燃料電池
【課題】積層方向に延在する反応ガス連通孔と電極面方向に延在する反応ガス流路との間で反応ガスを良好に流すことができ、しかも前記積層方向の薄型化を図ることを可能にする。
【解決手段】発電セル12は、電解質膜・電極構造体14を第1セパレータ16及び第2セパレータ18で挟持する。第1セパレータ16は、酸化剤ガス入口連通孔26aに連通する第1入口切り欠き部36aと、酸化剤ガス出口連通孔26bに連通する第1出口切り欠き部36bとを設ける。第2セパレータ18は、第1入口切り欠き部36aと積層方向に沿って連通する第2供給孔部42aと、第1出口切り欠き部36bと積層方向に沿って連通する第2排出孔部42bとを設ける。
【解決手段】発電セル12は、電解質膜・電極構造体14を第1セパレータ16及び第2セパレータ18で挟持する。第1セパレータ16は、酸化剤ガス入口連通孔26aに連通する第1入口切り欠き部36aと、酸化剤ガス出口連通孔26bに連通する第1出口切り欠き部36bとを設ける。第2セパレータ18は、第1入口切り欠き部36aと積層方向に沿って連通する第2供給孔部42aと、第1出口切り欠き部36bと積層方向に沿って連通する第2排出孔部42bとを設ける。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解質の両側に電極を配設した電解質・電極構造体を備え、前記電解質・電極構造体を第1セパレータと第2セパレータとで挟持するとともに、電極面方向に沿って延在する反応ガス流路と、積層方向に貫通して反応ガスを流す反応ガス連通孔とを設ける燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、固体高分子型燃料電池は、高分子イオン交換膜からなる固体高分子電解質膜を採用している。この燃料電池では、固体高分子電解質膜の両側に、それぞれ電極触媒層と多孔質カーボンからなるアノード側電極及びカソード側電極を配設した電解質膜・電極構造体(電解質・電極構造体)を、セパレータ(バイポーラ板)によって挟持することにより単位セルが構成されている。通常、この単位セルを所定数だけ積層した燃料電池スタックが使用されている。
【0003】
一般的に、燃料電池は、セパレータの積層方向に貫通する入口連通孔及び出口連通孔を設けた、所謂、内部マニホールドを構成している。そして、燃料ガス、酸化剤ガス及び冷却媒体は、それぞれの入口連通孔から燃料ガス流路、酸化剤ガス流路及び冷却媒体流路に供給された後、それぞれの出口連通孔に排出されている。
【0004】
例えば、特許文献1に開示されているプロセス制御装置では、図18に示すように、互いに平行に配置される2つの板1a、1bを重ね合わせた積層板がユニット2と交互に積層されている。ユニット2は、MEA2aを陽極2b及び陰極2cで挟持するとともに、これらが一対の接触板2dに挟持されて構成されている。
【0005】
板1aとユニット2との間に第1室3aが形成され、板1bと前記ユニット2との間に第2室3bが形成され、前記板1a、1b間に第3室3cが形成されている。板1a、1bの端部には、パッキン4を介して積層方向に連通孔5が形成される。
【0006】
この連通孔5は、板1a、1b間に形成される流路6を介して、例えば、第2室3bに連通している。図示していないが、積層方向には、他の2つの連通孔が設けられており、他の2つの連通孔は、板1a、1b間の流路(図示せず)を介して第1室3a及び第3室3cにそれぞれ連通している。
【0007】
【特許文献1】特開平6−218275号公報(図5)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記の特許文献1では、積層方向に形成されている連通孔5を第2室3bに連通するための流路6は、流体を良好に導入するために積層方向の流路高さを確保するとともに、パッキン4によるシール高さを確保する必要がある。このため、ユニット2同士の間隔が相当に大きくなり、燃料電池の小型化が図れないという問題がある。
【0009】
特に、車載用燃料電池スタックでは、多数、例えば、数百の燃料電池を積層して構成されている。従って、各燃料電池同士の間隔が大きくなっており、燃料電池スタック全体としての小型化が図られないという問題がある。
【0010】
本発明はこの種の問題を解決するものであり、積層方向に延在する反応ガス連通孔と電極面方向に延在する反応ガス流路との間で反応ガスを良好に流すことができ、しかも前記積層方向の薄型化を図ることが可能な燃料電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、電解質の両側に電極を配設した電解質・電極構造体を第1セパレータと第2セパレータとで挟持する発電セルを備え、前記発電セルが複数積層されるとともに、電極面方向に沿って延在する反応ガス流路と、積層方向に貫通して反応ガスを流す反応ガス連通孔とを設ける燃料電池に関するものである。
【0012】
そして、一方の発電セルを構成する第1セパレータは、反応ガス連通孔のいずれかに連通する切り欠き部を設けるとともに、他方の発電セルを構成し、前記一方の発電セルの前記第1セパレータに隣接する第2セパレータは、積層方向に沿って前記切り欠き部に連通し前記反応ガス連通孔を前記反応ガス流路に連通させるための孔部を設けている。
【0013】
また、本発明は、電解質の両側に電極を配設した第1電解質・電極構造体及び第2電解質・電極接合体を備え、前記第1電解質・電極接合体を第1セパレータと第2セパレータとで挟持する第1発電セルと、前記第2電解質・電極接合体を第3セパレータと第4セパレータとで挟持し前記第1発電セルと交互に積層される第2発電セルとを有し、電極面方向に沿って延在する反応ガス流路と、積層方向に貫通して反応ガスを流す反応ガス連通孔とを設ける燃料電池に関するものである。
【0014】
そこで、第1セパレータは、反応ガス連通孔のいずれかに連通する第1切り欠き部を設けるとともに、前記第1セパレータに隣接する第4セパレータは、積層方向に沿って前記第1切り欠き部に連通し前記反応ガス連通孔を前記反応ガス流路に連通させるための第1孔部を設け、第3セパレータは、前記第1切り欠き部に連通する前記反応ガス連通孔に連通する第2切り欠き部を設けるとともに、前記第3セパレータに隣接する第2セパレータは、前記積層方向に沿って前記第2切り欠き部に連通し前記反応ガス連通孔を前記反応ガス流路に連通させるための第2孔部を設けている。
【0015】
そして、第1切り欠き部と第2切り欠き部とは、積層方向に互いにオフセットし、且つ第1孔部と第2孔部とは、前記積層方向に互いにオフセットしている。
【発明の効果】
【0016】
本発明では、第1セパレータに設けられる切り欠き部が、反応ガス用チャンバを構成しており、反応ガスは、反応ガス連通孔から前記切り欠き部に導入された後、孔部を通って反応ガス流路に確実に供給される。一方、反応ガス流路を流れた反応ガスは、孔部から切り欠き部に導入された後、反応ガス連通孔に円滑に排出される。従って、積層方向に延在する反応ガス連通孔と電極面方向に延在する反応ガス流路との間で反応ガスを良好に流すことができる。
【0017】
しかも、第1セパレータに設けられる切り欠き部と第2セパレータに設けられる孔部とにより反応ガス用通路が形成されている。これにより、反応ガス導入部や反応ガス導出部における流路高さ及びシール高さを維持した状態で、積層方向の薄型化を図ることが可能になる。このため、燃料電池全体の小型化が容易に遂行され、特に車載用燃料電池スタックを良好にコンパクト化することができる。
【0018】
また、本発明では、隣接する第1発電セル及び第2発電セルにおいて、第1切り欠き部と第2切り欠き部とが、積層方向に互いにオフセットするとともに、第1孔部と第2孔部とが、前記積層方向に互いにオフセットしている。従って、隣接する第1発電セルと第2発電セルでは、反応ガス導入部や反応ガス導出部における流路高さ及びシール高さを維持しながら、積層方向に対してより薄型化が図られ、燃料電池全体の小型化が良好に遂行される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る燃料電池10を構成する発電セル12の分解斜視説明図である。図2は、燃料電池10の、図1中、II−II線断面説明図であり、図3は、燃料電池10の、図1中、III−III線断面説明図であり、図4は、燃料電池10の、図1中、IV−IV線断面説明図である。
【0020】
発電セル12は、図1に示すように、電解質膜・電極構造体(電解質・電極構造体)14を第1セパレータ16及び第2セパレータ18で挟持する。第1セパレータ16及び第2セパレータ18は、例えば、カーボンセパレータや金属セパレータで構成されるとともに、横長な長方形状を有している。
