説明

燃料電池システム

【課題】燃料電池スタックから排出される気液混合流体を分離する分離部のタンク内の液体の量と温度を管理することを目的とする。
【解決手段】本発明による燃料電池システムは、燃料電池スタック1から排出される気液混合流体を分離する分離部10を有する。分離部10は分離された液体を貯留するタンクを含む。タンクの互いに対向する側面には一対の金属製の電極11が設けられている。電極11はタンク内の液体の量の測定に用いられるとともに、タンク内の液体の放熱を促進する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池システムに関し、特に燃料電池から排出される気液混合流体から液体を分離する分離部内の温度管理に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器のポータブル化、コードレス化が急速に進んでおり、これらの駆動用電源として、小型かつ軽量で、高エネルギー密度を有する二次電池への要望も高まっている。また、小型民生用途のみならず、電力貯蔵用や電気自動車用などの長期に渡る耐久性や安全性が要求される大型の二次電池に対する技術開発も加速してきている。さらに、充電の必要な二次電池よりも燃料供給によって長時間連続使用が可能な燃料電池が注目されている。
【0003】
燃料電池システムは、セルスタックを含む燃料電池スタックと、このセルスタックに燃料を供給する燃料供給部と、酸化剤を供給する酸化剤供給部とを有する。セルスタックはアノード電極とカソード電極とこれらの電極の間に介在する電解質膜とからなる膜電極接合体と、セパレータとを積層し、積層方向両端にエンドプレートを配して構成されている。
【0004】
このような燃料電池スタックとして直接メタノール型燃料電池(DMFC)が開発されている。DMFCでは燃料としてメタノール水溶液が用いられ、酸化剤として空気中の酸素が用いられる。したがってアノード電極からは反応生成物である二酸化炭素および燃料の残分である未反応メタノールや水が排出される。排出された水溶液は燃料供給部へ戻すのが一般的である。一方、カソード電極からは反応生成物の水や水蒸気と、カソード電極を経た窒素や未反応の酸素などが排出される。アノード電極の反応では水が消費されるため、カソード電極で生成した水を燃料供給部へ戻してもよい。このように燃料電池スタックから排出される液体成分を循環させることで燃料電池システムの可搬性が向上する。
【0005】
ここで、燃料電池スタックからの排出物は直接に燃料供給部へ戻すのではなく、気体成分と液体成分を分離した後、液体成分をタンクに貯留し、必要な量を燃料供給部へ供給する。したがって液体成分の貯留量を管理する必要がある。
【0006】
このように燃料電池スタックからの排出物用タンクの中の貯留量を検出するために、タンクに一対の電極を設け、この電極間の静電容量の変化から燃料の貯留量を検知する方法が提案されている(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】特開2007−220453号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら燃料電池スタックは高温で運転されるため、排出物の温度も高い。そのため上述のタンク内に貯留される液体成分の温度も上がる。それに伴いタンク内の蒸気圧が上がり、液体成分が蒸発する。その結果、燃料供給部へ循環させる液体成分が不足する場合がある。また反応熱を発生する燃料電池スタックを一定の温度で運転するためには、燃料供給部へ循環させる液体成分の温度をある程度低下させる必要がある。
【0008】
本発明は、これらの課題を解決し、タンク内の液体成分の貯留量を検知するとともにタンク内の液体成分を冷却することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明による燃料電池システムは、膜電極接合体を含む燃料電池スタックと、第1供給部と、第2供給部と、分離部と、一対の金属製の電極とを有する。膜電極接合体はアノード電極と、カソード電極と、アノード電極とカソード電極との間に介在する電解質膜とを積層して構成されている。第1供給部はアノード電極に燃料を供給する。第2供給部はカソード電極に酸化剤を含むガスを供給する。分離部は気液分離膜と、タンクとを有する。気液分離膜は、アノード電極で発生した反応生成物および燃料の残分と、カソード電極で発生した反応生成物およびカソード電極を経たガスとの少なくとも一方で構成された気液混合流体から液体を分離する。タンクは分離された液体を保持する。電極はタンクの互いに対向する側面に沿って設けられている。電極はタンク内の液体の量の測定に用いられるとともに、タンク内の液体の放熱を促進する。
【0010】
