説明

燃料電池システム

【課題】省スペース化および小型軽量化を図るとともに、燃料電池の性能(エネルギー効率など)の向上を図ることができる燃料電池システムを提供すること。
【解決手段】燃料電池システム2が、液体燃料が供給および排出される燃料電池3と、液体燃料を、燃料電池3に供給および排出する燃料給排部4と、燃料給排部4に備えられ、燃料電池3に供給される液体燃料を霧化する霧化器5と、燃料電池3の発電量に応じて、霧化器5を制御する制御部6とを備え、制御部6は、相対的に発電量が低いときに、霧化器5を作動させ、相対的に発電量が高いときに、霧化器5を停止させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池システム、詳しくは、液体燃料が供給される燃料電池を備える燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液体燃料を使用する燃料電池システムとして、例えば、直接メタノール形燃料電池、直接ジメチルエーテル形燃料電池、ヒドラジン形燃料電池などを備えた燃料電池システムが知られている。
【0003】
液体燃料形燃料電池は、水素ガスを生成するための改質器を必要としないので、システムとしての構造の簡略化が期待されている。
【0004】
液体燃料形燃料電池が備えられる燃料電池システムは、液体燃料が供給され、その液体燃料と接触して発電する単位セルを複数備える燃料電池と、燃料電池に液体燃料を供給するための燃料供給ポンプと、燃料電池に空気を供給するためのエアコンプレッサとを備えている。
【0005】
このようなシステムでは、燃料電池のアノードに液体燃料が供給されるとともに、燃料電池のカソードに空気が供給されることによって、電気化学反応が生じ、起電力が発生する。例えば、直接メタノール形燃料電池では、下記式(1)および(2)の通りとなる。
【0006】
(1)CHOH+6OH→CO+5HO+6e (アノードでの反応)
(2)O+HO+4e→4OH (カソードでの反応)
しかし、このような燃料電池システムでは、液体燃料の流路において、燃料電池(単位セル)に給排される液体燃料中などに、電流が生じるため、液体燃料の給排に伴って、系外に漏電電流を生じ、燃料電池の性能(エネルギー効率など)が低下するという不具合がある。
【0007】
とりわけ、単位セル数が増加すると、各単位セル間において、漏電電流が生じ、より一層、燃料電池の性能(エネルギー効率など)が低下するという不具合がある。
【0008】
一方、このような燃料電池は、発電時において液体燃料中に気泡を生じることが知られている。液体燃料中に気泡が生じれば、液体燃料の通電抵抗が増加するため、漏電電流を抑制することができる。しかし、このような燃料電池において、発電量が相対的に低い場合には、各単位セルにおける電圧が相対的に高く、気泡の発生が少ないため、漏電電流を抑制することができず、やはり、燃料電池の性能(エネルギー効率など)が低下するという不具合がある。
【0009】
このような不具合を解決するため、例えば、横方向の長さが縦方向の長さよりも大きい、すなわち、横長の開口部が縦方向に並列に複数形成されたフレーム枠と、それら開口部に備えられるとともに両面に電極が配置される双極板とを備え、フレーム枠に、横長の開口部の上辺および下辺において、横方向に連続する溝を設けたレドックスフロー電池用セルフレームを備えたレドックスフロー電池が、提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0010】
このようなレドックスフロー電池では、そのレドックスフロー電池用セルフレームに、開口部の横方向に沿って連続する溝、すなわち、横長の溝が形成され、その溝に電解液が流れる。つまり、このようなレドックスフロー電池では、電解液の流路が細長く形成されているので、通電抵抗が増加されており、これによって、流路における漏電電流が抑制され、燃料電池の性能(エネルギー効率など)の向上が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2004−335158号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかるに、このような燃料電池システムでは、上記したように、液体燃料の流路が細長く形成されるため、燃料電池システムが大型化するという不具合がある。
