説明

燃料電池用電極材料、これを含む燃料電池及びその製造方法

【課題】本発明は、燃料電池用電極材料、これを含む燃料電池及びその製造方法に関する。
【解決手段】本発明による燃料電池用電極材料は、電極母材と、熱処理によって前記電極母材に気孔を形成する球形のポリスチレン粒子と、を含む。本発明による電極材料は、球形のポリスチレン粒子の平均粒径及び含量を調節することにより、電極母材の焼結体に均一なサイズの気孔を形成することができ、気孔率の制御が容易になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池用電極材料、これを含む燃料電池及びその製造方法に関し、より具体的には、燃料電池の効率を高めることができる燃料電池用電極材料、これを含む燃料電池及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、燃料(水素)の化学エネルギーが電気エネルギーに直接変換されて電流を生産する能力を有する電池(Cell)に定義される。燃料電池は、酸化物電解質を介して酸化剤(例えば、酸素)と気相燃料(例えば、水素)を電気化学的に反応させることによって電気を生産するエネルギー転換装置であり、従来の電池とは異なって、外部から燃料と空気が供給されて連続的に電気を生産する特徴を有する。
【0003】
燃料電池の種類は、用いられる電解質または燃料の種類によって区分されることができる。また、用いられる電解質によって燃料電池の作動温度及び構成部品の材質が変わることができる。
【0004】
燃料電池の種類には、高温で作動する溶融炭酸塩燃料電池(Molten Carbonate Fuel Cell、MCFC)、固体酸化物燃料電池(Solid Oxide Fuel Cell、SOFC)及び比較的低い温度で作動するリン酸型燃料電池(Phosphoric Acid Fuel Cell、PAFC)、アルカリ型燃料電池(Alkaline Fuel Cell、AFC)、高分子電解質燃料電池(Proton Exchange Membrane Fuel Cell、PEMFC)、直接メタノール燃料電池(Direct Methanol Fuel Cells、DEMFC)などがある。
【0005】
固体酸化物燃料電池は、固相構造を有し、多重燃料に対する適応性及び高温作動性を有する。このような特徴により、固体酸化物燃料電池は高性能かつ効率的な電源になり得る潜在力を有し、多様な電力発生用途として開発されている。
【0006】
固体酸化物燃料電池は、一般的に燃料電極(アノード;anode)と空気電極(カソード;cathode)との間に挟まれた電解質膜を単位電池とし、上記単位電池が積層されたスタック構造を有する。
【0007】
固体酸化物燃料電池の効率を高めるためには、電解質膜の両面に位置する燃料電極及び空気電極の気孔率及びガス透過率を高めることが重要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、燃料電池の効率を高めることができる燃料電池用電極材料、これを含む燃料電池及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によると、電極母材と、熱処理によって上記電極母材に気孔を形成する球形のポリスチレン粒子と、を含む燃料電池用電極材料が提供される。
【0010】
上記ポリスチレン粒子の平均粒径は2〜20μmであることができる。
【0011】
上記ポリスチレン粒子の含量は、上記電極母材100重量部に対して5〜15重量部であることができる。
【0012】
上記電極母材は固体酸化物燃料電池の電極材料であることができる。
【0013】
上記電極母材は金属−セラミックイオン伝導体の複合体であることができる。
【0014】
上記電極母材は、ストロンチウムドープのランタンマンガナイト(Lanthanum Strontium Manganite、LSM)、ニッケルオキサイド(Nickel Oxide、NiO)とイットリア安定化ジルコニア(Yttria Stabilized Zirconia;YSZ)が混合されたNi−YSZサーメット(cermet)、Cu−YSZサーメット、LSM−YSZサーメット(cermet)、ニッケルオキサイド(Nickel Oxide、NiO)とスカンジア安定化ジルコニア(scandia stabilized zirconia、ScSZ)が混合されたNi−ScSZサーメット、Cu−ScSZ、ニッケルオキサイドとガドリニウムドープセリア(Gd doped ceria(CeO2)、GDC)が混合されたNi−GDCサーメット、Cu−GDCサーメット、及びランタンストロンチウムコバルト鉄複合酸化物(Lanthanum Strontium Cobalt Ferrite、LSCF)からなる群から選択される一つ以上であることができる。
