説明

燃料電池用カートリッジ

【課題】コンパクトで取り扱いが容易な燃料電池用カートリッジを提供することを目的とする。
【解決手段】シリンダ体2を構成している胴部9の内部に収容した液体燃料を、前記シリンダ体2に液密状態に嵌合させたピストン5を押圧することにより、前記シリンダ体2の先端部に設けられたコネクタ3から注出させる燃料電池用カートリッジにおいて、ピストン5と別体に成形されると共に、ピストン5と着脱可能に接続され、ピストン5をコネクタ3側へ移動させるための棒状のシャフト部20を有するピストンシャフト6と、シリンダ体2及びピストンシャフト6を個別に収容可能な外装体7と、外装体7を封止する蓋体8とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池に内蔵された燃料タンクに対して、液体燃料を充填する機能を備えた燃料電池用カートリッジに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、モバイル機器用の電源として、液体燃料であるメタノールやエタノールなどを直接、アノード極(燃料極)に供給して、電気化学反応を生じさせることができるダイレクトメタノール型燃料電池(DMFC)が注目されている。このようなダイレクトメタノール型燃料電池では、燃料電池システムを構成する燃料タンクに燃料を補給することにより、充電しなくても電源として使い続けることができ、そのような燃料電池に燃料を補給するための方法として、燃料電池本体に内蔵された燃料タンクに対し、使用者が液体燃料を充填できるようにしたサテライト式の燃料カートリッジが提案されている。このようなサテライト式の燃料カートリッジとして、特許文献1には、燃料電池の液体燃料を貯留する燃料タンクの燃料受入れ口に挿入可能な充填ノズルと、内部に貯留した液体燃料を充填ノズルを通して燃料タンクに充填するための充填容器とを備え、充填ノズルは、充填容器内の液体燃料を供給するための燃料供給部と、燃料タンク内の気体を排出するための気体排出部とを有し、充填容器の内部に貯留されている液体燃料に圧力を作用させ、燃料供給部を通して液体燃料を燃料タンクに充填可能な燃料充填機が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−301962号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、この特許文献1に記載されている燃料カートリッジは、注射器のような構造をしており、燃料貯留部内の燃料を充填するためのピストンとそのピストンを移動させるための取っ手とが一体的に成形されているため、燃料カートリッジ全体の長さが長くなり、保管や持ち運びに不便であったり、保管時や持ち運び時に取っ手に外力が作用した際に燃料が漏洩したりする虞があった。
【0005】
本発明は上記の事情を背景としてなされたものであり、コンパクトで取り扱いが容易な燃料電池用カートリッジを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、請求項1の発明は、シリンダ体を構成している胴部の内部に収容した液体燃料を、前記シリンダ体に液密状態に嵌合させたピストンを押圧することにより、前記シリンダ体の先端部に設けられたコネクタから注出させる燃料電池用カートリッジにおいて、前記ピストンと別体に成形されるとともに前記ピストンと着脱可能に接続されかつ前記ピストンを前記コネクタ側へ移動させるための棒状のシャフト部を有するピストンシャフトと、前記シリンダ体及び前記ピストンシャフトを個別に収容可能な外装体と、前記外装体を封止する蓋体とを備えていることが特徴である。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記蓋体には、前記ピストンシャフトのシャフト部を挿通可能な小孔が形成されており、前記小孔を介して前記シャフト部を前記ピストンと接続可能に構成されており、前記小孔の周縁部の内径が、前記シャフト部の外径と同等或いはそれより僅かに大きくなるように設定されていることが特徴である。
【0008】