【0013】
とりわけ、このような燃料電池システムを、車両などの制限されたスペースに配置する場合には、燃料電池システムを大型化することができず、液体燃料の流路を細長くできないため、燃料電池の性能(エネルギー効率など)の向上を図ることができないという不具合がある。
【0014】
本発明の目的は、省スペース化および小型軽量化を図るとともに、燃料電池の性能(エネルギー効率など)の向上を図ることができる燃料電池システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために、本発明の燃料電池システムは、液体燃料が供給および排出される燃料電池と、前記液体燃料を、前記燃料電池に供給および排出する燃料給排部と、前記燃料給排部に備えられ、前記燃料電池に供給される前記液体燃料を霧化する霧化手段と、前記燃料電池の発電量に応じて、前記霧化手段を制御する制御部とを備え、前記制御部は、相対的に発電量が低いときに、前記霧化手段を作動させ、相対的に発電量が高いときに、前記霧化手段を停止させることを特徴としている。
【0016】
このような燃料電池システムによれば、燃料電池の発電量が相対的に低いときに、液体燃料が霧化され、燃料電池に供給される。
【0017】
霧化された液体燃料を燃料電池に供給すると、流路における液体燃料の密度を低減できるため、流路を細長くすることなく、液体燃料の通電抵抗を増加させることができ、その結果、流路における漏電電流を抑制し、燃料電池の性能(エネルギー効率など)の向上を図ることができる。
【0018】
また、燃料電池の発電量が相対的に低いときには、燃料電池の電圧が相対的に高く、液体燃料中に生じる気泡が少ないので、通常、多くの漏電電流を生じるが、このような燃料電池システムによれば、液体燃料が霧化されているので、漏電電流を抑制し、燃料電池の性能(エネルギー効率など)の向上を図ることができる。
【0019】
一方、液体燃料が霧化されていると、液体燃料の供給量に劣り、燃料電池が高電流を発電することができない場合があるが、この燃料電池システムでは、燃料電池の発電量が相対的に高いときには、液体燃料が霧化されることなく、燃料電池に供給されるので、液体燃料の供給量を十分に確保することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の燃料電池システムによれば、燃料電池の発電量が相対的に低いときには、霧化された液体燃料が燃料電池に供給され、流路における液体燃料の密度が低減される。
【0021】
そのため、燃料電池の発電量が相対的に低いときには、流路を細長くすることなく、液体燃料の通電抵抗を増加させることができ、流路における漏電電流を抑制し、燃料電池の性能(エネルギー効率など)の向上を図ることができる。
【0022】
また、このような燃料電池システムによれば、燃料電池の発電量が相対的に低いとき、すなわち、液体燃料中に生じる気泡が少ない場合にも、漏電電流を抑制し、燃料電池の性能(エネルギー効率など)の向上を図ることができる。
【0023】
一方、燃料電池の発電量が相対的に高いときには、液体燃料が霧化されることなく、燃料電池に供給される。
【0024】
そのため、燃料電池の発電量が相対的に高いときには、流路における液体燃料の密度が低減されないので、その高電流を発電するために十分な量の液体燃料を供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施形態に係る燃料電池システムを搭載した電動車両の概略構成図である。
【図2】図1のコントロールユニットにおいて実行される制御処理を表わすフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
1.燃料電池システムの全体構成
図1は、本発明の一実施形態に係る燃料電池システムを搭載した電動車両の概略構成図である。
【0027】
図1において、電動車両1は、燃料電池およびバッテリを選択的に動力源とするハイブリッド車両であって、燃料電池システムとしての、燃料電池システム2を搭載している。
【0028】
燃料電池システム2は、燃料電池3と、燃料給排部4と、図示しない空気給排部と、制御部6と、動力部7とを備えている。
(1)燃料電池
燃料電池3は、液体燃料が直接供給および排出される、例えば、アニオン交換型燃料電池またはカチオン交換型燃料電池であって、電動車両1の中央下側に配置されている。