本発明の燃料電池システムでは、タンク内の液体の量の測定用の一対の電極を用いてタンク内の液体の放熱を促進することができる。そのためタンク内の液体からの蒸散を抑制できるとともに、燃料電池スタックへ再利用するために適切な温度に冷却することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、燃料電池スタックから排出された液体を貯留するタンクからの蒸散を抑制できるとともに、その液体を燃料電池スタックへ再利用するために適切な温度に冷却することができる。このように燃料供給側へ循環させる液体の貯留量と温度を管理することで燃料電池システムの可搬性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の第1の発明は、膜電極接合体を含む燃料電池スタックと、第1供給部と、第2供給部と、分離部と、一対の金属製の電極とを有する燃料電池システムである。膜電極接合体はアノード電極と、カソード電極と、アノード電極とカソード電極との間に介在する電解質膜とを積層して構成されている。第1供給部はアノード電極に燃料を供給する。第2供給部はカソード電極に酸化剤を含むガスを供給する。分離部は気液分離膜と、タンクとを有する。気液分離膜は、アノード電極で発生した反応生成物および燃料の残分と、カソード電極で発生した反応生成物およびカソード電極を経たガスとの少なくとも一方で構成された気液混合流体から液体を分離する。タンクは分離された液体を保持する。電極はタンクの互いに対向する側面に沿って設けられている。電極はタンク内の液体の量の測定に用いられるとともに、タンク内の液体の放熱を促進する。このようにタンク内の液体の量の測定用の一対の電極を用いてタンク内の液体の放熱を促進することができる。そのためタンク内の液体からの蒸散を抑制できるとともに、燃料電池スタックへ再利用するために適切な温度に冷却することができる。
【0013】
本発明の第2の発明は、第1の発明において、電極の表面積を、タンクの、電極が設けられた側面の投影面積よりも大きくした燃料電池システムである。電極の表面積を大きくすることによりタンク内の液体の放熱をさらに促進することができる。
【0014】
本発明の第3の発明は、第2の発明において、電極がフィンを有する燃料電池システムである。具体的にはフィンにより電極の表面積を大きくすることができる。
【0015】
本発明の第4の発明は、第3の発明において、フィンが少なくとも電極の下側に設けられている燃料電池システムである。タンクの下側には常に高温の液体が貯留している。そのためフィンを少なくとも電極の下側に設けることが好ましい。
【0016】
本発明の第5の発明は、第2の発明において、タンクの、電極が設けられた側面が凹凸形状を有し、電極がこの凹凸形状に沿って設けられている燃料電池システムである。具体的にはこのような凹凸形状によって電極の表面積を大きくすることができる。
【0017】
本発明の第6の発明は、第5の発明において、凹凸形状は少なくともタンクの下側に設けられている燃料電池システムである。タンクの下側には常に高温の液体が貯留している。そのため凹凸形状を少なくともタンクの下側に設けることが好ましい。
【0018】
本発明の第7の発明は、第5の発明において、タンクの、電極が設けられた側面は波状である燃料電池システムである。具体的には波状に側面を形成することによって電極の表面積を大きくすることができる。
【0019】
本発明の第8の発明は、第1の発明において、電極をタンクの側面の全面に設けた燃料電池システムである。このように電極を大きくすることで放熱を促進することができる。またタンクが傾いた場合でもタンク内の液体量を検出することができる。
【0020】
本発明の第9の発明は、第1の発明において、電極に接続され、タンク内の液体の量を測定する算出部をさらに有する燃料電池システムである。算出部でタンク内の液体の量を把握することにより、それを基にタンク内の液体の量を制御することが可能になる。
【0021】
本発明の第10の発明は、第1の発明において、電極を冷却する冷却部をさらに有する燃料電池システムである。積極的に冷却部により電極を冷却することでタンク内の液体からの放熱をさらに促進することができる。またその運転を制御することで必要な程度にタンク内の液体を冷却することができる。
【0022】
本発明の第11の発明は、第10の発明において、冷却部は電極に送風するファンを含む燃料電池システムである。具体的にはこのような簡便な構成でタンク内の液体を冷却することができる。
【0023】
以下、本発明の実施の形態について、直接メタノール型燃料電池(DMFC)を例に、図面を参照しながら説明する。なお、本発明は、本明細書に記載された基本的な特徴に基づく限り、以下に記載の内容に限定されるものではない。
【0024】
(実施の形態)