【0021】
電解質膜・電極構造体14は、例えば、パーフルオロスルホン酸の薄膜に水が含浸された固体高分子電解質膜(電解質)20と、前記固体高分子電解質膜20を挟持するカソード側電極22及びアノード側電極24とを備える。カソード側電極22及びアノード側電極24は、カーボンペーパ等からなるガス拡散層(図示せず)と、白金合金が表面に担持された多孔質カーボン粒子を前記ガス拡散層の表面に一様に塗布して形成された電極触媒層(図示せず)とを有する。
【0022】
発電セル12の矢印B方向の一端縁部には、積層方向である矢印A方向に互いに連通して、酸化剤ガス(反応ガス)、例えば、酸素含有ガスを供給するための酸化剤ガス入口連通孔26a、冷却媒体を供給するための冷却媒体入口連通孔28a、及び燃料ガス(反応ガス)、例えば、水素含有ガスを排出するための燃料ガス出口連通孔30bが、矢印C方向(鉛直方向)に配列して設けられる。
【0023】
発電セル12の矢印B方向の他端縁部には、矢印A方向に互いに連通して、燃料ガスを供給するための燃料ガス入口連通孔30a、冷却媒体を排出するための冷却媒体出口連通孔28b、及び酸化剤ガスを排出するための酸化剤ガス出口連通孔26bが、矢印C方向に配列して設けられる。
【0024】
図5に示すように、第1セパレータ16の電解質膜・電極構造体14に向かう面16aには、燃料ガス流路32が形成される。燃料ガス流路32は、燃料ガス入口連通孔30aの近傍で複数の第1供給孔部34aと連通するとともに、燃料ガス出口連通孔30bの近傍で複数の第1排出孔部34bに連通する。
【0025】
第1セパレータ16は、酸化剤ガス入口連通孔26aに連通する第1入口切り欠き部36aと、酸化剤ガス出口連通孔26bに連通する第1出口切り欠き部36bとを設ける。第1入口切り欠き部36a及び第1出口切り欠き部36bは、酸化剤ガス入口連通孔26a及び酸化剤ガス出口連通孔26bと同一の開口高さ寸法を有し、実質的に、前記酸化剤ガス入口連通孔26a及び前記酸化剤ガス出口連通孔26bを内側に拡開している。
【0026】
第1セパレータ16の面16aには、第1シール部材(例えば、ガスケット)38が設けられる。この第1シール部材38は、燃料ガス流路32を周回するとともに、酸化剤ガス入口連通孔26a、冷却媒体入口連通孔28a、燃料ガス出口連通孔30b、燃料ガス入口連通孔30a、冷却媒体出口連通孔28b及び酸化剤ガス出口連通孔26bを囲繞する。第1シール部材38は、例えば、EPDM(エチレン−プロピレンゴム)、シリコーンゴム、ニトリルゴム又はアクリルゴムで構成される。第1セパレータ16の面16bは、平坦面に構成される。なお、以下に説明する各シール部材は、上記の第1シール部材38と同様であり、その詳細な説明は省略する。
【0027】
第2セパレータ18の電解質膜・電極構造体14に向かう面18aには、酸化剤ガス流路40が形成される。図6に示すように、酸化剤ガス流路40は、酸化剤ガス入口連通孔26aの近傍で複数の第2供給孔部42aと連通するとともに、酸化剤ガス出口連通孔26bの近傍で複数の第2排出孔部42bに連通する。第2セパレータ18は、燃料ガス入口連通孔30aに連通する第2入口切り欠き部44aと、燃料ガス出口連通孔30bに連通する第2出口切り欠き部44bとを設ける。
【0028】
図5及び図6に示すように、一方の発電セル12を構成する第1セパレータ16と、他方の発電セル12を構成する第2セパレータ18とが隣接して積層される際、前記第1セパレータ16の第1供給孔部34a及び第1排出孔部34bは、第2セパレータ18の第2入口切り欠き部44a及び第2出口切り欠き部44bと積層方向に沿って連通することにより、燃料ガス入口連通孔30a及び燃料ガス出口連通孔30bが、燃料ガス流路32に連通する(図3及び図5参照)。
【0029】
同様に、第2セパレータ18の第2供給孔部42a及び第2排出孔部42bは、第1セパレータ16の第1入口切り欠き部36a及び第1出口切り欠き部36bと積層方向に沿って連通することにより、酸化剤ガス流路40は、酸化剤ガス入口連通孔26a及び酸化剤ガス出口連通孔26bに連通する(図2及び図6参照)。
【0030】
図1に示すように、第2セパレータ18の面18bには、冷却媒体入口連通孔28a及び冷却媒体出口連通孔28bに連通する冷却媒体流路46が形成される。第2セパレータ18の面18aには、酸化剤ガス流路40を周回する第2シール部材48が設けられる一方(図6参照)、面18bには、冷却媒体流路46と冷却媒体入口連通孔28a及び冷却媒体出口連通孔28bとを周回する第3シール部材50が設けられる(図1参照)。
【0031】
このように構成される燃料電池10の動作について、以下に説明する。
【0032】
図1に示すように、酸化剤ガス入口連通孔26aには、酸素含有ガス等の酸化剤ガスが供給されるとともに、燃料ガス入口連通孔30aには、水素含有ガス等の燃料ガスが供給される。さらに、冷却媒体入口連通孔28aには、純水やエチレングリコール等の冷却媒体が供給される。
【0033】
酸化剤ガス入口連通孔26aに供給された酸化剤ガスは、図2に示すように、一方の発電セル12を構成する第1セパレータ16に設けられた第1入口切り欠き部36aに導入された後、他方の発電セル12を構成し、第1セパレータ16に隣接する第2セパレータ18に設けられた複数の第2供給孔部42aに供給される。第1入口切り欠き部36aと第2供給孔部42aとは、積層方向に連通しているからである。
【0034】
第2供給孔部42aを通った酸化剤ガスは、第2セパレータ18の面18a側に移動して、この面18aに設けられている酸化剤ガス流路40に沿って矢印B方向に移動する(図2及び図6参照)。
【0035】
一方、燃料ガス入口連通孔30aに供給された燃料ガスは、図3に示すように、一方の発電セル12を構成する第2セパレータ18に設けられた第2入口切り欠き部44aに導入された後、他方の発電セル12を構成し、前記第2セパレータ18に隣接して積層される第1セパレータ16の第1供給孔部34aに供給される。この第1供給孔部34aを通って面16a側に移動した燃料ガスは、この面16aに設けられている燃料ガス流路32に沿って矢印B方向に移動する(図5参照)。
【0036】
これにより、図1に示すように、電解質膜・電極構造体14では、カソード側電極22に供給される酸化剤ガスと、アノード側電極24に供給される燃料ガスとが、電極触媒層内で電気化学反応により消費され、発電が行われる。
【0037】
発電反応に使用された酸化剤ガスは、第2セパレータ18に設けられている第2排出孔部42bを通って第1セパレータ16に設けられている第1出口切り欠き部36bに導入され、この第1出口切り欠き部36bに連通する酸化剤ガス出口連通孔26bに排出される(図6参照)。
【0038】
同様に、発電反応に使用された燃料ガスは、第1セパレータ16に設けられている第1排出孔部34bを通って第2セパレータ18の第2出口切り欠き部44bに導入され、この第2出口切り欠き部44bに連通する燃料ガス出口連通孔30bに排出される(図5参照)。
【0039】
また、冷却媒体は、図1に示すように、第2セパレータ18の冷却媒体流路46に供給され、この冷却媒体流路46に沿って矢印B方向に移動する。冷却媒体は、電解質膜・電極構造体14を冷却した後、冷却媒体出口連通孔28bに排出される。
【0040】
この場合、第1の実施形態では、図1及び図5に示すように、第1セパレータ16には、酸化剤ガス入口連通孔26aに連通する第1入口切り欠き部36aと、酸化剤ガス出口連通孔26bに連通する第1出口切り欠き部36bとが設けられている。そして、第2セパレータ18には、積層方向に沿って第1入口切り欠き部36aに連通する第2供給孔部42aと、前記積層方向に沿って第1出口切り欠き部36bに連通する第2排出孔部42bとが設けられている(図5及び図6参照)。
【0041】
このため、第1入口切り欠き部36a及び第1出口切り欠き部36bは、酸化剤ガス用チャンバを構成しており、酸化剤ガスは、酸化剤ガス入口連通孔26aから前記第1入口切り欠き部36aに導入された後、第2供給孔部42aを通って酸化剤ガス流路40に確実に供給される。さらに、酸化剤ガス流路40を流れた酸化剤ガスは、第2排出孔部42bから第1出口切り欠き部36bに導入された後、酸化剤ガス出口連通孔26bに円滑に排出される。
【0042】
しかも、第1セパレータ16に設けられる第1入口切り欠き部36a及び第1出口切り欠き部36bと、第2セパレータ18に設けられる第2供給孔部42a及び第2排出孔部42bとにより、酸化剤ガス用通路が形成されている。
