説明

燃料電池セルスタック及びそれを含む燃料電池

【課題】燃料電池セル体の任意の並列及び直列接続を容易に構成することができる燃料電池セルスタック及びそれを含む燃料電池を提供する。
【解決手段】本発明は、燃料電池に使用される燃料電池セルスタック、及び、それを含む燃料電池に関する。本発明による燃料電池セルスタック(4)は、互いに長手方向(A)に対する横方向に整列した複数の管状の燃料電池セル体(6〜10)と、燃料電池セル体(6〜10)の両端部(6a,6b)が固定される電気絶縁性の支持板(12,14)を有する。燃料電池セル体(6〜10)の各々は、内側の電極層(16)と、外側の電極層(20)と、電解質層(18)とを有し、一方の端部(6a)に、内側の電極層(16)が露出した内側電極露出周面(16a)を有する。更に、隣接した燃料電池セル体(6〜10)を任意組合せで電気的に接続するために、各支持板(12,14)に設けられた接続部(5)を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体酸化物形の燃料電池(SOFC)に使用される燃料電池セルスタック、及び、それを含む燃料電池に関し、更に詳細には、管状の燃料電池セルを有する燃料電池セルスタック、及び、それを含む燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、管状の燃料電池セルを有する燃料電池セルスタックが知られている(例えば、特許文献1及び2参照)。まず、図14〜図16を参照して、特許文献1に記載された従来の燃料電池のセルスタックの一例を説明する。図14は、従来の燃料電池セルスタックの概略的な斜視図であり、図15は、従来の別の燃料電池セルスタックの概略的な斜視図であり、図16は、従来の燃料電池セルスタック組立体の斜視図である。
【0003】
図14に示すように、特許文献1に記載された燃料電池セルスタック100は、複数の円筒形の燃料電池セル102を互いに横方向に並べて、その両端部を金属板104で支持した構造を有している。この燃料電池セルスタック100は、燃料電池セル102が電気的に並列に接続されている。
【0004】
また、図15に示すように、特許文献1に記載された別の燃料電池セルスタック110は、燃料電池セル112を長手方向に連結し且つ電気的に直列に接続した燃料電池セル体114を有している。
【0005】
また、図16に示すように、特許文献1に記載された燃料電池セルスタック組立体120は、燃料電池セル122を電気的に直列に接続するために、複数の燃料電池セルスタック124を長手方向に連結した部分126と、燃料電池セルスタック124を横方向に且つ長手方向逆向きに配置して両者を金属板128で連結した部分130と、を有している。
【0006】
また、特許文献2には、中空六角形状の燃料電池セルが記載され、この燃料電池セルの内側の電極は、端部において長手方向に露出している。
【0007】
【特許文献1】特開2002−289249号公報(図5、図6及び図7)
【特許文献2】特開平5−101842号公報(図1及び図6)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
燃料電池セル単体で発生させることができる電圧は、その寸法にかかわらず一定である。従って、高い電圧を得るためには、燃料電池セルを電気的に直列に接続する必要がある。一方、大きい電流を得るためには、例えば、燃料電池セルを電気的に並列に接続する必要がある。直列又は並列に接続する燃料電池セルの数は、用途に応じて異なっている。
【0009】
上述した特許文献1に記載された燃料電池セルスタック100、110、124は、電気的に並列に接続した複数の燃料電池セル102、112、122を1つの単位として構成している。従って、燃料電池セル102、112、122の電気的な並列接続及び直列接続を構成する場合、燃料電池全体の構成が、電気的に並列に接続される燃料電池セル102、112、122の本数に制限される。即ち、燃料電池セル102、112、122を電気的に直列に接続する場合、複数の燃料電池セル112を電気的に直列に接続したものを更に電気的に並列に接続して燃料電池セルスタック110にするか(図15参照)、燃料電池セルスタック100、110、124を電気的に直列に接続することになる(図16参照)。このような構成は、電気的に並列に接続される燃料電池セルの本数が多い大型の燃料電池に向いているが、小型の燃料電池には向いていない。
【0010】