【0029】
燃料電池3に供給され、また、燃料電池3から排出される液体燃料としては、例えば、メタノール、ジメチルエーテル、ヒドラジン(例えば、無水ヒドラジンや、ヒドラジン1水和物などの水加ヒドラジンなどを含む)などが挙げられる。
【0030】
また、燃料電池3の出力電圧は、例えば、0.2〜1.5Vであり、出力電流は、例えば、10〜400Aである。なお、これら出力は、単位セル28(後述)1つあたりの出力である。
【0031】
燃料電池3は、電解質層8と、電解質層8の一方側に配置されたアノード9と、電解質層8の他方側に配置されたカソード10とを有する単位セル28(燃料電池セル)が、セパレータ(図示せず)を介して複数積層されたスタック構造に形成されている。つまり、電解質層8を介してアノード9およびカソード10が対向配置されてなる単位セル28が複数積層されている。なお、図1では、積層される複数の単位セル28のうち、電動車両1の前後方向最前端に配置される単位セル28だけを拡大して表わし、その他の単位セル28については簡略化して記載している。
【0032】
電解質層8は、例えば、アニオン成分またはカチオン成分が移動可能な層であり、アニオン交換膜またはカチオン交換膜を用いて形成されている。
【0033】
アノード9は、燃料側電極としてのアノード電極11と、アノード電極11に液体燃料(供給液)を供給するための燃料供給部材12とを有している。
【0034】
アノード電極11は、電解質層8の一方面に形成されている。アノード電極11の電極材料としては、例えば、触媒が担持された多孔質担体(触媒担持多孔質担体)などが挙げられる。
【0035】
燃料供給部材12は、セパレータとしても兼用され、ガス不透過性の導電性部材からなる。燃料供給部材12には、その表面から凹む葛折状の溝が形成されている。そして、燃料供給部材12は、溝の形成された表面がアノード電極11に対向接触されている。これにより、アノード電極11の一方面と燃料供給部材12の他方面(溝の形成された表面)との間には、アノード電極11全体に液体燃料(供給液)を接触させるための燃料供給路13が形成される。
【0036】
燃料供給路13には、液体燃料(供給液)をアノード9内に流入させるための燃料供給口15が一端側(下側)に形成され、液体燃料(排出液)をアノード9から排出するための燃料排出口14が他端側(上側)に形成されている。
【0037】
カソード10は、酸素側電極としてのカソード電極16と、カソード電極16に空気(酸素)を供給するための空気供給部材17とを有している。
【0038】
カソード電極16は、電解質層8の他方面に形成されている。
【0039】
カソード電極16の電極材料としては、例えば、アノード電極11の電極材料として例示した、触媒担持多孔質担体などが挙げられる。
【0040】
空気供給部材17は、セパレータとしても兼用され、ガス不透過性の導電性部材からなる。空気供給部材17には、その表面から凹む葛折状の溝が形成されている。そして、空気供給部材17は、溝の形成された表面がカソード電極16に対向接触されている。これにより、カソード電極16の他方面と空気供給部材17の一方面(溝の形成された表面)との間には、カソード電極16全体に空気を接触させるための空気供給路18が形成される。
【0041】
空気供給路18には、空気をカソード10内に流入させるための空気供給口19が他端側(上側)に形成され、空気をカソード10から排出するための空気排出口20が一端側(下側)に形成されている。
【0042】
また、このような燃料電池3において、複数の単位セル28をそれぞれ区分する1つのセパレータは、上記燃料供給部材12および上記空気供給部材17を兼ね備える。換言すると、セパレータは、その一方側面において、燃料供給部材12として作用するとともに、他方側面において、空気供給部材17として作用する。
(2)燃料給排部
燃料給排部4は、液体燃料を燃料電池3に供給および排出するために設けられており、液体燃料を貯蔵するための燃料タンク21と、燃料タンク21から供給される液体燃料をアノード9に供給するとともに、燃料電池3(具体的には、アノード9の燃料供給路13)から排出される液体燃料を燃料電池3(アノード9の燃料供給路13)に還流するための循環管22とを備えている。
【0043】
燃料タンク21は、燃料電池3よりも後方、電動車両1の後側に配置されている。燃料タンク21には、上記した液体燃料、具体的には、例えば、メタノール、ジメチルエーテル、ヒドラジンなどが貯蔵されている。
