説明

燃料電池車両の制御方法

【課題】車両衝突時に反応ガスのシール性を確保するとともに、特に軽衝突後に車両を迅速且つ確実に走行させることを可能にする。
【解決手段】燃料電池車両10の制御方法は、車両衝突後に前記燃料電池車両10の再走行が可能な軽衝突が発生する第1加速度、及び車両衝突後に前記燃料電池車両10の再走行が不能な重衝突が発生する第2加速度を設定する工程と、車両走行時に、前記第1加速度が検出された際、燃料電池スタック14の出力側と駆動モータ54を含む負荷との間に設けられたFCコンタクタ56を遮断し且つ前記燃料電池スタック14の運転を停止する一方、二次電池62から前記負荷に電力を供給する工程とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カソード側に供給される酸化剤ガス及びアノード側に供給される燃料ガスの電気化学反応により発電し、車両走行用の負荷に電力を出力する燃料電池と、前記燃料電池から電力が供給されるとともに、前記負荷に電力を供給する蓄電装置とを備える燃料電池車両の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、燃料ガス(主に水素を含有するガス、例えば、水素ガス)及び酸化剤ガス(主に酸素を含有するガス、例えば、空気)をアノード電極及びカソード電極に供給して電気化学的に反応させることにより、直流の電気エネルギを得るシステムである。このシステムは、通常、複数の燃料電池を所定数だけ積層した燃料電池スタックを備えるとともに、前記燃料電池スタックは、車載用として燃料電池車両(例えば、燃料電池電気自動車)に組み込まれている。
【0003】
この種の燃料電池車両では、衝突時の衝撃により燃料電池スタックの積層方向一方の締め付け荷重が低下する場合がある。このため、反応ガスや冷却媒体のシール不良が惹起されるとともに、燃料電池間に隙間が形成されて該隙間に電位差が発生することがある。さらに、衝突時に燃料電池の移動や変形が発生したり、反応ガスや冷却媒体のシール不良や電位差が生じる場合がある。
【0004】
そこで、例えば、特許文献1に開示されている車載燃料電池発電システムの制御装置が知られている。この制御装置は、車両の衝突可能性を予測する予測手段と、車載燃料電池発電システムを停止する停止手段と、燃料電池の発電した電力を蓄える蓄電手段と、電力を消費する負荷と、前記負荷と前記蓄電手段とを電気的に遮断する遮断手段と、車両の衝突を検知する検知手段とを備えている。
【0005】
そして、予測手段が衝突可能性が高いと判断した場合に、停止手段が車載燃料電池発電システムを停止し、検知手段が車両の衝突を検知した場合に、遮断手段が、負荷と前記蓄電手段とを電気的に遮断している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4066882号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の特許文献1では、車両の衝突が検知された際に、燃料電池の発電電力を蓄える蓄電手段と電力を消費する負荷とを電気的に遮断している。ところが、車両の衝突状態には、衝突後に前記車両の再走行が不能な状態(以下、重衝突という)の他、走行機能にダメージがなく、衝突後に該車両の再走行が可能な状態(以下、軽衝突という)が存在している。
【0008】
しかしながら、上記の特許文献1では、軽衝突時であっても、蓄電手段と負荷とが電気的に遮断されるため、軽衝突後に車両を迅速に移動させることができないという問題がある。
【0009】
本発明は、この種の問題を解決するものであり、衝突時に反応ガスのシール性を確保するとともに、特に軽衝突後に車両を迅速且つ確実に走行させることが可能な燃料電池車両の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、カソード側に供給される酸化剤ガス及びアノード側に供給される燃料ガスの電気化学反応により発電し、車両走行用の負荷に電力を出力する燃料電池と、前記燃料電池から電力が供給されるとともに、前記負荷に電力を供給する蓄電装置とを備える燃料電池車両の制御方法に関するものである。
【0011】
この制御方法は、車両衝突後に車両の再走行が可能な軽衝突が発生する第1加速度、及び車両衝突後に前記車両の再走行が不能な重衝突が発生する第2加速度を設定する工程と、車両走行時に、前記第1加速度が検出された際、燃料電池の出力側と負荷との間に設けられたコンタクタを遮断し且つ前記燃料電池の運転を停止する一方、蓄電装置から前記負荷に電力を供給する工程とを有している。
【0012】
