説明

燃料電池固態電解質構造

【課題】燃料電池の歩留りを高め、その使用寿命を延長できる燃料電池固態電解質構造を提供する。
【解決手段】燃料電池固態電解質構造は、陽極、陰極、電解質、少なくとも2個の気体通路1を備え、陰極は陽極に対応して設置し、電解質は陽極と陰極との間に設置し、各気体通路1は陽極と陰極の横で、かつ電解質の両側にそれぞれ設置し、各気体通路1の末端には、コーナー部11及びコーナー部11と連続し、かつ気体通路1を封鎖する末端部12を備え、しかも気体通路1末端位置の内部には連続曲面13を形成し、気体通路1末端の構造設計により、燃料電池電解質構造の歩留りを高めることができ、使用寿命を延長できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は燃料電池固態電解質構造に関し、特に燃料電池の歩留りを高め、その使用寿命を延長できる燃料電池固態電解質構造に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池(Fuel Cell、FC)は、エネルギー転換効率が比較的高く、一切の汚染を生じないため、新エネルギーの領域で、重要な役割を演じている。
燃料電池は主に、還元性燃料(水素など)と酸化性気体(酸素など)が生じる標準電位差を利用し、機能性電極と電解質材料が構成する回路を通して、自発性酸化還元反応を発生させ、電化学原理により、化学エネルギーを効果的に電気エネルギーに転換するものである。
反応全体での生成物は、水或いは二酸化炭素(CO2)だけで、廃棄物を一切出さないため、環境に非常に優しい。
【0003】
燃料電池は、電解質のイオン伝導の機能の違いに基づき、おおよそ5種に分類される。
固態酸化物燃料(Solid Oxide Fuel Cell、SOFCと略称)電池は、セラミック燃料電池とも呼ばれる。
それは、反応速度が速く、白金触媒が不要で、使用可能な燃料の種類が多く、反応により生じる高温の蒸気でコージェネレーションを行うこともでき、その効率は80%以上にも達する。
そのため、最も高い潜在力を秘めた燃料電池であるといえる。
【0004】
燃料電池の使用過程では、一酸化炭素(CO)と水素(H2)を含む燃料が、気体通路を通って陽極電極の表面へと拡散するが、通路の突き当りが直角であるなら、曲がり角には応力集中現象が起き易い。
一旦破損すれば、燃料に酸素が混じり、爆発が起きる恐れがあり、この危険を避けるために、気体の圧力差を抑える必要がある。
また、陰極にある通路も同様で、酸素源圧力が大き過ぎれば、脆弱な場所には崩解或いは破裂の危険がある。
【0005】
製造過程では、電池の両電極の間には電解質を挟み、サンドイッチ構造とする。
この種の構造では、通路の突き当りの曲がり角は、一般には直角である。
そのため、製造プロセスの乾燥、焼結、熱膨張、冷却収縮過程において、各層の材料間の性質の違いにより、分層、亀裂、内応力が生じやすい。
これにより、この曲がり角位置には、製造プロセスにおける欠陥が最も起き易い。
本発明は、従来の燃料電池構造の上記した欠点に鑑みてなされたものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、歩留りが高く、寿命が長い燃料電池固態電解質構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は下記の燃料電池固態電解質構造を提供する。
燃料電池固態電解質構造は、陽極、陰極、電解質、少なくとも2個の気体通路を備え、
該陰極は、陽極に対応して設置し、
該電解質は、該陽極と該陰極との間に設置し、
該気体通路は、該陽極と該陰極の横で、しかも該電解質の両側にそれぞれ設置し、該各気体通路の末端には、コーナー部、及び該コーナー部と連続し、しかも該気体通路を封鎖する末端部を備え、しかも該気体通路末端位置の内部には、連続曲面を形成し、
該気体通路の末端には、該コーナー部、及び該コーナー部と連続し、かつ該気体通路を封鎖する末端部を備え、しかも該気体通路末端位置内部には、連続曲面を形成するため、燃料電池の使用過程において、燃料が該気体通路を通って陽極、陰極電極表面へと拡散する時、効果的に応力を分散でき、こうして両側の気体圧力差が高過ぎることで生じる過大な酸素源圧力を回避でき、該気体通路の崩解或いは破裂を防止でき、
燃料電池の製造過程の乾燥、焼結、熱膨張/冷却収縮プロセスにおいて、分層、亀裂の発生を防止でき、内応力を低下させることができるため、燃料電池の歩留りを効果的に高め、その使用寿命を延長することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の燃料電池固態電解質構造は、両側の気体圧力差が高過ぎることで生じる過大な酸素源圧力を回避でき、気体通路の崩解或いは破裂を防止でき、燃料電池製造過程の乾燥、焼結、熱膨張/冷却収縮プロセスにおいて、分層、亀裂の発生を防止でき、内応力を低下させることができるため、燃料電池の歩留りを効果的に高め、その使用寿命を延長することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明第一実施例の立体図である。
【図2】本発明第一実施例の断面図である。
【図3】本発明第二実施例の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に図面を参照しながら本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。
【実施例】
【0011】
本発明第一実施例の立体図と断面図である図1、2に示すように、本発明燃料電池は、陽極(図示なし)、陽極に対応して設置する陰極(図示なし)、陽極と陰極との間に設置する電解質(図示なし)、少なくとも2個の気体通路1を備える。
【0012】
気体通路1を、還元性燃料(水素、メタン、燃料用ガスの内の一種、或いはその組合せなど)と酸化性気体(酸素、或いは空気など)が流れ、陽極と陰極の横、かつ電解質の両側に、それぞれ設置する。
各気体通路1の末端には、コーナー部11、及びコーナー部11に連続し、しかも気体通路1を封鎖する末端部12を備える。
しかも、気体通路1末端位置内部には、連続曲面13を形成する。