そこで、本発明は、燃料電池セル体の任意の電気的な並列接続及び直列接続を容易に構成することができる燃料電池セルスタック及びそれを含む燃料電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明による燃料電池セルスタックは、燃料電池に使用される燃料電池セルスタックであって、互いに長手方向に対する横方向に整列した複数の管状の燃料電池セル体と、燃料電池セル体の両端部がそれぞれ固定される電気絶縁性の支持板と、を有し、燃料電池セル体の各々は、管状の外側の電極層と、管状の内側の電極層と、これらの電極層の間に配置された管状の電解質層と、を有すると共に、その一方の端部に、内側の電極層が電解質層及び外側の電極層に対して露出した内側電極露出周面を有し、燃料電池セル体の各々は、更に、その一方の端部の外周面に、内側電極露出周面を介して内側の電極層と電気的に通じる内側電極外周面を有し、その他方の端部の外周面に、外側の電極層と電気的に通じる外側電極外周面を有し、更に、隣接した燃料電池セル体の内側電極外周面及び外側電極外周面を任意の組合せで電気的に接続するために、各支持板に設けられた接続部を有することを特徴としている。
【0012】
このように構成された本発明による燃料電池セルスタックによれば、支持板が電気絶縁性であるので、隣接した燃料電池セル体の内側電極外周面同士、又は、外側電極外周面同士を電気的に接続することにより、燃料電池セル体を電気的に並列に接続することができる。また、隣接した燃料電池セル体の内側電極外周面と外側電極外周面とを電気的に接続すれば、燃料電池セル体を電気的に直列に接続することができる。従って、支持板間の距離を一定にしたまま、任意の燃料電池セル体の並列接続及び直列接続を実現することができる。
【0013】
また、燃料電池セル体の外周面である内側電極外周面を介して内側の電極層の電気を取出すことにより、外側の電極層の電気の取出しとの共通化を図ることができ、燃料電池セル体の電気的な並列接続及び直列接続が容易になる。
【0014】
上記燃料電池セルスタックの実施形態において、好ましくは、接続部は、燃料電池セル体の端部と支持板との間を互いにシールし且つ固定する導電性のシール材を有する。
【0015】
このように構成された燃料電池セルスタックでは、支持板の両側の間のガスシールは、支持板とシール材とによって達成される。また、内側の電極層に発生した電気は、燃料電池セルの外周面に露出した内側電極外周面から、また、外側の電極層に発生した電気は、外側電極外周面からシール材を介して取出される。
【0016】
この実施形態では、シール材は、燃料電池セル体と支持板とを固定する機能と、燃料電池セル体の内側の電極及び外側の電極から電気を取出す機能とを有している。従って、電気的な直列接続においても並列接続においても、燃料電池セルスタックの構造が簡単になり、その製造を容易にすることができる。また導電性のシール材は、各電極外周面に対する密着性がよいため、界面における接触抵抗が小さくなり、電気的な直列接続においても並列接続においても、発電性能および信頼性に優れた燃料電池セルスタックを得ることができる。
【0017】
また、上記燃料電池セルスタックの実施形態において、好ましくは、複数の燃料電池セル体の少なくとも一部分が電気的に直列に接続される。
【0018】
また、上記燃料電池セルスタックの実施形態において、好ましくは、燃料電池セル体は、1本の燃料電池セルからなり、又は、長手方向に連結され且つ電気的に直列に接続された複数の燃料電池セルを有する。
【0019】
また、上記燃料電池セルスタックの実施形態において、内側電極外周面は、内側電極露出周面によって構成されてもよいし、その外側に設けられた内側電極集電層によって構成されてもよい。また、外側電極外周面は、外側の電極層によって構成されてもよいし、外側の電極層の外側に設けられた外側電極集電層によって構成されてもよい。
【0020】
また、上記目的を達成するために、本発明による燃料電池は、上述した燃料電池セルスタックを含む。
【発明の効果】
【0021】
以上説明した通り、本発明による燃料電池セルスタック及びそれを含む燃料電池によれば、燃料電池セル体の任意の電気的な並列接続及び直列接続を容易に構成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明による燃料電池の実施形態を詳細に説明する。
【0023】
最初、図1〜図3を参照して、本発明による燃料電池の第1の実施形態を説明する。図1は、本発明の第1の実施形態の燃料電池の概略的な平面図である。図2は、燃料電池セルの一方の端部の拡大図であり、図3は、燃料電池セルの他方の端部の拡大図である。
【0024】
図1に示すように、本発明の第1の実施形態である燃料電池1は、ケース2と、その中に配置された本発明による燃料電池セルスタック4とを有している。
【0025】