ここで、軽衝突とは、車両衝突後に車両の再走行が可能な状態であり、前記車両の走行機能がダメージを受けない程度、すなわち、通常走行が可能な衝突、又は、燃料電池を構成する電解質膜にクリープが発生しない程度の軽度の衝撃力が発生する衝突をいう。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、車両が軽衝突するおそれがあると検出されると、コンタクタが遮断されて燃料電池と負荷とが電気的に遮断されるとともに、前記燃料電池の運転が停止される。このため、車両が軽衝突する際に、反応ガスの供給が停止されており、前記反応ガスの漏洩を低減することができる一方、開回路状態となっているため、荷重抜けにより面圧が低下しても、電位差の発生が良好に抑制され、気体放電現象を伴わない。
【0014】
さらに、軽衝突時には、蓄電装置から負荷に電力を供給することが可能である。従って、軽衝突後に車両を迅速且つ確実に走行させることができ、前記車両を適宜移動させることにより、所望の処置を施すことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1及び第2の実施形態に係る制御方法が実施される燃料電池車両の概略説明図である。
【図2】前記燃料電池車両を構成する回路説明図である。
【図3】前記燃料電池車両を構成する固体高分子電解質膜のクリープ特性の説明図である。
【図4】前記燃料電池車両が車両前方衝突した際の説明図である。
【図5】第1の実施形態に係る制御方法を説明するフローチャートである。
【図6】前記燃料電池車両の復帰時の制御方法を説明するフローチャートである。
【図7】第2の実施形態に係る制御方法を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1に示すように、本発明の第1及び第2の実施形態に係る制御方法が実施される燃料電池車両10は、例えば、センターコンソール12に燃料電池スタック14が収容される。燃料電池スタック14は、複数の燃料電池16が燃料電池車両10の車長方向(矢印L方向)に積層されて構成される。なお、燃料電池スタック14は、燃料電池車両10のセンターコンソール12の他、床下やフロントボックス(所謂、エンジンルーム)に収容してもよい。
【0017】
各燃料電池16は、例えば、パーフルオロスルホン酸の薄膜に水が含浸された固体高分子電解質膜18をカソード電極20とアノード電極22とで挟持した電解質膜・電極構造体(MEA)24を備える。なお、固体高分子電解質膜18は、フッ素系イオン交換膜の他、炭化水素(HC)系イオン交換膜を使用してもよい。
【0018】
カソード電極20及びアノード電極22は、カーボンペーパ等からなるガス拡散層と、白金合金(又はRu等)が表面に担持された多孔質カーボン粒子が前記ガス拡散層の表面に一様に塗布されて形成された電極触媒層とを有する。電極触媒層は、固体高分子電解質膜18の両面に形成される。
【0019】
電解質膜・電極構造体24は、カソード側セパレータ26及びアノード側セパレータ28で挟持される。カソード側セパレータ26及びアノード側セパレータ28は、例えば、カーボンセパレータ又は金属セパレータで構成される。
【0020】
カソード側セパレータ26と電解質膜・電極構造体24との間には、酸化剤ガス流路30が設けられるとともに、アノード側セパレータ28と前記電解質膜・電極構造体24との間には、燃料ガス流路32が設けられる。燃料電池16間には、冷却媒体流路34が形成される。
【0021】
燃料電池スタック14の積層方向両端には、エンドプレート36a、36bが配設され、前記エンドプレート36a、36bは、複数の締結ボルト37により積層方向に締め付け荷重が付与される。エンドプレート36b側には、複数の弾性部材、例えば、皿ばね38と押圧プレート40とが配設され、燃料電池16に所望の積層荷重を付与する。
【0022】
エンドプレート36a側には、各燃料電池16の積層方向に互いに連通して、各酸化剤ガス流路30に酸化剤ガス(反応ガス)、例えば、酸素含有ガス(以下、空気ともいう)を供給する酸化剤ガス供給装置42と、各燃料ガス流路32に燃料ガス(反応ガス)、例えば、水素含有ガス(以下、水素ガスともいう)を供給する燃料ガス供給装置44と、各冷却媒体流路34に冷却媒体(例えば、純水やエチレングリコール、オイル等)を供給する冷却媒体供給装置46とが接続される。
【0023】
