説明

燃料電池システム

本発明は燃料電池システムの燃料電池スタック(10)に係り、それが作動を終了すると、周囲に対して密閉的に遮断され、それによって有限量の空気中酸素のみが燃料電池内にとどまり、その結果燃料電池が過度に老化することが阻止される。本発明に基づき、燃料電池スタック(10)の端板(14)又は分配板に、あるいはその中に配置される遮断手段(26、28;32、34)が用意される。そのため遮断手段(26、28;32、34)は、熱的に端板(14)と連結され、周囲温度が低い場合に氷結してもよい。遮断手段(26、28;32、34)は好ましい一実施形態においてエラストマー体(32、34)を含み、このエラストマー体は板(14)内のチャネル(44、46)を開放、及び閉じることができる。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前段に従った燃料電池システム、つまりそれ自体周知の方法で燃料電池スタックを含み、スタック(カソード側)に空気が空気供給管経由で供給され、排気が空気排出管から排出される燃料電池システムに関する。空気供給管および空気排出管の開始点は、スタックを燃料電池から遮断する端板、又はこれも燃料電池スタックの中央に配置されている分配板であってよい。全体の空気循環は通常、燃料電池スタックに(空気中)酸素が最適に供給され、それによってそこで水素と酸素との反応が最適に進行するように設計されている。燃料電池は敏感なコンポーネントである。非作動中は、空気中酸素が悪影響を及ぼす場合があり、特に燃料電池の早期老化を引き起こしてその耐用年数が短縮される。
【背景技術】
【0002】
燃料電池スタックが非作動中の場合にそれを密閉して常に新鮮な空気中酸素が燃料電池に入り込むことができないようにすることは容易に検討できる。しかし、これまでそのような密閉は実現されてこなかった。特許文献1では、単に燃料電池スタックの片側だけに備えられたバルブが記述されているが、それは燃料電池スタック作動中の酸素量を調整する役割を果たすものである。空気が入らないよう燃料電池スタックを密閉するため、単純に燃料電池スタックの外側、つまり空気供給管および空気排出管の中に遮断手段を備えることができる。遮断手段が、例えばエアフラップとして非常に簡単に形成された場合、周囲温度が低温の場合にフラップが凍結する危険があり、その結果燃料電池システムを簡単には作動させることができなくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】独国特許出願公開第102004057140A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、請求項1の前段に従った燃料電池システムを、上述の短所が生じることなく燃料電池の寿命が可能な限り長くなるようにさらに開発することである。
【0005】
この課題は、請求項1に従った特徴を備えた燃料電池システムによって解決される。本発明に基づき、空気供給管を通る空気の供給を阻止するための遮断手段および空気排出管を通る空気の動き(特にこの空気排出管を通る空気の供給、つまり従来の空気の動きと反対方向)を阻止するための遮断手段を提供する。これらの遮断手段は、空気供給管又は空気排出管と接続された端板又は分配板に、あるいはその中に、すなわち、別々の板に、あるいは両方同じ板に、(直接)配置されている。
【0006】
この特徴は、遮断手段が各板に接触するか又は一体化されていることを意味している。それによって遮断手段は熱的に燃料電池スタックに連結され、燃料電池システムが作動を終了した後、最も長く温かい状態に保たれ、その結果、周囲温度が低すぎる場合に凍結する可能性のある水分が遮断手段へ結露することが防止される。
【0007】
特に、遮断手段が各板と接触する本実施形態では、燃料電池スタックと遮断手段との間の熱エネルギー交換の促進のために、遮断手段と燃料電池スタックを共に1つの絶縁筐体に収容するとよい(いわゆる「スタックボックス」)。遮断手段は、簡単な空気フラップとして形成されてよい。しかし、かかる実施形態では、特に良好な密閉が与えられる形態も考えられる。
【0008】
これは例えば、端板又は分配板内に第1のチャネルが形成されると可能になる。このチャネルでは空気供給管用接続部がスタック側の吸気口(貫通孔に向かっている、いわゆる「スタックポート」)と接続されている。ここで同じ端板又は分配板または別の板内に第2のチャネルが形成され、このチャネルではスタック側の排気口(別の貫通孔、つまり別の「スタックポート」)が空気排出管用接続部と接続され、遮断手段は従って簡単に各チャネル内に用意することができる。遮断手段をチャネル内に設けることで、特に容易に気密度を保証することができる。例えば伸縮体を含んでいる遮断手段を使用することができる(好ましくはエラストマー体)。伸縮体は燃料電池の作動時にチャネルを開放し、作動の終了時には伸縮体がチャネル壁に密着してチャネルが完全にふさがれるように伸びる。
【0009】
