説明

燃料電池セル構造部及びそれを含む燃料電池

【課題】製造を容易にすることができる燃料電池セル構造部及び燃料電池を提供する。
【解決手段】本発明は、燃料電池に使用される燃料電池セル構造部、及び、それを含む燃料電池に関する。本発明による燃料電池セル構造部(4)は、管状の燃料電池セル(6)と、燃料電池セルの一方の端部(6a)が貫通し且つ固定される支持板(12)とを有する。燃料電池セル(6)は、内側の電極層(16)と、外側の電極層(20)と、これらの電極層の間に配置された電解質層(18)とを有すると共に、その一方の端部(6a)の外周面に、内側の電極層(16)が露出した内側電極露出周面(16a)を有する。燃料電池セル(6)の一方の端部(6a)と支持板(12)とは、導電性のシール材(32)によって互いにシールされ且つ固定される。シール材(32)は、内側電極露出周面(16a)の上に延び、外側の電極層(20)と間隔をおく。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体酸化物形の燃料電池(SOFC)に使用される燃料電池セル構造部、及び、それを含む燃料電池に関し、更に詳細には、管状の燃料電池セルを有する燃料電池セル構造部、及び、それを含む燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、管状の燃料電池セルを有する燃料電池が知られている(例えば、特許文献1参照)。まず、図11を参照して、従来の燃料電池の一例を説明する。図11は、従来の燃料電池の概略的な平面図である。
【0003】
図11に示すように、燃料電池100は、ケース102と、その中に配置された5本の中空六角形状の燃料電池セル104と、燃料電池セル104を貫通させてそれを固定する2つの支持板106、108とを有している。燃料電池セル104は、中空六角形状の内側の電極層110と、中空六角形状の外側の電極層114と、これらの電極層110、114の間に配置された管状の電解質層112と、を有している。支持板106、108は、ケース102に密封式に取付けられ、支持板106、108と燃料電池セル104との間は、シール材116でシールされ、それにより、ケース2は、内側の電極層110と作用するガスが流れる第1の部屋118及び第2の部屋120と、外側の電極層114と作用するガスが流れる第3の部屋122に仕切られている。第1の部屋118は、ガスの流入ポート124aを有し、第2の部屋120は、ガスの流出ポート124bを有する。第3の部屋122は、ガスの流入ポート126a及び流出ポート126bを有する。また、第1の部屋118において、内側の電極層110は、燃料電池セル104の外周面に露出した内側電極外周面110aを有し、この内側電極外周面110aに、内側の電極層110の電気を取出すための内側電極接続部材128が取付けられる。また、外側の電極層114に、その電気を取出すための外側電極接続部材130が取付けられる。
【0004】
内側の電極層110と作用するガスを、第1の部屋118の流入ポート124aから第1の部屋118に流入させ、管状の燃料電池セル104の中を通して第2の部屋120に流入させ、第2の部屋120の流出ポートから流出させる。また、外側の電極層114と作用するガスを、第3の部屋122の流入ポート126aから流入させ、流出ポート126bから流出させる。それにより、燃料電池1が作動する。内側の電極層110の電気を内側電極接続部材128から取出し、外側の電極層114の電気を外側電極接続部材130から取出す。
【0005】
この燃料電池1は、例えば、次のように製造される。先ず、管状の燃料電池セル104を形成する。この燃料電池セル104は、その一方の端部において、内側の電極層110が燃料電池セル104の外周面に露出している。燃料電池セル104の一方の端部を第1支持板106に通し、燃料電池セル104と第1支持板104とをシール材116によって互いにシールし且つ固定する。露出させた内側の電極層110に、内側電極接続部材128を取付け、外側の電極層114に、外側電極接続部材130を取付ける。次いで、燃料電池セルの他方の端部を第2支持板108に通し、燃料電池セル104と第2支持板108とをシール材116によって互いにシールし且つ固定する。
【0006】