燃料電池セルスタック4は、外周面を有し且つ互いに長手方向Aに対する横方向に並べられた5本の管状の燃料電池セル体と、燃料電池セル体の端部が貫通し且つ固定される第1の支持板12及び第2の支持板14と、燃料電池セル体を電気的に接続する接続部15とを有している。本実施形態では、5本の燃料電池セル体はそれぞれ、1本の燃料電池セル6、7、8、9、10からなり、燃料電池セル6〜10は、円筒形である。以下、図1の最も左端の燃料電池セル6に着目して説明する。
【0026】
燃料電池セル6は、円筒形の内側の電極層16と、円筒形の外側の電極層20と、これらの電極層16、20の間に配置された円筒形の電解質層18と、を有している。また、燃料電池セル6の一方の端部6aに、内側の電極層16が電解質層18及び外側の電極層20に対して露出した内側電極露出周面16aと、電解質層18が外側の電極層20に対して露出した電解質露出周面18aとが設けられ、内側電極露出周面16a及び電解質露出周面18aは、燃料電池セル6の外周面を構成している。燃料電池セル6の他方の端部6bを含む残部の外周面は、外側の電極層20が露出した外側電極露出周面20aによって構成されている。本実施形態では、内側電極露出周面16aは、内側の電極層16と電気的に通じる内側電極外周面21でもあり、外側電極露出周面20aは、外側の電極層20と電気的に通じる外側電極外周面22でもある。
【0027】
内側の電極層16は、例えば、Niと、CaやY、Sc等の希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたジルコニアとの混合体、Niと、希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたセリアとの混合体、Niと、Sr、Mg、Co、Fe、Cuから選ばれる少なくとも一種をドープしたランタンガレートとの混合体、の少なくとも一種から形成される。電解質層18は、例えば、Y、Sc等の希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたジルコニア、希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたセリア、Sr、Mgから選ばれる少なくとも一種をドープしたランタンガレート、の少なくとも一種から形成される。外側の電極層20は、例えば、Sr、Caから選ばれる少なくとも一種をドープしたランタンマンガナイト、Sr、Co、Ni、Cuから選ばれる少なくとも一種をドープしたランタンフェライト、Sr、Fe、Ni、Cuから選ばれる少なくとも一種をドープしたサマリウムコバルト、銀、などの少なくとも一種から形成される。この場合、内側の電極層16が燃料極になり、外側の電極層20が空気極になる。内側の電極層16の厚さは、例えば、1mmであり、電解質層18の厚さは、例えば、30μmであり、外側の電極層20の厚さは、例えば、30μmである。
【0028】
第1の支持板12及び第2の支持板14は、電気絶縁性であり、燃料電池セル6が貫通する孔22を有し、ケース2に密封式に取付けられている。それにより、ケース2は、燃料電池セル6の長手方向A両側に配置され、且つ、内側の電極層16と作用するガスが流れる第1の部屋24及び第2の部屋25と、燃料電池セル6の長手方向A中央部に配置され、且つ、外側の電極層20と作用するガスが流れる第3の部屋26とに仕切られている。第1の部屋24は、ガスの流入ポート28aを有し、第2の部屋25は、ガスの流出ポート28bを有している。第3の部屋26は、ガスの流入ポート30a及び流出ポート30bを有している。支持板12、14は、例えば、耐熱性のセラミックスで形成されている。具体的には、アルミナ、ジルコニア、スピネル、フォルステライト、マグネシア、チタニアなどを用いることが好ましい。なお、支持板12、14の材質は、その熱膨張係数が燃料電池スタックを構成する各部材の熱膨張係数と近似した材質がより好ましい。また、内側の電極層16と作用するガスは、例えば、水素や、炭化水素燃料を改質した改質ガスであり、外側の電極層20と作用するガスは、例えば、空気である。
【0029】
燃料電池セル6の一方の端部6aと、第1の支持板12とは、導電性の第1のシール材32によって互いにシールされ且つ固定されている。この第1のシール材32は、後述するように、接続部15の一部としても機能する。
【0030】
図2に示すように、内側電極露出周面16a及び電解質露出周面18aは、燃料電池セル6の全周にわたって延び、互いに長手方向Aに隣接している。また、内側電極露出周面16aは、燃料電池セル6の先端部6cに位置しており、その一部分が第1の支持板12から突出している。内側電極露出周面16aと電解質露出周面18aとの間の境界34は、第1の支持板12の内部にあり、電解質露出周面18aと外側電極露出周面20aとの間の境界36は、第3の部屋26に位置している。第1のシール材32は、内側の電極層16と作用するガスの領域、即ち、第2の部屋25と外側の電極層20と作用するガスの領域、即ち、第3の部屋26とを仕切るように設けられている。