【0044】
循環管22は、その一端側(下側)がシール材(ガスケットなど)を介して燃料供給口15に接続され、他端側(上側)がシール材(ガスケットなど)を介して燃料排出口14に接続されている。これにより、燃料電池3と燃料給排部4との間には、燃料排出口14(上側)から排出される液体燃料が、循環管22を介して燃料供給口15(下側)へ流れ、燃料供給路13を介して再び燃料排出口14に戻ることによりアノード9を循環するクローズドライン(閉流路)が形成される。
【0045】
循環管22の途中には、気液分離器23が介在されている。気液分離器23は、例えば、中空の容器からなり、その下部底壁には、気液分離器23の下部の内外を流通させる底部流通口24が1つ形成されている。
【0046】
また、気液分離器23の中部側壁には、気液分離器23の中部の内外を流通させる側部流通口32が2つ形成されている。なお、以下において、2つの側部流通口32を区別する必要がある場合には、上流側の側部流通口32を上流側側部流通口32aとし、下流側の側部流通口32を下流側側部流通口32bとする。
【0047】
また、気液分離器23の上部上壁には、気液分離器23の上部内外を流通させる上部流通口25が1つ形成されている。
【0048】
気液分離器23は、燃料電池3よりも電動車両1の前後方向後方、かつ、電動車両1の上下方向上方において、上流側側部流通口32aおよび底部流通口24が循環管22に接続されることにより、循環管22に介装されている。
【0049】
底部流通口24および上流側側部流通口32aと、循環管22とは、シール材(ガスケットなど)を介して接続されている。これにより、気液分離器23の中空部分が、クローズドラインの一部を形成している。
【0050】
上部流通口25には、気液分離器23で分離されたガス(気体)を排出するためのガス排出管26が接続されている。ガス排出管26は、シール材(ガスケット)を介して上部流通口25に接続されている。また、ガス排出管26の途中には、ガス排出弁27が設けられている。
【0051】
ガス排出弁27は、ガス排出管26を開放して気液分離器23内の圧力を開放するための弁であって、例えば、電磁弁など、公知の開閉弁が用いられる。ガス排出弁27は、コントロールユニット42(後述)に電気的に接続されている(図1の破線参照)。これにより、コントロールユニット42(後述)からの制御信号がガス排出弁27に入力され、コントロールユニット42(後述)が、ガス排出弁27の開閉を制御する。
【0052】
循環管22において、気液分離器23と燃料供給口15との間には、第1弁31が介在されている。
【0053】
第1弁31は、循環管22を開閉するための弁であって、例えば、電磁弁など、公知の開閉弁が用いられる。また、第1弁31は、コントロールユニット42(後述)に電気的に接続されている(図1の破線参照)。これにより、コントロールユニット42(後述)からの制御信号が、第1弁31に入力され、コントロールユニット42(後述)が、第1弁31の開閉を制御する。
【0054】
循環管22において、第1弁31の下流側、具体的には、第1弁31と燃料電池3との間には、燃料循環ポンプ29が介在されている。
【0055】
燃料循環ポンプ29としては、例えば、ロータリーポンプ、ギヤポンプなどの回転式ポンプ、ピストンポンプ、ダイヤフラムポンプなどの往復式ポンプなど、公知の送液ポンプが用いられる。燃料循環ポンプ29は、コントロールユニット42(後述)に電気的に接続されている(図1の破線参照)。これにより、コントロールユニット42(後述)からの制御信号が、燃料循環ポンプ29に入力され、コントロールユニット42(後述)が、燃料循環ポンプ29の駆動および停止を制御する。
【0056】
そして、燃料給排部4の循環管22において、燃料循環ポンプ29と燃料供給口15との間には、燃料電池3に供給される液体燃料を霧化する霧化手段としての霧化器5が、介在されている。
【0057】
霧化器5としては、例えば、超音波霧化装置、噴霧装置など、公知の霧化装置が用いられ、好ましくは、超音波霧化装置が用いられる。霧化器5は、コントロールユニット42(後述)に電気的に接続されている(図1の破線参照)。これにより、コントロールユニット42(後述)からの制御信号が、霧化器5に入力され、コントロールユニット42(後述)が、霧化器5を制御する。