【特許文献1】特開平5−101842号公報(図1、図6)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、従来技術の燃料電池を製造するとき、燃料電池セル104を第1支持板106にシールし且つ固定する工程と、内側の電極層110に内側電極接続部材128を取付ける工程と、外側の電極層114に外側電極接続部材130を取付ける工程と、燃料電池セル104を第2支持板108にシールし且つ固定する工程とが必要である。従って、燃料電池1の製造が複雑で、困難であった。
【0008】
そこで、本発明の目的は、製造を容易にすることができる燃料電池セル構造部及び燃料電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、燃料電池に使用される本発明による燃料電池セル構造部は管状の外側の電極層と、管状の内側の電極層と、これらの電極層の間に配置された管状の電解質層と、を有すると共に、その一方の端部に、内側の電極層が電解質層及び外側の電極層に対して露出した内側電極露出周面と、それと隣接し且つ電解質層が外側の電極層に対して露出した電解質露出周面と、を有する少なくとも1本の管状の燃料電池セルと、燃料電池セルの一方の端部に取付けられ、且つ、内側の電極層と作用するガスの領域と外側の電極層と作用するガスの領域とを仕切る仕切り部と、を有し、燃料電池セルは、その一方の端部の外周面に、内側電極露出周面を介して内側の電極層と電気的に通じる内側電極外周面を有し、燃料電池セルの一方の端部と仕切り部とは、導電性のシール材によって互いにシールされ且つ固定され、シール材は、内側電極外周面の上に延び、外側の電極層と間隔をおくことを特徴としている。
【0010】
このように構成された燃料電池セル構造部では、燃料電池セルが管状であり、内側の電極層と作用するガスが、燃料電池セルの管内を流れ、外側の電極層と作用するガスが、燃料電池セルの周りを流れる。燃料電池セルの一方の端部において、内側の電極と作用するガスが流れる領域と外側の電極と作用するガスが流れる領域との間のガスシールは、燃料電池セルの一方の端部に設けられた第1シール材及び仕切り部によって達成される。また、内側の電極層に発生した電気は、内側電極外周面を介して導電性のシール材から取出される。
【0011】
本発明による燃料電池セル構造部では、燃料電池セル体の外周面である内側電極外周面を介して内側の電極層の電気を取出すこと、及び、導電性のシール材を採用することにより、シール材が、ガスのシール機能と、燃料電池セルの内側の電極から電気を取出す機能の両方を有している。従って、これらの機能を別の構成要素で行っていた従来技術の燃料電池セル構造部と比較して、本発明による燃料電池セル構造部は簡単であり、その製造を容易にすることができる。
【0012】
また、導電性のシール材は、内側電極外周面の上に延び、外側の電極層と間隔をおいて配置されているため、内側電極と外側電極の電気的短絡は確実に防止される。更に、導電性のシール材は、内側電極外周面に対する密着性がよいため、界面における接触抵抗が小さくなり、発電性能および信頼性に優れた燃料電池セル構造部を容易に製造することができる。
【0013】
本発明による燃料電池セル構造部の実施形態において、好ましくは、内側電極外周面は、内側電極露出周面によって構成され、シール材は、内側電極露出周面及び電解質露出周面に跨がって延び、電解質層は、内側電極露出周面に向かって薄肉となるテーパ部を有する。
【0014】
このように構成された燃料電池セル構造部では、燃料電池セルと仕切り部とをシール材によってシールするとき、内側電極露出周面と電解質露出周面との間の段部に残ることがある気泡等によるガスシール機能の低下を防止することができる。それにより、歩留まりが上がり、安定した製造を容易に行うことができる。
【0015】
また、本発明による燃料電池セル構造部の実施形態において、好ましくは、仕切り部は、燃料電池セルの一方の端部が貫通する一方の側の支持板を有する。
【0016】
このように構成された燃料電池セル構造部では、複数の燃料電池セルを支持板に固定することにより、一体的な燃料電池セル構造部を容易に製造することができる。
【0017】
上記燃料電池セル構造部の実施形態において、好ましくは、更に、燃料電池セル又はそれと長手方向に且つ電気的に直列に接続された他の燃料電池セルの他方の端部が貫通する他方の側の支持板を有し、燃料電池セル又は他の燃料電池セルは、その他方の端部の外周面に、燃料電池セル又は他の燃料電池セルの外側の電極層と電気的に通じる外側電極外周面を有し、燃料電池セル又は他の燃料電池セルの他方の端部と他方の側の支持板とは、導電性のシール材によって互いにシールされ且つ固定され、他方の側のシール材は、外側電極外周面の上に延びる。