【0031】
接続部15の一部としても機能する第1のシール材32は、内側電極露出周面16a及び電解質露出周面18aに跨がって全周にわたって延び、電解質露出周面18aを介して外側の電極層20と間隔をおいている。また、電解質露出周面18aは、内側電極露出周面16aに向かって薄肉となるテーパ部18bを有している。第1のシール材32は、例えば、銀、銀とガラスの混合物、銀、金、ニッケル、銅、チタンなどを含む各種ロウ材である。
【0032】
また、燃料電池セルの他方の端部6bと第2の支持板14とは、導電性の第2シール材38によって互いにシールされ且つ固定されている。この第2のシール材32は、後述するように、接続部15の一部としても機能する。
【0033】
図3に示すように、第2のシール材38は、内側の電極層16と作用するガスの領域、即ち第1の部屋24と、外側の電極層20と作用するガスの領域、即ち第3の部屋26とをほぼ仕切るように設けられている。詳細には、外側の電極層20の端面20bだけが、第1の部屋24に露出している。
【0034】
接続部15の一部としても機能する第2のシール材38は、外側電極露出周面20aの上に延びている。外側電極露出周面20aは、その一部分が第2の支持板14から突出している。第2のシール材38は、例えば、銀、銀とガラスの混合物、銀、金、ニッケル、銅、チタンなどを含む各種ロウ材である。
【0035】
他の燃料電池セル7〜10も、燃料電池セル6と同様の構成要素を有している。以下、これらの燃料電池セル7〜10の構成要素を、燃料電池セル6の構成要素との参照符号と同じ参照符号を指示して説明する。
【0036】
図1に示すように、5本の燃料電池セル6〜10は、隣り合った燃料電池セル6〜10の端部6a、6bにおいて、内側電極外周面(内側電極露出周面)16aと外側電極外周面(外側電極露出周面)20aとが隣り合うように、互い違いに配置されている。従って、第2及び第4の燃料電池セル7、9においては、一方の端部6aと第2の支持板14とが固定され、他方の端部6bと第1の支持板12とが固定されている。
【0037】
接続部15は、更に、隣り合った内側電極露出周面16aと外側電極露出周面20aとを電気的に接続するための、又は、内側電極露出周面16a又は外側電極露出面20aと外部とを電気的に接続するための接続部材40を有している。この実施形態では、接続部材40は、支持板12、14の第1の部屋24側又は第2の部屋25側に設けられている。また、この実施形態では、5本の燃料電池セルが電気的に直列に接続されている。燃料電池セル6の内側電極露出周面16aに電気的に接続された接続部材40及び燃料電池セル10の外側電極露出周面20aに電気的に接続された接続部材40は、ケース2を貫通し、ケースの外側に電気を取出している。ケース2は、例えば、ステンレス鋼、ニッケル基合金、クロム基合金などの耐熱金属で形成され、ケース2と接続部材40との間には、絶縁部材42が配置されている。接続部材40は、例えば、ステンレス鋼、ニッケル基合金、クロム基合金などの耐熱金属や、ランタンクロマイトなどの導電性セラミック材料で形成される。接続部材40の形状は、板状、ワイヤ状、メッシュ状、薄膜状など適宜のものを用いることができる。さらに製造工程の簡略化やコストの観点からは、接続部材40は支持板12、14に予め形成された導電性膜(例えば、銀、ニッケル、銅などで形成された厚さ1〜500μmの膜)であることが好ましい。
【0038】
次に、本発明による燃料電池の動作を説明する。
【0039】
内側の電極層16と作用するガス(燃料ガス)は、流入ポート28aから第1の部屋24に入り、管状の燃料電池セル6〜10の中を通って第2の部屋25に入り、第2の部屋25の流出ポート28bから流出する。また、外側の電極層20と作用するガス(空気)は、第3の部屋の流入ポート30aから流入し、流出ポート30bから流出する。それにより、燃料電池1が作動する。また、内側の電極16の電気を第1のシール材32及び接続部材40を介して取出し、外側の電極20の電気を第2のシール材38及び接続部材40を介して取出す。
【0040】
第3の部屋26には、外側の電極20の電気を取出す部材が設けられていないので、外側の電極20と作用するガスの流れの抵抗を小さくすることができる。
【0041】