【0015】
上記電極母材は粉末形態であることができる。
【0016】
上記電極材料はバインダ樹脂をさらに含むことができる。
【0017】
本発明によると、電解質膜と、上記電解質膜の一面及び他面に夫々形成されるアノード電極及びカソード電極と、を含み、上記アノード電極及び上記カソード電極のうち少なくとも一つの電極は、球形のポリスチレン粒子の燃焼によって形成された多数の気孔を有する電極母材の焼結体である燃料電池が提供される。
【0018】
上記気孔の平均粒径は2〜20μmであることができる。
【0019】
上記焼結体の気孔率は15〜50%であることができる。
【0020】
上記電極母材は固体酸化物燃料電池の電極材料であることができる。
【0021】
上記電極母材は金属−セラミックイオン伝導体の複合体であることができる。
【0022】
本発明によると、電極母材及び球形のポリスチレン粒子を含む電極材料でスラリーを製造する段階と、上記スラリーで電極シートを製造する段階と、上記電極シートを焼成して、上記球形のポリスチレン粒子の燃焼によって形成された気孔を有する電極母材の焼結体を形成する段階と、上記電極母材の焼結体を電解質膜の一面及び他面のうち少なくとも一面に形成してアノード電極またはカソード電極として配置する段階と、を含む燃料電池の製造方法が提供される。
【0023】
上記ポリスチレン粒子の平均粒径は2〜20μmであることができる。
【0024】
上記ポリスチレン粒子の含量は上記電極母材100重量部に対して5〜15重量部であることができる。
【0025】
上記電極母材は固体酸化物燃料電池の電極材料であることができる。
【0026】
上記電極母材は金属−セラミックスイオン伝導体の複合体であることができる。
【0027】
上記電極母材は粉末形態であることができる。
【0028】
上記電極材料はバインダ樹脂をさらに含むことができる。
【0029】
上記電極シートの焼成は1,000℃以上で行われることができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明による燃料電池用電極材料は電極母材及び球形のポリスチレン粒子を含む。上記球形のポリスチレン粒子は電極母材の焼成過程で除去される。即ち、電極母材とともに熱処理される過程で、上記球形のポリスチレン粒子は電極母材の焼結体に気孔を残して燃焼される。
【0031】
ポリスチレン樹脂は多様なサイズの粒子に製造されることができ、平均粒径の制御が容易であるため、これを気孔材として利用した電極材料は電極の気孔率及び気孔のサイズを容易に制御することができる。即ち、球形のポリスチレン粒子の平均粒径及び含量を調節することにより、電極母材の焼結体に均一なサイズの気孔を形成することができ、気孔率の制御が容易になる。
【0032】
これを利用した燃料電池は、酸素と水素が透過する電極の気孔率が高くなり、気孔の均一度に優れて燃料電池の効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の一実施形態による燃料電池を概略的に示す模式図である。
【図2】本発明の一実施形態による電極材料の焼結温度による気孔形成の比率を示すグラフである。
【図3】本発明の一実施形態による電極材料で形成された電極のガス透過度を示すグラフである。
【図4】(a)は実施例による電極の走査電子顕微鏡(SEM、Scanning Electron Microscope)写真であり、(b)は比較例による電極の走査電子顕微鏡(SEM、Scanning Electron Microscope)写真である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、添付の図面を参照して本発明の好ましい実施形態を説明する。但し、本発明の実施形態は様々な他の形態に変形されることができ、本発明の範囲は以下に説明する実施形態に限定されるものではない。また、本発明の実施形態は当業界で平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。従って、図面における要素の形状及び大きさ等はより明確な説明のために誇張されることがあり、図面上において同一の符号で表される要素は同一の要素である。