【0018】
このように構成された燃料電池セル構造部では、燃料電池セルの一方の端部に加えて、燃料電池セル又は他の燃料電池セルの他方の端部の製造が容易になる。
【0019】
この燃料電池セル構造部の実施形態において、外側電極外周面は、燃料電池セル又は他の燃料電池セルの外周面に露出した外側の電極層によって構成されてもよいし、燃料電池セル又は他の燃料電池セルの外側の電極層の外側に設けられた外側電極集電層によって構成されてもよい。
【0020】
また、上記目的を達成するために、本発明による燃料電池は、上述した燃料電池セル構造部を含む。
【発明の効果】
【0021】
以上説明した通り、本発明による燃料電池セル構造部及び燃料電池は、その製造を容易にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明による燃料電池の実施形態を詳細に説明する。
【0023】
最初、図1〜図3を参照して、本発明による燃料電池の第1の実施形態を説明する。図1は、本発明の第1の実施形態の燃料電池の概略的な平面図である。図2は、燃料電池セルの一方の端部の拡大図であり、図3は、燃料電池セルの他方の端部の拡大図である。
【0024】
図1に示すように、本発明の第1の実施形態である燃料電池1は、ケース2と、その中に配置された本発明による燃料電池セル構造部4とを有している。
【0025】
燃料電池セル構造部4は、外周面を有し且つ互いに横方向に並べられた5本の管状の燃料電池セル6、7、8、9、10と、燃料電池セルの端部が貫通し且つ固定される第1の支持板12及び第2の支持板14と、を有している。本実施形態では、燃料電池セル6〜10は、円筒形である。以下、図1の最も左端の燃料電池セル6に着目して説明する。
【0026】
燃料電池セル6は、円筒形の内側の電極層16と、円筒形の外側の電極層20と、これらの電極層16、20の間に配置された円筒形の電解質層18と、を有している。また、燃料電池セル6の一方の端部6aに、内側の電極層16が電解質層18及び外側の電極層20に対して露出した内側電極露出周面16aと、電解質層18が外側の電極層20に対して露出した電解質露出周面18aとが設けられ、内側電極露出周面16a及び電解質露出周面18aは、燃料電池セル6の外周面を構成している。燃料電池セル6の他方の端部6bを含む残部の外周面は、外側の電極層20が露出した外側電極露出周面20aによって構成されている。本実施形態では、内側電極露出周面16aは、内側の電極層16と電気的に通じる内側電極外周面21でもあり、外側電極露出周面20aは、外側の電極層20と電気的に通じる外側電極外周面22でもある。
【0027】
内側の電極層16は、例えば、Niと、CaやY、Sc等の希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたジルコニアとの混合体、Niと、希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたセリアとの混合体、Niと、Sr、Mg、Co、Fe、Cuから選ばれる少なくとも一種をドープしたランタンガレートとの混合体、の少なくとも一種から形成される。電解質層18は、例えば、Y、Sc等の希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたジルコニア、希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたセリア、Sr、Mgから選ばれる少なくとも一種をドープしたランタンガレート、の少なくとも一種から形成される。外側の電極層20は、例えば、Sr、Caから選ばれる少なくとも一種をドープしたランタンマンガナイト、Sr、Co、Ni、Cuから選ばれる少なくとも一種をドープしたランタンフェライト、Sr、Fe、Ni、Cuから選ばれる少なくとも一種をドープしたサマリウムコバルト、銀、などの少なくとも一種から形成される。この場合、内側の電極層16が燃料極になり、外側の電極層20が空気極になる。内側の電極層16の厚さは、例えば、1mmであり、電解質層18の厚さは、例えば、30μmであり、外側の電極層20の厚さは、例えば、30μmである。