内側の電極層16と作用するガスが、水素や、炭化水素燃料を改質した改質ガス等の燃料ガスである場合、接続部材40を支持板12、14の第1の部屋24側又は第2の部屋25側に設けることにより、接続部材40の酸化劣化を抑制することができる。
【0042】
また、シール材32、38は、燃料電池セル6〜10と支持板12、14とを互いにシールして固定する機能と、燃料電池セルの内側の電極16又は外側の電極20から電気を取出す機能とを有している。従って、燃料電池セルスタック4の構造は簡単である。
【0043】
また、内側の電極16の電気を内側電極露出周面16aから取出しているので、内側の電極15に作用するガスの流れを妨げることがない。また、シール材32と内側電極外周面16aの接触面積を大きくすることができ、それにより、接触抵抗を小さくすることができる。特に、外径が1〜10mmの燃料電池セルを用いる場合に有利である。
【0044】
次に、本発明による燃料電池の製造方法の一例を説明する。
【0045】
先ず、管状の燃料電池セルを形成する。詳細には、先ず、管状の内側の電極層16を形成し、内側の電極層16の端部を露出させるように内側の電極層16の周りに電解質層18を形成し、更に、電解質層18の端部を露出させるように電解質層18の周りに外側の電極層20を形成する。この後、電解質層18の端部にテーパ部18bを形成するのがよい。
【0046】
次いで、支持板12、14の上に接続部材40である導電性膜を形成する。導電性膜は製造簡略化やコストの観点から、スクリーン印刷法、スラリーコート法、シート貼付け法などの湿式法によって予め支持板の上に形成されることが好ましい。
【0047】
次いで、燃料電池セル6〜10を所定の方向に配置し、燃料電池セル6〜10の端部6a、6bを第1支持板12及び第2の支持板14に通し、燃料電池セル6〜10と第1支持板12及び第2の支持板14とを、第1のシール材32及び第2のシール材38によって互いにシールし且つ固定する。このとき、シール材32、38が燃料電池セル6〜10と支持板12、14上に形成された導電性膜とに確実に接するようにする。それにより、燃料電池セルスタック4が形成される。
【0048】
次いで、燃料電池セルスタック4をケース2内に固定し、燃料電池を形成する。
【0049】
内側電極露出周面16aを採用し、且つ、シール材32、38を用いることにより、燃料電池セルスタック4及び燃料電池1の製造を容易にすることができる。特に、外径が1〜10mmの燃料電池セル6〜10を用いる場合に有利である。
【0050】
また、電解質層18のテーパ部18bにより、シール材32を支持板12と燃料電池セル6〜10との間に配置する又は充填するとき、内側電極露出周面16aと電解質露出周面18aとの間に気泡等が残って、シール材32によるガスシール機能の低下を防止することができる。それにより、歩留まりが上がり、安定した製造を容易に行うことができる。
【0051】
次に、図4及び図5を参照して、燃料電池セル6の一方の端部6aの変形例を説明する。
【0052】
図4は、燃料電池セルの一方の端部の第1の変形例の断面図である。図4に示すように、内側電極露出周面16aと電解質露出周面18aとの間の境界34aを、第1の支持板12の第3の部屋26側の面12aと同じ平面内に配置し、シール材32を内側電極露出周面16aの周りにだけ配置してもよい。また、接続部材40を内側電極露出周面16aと接するように配置してもよい。
【0053】
図5は、燃料電池セルの一方の端部の第2の変形例の断面図である。図5に示すように、第1の支持板12の第2の部屋25側の面12bに凹部12cを設け、接続部材40とシール材32の接触面積を大きくしてもよい。
【0054】
次に、図6〜8を参照して、燃料電池セル6の他方の端部6bの変形例を説明する。
【0055】
図6は、燃料電池セルの他方の端部の第1の変形例の断面図である。図6に示すように、燃料電池セル6の他方の端部6bの先端部6dにおいて、電解質層18を燃料電池セル6の外周面に露出させて第2の電解質露出周面18cを形成し、外側電極露出周面20aと第2の電解質露出周面18cとの間の境界36aを第2の支持板14の内部に配置してもよい。それにより、内側の電極層16と作用するガスの領域、即ち第1の部屋24と、外側の電極層と20作用するガスの領域、即ち第3の部屋26とを仕切ることができる。また、外側の電極20が、内側の電極16と作用するガスと接触することによって劣化することを防止することができる。
【0056】