伸縮体の伸長状態は、ピストンによって決めることができ(ピストンに油圧油などの液体を伸縮体から吸引する、又は伸縮体に圧入することによって)、このピストンは好ましくは、例えば空気供給管を通って供給される空気によって力を受けることで、自動的に操作される。空気が供給されなくなると、つまり燃料電池システムの作動が終了すると、遮断手段が自動的に遮断し、燃料電池システムと周囲空気とのつながりが阻止され、それによって絶えず新鮮な空気中酸素が燃料電池に入り込むことができなくなる。
【0010】
本発明の利点は、燃料電池スタックを外気から遮断するための有用なシステムを基本的に実現することと並んで、遮断手段が燃料電池に非常に近接して配置されており、その結果遮断される容積合計が特に小さいという事実がある。燃料電池スタックは、作動終了後にまだ、空気中酸素と水素の間で剰余反応が行われるため、可能な限り多くの、および可能な限り全体の、燃料電池スタック内にある空気中酸素が消費され、その結果燃料電池は可能な限り少ない酸素にさらされ、老化を可能な限り小さくすることができる。取り囲まれた容積は、遮断手段がスタックポート(スタック側の吸気口/排気口)に近く配置されていればいるほど小さくなる。このスタックポートはチャネル内に伸縮体を備えた実施形態にも有用に作用する。
【0011】
以下では、本発明の好ましい実施形態が図に基づいて説明される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に基づく燃料電池システムの第1の実施形態の側面図である。
【図2】本発明に基づく燃料電池システムの第2の実施形態の側面図である。
【図3】図2の燃料電池システムの作動中の平面図である。
【図4】図2の燃料電池システムの作動終了後の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図2に示された、本発明の第1の実施形態では、燃料電池システムは従来の方法で形成された燃料電池スタック10を含む。この燃料電池スタックは、一方の側がグリップユニット12によって保持され、もう一方の側は端板14によって密閉されている。端板14は、空気供給管16と連結され、供給された空気はいわゆるスタックポート18を通って個々の燃料電池に導かれる。スタックポート18は単なる貫通孔である。供給された空気は燃料電池内で矢印20に従い、スタックポート18とまったく同じに形成された第2のスタックポート22へと動き、空気排出管24へ導かれる。本発明に基づき、ここで空気供給管16と端板14との間で、遮断手段として遮断フラップ26が閉じられる。まったく同じように、スタックポート22と空気排出管の間で、遮断手段として遮断フラップ28が端板14のところで閉じられる。遮断フラップ26と28は、両方とも端板14と接触しており、そのために熱的に燃料電池スタックと連結されている。燃料電池システムの作動が終了した後、遮断フラップ26と28が閉じられ、それによって管16および24を通って燃料電池にまったく酸素が供給され得なくなる。燃料電池スタックは、作動を終了すると徐々に冷えていき、遮断フラップ26と28が端板14と接触しているという事実から、これらフラップは燃料電池スタックと一様に温度が下がる。そのためこれらフラップは周囲温度が低い場合に水が凍結すると好ましい箇所ではない。このような凍結は、遮断フラップ26と28が端板14と接触していないと仮定した場合に、つまりパイプ管を使って端板14と接続していると仮定した場合に起こり得る。かかるパイプ管を省略したことによっても、遮断フラップ26および28が閉じ込める容積は特に小さくなり、その結果燃料電池スタックが遮断後に接触する酸素は特に少ない。熱的な連結は、図1に従った実施形態の場合、燃料電池スタック10および遮断フラップ26と28が、燃料電池スタック10から遮断フラップ26と28への熱エネルギー交換を促進する共通の筐体30に囲まれることによって強化される。
【0014】
図1に従った実施形態では、遮断手段つまり遮断フラップ26と28は、燃料電池スタック10の外側に配置されている。
【0015】
そこで、遮断手段を燃料電池スタック10内に統合すること、つまり特にその端板14内に統合することが可能である。この実施形態は図2の側面図、および図3および図4の平面図に示されている。エラストマー体32と34はここで遮断手段として作用する。これらは端板14内に形成されたチャネルを開放および封鎖する。かかるチャネルを目的にかなうように案内することができるよう、管16と24は図1に従った実施形態に比べるとオフセットされており、その結果スタックポート18と22へと非直線的に続く。これは特に図3および図4の平面図でよくわかる。ここでは接続部36が管16のために、また接続部38が管24のために円で示されている。スタックポート18への吸気口40およびスタックポート22からの排気口42は、四角形で示されている。接続部36からスタックポートの吸気口40へはチャネル44が、およびスタックポートの排気口42から接続部38へは第2のチャネル46が通じている。チャネル44内には、エラストマー体32が、チャネル46にはエラストマー体34が割り当てられている。エラストマー体32と34は、流体リザーバ48から流体、好ましくは液体が、バネ52によって作用を受けるピストン50の動作によって充填される。