6の側面に対向する側面も同様の構成となっている。図8に示すような構成によれば、1つの固定部に支持されるワイヤの本数を少なくすることで固定部における支持強度を確保することができると共に、固定部22a、22bの突出をワイヤ2本分小さく抑えることができる。
【0055】
また、図5〜図8においてワイヤの配置構造の他の例を説明したが、この発明はこれらに限定されるものではなく、ワイヤによりエンドプレート16aと角材18a又は18bの間、エンドプレート16bと角材18a又は18bとの間が斜め方向に支持されるものであれば、他の配置を有するものであってもよい。従って、ワイヤの固定部の位置もこの実施の形態に説明したように、エンドプレート16a、16bの中央部や上下端部、角材18a、18bの中央部等に限定するものではない。但し、上記したように、エンドプレート16a又は16b側の固定部と、その固定部に固定されたワイヤの他端が接続される角材18a又は18bとの積層方向に垂直な方向の距離は大きく取ることが望ましい。
【0056】
また、この実施の形態では、スタックの対向する2側面に補強用のワイヤを配置する場合について説明した。しかし、この発明はこれに限るものではなく、例えば、エンドプレート16a、16bに垂直な4側面全てにおいて補強部材を配置するようにしたもの等であってもよい。
【0057】
また、この実施の形態において、張力調整機構は各ワイヤに連結された左右のボルト52、54とナット56とを有し、このボルト52、54のナット56への捩じ込み量によりワイヤの張力を調整する場合について説明した。このようにワイヤの長さを調整する張力調整機構により、ワイヤによる補強力を適宜調整することができる。しかし、この発明において張力調整機構はこのような構造に限るものではなく、各ワイヤの張力を調整できるものであれば、これに限るものではない。また、この発明においては、このような張力調整機構を有していないものであってもよい。
【0058】
また、この実施の形態では、エンドプレート16a、16bと角材18a、18bとを支持する補強部材を、ワイヤ26a〜26d等により構成する場合について説明した。しかし、この発明において補強部材は、これに限るものではなく、ワイヤに代えて、ピアノ線、高強度繊維等の線状部材を用いることができる。他の線状部材を用いる場合にも、その材料が絶縁体でない場合には絶縁体でコーティングするなどの処理をすることが望ましい。また、ワイヤの場合と同様に、その張力を調整する張力調整機構を設置することもできる。
【0059】
また、この発明は、このような線状部材を用いるものに限るものでもない。例えば、ワイヤ同様にエンドプレート16a又は16b、角材18a、18bに対して斜めの方向に配置された板により構成される補強プレートを用いたものであってもよい。この場合にも、角材18a、18bに生じる応力をプレートにより補強することができる。また補強プレートは薄いものでもよく、燃料電池の大型化を抑制しつつ、燃料電池の強度を確保することができる。
【0060】
また、以上の実施の形態において各要素の個数、数量、量、範囲等の数に言及した場合、特に明示した場合や原理的に明らかにその数に特定される場合を除いて、その言及した数に限定されるものではない。また、実施の形態において説明する構造は、特に明示した場合や明らかに原理的にそれに特定される場合を除いて、この発明に必ずしも必須のものではない。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】この発明の実施の形態における燃料電池の構成について説明するための模式図である。
【図2】この発明の実施の形態における燃料電池のセパレータと角材とについて説明するための模式図である。
【図3】この発明の実施の形態における固定部の構造について説明するための模式図である。
【図4】この発明の実施の形態における張力調整機構について説明するための模式図である。
【図5】この発明の実施の形態における燃料電池の他の例について説明するための図である。
【図6】この発明の実施の形態における燃料電池の他の例について説明するための図である。
【図7】この発明の実施の形態における燃料電池の他の例について説明するための図である。
【図8】この発明の実施の形態における燃料電池の他の例について説明するための図である。
【符号の説明】
【0062】
10 セル
16a、16b エンドプレート
18a、18b 角材
20a、20b 絶縁シート
22a、22b、322a、322b、422a、422b 固定部
24a、24b、224a、224b、324a、324b 固定部
26a〜26d、126a、126b、226a、226b ワイヤ
30、130、230 張力調整機構
44a、44b 切り欠き