図1は、本発明の実施の形態における燃料電池システムの構成を示すブロック図である。図2は、本発明の実施の形態における燃料電池システムに用いる燃料電池スタックの要部の概略構成を示す概念断面図である。
【0025】
この燃料電池システムは、燃料電池スタック1と、燃料タンク4と、燃料ポンプ5と、空気ポンプ6と、制御部7と、蓄電部8と、DC/DCコンバータ9と、分離部10と、一対の電極11と、ファンを含む冷却部12とを有する。燃料電池スタック1は起電部である膜電極接合体(MEA)35を含み、発電された電力は正極端子2と負極端子3から出力される。出力された電力はDC/DCコンバータ9に入力される。燃料ポンプ5は燃料タンク4の中の燃料を燃料電池スタック1のアノード電極31に供給する。空気ポンプ6は酸化剤である酸素を含む空気を燃料電池スタック1のカソード電極32に供給する。制御部7は燃料ポンプ5と空気ポンプ6の駆動を制御するとともに、DC/DCコンバータ9を制御して外部への出力と蓄電部8への充放電を制御する。燃料タンク4と燃料ポンプ5と制御部7は、燃料電池スタック1内のアノード電極31に燃料を供給する第1供給部を構成している。一方、空気ポンプ6と制御部7は、燃料電池スタック1内のカソード電極32に酸化剤を含むガスを供給する第2供給部を構成している。なお、第1供給部、第2供給部は上述の構成に限定されない。
【0026】
図2に示すように、アノード電極31には燃料であるメタノール水溶液が供給され、カソード電極32には空気が供給される。MEA35は、アノード電極31と、カソード電極32と、アノード電極31とカソード電極32との間に介在する電解質膜33とを積層して構成されている。
【0027】
アノード電極31はセパレータ34の側から順に、拡散層31A、微多孔層(MPL)31B、触媒層31Cを積層して構成されている。カソード電極32もまた、セパレータ34の側から順に、拡散層32A、微多孔層(MPL)32B、触媒層32Cを積層して構成されている。正極端子2はカソード電極32に、負極端子3はアノード電極31に、それぞれ電気的に接続されている。拡散層31A、32Aは、例えばカーボンペーパー、カーボンフェルト、カーボンクロスなどからなる。MPL31B、32Bは、例えばポリテトラフルオロエチレンまたはテトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体とカーボンとから構成されている。触媒層31C、32Cは白金やルテニウムなど、各電極反応に適した触媒を炭素表面に高分散させ、この触媒体をバインダーで結着させることで形成されている。電解質膜33は水素イオンを透過するイオン交換膜、例えばパーフルオロスルホン酸・テトラフルオロエチレン共重合体で構成されている。
【0028】
次に、燃料電池スタック1における動作について簡単に説明する。図1、図2に示すように、アノード電極31にはメタノールを含む水溶液が燃料ポンプ5によって供給される。一方、カソード電極32には空気ポンプ6によって加圧された空気が供給される。アノード電極31に供給された燃料であるメタノール水溶液とこれに由来するメタノールと水蒸気は拡散層31AにてMPL31Bの全面に拡散する。これらはさらにMPL31Bを通過して触媒層31Cに達する。
【0029】
一方、カソード電極32に供給された空気に含まれる酸素は、拡散層32AにてMPL32Bの全面に拡散する。酸素はさらにMPL32Bを通過して触媒層32Cに達する。触媒層31Cに達したメタノールは(1)式のように反応し、触媒層32Cに達した酸素は(2)式のように反応する。
【0030】
【化1】

【0031】
【化2】

【0032】
その結果、電力が発生するとともに、アノード電極31側には二酸化炭素が、カソード電極32側には水が、それぞれ反応生成物として生成する。
【0033】
アノード電極31からは反応生成物である二酸化炭素および燃料の残分である未反応メタノールや水が排出される。排出された水溶液は、分離部10を介して燃料ポンプ5へ戻される。一方、カソード電極32からは反応生成物の水や水蒸気と、カソード電極32を経た窒素等の反応に関与しない気体や未反応の酸素などが排出される。
【0034】
アノード電極31の反応では水が消費されるため、カソード電極32で生成した水は、分離部10を介して燃料ポンプ5へ戻される。このように燃料電池スタック1から排出される液体成分を循環させることで燃料であるメタノール水溶液の濃度を調節することができる。その結果、外部から水を供給する必要がなくなるとともに、反応生成物の水を外部に排出する(廃棄する)必要がなくなる。したがって燃料電池システムの可搬性が向上する。
【0035】