接続部36からチャネル54がピストン50の内部作用面56へ通じている。燃料電池システムが作動されると、図示していない空気圧縮機を介して空気が空気供給管に常に供給され、この空気がバネ52の力に反して面56を押し、ピストンが矢印58によって示された方向に押され、体32と34内の流体が吸い取られ、又は維持されて、遮断体32と34およびチャネル44と46が開放される。したがって空気は自由に循環する(矢印60と62参照)。燃料電池システムの作動が終了すると、空気圧縮機がオフにされ、圧のかかった空気が供給されなくなる。従ってピストン50の面56へかかる力が弱まり、ピストン50がバネ52の力によって図4に示された位置まで動き、その際に流体を遮断体32と34の中に圧入する。遮断体は伸縮性、つまり弾性があるので、チャネル44と46の、供給側64と66に向かい合っている壁68又は70に当たり、これを密閉する。これによって燃料電池スタック10は周囲空気から密閉される。燃料電池スタック内の空気中にある残りの酸素の少なくとも一部は、さらなる反応で消費される。チャネル44と46の密閉により、新しい空気中酸素はもはや燃料電池スタック内に入ってくることができず、それによって燃料電池の早期の老化が防止される。
【0016】
上述の実施形態は、それぞれ2つの遮断手段が端板14に、あるいはその中に配置されている。本発明の本質は、そもそも遮断手段がそれぞれ端板または分配板に配置されていることである。従って、遮断手段を直接第1の板(端板又は分配板)に、あるいはその中に配置し、他方の遮断手段を直接第2の板(端板又は分配板)に、あるいはその中に配置することも可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池スタック(10)を有する燃料電池システムであって、前記燃料電池スタックの燃料電池が端板(14)又は分配板を介して空気供給管(16)と接続され、および端板(14)又は分配板を介して空気排出管(24)と接続されている燃料電池システムにおいて、該空気供給管(16)を通る空気の供給を遮断するための遮断手段(26、28;32、34)および該空気排出管(24)を通る空気の動きを遮断するための遮断手段(28、34)により特徴付けられ、各遮断手段(26、28;32、34)が、該空気供給管(16)に接続される該端板(14)若しくは分配板に若しくはその中に、又は該空気排出管(24)に接続される該端板(14)若しくは分配板に若しくはその中に直接配置される燃料電池システム。
【請求項2】
前記遮断手段(26、28)および前記燃料電池スタック(10)が共に1つの絶縁筐体(30)に収容されていることを特徴とする、請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項3】
端板(14)又は分配板内に第1のチャネル(44)が形成され、このチャネルが空気供給管(16)用接続部(36)を前記スタック側の吸気口(40)と接続し、そして同じ端板又は分配板または別の端板又は分配板内に第2のチャネル(46)が形成され、このチャネルが前記スタック側の排気口(42)を空気排出管(24)用接続部(38)と接続し、そして前記遮断手段(32、34)が各チャネル(44、46)内に用意されていることを特徴とする、請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項4】
前記遮断手段が、伸縮体(32、34)、好ましくはエラストマーを含んでいることを特徴とする、請求項3に記載の燃料電池システム。
【請求項5】
前記伸縮体(32、34)の伸長状態がピストン(50)よって決められるものであり、前記ピストンは前記空気供給管(16)を通って供給される空気によって力を受け、好ましくはバネ(52)の力に反して動作することを特徴とする、請求項4に記載の燃料電池システム。
【請求項6】
2つの遮断手段(26、28,32、34)が同じ端板(14)若しくは分配板に又はその中に配置されていることを特徴とする、請求項1から5の一つに記載の燃料電池システム。
【請求項7】
請求項1から6の一つに記載の燃料電池システムを搭載した自動車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2011−505673(P2011−505673A)
【公表日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−536345(P2010−536345)
【出願日】平成20年11月12日(2008.11.12)
【国際出願番号】PCT/EP2008/009532
【国際公開番号】WO2009/071166
【国際公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【出願人】(598051819)ダイムラー・アクチェンゲゼルシャフト (1,147)
【氏名又は名称原語表記】Daimler AG
【住所又は居所原語表記】Mercedesstrasse 137,70327 Stuttgart,Deutschland
【Fターム(参考)】