【0035】
図1は本発明の一実施形態による燃料電池を概略的に示す模式図である。
【0036】
本実施形態による燃料電池は、電解質膜110と、上記電解質膜の一面及び他面に夫々形成されたアノード電極120と、カソード電極130とを含む。
【0037】
本発明の一実施形態による燃料電池の種類は、溶融炭酸塩燃料電池(Molten Carbonate Fuel Cell、MCFC)、固体酸化物燃料電池(Solid Oxide Fuel Cell、SOFC)及びリン酸型燃料電池(Phosphoric Acid Fuel Cell、PAFC)、アルカリ型燃料電池(Alkaline Fuel Cell、AFC)、高分子電解質燃料電池(Proton Exchange Membrane Fuel Cell、PEMFC)、直接メタノール燃料電池(Direct Methanol Fuel Cells、DEMFC)などがあり、以下では固体酸化物燃料電池を例にとって説明する。
【0038】
上記燃料電池は、一つの電解質膜110と、上記電解質膜の両面に夫々形成されたアノード電極120と、カソード電極130とを単位電池とし、上記単位電池が複数個積層されたスタック構造であることができる。
【0039】
上記電解質膜110は燃料電池の種類によって選択されることができ、固体酸化物燃料電池ではこれに制限されるものではないが、例えばイットリア安定化ジルコニア(Yttria Stabilized Zirconia、YSZ)であることができる。
【0040】
上記電解質膜110の厚さはこれに制限されるものではないが、例えば1〜5μmであることができる。
【0041】
電解質膜は、厚さが薄膜化されるほど電解質の内部で酸素イオンの移動距離が減少してオーム抵抗と分極抵抗が減少し、電解質膜とアノード電極の接触性と反応性を向上させることにより、単位電池の性能を向上させることができる。
【0042】
上記アノード電極120及び/またはカソード電極130は多孔性構造体であることができる。より具体的には、電極母材の焼結による焼結体であり、上記電極母材の焼結体には、ポリスチレン粒子の燃焼によって形成された多数の気孔が存在することができる。上記ポリスチレン粒子は球形の形態を有するものであり、熱処理によって除去されながら電極母材の焼結体に球形の気孔を残したものである。
【0043】
上記アノード電極120及び/または上記カソード電極130は、本発明の一実施形態による燃料電池用電極材料によって形成されることができる。これに対するより具体的な説明は後述する。
【0044】
上記カソード電極(または「空気極」という、130)に酸素が透過されて電解質膜110に至り、酸素の還元反応によって生成された酸素イオンが電解質膜を介してアノード電極(または「燃料極」という、120)に移動する。酸素イオンはアノード電極に供給された水素と反応して水を生成するようになる。この際、アノード電極では電子が生成され、カソード電極では電子が消耗されることにより、電気が流れるようになる。
【0045】
燃料電池の効率を高めるためには、酸素と水素が透過する多孔性の空気極と燃料極の気孔率を向上させて、ガス透過率を高めることが重要である。
【0046】
本発明の一実施形態によるアノード電極120及びカソード電極130は多孔性の構造体であり、気孔の平均粒径は2〜20μmであることができる。また、上記焼結体の気孔率は15〜50%であることができる。
【0047】
上記気孔の平均粒径が2μm未満であるとイオン伝導率が低下する恐れがあり、上記気孔の平均粒径が20μmを超過すると電極構造体の強度が低下する恐れがある。
【0048】
上記アノード電極120及び上記カソード電極130は本発明の一実施形態による燃料電池用電極材料によって形成されることができる。以下、本発明の一実施形態による燃料電池用電極材料について説明する。
【0049】
本発明の燃料電池用電極材料は、電極母材と、熱処理によって上記電極母材の焼結体に気孔を形成する球形のポリスチレン粒子とを含むことができる。
【0050】
上述したように、本発明の一実施形態による燃料電池用電極材料は固体酸化物燃料電池の電極を製造するのに用いられることができる。
【0051】