次に図3を参照しながら図1に示す燃料電池システムにおける分離部10の構成を説明する。図3(a)は分離部10の斜視図、図3(b)は同縦断面図である。分離部10は気液分離膜20と、タンク21と、導入管22A、22Bと排出管22Cを有する。気液分離膜20はタンク21の上面に設けられている。導入管22A、22Bはタンク21の上部に、排出管22Cはタンク21の下部にそれぞれ接続されている。気液分離膜20は、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)やテトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)などのフッ素樹脂で作られた多孔質体のシートで構成することができる。またはこれらフッ素樹脂をコートしたカーボン繊維などで作られたクロス、ペーパーや不織布状のシートを用いることができる。タンク21は樹脂やセラミック等の絶縁材料で構成されている。
【0036】
アノード電極31で発生した反応生成物である二酸化炭素および燃料の残分である未反応メタノールを含む水は導入管22Aから分離部10へ流入する。一方、カソード電極32で発生した反応生成物である水や水蒸気およびカソード電極32を経たガスは導入管22Bから分離部10へ流入する。気液分離膜20は、これらで構成された気液混合流体から液体30である希薄なメタノール水溶液を分離する。分離された気体成分は気液分離膜20から外部へ排出される。一方、分離された液体30はタンク21内に一時貯留される。すなわちタンク21は分離された液体30を保持する。タンク21内に貯留された液体30は、図示しない弁を介して燃料ポンプ5の入口側へ送られる。制御部7はこの弁の開閉を制御して燃料であるメタノール水溶液の濃度を調節する。
【0037】
タンク21の互いに対向する側面には一対の金属製の電極11が設けられている。電極11は図1に示すように、制御部7内に設けられた算出部7Aに接続されている。算出部7Aは電極11間の静電容量の変化から液体30の貯留量を測定する。そのため、タンク21は、誘電率の小さい材料で構成することが好ましい。
【0038】
制御部7は液体30の貯留量に基づき、空気ポンプ6の流量などを制御する。これによりタンク21内の液体30の貯留量を所定の範囲に制御する。このように電極11はタンク21内の液体30の量の測定に用いられる。液体30の貯留量が過剰になると分離部10から漏水する。また液体30の貯留量が過少になると燃料濃度を調節することができなくなる。
【0039】
ここで、電極11間の静電容量の変化から液体30の貯留量を測定する方法について、図4、5を用いて説明する。図4は、図1に示す燃料電池システムにおける算出部7Aの構成の一例を示すブロック回路図、図5は、図4に示すブロック回路図における波形図である。
【0040】
パルス発生部41で発生された電気パルスは抵抗器43、44に入力される。抵抗器43、44のもう一端は排他的論理和ゲート45の入力端子に接続されている。一方の電極11は、グランドに接続され、もう一方の電極11は、抵抗器44と排他的論理和ゲート45の入力端子との間に接続されている。排他的論理和ゲート45の出力端子はパルス時間測定部42に接続されている。
【0041】
この構成において、図5に示すように、抵抗器43の出力である点Xにはパルス発生部41から入力されたパルス信号とほぼ同じタイミングの信号が出力される。一方、抵抗器44の出力である点Yには電極11間の静電容量によって波形が変形する。
【0042】
排他的論理和ゲート45の出力である点Zの出力には入力パルス1つに対し2つのパルスが出力される。すなわち、パルス発生部41から出力されたパルスに対して、立ち上がりと立ち下がりの両方のタイミングで電極11間の静電容量に比例した幅のパルスが発生する。これらのパルス幅をパルス時間測定部42が計測することで算出部7Aは電極11間の静電容量を推定する。さらに算出部7Aは推定した静電容量と、タンク21内の液体30の量との関係式を予め記憶している。この式により算出部7Aはタンク21内の液体30の量を算出する。
【0043】
なお点Xの出力は、排他的論理和ゲート45の入力容量と抵抗器43の時定数によりわずかに変形している。抵抗器44の出力にも同様の変形がおきる。したがってこの変形と電極11間の静電容量による変形との誤差分を打ち消すために、抵抗器43、44の抵抗値をできるだけ揃えることが好ましい。
【0044】
なお算出部7Aの構成は上記に限定されず、電極11間の静電容量を検出できれば他の構成でもよい。
【0045】
なお上記説明では算出部7Aがタンク21内の液体30の貯留量を測定しているが、貯留量を求めずに電極11間の静電容量を直接用いて制御部7が空気ポンプ6の流量などを制御してもよい。
【0046】
なお電極11はタンク21内の液体30の放熱を促進する機能も有する。そのためタンク21内の液体30からの蒸発を抑制できる。これにより燃料電池システムから過度に水分が外部に放出されることを抑制することができる。