図2に示すように、燃料電池スタック14には、バスライン50の一端が接続されるとともに、前記バスライン50の他端がインバータ52に接続される。インバータ52には、三相の車両走行用の駆動モータ(負荷)54が接続される。なお、バスライン50は、実質的には、2本用いられているが、説明の簡素化を図るために、1本の前記バスライン50で記載する。以下に説明する他のラインにおいても、同様である。
【0024】
バスライン50には、燃料電池スタック14の出力端子にFCコンタクタ56が配設されるとともに、前記バスライン50には、電力線58の一端が接続される。電力線58には、DC/DCコンバータ60を介装して蓄電装置、例えば、二次電池(又はキャパシタ)62が接続される。二次電池62は、ブレーキ回生及び燃料電池スタック14からの余剰電力の吸収(蓄電)を行う。
【0025】
電力線58には、DC/DCコンバータ60と二次電池62との途上に電力線58aが分岐し、この電力線58aには、ダウンバータ(D/V)63及び補器用バッテリ62aが接続される。補器用バッテリ62aは、通常、12V又は24Vであり、ブレーキ制動用やECU制御用等の動力源である。
【0026】
燃料電池車両10は、ECU(電子制御ユニット)64を備える。このECU64は、インバータ52、FCコンタクタ56及びDC/DCコンバータ60を制御するとともに、Gセンサ66から加速度信号が入力される。Gセンサ66は、例えば、エアバッグ制御用センサを用いることができる。
【0027】
ECU64は、Gセンサ66から得られる加速度Gから、車両衝突後に燃料電池車両10の再走行が可能な軽衝突が発生する第1加速度G1、及び車両衝突後に前記燃料電池車両10の再走行が不能な重衝突が発生する第2加速度G2を設定する。
【0028】
具体的には、図3に示すように、フッ素系イオン交換膜である固体高分子電解質膜18が使用される燃料電池スタック14では、スタック締結荷重に対する膜クリープ量(永久変形量)及び抵抗の関係を有する。
【0029】
燃料電池スタック14は、内部抵抗値が良好に低下するとともに、固体高分子電解質膜18のクリープが発生しない領域に設定されたスタック初期締結荷重により締め付け保持される。このスタック初期締結荷重は、温度や反応ガス圧及び冷却媒体圧の変動により変化する。
【0030】
そして、車両衝突後に燃料電池車両10の再走行が可能な軽衝突が発生する第1加速度G1、すなわち、固体高分子電解質膜18にクリープ量の増加が発生しない範囲(又は、燃料電池車両10の走行機能がダメージを受けない程度の衝突範囲)で、締結荷重が増加する軽衝突(第1加速度G1以上)が設定される。
【0031】
さらに、車両衝突後に燃料電池車両10の再走行が不能な重衝突が発生する第2加速度G2、すなわち、固体高分子電解質膜18にクリープ量の増加が発生する範囲で、締結荷重が増加する重衝突(第2加速度G2以下)が設定される。
【0032】
さらにまた、図3中、GDL(ガス拡散層)座屈限界は、ガス拡散層中の繊維が固体高分子電解質膜18を貫通して燃料ガスと酸化剤ガスとの間で短絡が発生する限界締結荷重である。
【0033】
図4に示すように、燃料電池車両10が車両前方衝突した際、積層方向前方(矢印L1方向)の燃料電池16には、積層方向後方(矢印L2方向)の前記燃料電池16の押し込み(移動)により荷重が増大する。このため、積層方向前方の燃料電池16では、ガス拡散層が座屈するおそれがある。
【0034】
一方、積層方向後方の燃料電池16では、荷重抜けが発生して電位差やシール不良が惹起し易い。さらに、車両衝突後に積層方向後方に反力が発生するため、燃料電池16がせん断方向にずれ易く、電位差やシール不良が生じるおそれがある。
【0035】
上記の衝突による現象を考慮して、車両衝突後に燃料電池車両10の再走行が可能な軽衝突が発生する第1加速度G1、及び車両衝突後に前記燃料電池車両10の再走行が不能な重衝突が発生する第2加速度G2が設定される。
【0036】
また、固体高分子電解質膜18は、熱によりクリープ量が増加しており、熱クリープによる荷重耐性が低いという特性を有している。なお、フッ素系イオン交換膜の他、炭化水素系イオン交換膜においても、同様の現象が発生する。
【0037】
このように構成される燃料電池車両10の動作について、以下に説明する。
【0038】
先ず、燃料電池車両10の運転時には、図1に示すように、燃料電池スタック14では、酸化剤ガス供給装置42から酸素含有ガス(例えば、空気)等の酸化剤ガスが供給されるとともに、燃料ガス供給装置44から水素含有ガス(例えば、水素ガス)等の燃料ガスが供給される。さらに、冷却媒体供給装置46から純水やエチレングリコール、又はオイル等の冷却媒体が供給される。
【0039】