即ち、これに制限されるものではないが、溶融炭酸塩燃料電池(Molten Carbonate Fuel Cell、MCFC)、固体酸化物燃料電池(Solid Oxide Fuel Cell、SOFC)及びリン酸型燃料電池(Phosphoric Acid Fuel Cell、PAFC)、アルカリ型燃料電池(Alkaline Fuel Cell、AFC)、高分子電解質燃料電池(Proton Exchange Membrane Fuel Cell、PEMFC)、直接メタノール燃料電池(Direct Methanol Fuel Cells、DEMFC)などの電極を製造するのに用いられることができる。
【0052】
本発明の一実施形態による電極母材は燃料電池の電極材料として用いられるものであれば特に制限されない。
【0053】
より具体的には、上記電極母材は固体酸化物燃料電池のアノード電極またはカソード電極として用いられる物質を用いることができ、金属−セラミックイオン伝導体の複合体を用いることができる。
【0054】
上記電極母材はこれに制限されるものではないが、ストロンチウムドープのランタンマンガナイト(Lanthanum Strontium Manganite、LSM)、ニッケルオキサイド(Nickel Oxide、NiO)とイットリア安定化ジルコニア(Yttria Stabilized Zirconia、YSZ)が混合されたNi−YSZサーメット(cermet)、Cu−YSZサーメット、LSM−YSZサーメット(cermet)、ニッケルオキサイド(Nickel Oxide、NiO)とスカンジア安定化ジルコニア(scandia Stabilized Zirconia、ScSZ)が混合されたNi−ScSZサーメット、Cu−ScSZ、ニッケルオキサイドとガドリニウムドープセリア(Gd doped ceria(CeO2)、GDC)が混合されたNi−GDCサーメット、Cu−GDCサーメット、ランタンストロンチウムコバルト鉄複合酸化物(Lanthanum Strontium Cobalt Ferrite、LSCF)などであることができる。
【0055】
これに制限されるものではないが、LSMはLa0.8Sr0.2MnOの化学式を有し、LSCFはLa0.6Sr0.4Co0.2Fe0.8の化学式を有することができる。
【0056】
LSMは優れた機械的信頼性及び酸化/還元サイクルで非常に安定的な特性を有している。
【0057】
LSCFは高い混合イオン/電気伝導度を有するため、中・低温での運転が可能である。例えば、上記LSCFは800℃で0.01のイオン伝導度と200S/cm以上の電気伝導度を有する。上記LSCFは高い熱的、化学的安全性を有し、酸素還元のための高い触媒反応性を有する。
【0058】
上記LSCFはゾル−ゲル法または燃焼噴霧熱分解法(combustion spray pyrolysis)を利用して形成されることができる。
【0059】
上記電極母材は粉末形態であることができ、粉末の平均粒径は5〜20nmであることができる。上記電極母材の比表面積は100〜200m/gであることができる。
【0060】
本発明の一実施形態による燃料電池用電極材料は球形のポリスチレン粒子を含む。上記ポリスチレン粒子は上記電極母材の焼成過程で除去される。即ち、電極母材とともに熱処理される過程で、上記球形のポリスチレン粒子は電極母材の焼結体に気孔を残して燃焼される。
【0061】
燃料電池の効率を高めるためには、酸素と水素が透過する電極の気孔率を高め、気孔の均一度を制御することが重要である。
【0062】
従来はカーボン系を気孔材として用いたが、カーボン系の気孔材は熱処理条件によって燃焼特性が変わるため、気孔のサイズ及び気孔率を制御しにくいという問題がある。カーボンブラックは含量が増加するにつれて収縮率が増加するため、気孔率を制御しにくいという問題がある。また、カーボン系は環境的に有害であるという短所がある。
【0063】
本発明の一実施形態による燃料電池用電極材料は球形のポリスチレンを気孔材として用いたものである。ポリスチレン樹脂は多様なサイズの粒子に製造されることができ、平均粒径の制御が容易であるため、これを利用すると電極の気孔率及び気孔サイズを容易に制御することができる。
【0064】
球形のポリスチレン粒子の平均粒径及び含量を調節することにより電極母材の焼結体に均一なサイズの気孔を形成することができ、気孔率の制御を容易にすることができる。
【0065】
これに制限されるものではないが、上記球形のポリスチレン粒子の平均粒径は2〜20μmであることができる。上記球形のポリスチレン粒子の平均粒径が2μm未満であると電極母材の焼結体に気孔を形成することが困難になり、上記球形のポリスチレン粒子の平均粒径が20μmを超過すると気孔が大きくなりすぎて焼結体の強度が低下する恐れがある。