図7は、燃料電池セルの他方の端部の第2の変形例の断面図である。図7に示すように、燃料電池セル6の外側の電極20の周り全体又はその一部に、外側電極集電層44aを配置してもよい。この変形例では、外側の電極20と電気的に接続される外側電極外周面22は、外側電極集電層44aによって構成される。外側電極集電層44aは、例えば、銀を含有する多孔質導電性膜である。外側電極集電層44aの厚さは、例えば10μmである。また外側電極集電層44aを銀や耐熱金属のワイヤ、メッシュなどで構成してもよい。外側電極集電層44aは、外側の電極層20が薄くて電気を通しにくい場合に電気の通路として役立つ。
【0057】
図8は、燃料電池セルの他方の端部の第3の変形例の断面図である。図8に示すように、燃料電池セル6の他方の端部6bの先端部6dにおいて、電解質層18を燃料電池セル6の外周面に露出させて第2の電解質露出周面18bを形成した後、外側の電極20及び第2の電解質露出周面18bの周り全体又はその一部に、外側電極集電層44bを配置してもよい。この変形例では、外側の電極20と電気的に接続される外側電極外周面22は、外側電極集電層44bによって構成される。外側電極集電層44bの材質、厚さ等は、第2の変形例の外側電極集電層44aと同様である。外側電極集電層44bにより、外側の電極20が、内側の電極16と作用するガスと接触することによって劣化することを防止することができる。
【0058】
次に、図9を参照して、本発明による燃料電池セルスタックの第1の変形例を説明する。図9は、本発明による燃料電池セルスタックの第1の変形例の概略的な斜視図である。
【0059】
図9に示すように、本発明による第1の変形例の燃料電池セルスタック50では、5×4列からなる20本の燃料電池セル6のすべてが、接続部材40aによって電気的に直列に接続されるように配置されている。なお、図9中の符号a、bは、燃料電池セル6の向きを指示する符号であり、aは、一方の端部を指示し、bは、他方の端部を指示する。
【0060】
次に、図10を参照して、本発明による燃料電池セルスタックの第2の変形例を説明する。図10は、本発明による燃料電池セルスタックの第2の変形例の概略的な斜視図である。
【0061】
図10に示すように、本発明による第2の変形例の燃料電池セルスタック60では、5×4列からなる20本の燃料電池セル6のうちの2本ずつの10組が、接続部材40bによって電気的に並列に接続され、更にこれらの組が、接続部材40bによって電気的に直列に接続されるように配置されている。なお、図10中の符号a、bは、燃料電池セル6の向きを指示する符号であり、aは、一方の端部を指示し、bは、他方の端部を指示する。
【0062】
燃料電池セルスタック50、60から分かるように、各支持板12、14に設けられた接続部材40a、40bによって、隣接した燃料電池セル6の第1の端部6aの内側電極外周面21及び他方の端部6bの外側電極外周面22を任意の組合せで電気的に接続することができる。
【0063】
次に、図11及び図12を参照して、本発明による燃料電池の第2の実施形態を説明する。本発明による第2の実施形態の燃料電池70は、接続部5、第1の端部6a、第1のシール材32、第2のシール材40以外第1の実施形態の燃料電池1と同様の構成を有している。従って、以下、異なる部分だけを説明する。図11は、本発明の第2の実施形態の燃料電池の一方の端部の断面図であり、図12は、本発明の第2の実施形態の燃料電池の他方の端部の断面図である。
【0064】
図11に示すように、燃料電池セル6の一方の端部6aと第1の支持板12とは、絶縁性の第1のシール材72によって互いにシールされ且つ固定されている。また、内側電極露出周面16aと電解質露出周面18aとの間の境界34bは、第2の部屋25に位置している。第1のシール材72は、内側の電極層16と作用するガスの領域、即ち、第2の部屋25と外側の電極層と20作用するガスの領域、即ち、第3の部屋26とを仕切るように設けられている。第1のシール材72は、例えば、結晶化ガラス、ガラスセラミックスなどである。
【0065】
図12に示すように、燃料電池セルの他方の端部6bと第2の支持板14とは、第2シール材74によって互いにシールされ且つ固定されている。第2のシール材74は、内側の電極層16と作用するガスの領域、即ち、第2の部屋25と外側の電極層と20作用するガスの領域、即ち、第3の部屋26とをほぼ仕切るように設けられている。詳細には、外側の電極層の端面20bだけが、第1の部屋に露出している。第2のシール材74は、例えば、結晶化ガラス、ガラスセラミックスなどである。
【0066】
図11及び図12に示すように、本実施形態では、内側電極露出周面16aは、内側の電極層16と電気的に通じる内側電極外周面21でもあり、外側電極露出周面20aは、外側の電極層20と電気的に通じる外側電極外周面22でもある。接続部15は、隣り合った内側電極外周面21と外側電極外周面22とを電気的に接続するための接続部材76を有し、この接続部材76は、支持体12の第2の部屋25側の面12b及び支持体14の第1の部屋24側の面14bに設けられている。接続部材76は、内側電極外周面21又は外側電極外周面22と接触する接触面78を有し、板状部材であってもよいし、ワイヤであってもよい。