【0047】
また燃料電池スタック1へ再利用するために液体30を適切な温度に冷却することができる。燃料電池スタック1は55℃〜80℃で運転するのが一般的である。また燃料電池スタック1は運転中に反応熱を発生する。そのため、熱収支のバランスを保つために、燃料や空気の温度は、例えば15℃〜40℃程度の範囲とすることが好ましい。電極11が液体30の放熱を促進することにより、液体30を循環させて燃料ポンプ5に戻した場合でも、燃料の温度を上述の範囲とすることができる。
【0048】
なお電極11は熱伝導率の観点から、銅またはその合金、アルミニウムまたはその合金で形成することが好ましい。これらの金属の板や箔をタンク21に結合させて用いることができる。あるいは蒸着等の方法で薄膜として形成してもよい。
【0049】
なお図3(a)に示すように、電極11をタンク21の側面の全面に設けることが好ましい。このように電極11を大きくすることで放熱を促進することができる。また電極11と液体30の表面とが垂直となるようにタンク21が傾いた場合でもタンク21内の液体30の量を検出することができる。
【0050】
次にタンクや電極の好ましい形状について図6〜図9を用いて説明する。図6は本発明の実施の形態における燃料電池システムに用いる他の電極を示す斜視図である。図7〜図9は本発明の実施の形態における燃料電池システムに用いる分離部の他のタンクを示す縦断面図である。
【0051】
図6に示す電極11Aは、表面にフィン40を有する。フィン40により電極11Aの表面積を大きくすることによりタンク21内の液体の放熱をさらに促進することができる。
【0052】
図7に示すタンク21Aの、電極が設けられる側面には凹凸形状50が設けられている。一対の電極11はタンク21Aの凹凸形状50に沿って設けられている。このようにタンク21Aの側面に凹凸形状50を設けても電極11の表面積を大きくすることによりタンク21A内の液体の放熱をさらに促進することができる。
【0053】
また図7に示す直線的な凹凸形状50の代わりに、図8に示すように、電極11を設ける側面を波状形状60にしてもよい。この構造でも、一対の電極11はタンク21Bの波状形状60に沿って設けられている。
【0054】
また図9に示す構造では、波状形状60がタンク21Cの下部にのみ設けられている。タンク21Cの下側には常に高温の液体が貯留している。そのため波状形状60を少なくともタンク21Cの下側に設けることが好ましい。このことは、図6に示す構造や図7に示す構造にも適用可能である。すなわち、フィン40や凹凸形状50は少なくともタンク21、21Aの下側、すなわち電極の下側に設けられていることが好ましい。
【0055】
以上のように、さまざまな形状によって電極の表面積を、タンクの、電極が設けられた側面の投影面積よりも大きくすることが好ましい。これらの構造によって電極の表面積を大きくすることによりタンク内の液体の放熱をさらに促進することができる。図7では、タンク21Aは階段状の凹凸形状50を側面に有し、図8では、タンク21Bは波状形状60を側面に有している。しかしながら側面の形状はこれらに限定されない。例えば蛇腹状でもよい。
【0056】
なお電極11を設ける側面同士の間隔、すなわち電極11同士の間隔はタンクの縦方向に一定であることが好ましい。これにより静電容量が液面高さに対し直線的に変化する。そのため算出部7Aは液面高さを比較的簡便に算出することができる。
【0057】
また図1に示すように、電極11を冷却する冷却部12をさらに有することが好ましい。積極的に冷却部12により電極11を冷却することでタンク内の液体からの放熱をさらに促進することができる。そして制御部7が冷却部12の運転を制御することで必要な程度にタンク内の液体を冷却することができる。この場合、タンクに温度センサを設けて制御部7に接続し、検知温度に基づいて冷却部12の運転強度を制御する。
【0058】
なお、このような冷却部12として、電極11に送風するファンを用いることができる。このような簡便な構成でタンク内の液体を冷却することができる。
【0059】
本実施の形態ではDMFCを例に説明したが、気液混合流体を排出する燃料電池であれば本発明の構成は適用可能である。例えば、水素を燃料とする、いわゆる高分子固体電解質燃料電池やメタノール改質型の燃料電池などにも適用できる。
【0060】