【0066】
また、これに制限されるものではないが、上記球形のポリスチレン粒子の含量は電極母材100重量部に対して5〜15重量部であることができる。
【0067】
上記含量の範囲内でポリスチレン粒子の気孔率は線形に増加する特性を示す。これを利用して、設計目的に応じて電極内の気孔率を調節することができる。
【0068】
また、本発明の一実施形態による燃料電池用電極材料はバインダ樹脂を含むことができる。上記バインダ樹脂は電極母材を結合させて焼結体形成を助けることができる。
【0069】
上記バインダ樹脂の含量は上記電極母材100重量部に対して5〜30重量部であることができる。
【0070】
上記バインダ樹脂としては水素イオン伝導性を有する高分子樹脂を用いることができる。例えば、側鎖にスルホン酸基、カルボキシル酸基、リン酸基、ホスホン酸基及びこれらの誘導体からなる群から選択される陽イオン交換基を有する高分子樹脂を用いることができる。
【0071】
例えば、フッ素系高分子、ベンズイミダゾール系高分子、ポリイミド系高分子、ポリエーテルイミド系高分子、ポリフェニレンスルフィド系高分子、ポリスルホン系高分子、ポリエーテルスルホン系高分子、ポリエーテルケトン系高分子、ポリエーテル−エーテルケトン系高分子、またはポリフェニルキノキサリン系高分子を用いることができる。
【0072】
以下、本発明の一実施形態による燃料電池用電極材料を利用した燃料電池の製造方法を説明する。
【0073】
まず、電極母材及び球形のポリスチレン粒子を含む燃料電池用電極材料を準備する。上記燃料電池用電極材料は本発明の一実施形態によるものである。
【0074】
上記電極母材はこれに制限されるものではないが、金属−セラミックイオン伝導体を用いることができる。
【0075】
上記電極母材はこれに制限されるものではないが、例えば、ストロンチウムドープのランタンマンガナイト(Lanthanum Strontium Manganite、LSM)、ニッケルオキサイド(Nickel Oxide、NiO)とイットリア安定化ジルコニア(Yttria Stabilized Zirconia、YSZ)が混合されたNi−YSZサーメット(cermet)、Cu−YSZサーメット、LSM−YSZサーメット(cermet)、ニッケルオキサイド(Nickel Oxide、NiO)とスカンジア安定化ジルコニア(scandia Stabilized Zirconia、ScSZ)が混合されたNi−ScSZサーメット、Cu−ScSZ、ニッケルオキサイドとガドリニウムドープセリア(Gd doped ceria(CeO2)、GDC)が混合されたNi−GDCサーメット、Cu−GDCサーメット、ランタンストロンチウムコバルト鉄複合酸化物(Lanthanum Strontium Cobalt Ferrite、LSCF)などであることができる。
【0076】
上記電極母材と球形のポリスチレン粒子を混合してスラリーを形成することができる。上記球形のポリスチレン粒子は気孔材として用いられるものであり、上記電極母材100重量部に対して5〜15重量部含まれることができる。
【0077】
上記スラリーには溶媒及びバインダ樹脂が添加されることができ、上記スラリーはボールミルを利用して混合されることができる。
【0078】
また、上記スラリーの形成時、電極母材粒子の凝集を防止するために、超音波を印加することができる。
【0079】
上記スラリーはテープキャスティング法によって電極シートとして形成されることができる。この際、電極シートの厚さは35〜45μmであることができる。
【0080】
上記電極シートを電解質シートの一面または両面に積層することにより、積層体を形成することができる。上記電極シートは燃料電池のアノード電極またはカソード電極になることができる。
【0081】
上記電解質シートはYSZ粒子を含むスラリーを製造し、上記スラリーをテープキャスティングすることによって1〜5μmの厚さに形成されることができる。
【0082】
また、電解質シートの製造方法はこれに制限されず、当業界に公知された多様な方法によって製造されることができる。
【0083】
その後、積層体を焼成して焼結体を形成することができる。焼成段階はスラリーに含まれた各成分の特性に応じて段階別に進行されることができる。例えば、低温で溶媒及びバインダ樹脂を除去し、高温で電極母材の焼結を行って、上記ポリスチレン粒子を除去することができる。