【0058】
また、このような燃料給排部4は、気液分離器23の下流側に、さらに、副循環管33を備えている。
【0059】
副循環管33は、その上流側端部が、シール材(ガスケットなど)を介して、気液分離器23の下流側側部流通口32bに接続されるとともに、下流側端部が、シール材(ガスケットなど)を介して、循環管22における第1弁31と燃料循環ポンプ29との間に接続されている。これにより、気液分離器23と霧化器5との間には、バイパスラインが形成される。
【0060】
また、副循環管33には、第2弁34が介在されている。
【0061】
第2弁34は、副循環管33を開閉するための弁であって、例えば、電磁弁など、公知の開閉弁が用いられる。また、第2弁34は、コントロールユニット42(後述)に電気的に接続されている(図1の破線参照)。これにより、コントロールユニット42(後述)からの制御信号が、第2弁34に入力され、コントロールユニット42(後述)が、第2弁34の開閉を制御する。
【0062】
さらに、循環管22において、燃料循環ポンプ29と霧化器5との間には、燃料タンク21に貯蔵された液体燃料を循環管22へ供給するための燃料供給管30が接続されている。つまり、燃料供給管30の上流側端部は、燃料タンク21と、シール材(ガスケットなど)を介して接続され、燃料供給管30の下流側端部は、循環管22の流れ方向途中と、シール材(ガスケットなど)を介して接続されている。
【0063】
燃料供給管30の流れ方向途中には、燃料供給ポンプ41が介在されている。
【0064】
燃料供給ポンプ41としては、例えば、ロータリーポンプ、ギヤポンプなどの回転式ポンプ、ピストンポンプ、ダイヤフラムポンプなどの往復式ポンプなど、公知の送液ポンプが用いられる。燃料供給ポンプ41は、コントロールユニット42(後述)に電気的に接続されている(図1の破線参照)。これにより、コントロールユニット42(後述)からの制御信号が、燃料供給ポンプ41に入力され、コントロールユニット42(後述)が、燃料供給ポンプ41の駆動および停止を制御する。
【0065】
燃料供給管30において燃料供給ポンプ41の下流側には、燃料供給弁35が設けられている。
【0066】
燃料供給弁35は、燃料供給管30を開閉するための弁であって、例えば、電磁弁など、公知の開閉弁が用いられる。また、燃料供給弁35は、コントロールユニット42(後述)に電気的に接続されている(図1の破線参照)。これにより、コントロールユニット42(後述)からの制御信号が、燃料供給弁35に入力され、コントロールユニット42(後述)が、燃料供給弁35の開閉を制御する。
(3)空気給排部
空気給排部は、詳しくは図示しないが、燃料電池システム2に採用される公知の構成でよく、具体的には、空気をカソード10に供給するための空気供給管(図示せず)と、カソード10から排出される空気を外部に排出するための空気排出管(図示せず)とを備えている。
【0067】
空気供給管(図示せず)は、その一端側(上流側)が大気中に開放され、他端側(下流側)が空気供給口19に接続されている。空気供給管(図示せず)の途中には、エアコンプレッサなどの公知の空気供給ポンプ(図示せず)が介在されており、また、その下流側には、空気供給弁(図示せず)が設けられている。
【0068】
これら空気供給ポンプ(図示せず)および空気供給弁(図示せず)は、それぞれ、コントロールユニット42(後述)に電気的に接続されており、コントロールユニット42(後述)からの制御信号が、空気供給ポンプ(図示せず)および空気供給弁(図示せず)に入力され、コントロールユニット42(後述)が、空気供給ポンプ(図示せず)の駆動および停止を制御、および、空気供給弁(図示せず)の開閉を制御する。
【0069】
空気排出管(図示せず)は、その一端側(上流側)が空気排出口20に接続され、他端側(下流側)がドレンとされる。
(4)制御部
制御部6は、コントロールユニット42を備えている。
【0070】
コントロールユニット42は、電動車両1における電気的な制御を実行するユニット(例えば、ECU:Electronic Control Unit)であり、CPU、ROMおよびRAMなどを備えるマイクロコンピュータから構成されている。
【0071】
制御部6では、詳しくは後述するが、相対的に燃料電池3の発電量が低いときに、霧化器5を作動させ、相対的に燃料電池3の発電量が高いときに、霧化器5を停止させる。