気体通路1の末端部12外表面は、半球状である。
連続曲面13は、二次曲面、弧状曲面、球状曲面、或いは放物線曲面で、その曲面の傾斜率は連続した数値で、シングルポイント(single point)は発生しない。
【0013】
燃料電池は、電解質のイオン伝導の機能の違いに基づき、おおよそ5種に分類される。
本発明第一実施例は、固態酸化物燃料(Solid Oxide Fuel Cell、SOFCと略称)電池である。
SOFCでは、陰、陽極及び電解層抵抗率の違いに応じて、各材料の抵抗率は厚みに従い上昇する。
そのため、SOFCのセルの組み合わせには、電解質支持セル(electrolyte supported cell)、陰極支持セル(cathode supported cell)、陽極支持セル(anode supported cell)の3種の形態がある。
陽極導電率は、陰極及び電解質導電率よりはるかに高いため、陽極を支持材とすれば、電池内の電気抵抗は著しく低下する。
しかし、このタイプの固態酸化物燃料電池電解質は、薄膜の製造準備が難しいため、製造参入の敷居はかなり高い。
【0014】
本発明第二実施例の断面図である図3に示すように、本発明の気体通路1は、互い違いに設置する。
気体通路1には、還元性燃料を流通させ、もう一方の気体通路1には、酸化性気体を流通させる。
他の構造は相同であるため、再度の記述はしない。
【0015】
図1〜3に示すように、従来の技術に比較し、本発明は以下の長所を備える。
本発明の気体通路1末端には、コーナー部11、コーナー部11に連続し、しかも気体通路1を封鎖する末端部12を備える。
しかも、気体通路1末端位置内部には、連続曲面13を形成し、気体通路1末端の強度を効果的に強化することができる。
【0016】
燃料電池の使用過程では、この構造により、燃料が、気体通路1を通って陽極、陰極電極表面へと拡散する時、効果的に応力を分散できる。
こうして、気体圧力差が過度に高いことによる、過大な酸素源圧力の発生を回避し、気体通路1の崩解或いは破裂の危険を防止することができる。
燃料電池製造プロセスの乾燥、焼結、熱膨張/冷却収縮の過程においても、この構造により、分層、亀裂の発生を回避し、内応力を低下させることができる。
よって、本発明は燃料電池の歩留りを効果的に高め、その使用寿命を延長することができる。
さらに、末端部12の外表面は、半球状とし、これによっても同様に気体通路1末端の強度を高めることができる。
【0017】
上記の本発明名称と内容は、本発明技術内容の説明に用いたのみで、本発明を限定するものではない。本発明の精神に基づく等価応用或いは部品(構造)の転換、置換、数量の増減はすべて、本発明の保護範囲に含むものとする。
【産業上の利用可能性】
【0018】
本発明は特許の要件である新規性を備え、従来の同類製品に比べ十分な進歩を有し、実用性が高く、社会のニーズに合致しており、産業上の利用価値は非常に大きい。
【符号の説明】
【0019】
1 気体通路
11 コーナー部
12 末端部
13 連続曲面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池固態電解質構造は、陽極、陰極、電解質、少なくとも2個の気体通路を備え、
前記陰極は、前記陽極に対応して設置し、
前記電解質は、前記陽極と前記陰極との間に設置し、
前記少なくとも2個の気体通路は、前記陽極と前記陰極の横で、しかも前記電解質の両側にそれぞれ設置し、
前記各気体通路の末端には、コーナー部、及び前記コーナー部と連続し、かつ前記気体通路を封鎖する末端部を備え、しかも前記気体通路末端位置内部には、連続曲面を形成することを特徴とする燃料電池固態電解質構造。
【請求項2】
前記各気体通路の末端外表面は、半球状であることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池固態電解質構造。
【請求項3】
前記燃料電池は、固態酸化物燃料電池であることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池固態電解質構造。
【請求項4】
前記気体通路には、還元性燃料と酸化性気体が流通することを特徴とする請求項1に記載の燃料電池固態電解質構造。
【請求項5】
前記還元性燃料は、水素、メタン、燃料用ガスの内の一種、或いはその組合せで、
前記酸化性気体は、酸素、或いは空気であることを特徴とする請求項4に記載の燃料電池固態電解質構造。
【請求項6】
前記気体通路は、互い違いに設置することを特徴とする請求項1に記載の燃料電池固態電解質構造。
【請求項7】
前記気体通路末端位置内部に形成する連続曲面は、二次曲面であることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池固態電解質構造。
【請求項8】
前記気体通路末端位置内部に形成する連続曲面は、弧状曲面であることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池固態電解質構造。
【請求項9】
前記気体通路末端位置内部に形成する連続曲面は、球状曲面であることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池固態電解質構造。
【請求項10】
前記気体通路末端位置内部に形成する連続曲面は、放物線曲面であることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池固態電解質構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−230899(P2012−230899A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−92892(P2012−92892)
【出願日】平成24年4月16日(2012.4.16)
【出願人】(502250743)國立成功大學 (16)
【氏名又は名称原語表記】NATIONAL CHENG KUNG UNIVERSITY
【住所又は居所原語表記】No.1,Ta−Hsueh Road,East District,Tainan City,Taiwan(R.O.C.)
【Fターム(参考)】