【0067】
次に、図13を参照して、本発明による燃料電池の第3の実施形態を説明する。図13は、本発明の第3の実施形態の燃料電池の概略的な平面図である。
【0068】
図13に示すように、本発明の第3の実施形態である燃料電池80では、外周面を有し且つ互いに横方向に並べられた5本の管状の燃料電池セル体が、第1の実施形態である燃料電池1の5本の燃料電池セル6〜10の代わりに、燃料電池セルを2本ずつ長手方向Aに連結し且つ電気的に直列に接続した5本の燃料電池セル体81に置き換えられている。以下、この燃料電池セル体81について説明する。
【0069】
各燃料電池セル体81は、互いに長手方向Aに連結され且つ電気的に直列に接続された2本の燃料電池セル82、84と、燃料電池セル82の他方の端部82bと燃料電池セル84の一方の端部84aを連結する連結部材86とを有している。燃料電池セル82、84はそれぞれ、第1の実施形態である燃料電池1の燃料電池セル6と同じ構成要素を有しているので、同じ参照符号を付すことにより、それらの説明を省略する。なお、燃料電池セル82の他方の端部82bは、燃料電池セル6の一方の端部6bに対応し、燃料電池セル84の一方の端部84aは、燃料電池セル6の一方の端部6aに対応する。
【0070】
連結部材86は、管状であり、燃料電池セル82の他方の端部82b及び燃料電池セル84の一方の端部84aを包囲するように配置されている。連結部材86は、長手方向A中央部に環状の突出部78を有している。この突出部88に、燃料電池セル82の他方の端部82bが絶縁体90を介して当接し、燃料電池セル84の一方の端部84aが当接している。連結部材86は、導電性の材料で形成され、燃料電池セル82、84と連結部材86との間の隙間は、内側の電極層16に作用するガスの流路を確保するように、導電性のシール材92でシールされている。例えば、連結部材は、ステンレス鋼、ニッケル基合金、クロム基合金などの耐熱金属や、ランタンクロマイトのセラミック材料で形成される。シール材は、例えば、銀、銀とガラスの混合物、銀、金、ニッケル、銅、チタンなどを含む各種ロウ材で形成される。
【0071】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は、以上の実施の形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0072】
上記実施形態では、燃料電池セル6の内側の電極層16を燃料極とし且つ外側の電極層20を空気極としたが、それとは逆に、内側の電極層16を空気極とし且つ外側の電極層20を燃料極となるように燃料電池セルを構成してもよい。この場合、内側の電極層16と作用するガスが空気などの酸化ガスであれば、接続部材40の酸化劣化抑制の観点から、接続部材40を第3の部屋26側に設けるのがよい。
【0073】
また、上記実施形態では、内側電極露出周面16a及び電解質露出周面18aは、全周にわたって延びていたが、電気を燃料電池セルの外周面から取出すことができれば、全周にわたって延びていなくてもよい。
【0074】
また、外側電極外周面22は、外側の電極20と電気的に通じる燃料電池セル6の外周面であればよく、上記第1の実施形態のように、燃料電池セル6の外周面に露出した外側の電極20であってもよいし、上記第1の実施形態の他方の端部の変形例のように、燃料電池セル6の外周面に露出した外側電極集電層44a、44bであってもよいし、その他の形態であってもよい。
【0075】
また、燃料電池セル6の内側の電極層16の周り全体又はその一部に、外側電極集電層と同様の内側電極集電層を設けても良い。例えば、内側の電極層16の内側に内側電極集電層を設けてもよいし、内側電極露出周面16aの外側に内側電極集電層を設けてもよい。後者の場合、内側の電極層16と電気的に通じる内側電極外周面21は、内側電極集電層によって構成される。
【0076】
また、上記第3の実施形態における燃料電池セル体81は、3本以上の燃料電池セルが連結されていても良い。
【0077】
また、上記実施形態では、燃料電池セル6を断面が円の円筒形としたが、管状であればその他の形態であってもよい。具体的には、断面が扁平状、あるいは楕円状のフラットチューブ形、断面が多角形の角筒形などの形態であってもよい。
【0078】
また、本発明の範囲内であれば、上述した実施形態及び変形例を任意に組合せてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明の第1の実施形態の燃料電池の概略的な平面図である。