【0043】
これにより、発電セル12では、酸化剤ガス導入部及び酸化剤ガス導出部において、積層方向の流路高さ及びシール高さを維持した状態で、前記積層方向の薄肉化を図ることができる。
【0044】
一方、燃料ガス導入部及び燃料ガス導出部においても同様に、燃料ガス入口連通孔30aに連通する第2入口切り欠き部44a及び燃料ガス出口連通孔30bに連通する第2出口切り欠き部44bと、第1供給孔部34a及び第1排出孔部34bとは、積層方向に沿って連通している(図5参照)。従って、酸化剤ガス導入部及び酸化剤ガス導出部と同様の効果が得られる。
【0045】
このため、第1の実施形態では、発電セル12の薄型化が図られ、特に多数の前記発電セル12が積層される燃料電池10全体の小型化が、容易且つ確実に遂行されるという効果が得られる。
【0046】
図7は、本発明の第2の実施形態に係る燃料電池60の分解斜視説明図である。図8は、燃料電池60の、図7中、VIII−VIII線断面説明図であり、図9は、燃料電池60の、図7中、IX−IX線断面説明図であり、図10は、燃料電池60の、図7中、X−X線断面説明図であり、図11は、燃料電池60の、図7中、XI−XI線断面説明図である。
【0047】
なお、第1の実施形態に係る燃料電池10と同一の構成要素には同一の参照符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0048】
燃料電池60は、第1発電セル62aと第2発電セル62bとを交互に矢印A方向(水平方向)に積層して構成される。第1発電セル62aは、第1電解質膜・電極構造体(電解質・電極構造体)64aを第1セパレータ66及び第2セパレータ68で挟持する。第2発電セル62bは、第2電解質膜・電極構造体64bを第3セパレータ70及び第4セパレータ72で挟持する。
【0049】
第2電解質膜・電極構造体64bは、実際上、第1電解質膜・電極構造体64aと同一であり、この第1電解質膜・電極構造体64aを面方向に180゜旋回して配置することにより構成される。第1電解質膜・電極構造体64a及び第2電解質膜・電極構造体64bを構成する固体高分子電解質膜(電解質)20a、20bは、一端部に2つの凹部74を形成する一方、他端部に凸部76を形成する。
【0050】
図12に示すように、第1セパレータ66の第1電解質膜・電極構造体64aに向かう面66aには、第1燃料ガス流路32aが形成される。第1燃料ガス流路32aは、燃料ガス入口連通孔30aの上部側近傍で複数の第1供給孔部78aと連通するとともに、燃料ガス出口連通孔30bの上部側近傍で複数の第1排出孔部78bに連通する。
【0051】
第1セパレータ66は、酸化剤ガス入口連通孔26aに連通する第1入口切り欠き部80aと、酸化剤ガス出口連通孔26bに連通する第1出口切り欠き部80bとを設ける。第1入口切り欠き部80a及び第1出口切り欠き部80bは、開口形状が略長方形状に設定されており、酸化剤ガス入口連通孔26a及び酸化剤ガス出口連通孔26bの上部側にそれぞれ連通して矢印B方向に延在する。
【0052】
図13に示すように、第1セパレータ66の面66bには、第1冷却媒体流路46aが形成される。第1冷却媒体流路46aは、冷却媒体入口連通孔28aと冷却媒体出口連通孔28bとに連通する。
【0053】
第1セパレータ66の面66aには、第1燃料ガス流路32aを周回して内側シール部材82aと、前記内側シール部材82aを周回するとともに、酸化剤ガス入口連通孔26a、冷却媒体入口連通孔28a、燃料ガス出口連通孔30b、燃料ガス入口連通孔30a、冷却媒体出口連通孔28b及び酸化剤ガス出口連通孔26bを囲繞する外側シール部材82bとが設けられる(図12参照)。内側シール部材82aは、固体高分子電解質膜20aの外周端縁部に当接するために、前記固体高分子電解質膜20aの形状に対応して成形される。
【0054】
図13に示すように、面66bには、第1冷却媒体流路46aを冷却媒体入口連通孔28a及び冷却媒体出口連通孔28bに連通するシール部材84が設けられる。
【0055】
第2セパレータ68の第1電解質膜・電極構造体64aに向かう面68aには、図14に示すように、第1酸化剤ガス流路40aが形成される。第1酸化剤ガス流路40aは、酸化剤ガス入口連通孔26aの下部側近傍で複数の第2供給孔部86aと連通するとともに、酸化剤ガス出口連通孔26bの下部側近傍で複数の第2排出孔部86bに連通する。
【0056】
第2セパレータ68は、燃料ガス入口連通孔30aに連通する第2入口切り欠き部88aと、燃料ガス出口連通孔30bに連通する第2出口切り欠き部88bとを設ける。第2入口切り欠き部88a及び第2出口切り欠き部88bは、開口形状が略長方形状に設定されており、燃料ガス入口連通孔30a及び燃料ガス出口連通孔30bの下部側にそれぞれ連通して矢印B方向に延在する。第2セパレータ68の面68bは、平坦面を構成する。
【0057】
図15に示すように、第3セパレータ70の第2電解質膜・電極構造体64bに向かう面70aには、第2燃料ガス流路32bが形成される。第2燃料ガス流路32bは、燃料ガス入口連通孔30aの下部側近傍で複数の第3供給孔部90aと連通するとともに、燃料ガス出口連通孔30bの下部側近傍で複数の第3排出孔部90bに連通する。第3供給孔部90aは、第1供給孔部78aと積層方向に互いにオフセットする一方、第3排出孔部90bは、第1排出孔部78bと積層方向に互いにオフセットする。
【0058】
第3セパレータ70は、酸化剤ガス入口連通孔26aに連通する第3入口切り欠き部92aと、酸化剤ガス出口連通孔26bに連通する第3出口切り欠き部92bとを設ける。第3入口切り欠き部92a及び第3出口切り欠き部92bは、開口形状が略長方形状に設定されており、酸化剤ガス入口連通孔26a及び酸化剤ガス出口連通孔26bの下部側にそれぞれ連通して矢印B方向に延在する。第3入口切り欠き部92aは、第1入口切り欠き部80aと積層方向に互いにオフセットする一方、第3出口切り欠き部92bは、第1出口切り欠き部80bと積層方向に互いにオフセットする。
【0059】
図16に示すように、第3セパレータ70の面70bには、第2冷却媒体流路46bが形成される。第2冷却媒体流路46bは、冷却媒体入口連通孔28aと冷却媒体出口連通孔28bとに連通する。
【0060】
第3セパレータ70の面70aには、第2燃料ガス流路32bを周回して内側シール部材94aと、外側シール部材94bとが設けられる(図15参照)。図16に示すように、面70bには、第2冷却媒体流路46bを冷却媒体入口連通孔28a及び冷却媒体出口連通孔28bに連通するシール部材96が設けられる。
【0061】
第4セパレータ72の第2電解質膜・電極構造体64bに向かう面72aには、図17に示すように、第2酸化剤ガス流路40bが形成される。第2酸化剤ガス流路40bは、酸化剤ガス入口連通孔26aの上部側近傍で複数の第4供給孔部98aに連通するとともに、酸化剤ガス出口連通孔26bの上部側近傍で複数の第4排出孔部98bに連通する。第4供給孔部98aは、第2供給孔部86aと積層方向に互いにオフセットする一方、第4排出孔部98bは、第2排出孔部86bと積層方向に互いにオフセットする。
【0062】
第4セパレータ72は、燃料ガス入口連通孔30aに連通する第4入口切り欠き部100aと、燃料ガス出口連通孔30bに連通する第4出口切り欠き部100bとを設ける。第4入口切り欠き部100a及び第4出口切り欠き部100bは、開口形状が略長方形状に設定されており、燃料ガス入口連通孔30a及び燃料ガス出口連通孔30bの上部側にそれぞれ連通して矢印B方向に延在する。第4入口切り欠き部100aは、第2入口切り欠き部88aと積層方向に互いにオフセットする一方、第4出口切り欠き部100bは、第2出口切り欠き部88bと積層方向に互いにオフセットする。第4セパレータ72の面72bは、平坦面を構成する。
【0063】
このように構成される燃料電池60の動作について、以下に説明する。
【0064】
図7及び図8に示すように、これにより、酸化剤ガス入口連通孔26aに供給された酸化剤ガスは、第1セパレータ66に設けられている第1入口切り欠き部(第1切り欠き部)80aに導入された後、第4セパレータ72に形成されている第4供給孔部(第1孔部)98aを通ってこの第4セパレータ72の面72a側に移動する。
【0065】
面72aでは、酸化剤ガスが第2酸化剤ガス流路40bに沿って移動した後、第4排出孔部(第1孔部)98bを通って第1セパレータ66の第1出口切り欠き部(第1切り欠き部)80bから酸化剤ガス出口連通孔26bに排出される(図7参照)。