【0028】
第1の支持板12及び第2の支持板14は、電気絶縁性であり、燃料電池セル6が貫通する孔22を有し、ケース2に密封式に取付けられている。それにより、ケース2は、燃料電池セル6の長手方向A両側に配置され、且つ、内側の電極層16と作用するガスが流れる第1の部屋24及び第2の部屋25と、燃料電池セル6の長手方向A中央部に配置され、且つ、外側の電極層20と作用するガスが流れる第3の部屋26とに仕切られている。従って、支持板12、14は、内側の電極層16と作用するガスの領域と外側の電極層20と作用するガスの領域とを仕切る仕切り部を構成する。第1の部屋24は、ガスの流入ポート28aを有し、第2の部屋25は、ガスの流出ポート28bを有している。第3の部屋26は、ガスの流入ポート30a及び流出ポート30bを有している。支持板12、14は、例えば、耐熱性のセラミックスで形成されている。具体的には、アルミナ、ジルコニア、スピネル、フォルステライト、マグネシア、チタニアなどを用いることが好ましい。なお、支持板12、14の材質は、その熱膨張係数が燃料電池スタックを構成する各部材の熱膨張係数と近似した材質がより好ましい。また、内側の電極層16と作用するガスは、例えば、水素や、炭化水素燃料を改質した改質ガスであり、外側の電極層20と作用するガスは、例えば、空気である。
【0029】
燃料電池セル6の一方の端部6aと、第1の支持板12とは、導電性の第1のシール材32によって互いにシールされ且つ固定されている。
【0030】
図2に示すように、内側電極露出周面16a及び電解質露出周面18aは、燃料電池セル6の全周にわたって延び、互いに長手方向Aに隣接している。また、内側電極露出周面16aは、燃料電池セル6の先端部6cに位置しており、その一部分が第1の支持板12から突出している。内側電極露出周面16aと電解質露出周面18aとの間の境界34は、第1の支持板12の内部にあり、電解質露出周面18aと外側電極露出周面20aとの間の境界36は、第3の部屋26に位置している。第1のシール材32は、内側の電極層16と作用するガスの領域、即ち、第2の部屋25と外側の電極層20と作用するガスの領域、即ち、第3の部屋26とを仕切るように設けられている。
【0031】
第1のシール材32は、内側電極露出周面16a及び電解質露出周面18aに跨がって全周にわたって延び、電解質露出周面18aを介して外側の電極層20と間隔をおいている。また、電解質露出周面18aは、内側電極露出周面16aに向かって薄肉となるテーパ部18bを有している。第1のシール材32は、例えば、銀、銀とガラスの混合物、銀、金、ニッケル、銅、チタンなどを含む各種ロウ材である。
【0032】
また、燃料電池セルの他方の端部6bと第2の支持板14とは、導電性の第2シール材38によって互いにシールされ且つ固定されている。
【0033】
図3に示すように、第2のシール材38は、内側の電極層16と作用するガスの領域、即ち第1の部屋24と、外側の電極層20と作用するガスの領域、即ち第3の部屋26とをほぼ仕切るように設けられている。詳細には、外側の電極層20の端面20bだけが、第1の部屋24に露出している。
【0034】
第2のシール材38は、外側電極露出周面20aの上に延びている。外側電極露出周面20aは、その一部分が第2の支持板14から突出している。第2のシール材38は、例えば、銀、銀とガラスの混合物、銀、金、ニッケル、銅、チタンなどを含む各種ロウ材である。
【0035】
他の燃料電池セル7〜10も、燃料電池セル6と同様の構成要素を有している。以下、これらの燃料電池セル7〜10の構成要素を、燃料電池セル6の構成要素との参照符号と同じ参照符号を指示して説明する。
【0036】
図1に示すように、5本の燃料電池セル6〜10は、隣り合った燃料電池セル6〜10の端部6a、6bにおいて、内側電極外周面(内側電極露出周面)16aと外側電極外周面(外側電極露出周面)20aとが隣り合うように、互い違いに配置されている。従って、第2及び第4の燃料電池セル7、9においては、一方の端部6aと第2の支持板14とが固定され、他方の端部6bと第1の支持板12とが固定されている。
【0037】