【0072】
さらに、制御部6では、例えば、燃料循環ポンプ29、燃料供給ポンプ41、空気供給ポンプ(図示せず)などの駆動および停止や、第1弁31、第2弁34、燃料供給弁35の開閉などを、適宜制御する。
(5)動力部
動力部7は、燃料電池3から出力される電気エネルギを電動車両1の駆動力として機械エネルギに変換するためのモータ37と、モータ37に電気的に接続されるインバータ38と、モータ37による回生エネルギを蓄電するための動力用バッテリ40と、DC/DCコンバータ36とを備えている。
【0073】
モータ37は、燃料電池3よりも前方、電動車両1の前側に配置されている。モータ37としては、例えば、三相誘導電動機、三相同期電動機など、公知の三相電動機が挙げられる。
【0074】
インバータ38は、モータ37と燃料電池3との間に配置されている。インバータ38は、燃料電池3で発電された直流電力を交流電力に変換する装置であって、例えば、公知のインバータ回路が組み込まれた電力変換装置が挙げられる。また、インバータ38は、配線により、燃料電池3およびモータ37にそれぞれ電気的に接続されている。
【0075】
動力用バッテリ40としては、例えば、定格電圧が100V程度のニッケル水素電池や、リチウムイオン電池など、公知の二次電池が挙げられる。また、動力用バッテリ40は、インバータ38と燃料電池3との間の配線に接続され、これにより、燃料電池3からの電力を蓄電可能、かつ、モータ37に電力を供給可能とされている。
【0076】
DC/DCコンバータ36は、動力用バッテリ40と燃料電池3との間に配置されている。DC/DCコンバータ36は、燃料電池3の出力電圧を昇降圧する機能を有し、燃料電池3の電力および動力用バッテリ40の入出力電力を調整する機能を有している。
【0077】
また、DC/DCコンバータ36は、配線により、燃料電池3および動力用バッテリ40にそれぞれ電気的に接続されているとともに、配線の分岐により、インバータ38に電気的に接続されている。
【0078】
これにより、DC/DCコンバータ36からモータ37への電力は、インバータ38において直流電力から三相交流電力に変換され、三相交流電力としてモータ37に供給される。
2.燃料電池システムによる発電
上記した燃料電池システム2では、コントロールユニット42の制御により、燃料供給弁35が開かれ、第1弁31または第2弁34が選択的に開かれ、燃料循環ポンプ29および燃料供給ポンプ41が駆動されることにより、液体燃料が燃料供給管30および循環管22を介してアノード9に供給される。
【0079】
このとき、詳しくは後述するように、コントロールユニット42の制御により、相対的に燃料電池3の発電量が低いときには、霧化器5が作動され、液体燃料が霧化され、これにより霧化された霧状の液体燃料が、アノード9に供給される。一方、相対的に燃料電池3の発電量が高いときには、霧化器5が停止され、液体燃料は霧化されることなく、アノード9に供給される。
【0080】
また、その一方、空気供給弁(図示せず)が開かれ、空気供給ポンプ(図示せず)が駆動されることにより、空気が空気供給管(図示せず)を介してカソード10に供給される。なお、燃料供給弁35は、液体燃料が所定量供給された後に閉じられる。
【0081】
アノード9では、霧状または非霧状の液体燃料が、アノード電極11と接触しながら燃料供給路13を通過する。一方、カソード10では、空気が、カソード電極16と接触しながら空気供給路18を通過する。
【0082】
そして、各電極(アノード電極11およびカソード電極16)において電気化学反応が生じ、起電力が発生する。例えば、液体燃料がメタノールである場合には、下記式(1)〜(3)の通りとなる。
(1)CHOH+6OH→CO+5HO+6e(アノード電極11での反応)
(2)O+2HO+4e→4OH (カソード電極16での反応)
(3)CHOH+3/2O→CO+2HO (燃料電池3全体での反応)
すなわち、メタノールが供給されたアノード電極11では、メタノール(CHOH)とカソード電極16での反応で生成した水酸化物イオン(OH)とが反応して、二酸化炭素(CO)および水(HO)が生成するとともに、電子(e)が発生する(上記式(1)参照)。
【0083】
アノード電極11で発生した電子(e)は、図示しない外部回路を経由してカソード電極16に到達する。つまり、この外部回路を通過する電子(e)が、電流となる。