【0066】
一方、酸化剤ガス入口連通孔26aに供給された酸化剤ガスの一部は、第3セパレータ70に設けられている第3入口切り欠き部(第2切り欠き部)92aに導入された後、第2セパレータ68に設けられている第2供給孔部(第2孔部)86aを通って面68a側の第1酸化剤ガス流路40aに供給される(図9参照)。
【0067】
第1酸化剤ガス流路40aを移動した酸化剤ガスは、第2排出孔部(第2孔部)86bを通って第3セパレータ70の第3出口切り欠き部(第2切り欠き部)92bから酸化剤ガス出口連通孔26bに排出される(図7参照)。
【0068】
一方、燃料ガス入口連通孔30aに供給された燃料ガスの一部は、第4セパレータ72に設けられている第4入口切り欠き部100aに導入された後、第1セパレータ66に設けられている第1供給孔部78aを通って面66a側の第1燃料ガス流路32aに供給される(図7及び図11参照)。
【0069】
第1燃料ガス流路32aを通った燃料ガスは、第1排出孔部78bを通って第4セパレータ72の第4出口切り欠き部100bから燃料ガス出口連通孔30bに排出される(図7参照)。
【0070】
また、燃料ガス入口連通孔30aに供給された燃料ガスの一部は、第2セパレータ68に設けられている第2入口切り欠き部88aに導入された後、第3セパレータ70に設けられている第3供給孔部90aを通って面70a側の第2燃料ガス流路32bに供給される(図7及び図10参照)。
【0071】
第2燃料ガス流路32bを通った燃料ガスは、第3排出孔部90bを通って第2セパレータ68の第2出口切り欠き部88bから燃料ガス出口連通孔30bに排出される(図7参照)。
【0072】
これにより、第1電解質膜・電極構造体64a及び第2電解質膜・電極構造体64bでは、それぞれカソード側電極22に供給される酸化剤ガスと、アノード側電極24に供給される燃料ガスとが、電極触媒層内で電気化学反応により消費され、発電が行われる。なお、冷却媒体入口連通孔28aに供給された冷却媒体は、第1冷却媒体流路46a及び第2冷却媒体流路46bに導入された後、冷却媒体出口連通孔28bに排出される。
【0073】
この場合、第2の実施形態では、第1セパレータ66に設けられ、酸化剤ガス入口連通孔26aに連通する第1入口切り欠き部80aと、酸化剤ガス出口連通孔26bに連通する第1出口切り欠き部80bとが、それぞれ第4セパレータ72に設けられている第4供給孔部98aと第4排出孔部98bとに、積層方向に沿って連通している。
【0074】
同様に、第4セパレータ72に設けられ、燃料ガス入口連通孔30aに連通する第4入口切り欠き部100aと、燃料ガス出口連通孔30bに連通する第4出口切り欠き部100bとが、第1セパレータ66に設けられている第1供給孔部78aと第1排出孔部78bとに積層方向に沿って連通している。これにより、燃料電池60全体の小型化が容易に遂行される等、第1の実施形態と同様の効果が得られる。
【0075】
さらに、第2の実施形態では、第1燃料ガス流路32aに連通する第1供給孔部78a及び第1排出孔部78bは、第2燃料ガス流路32bに連通する第3供給孔部90a及び第3排出孔部90bと積層方向に互いにオフセットして設定される。
【0076】
一方、酸化剤ガス入口連通孔26aに連通する第1入口切り欠き部80aと第3入口切り欠き部92aとは、積層方向に互いにオフセットするとともに、酸化剤ガス出口連通孔26bに連通する第1出口切り欠き部80bと第3出口切り欠き部92bとは、積層方向に互いにオフセットしている。
【0077】
また、燃料ガス側でも同様に、第2供給孔部86a及び第2排出孔部86bは、第4供給孔部98a及び第4排出孔部98bと積層方向に互いにオフセットするとともに、第2入口切り欠き部88a及び第2出口切り欠き部88bは、第4入口切り欠き部100a及び第4出口切り欠き部100bと、積層方向に互いにオフセットしている。
【0078】
従って、隣接する第1発電セル62a及び第2発電セル62bにおいて、酸化剤ガスと燃料ガスとを含む反応ガス導入部及び反応ガス導出部では、流路高さ及びシール高さを維持しながら、積層方向に対してより薄型化が図られる。これにより、燃料電池60全体の小型化が一層良好に遂行されるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る燃料電池を構成する発電セルの分解斜視説明図である。
【図2】前記燃料電池の、図1中、II−II線断面説明図である。
【図3】前記燃料電池の、図1中、III−III線断面説明図である。
【図4】前記燃料電池の、図1中、IV−IV線断面説明図である。
【図5】前記発電セルを構成する第1セパレータの正面説明図である。
【図6】前記発電セルを構成する第2セパレータの正面説明図である。
【図7】本発明の第2の実施形態に係る燃料電池の分解斜視説明図である。
【図8】前記燃料電池の、図7中、VIII−VIII線断面説明図である。
【図9】前記燃料電池の、図7中、IX−IX線断面説明図である。
【図10】前記燃料電池の、図7中、X−X線断面説明図である。
【図11】前記燃料電池の、図7中、XI−XI線断面説明図である。
【図12】前記燃料電池を構成する第1セパレータの一方の面の説明図である。
【図13】前記第1セパレータの他方の面の説明図である。
【図14】前記燃料電池を構成する第2セパレータの正面説明図である。
【図15】前記燃料電池を構成する第3セパレータの一方の面の説明図である。
【図16】前記第3セパレータの他方の面の説明図である。
【図17】前記燃料電池を構成する第4セパレータの正面説明図である。
【図18】特許文献1のプロセス制御装置の説明図である。
【符号の説明】
【0080】
10、60…燃料電池 12、62a、62b…発電セル
14、64a、64b…電解質膜・電極構造体
16、18、66、68、70、72…セパレータ
20、20a、20b…固体高分子電解質膜
22…カソード側電極 24…アノード側電極
26a…酸化剤ガス入口連通孔 26b…酸化剤ガス出口連通孔
28a…冷却媒体入口連通孔 28b…冷却媒体出口連通孔
30a…燃料ガス入口連通孔 30b…燃料ガス出口連通孔
32、32a、32b…燃料ガス流路
34a、42a、78a、86a、90a、98a…供給孔部
34b、42b、78b、86b、90b、98b…排出孔部
36a、44a、80a、88a、92a、100a…入口切り欠き部
36b、44b、80b、88b、92b、100b…出口切り欠き部
40…酸化剤ガス流路
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解質の両側に電極を配設した電解質・電極構造体を備え、前記電解質・電極構造体を第1セパレータと第2セパレータとで挟持するとともに、電極面方向に沿って延在する反応ガス流路と、積層方向に貫通して反応ガスを流す反応ガス連通孔とを設ける燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、固体高分子型燃料電池は、高分子イオン交換膜からなる固体高分子電解質膜を採用している。この燃料電池では、固体高分子電解質膜の両側に、それぞれ電極触媒層と多孔質カーボンからなるアノード側電極及びカソード側電極を配設した電解質膜・電極構造体(電解質・電極構造体)を、セパレータ(バイポーラ板)によって挟持することにより単位セルが構成されている。通常、この単位セルを所定数だけ積層した燃料電池スタックが使用されている。
【0003】
一般的に、燃料電池は、セパレータの積層方向に貫通する入口連通孔及び出口連通孔を設けた、所謂、内部マニホールドを構成している。そして、燃料ガス、酸化剤ガス及び冷却媒体は、それぞれの入口連通孔から燃料ガス流路、酸化剤ガス流路及び冷却媒体流路に供給された後、それぞれの出口連通孔に排出されている。
【0004】
例えば、特許文献1に開示されているプロセス制御装置では、図18に示すように、互いに平行に配置される2つの板1a、1bを重ね合わせた積層板がユニット2と交互に積層されている。ユニット2は、MEA2aを陽極2b及び陰極2cで挟持するとともに、これらが一対の接触板2dに挟持されて構成されている。
【0005】
板1aとユニット2との間に第1室3aが形成され、板1bと前記ユニット2との間に第2室3bが形成され、前記板1a、1b間に第3室3cが形成されている。板1a、1bの端部には、パッキン4を介して積層方向に連通孔5が形成される。
【0006】