請求項3の発明は、請求項2の発明において、前記蓋体の前記小孔の周縁部から前記シリンダ体の内方に向かって、且つ、前記シリンダ体の胴部の軸線方向に沿って延びている筒状のピストンシャフトガイドが設けられていることが特徴である。
【0009】
請求項4の発明は、請求項2又は3の発明において、前記蓋体の前記小孔を封止するバージンシール部が設けられていることが特徴である。
【0010】
請求項5の発明は、請求項1乃至4のいずれかの発明において、前記ピストンシャフトの前記シャフト部に比べて、前記ピストンが軟質の樹脂材料により構成されていることが特徴である。
【0011】
請求項6の発明は、請求項1乃至5のいずれかの発明において、前記ピストンシャフトにおける前記シャフト部の外径(d)と前記シリンダ体の胴部の内径(D)との関係が、下記式(1)を満たすことが特徴である。
(1/5)D≦d≦(1/3)D …(1)
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明によれば、シリンダ体内の燃料をコネクタ側に押し出すためのピストンと、ピストンをコネクタ側へ移動させるためのピストンシャフトとが別体に成形されていることにより、使用時以外は、ピストンとピストンシャフトとを分離させておくことができるため、カートリッジ全体の長さをコンパクトにすることができると共に、保管時や持ち運び時にピストンに外力が作用することを防止することができる。また、シリンダ体及びピストンシャフトを個別に収容可能な外装体と、外装体を封止する蓋体とを有することにより、保管や持ち運びを容易に行うことができる。
【0013】
請求項2の発明によれば、蓋体には、シャフト部を挿通可能な小孔が形成されており、小孔の周縁部の内径が、シャフト部の外径と同等或いはそれより僅かに大きくなるように設定されていることにより、小孔にピストンシャフトのシャフト部を挿通した際に、小孔の周縁部がガイドとなってピストンシャフトを所定方向に安定してスムーズに移動させることができる。
【0014】
請求項3の発明によれば、蓋体の小孔の周縁部からシリンダ体の内方に向かって、且つ、シリンダ体の胴部の軸線方向に沿って延びている筒状のピストンシャフトガイドが設けられていることにより、ピストンシャフトを確実にシリンダ体の胴部の軸線方向に沿って移動させることができるため、ピストンを容易に移動させることができる。
【0015】
請求項4の発明によれば、蓋体の小孔を封止するバージンシール部が設けられていることにより、ピストンシャフトを固定したり、カートリッジ全体を覆ったりしなくても、小孔を封止するだけで簡単にカートリッジのバージンシール性を確保することができる。
【0016】
請求項5の発明によれば、シャフト部に比べて、ピストンが軟質の樹脂材料により構成されているので、ピストンに比較的軟質な樹脂材料を使用することによりピストンとシリンダ体との密封性を向上することができ、またシャフト部に比較的硬質な樹脂材料を使用することによりピストンシャフトによるピストンヘの押圧力を十分に作用させることができる。
【0017】
請求項6の発明によれば、ピストンシャフトのシャフト部の外径(d)とシリンダ体の内径(D)との関係が、(1/5)D≦d≦(1/3)Dを満たすように設定されていることにより、シリンダ体の内径に応じてシャフト部の強度を十分に確保できると共に、シャフト部の外径を大きくしすぎることもないため、燃料電池用カートリッジをコンパクトに構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一具体例を示す断面図である。
【図2】そのピストンを示す断面図である。
【図3】図1のIII−III線に沿う断面図である。
【図4】本発明の一具体例を示す側面図である。
【図5】その使用時の状態を示す断面図である。
【図6】燃料電池などの機器本体に接続した状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に係る燃料電池用カートリッジ1は、メタノールやエタノールなどの液体燃料を、燃料電池に内蔵された燃料タンクに充填する機能を備えた燃料カートリッジであり、図1に示すように、液体燃料が収容された円筒体(以下、シリンダ体と記す)2と、シリンダ体2の先端部に固着されたコネクタ3とを備えている。そのコネクタ3は、燃料電池に内蔵された燃料タンク(それぞれ図示せず)に着脱可能に接続されて、シリンダ体2内の燃料を燃料タンクに注出可能な注出路4を有している。また、本発明に係る燃料電池用カートリッジ1は、図1に示すように、シリンダ体2の内部に液密状態を維持して前後動するように挿入され、シリンダ体2内の燃料をコネクタ3側に押し出すためのピストン5と、ピストン5と別体に成形され、ピストン5と着脱可能に接続され、ピストン5をコネクタ3側へ移動させるためのピストンシャフト6と、シリンダ体2及びピストンシャフト6を個別に収容可能な外装体7と、外装体7の開口部を封止する蓋体8とを有している。
【0020】
これらの燃料電池用カートリッジ1の各構成部品は、合成樹脂材料を主体として構成されており、その合成樹脂材料としては、ポリプロピレン、ポリフェニレンサルファイド、高密度ポリエチレン、ポリスチレン、ポリブチレンテレフタレート、ポリアセタール、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート、環状オレフィンコポリマー、シクロオレフィンポリマー、ポリメチルペンテン、ポリフェニルサルホン等が好適に使用できる。
【0021】
以下に、詳細に説明する。尚、説明の便宜上、本発明の燃料電池用カートリッジ1におけるコネクタ3が設けられた側を前方、蓋体8が設けられた側を後方とする。
【0022】
シリンダ体2は、円筒状の胴部9と、胴部9の前端側に形成され、胴部9より小径の円筒状で、コネクタ3の一端部が内部に挿入されて係合可能となる係合部10とを有している。係合部10の外周面には、外装体7と係合される係止突起11が形成され、胴部9の後端側の外周面には蓋体8と係合される係止突起12が形成されている。また、シリンダ体2の胴部9の後端部は胴部9の内径と同等の大きさの開口部が形成され、後端側からピストン5を挿入できるように構成されている。尚、シリンダ体2は、透明又は半透明の樹脂で成形されており、シリンダ体2内の液体燃料の残量を視認可能なように構成されている。
【0023】
コネクタ3は、後端側がシリンダ体2の係合部10に挿入されて係合され、前端側は、燃料電池の燃料タンクに着脱可能に接続される接続部13となっている。また、コネクタ3は、内部を燃料が通過可能な円筒状の注出路4を有し、注出路4の内部には、コネクタ3が燃料タンクに装着された状態でのみ、燃料が注出可能となるような弁体14が設けられている。
【0024】
ピストン5を図2に断面図で示してあり、ピストン5は、シリンダ体2の胴部9の内部に挿入され、シリンダ体2の胴部9の内周面に摺動可能に密接されており、ピストン5の外径は、シリンダ体2の胴部9の内径と同等或いはそれより僅かに大きくなるように設定されている。ピストン5は、円板状の押板部15と、押板部15の周縁部に接続され、シリンダ体2の後端側に延びてシリンダ体2の胴部9の内周面に密接する筒状密封壁16と、押板部15の中央部から、ピストン5の中心軸に沿ってシリンダ体2の後端側に延びている棒状突起17とを有している。筒状密封壁16の外周面の前端部と後端部とそれらの中間部とには、シリンダ体2の内周壁と全周で密接する環状シール部18がそれぞれ形成されており、中間部の環状シール部18にはゴム製のOリング19が取り付けられている。尚、Oリング19を構成する樹脂材料としては、エチレン−プロピレン−ジエンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、ニトリルゴム等が好適に使用できる。また、ピストン5を構成する樹脂材料は、ピストン5とシリンダ体2の胴部9の内周面との密封性を十分に確保するために、シリンダ体2やピストンシャフト6を構成する樹脂材料よりも軟質(硬度の柔らかい)の樹脂材料を使用することが好ましい。
【0025】
ピストンシャフト6は、棒状のシャフト部20と、シャフト部20の後端部に接続され、シャフト部20よりも外径の大きい円板状の押圧部21とを有している。シャフト部20の前端部は中空の筒状部22になっており、その筒状部22の内径が、ピストン5の棒状突起17の外径と同一又はそれより僅かに大きく設定されており、筒状部22に棒状突起17を着脱可能に挿入できるように構成されている。ピストンシャフト6のシャフト部20の外径(d)とシリンダ体2の内径(D)との関係は、(1/5)D≦d≦(1/3)Dを満たすように設定されていることが好ましく、本実施例では、シリンダ体2の内径が15〜30mmの範囲であるのに対し、シャフト部20の外径が3〜10mmの範囲に設定されている。