接続部15は、更に、隣り合った内側電極露出周面16aと外側電極露出周面20aとを電気的に接続するための、又は、内側電極露出周面16a又は外側電極露出面20aと外部とを電気的に接続するための接続部材40を有している。この実施形態では、接続部材40は、支持板12、14の第1の部屋24側又は第2の部屋25側に設けられている。また、この実施形態では、5本の燃料電池セルが電気的に直列に接続されている。燃料電池セル6の内側電極露出周面16aに電気的に接続された接続部材40及び燃料電池セル10の外側電極露出周面20aに電気的に接続された接続部材40は、ケース2を貫通し、ケースの外側に電気を取出している。ケース2は、例えば、ステンレス鋼、ニッケル基合金、クロム基合金などの耐熱金属で形成され、ケース2と接続部材40との間には、絶縁部材42が配置されている。接続部材40は、例えば、ステンレス鋼、ニッケル基合金、クロム基合金などの耐熱金属や、ランタンクロマイトなどのセラミック材料で形成される。さらに製造工程の簡略化やコストの観点からは、接続部材40は支持板12、14に予め形成された導電性膜(例えば、銀、ニッケル、銅などで形成された厚さ1〜500μmの膜)であることが好ましい。
【0038】
次に、本発明による燃料電池の動作を説明する。
【0039】
内側の電極層16と作用するガス(燃料ガス)は、流入ポート28aから第1の部屋24に入り、管状の燃料電池セル6〜10の中を通って第2の部屋25に入り、第2の部屋25の流出ポート28bから流出する。また、外側の電極層20と作用するガス(空気)は、第3の部屋の流入ポート30aから流入し、流出ポート30bから流出する。それにより、燃料電池1が作動する。また、内側の電極16の電気を第1のシール材32及び接続部材40を介して取出し、外側の電極20の電気を第2のシール材38及び接続部材40を介して取出す。
【0040】
また、第3の部屋26には、外側の電極20の電気を取出す部材が設けられていないので、外側の電極20と作用するガスの流れの抵抗を小さくすることができる。
【0041】
内側の電極層16と作用するガスが、水素や、炭化水素燃料を改質した改質ガス等の燃料ガスである場合、接続部材40を支持板12、14の第1の部屋24側又は第2の部屋25側に設けることにより、接続部材40の酸化劣化を抑制することができる。
【0042】
また、シール材32、38は、燃料電池セル6〜10と支持板12、14とを互いにシールして固定する機能と、燃料電池セルの内側の電極16又は外側の電極20から電気を取出す機能とを有している。従って、燃料電池セル構造部の構造は簡単である。
【0043】
また、内側の電極16の電気を内側電極露出周面16aから取出しているので、内側の電極15に作用するガスの流れを妨げることがない。また、シール材32と内側電極外周面16aの接触面積を大きくすることができ、それにより、接触抵抗を小さくすることができる。特に、外径が1〜10mmの燃料電池セルを用いる場合に有利である。
【0044】
次に、本発明による燃料電池の製造方法の一例を説明する。
【0045】
先ず、管状の燃料電池セルを形成する。詳細には、先ず、管状の内側の電極層16を形成し、内側の電極層16の端部を露出させるように内側の電極層16の周りに電解質層18を形成し、更に、電解質層18の端部を露出させるように電解質層18の周りに外側の電極層20を形成する。この後、電解質層18の端部にテーパ部18bを形成するのがよい。
【0046】
次いで、支持板12、14の上に接続部材40である導電性膜を形成する。導電性膜は製造簡略化やコストの観点から、スクリーン印刷法、スラリーコート法、シート貼付け法などの湿式法によって予め支持板の上に形成されることが好ましい。
【0047】
次いで、燃料電池セル6〜10を所定の方向に配置し、燃料電池セル6〜10の端部6a、6bを第1支持板12及び第2の支持板14に通し、燃料電池セル6〜10と第1支持板12及び第2の支持板14とを、第1のシール材32及び第2のシール材38によって互いにシールし且つ固定する。このとき、シール材32、38が燃料電池セル6〜10と支持板12、14上に形成された導電性膜とに確実に接するようにする。それにより、本発明による燃料電池セル構造部4を含む燃料電池セルスタックが形成される。
【0048】
次いで、燃料電池セルスタックをケース2内に固定し、燃料電池を形成する。
【0049】
内側電極露出周面16aを採用し、且つ、シール材32、38を用いることにより、燃料電池セルスタック及び燃料電池1の製造を容易にすることができる。特に、外径が1〜10mmの燃料電池セル6〜10を用いる場合に有利である。
【0050】
また、電解質層18のテーパ部18bにより、シール材32を支持板12と燃料電池セル6〜10との間に配置する又は充填するとき、内側電極露出周面16aと電解質露出周面18aとの間に気泡等が残って、シール材32によるガスシール機能の低下を防止することができる。それにより、歩留まりが上がり、安定した製造を容易に行うことができる。
【0051】
次に、図4及び図5を参照して、燃料電池セル6の一方の端部6aの変形例を説明する。
【0052】
図4は、燃料電池セルの一方の端部の第1の変形例の断面図である。図4に示すように、内側電極露出周面16aと電解質露出周面18aとの間の境界34aを、第1の支持板12の第3の部屋26側の面12aと同じ平面内に配置し、シール材32を内側電極露出周面16aの周りにだけ配置してもよい。また、接続部材40を内側電極露出周面16aと接するように配置してもよい。
【0053】
図5は、燃料電池セルの一方の端部の第2の変形例の断面図である。図5に示すように、第1の支持板12の第2の部屋25側の面12bに凹部12cを設け、接続部材40とシール材32の接触面積を大きくしてもよい。
【0054】
次に、図6〜8を参照して、燃料電池セル6の他方の端部6bの変形例を説明する。
【0055】
図6は、燃料電池セルの他方の端部の第1の変形例の断面図である。図6に示すように、燃料電池セル6の他方の端部6bの先端部6dにおいて、電解質層18を燃料電池セル6の外周面に露出させて第2の電解質露出周面18cを形成し、外側電極露出周面20aと第2の電解質露出周面18cとの間の境界36aを第2の支持板14の内部に配置してもよい。それにより、内側の電極層16と作用するガスの領域、即ち第1の部屋24と、外側の電極層と20作用するガスの領域、即ち第3の部屋26とを仕切ることができる。また、外側の電極20が、内側の電極16と作用するガスと接触することによって劣化することを防止することができる。
【0056】
図7は、燃料電池セルの他方の端部の第2の変形例の断面図である。図7に示すように、燃料電池セル6の外側の電極20の周り全体又はその一部に、外側電極集電層44aを配置してもよい。この変形例では、外側の電極20と電気的に接続される外側電極外周面22は、外側電極集電層44aによって構成される。外側電極集電層44aは、例えば、銀を含有する多孔質導電性膜である。外側電極集電層44aの厚さは、例えば10μmである。また外側電極集電層44aを銀や耐熱金属のワイヤ、メッシュなどで構成してもよい。外側電極集電層44aは、外側の電極層20が薄くて電気を通しにくい場合に電気の通路として役立つ。
【0057】
図8は、燃料電池セルの他方の端部の第3の変形例の断面図である。図8に示すように、燃料電池セル6の他方の端部6bの先端部6dにおいて、電解質層18を燃料電池セル6の外周面に露出させて第2の電解質露出周面18bを形成した後、外側の電極20及び第2の電解質露出周面18bの周り全体又はその一部に、外側電極集電層44bを配置してもよい。この変形例では、外側の電極20と電気的に接続される外側電極外周面22は、外側電極集電層44bによって構成される。外側電極集電層44bの材質、厚さ等は、第2の変形例の外側電極集電層44aと同様である。外側電極集電層44bにより、外側の電極20が、内側の電極16と作用するガスと接触することによって劣化することを防止することができる。
【0058】
次に、図9を参照して、本発明による燃料電池の第2の実施形態を説明する。図9は、本発明の第2の実施形態の燃料電池の概略的な平面図である。
【0059】
図9に示すように、本発明の第2の実施形態である燃料電池60は、5本の燃料電池セル6〜10を同じ向きに配置し、支持板12、14を導電性の材料で形成し、接続部材を省略したこと以外、第1の実施形態である燃料電池1と同様の構成を有している。燃料電池60の燃料電池セル6〜10は、並列に接続されている。
【0060】
次に、図10を参照して、本発明による燃料電池の第3の実施形態を説明する。図10は、本発明の第3の実施形態の燃料電池の概略的な平面図である。
【0061】
図10に示すように、本発明の第3の実施形態である燃料電池80では、第1の実施形態である燃料電池1の5本の燃料電池セル6〜10の代わりに、燃料電池セルを2本ずつ長手方向Aに連結され且つ電気的に直列に接続された5本の燃料電池セル体81に置き換えられている。以下、この燃料電池セル体81について説明する。
【0062】
各燃料電池セル体81は、互いに長手方向Aに連結され且つ電気的に直列に接続された2本の燃料電池セル82、84と、燃料電池セル82の他方の端部82bと燃料電池セル84の一方の端部84aを連結する連結部材86とを有している。燃料電池セル82、84はそれぞれ、第1の実施形態である燃料電池1の燃料電池セル6と同じ構成要素を有しているので、同じ参照符号を付すことにより、それらの説明を省略する。なお、燃料電池セル82の他方の端部82bは、燃料電池セル6の一方の端部6bに対応し、燃料電池セル84の一方の端部84aは、燃料電池セル6の一方の端部6aに対応する。
【0063】
連結部材86は、管状であり、燃料電池セル82の他方の端部82b及び燃料電池セル84の一方の端部84aを包囲するように配置されている。連結部材86は、長手方向A中央部に環状の突出部78を有している。この突出部88に、燃料電池セル82の他方の端部82bが絶縁体90を介して当接し、燃料電池セル84の一方の端部84aが当接している。連結部材86は、導電性の材料で形成され、燃料電池セル82、84と連結部材86との間の隙間は、内側の電極層16に作用するガスの流路を確保するように、導電性のシール材92でシールされている。例えば、連結部材は、ステンレス鋼、ニッケル基合金、クロム基合金などの耐熱金属や、ランタンクロマイトのセラミック材料で形成される。シール材は、例えば、銀、銀とガラスの混合物、銀、金、ニッケル、銅、チタンなどを含む各種ロウ材で形成される。
【0064】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は、以上の実施の形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0065】
上記実施形態では、燃料電池セル6の内側の電極層16を燃料極とし且つ外側の電極層20を空気極としたが、それとは逆に、内側の電極層16を空気極とし且つ外側の電極層20を燃料極となるように燃料電池セルを構成してもよい。この場合、内側の電極層16と作用するガスが空気などの酸化ガスであれば、接続部材40の酸化劣化抑制の観点から、接続部材40を第3の部屋26側に設けるのがよい。
【0066】
また、上記実施形態では、内側電極露出周面16a及び電解質露出周面18aは、全周にわたって延びていたが、電気を燃料電池セルの外周面から取出すことができれば、全周にわたって延びていなくてもよい。
【0067】
また、外側電極外周面22は、外側の電極20と電気的に通じる燃料電池セル6の外周面であればよく、上記第1の実施形態のように、燃料電池セル6の外周面に露出した外側の電極20であってもよいし、上記第1の実施形態の他方の端部の変形例ように、燃料電池セル6の外周面に露出した外側電極集電層44a、44bであってもよいし、その他の形態であってもよい。
【0068】
また、燃料電池セル6の内側の電極層16の周り全体又はその一部に、外側電極集電層と同様の内側電極集電層を設けても良い。例えば、内側の電極層16の内側に内側電極集電層を設けてもよいし、内側電極露出周面16aの外側に内側電極集電層を設けてもよい。後者の場合、内側の電極層16と電気的に通じる内側電極外周面21は、内側電極集電層によって構成される。
【0069】
また、上記第3の実施形態における燃料電池セル体81は、3本以上の燃料電池セルが連結されていても良い。
【0070】
また、上記第1〜第3の実施形態において、仕切り部を支持板12、14として説明したけれども、内側の電極層16と作用するガスの領域と外側の電極層20と作用するガスの領域とを仕切ることができれば、仕切り部の形態は任意であり、例えば、燃料電池セル6の端部に被せられるキャップ状のものであってもよい。
【0071】
また、上記実施形態では、燃料電池セル6を断面が円の円筒形としたが、管状であればその他の形態であってもよい。具体的には、断面が扁平状、あるいは楕円状のフラットチューブ形、断面が多角形の角筒形などの形態であってもよい。
【0072】
また、本発明の範囲内であれば、上述した実施形態及び変形例を任意に組合せてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の第1の実施形態の燃料電池の概略的な平面図である。
【図2】燃料電池セルの一方の端部の拡大断面図である。
【図3】燃料電池セルの他方の端部の拡大断面図である。
【図4】燃料電池セルの一方の端部の第1の変形例の断面図である。
【図5】燃料電池セルの一方の端部の第2の変形例の断面図である。
【図6】燃料電池セルの他方の端部の第1の変形例の断面図である。
【図7】燃料電池セルの他方の端部の第2の変形例の断面図である。
【図8】燃料電池セルの他方の端部の第3の変形例の断面図である。
【図9】本発明の第2の実施形態の燃料電池の概略的な平面図である。
【図10】本発明の第3の実施形態の燃料電池の概略的な平面図である。
【図11】従来の燃料電池の概略的な平面図である。
【符号の説明】
【0074】
1、60、70 燃料電池
2 ケース
4 燃料電池セル構造部
6、7、8、9、10 燃料電池セル
6a 一方の端部
6b 他方の端部
12 第1の支持板
14 第2の支持板
16 内側の電極層
16a 内側電極露出周面
18 電解質層
18a 電解質層露出周面
18b テーパ部
20 外側の電極層
20a 外側電極露出周面
21 内側電極外周面
22 外側電極外周面
24 第1の部屋
25 第2の部屋
26 第3の部屋
32 第1のシール材
38 第2のシール材
44a、44b 集電層
81 燃料電池セル体
82、84 燃料電池セル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池に使用される燃料電池セル構造部であって、
管状の外側の電極層と、管状の内側の電極層と、これらの電極層の間に配置された管状の電解質層と、を有すると共に、その一方の端部に、前記内側の電極層が前記電解質層及び前記外側の電極層に対して露出した内側電極露出周面と、それと隣接し且つ前記電解質層が前記外側の電極層に対して露出した電解質露出周面と、を有する少なくとも1本の管状の燃料電池セルと、
前記燃料電池セルの一方の端部に取付けられ、且つ、前記内側の電極層と作用するガスの領域と前記外側の電極層と作用するガスの領域とを仕切る仕切り部と、を有し、
前記燃料電池セルは、その一方の端部の外周面に、前記内側電極露出周面を介して前記内側の電極層と電気的に通じる内側電極外周面を有し、
前記燃料電池セルの一方の端部と前記仕切り部とは、導電性のシール材によって互いにシールされ且つ固定され、前記シール材は、前期内側電極外周面の上に延び、前記外側の電極層と間隔をおくことを特徴とする燃料電池構造部。
【請求項2】
前記内側電極外周面は、前記内側電極露出周面によって構成され、
前記シール材は、前記内側電極露出周面及び前記電解質露出周面に跨がって延び、
前記電解質層は、前記内側電極露出周面に向かって薄肉となるテーパ部を有することを特徴とする請求項1に記載の燃料電池セル構造部。
【請求項3】
前記仕切り部は、前記燃料電池セルの一方の端部が貫通する一方の側の支持板を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の燃料電池セル構造部。
【請求項4】
更に、前記燃料電池セル又はそれと長手方向に且つ電気的に直列に接続された他の燃料電池セルの他方の端部が貫通する他方の側の支持板を有し、
前記燃料電池セル又は前記他の燃料電池セルは、その他方の端部の外周面に、前記燃料電池セル又は前記他の燃料電池セルの外側の電極層と電気的に通じる外側電極外周面を有し、
前記燃料電池セル又は前記他の燃料電池セルの他方の端部と前記他方の側の支持板とは、導電性のシール材によって互いにシールされ且つ固定され、
前記他方の側のシール材は、前記外側電極外周面の上に延びることを特徴とする請求項3に記載の燃料電池セル構造部。
【請求項5】
前記外側電極外周面は、前記燃料電池セル又は前記他の燃料電池セルの外周面に露出した外側の電極層によって構成されることを特徴とする請求項4に記載の燃料電池セル構造部。
【請求項6】
前記燃料電池セル又は前記他の燃料電池セルは、更に、前記外側の電極層の外側に設けられた外側電極集電層を有し、
前記外側電極外周面は、前記外側電極集電層によって構成されることを特徴とする請求項4に記載の燃料電池セル構造部。
【請求項7】
請求項1〜6の何れか1項に記載の燃料電池セル構造部を含むことを特徴とする燃料電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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