この連通孔5は、板1a、1b間に形成される流路6を介して、例えば、第2室3bに連通している。図示していないが、積層方向には、他の2つの連通孔が設けられており、他の2つの連通孔は、板1a、1b間の流路(図示せず)を介して第1室3a及び第3室3cにそれぞれ連通している。
【0007】
【特許文献1】特開平6−218275号公報(図5)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記の特許文献1では、積層方向に形成されている連通孔5を第2室3bに連通するための流路6は、流体を良好に導入するために積層方向の流路高さを確保するとともに、パッキン4によるシール高さを確保する必要がある。このため、ユニット2同士の間隔が相当に大きくなり、燃料電池の小型化が図れないという問題がある。
【0009】
特に、車載用燃料電池スタックでは、多数、例えば、数百の燃料電池を積層して構成されている。従って、各燃料電池同士の間隔が大きくなっており、燃料電池スタック全体としての小型化が図られないという問題がある。
【0010】
本発明はこの種の問題を解決するものであり、積層方向に延在する反応ガス連通孔と電極面方向に延在する反応ガス流路との間で反応ガスを良好に流すことができ、しかも前記積層方向の薄型化を図ることが可能な燃料電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、電解質の両側に電極を配設した電解質・電極構造体を第1セパレータと第2セパレータとで挟持する発電セルを備え、前記発電セルが複数積層されるとともに、電極面方向に沿って延在する反応ガス流路と、積層方向に貫通して反応ガスを流す反応ガス連通孔とを設ける燃料電池に関するものである。
【0012】
そして、一方の発電セルを構成する第1セパレータは、反応ガス連通孔のいずれかに連通する切り欠き部を設けるとともに、他方の発電セルを構成し、前記一方の発電セルの前記第1セパレータに隣接する第2セパレータは、積層方向に沿って前記切り欠き部に連通し前記反応ガス連通孔を前記反応ガス流路に連通させるための孔部を設けている。
【0013】
また、本発明は、電解質の両側に電極を配設した第1電解質・電極構造体及び第2電解質・電極接合体を備え、前記第1電解質・電極接合体を第1セパレータと第2セパレータとで挟持する第1発電セルと、前記第2電解質・電極接合体を第3セパレータと第4セパレータとで挟持し前記第1発電セルと交互に積層される第2発電セルとを有し、電極面方向に沿って延在する反応ガス流路と、積層方向に貫通して反応ガスを流す反応ガス連通孔とを設ける燃料電池に関するものである。
【0014】
そこで、第1セパレータは、反応ガス連通孔のいずれかに連通する第1切り欠き部を設けるとともに、前記第1セパレータに隣接する第4セパレータは、積層方向に沿って前記第1切り欠き部に連通し前記反応ガス連通孔を前記反応ガス流路に連通させるための第1孔部を設け、第3セパレータは、前記第1切り欠き部に連通する前記反応ガス連通孔に連通する第2切り欠き部を設けるとともに、前記第3セパレータに隣接する第2セパレータは、前記積層方向に沿って前記第2切り欠き部に連通し前記反応ガス連通孔を前記反応ガス流路に連通させるための第2孔部を設けている。
【0015】
そして、第1切り欠き部と第2切り欠き部とは、積層方向に互いにオフセットし、且つ第1孔部と第2孔部とは、前記積層方向に互いにオフセットしている。
【発明の効果】
【0016】
本発明では、第1セパレータに設けられる切り欠き部が、反応ガス用チャンバを構成しており、反応ガスは、反応ガス連通孔から前記切り欠き部に導入された後、孔部を通って反応ガス流路に確実に供給される。一方、反応ガス流路を流れた反応ガスは、孔部から切り欠き部に導入された後、反応ガス連通孔に円滑に排出される。従って、積層方向に延在する反応ガス連通孔と電極面方向に延在する反応ガス流路との間で反応ガスを良好に流すことができる。
【0017】
しかも、第1セパレータに設けられる切り欠き部と第2セパレータに設けられる孔部とにより反応ガス用通路が形成されている。これにより、反応ガス導入部や反応ガス導出部における流路高さ及びシール高さを維持した状態で、積層方向の薄型化を図ることが可能になる。このため、燃料電池全体の小型化が容易に遂行され、特に車載用燃料電池スタックを良好にコンパクト化することができる。
【0018】
また、本発明では、隣接する第1発電セル及び第2発電セルにおいて、第1切り欠き部と第2切り欠き部とが、積層方向に互いにオフセットするとともに、第1孔部と第2孔部とが、前記積層方向に互いにオフセットしている。従って、隣接する第1発電セルと第2発電セルでは、反応ガス導入部や反応ガス導出部における流路高さ及びシール高さを維持しながら、積層方向に対してより薄型化が図られ、燃料電池全体の小型化が良好に遂行される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る燃料電池10を構成する発電セル12の分解斜視説明図である。図2は、燃料電池10の、図1中、II−II線断面説明図であり、図3は、燃料電池10の、図1中、III−III線断面説明図であり、図4は、燃料電池10の、図1中、IV−IV線断面説明図である。
【0020】
発電セル12は、図1に示すように、電解質膜・電極構造体(電解質・電極構造体)14を第1セパレータ16及び第2セパレータ18で挟持する。第1セパレータ16及び第2セパレータ18は、例えば、カーボンセパレータや金属セパレータで構成されるとともに、横長な長方形状を有している。
【0021】
電解質膜・電極構造体14は、例えば、パーフルオロスルホン酸の薄膜に水が含浸された固体高分子電解質膜(電解質)20と、前記固体高分子電解質膜20を挟持するカソード側電極22及びアノード側電極24とを備える。カソード側電極22及びアノード側電極24は、カーボンペーパ等からなるガス拡散層(図示せず)と、白金合金が表面に担持された多孔質カーボン粒子を前記ガス拡散層の表面に一様に塗布して形成された電極触媒層(図示せず)とを有する。
【0022】
発電セル12の矢印B方向の一端縁部には、積層方向である矢印A方向に互いに連通して、酸化剤ガス(反応ガス)、例えば、酸素含有ガスを供給するための酸化剤ガス入口連通孔26a、冷却媒体を供給するための冷却媒体入口連通孔28a、及び燃料ガス(反応ガス)、例えば、水素含有ガスを排出するための燃料ガス出口連通孔30bが、矢印C方向(鉛直方向)に配列して設けられる。
【0023】
発電セル12の矢印B方向の他端縁部には、矢印A方向に互いに連通して、燃料ガスを供給するための燃料ガス入口連通孔30a、冷却媒体を排出するための冷却媒体出口連通孔28b、及び酸化剤ガスを排出するための酸化剤ガス出口連通孔26bが、矢印C方向に配列して設けられる。
【0024】
図5に示すように、第1セパレータ16の電解質膜・電極構造体14に向かう面16aには、燃料ガス流路32が形成される。燃料ガス流路32は、燃料ガス入口連通孔30aの近傍で複数の第1供給孔部34aと連通するとともに、燃料ガス出口連通孔30bの近傍で複数の第1排出孔部34bに連通する。
【0025】
第1セパレータ16は、酸化剤ガス入口連通孔26aに連通する第1入口切り欠き部36aと、酸化剤ガス出口連通孔26bに連通する第1出口切り欠き部36bとを設ける。第1入口切り欠き部36a及び第1出口切り欠き部36bは、酸化剤ガス入口連通孔26a及び酸化剤ガス出口連通孔26bと同一の開口高さ寸法を有し、実質的に、前記酸化剤ガス入口連通孔26a及び前記酸化剤ガス出口連通孔26bを内側に拡開している。
【0026】
第1セパレータ16の面16aには、第1シール部材(例えば、ガスケット)38が設けられる。この第1シール部材38は、燃料ガス流路32を周回するとともに、酸化剤ガス入口連通孔26a、冷却媒体入口連通孔28a、燃料ガス出口連通孔30b、燃料ガス入口連通孔30a、冷却媒体出口連通孔28b及び酸化剤ガス出口連通孔26bを囲繞する。第1シール部材38は、例えば、EPDM(エチレン−プロピレンゴム)、シリコーンゴム、ニトリルゴム又はアクリルゴムで構成される。第1セパレータ16の面16bは、平坦面に構成される。なお、以下に説明する各シール部材は、上記の第1シール部材38と同様であり、その詳細な説明は省略する。
【0027】
第2セパレータ18の電解質膜・電極構造体14に向かう面18aには、酸化剤ガス流路40が形成される。図6に示すように、酸化剤ガス流路40は、酸化剤ガス入口連通孔26aの近傍で複数の第2供給孔部42aと連通するとともに、酸化剤ガス出口連通孔26bの近傍で複数の第2排出孔部42bに連通する。第2セパレータ18は、燃料ガス入口連通孔30aに連通する第2入口切り欠き部44aと、燃料ガス出口連通孔30bに連通する第2出口切り欠き部44bとを設ける。