【0026】
外装体7は、シリンダ体2を収容するシリンダ体収容部23と、ピストンシャフト6を収容するピストンシャフト収容部24とを備えており、図3に示すように、外装体7の全体として、断面が小判形状の筒状の外周壁25と、外周壁25の前端部に接続される底板部26とを有している。外周壁25の後端部は全体が開口された状態となっており、底板部26のシリンダ体収容部23側には比較的小径の開口部が形成されている。底板部26の開口部の内径は、シリンダ体2の係合部10の外径と同等かそれよりも僅かに大きくなっており、底板部26の開口部の内周面にシリンダ体2の係合部10の外周面に形成された係止突起11と係合する係止凹部が形成され、シリンダ体2の係合部10が開口部に挿通され、係合した状態で、外装体7にシリンダ体2が収容されるように構成されている。シリンダ体収容部23の外周壁25には、図4に示すように、透明又は半透明の窓部Wが形成されており、シリンダ体2を通してシリンダ体2内の液体燃料の残量を視認可能なように構成されている。
【0027】
外装体7の底板部26は、シリンダ体収容部23とピストンシャフト収容部24との境界部に段差が設けられており、シリンダ体収容部23側の底板部26の方が、ピストンシャフト収容部24側の底板部26よりも外装体7の前端側に突出するように形成されている。ピストンシャフト収容部24の底板部26の内面側には、外装体7の後端側に向かって延びている棒状突起27が形成されており、棒状突起27の外径は、ピストンシャフト6のシャフト部20における筒状部22の内径と同等或いはそれより僅かに小さく設定されており、筒状部22に棒状突起27を着脱可能に挿入(嵌合)できるように構成され、棒状突起27にピストンシャフト6を嵌合した状態で、ピストンシャフト収容部24にピストンシャフト6が収容されるようになっている。
【0028】
蓋体8は、外装体7の外周壁25の形状に対応する小判形状の天板部28を有し、天板部28の周縁部の内面と外装体7の外周壁25の後端部とが接着剤により接合されて、外装体7の後端側の開口部を封止するように構成されている。外装体7のシリンダ体収容部23に対応する天板部28の内面側には、シリンダ体2の後端部の外周面に係合する筒状壁29が形成されている。また、外装体7のシリンダ体収容部23に対応する天板部28の中央部には、ピストンシャフト6におけるシャフト部20の外径と同等或いはそれよりも僅かに大きい内径を有する第1小孔30が形成されている。第1小孔30は、外装体7にシリンダ体2が収容された状態で、シリンダ体2の中心軸と第1小孔30の中心とが一致するように設けられている。第1小孔30の周縁部からシリンダ体2(カートリッジ1)の内方に向かって、且つ、シリンダ体2の軸線方向に沿って延びている円筒状のピストンシャフトガイド31が形成されている。また、第1小孔30を覆うように、第1小孔30の周縁部からカートリッジ1の外方に突出する突起状のバージンシール部32が形成されている。
【0029】
本実施例では、バージンシール部32は、内部が中空の突起状で根元が薄肉になっており、バージンシール部32を折り曲げることにより根元の薄肉部が破断して天板部28からバージンシール部32が取り外せるように構成されているが、特にこのような形状に限定されるものではなく、第1小孔30を開封可能に封止できるような構造であればよい。
【0030】
また、外装体7のピストンシャフト収容部24に対応する天板部28には、ピストンシャフト6におけるシャフト部20の外径と同等或いはそれよりも僅かに大きい内径を有する第2小孔33が形成され、蓋体8の外部から第2小孔33を介して外装体7内にピストンシャフト6を挿入して収容できるように構成されている。
【0031】
蓋体8における天板部28の第1小孔30の中心とピストン5の棒状突起17の中心軸とシリンダ体2の胴部9の中心軸とは一致するように配置されており、ピストンシャフト6のシャフト部20を第1小孔30に挿入して、ピストンシャフト6によりピストン5を押し動かす際に、ピストンシャフトガイド31がピストンシャフト6のシャフト部20に対するガイド面として作用することで、ピストンシャフトをシリンダ体2の軸線方向に沿うように真っ直ぐに動かすことができる。
【0032】
本実施例では、蓋体8の天板部28の厚さは、1〜4mmの範囲に設定されており、天板部28の厚さを比較的厚くするだけでも、第1小孔30の周縁部がピストンシャフト6に対するガイド面としての役割を果たすことができるが、天板部28全体の厚さを厚くすると蓋体8を構成する樹脂材料が多く必要になりコストアップするため、コストを抑えつつ、十分なガイド機能を持たせるためには、天板部28の内面側に筒状に突出するピストンシャフトガイド31を設けることが好ましい。
【0033】
尚、ピストンシャフトガイド31の長さは、十分なガイド機能を確保しつつ、カートリッジ1をコンパクトに構成するために、バージンシール部32を取り外した状態での第1小孔30の後端(蓋体8の天板部28の外面)からピストンシャフトガイド31の前端までの距離が2〜20mmの範囲であることが好ましい。また、第1小孔30の内径は、ピストンシャフト6におけるシャフト部20の外径の1〜1.2倍(好ましくは1〜1.1倍)に設定されていることが好ましい。
【0034】
本発明の燃料電池用カートリッジ1は、使用前には、図1あるいは図4に示すように、ピストンシャフト6が外装体7のピストンシャフト収容部24に収容された状態となっており、使用時には、先ず、蓋体8のバージンシール部32を折り曲げて取り外すと共に、コネクタ3を燃料電池本体34の燃料タンクに接続する。こうすることで弁体14が押し開かれ、次いで、ピストンシャフト6を外装体7から取り出して、そのシャフト部20を蓋体8の第1小孔30に挿入し、シャフト部20の筒状部22をピストン5の棒状突起17に嵌合させる。その状態を図5あるいは図6に示してある。そこから更に、ピストンシャフト6を押し込むことによりピストン5を押し動かすことで、シリンダ体2内の液体燃料をコネクタ3から燃料電池本体34の燃料タンクに注出することができる。
【0035】
本発明の燃料電池用カートリッジ1によれば、シリンダ体2内の燃料をコネクタ3側に押し出すためのピストン5と、ピストン5をコネクタ3側へ移動させるためのピストンシャフト6とが別体に成形されていることにより、使用時以外は、ピストン5とピストンシャフト6とを分離させておくことができるため、カートリッジ全体の長さをコンパクトにすることができると共に、保管時や持ち運び時にピストン5に外力が作用することを防止することができる。また、シリンダ体2及びピストンシャフト6を個別に収容可能な外装体7と、外装体7を封止する蓋体8とを有することにより、保管や持ち運びを容易に行うことができる。
【0036】
また、蓋体8には、シャフト部20を挿通可能な第1小孔30が形成されており、第1小孔30の周縁部の内径が、シャフト部20の外径と同等或いはそれより僅かに大きくなるように設定されていることにより、第1小孔30にピストンシャフト6のシャフト部20を挿通した際に、第1小孔30の周縁部がガイドとなってピストンシャフト6を所定方向に安定してスムーズに移動させることができる。
【0037】
さらに、蓋体8の小孔の周縁部からシリンダ体2の内方に向かって、且つ、シリンダ体2の胴部9の軸線方向に沿って延びている筒状のピストンシャフトガイド31が設けられていることにより、ピストンシャフト6を確実にシリンダ体2の胴部9の軸線方向に沿って移動させることができるため、ピストン5を容易に移動させることができる。
【0038】
また、蓋体8の小孔を封止するバージンシール部32が設けられていることにより、ピストンシャフト6を固定したり、カートリッジ1全体を覆ったりしなくても、小孔を封止するだけで簡単にカートリッジ1のバージンシール性を確保することができる。
【0039】
さらに、ピストンシャフト6のシャフト部20の外径(d)とシリンダ体2の内径(D)との関係が、(1/5)D≦d≦(1/3)Dを満たすように設定されていることにより、シリンダ体2の内径に応じてシャフト部20の強度を十分に確保できると共に、シャフト部20の外径を大きくしすぎることもないため、燃料電池用カートリッジ1をコンパクトに構成することができる。