【0084】
一方、カソード電極16では、電子(e)と、外部からの供給もしくは燃料電池3での反応で生成した水(HO)と、空気供給路18を流れる空気中の酸素(O)とが反応して、水酸化物イオン(OH)が生成する(上記式(2)参照)。
【0085】
そして、生成した水酸化物イオン(OH)が、電解質層8を通過してアノード電極11に到達し、上記と同様の反応(上記式(1)参照)が生じる。
【0086】
また、例えば、液体燃料がヒドラジンである場合には、下記式(4)〜(6)の通りとなる。
(4)N+4OH→N+4HO+4e (アノード電極11での反応)
(5)O+2HO+4e→4OH (カソード電極16での反応)
(6)N+O→N+2HO (燃料電池3全体での反応)
このようなアノード電極11およびカソード電極16での電気化学的反応が連続的に生じることによって、燃料電池3全体として、上記式(3)または上記式(6)で表わされる反応が生じて、燃料電池3に起電力が発生する。
【0087】
そして、発生した起電力が、配線を介して、DC/DCコンバータ36に送電され、動力部7では、インバータ38およびモータ37、および/または、動力用バッテリ40に送電される。そして、モータ37では、インバータ38により三相交流電力に変換された電気エネルギが電動車両1の車輪を駆動させる機械エネルギに変換される。一方、動力用バッテリ40では、その電力が充電される。
【0088】
また、燃料給排部4では、燃料循環ポンプ29および燃料供給ポンプ41の駆動力により、アノード9から排出される使用後および未反応の液体燃料が、循環管22を通過して上流側側部流通口32aから気液分離器23に流入する。
【0089】
気液分離器23では、水位(非霧状の液体燃料の水位)が上部流通口25および下流側側部流通口32bよりも下方位置に保持される、液体燃料の液溜まり39が、気液分離器23の中空部分に生じるとともに、液溜まり39に含まれるガス(気体)、および、霧状の液体燃料が、液溜まり39の上方空間へ分離される。
【0090】
このとき、気液分離器23に流入する液体燃料が霧状である場合には、その液体燃料は、下流側側部流通口32bから、副循環管33に流出する。副循環管33に流出する液体燃料は、循環管22に流入し、再び燃料供給口15から燃料供給路13に流入する。
【0091】
その一方で、気液分離器23に流入する液体燃料が霧状でない場合には、その液体燃料(液溜まり39の一部)が、底部流通口24から循環管22に流出する。循環管22に流出する液体燃料は、再び燃料供給口15から燃料供給路13に流入する。
【0092】
このようにして、霧状および非霧状の液体燃料が、クローズドラインおよびバイパスライン(副循環管33、循環管22、気液分離器23および燃料供給路13)を循環する。なお、気液分離器23で分離された気体は、ガス排出弁27が開かれることにより、ガス排出管26を介して外部へ排出される。
【0093】
以下において、このような霧状および非霧状の液体燃料を循環させる制御モードについて、詳細に説明する。
3.液体燃料循環制御モードによる制御処理
図2は、図1のコントロールユニット42において実行される制御処理を表わすフロー図である。
【0094】
この処理は、燃料電池3の運転開始をトリガーとしてスタートされる。処理がスタートされると、まず、霧化器5が作動され、第1弁31が閉鎖されるとともに、第2弁34が開放される(ステップS1)。
【0095】
これにより、液体燃料が、燃料供給管30および循環管22を介して、霧化器5に供給されるとともに、霧化器5において霧化され、得られた霧状の液体燃料が、アノード9に供給される。一方、上記したように、空気が空気供給管(図示せず)を介してカソード10に供給される。これにより、燃料電池3において、起電力が発生する。
【0096】
次いで、コントロールユニット42では、燃料電池3における発電量を算出する(ステップS2)。
【0097】
次いで、コントロールユニット42では、ステップS2において算出された燃料電池3の発電量が、相対的に低いか、または、相対的に高いかが判別される(ステップS3)。
【0098】
具体的には、コントロールユニット42では、燃料電池3の発電量、より具体的には、電流密度が所定量(例えば、0.3A/cm)を超過するかが検出される。
【0099】