52 左ボルト
54 右ボルト
56 ナット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質と、前記電解質の両側に配置された一対の電極とを含む発電部がセパレータを介して積層されたスタックと、
前記スタックの積層方向両側に、前記スタックを挟んで配置された第1エンドプレートと第2エンドプレートと、
前記第1エンドプレートと前記第2エンドプレートとを連絡し、前記第1エンドプレートと前記第2エンドプレートとを締結する第1締結部材と、
前記第1エンドプレート又は前記第2エンドプレートの少なくとも一箇所と、前記第1締結部材の少なくとも一箇所とを連絡し、前記第1エンドプレート又は前記第2エンドプレートと、前記第1締結部材とを、前記積層方向に対して斜めに締結する第2締結部材と、
を備えることを特徴とする燃料電池。
【請求項2】
前記第2締結部材は、線状部材であることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池。
【請求項3】
前記第2締結部材は、前記第2締結部材の張力を調整する調整手段を備えることを特徴とする請求項2に記載の燃料電池。
【請求項4】
前記第1締結部材は、前記スタックの四隅にそれぞれ配置された4本の締結部材を含み、
前記第2締結部材は、前記スタックの前記積層方向に平行な側面のうち、少なくとも対向する2側面に配置され、前記2側面のそれぞれの側面において、
前記第1エンドプレートと、前記4本の締結部材のうち該側面側に配置される2本の締結部材のそれぞれとに接続し、かつ、前記第2エンドプレートと、前記2本の締結部材のそれぞれとに接続することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載の燃料電池。
【請求項5】
前記第2締結部材は、前記2側面のそれぞれの側面において、
前記第1エンドプレートの該側面側の箇所と、前記2本の締結部材それぞれの該側面側の箇所と、にそれぞれ接続する2つの第1部材と、
前記第2エンドプレートの該側面側の箇所と、前記2本の締結部材それぞれの該側面側の箇所と、にそれぞれ接続する2つの第2部材と、
を備えることを特徴とする請求項4に記載の燃料電池。
【請求項6】
前記2つの第1部材のそれぞれは、前記第1エンドプレートの異なる箇所に接続され、
前記2つの第2部材のそれぞれは、前記第2エンドプレートの異なる箇所に接続されていることを特徴とする請求項5に記載の燃料電池。
【請求項7】
前記2つの第1部材は、該側面において互いに交差するように配置され、
前記2つの第2部材は、該側面において互いに交差するように配置されていることを特徴とする請求項6に記載の燃料電池。
【請求項8】
前記第2締結部材は、前記2側面のそれぞれの側面において、
前記第1エンドプレートの該側面側の箇所と、前記2本の締結部材それぞれの前記第1部材との接続箇所とは異なる箇所と、にそれぞれ接続する2つの第3部材と、
前記第2エンドプレートの該側面側の箇所と、前記2本の締結部材それぞれの前記第2部材との接続箇所とは異なる箇所と、にそれぞれ接続する2つの第4部材と、
を備えることを特徴とする請求項5から7のいずれか1項に記載の燃料電池。
【請求項9】
前記2つの第3部材のそれぞれは、前記第1エンドプレートの異なる箇所に接続され、
前記2つの第4部材のそれぞれは、前記第2エンドプレートの異なる箇所に接続されていることを特徴とする請求項8に記載の燃料電池。
【請求項10】
前記2本の締結部材のうち一方の締結部材において、前記2つの第1部材のうち一方の第1部材と、前記2つの第2部材のうち一方の第2部材とが接続する箇所は、同一箇所であり、
他方の締結部材において、他方の第1部材と、他方の第2部材とが接続する箇所は、同一箇所であることを特徴とする請求項5から9のいずれか1項に記載の燃料電池。
【請求項11】
前記2本の締結部材のうち一方の締結部材において、前記2つの第1部材のうち一方の第1部材と、前記2つの第2部材のうち一方の第2部材とが接続する箇所は、異なる箇所であり、
他方の締結部材において、他方の第1部材と他方の第2部材とが接続する箇所は、異なる箇所であることを特徴とする請求項5から9のいずれか1項に記載の燃料電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−3636(P2010−3636A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−163442(P2008−163442)
【出願日】平成20年6月23日(2008.6.23)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】