【0084】
上記焼成段階で電極母材は焼結体を形成し、上記ポリスチレン粒子は上記焼結体に気孔を残して燃焼される。
【0085】
上記焼成段階はこれに制限されるものではないが、1,000℃以上で行われることができ、より好ましくは1,300〜1,600℃で行われることができる。
【0086】
上記焼成温度が1,000℃未満であると焼結が完全に行われないため焼結体に破損が発生しやすく、上記焼成温度が1,600℃を超えると焼成段階で上記積層体の反りが発生する恐れがある。
【0087】
上記焼成段階で積層体に反りやクラックのような欠陥が発生することを防止するために、上記積層体に所定の荷重を加えて加圧状態で焼結が行われることができる。
【0088】
例えば、上記積層体の上下部に一定のサイズと重量を有する加圧体を配置して加圧することができる。上記加圧体は、上記焼成段階で上記積層体と化学的に反応しないように安定的であり、かつ物理的または化学的に変形が発生しない材質で形成されることができる。また、上記加圧体は、上記積層体を均一に加圧することができるように、上記積層体と対応する平板またはブロックの形態を有することができる。
【0089】
上記焼成段階により、電解質膜及び上記電解質膜の一面及び他面に形成されたアノード電極及びカソード電極を有する燃料電池が形成されることができる。
【0090】
上述したように、電解質シートと電極シートを積層した後、同時に焼成することにより単位電池を製造することができる。
【0091】
または、電解質シートと電極シートを夫々焼成した後、結合することにより単位電池を製造することもできる。
【0092】
図2は本発明の一実施形態による電極材料の焼成温度による気孔形成の比率を示すグラフである。
【0093】
より具体的には、電極母材としてNi−YSZサーメットを用いて、球形のポリスチレン粒子の含量を変化させながら、焼結温度が夫々1,400℃、1,450℃、1,500℃の場合の電極焼結体の気孔形成の比率を測定した。
【0094】
図2を参照すると、球形のポリスチレン粒子は含量が増加するにつれて気孔率が直線的に増加して、電極焼結体の気孔率制御が容易になることが分かった。
【0095】
これに対し、カーボンブラックの場合、含量が増加しても高温の焼結工程で収縮率が増加するため、気孔率が低下する傾向があり、気孔率の制御が困難になる。
【0096】
図3は本発明の一実施形態による電極材料で形成された電極のガス透過度を示すグラフである。
【0097】
より具体的には、実施例では電極母材としてNi−YSZサーメットを用い、上記電極母材100重量部に対して7.5重量部の球形のポリスチレン粒子を含む電極材料で電極を形成し、そのガス透過度を測定した。比較例では電極母材としてNi−YSZサーメットを用い、上記電極母材100重量部に対して7.5重量部のカーボンブラックを含む電極材料で電極を形成し、ガス透過度を測定した。
【0098】
図3を参照すると、実施例による電極は比較例による電極に比べて300psia以下では同一の圧力下でガス透過度が3〜4倍程度向上されたことが分かる。
【0099】
図4の(a)は実施例による電極の走査電子顕微鏡(SEM、Scanning Electron Microscope)写真であり、図4の(b)は比較例による電極の走査電子顕微鏡(SEM、Scanning Electron Microscope)写真である。
【0100】
図4の(a)及び図4の(b)を参照すると、実施例は比較例に比べて気孔のサイズ及び分布が均一であることが分かる。
【0101】
本発明による電極材料は、ポリスチレン粒子を気孔材として用いるため電極の気孔率の制御が容易であり、気孔の分布及びサイズが均一に形成されることができる。これにより、電極のガス透過性及びイオン伝導率が向上される。
【0102】
本発明は、上述の実施形態及び添付の図面により限定されず、添付の請求範囲により限定される。従って、請求範囲に記載された本発明の技術的思想を外れない範囲内で当技術分野の通常の知識を有する者によって様々な形態の置換、変形及び変更が可能であり、これもまた本発明の範囲に属するというべきであろう。
【符号の説明】
【0103】
110 電解質膜
120 アノード電極
130 カソード電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極母材と、
熱処理によって前記電極母材に気孔を形成する球形のポリスチレン粒子と、