【図2】燃料電池セルの一方の端部の拡大断面図である。
【図3】燃料電池セルの他方の端部の拡大断面図である。
【図4】燃料電池セルの一方の端部の第1の変形例の断面図である。
【図5】燃料電池セルの一方の端部の第2の変形例の断面図である。
【図6】燃料電池セルの他方の端部の第1の変形例の断面図である。
【図7】燃料電池セルの他方の端部の第2の変形例の断面図である。
【図8】燃料電池セルの他方の端部の第3の変形例の断面図である。
【図9】本発明の燃料電池セルスタックの第1の変形例を示す斜視図である。
【図10】本発明の燃料電池セルスタックの第2の変形例を示す斜視図である。
【図11】本発明の第2の実施形態の一方の端部の断面図である。
【図12】本発明の第2の実施形態の他方の端部の断面図である。
【図13】本発明の第3の実施形態の燃料電池の概略的な平面図である。
【図14】従来の燃料電池セルスタックの概略的な斜視図である。
【図15】従来の燃料電池セルスタックの概略的な斜視図である。
【図16】従来の燃料電池セルスタック組立体の概略的な斜視図である。
【符号の説明】
【0080】
1 燃料電池
2 ケース
4 燃料電池セルスタック
6、7、8、9、10 燃料電池セル(燃料電池セル体)
6a 一方の端部
6b 他方の端部
12 第1の支持板
14 第2の支持板
15 接続部
16 内側の電極層
16a 内側電極露出周面
18 電解質層
18a 電解質層露出周面
20 外側の電極層
20a 外側電極露出周面
21 内側電極外周面
22 外側電極外周面
24 第1の部屋
25 第2の部屋
26 第3の部屋
32 第1のシール材
38 第2のシール材
40 接続部材
44a、44b 集電層
81 燃料電池セル体
82、84 燃料電池セル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池に使用される燃料電池セルスタックであって、
互いに長手方向に対する横方向に整列した複数の管状の燃料電池セル体と、
前記燃料電池セル体の両端部がそれぞれ固定される電気絶縁性の支持板と、を有し、
前記燃料電池セル体の各々は、
管状の外側の電極層と、
管状の内側の電極層と、
これらの電極層の間に配置された管状の電解質層と、を有すると共に、
その一方の端部に、前記内側の電極層が前記電解質層及び前記外側の電極層に対して露出した内側電極露出周面を有し、
前記燃料電池セル体の各々は、更に、一方の端部の外周面に、前記内側電極露出周面を介して前記内側の電極と電気的に通じる内側電極外周面を有し、
その他方の端部の外周面に、前記外側の電極層と電気的に通じる外側電極外周面を有し、
更に、隣接した前記燃料電池セル体の内側電極外周面及び外側電極外周面を任意の組合せで電気的に接続するために、前記各支持板に設けられた接続部を有することを特徴とする燃料電池セルスタック。
【請求項2】
前記接続部は、前記燃料電池セル体の端部と前記支持板との間を互いにシールし且つ固定する導電性のシール材を有することを特徴とする請求項1に記載の燃料電池セルスタック。
【請求項3】
前記複数の燃料電池セル体の少なくとも一部分が電気的に直列に接続されることを特徴とする請求項1又は2に記載の燃料電池セルスタック。
【請求項4】
前記燃料電池セル体は、1本の燃料電池セルからなり、又は、長手方向に連結され且つ電気的に直列に接続された複数の燃料電池セルを有する、請求項1〜3の何れか1項に記載の燃料電池セルスタック。
【請求項5】
前記内側電極外周面は、前記内側電極露出周面によって構成されることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の燃料電池セルスタック。
【請求項6】
前記外側電極外周面は、前記外側の電極層によって構成されることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の燃料電池セルスタック。
【請求項7】
前記燃料電池セル体は、更に、前記外側の電極層の外側に設けられた外側電極集電層を有し、
前記外側電極外周面は、前記外側電極集電層によって構成されることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の燃料電池セルスタック。
【請求項8】
請求項1〜7の何れか1項に記載の燃料電池セルスタックを含む燃料電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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