【0040】
すなわち、シャフト部20の外径が、シリンダ体2の内径の1/5よりも小さい場合は、ピストンシャフト6によりシリンダ体2内のピストン5を押し動かして液体燃料を注出する際に、ピストン5を動かすのに必要な力に対してシャフト部20の外径が細すぎるため、シャフト部20が変形したり破損したりする虞がある。一方、シャフト部20の外径が、シリンダ体2の内径の1/3よりも大きい場合は、シャフト部20が必要以上に太くなるため、ピストンシャフト6を収容する外装体7が大きくなり、保管や持ち運びに不便になる虞がある。
【0041】
また、シャフト部20に比べて、ピストン5が軟質の樹脂材料により構成されていることにより、ピストン5に比較的軟質な樹脂材料を使用することでピストン5とシリンダ体2との密封性を向上することができると共に、シャフト部20に比較的硬質な樹脂材料を使用することでピストンシャフト6によるピストン5ヘの押圧力を十分に作用させることができる。
【符号の説明】
【0042】
1…燃料電池用カートリッジ、 2…円筒体(シリンダ体)、 3…コネクタ、 4…注出路、 5…ピストン、 6…ピストンシャフト、 7…外装体、 8…蓋体、 9…胴部、 13…接続部、 17…棒状突起、 18…環状シール部、 20…シャフト部、 23…シリンダ体収容部、 24…ピストンシャフト収容部、 30…第1小孔、 31…ピストンシャフトガイド、 32…バージンシール部、 33…第2小孔、 W…窓部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダ体を構成している胴部の内部に収容した液体燃料を、前記シリンダ体に液密状態に嵌合させたピストンを押圧することにより、前記シリンダ体の先端部に設けられたコネクタから注出させる燃料電池用カートリッジにおいて、
前記ピストンと別体に成形されると共に、前記ピストンと着脱可能に接続され、前記ピストンを前記コネクタ側へ移動させるための棒状のシャフト部を有するピストンシャフトと、
前記シリンダ体及び前記ピストンシャフトを個別に収容可能な外装体と、
前記外装体を封止する蓋体と
を備えていることを特徴とする燃料電池用カートリッジ。
【請求項2】
前記蓋体には、前記ピストンシャフトのシャフト部を挿通可能な小孔が形成されており、前記小孔を介して前記シャフト部を前記ピストンと接続可能に構成されており、前記小孔の周縁部の内径が、前記シャフト部の外径と同等或いはそれより僅かに大きくなるように設定されていることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池用カートリッジ。
【請求項3】
前記蓋体の前記小孔の周縁部から前記シリンダ体の内方に向かって、且つ、前記シリンダ体の胴部の軸線方向に沿って延びている筒状のピストンシャフトガイドが設けられていることを特徴とする請求項2に記載の燃料電池用カートリッジ。
【請求項4】
前記蓋体の前記小孔を封止し、且つ破断させて前記蓋体から取り外されるバージンシール部が設けられていることを特徴とする請求項2又は3に記載の燃料電池用カートリッジ。
【請求項5】
前記ピストンシャフトの前記シャフト部に比べて、前記ピストンが軟質の樹脂材料により構成されていることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の燃料電池用カートリッジ。
【請求項6】
前記ピストンシャフトにおける前記シャフト部の外径(d)と前記シリンダ体の胴部の内径(D)との関係が、下記式(1)を満たすことを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の燃料電池用カートリッジ。
(1/5)D≦d≦(1/3)D …(1)

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−150984(P2012−150984A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−8786(P2011−8786)
【出願日】平成23年1月19日(2011.1.19)
【出願人】(000208455)大和製罐株式会社 (309)
【Fターム(参考)】