酸化剤ガスは、カソード側セパレータ26の酸化剤ガス流路30に導入される。この酸化剤ガスは、電解質膜・電極構造体24のカソード電極20に供給される。一方、燃料ガスは、アノード側セパレータ28の燃料ガス流路32に導入され、電解質膜・電極構造体24のアノード電極22に供給される。
【0040】
これにより、電解質膜・電極構造体24では、カソード電極20に供給される酸化剤ガスと、アノード電極22に供給される燃料ガスとが、電極触媒層内で電気化学反応により消費されて発電が行われる。
【0041】
また、冷却媒体供給装置46では、冷却媒体が冷却媒体流路34に供給される。この冷却媒体は、各燃料電池16を冷却した後、燃料電池スタック14から排出される。
【0042】
次いで、第1の実施形態に係る燃料電池車両10の制御方法について、図5に示すフローチャートに沿って、以下に説明する。
【0043】
燃料電池車両10では、図2に示すように、ECU64を介してGセンサ66からの車両進行方向の加速度信号が、常時、入力されている(ステップS1)。ECU64は、検出された加速度Gが第1加速度G1以上であるか否かを判断し(ステップS2)、前記第1加速度G1以上であると判断されると(ステップS2中、YES)、ステップS3に進む。
【0044】
ステップS3では、検出された加速度Gが第2加速度G2未満であると判断されると(ステップS3中、YES)、ステップS4に進む一方、検出された加速度Gが第2加速度G2以上であると判断されると(ステップS3中、NO)、ステップS5に進む。ステップS5では、燃料電池車両10が重衝突すると判断される。
【0045】
重衝突すると判断されると、二次電池62と負荷とは、図示しないコンタクタの遮断作用下に電気的に遮断される一方、補器用バッテリ62aは、負荷に対して電気的に接続されている。補器用バッテリ62aによるブレーキ制動を確保するためである。なお、FCコンタクタ56は、下記のように、軽衝突すると判断された際に切断されている。
【0046】
ステップS4では、燃料電池車両10が軽衝突すると判断され、ステップS6に進んで、FCコンタクタ56が切断される。このため、燃料電池スタック14と駆動モータ54を含む負荷とは、電気的に遮断される。さらに、ステップS7に進んで、燃料電池スタック14への燃料ガス、酸化剤ガス及び冷却媒体の供給が停止され、前記燃料電池スタック14の運転が停止される。
【0047】
次に、燃料電池車両10が軽衝突したか否かが判断される(ステップS8)。燃料電池車両10が軽衝突した際(ステップS8中、YES)、図2に示すように、二次電池62は、DC/DCコンバータ60を介して駆動モータ54を含む負荷に電気的に接続されている。従って、ECU64による制御が遂行されるとともに、ブレーキ動力を確保して燃料電池車両10の走行制御が可能になる。
【0048】
また、補器用バッテリ62aは、軽衝突後もECU64に電力を供給しているが、二次電池62から前記ECU64に電力を供給してもよい。
【0049】
一方、ステップS2において、検出された加速度Gが第1加速度G1未満である際には(ステップS2中、NO)、ステップS9に進んで、通常の運転モードに移行する。
【0050】
この場合、第1の実施形態では、燃料電池車両10が軽衝突するおそれがあると検出されると、FCコンタクタ56が遮断されて燃料電池スタック14と駆動モータ54を含む負荷とは、電気的に遮断されるとともに、前記燃料電池スタック14の運転が停止されている(ステップS2〜ステップS7参照)。
【0051】
このため、燃料電池車両10が軽衝突する際に、燃料ガス及び酸化剤ガスの供給が停止されており、前記燃料ガス及び前記酸化剤ガスのシール性を確保することができるとともに、電位差の発生が良好に抑制される。
【0052】
さらに、軽衝突時には、二次電池62から駆動モータ54を含む負荷に電力を供給することが可能である。従って、ECU64による制御及びブレーキ動力を確保することができ、軽衝突後に燃料電池車両10を迅速且つ確実に走行させることが可能になる。これにより、燃料電池車両10を適宜移動させて所望の処置を施すことができるという効果が得られる。
【0053】
なお、第1の実施形態では、燃料電池スタック14は、複数の燃料電池16が燃料電池車両10の車長方向(矢印L方向)に積層されているが、これに限定されるものではない。例えば、複数の燃料電池16を車幅方向(車長方向に直交する方向)に積層して構成することも可能である。
【0054】
次いで、燃料電池車両10の復帰時の制御方法について、図6に示すフローチャートに沿って説明する。
【0055】