そして、燃料電池3の電流密度が所定量(例えば、0.3A/cm)を超過しないことが検出される場合(ステップS3のNO)、すなわち、相対的に燃料電池3の発電量が低いときには、ステップS1に戻る。つまり、コントロールユニット42により霧化器5が作動され、また、第2弁34が開放されるとともに、第1弁31が閉鎖された状態において、燃料電池3の運転が継続される。
【0100】
このとき、アノード9から霧状の液体燃料が排出され、その霧状の液体燃料が、気液分離器23に流入するとともに、下流側側部流通口32bから副循環管33に流入し、循環管22を介して、再度、アノード9に供給される。また、燃料供給管30から追加して供給される液体燃料は、霧化器5により霧化されて、アノード9に供給される。
【0101】
一方、燃料電池3の電流密度が所定量(例えば、0.3A/cm)を超過することが検出される場合(ステップS3のYES)、すなわち、相対的に燃料電池3の発電量が高いときには、コントロールユニット42により霧化器5が停止され、第1弁31が開放されるとともに、第2弁34が閉鎖される(ステップS4)。
【0102】
このとき、気液分離器23内の非霧状の液体燃料(液溜まり39の一部)が、底部流通口24から循環管22に流出する。循環管22に流出する液体燃料は、霧化器5により霧化されることなく、アノード9に供給され、また、アノード9から気液分離器23に排出される。また、燃料供給管30から追加して供給される液体燃料は、霧化器5により霧化されることなく、非霧状として、アノード9に供給される。
【0103】
その後は、上記と同様の制御処理が、燃料電池3の定常運転中に連続的に実行される。
4.作用効果
上記のような燃料電池システム2によれば、燃料電池の発電量が相対的に低いときには、霧化された液体燃料が燃料電池3に供給され、流路(具体的には、循環管22および副循環管33)における液体燃料の密度が低減される。
【0104】
そのため、燃料電池3の発電量が相対的に低いときには、流路を細長くすることなく、液体燃料の通電抵抗を増加させることができ、流路(具体的には、循環管22および副循環管33)における漏電電流を抑制し、燃料電池3の性能(エネルギー効率など)の向上を図ることができる。
【0105】
また、このような燃料電池システム2によれば、燃料電池3の発電量が相対的に低いとき、すなわち、液体燃料中に生じる気泡が少ない場合にも、漏電電流を抑制し、燃料電池3の性能(エネルギー効率など)の向上を図ることができる。
【0106】
一方、燃料電池3の発電量が相対的に高いときには、液体燃料が霧化されることなく、燃料電池3に供給される。
【0107】
そのため、燃料電池3の発電量が相対的に高いときには、流路(具体的には、循環管22)における液体燃料の密度が低減されないので、その高電流を発電するために十分な量の液体燃料を供給することができる。
【0108】
なお、上記した説明では、燃料電池3の発電量が相対的に低いか、または、相対的に高いかをコントロールユニット42により判別したが、判別方法としては、これに限定されず、例えば、燃料電池3の運転時間や、燃料循環ポンプ29および燃料供給ポンプ41の回転数など、種々の要素から燃料電池3の発電量が相対的に低いか、または、相対的に高いかを推定および判別することもできる。
【符号の説明】
【0109】
1 電動車両
2 燃料電池システム
3 燃料電池
4 燃料給排部
5 霧化器
6 制御部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体燃料が供給および排出される燃料電池と、
前記液体燃料を、前記燃料電池に供給および排出する燃料給排部と、
前記燃料給排部に備えられ、前記燃料電池に供給される前記液体燃料を霧化する霧化手段と、
前記燃料電池の発電量に応じて、前記霧化手段を制御する制御部と
を備え、
前記制御部は、
相対的に発電量が低いときに、前記霧化手段を作動させ、
相対的に発電量が高いときに、前記霧化手段を停止させること
を特徴とする、燃料電池システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−178260(P2012−178260A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−40201(P2011−40201)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【Fターム(参考)】