【0028】
図5及び図6に示すように、一方の発電セル12を構成する第1セパレータ16と、他方の発電セル12を構成する第2セパレータ18とが隣接して積層される際、前記第1セパレータ16の第1供給孔部34a及び第1排出孔部34bは、第2セパレータ18の第2入口切り欠き部44a及び第2出口切り欠き部44bと積層方向に沿って連通することにより、燃料ガス入口連通孔30a及び燃料ガス出口連通孔30bが、燃料ガス流路32に連通する(図3及び図5参照)。
【0029】
同様に、第2セパレータ18の第2供給孔部42a及び第2排出孔部42bは、第1セパレータ16の第1入口切り欠き部36a及び第1出口切り欠き部36bと積層方向に沿って連通することにより、酸化剤ガス流路40は、酸化剤ガス入口連通孔26a及び酸化剤ガス出口連通孔26bに連通する(図2及び図6参照)。
【0030】
図1に示すように、第2セパレータ18の面18bには、冷却媒体入口連通孔28a及び冷却媒体出口連通孔28bに連通する冷却媒体流路46が形成される。第2セパレータ18の面18aには、酸化剤ガス流路40を周回する第2シール部材48が設けられる一方(図6参照)、面18bには、冷却媒体流路46と冷却媒体入口連通孔28a及び冷却媒体出口連通孔28bとを周回する第3シール部材50が設けられる(図1参照)。
【0031】
このように構成される燃料電池10の動作について、以下に説明する。
【0032】
図1に示すように、酸化剤ガス入口連通孔26aには、酸素含有ガス等の酸化剤ガスが供給されるとともに、燃料ガス入口連通孔30aには、水素含有ガス等の燃料ガスが供給される。さらに、冷却媒体入口連通孔28aには、純水やエチレングリコール等の冷却媒体が供給される。
【0033】
酸化剤ガス入口連通孔26aに供給された酸化剤ガスは、図2に示すように、一方の発電セル12を構成する第1セパレータ16に設けられた第1入口切り欠き部36aに導入された後、他方の発電セル12を構成し、第1セパレータ16に隣接する第2セパレータ18に設けられた複数の第2供給孔部42aに供給される。第1入口切り欠き部36aと第2供給孔部42aとは、積層方向に連通しているからである。
【0034】
第2供給孔部42aを通った酸化剤ガスは、第2セパレータ18の面18a側に移動して、この面18aに設けられている酸化剤ガス流路40に沿って矢印B方向に移動する(図2及び図6参照)。
【0035】
一方、燃料ガス入口連通孔30aに供給された燃料ガスは、図3に示すように、一方の発電セル12を構成する第2セパレータ18に設けられた第2入口切り欠き部44aに導入された後、他方の発電セル12を構成し、前記第2セパレータ18に隣接して積層される第1セパレータ16の第1供給孔部34aに供給される。この第1供給孔部34aを通って面16a側に移動した燃料ガスは、この面16aに設けられている燃料ガス流路32に沿って矢印B方向に移動する(図5参照)。
【0036】
これにより、図1に示すように、電解質膜・電極構造体14では、カソード側電極22に供給される酸化剤ガスと、アノード側電極24に供給される燃料ガスとが、電極触媒層内で電気化学反応により消費され、発電が行われる。
【0037】
発電反応に使用された酸化剤ガスは、第2セパレータ18に設けられている第2排出孔部42bを通って第1セパレータ16に設けられている第1出口切り欠き部36bに導入され、この第1出口切り欠き部36bに連通する酸化剤ガス出口連通孔26bに排出される(図6参照)。
【0038】
同様に、発電反応に使用された燃料ガスは、第1セパレータ16に設けられている第1排出孔部34bを通って第2セパレータ18の第2出口切り欠き部44bに導入され、この第2出口切り欠き部44bに連通する燃料ガス出口連通孔30bに排出される(図5参照)。
【0039】
また、冷却媒体は、図1に示すように、第2セパレータ18の冷却媒体流路46に供給され、この冷却媒体流路46に沿って矢印B方向に移動する。冷却媒体は、電解質膜・電極構造体14を冷却した後、冷却媒体出口連通孔28bに排出される。
【0040】
この場合、第1の実施形態では、図1及び図5に示すように、第1セパレータ16には、酸化剤ガス入口連通孔26aに連通する第1入口切り欠き部36aと、酸化剤ガス出口連通孔26bに連通する第1出口切り欠き部36bとが設けられている。そして、第2セパレータ18には、積層方向に沿って第1入口切り欠き部36aに連通する第2供給孔部42aと、前記積層方向に沿って第1出口切り欠き部36bに連通する第2排出孔部42bとが設けられている(図5及び図6参照)。
【0041】
このため、第1入口切り欠き部36a及び第1出口切り欠き部36bは、酸化剤ガス用チャンバを構成しており、酸化剤ガスは、酸化剤ガス入口連通孔26aから前記第1入口切り欠き部36aに導入された後、第2供給孔部42aを通って酸化剤ガス流路40に確実に供給される。さらに、酸化剤ガス流路40を流れた酸化剤ガスは、第2排出孔部42bから第1出口切り欠き部36bに導入された後、酸化剤ガス出口連通孔26bに円滑に排出される。
【0042】
しかも、第1セパレータ16に設けられる第1入口切り欠き部36a及び第1出口切り欠き部36bと、第2セパレータ18に設けられる第2供給孔部42a及び第2排出孔部42bとにより、酸化剤ガス用通路が形成されている。
【0043】
これにより、発電セル12では、酸化剤ガス導入部及び酸化剤ガス導出部において、積層方向の流路高さ及びシール高さを維持した状態で、前記積層方向の薄肉化を図ることができる。
【0044】
一方、燃料ガス導入部及び燃料ガス導出部においても同様に、燃料ガス入口連通孔30aに連通する第2入口切り欠き部44a及び燃料ガス出口連通孔30bに連通する第2出口切り欠き部44bと、第1供給孔部34a及び第1排出孔部34bとは、積層方向に沿って連通している(図5参照)。従って、酸化剤ガス導入部及び酸化剤ガス導出部と同様の効果が得られる。
【0045】
このため、第1の実施形態では、発電セル12の薄型化が図られ、特に多数の前記発電セル12が積層される燃料電池10全体の小型化が、容易且つ確実に遂行されるという効果が得られる。
【0046】
図7は、本発明の第2の実施形態に係る燃料電池60の分解斜視説明図である。図8は、燃料電池60の、図7中、VIII−VIII線断面説明図であり、図9は、燃料電池60の、図7中、IX−IX線断面説明図であり、図10は、燃料電池60の、図7中、X−X線断面説明図であり、図11は、燃料電池60の、図7中、XI−XI線断面説明図である。
【0047】
なお、第1の実施形態に係る燃料電池10と同一の構成要素には同一の参照符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0048】
燃料電池60は、第1発電セル62aと第2発電セル62bとを交互に矢印A方向(水平方向)に積層して構成される。第1発電セル62aは、第1電解質膜・電極構造体(電解質・電極構造体)64aを第1セパレータ66及び第2セパレータ68で挟持する。第2発電セル62bは、第2電解質膜・電極構造体64bを第3セパレータ70及び第4セパレータ72で挟持する。
【0049】
第2電解質膜・電極構造体64bは、実際上、第1電解質膜・電極構造体64aと同一であり、この第1電解質膜・電極構造体64aを面方向に180゜旋回して配置することにより構成される。第1電解質膜・電極構造体64a及び第2電解質膜・電極構造体64bを構成する固体高分子電解質膜(電解質)20a、20bは、一端部に2つの凹部74を形成する一方、他端部に凸部76を形成する。
【0050】
図12に示すように、第1セパレータ66の第1電解質膜・電極構造体64aに向かう面66aには、第1燃料ガス流路32aが形成される。第1燃料ガス流路32aは、燃料ガス入口連通孔30aの上部側近傍で複数の第1供給孔部78aと連通するとともに、燃料ガス出口連通孔30bの上部側近傍で複数の第1排出孔部78bに連通する。
【0051】
第1セパレータ66は、酸化剤ガス入口連通孔26aに連通する第1入口切り欠き部80aと、酸化剤ガス出口連通孔26bに連通する第1出口切り欠き部80bとを設ける。第1入口切り欠き部80a及び第1出口切り欠き部80bは、開口形状が略長方形状に設定されており、酸化剤ガス入口連通孔26a及び酸化剤ガス出口連通孔26bの上部側にそれぞれ連通して矢印B方向に延在する。
【0052】
図13に示すように、第1セパレータ66の面66bには、第1冷却媒体流路46aが形成される。第1冷却媒体流路46aは、冷却媒体入口連通孔28aと冷却媒体出口連通孔28bとに連通する。
【0053】
第1セパレータ66の面66aには、第1燃料ガス流路32aを周回して内側シール部材82aと、前記内側シール部材82aを周回するとともに、酸化剤ガス入口連通孔26a、冷却媒体入口連通孔28a、燃料ガス出口連通孔30b、燃料ガス入口連通孔30a、冷却媒体出口連通孔28b及び酸化剤ガス出口連通孔26bを囲繞する外側シール部材82bとが設けられる(図12参照)。内側シール部材82aは、固体高分子電解質膜20aの外周端縁部に当接するために、前記固体高分子電解質膜20aの形状に対応して成形される。
【0054】
図13に示すように、面66bには、第1冷却媒体流路46aを冷却媒体入口連通孔28a及び冷却媒体出口連通孔28bに連通するシール部材84が設けられる。
【0055】
第2セパレータ68の第1電解質膜・電極構造体64aに向かう面68aには、図14に示すように、第1酸化剤ガス流路40aが形成される。第1酸化剤ガス流路40aは、酸化剤ガス入口連通孔26aの下部側近傍で複数の第2供給孔部86aと連通するとともに、酸化剤ガス出口連通孔26bの下部側近傍で複数の第2排出孔部86bに連通する。
【0056】
第2セパレータ68は、燃料ガス入口連通孔30aに連通する第2入口切り欠き部88aと、燃料ガス出口連通孔30bに連通する第2出口切り欠き部88bとを設ける。第2入口切り欠き部88a及び第2出口切り欠き部88bは、開口形状が略長方形状に設定されており、燃料ガス入口連通孔30a及び燃料ガス出口連通孔30bの下部側にそれぞれ連通して矢印B方向に延在する。第2セパレータ68の面68bは、平坦面を構成する。
【0057】
図15に示すように、第3セパレータ70の第2電解質膜・電極構造体64bに向かう面70aには、第2燃料ガス流路32bが形成される。第2燃料ガス流路32bは、燃料ガス入口連通孔30aの下部側近傍で複数の第3供給孔部90aと連通するとともに、燃料ガス出口連通孔30bの下部側近傍で複数の第3排出孔部90bに連通する。第3供給孔部90aは、第1供給孔部78aと積層方向に互いにオフセットする一方、第3排出孔部90bは、第1排出孔部78bと積層方向に互いにオフセットする。
【0058】
第3セパレータ70は、酸化剤ガス入口連通孔26aに連通する第3入口切り欠き部92aと、酸化剤ガス出口連通孔26bに連通する第3出口切り欠き部92bとを設ける。第3入口切り欠き部92a及び第3出口切り欠き部92bは、開口形状が略長方形状に設定されており、酸化剤ガス入口連通孔26a及び酸化剤ガス出口連通孔26bの下部側にそれぞれ連通して矢印B方向に延在する。第3入口切り欠き部92aは、第1入口切り欠き部80aと積層方向に互いにオフセットする一方、第3出口切り欠き部92bは、第1出口切り欠き部80bと積層方向に互いにオフセットする。
【0059】
図16に示すように、第3セパレータ70の面70bには、第2冷却媒体流路46bが形成される。第2冷却媒体流路46bは、冷却媒体入口連通孔28aと冷却媒体出口連通孔28bとに連通する。
【0060】
第3セパレータ70の面70aには、第2燃料ガス流路32bを周回して内側シール部材94aと、外側シール部材94bとが設けられる(図15参照)。図16に示すように、面70bには、第2冷却媒体流路46bを冷却媒体入口連通孔28a及び冷却媒体出口連通孔28bに連通するシール部材96が設けられる。
【0061】
第4セパレータ72の第2電解質膜・電極構造体64bに向かう面72aには、図17に示すように、第2酸化剤ガス流路40bが形成される。第2酸化剤ガス流路40bは、酸化剤ガス入口連通孔26aの上部側近傍で複数の第4供給孔部98aに連通するとともに、酸化剤ガス出口連通孔26bの上部側近傍で複数の第4排出孔部98bに連通する。第4供給孔部98aは、第2供給孔部86aと積層方向に互いにオフセットする一方、第4排出孔部98bは、第2排出孔部86bと積層方向に互いにオフセットする。
【0062】
第4セパレータ72は、燃料ガス入口連通孔30aに連通する第4入口切り欠き部100aと、燃料ガス出口連通孔30bに連通する第4出口切り欠き部100bとを設ける。第4入口切り欠き部100a及び第4出口切り欠き部100bは、開口形状が略長方形状に設定されており、燃料ガス入口連通孔30a及び燃料ガス出口連通孔30bの上部側にそれぞれ連通して矢印B方向に延在する。第4入口切り欠き部100aは、第2入口切り欠き部88aと積層方向に互いにオフセットする一方、第4出口切り欠き部100bは、第2出口切り欠き部88bと積層方向に互いにオフセットする。第4セパレータ72の面72bは、平坦面を構成する。
【0063】
このように構成される燃料電池60の動作について、以下に説明する。
【0064】
図7及び図8に示すように、これにより、酸化剤ガス入口連通孔26aに供給された酸化剤ガスは、第1セパレータ66に設けられている第1入口切り欠き部(第1切り欠き部)80aに導入された後、第4セパレータ72に形成されている第4供給孔部(第1孔部)98aを通ってこの第4セパレータ72の面72a側に移動する。
【0065】
面72aでは、酸化剤ガスが第2酸化剤ガス流路40bに沿って移動した後、第4排出孔部(第1孔部)98bを通って第1セパレータ66の第1出口切り欠き部(第1切り欠き部)80bから酸化剤ガス出口連通孔26bに排出される(図7参照)。
【0066】
一方、酸化剤ガス入口連通孔26aに供給された酸化剤ガスの一部は、第3セパレータ70に設けられている第3入口切り欠き部(第2切り欠き部)92aに導入された後、第2セパレータ68に設けられている第2供給孔部(第2孔部)86aを通って面68a側の第1酸化剤ガス流路40aに供給される(図9参照)。
【0067】
第1酸化剤ガス流路40aを移動した酸化剤ガスは、第2排出孔部(第2孔部)86bを通って第3セパレータ70の第3出口切り欠き部(第2切り欠き部)92bから酸化剤ガス出口連通孔26bに排出される(図7参照)。
【0068】
一方、燃料ガス入口連通孔30aに供給された燃料ガスの一部は、第4セパレータ72に設けられている第4入口切り欠き部100aに導入された後、第1セパレータ66に設けられている第1供給孔部78aを通って面66a側の第1燃料ガス流路32aに供給される(図7及び図11参照)。
【0069】
第1燃料ガス流路32aを通った燃料ガスは、第1排出孔部78bを通って第4セパレータ72の第4出口切り欠き部100bから燃料ガス出口連通孔30bに排出される(図7参照)。
【0070】
また、燃料ガス入口連通孔30aに供給された燃料ガスの一部は、第2セパレータ68に設けられている第2入口切り欠き部88aに導入された後、第3セパレータ70に設けられている第3供給孔部90aを通って面70a側の第2燃料ガス流路32bに供給される(図7及び図10参照)。
【0071】
第2燃料ガス流路32bを通った燃料ガスは、第3排出孔部90bを通って第2セパレータ68の第2出口切り欠き部88bから燃料ガス出口連通孔30bに排出される(図7参照)。
【0072】
これにより、第1電解質膜・電極構造体64a及び第2電解質膜・電極構造体64bでは、それぞれカソード側電極22に供給される酸化剤ガスと、アノード側電極24に供給される燃料ガスとが、電極触媒層内で電気化学反応により消費され、発電が行われる。なお、冷却媒体入口連通孔28aに供給された冷却媒体は、第1冷却媒体流路46a及び第2冷却媒体流路46bに導入された後、冷却媒体出口連通孔28bに排出される。
【0073】
この場合、第2の実施形態では、第1セパレータ66に設けられ、酸化剤ガス入口連通孔26aに連通する第1入口切り欠き部80aと、酸化剤ガス出口連通孔26bに連通する第1出口切り欠き部80bとが、それぞれ第4セパレータ72に設けられている第4供給孔部98aと第4排出孔部98bとに、積層方向に沿って連通している。
【0074】
同様に、第4セパレータ72に設けられ、燃料ガス入口連通孔30aに連通する第4入口切り欠き部100aと、燃料ガス出口連通孔30bに連通する第4出口切り欠き部100bとが、第1セパレータ66に設けられている第1供給孔部78aと第1排出孔部78bとに積層方向に沿って連通している。これにより、燃料電池60全体の小型化が容易に遂行される等、第1の実施形態と同様の効果が得られる。
【0075】
さらに、第2の実施形態では、第1燃料ガス流路32aに連通する第1供給孔部78a及び第1排出孔部78bは、第2燃料ガス流路32bに連通する第3供給孔部90a及び第3排出孔部90bと積層方向に互いにオフセットして設定される。
【0076】
一方、酸化剤ガス入口連通孔26aに連通する第1入口切り欠き部80aと第3入口切り欠き部92aとは、積層方向に互いにオフセットするとともに、酸化剤ガス出口連通孔26bに連通する第1出口切り欠き部80bと第3出口切り欠き部92bとは、積層方向に互いにオフセットしている。
【0077】
また、燃料ガス側でも同様に、第2供給孔部86a及び第2排出孔部86bは、第4供給孔部98a及び第4排出孔部98bと積層方向に互いにオフセットするとともに、第2入口切り欠き部88a及び第2出口切り欠き部88bは、第4入口切り欠き部100a及び第4出口切り欠き部100bと、積層方向に互いにオフセットしている。
【0078】
従って、隣接する第1発電セル62a及び第2発電セル62bにおいて、酸化剤ガスと燃料ガスとを含む反応ガス導入部及び反応ガス導出部では、流路高さ及びシール高さを維持しながら、積層方向に対してより薄型化が図られる。これにより、燃料電池60全体の小型化が一層良好に遂行されるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る燃料電池を構成する発電セルの分解斜視説明図である。
【図2】前記燃料電池の、図1中、II−II線断面説明図である。
【図3】前記燃料電池の、図1中、III−III線断面説明図である。
【図4】前記燃料電池の、図1中、IV−IV線断面説明図である。
【図5】前記発電セルを構成する第1セパレータの正面説明図である。
【図6】前記発電セルを構成する第2セパレータの正面説明図である。
【図7】本発明の第2の実施形態に係る燃料電池の分解斜視説明図である。
【図8】前記燃料電池の、図7中、VIII−VIII線断面説明図である。
【図9】前記燃料電池の、図7中、IX−IX線断面説明図である。
【図10】前記燃料電池の、図7中、X−X線断面説明図である。
【図11】前記燃料電池の、図7中、XI−XI線断面説明図である。
【図12】前記燃料電池を構成する第1セパレータの一方の面の説明図である。
【図13】前記第1セパレータの他方の面の説明図である。
【図14】前記燃料電池を構成する第2セパレータの正面説明図である。
【図15】前記燃料電池を構成する第3セパレータの一方の面の説明図である。
【図16】前記第3セパレータの他方の面の説明図である。
【図17】前記燃料電池を構成する第4セパレータの正面説明図である。
【図18】特許文献1のプロセス制御装置の説明図である。
【符号の説明】
【0080】
10、60…燃料電池 12、62a、62b…発電セル
14、64a、64b…電解質膜・電極構造体
16、18、66、68、70、72…セパレータ
20、20a、20b…固体高分子電解質膜
22…カソード側電極 24…アノード側電極
26a…酸化剤ガス入口連通孔 26b…酸化剤ガス出口連通孔
28a…冷却媒体入口連通孔 28b…冷却媒体出口連通孔
30a…燃料ガス入口連通孔 30b…燃料ガス出口連通孔
32、32a、32b…燃料ガス流路
34a、42a、78a、86a、90a、98a…供給孔部
34b、42b、78b、86b、90b、98b…排出孔部
36a、44a、80a、88a、92a、100a…入口切り欠き部
36b、44b、80b、88b、92b、100b…出口切り欠き部
40…酸化剤ガス流路
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質の両側に電極を配設した電解質・電極構造体を第1セパレータと第2セパレータとで挟持する発電セルを備え、前記発電セルが複数積層されるとともに、前記電解質・電極構造体と前記セパレータとの間に設けられ、電極面方向に沿って延在する反応ガス流路と、該セパレータの積層方向に貫通して反応ガスを流す反応ガス連通孔とを設ける燃料電池であって、
一方の発電セルを構成する前記第1セパレータは、前記反応ガス連通孔のいずれかに連通する切り欠き部を設けるとともに、
他方の発電セルを構成し、前記一方の発電セルの前記第1セパレータに隣接する前記第2セパレータは、前記積層方向に沿って前記切り欠き部に連通し前記反応ガス連通孔を前記反応ガス流路に連通させるための孔部を設けることを特徴とする燃料電池。
【請求項2】
電解質の両側に電極を配設した第1電解質・電極構造体及び第2電解質・電極接合体を備え、前記第1電解質・電極接合体を第1セパレータと第2セパレータとで挟持する第1発電セルと、前記第2電解質・電極接合体を第3セパレータと第4セパレータとで挟持し前記第1発電セルと交互に積層される第2発電セルとを有し、電極面方向に沿って延在する反応ガス流路と、積層方向に貫通して反応ガスを流す反応ガス連通孔とを設ける燃料電池であって、
前記第1セパレータは、前記反応ガス連通孔のいずれかに連通する第1切り欠き部を設けるとともに、
前記第1セパレータに隣接する前記第4セパレータは、前記積層方向に沿って前記第1切り欠き部に連通し前記反応ガス連通孔を前記反応ガス流路に連通させるための第1孔部を設け、
前記第3セパレータは、前記第1切り欠き部に連通する前記反応ガス連通孔に連通する第2切り欠き部を設けるとともに、
前記第3セパレータに隣接する前記第2セパレータは、前記積層方向に沿って前記第2切り欠き部に連通し前記反応ガス連通孔を前記反応ガス流路に連通させるための第2孔部を設け、
前記第1切り欠き部と前記第2切り欠き部とは、前記積層方向に互いにオフセットし、且つ前記第1孔部と前記第2孔部とは、前記積層方向に互いにオフセットすることを特徴とする燃料電池。
【請求項1】
電解質の両側に電極を配設した電解質・電極構造体を第1セパレータと第2セパレータとで挟持する発電セルを備え、前記発電セルが複数積層されるとともに、前記電解質・電極構造体と前記セパレータとの間に設けられ、電極面方向に沿って延在する反応ガス流路と、該セパレータの積層方向に貫通して反応ガスを流す反応ガス連通孔とを設ける燃料電池であって、
一方の発電セルを構成する前記第1セパレータは、前記反応ガス連通孔のいずれかに連通する切り欠き部を設けるとともに、
他方の発電セルを構成し、前記一方の発電セルの前記第1セパレータに隣接する前記第2セパレータは、前記積層方向に沿って前記切り欠き部に連通し前記反応ガス連通孔を前記反応ガス流路に連通させるための孔部を設けることを特徴とする燃料電池。
【請求項2】
電解質の両側に電極を配設した第1電解質・電極構造体及び第2電解質・電極接合体を備え、前記第1電解質・電極接合体を第1セパレータと第2セパレータとで挟持する第1発電セルと、前記第2電解質・電極接合体を第3セパレータと第4セパレータとで挟持し前記第1発電セルと交互に積層される第2発電セルとを有し、電極面方向に沿って延在する反応ガス流路と、積層方向に貫通して反応ガスを流す反応ガス連通孔とを設ける燃料電池であって、
前記第1セパレータは、前記反応ガス連通孔のいずれかに連通する第1切り欠き部を設けるとともに、
前記第1セパレータに隣接する前記第4セパレータは、前記積層方向に沿って前記第1切り欠き部に連通し前記反応ガス連通孔を前記反応ガス流路に連通させるための第1孔部を設け、
前記第3セパレータは、前記第1切り欠き部に連通する前記反応ガス連通孔に連通する第2切り欠き部を設けるとともに、
前記第3セパレータに隣接する前記第2セパレータは、前記積層方向に沿って前記第2切り欠き部に連通し前記反応ガス連通孔を前記反応ガス流路に連通させるための第2孔部を設け、
前記第1切り欠き部と前記第2切り欠き部とは、前記積層方向に互いにオフセットし、且つ前記第1孔部と前記第2孔部とは、前記積層方向に互いにオフセットすることを特徴とする燃料電池。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
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【図9】
【図10】
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【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2008−123750(P2008−123750A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−304164(P2006−304164)
【出願日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
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