また分離部10はアノード電極31、カソード電極32からの排出物を受ける構成を説明したが、本発明はこの構成に限定されない。燃料や酸化剤を含むガスの内容や組合せ、あるいは燃料電池の種類などによりどちらか一方の排出物を受けるようにしてもよい。またそれぞれの排出物に対してそれぞれ分離部10を設けてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明の燃料電池システムは、燃料電池スタックから排出される気液混合流体を分離する分離部を有する。そして分離部のタンクの側面に一対の金属製の電極を設けている。この電極はタンク内の液体の量の測定に用いられるとともに、タンク内の液体の放熱を促進する。このように燃料供給側へ循環させる液体の貯留量と温度を管理することで燃料電池システムの可搬性が向上する。この燃料電池システムは、特に小型電子機器の電源として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の実施の形態における燃料電池システムの構成を示すブロック図
【図2】図1に示す燃料電池システムに用いる燃料電池スタックの要部の概略構成を示す概念断面図
【図3】(a)図1に示す燃料電池システムにおける分離部の斜視図、(b)同縦断面図
【図4】図1に示す燃料電池システムにおける算出部の構成を示すブロック回路図
【図5】図4に示すブロック回路図における波形図
【図6】本発明の実施の形態における燃料電池システムに用いる他の電極を示す斜視図
【図7】本発明の実施の形態における燃料電池システムに用いる分離部の他のタンクを示す縦断面図
【図8】本発明の実施の形態における燃料電池システムに用いる分離部の他のタンクを示す縦断面図
【図9】本発明の実施の形態における燃料電池システムに用いる分離部の他のタンクを示す縦断面図
【符号の説明】
【0063】
1 燃料電池スタック
2 正極端子
3 負極端子
4 燃料タンク
5 燃料ポンプ
6 空気ポンプ
7 制御部
7A 算出部
8 蓄電部
9 DC/DCコンバータ
10 分離部
11,11A 電極
12 冷却部
20 気液分離膜
21,21A,21B,21C タンク
22A,22B 導入管
22C 排出管
30 液体
31 アノード電極
31A,32A 拡散層
31B,32B 微多孔層(MPL)
31C,32C 触媒層
32 カソード電極
33 電解質膜
34 セパレータ
35 膜電極接合体(MEA)
40 フィン
41 パルス発生部
42 パルス時間測定部
43,44 抵抗器
45 排他的論理和ゲート
50 凹凸形状
60 波状形状

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アノード電極と、カソード電極と、前記アノード電極と前記カソード電極との間に介在する電解質膜とを積層した膜電極接合体を含む燃料電池スタックと、
前記アノード電極に燃料を供給する第1供給部と、
前記カソード電極に酸化剤を含むガスを供給する第2供給部と、
前記アノード電極で発生した反応生成物および前記燃料の残分と、前記カソード電極で発生した反応生成物および前記カソード電極を経た前記ガスとの少なくとも一方で構成された気液混合流体から液体を分離する気液分離膜と、分離された前記液体を保持するタンクと、を有する分離部と、
前記タンクの互いに対向する側面に沿って設けられ、前記タンク内の前記液体の量の測定に用いられるとともに、前記タンク内の前記液体の放熱を促進する一対の金属製の電極と、を備えたことを特徴とする燃料電池システム。
【請求項2】
前記電極の表面積は、前記タンクの、前記電極が設けられた側面の投影面積よりも大きい請求項1記載の燃料電池システム。
【請求項3】
前記電極はフィンを有する請求項2記載の燃料電池システム。
【請求項4】
前記フィンは少なくとも前記電極の下側に設けられている請求項3記載の燃料電池システム。
【請求項5】
前記タンクの、前記電極が設けられた側面が凹凸形状を有し、前記電極は前記凹凸形状に沿って設けられている請求項2記載の燃料電池システム。
【請求項6】
前記凹凸形状は少なくとも前記タンクの下側に設けられている請求項5記載の燃料電池システム。
【請求項7】
前記タンクの、前記電極が設けられた側面は波状である請求項5記載の燃料電池システム。
【請求項8】
前記電極は前記タンクの側面の全面に設けられている請求項1記載の燃料電池システム。
【請求項9】
前記電極に接続され、前記タンク内の前記液体の量を測定する算出部をさらに備えた請求項1記載の燃料電池システム。
【請求項10】
前記電極を冷却する冷却部をさらに備えた請求項1記載の燃料電池システム。
【請求項11】
前記冷却部は前記電極に送風するファンを含む請求項10記載の燃料電池システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−67487(P2010−67487A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−233203(P2008−233203)
【出願日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】