を含む燃料電池用電極材料。
【請求項2】
前記ポリスチレン粒子の平均粒径は2〜20μmである請求項1に記載の燃料電池用電極材料。
【請求項3】
前記ポリスチレン粒子の含量は、前記電極母材100重量部に対して5〜15重量部である請求項1に記載の燃料電池用電極材料。
【請求項4】
前記電極母材は固体酸化物燃料電池の電極材料である請求項1に記載の燃料電池用電極材料。
【請求項5】
前記電極母材は金属−セラミックイオン伝導体の複合体である請求項1に記載の燃料電池用電極材料。
【請求項6】
前記電極母材は、ストロンチウムドープのランタンマンガナイト(Lanthanum Strontium Manganite、LSM)、ニッケルオキサイド(Nickel Oxide、NiO)とイットリア安定化ジルコニア(Yttria Stabilized Zirconia;YSZ)が混合されたNi−YSZサーメット(cermet)、Cu−YSZサーメット、LSM−YSZサーメット(cermet)、ニッケルオキサイド(Nickel Oxide、NiO)とスカンジア安定化ジルコニア(scandia stabilized zirconia、ScSZ)が混合されたNi−ScSZサーメット、Cu−ScSZ、ニッケルオキサイドとガドリニウムドープセリア(Gd doped ceria(CeO2)、GDC)が混合されたNi−GDCサーメット、Cu−GDCサーメット、及びランタンストロンチウムコバルト鉄複合酸化物(Lanthanum Strontium Cobalt Ferrite、LSCF)からなる群から選択される一つ以上である請求項1に記載の燃料電池用電極材料。
【請求項7】
前記電極母材は粉末形態である請求項1に記載の燃料電池用電極材料。
【請求項8】
バインダ樹脂をさらに含む請求項1に記載の燃料電池用電極材料。
【請求項9】
電解質膜と、
前記電解質膜の一面及び他面に夫々形成されるアノード電極及びカソード電極と、を含み、
前記アノード電極及び前記カソード電極のうち少なくとも一つの電極は、球形のポリスチレン粒子の燃焼によって形成された多数の気孔を有する電極母材の焼結体である燃料電池。
【請求項10】
前記気孔の平均粒径は2〜20μmである請求項9に記載の燃料電池。
【請求項11】
前記焼結体の気孔率は15〜50%である請求項9に記載の燃料電池。
【請求項12】
前記電極母材は固体酸化物燃料電池の電極材料である請求項9に記載の燃料電池。
【請求項13】
前記電極母材は金属−セラミックイオン伝導体の複合体である請求項9に記載の燃料電池。
【請求項14】
電極母材及び球形のポリスチレン粒子を含む電極材料でスラリーを製造する段階と、
前記スラリーで電極シートを製造する段階と、
前記電極シートを焼成して、前記球形のポリスチレン粒子の燃焼によって形成された気孔を有する電極母材の焼結体を形成する段階と、
前記電極母材の焼結体を電解質膜の一面及び他面のうち少なくとも一面に形成してアノード電極またはカソード電極として配置する段階と、
を含む燃料電池の製造方法。
【請求項15】
前記ポリスチレン粒子の平均粒径は2〜20μmである請求項14に記載の燃料電池の製造方法。
【請求項16】
前記ポリスチレン粒子の含量は前記電極母材100重量部に対して5〜15重量部である請求項14に記載の燃料電池の製造方法。
【請求項17】
前記電極母材は固体酸化物燃料電池の電極材料である請求項14に記載の燃料電池の製造方法。
【請求項18】
前記電極母材は金属−セラミックイオン伝導体の複合体である請求項14に記載の燃料電池の製造方法。
【請求項19】
前記電極母材は粉末形態である請求項14に記載の燃料電池の製造方法。
【請求項20】
前記電極材料はバインダ樹脂をさらに含む請求項14に記載の燃料電池の製造方法。
【請求項21】
前記電極シートの焼成は1,000℃以上で行われる請求項14に記載の燃料電池の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−119316(P2012−119316A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−263372(P2011−263372)
【出願日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【出願人】(594023722)サムソン エレクトロ−メカニックス カンパニーリミテッド. (1,585)
【Fターム(参考)】