先ず、補器用バッテリ62aの地絡検知が行われる(ステップS101)。そして、地絡抵抗が所定値、例えば、1MΩ以上であるか否かが判断され(ステップS102)、1MΩ未満であると判断されると(ステップS102中、NO)、地絡が発生しているとしてステップS103に進んで、システム停止が行われる。
【0056】
一方、検知された地絡抵抗が、1MΩ以上であると判断されると(ステップS102中、YES)、ステップS104に進んで、二次電池62の地絡検知が行われる。この二次電池62においても同様に、検知された地絡抵抗が所定値、例えば、1MΩ以上であると判断されると(ステップS105中、YES)、ステップS106に進んで、前記二次電池62を負荷回路に接続する。具体的には、図示しないコンタクタを閉じることにより、二次電池62と負荷回路とが接続される。
【0057】
次に、ステップS107に進んで、燃料電池スタック14の地絡が検知される。燃料電池スタック14において、地絡抵抗が所定抵抗、例えば、1MΩ以上あるか否かが判断される(ステップS108)。地絡抵抗が1MΩ未満であると判断されると(ステップS108中、NO)、ステップS109に進んで、二次電池62等による電気自動車運転モード(EVモード)に移行する。このため、燃料電池車両10は、低速で所定の待避場所まで走行することができる。
【0058】
一方、燃料電池スタック14の地絡抵抗が1MΩ以上であると判断されると(ステップS108中、YES)、ステップS110に進んで、前記燃料電池スタック14が負荷回路に接続される。具体的には、FCコンタクタ56が接続され、前記燃料電池スタック14と駆動モータ54とを含む負荷とが電気的に接続される。
【0059】
さらに、ステップS111に進んで、燃料電池スタック14に対し、酸化剤ガス、燃料ガス及び冷却媒体の供給が開始される。これにより、燃料電池スタック14が起動され(ステップS112)、通常モードに移行する(ステップS113)。
【0060】
次いで、本発明の第2の実施形態に係る燃料電池車両10の制御方法について、図7に示すフローチャートに沿って、以下に説明する。なお、第1の実施形態に係る制御方法と同一の行程については、その詳細な説明は省略する。
【0061】
ステップS201及びS202において、ECU64により検出された加速度Gが、第1加速度G1以上であると判断されると、ステップS203に進む。このステップS203では、第1加速度G1が検知される直前、例えば、1秒以内の負荷変動が、例えば、設定値として−75%以上であるか否かが判断される。そして、負荷変動が−75%未満である際には(ステップS203中、NO)、ステップS210に進んで、通常モードに移行する。
【0062】
一方、負荷変動が−75%以上であると判断されると(ステップS203中、YES)、ステップS204に進んで、検出された加速度Gが第2加速度G2未満であるか否かが判断される。さらに、ステップS204以降の処理が、第1の実施形態と同様に行われる。
【0063】
このように、第2の実施形態では、ステップS203の判断を設けることにより、加速度Gの誤検知を確実に防止することができるという利点が得られる。
【符号の説明】
【0064】
10…燃料電池車両 14…燃料電池スタック
16…燃料電池 18…固体高分子電解質膜
20…カソード電極 22…アノード電極
24…電解質膜・電極構造体 30…酸化剤ガス流路
32…燃料ガス流路 34…冷却媒体流路
36a、36b…エンドプレート 38…皿ばね
40…押圧プレート 42…酸化剤ガス供給装置
44…燃料ガス供給装置 46…冷却媒体供給装置
50…バスライン 52…インバータ
54…駆動モータ 56…FCコンタクタ
60…DC/DCコンバータ 64…ECU
66…Gセンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カソード側に供給される酸化剤ガス及びアノード側に供給される燃料ガスの電気化学反応により発電し、車両走行用の負荷に電力を出力する燃料電池と、
前記燃料電池から電力が供給されるとともに、前記負荷に電力を供給する蓄電装置と、
を備える燃料電池車両の制御方法であって、
車両衝突後に車両の再走行が可能な軽衝突が発生する第1加速度、及び車両衝突後に前記車両の再走行が不能な重衝突が発生する第2加速度を設定する工程と、
車両走行時に、前記第1加速度が検出された際、前記燃料電池の出力側と前記負荷との間に設けられたコンタクタを遮断し且つ前記燃料電池の運転を停止する一方、前記蓄電装置から前記負荷に電力を供給する工程と、
を有することを特徴とする燃料電池車両の制御方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate