燃料電池
【課題】燃料極で生じた副生ガスが燃料供給室内に浸入することを防止することによって、出力安定性が良好な燃料電池を提供する。
【解決手段】燃料極11、電解質膜10および空気極12をこの順で有する単位電池30と、単位電池30の燃料極11側に配置され、燃料極11に燃料を供給するための燃料供給部とを備える燃料電池であって、燃料供給部は、燃料極11側が開放された空間からなり、液体燃料を流通させるかまたは収容するための燃料供給室60と、燃料供給室60の開口を覆うように燃料供給室60と単位電池30との間に配置される介在層とを含み、介在層は、その厚み方向における燃料供給室60側に設けられ、測定媒体をメタノールとしたときのバブルポイントが30kPa以上である第1領域と、その厚み方向における単位電池30側に設けられ、気化燃料を透過可能な第2領域とを有する燃料電池である。
【解決手段】燃料極11、電解質膜10および空気極12をこの順で有する単位電池30と、単位電池30の燃料極11側に配置され、燃料極11に燃料を供給するための燃料供給部とを備える燃料電池であって、燃料供給部は、燃料極11側が開放された空間からなり、液体燃料を流通させるかまたは収容するための燃料供給室60と、燃料供給室60の開口を覆うように燃料供給室60と単位電池30との間に配置される介在層とを含み、介在層は、その厚み方向における燃料供給室60側に設けられ、測定媒体をメタノールとしたときのバブルポイントが30kPa以上である第1領域と、その厚み方向における単位電池30側に設けられ、気化燃料を透過可能な第2領域とを有する燃料電池である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、情報化社会を支える携帯用電子機器の新規電源として実用化の期待が高まっている。燃料電池は、使用する電解質材料や燃料の分類から、リン酸型、溶融炭酸塩型、固体電解質型、固体高分子型、ダイレクトアルコール型等に分類される。特に、電解質材料に固体高分子であるイオン交換膜を用いる固体高分子型燃料電池およびダイレクトアルコール型燃料電池は、常温で高い発電効率が得られることから、携帯用電子機器への応用を目的とした小型燃料電池としての実用化が検討されている。
【0003】
燃料としてアルコールまたはアルコール水溶液を使用するダイレクトアルコール型燃料電池は、燃料がガスである場合と比較して、燃料貯蔵室を比較的簡易に設計できるなどの理由から、燃料電池の構造の簡略化、省スペース化が可能であり、携帯用電子機器への応用を目的とした小型燃料電池としての期待が特に高い。
【0004】
電解質膜としてカチオン交換膜を使用するダイレクトアルコール型燃料電池においては、燃料極に燃料(アルコールまたはアルコール水溶液)を供給すると、燃料が酸化されて、二酸化炭素等のガス(以下、副生ガスと称する。)およびプロトンが生じる。たとえば、アルコールとしてメタノールを用いた場合では、
CH3OH+H2O → CO2↑+6H++6e-
の酸化反応により、副生ガスとして二酸化炭素が燃料極側で発生する。
【0005】
燃料極側で発生したプロトンは、電解質膜を介して空気極側に伝達される。そして、当該プロトンと、空気極に供給される空気中の酸素とが、
3/2O2+6H++6e- → 3H2O
の還元反応を起こし、水が生成する。このときに電子が外部の電子機器(負荷)を通過して燃料極から空気極に移動し、電力が取り出される。
【0006】
ダイレクトアルコール型燃料電池のような、液状の燃料(以下、液体燃料と称する。)を使用する燃料電池には、液体燃料をそのまま燃料極に供給する液体供給方式と、液体燃料の気化成分を燃料極に供給する気化供給方式とがある。たとえば特許文献1には、液体燃料収容室と燃料極との間に、気化した燃料(以下、気化燃料と称する。)を透過させる気液分離膜を配した気化供給方式の燃料電池が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2008/023633号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献1に記載されるような、気化供給方式とするために液体燃料収容室と燃料極との間に、気体が透過可能な気液分離膜を配した燃料電池においては、燃料極で生じた副生ガスが気液分離膜を通って液体燃料収容室内に浸入する。副生ガスの液体燃料収容室内への侵入は、気液分離膜に接触する液体燃料量を低減させ、結果、燃料極への気化燃料の供給量を低下させるとともに、気化燃料の安定的な供給を阻害し、燃料電池の出力安定性を低下させる。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、出力安定性が良好な燃料電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、燃料極、電解質膜および空気極をこの順で有する単位電池と、単位電池の燃料極側に配置され、燃料極に燃料を供給するための燃料供給部とを備える燃料電池であって、燃料供給部は、燃料極側が開放された空間からなり、液状の燃料(液体燃料)を流通させるかまたは収容するための燃料供給室と、燃料供給室の開口を覆うように燃料供給室と単位電池との間に配置される介在層とを含み、介在層は、その厚み方向における燃料供給室側に設けられ、測定媒体をメタノールとしたときのバブルポイントが30kPa以上である第1領域と、その厚み方向における単位電池側に設けられ、気化した燃料(気化燃料)を透過可能な第2領域とを有する燃料電池を提供する。
【0011】
介在層は、好ましくは、燃料供給室の開口を覆うように燃料供給室上に配置され、測定媒体をメタノールとしたときのバブルポイントが30kPa以上である第1層と、第1層における単位電池側表面に積層され、気化した燃料を透過可能な第2層とから構成される2層構造を有するものである。
【0012】
本発明の燃料電池は、第1層と第2層との間に、厚み方向に貫通する貫通孔を有する第3層をさらに備えることができる。第3層の好ましい一例は、厚み方向に貫通する複数の貫通孔を有する熱可塑性樹脂シートである。また、第3層の他の好ましい例として、接着性を有する樹脂または樹脂組成物から形成される多孔質層や、厚み方向に貫通する複数の貫通孔を有する金属板を含むものを挙げることができる。
【0013】
単位電池は、燃料極上に積層されるアノード集電層と、空気極上に積層されるカソード集電層とをさらに含むことが好ましい。燃料としては、純メタノールまたはメタノール水溶液を好ましく用いることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、燃料極で生じた副生ガスの燃料供給室への侵入を防止することができる。これにより、燃料極に対して、十分な量の気化燃料を安定して供給することができるようになるため、良好な出力安定性を維持することができる。本発明の燃料電池は、携帯電子機器への応用を目的とした小型燃料電池、とりわけ携帯電子機器搭載型の小型燃料電池として好適である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の燃料電池の一例を示す概略断面図である。
【図2】図1に示される燃料電池の概略上面図である。
【図3】図1に示されるIII−III線における概略断面図である。
【図4】図1に示されるIV−IV線における概略断面図である。
【図5】図1に示されるV−V線における概略断面図である。
【図6】燃料供給部の他の一例を示す概略断面図である。
【図7】燃料供給部の他の一例を示す概略断面図である。
【図8】本発明の燃料電池の他の一例を示す概略断面図である。
【図9】本発明の燃料電池の他の一例を示す概略断面図である。
【図10】図9に示される燃料電池が備える第3層を示す概略上面図である。
【図11】実施例1で用いた介在層の第1層を示す概略上面図である。
【図12】実施例1で用いた介在層の第2層を示す概略上面図である。
【図13】実施例1で用いた箱筐体を示す概略上面図である。
【図14】実施例3で用いた介在層の第3層を示す概略上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の燃料電池を実施の形態を示して詳細に説明する。
<第1の実施形態>
図1は本実施形態の燃料電池を示す概略断面図であり、図2は当該燃料電池の概略上面図である。また、図1に示されるIII−III線、IV−IV線およびV−V線における断面図をそれぞれ図3〜図5に示している。これらの図面に示される本実施形態の燃料電池100は、燃料極11、電解質膜10および空気極12をこの順で含む膜電極複合体20と、燃料極11上に積層され、これに電気的に接続されたアノード集電層21と、空気極12上に積層され、これに電気的に接続されたカソード集電層22とを備える単位電池30;燃料極11の下方に配置され、燃料極11側が開放された空間からなる燃料供給室60;燃料供給室60の開口(燃料極側への開放面)を覆うように燃料供給室60上に配置される第1層1と、第1層1の単位電池30側表面に積層される第2層2とからなる介在層;および、燃料(図示せず)を収容するための燃料貯蔵室70から基本的に構成されている。
【0017】
液体燃料を貯蔵する燃料貯蔵室70と、該燃料を流通させる燃料供給室60と、燃料供給室60の開口を覆うように配置される介在層とによって燃料電池100の燃料供給部が形成されている。燃料貯蔵室70と燃料供給室60とは流路により接続されている。
【0018】
箱筺体40は、燃料供給室60を形成する凹部(溝)を有しており、該凹部を覆うように第1層1を積層することにより燃料供給室60(内部空間)が形成されている。また、箱筺体40は、燃料電池100の燃料供給室60を構成する部位とともに、燃料貯蔵室70の底壁および側壁を構成する部位を一体として有している。
【0019】
本実施形態の燃料電池100は、燃料極11で生じた副生ガスを燃料電池外部に排出するための副生ガス排出部90を有している。本実施形態において副生ガス排出部90は、箱筺体40の側壁を厚み方向に貫通する第1貫通穴91と、第1層1を厚み方向に貫通する第2貫通穴92とからなる(図4および図5参照)。第2貫通穴92は第1貫通穴91の直上に配置され、これらの貫通穴は連通している。
【0020】
本実施形態の燃料電池100は、箱筺体40とともに、カソード集電層22上に積層され、複数の開口51を有する蓋筺体50を備えており、単位電池30は、箱筺体40と蓋筺体50とによって挟持されている。蓋筺体50は、カソード集電層22上に積層される部位とともに、燃料貯蔵室70の上壁(天井壁)を構成する部位を一体として有しており、箱筺体40、蓋筺体50および、単位電池30などの側面によって燃料貯蔵室70が形成されている。単位電池30および介在層の燃料貯蔵室側端面には、燃料貯蔵室70内に収容された燃料が侵入しないよう、エポキシ系硬化性樹脂組成物の硬化物層などからなる封止層80が形成されている。本実施形態の燃料電池100において、燃料貯蔵室70は、単位電池30およびその下方に配置された燃料供給室60の側方に配置されている。
【0021】
燃料貯蔵室70は、その内部空間と燃料電池100外部とを連通する開孔71を備えている。この開孔71は、蓋筺体50に設けられた貫通孔である。
【0022】
本実施形態の燃料電池100は、次のような動作により発電を行なう。流路を通って燃料貯蔵室70から燃料供給室60内に流通してきた液体燃料は、燃料供給室60内全体に行き渡り、介在層の第1層1を濡らす。第1層1から染み出した液体燃料は、第2層2により気液分離され、気化燃料のみが単位電池30側へ透過する。第2層2を透過した気化燃料は、アノード集電層21の開口を通って燃料極11に供給される。そして、液体燃料としてメタノール水溶液を例に挙げると、燃料極11に供給されたガス状態のメタノール水溶液は、
CH3OH+H2O → CO2↑+6H++6e-
の式で表される酸化反応を起こし消費される。気化燃料は、燃料電池100の発電電流量に応じて消費されていくこととなるが、これを補うように、第2層2から液体燃料が随時蒸発を続けるため、燃料極11近傍における気化燃料の蒸気圧は略一定に保たれる。
【0023】
一方、空気極12においては、蓋筺体50の開口51およびカソード集電層22の開口を通って到達した空気中の酸素と、電解質膜10を介して燃料極11から空気極12に伝達されたプロトンとが、
3/2O2+6H++6e- → 3H2O
の式で表される還元反応を起こす。以上の酸化還元反応により、電子が、燃料極11→アノード集電層21→外部の電子機器(負荷)→カソード集電層22→空気極12のルートで移動し、外部の電子機器に対して電力が供給される。
【0024】
発電により燃料極11で生じた副生ガス(上記式におけるCO2)は、介在層の存在により燃料供給室60内に浸入することはなく、アノード集電層21の開口、第2層2および副生ガス排出部90を通って燃料電池外部に排出される。
【0025】
燃料供給室60と単位電池30との間に配置される、第1層1および第2層2からなる介在層は、燃料極11への燃料供給を均一に、かつ適切量に制御された状態で行なうことを可能にする。これにより、燃料のクロスオーバーを効果的に抑制でき、発電部に温度ムラが生じにくく、安定した発電状態を維持することができる。
【0026】
次に、燃料電池100を構成する各部材等について詳細に説明する。
〔介在層〕
(1)第1層
燃料供給室60の開口(燃料極側への開放面)を覆うように(すなわち、燃料供給室60を形成する凹部を覆うように)燃料供給室60と単位電池30との間に配置される介在層は、図1に示される例のように、燃料供給室60の開口を覆うように燃料供給室60上に積層される第1層1と、第1層1の単位電池30側表面に積層される第2層2の2層構造であることができる。第1層1は、測定媒体をメタノールとしたときのバブルポイントが30kPa以上の層であり、このような第1層1を燃料供給室60の開口を覆うように配置することにより、第1層1の細孔内に液体燃料が毛細管力により保持されるため、燃料極11で発生した副生ガス(CO2ガスなど)の燃料供給室60内への侵入を効果的に防止することができる。これにより、燃料極11への気化燃料の供給量が低下したり、気化燃料の安定的供給が阻害されたりすることを防止できるため、燃料電池の出力安定性を良好に維持することができる。また、副生ガスが浸入し燃料供給室60の内圧が上昇することによる構成部材間の界面での剥離や、構成部材の破壊を抑制できることから、燃料電池の信頼性を向上させることができる。
【0027】
また、第1層1の設置は次の点でも有利である。
(a)燃料貯蔵室70から燃料供給室60内への液体燃料の輸送を、第1層1の毛細管力を利用して行なうことができるため、液体燃料のパッシブ供給が可能となる。これにより、液体燃料を送液するためのポンプ等の補機を省略することができる。また、毛細管力による燃料供給が可能になることにより、燃料供給の方向依存性をなくすことができる(すなわち、燃料電池の使用時における向きに関係なく、発電を行なうことができる。)。
【0028】
(b)高分子材料などの熱伝導性の低い材料を第1層に用いる場合には、第1層内に保持された液体燃料は、発電部の急激な温度上昇に対する影響を受けにくくなり、その温度上昇が緩慢となる。その結果、第1層内に保持された液体燃料を比較的低い温度に安定的に維持できるようになるため、燃料極に供給される気化燃料の供給量を安定させることができる。このことは、燃料電池の信頼性向上に寄与する。
【0029】
(c)第1層面内に均一に液体燃料が広がり保持されるため、燃料極面に対して、均一に気化燃料を供給することができ、発電部に対し燃料の局所的な過剰供給や、燃料不足となることがないため、触媒等の材料劣化が抑えられる。このことは、出力向上および燃料電池の信頼性向上に寄与する。
【0030】
(d)ポンプ等の圧送手段を用いて燃料貯蔵室70に収容された液体燃料を燃料供給室60に圧送するなどの方法によって燃料供給室60内の圧力を高めることにより、燃料極11で発生した副生ガスが燃料供給室60内へ浸入することをある程度防止することが可能であるが、第1層1による浸入防止の効果がこれを凌駕するため、燃料供給室60内の内圧を高める必要がない。これにより、内圧上昇による液漏れの危険性を回避することができ、燃料電池の信頼性を向上させることができる。
【0031】
(e)燃料極11内の内圧が上がっても副生ガスの侵入のおそれがないことから、副生ガス排出部90を構成する貫通穴の径をより小さくすることができる。これにより未使用の気化燃料の排出を低減できることから、燃料の利用効率を向上させることができる(この効果については後で詳述する)。
【0032】
ここで、バブルポイントとは、液媒体で濡らした層(膜)の裏側から空気圧をかけたときに、層(膜)の表面に気泡の発生が認められる最小圧力である。バブルポイントが高いほど気体の透過性は低い。バブルポイントΔPは、下記式(1):
ΔP[Pa]=4γcosθ/d (1)
(γは測定媒体の表面張力[N/m]、θは層(膜)の素材と測定媒体との接触角、dは層(膜)が有する最大細孔径である。)
によって定義される。本発明においてバブルポイントは、測定媒体をメタノールとし、JIS K 3832に準拠して測定される。
【0033】
副生ガスの燃料供給室60内への侵入を効果的に防止する観点から、第1層1のバブルポイントは、好ましくは50kPa以上であり、より好ましくは100kPa以上である。第1層1のバブルポイントは、上記(1)から理解されるように、第1層1として用いる材料の細孔径や接触角の調整により制御可能である。
【0034】
30kPa以上のバブルポイントを達成するために、第1層1が有する細孔の最大細孔径は、1μm以下であることが好ましく、0.7μm以下であることがより好ましい。最大細孔径は、上記バブルポイントを測定することで得られるが、それ以外の手法としては水銀圧入法によって測定することができる。ただし、水銀圧入法では0.005μm〜500μmの細孔分布しか測定できないため、この範囲外の細孔は存在しない、もしくは無視できる場合に有効な測定手段である。
【0035】
第1層1としては、たとえば、高分子材料、金属材料または無機材料などからなる多孔質層や、高分子膜を挙げることができ、具体例を示せば以下のとおりである。
【0036】
1)次の材料からなる多孔質層。ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素系樹脂;アクリル系樹脂;ABS樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂;ポリエチレンテレフタラート等のポリエステル系樹脂;セルロースアセテート、ニトロセルロース、イオン交換セルロース等のセルロース系樹脂;ナイロン;ポリカーボネート系樹脂;ポリ塩化ビニル等の塩素系樹脂;ポリエーテルエーテルケトン;ポリエーテルスルホン;ガラス;セラミックス;ステンレス、チタン、タングステン、ニッケル、アルミニウム、スチール等の金属材料。多孔質層は、これらの材料からなる発泡体、焼結体、不織布または繊維(ガラス繊維等)などであることができる。
【0037】
2)次の材料からなる高分子膜。パーフルオロスルホン酸系重合体;スチレン系グラフト重合体、トリフルオロスチレン誘導体共重合体、スルホン化ポリアリーレンエーテル、スルホン化ポリエーテルエーテルケトン、スルホン化ポリイミド、スルホン化ポリベンゾイミダゾール、ホスホン化ポリベンゾイミダゾール、スルホン化ポリフォスファゼンなどの炭化水素系重合体などの電解質膜材料として用いることができるもの。これらの高分子膜は、3次元的に絡み合う高分子間の隙間として、ナノオーダーの細孔を有している。
【0038】
第1層1を構成する材料として高分子材料を用いる場合には、親水性官能基を導入するなどの方法により親水化処理を施し、細孔表面の水(したがってメタノールもしくはメタノール水溶液等の燃料)に対する濡れ性を高めることにより、第1層1のバブルポイントを高めることもできる。また、第1層1に親水化処理を施すことにより、より低い圧損で液体燃料を燃料供給室60内において流通させることができる。
【0039】
第1層1の厚みは特に制限されないが、燃料電池の薄型化の観点から、好ましくは20〜500μmであり、より好ましくは50〜200μmである。
【0040】
第1層1には、副生ガス排出部90の一部を形成する第2貫通穴92が設けられる。第2貫通穴92は、第1層1を箱筐体40上に積層したときに、第1貫通穴91と連通するような位置(すなわち、第1貫通穴91の直上)に形成される。
【0041】
(2)第2層
第1層1の単位電池30側表面に積層される第2層2は、気化燃料透過性かつ液体燃料不透過性の疎水性を有する多孔質層であり、燃料極11への燃料の気化供給を可能とする層(気液分離層)である。第2層2は、燃料極11へ供給される気化燃料の量または濃度を適切量に制御(制限)するとともに、均一化する機能を有する。第2層2を設けることにより、燃料のクロスオーバーを効果的に抑制でき、発電部に温度ムラが生じにくく、安定した発電状態を維持することができる。
【0042】
第2層2としては、使用する燃料に関して気液分離能を有するものであれば特に制限されないが、たとえば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン等のフッ素系樹脂、撥水化処理されたシリコーン樹脂などからなる多孔質膜または多孔質シートを挙げることができ、具体的には、ポリテトラフルオロエチレンからなる多孔質フィルムである日東電工(株)製テミッシュ〔TEMISH(登録商標)〕の「NTF2026A−N06」や「NTF2122A−S06」が例示できる。
【0043】
第2層2は、気化燃料透過性を有するものであることから、第1層1よりも小さいバブルポイントを有している。第2層2の上記測定方法に従うバブルポイントは好ましくは10kPa以下であり、第2層2に対するメタノールの接触角は大きいほど良く、好ましくは45度以上であり、より好ましくは90度程度以上である。また、気化燃料透過性および液体燃料不透過性を付与する観点から、第2層2が有する細孔の最大細孔径は、0.1〜10μmであることが好ましく、0.5〜5μmであることがより好ましい。第2層2が有する細孔の最大細孔径は、第1層1と同様、メタノール等を用いてバブルポイントを測定することにより求めることができる。
【0044】
第2層2の厚みは特に制限されないが、上記機能を十分に発現させるために、20μm以上であることが好ましく、50μm以上であることがより好ましい。また、燃料電池の薄型化の観点からは、第2層2の厚みは、500μm以下であることが好ましく、300μm以下であることがより好ましい。
【0045】
〔電解質膜〕
膜電極複合体20を構成する電解質膜10は、燃料極11から空気極12へプロトンを伝達する機能と、燃料極11と空気極12との電気的絶縁性を保ち、短絡を防止する機能を有する。電解質膜の材質は、プロトン伝導性を有し、かつ電気的絶縁性を有する材質であれば特に限定されず、高分子膜、無機膜またはコンポジット膜を用いることができる。高分子膜としては、たとえば、パーフルオロスルホン酸系電解質膜である、ナフィオン(登録商標、デュポン社製)、アシプレックス(登録商標、旭化成社製)、フレミオン(登録商標、旭硝子社製)などが挙げられる。また、スチレン系グラフト重合体、トリフルオロスチレン誘導体共重合体、スルホン化ポリアリーレンエーテル、スルホン化ポリエーテルエーテルケトン、スルホン化ポリイミド、スルホン化ポリベンゾイミダゾール、ホスホン化ポリベンゾイミダゾール、スルホン化ポリフォスファゼンなどの炭化水素系電解質膜などを用いることもできる。
【0046】
無機膜としては、たとえばリン酸ガラス、硫酸水素セシウム、ポリタングストリン酸、ポリリン酸アンモニウムなどからなる膜が挙げられる。コンポジット膜としては、タングステン酸、硫酸水素セシウム、ポリタングストリン酸等の無機物とポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、パーフルオロスルホン酸等の有機物とのコンポジット膜などが挙げられる。
【0047】
電解質膜10の厚みはたとえば1〜200μmである。また、電解質膜10のEW値(プロトン官能基1モルあたりの乾燥重量)は、800〜1100程度であることが好ましい。EW値が小さいほど、プロトン移動に伴う電解質膜の抵抗が小さくなり高い出力を得ることができる。
【0048】
〔燃料極および空気極〕
電解質膜10の一方の表面に積層される燃料極11および他方の表面に積層される空気極12には、少なくとも触媒と電解質とを有する多孔質層からなる触媒層が設けられる。燃料極11用の触媒は、メタノール水溶液等の液体燃料からプロトンと電子とを生成する反応を触媒し、電解質は、生成したプロトンを電解質膜10へ伝導する機能を有する。空気極12用の触媒は、電解質を伝導してきたプロトンと空気中の酸素から水を生成する反応を触媒する。
【0049】
燃料極11および空気極12用の触媒は、カーボンやチタン等の導電体の表面に担持されたものでもよく、なかでも、水酸基やカルボキシル基等の親水性の官能基を有するカーボンやチタン等の導電体の表面に担持されていることが好ましい。これにより、燃料極11および空気極12の保水性を向上させることができる。また、燃料極11および空気極12の電解質は、電解質膜10のEW値よりも小さなEW値を有する材料からなることが好ましく、具体的には、電解質膜10と同質材料であるが、EW値が400〜800である電解質材料が好ましい。このような電解質材料を用いることによっても、燃料極11および空気極12の保水性を向上させることができる。燃料極11および空気極12の保水性の向上により、プロトン移動に伴う電解質膜10の抵抗や燃料極11および空気極12における電位分布を改善することができる。また、EW値の低い電解質は同時に液体燃料の透過性も高いことから、EW値の低い電解質を用いることにより、燃料極11の触媒層に均一に気化燃料を供給することができる。
【0050】
燃料極11および空気極12はそれぞれ、触媒層上に積層されるアノード導電性多孔質層、カソード導電性多孔質層を備えていてもよい。これらの導電性多孔質層は、燃料極11、空気極12に供給されるガス(気化燃料または空気)を面内において拡散させる機能を有するとともに、触媒層と電子の授受を行なう機能を有する。アノード導電性多孔質層およびカソード導電性多孔質層としては、比抵抗が小さく、電圧の低下が抑制されることから、カーボン材料;導電性高分子;Au、Pt、Pd等の貴金属;Ti、Ta、W、Nb、Ni、Al、Cu、Ag、Zn等の遷移金属;これらの金属の窒化物または炭化物等;ならびに、ステンレスに代表されるこれらの金属を含有する合金などからなる多孔質材料を用いることが好ましい。Cu、Ag、Zn等の、酸性雰囲気下で耐腐食性に乏しい金属を用いる場合には、Au、Pt、Pdなどの耐腐食性を有する貴金属、導電性高分子、導電性窒化物、導電性炭化物、導電性酸化物等により表面処理(皮膜形成)を行なってもよい。より具体的には、アノード導電性多孔質層およびカソード導電性多孔質層として、たとえば、上記貴金属、遷移金属または合金からなる発泡金属、金属織物および金属焼結体;ならびにカーボンペーパー、カーボンクロス、カーボン粒子を含有するエポキシ樹脂膜などを好適に用いることができる。
【0051】
〔アノード集電層およびカソード集電層〕
アノード集電層21、カソード集電層22はそれぞれ、燃料極11上、空気極12上に積層され、膜電極複合体20とともに単位電池30を構成する。アノード集電層21およびカソード集電層22はそれぞれ、燃料極11、空気極12における電子を集電する機能と、電気的配線を行なう機能とを有する。集電層の材質は、比抵抗が小さく、面方向に電流を取り出しても電圧の低下が抑制されることから、金属であることが好ましく、なかでも、電子伝導性を有し、酸性雰囲気下で耐腐食性を有する金属であることがより好ましい。このような金属としては、Au、Pt、Pd等の貴金属;Ti、Ta、W、Nb、Ni、Al、Cu、Ag、Zn等の遷移金属;およびこれらの金属の窒化物または炭化物等;ならびに、ステンレスに代表されるこれらの金属を含有する合金などが挙げられる。Cu、Ag、Zn等の、酸性雰囲気下で耐腐食性に乏しい金属を用いる場合には、Au、Pt、Pdなどの耐腐食性を有する貴金属、導電性高分子、導電性窒化物、導電性炭化物、導電性酸化物等により表面処理(皮膜形成)を行なってもよい。なお、アノード導電性多孔質層およびカソード導電性多孔質層が、たとえば金属等からなり、導電性が比較的高い場合には、アノード集電層およびカソード集電層は省略されてもよい。
【0052】
より具体的には、アノード集電層21は、気化燃料を燃料極11へ誘導するための厚み方向に貫通する貫通孔(開口)を複数備える、上記金属材料などからなるメッシュ形状またはパンチングメタル形状を有する平板であることができる。この貫通孔は、燃料極11の触媒層で生成する副生ガス(CO2ガス等)を副生ガス排出部90へ誘導するための経路としても機能する。同様に、カソード集電層22は、燃料電池外部の空気を空気極12の触媒層に供給するための厚み方向に貫通する貫通孔(開口)を複数備える、上記金属材料などからなるメッシュ形状またはパンチングメタル形状を有する平板であることができる。
【0053】
〔燃料供給室〕
燃料供給室60は、後述する燃料貯蔵室70とともに、燃料収容および燃料供給の役割を果たす燃料供給部を構成する部位であり、好ましくは燃料極11の直下に配置される。図1に示される本実施形態の燃料電池100において、燃料供給室60は、燃料極11の燃料貯蔵室70側端部からこれと反対側の端部までの長さと同じかまたはそれ以上の長さを有しており、燃料極11の幅と同じかまたはそれ以上の幅を有する空間からなる。燃料供給室60の高さ(深さ)は特に制限されない。
【0054】
本実施形態の燃料電池100において燃料供給室60は、単位電池30の下部に介在層に接するように配置された、燃料供給室60の内部空間を構成する凹部を有する箱筺体40と、介在層とによって形成されている。なお、図1に示される箱筺体40は、燃料供給室60を構成する部位とともに、燃料貯蔵室70の底壁および側壁を構成する部位を一体として有しているが、これに限定されるものではなく、燃料供給室60を構成する部材と燃料貯蔵室70を構成する部材とは異なる部材であってもよい。
【0055】
箱筺体40は、プラスチック材料または金属材料を用いて、少なくとも燃料供給室60の内部空間を構成する凹部を有するように適宜の形状に成形することによって作製することができる。プラスチック材料としては、たとえば、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)などを挙げることができる。金属材料としては、たとえば、チタン、アルミニウム等のほか、ステンレス、マグネシウム合金等の合金材料を用いることができる。これらのなかでも、ポリフェニレンサルファイド(PPS)やポリエチレン(PE)は、3次元架橋による分子量増加により強度が高く安価に加工ができ、また軽量であることから好ましく用いられる。
【0056】
〔副生ガス排出部〕
本実施形態の燃料電池100は、燃料極11で生じた副生ガスを燃料電池外部に排出するための副生ガス排出部90を有している。本実施形態において副生ガス排出部90は、箱筺体40の側壁を厚み方向に貫通する第1貫通穴91と、第1層1を厚み方向に貫通する第2貫通穴92とからなる(図4および図5参照)。第2貫通穴92は第1貫通穴91の直上に配置され、これらの貫通穴は連通している。副生ガス排出部90を設けることにより、燃料極11内の過度の内圧上昇を防止することができる。
【0057】
上述のように本発明の燃料電池では、介在層を備えることにより燃料供給室60内への副生ガスの侵入が効果的に防止されているため、仮に燃料極11内の内圧が上昇した場合でも副生ガスが燃料供給室60内へ侵入するおそれがない。したがって、副生ガス排出部90を構成する貫通穴の径をより小さくして、燃料極11内の内圧がある程度上昇することを許容できるという利点がある。副生ガス排出部90は、未使用の気化燃料(燃料極11に到達する前の気化燃料)が燃料電池外部に排出されるルートを提供し得るが、副生ガス排出部90を構成する貫通穴の小径化は、未使用気化燃料の排出量低減に極めて有利であり、これにより燃料の利用効率を向上させることができる。従来の燃料電池では、副生ガスの燃料供給室内への侵入を防止する手段を持たなかったため、副生ガスを排出させるための経路を設ける場合、燃料極11内の内圧上昇を防止するために、その径を大きくせざるを得ず、燃料利用効率が低下していた。
【0058】
なお、副生ガスを燃料電池外に排出させるための手段は、本実施形態の燃料電池100が有する、図4および図5に示されるような第1貫通穴91および第2貫通穴92からなる副生ガス排出部90に限定されず、燃料極11の近傍から燃料電池外部へと延びる何らかの経路であればよい。たとえば、箱筐体40の第1貫通穴91上には介在層を配置せず(介在層のサイズを小さくする)、その分、第1貫通穴91をアノード集電層21まで延ばした構造であってもよい。この場合、副生ガス排出部は、第1貫通穴91のみからなり、第2貫通穴92を有しない。また、電解質膜に厚み方向に貫通する貫通穴を設け、副生ガスを空気極側へ排出してもよい。該貫通穴から排出された副生ガスが空気極で酸化され、燃料電池の出力特性を低下させたり、空気が過剰に消費されたりしないよう、該貫通穴の直上の位置に空気極が形成されない領域を設ける構造であってもよい。この場合、副生ガス排出部は、電解質膜の貫通穴および空気極が形成されない領域の連続した空間からなり、副生ガスは空気極側へ排出される。
【0059】
〔燃料貯蔵室〕
燃料貯蔵室70は、好ましくは単位電池30および燃料供給室60の側方に配置される、液体燃料を収容するための室である。本実施形態の燃料電池100において燃料貯蔵室70は、カソード集電層22上に積層され、複数の開口51を有する蓋筺体50、箱筺体40、単位電池30および介在層によって形成されている。単位電池30および介在層の燃料貯蔵室側端面は、燃料貯蔵室70内に収容された燃料が侵入しないよう、エポキシ系硬化性樹脂組成物の硬化物などからなる封止層80によって封止されている。
【0060】
なお、燃料貯蔵室70は、これら蓋筺体50および箱筺体40を用いて構成する必要性は必ずしもなく、たとえば、燃料貯蔵室70の上壁(天井壁)、側壁および底壁を形成する部位を一体として含む1つの部材から構成することもできる。
【0061】
本実施形態の燃料電池100において蓋筺体50は、燃料貯蔵室70の上壁(天井壁)を形成するとともに、単位電池30が直接露出することを防止する保護板として機能している。蓋筺体50の空気極12直上部分には、空気を流通させるための複数の開口51(ただし、開口の数は1以上あればよい)が形成されている。
【0062】
蓋筺体50は、プラスチック材料または金属材料を用い、適宜の形状に成形することによって作製することができる。プラスチック材料としては、たとえば、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)などを挙げることができる。金属材料としては、たとえば、チタン、アルミニウム等のほか、ステンレス、マグネシウム合金等の合金材料を用いることができる。これらのなかでも、ポリフェニレンサルファイド(PPS)やポリエチレン(PE)は、3次元架橋による分子量増加により強度が高く安価に加工ができ、また軽量であることから好ましく用いられる。
【0063】
燃料貯蔵室70は、その内部空間と燃料電池外部とを連通する開孔71を備えることが好ましい。これにより、液体燃料が燃料供給室60に輸送される場合においても、燃料貯蔵室70内が大気圧に維持されるため、液体燃料の輸送を円滑に行なうことができる。図1に示される燃料電池100において開孔71は、蓋筺体50を厚み方向に貫通する貫通孔であるが、これに限定されるものではない。
【0064】
開孔71からの液体燃料の漏洩を防止するために、開孔71の開孔径は十分に小さいことが好ましく(たとえば直径100〜500μm程度、好ましくは100〜300μm)、あるいは、燃料電池外部への液体燃料の漏出を防止するための気液分離膜(たとえば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデンまたはポリエチレン等からなる多孔質膜)を開孔71内に設けてもよい。
【0065】
(変形例)
本実施形態の燃料電池は、既述した変形例に限定されるものではなく、たとえば以下のような変形例をも含む。本実施形態で述べた変形例は、後述する他の実施形態にも適用できる。
【0066】
(1)上記実施形態では、介在層として、燃料供給室の開口を覆うように配置される第1層1と、第1層1上に積層される第2層2との2層構造のものを使用したが、第1層1と同様の機能特性を有する領域と第2層2と同様の機能特性を有する領域を備えた、1層構造のものを介在層として使用することができる。ここでいう「1層構造」とは、1つの部材から構成されており、2つの部材の組み合わせではないことを意味している。このような1層構造の介在層は、2層構造で生じ得る第1層と第2層との密着性不良(隙間の形成)が生じ得ない点で有利である。界面の一部に隙間が形成されると、隙間に副生ガスが滞留して第2層面内において燃料の過剰供給や、燃料不足といった気化燃料の透過量にバラツキが生じたり、副生ガスの圧力で上記隙間が広がり燃料供給室が閉塞し燃料供給を妨げたりするおそれがある。
【0067】
より具体的には、1層構造の介在層として、その厚み方向における燃料供給室60側の領域である、上記第1層1と同様の機能特性を有する(測定媒体をメタノールとしたときのバブルポイントが30kPa以上である)第1領域と、その厚み方向における単位電池30側の領域である、上記第2層2と同様の機能特性を有する(気化燃料を透過可能な)第2領域とを備えた層を用いることができる。1層構造の介在層が有する第1領域のバブルポイントは、1層構造の介在層のバブルポイントと同義である。第1層1と第2層2との関係と同様、第2領域のバブルポイントは第1領域のそれより小さく、介在層全体としてのバブルポイントは、バブルポイントがより大きい領域のそれと一致するからである。
【0068】
1層構造の介在層は、たとえば、第2層として使用可能な多孔質層の厚み方向における一方の領域のみを親水化処理して、当該領域のバブルポイントを上げるなどの方法により作製することができる。
【0069】
このような1層構造の介在層は、2層構造で生じ得る第1層と第2層との密着性不良(隙間の形成)が生じ得ない点で有利である。界面の一部に隙間が形成されていると、第2層面内において気化燃料の透過量にバラツキが生じ、燃料極に対して均一な燃料供給ができず、出力が低下する可能性があるが、1層の構造の介在層であれば、このような問題は生じ得ない。一方、2層構造の介在層を使用する場合には、上記問題に対処するために、ボルト・ナットまたはネジなどの締結部材などを用いて燃料電池を上下面から締め付けることにより、第1層と第2層との密着性を確保することが好ましい。
【0070】
(2)燃料供給室60の空間形状は図4に示されるものに限定されない。燃料供給室60は、たとえば図6に示されるような、枝分かれ状の複数の流路から形成されていてもよい。あるいは、複数のライン状の流路、サーペンタイン状の流路などから形成することもできる。図6は、燃料供給室の他の一例を示す図4と同様の概略断面図である。
【0071】
(3)図7は燃料供給部の他の一例を示す図4と同様の概略断面図である。図7に示されるように、燃料供給部は、介在層、燃料供給室60および燃料貯蔵室70のほか、さらに燃料輸送部材61を含むものであってもよい。燃料輸送部材61は、その少なくとも一部が燃料供給室60内に配置され、燃料貯蔵室70から燃料供給室60に毛細管現象を利用して液体燃料を輸送するための部材であり、第1層1の毛細管力を利用した液体燃料輸送を補助する役割を担う。
【0072】
燃料輸送部材61は、液体燃料に対して毛細管作用を示す材料からなる。このような毛細管作用を示す材料としては、アクリル系樹脂;ABS樹脂;ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂;ポリエチレンテレフタラート等のポリエステル系樹脂;ナイロン;ポリ塩化ビニル;ポリエーテルエーテルケトン;ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂;セルロースなどの高分子材料(プラスチック材料)からなる不規則な細孔を有する多孔質体;ステンレス、チタン、タングステン、ニッケル、アルミニウム、スチールなどの金属材料からなる不規則な細孔を有する多孔質体が挙げられる。多孔質体としては、上記金属材料からなる不織布、発泡体、焼結体や、上記高分子材料からなる不織布などを挙げることができる。また、上記高分子材料または金属材料からなり、毛細管として表面に規則的なまたは不規則なスリットパターン(溝パターン)を有する板状体を燃料輸送部材61として用いることもできる。
【0073】
燃料輸送部材61が有する細孔の細孔径は、重力に対して十分な毛細管現象が生じ、良好な吸い上げ高(燃料輸送部材の一端を液体燃料に浸漬したときの、毛細管現象による液体燃料の当該部材における到達可能位置を意味する)および吸い上げ速度(燃料輸送部材の一端を液体燃料に浸漬したときの、単位時間当たりに吸い上げられる液体燃料の体積を意味する)を得るために、0.1〜500μmとすることが好ましく、1〜300μmとすることがより好ましい。なお、燃料輸送部材61が有する細孔の細孔径は、水銀圧入法により測定される径である。
【0074】
燃料輸送部材61を構成する毛細管作用を示す材料としては、上記吸い上げ高および吸い上げ速度の観点から、30分後の揚水距離が10cm以上であるものを用いることが好ましく、15cm以上であるものを用いることがより好ましい。このようなものとしては、王子キノクロス(株)製の「ハトシート」、東レ(株)製の「導水シート」などがある。揚水距離とは、フェルト試験片の下端2cmを温度25℃の水中に浸し、一定時間(30分)放置後の水の到達高さを意味する。
【0075】
燃料輸送部材61の形状は、図7に示されるような短冊形状(より具体的には直方体形状)限定されず、燃料電池全体の形状、膜電極複合体の形状または燃料供給室の形状等に応じた適宜の形状とすることができる。直方体形状以外の他の例として、たとえば立方体形状、一端から他端に向かうに従い、幅が連続的または段階的に小さくまたは大きくなる形状(表面が台形や三角形である形状等)などの短冊形状が挙げられる。
【0076】
燃料輸送部材61の長さ(燃料貯蔵室70側の一端からこれに対向する他端までの距離)は特に制限されず、燃料電池全体の形状、膜電極複合体の形状または燃料供給室の形状等に応じた適宜の長さとすることができるが、燃料輸送部材61の一端を燃料貯蔵室70に保持された液体燃料に接触可能な位置に配置したときに、その他端が燃料極11(または第1層1)の端部(燃料貯蔵室70側とは反対側の端部)の略直下の位置に配置されるような長さまたはそれ以上の長さを有していることが好ましい。
【0077】
なお、「液体燃料に接触可能な位置」とは、図7に示されるように、燃料輸送部材61の一端が燃料貯蔵室70内部に位置する場合のほか、燃料輸送部材61の一端が燃料供給室60と燃料貯蔵室70とを仕切る壁(箱筺体40の一部分である)の内部に位置する場合などを含む。
【0078】
(4)燃料供給部は、燃料供給室と燃料貯蔵室とを含むものに限定されない。たとえば、燃料供給室60が液体燃料を収容する燃料貯蔵室70を兼ねた構成とし、燃料貯蔵室70(および燃料輸送部材61)を省略してもよい。
【0079】
(5)燃料電池の層構成は、図1〜5に示されるものに限定されるものではなく、たとえば図8に示されるような、燃料供給室60の両面に単位電池30が配置された構成であってもよい。図8は、燃料供給室60の両面に単位電池30が配置された燃料電池の一例を示す、図5と同様の概略断面図である。かかる構成においては、燃料供給室60は、上下2つの燃料極11に対して燃料を供給するために、上下面ともに開放されている必要があることから、箱筺体40として、上下面が開いた空間を有する部材が用いられる。このような燃料供給室60の両面に単位電池30が配置された燃料電池は、2つの単位電池に対して1つの燃料供給部で足りることから、燃料電池の薄型化を図ることができるとともに、燃料電池の単位体積当たりの出力を向上させることができる。なお、図8に示される実施形態においては、図示されるように、第1貫通穴91は、これに接続され、箱筐体40の側壁を横方向に延びる排出経路を有しており、副生ガスはこの排出経路を通って箱筐体40の側面から排出させることができる。
【0080】
(6)燃料電池は、同一平面上に配列された単位電池30を2以上含むものであってもよい。この場合において、燃料供給室60は、単位電池30ごとに設けられてもよいし、単位電池30より少ない数だけ設けられてもよい。
【0081】
(7)燃料電池の外形形状は、上記実施の形態の形状に限定されるものではない。たとえば、燃料電池の厚み方向からみたときの形状(平面形状)は、長方形のほか、正方形などであることができる。
【0082】
(8)燃料電池は、燃料貯蔵室に収容された液体燃料を燃料供給室に圧送するためのポンプなどの圧送手段を備えることができる。燃料供給室内を短時間で満たすことができるため、燃料電池の起動性を向上させることができる。
【0083】
<第2の実施形態>
図9は本実施形態の燃料電池を示す概略断面図である。本実施形態の燃料電池200は、燃料供給室60と単位電池30との間に配置される介在層が、第3層3をさらに含むこと以外は上記第1の実施形態と同様である。図10は、燃料電池200で使用されている第3層3を示す概略上面図である。以下、本実施形態の特徴である第3層について詳細に説明する。なお、上記第1の実施形態で述べた各種変形例は、本実施形態にも同様に適用することができる。
【0084】
第3層は、第1層と第2層との間に配置され、液体燃料が透過可能な厚み方向に貫通する貫通孔を有する層であり、少なくとも第1層と第2層とを密着性良く面接合する役割を担い、好ましくは第2層側への液体燃料透過量を調整(制限)する機能を有する。第3層のとしては、たとえば図9および図10に示されるような、厚み方向に貫通する貫通孔を有する非多孔性シート(フィルム)を用いることができ、材料としては熱可塑性樹脂が好ましく例示できる。これを用いて、第1層/第3層/第2層からなる積層体を熱圧着することにより、各層間を密着性良く面接合することができる。介在層が第3層としての厚み方向に貫通する貫通孔を有し、面接合が可能な非多孔性シートを有する燃料電池は、以下の点において有利である。
【0085】
(a)第3層を介して第1層と第2層とを密着性良く接合することができるため、第1層と第2層との間に副生ガスが滞留することがなく、第2層面内における気化燃料透過量のバラツキを抑制することができ、これにより燃料極に対して均一な燃料供給を行なうことができ、出力を向上させることが可能になる。また、第3層が樹脂からなる場合は、発電部の急激な温度上昇に対し、熱を液体燃料に伝達しにくくする効果がある。その結果、液体燃料の温度上昇が緩慢となり、液体燃料を比較的低い温度に安定的に維持できるようになるため、燃料極に供給される気化燃料の供給量を安定させることができる。このことは、燃料電池の信頼性向上に寄与する。
【0086】
(b)第3層に形成される貫通孔の数や開孔径により、第2層側への液体燃料透過量、ひいては燃料極への気化燃料供給量を適切な量に調整(制限)することができる。これにより、燃料のクロスオーバーの防止または抑制、および燃料供給の安定化を図ることができる。貫通孔の数は特に制限されないが、複数個存在することが好ましく、第2層面内における気化燃料透過量を均一化する観点から、これらを第3層における燃料供給室(箱筐体の凹部)の直上の領域に均一に分布させることが好ましい。貫通孔の開孔径(直径)は、たとえば、0.1〜5mm程度とすることができる。
【0087】
(c)第3層により第1層と第2層との間の良好な面接合が可能であるため、ボルト・ナットまたはネジなどの締結部材などを用いた燃料電池の締め付けが不要となり、燃料電池の薄型化を図ることができる。
【0088】
(d)熱圧着により容易に介在層を作製することができるため、燃料電池製造工程の簡略化、製造効率の向上を図ることができる。
【0089】
上述の熱可塑性樹脂シートのほか、第3層は、たとえば次のものから形成されるものであってもよい。
【0090】
1)接着性を有する樹脂または樹脂組成物から形成される多孔質層、たとえば、ホットメルト系接着剤や硬化型接着剤などの接着剤から形成される多孔質層。当該接着剤を用いる場合、第3層は、接着剤層、すなわち、当該接着剤またはその硬化物からなる多孔質層である。このような第3層を用いる場合であっても、上記(a)〜(c)と同様の効果を得ることができる。第2層側への液体燃料透過量は、多孔質層が有する細孔によって調整(制限)される。
【0091】
2)厚み方向に貫通する貫通孔を有する、好ましくは非多孔性の金属板を含むもの。この場合、金属板の両面には、第1層および第2層との良好な密着性を確保するために、接着剤層が形成され、したがって、第3層は、接着剤層/金属板/接着剤層の3層構造となる。接着剤層は、接着剤またはその硬化物からなる多孔質層である。接着剤は、ホットメルト系接着剤や硬化型接着剤などであることができる。このような第3層を用いる場合であっても、上記(a)〜(c)と同様の効果を得ることができる。第2層側への液体燃料透過量は、熱可塑性樹脂シートの場合と同様、金属板に形成される貫通孔の数や開孔径により調整(制御)できる。接着剤層は貫通孔を塞がないように形成されることが好ましい。貫通孔の数は特に制限されないが、複数個存在することが好ましく、第2層面内における気化燃料透過量を均一化する観点から、これらを金属板における燃料供給室(箱筐体の凹部)の直上の領域に均一に分布させることが好ましい。貫通孔の開孔径(直径)は、たとえば、0.1〜5mm程度とすることができる。
【0092】
厚み方向に貫通する貫通孔を有する非多孔性シート(フィルム)を第3層とする場合や、厚み方向に貫通する貫通孔を有する非多孔性金属板を含むものを第3層とする場合には、第1層の第2貫通穴の直上の位置にも貫通孔を形成し、該貫通孔と、箱筐体の第1貫通穴および第1層の第2貫通穴とによって副生ガス排出部を構築する。一方、接着性を有する樹脂または樹脂組成物から形成される多孔質層を第3層とする場合は、貫通孔の加工は特段不要である。
【0093】
本発明の燃料電池は、固体高分子型燃料電池またダイレクトアルコール型燃料電池などであることができ、特にダイレクトアルコール型燃料電池(とりわけ、ダイレクトメタノール型燃料電池)として好適である。本発明の燃料電池において使用することのできる液体燃料としては、たとえば、メタノール、エタノールなどのアルコール類;ジメトキシメタンなどのアセタール類;ギ酸などのカルボン酸類;ギ酸メチルなどのエステル類;ならびにこれらの水溶液を挙げることができる。液体燃料は1種に限定されず、2種以上の混合物であってもよい。コストの低さや体積あたりのエネルギー密度の高さ、発電効率の高さなどの点から、メタノール水溶液または純メタノールが好ましく用いられる。
【0094】
本発明の燃料電池は、電子機器、特には、携帯電話、電子手帳、ノート型パソコンに代表される携帯機器などの小型電子機器用の電源として好適に用いることができる。
【実施例】
【0095】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0096】
<実施例1>
以下の手順で図1と類似の構成を有する燃料電池を作製した。
【0097】
(1)膜電極複合体の作製
Pt担持量32.5重量%、Ru担持量16.9重量%の触媒担持カーボン粒子(TEC66E50、田中貴金属社製)と、電解質である20重量%のナフィオン(登録商標)のアルコール溶液(アルドリッチ社製)と、n−プロパノールと、イソプロパノールと、ジルコニアボールとを、所定の割合でフッ素系樹脂製の容器に入れ、攪拌機を用いて500rpmで50分間の混合を行なうことにより、燃料極用の触媒ペーストを調製した。また、Pt担持量46.8重量%の触媒担持カーボン粒子(TEC10E50E、田中貴金属社製)を用い、燃料極用の触媒ペーストと同様にして空気極用の触媒ペーストを調製した。
【0098】
また、縦23mm、横28mmに切り出したカーボンペーパー(GDL25BC、SGL社製)を2枚用意し、それぞれアノード導電性多孔質層、カソード導電性多孔質層とした。
【0099】
上記アノード導電性多孔質層上に、上記の燃料極用触媒ペーストを触媒担持量が約3mg/cm2となるように、縦22mm、横27mmのウィンドウを有したスクリーン印刷版を用いて塗布し、乾燥させることにより、アノード導電性多孔質層の中央にアノード触媒層が形成された、厚み約100μmの燃料極11を作製した。また、カソード導電性多孔質層上に、上記の空気極用触媒ペーストを触媒担持量が約1mg/cm2となるように、縦22mm、横27mmのウィンドウを有したスクリーン印刷版を用いて塗布し、乾燥させることにより、カソード導電性多孔質層の中央にカソード触媒層が形成された、厚み約50μmの空気極12を作製した。
【0100】
次に、厚さ約175μmのパーフルオロスルホン酸系イオン交換膜(ナフィオン(登録商標)117、デュポン社製)を縦23mm、横28mmに切断して電解質膜10とし、上記燃料極11と電解質膜10と上記空気極12とをこの順で、それぞれの触媒層が電解質膜10に対向するように重ね合わせた後、130℃、2分間の熱圧着を行ない、燃料極11および空気極12を電解質膜10に接合した。上記重ね合わせは、燃料極11と空気極12の電解質膜10の面内における位置が一致するように、かつ燃料極11と電解質膜10と空気極12の中心が一致するように行なった。ついで、得られた積層体の端部を切断することにより、縦22mm、横27mmの膜電極複合体20を作製した。
【0101】
(2)単位電池の作製
厚さ100μm、縦22mm、横27mmのステンレス板(NSS445M2、日新製鋼社製)を用意し、この中央領域に、開孔径φ0.6mmである複数の貫通孔(開孔パターン:千鳥60°ピッチ0.8mm)を、フォトレジストマスクを用いたウェットエッチングにて両面から加工することにより、厚み方向に貫通する貫通孔を複数備えるステンレス板を2枚作製した。ついで、耐食性向上と電気抵抗低減のため、これらのステンレス板の表面に金メッキを施し、それぞれアノード集電層21およびカソード集電層22とした。なお、アノード集電層21およびカソード集電層22には、評価時に電流を掃引するための電気的接点が設けられている。
【0102】
次に、上記アノード集電層21を燃料極11上に、カーボン粒子とエポキシ樹脂とからなる導電性接着剤層を介して積層するとともに、カソード集電層22を空気極12上に、カーボン粒子とエポキシ樹脂とからなる導電性接着剤層を介して積層し、これらを熱圧着により接合して、縦22mm、横27mmの単位電池30を作製した。なお、アノード集電層21およびカソード集電層22は、それらの貫通孔が形成された領域がそれぞれ燃料極11、空気極12の直上に配置されるように積層した。
【0103】
(3)介在層の作製
介在層の第1層1として、図11に示したような縦25mm、横27mm、厚み0.1mmのポリフッ化ビニリデンからなる多孔質フィルム(MILLIPORE製のデュラポアメンブレンフィルター)を用いた。この多孔質フィルムが有する細孔の最大細孔径は0.1μmであり、またJIS K 3832に準拠したバブルポイントは、測定媒体をメタノールとしたとき、115kPaであった。
【0104】
図11に示されるように、第1層1は、「穴群A」(点線枠で囲まれた領域に含まれる5個)と記した厚み方向に貫通する貫通穴(内径1.0mm)と、「穴群B」(他の点線枠で囲まれた領域に含まれる12個)と記した厚み方向に貫通する貫通穴(内径1.0mm)とを有している。穴群Aは、第1層の下に配置される燃料供給室内に液体燃料が入る際、燃料供給室内に存在する空気を抜くための穴である(空気を抜くことにより液体燃料が入る)。穴群Aを設けると、第1層が完全に燃料で濡れた後も燃料供給室内の空気を抜くことが可能であるため、燃料供給室に空気が滞留することはなく、燃料供給室内は常に液体燃料で満たされることになる。なお、単位電池30は、この穴群A上には配置されないため、副生ガスが穴群Aを通って燃料供給室内に侵入することはない。一方、穴群Bは、副生ガスを燃料電池外に排出するための上述の「第2貫通穴92」であり、副生ガス排出部の一部を構成する。
【0105】
また、介在層の第2層2として、図12に示したような縦25mm、横27mm、厚み0.2mmのポリテトラフルオロエチレンからなる多孔質フィルム(日東電工(株)製の「テミッシュ〔TEMISH(登録商標)〕NTF2122A−S06」)を用いた。この多孔質フィルムのJIS K 3832に準拠したバブルポイントは、測定媒体をメタノールとしたとき、18kPaであった。
【0106】
上記第1層1上に第2層2を積層し(図11、12のA−A’面が一致するように積層)、すべての側面の層境界部を接着剤で接合して介在層を作製した。介在層のバブルポイントは、これを構成する層のうち最もバブルポイントの大きい層の値と一致する。したがって、本実施例の介在層のバブルポイントは115kPaである。
【0107】
(4)燃料供給部の作製
図13に示したような、一方の面に縦23.5mm、横1.0mm、深さ0.4mmの凹部(燃料供給室となる空間)が5本形成され、さらに内径1.0mmの第1貫通穴91が図示される位置に合計12個形成された縦30mm、横27mm、厚み0.6mmの箱筺体40を用意した。この箱筺体40は、図1に示されるものと同様の形状を有しており、燃料供給室60となる凹部側方に燃料貯蔵室70を構成する凹部を備えたものである。介在層の第1層1側が箱筐体40側になるよう、ポリオレフィン系接着剤を介して箱筺体40の凹部上に介在層を積層させた後(図11〜13のA−A’面が一致するように積層)、熱圧着を行なうことにより、介在層と箱筺体40とを接合した。第1層1の第2貫通穴92(穴群B)は、箱筺体40の第1貫通穴91の直上に配置されている。
【0108】
(5)単位電池、燃料供給部の端面の封止
単位電池30の長辺側端面が、燃料供給部(介在層および箱筐体40)のA−A’面と重なるように単位電池30を介在層上に積層した。次に、単位電池30および燃料供給部の双方の端面に、マスクを用いて、エポキシ樹脂を含有する塗布液を塗布し硬化させることにより、エポキシ樹脂からなる封止層で被覆した。これにより、燃料電池外部から燃料極に空気が入ったり、燃料が燃料電池外部へ漏れたりすることを防ぐことができる。
【0109】
(6)燃料電池の作製
単位電池30および介在層の燃料貯蔵室側端面に、エポキシ樹脂を塗布し硬化させることにより、封止層80(燃料侵入防止層)を形成した。最後に、空気極12に空気を供給するための開口51と、開孔71(圧力調整孔)とを備えた蓋筐体50を、単位電池30上に配置することにより燃料電池を得た。
【0110】
<実施例2>
介在層の第1層1として、実施例1で用いた多孔質フィルムと同じ形状(図11に示される形状であり、穴群Aおよび穴群Bを有している)、厚みおよび材質であるが細孔の最大細孔径が異なる多孔質フィルム(MILLIPORE製のデュラポアメンブレンフィルター フィルターコード:DVPP)を用いた。この多孔質フィルムが有する細孔の最大細孔径は0.65μmであり、またJIS K 3832に準拠したバブルポイントは、測定媒体をメタノールとしたとき、42kPaであった。
【0111】
第2層2として実施例1と同じものと用い、上記第1層1上に第2層2を積層し(図11、12のA−A’面が一致するように積層)、すべての側面の層境界部を接着剤で接合して介在層を作製した。この介在層を燃料供給部に適用したこと以外は実施例1と同様にして燃料電池を得た。本実施例の介在層のバブルポイントは、42kPaである。
【0112】
<実施例3>
以下の手順で図9と類似の構成を有する燃料電池を作製した。
【0113】
介在層の第3層3として、図14に示したような縦25mm、横27mm、厚み0.07mmの熱可塑性フィルム(日東シンコー(株)製の「FB−ML4」)を用いた。この第3層3は、「穴群C」(点線枠で囲まれた領域に含まれる25個)と記した厚み方向に貫通する貫通穴(内径1.0mm)を有するとともに、第1層1に設けられた穴群AおよびBの直上の位置にも同じ数だけ貫通穴(内径1.0mm)を有している(図14参照)。第3層3を構成するフィルム自体は燃料不透過性であるが、燃料は穴群Cを通って第1層1側から第2層2側へ透過可能である。
【0114】
第1層1および第2層2として実施例1と同じものと用い、第1層1、第3層、第2層の順に積層し(図11、12および14のA−A’面が一致するように積層)、130℃、10分間の熱圧着を行ない、介在層を作製した。この介在層を燃料供給部に適用したこと以外は実施例1と同様にして燃料電池を得た。本実施例の介在層のバブルポイントは115kPaである。
【0115】
<比較例1>
介在層の第1層として、縦25mm、横27mm、厚み0.1mmの超高分子量ポリエチレンからなる多孔質フィルム(日東電工(株)製の「サンマップ LCシリーズ」)を用いること以外は実施例1と同様にして介在層を作製し、この介在層を用いること以外は実施例1と同様にして燃料電池を作製した。本比較例で用いた第1層のJIS K 3832に準拠したバブルポイントは、測定媒体をメタノールとしたとき、8kPaであった。本比較例の介在層のバブルポイントは18kPaである(第2層のバブルポイントに相当)。
【0116】
(燃料電池の発電特性評価)
燃料としてメタノール水溶液を用いパッシブ供給にて燃料供給を行ない、得られた燃料電池を稼動させ、充放電装置(菊水電子工業(株)製の「SPEC20526」)を用いてI−V測定を行ない、最大瞬間出力を評価するとともに、同装置を用いて定電流測定(電流密度75mA/cm2)を行なった。定電流負荷を与えた5min後の電圧を基準にして、測定2hr後の電圧と当該基準電圧との差によって出力安定性を評価した。電圧の差が大きいほど、副生ガスが燃料供給室に侵入することなどに起因して出力安定性を欠いていることとなる。
【0117】
供給するメタノール水溶液の濃度は、実施例1、2および比較例1の燃料電池については、12mol/dm3とした。一方、実施例3の燃料電池については、介在層の第3層によりメタノールクロスオーバーが抑制され、実施例1、2および比較例1と同じ濃度の燃料を用いた場合、相対的に電池温度が低くなるため、実施例1、2および比較例1と同等の電池温度となる濃度23mol/dm3のメタノール水溶液を燃料として用いた。
【0118】
【表1】
【0119】
実施例1の燃料電池は、瞬間最大出力としては比較例1と同程度であるものの、出力安定性において優れるものであった。介在層のバブルポイントが大きいことから、副生ガスが燃料供給室に侵入することがなく、安定した燃料供給が可能となったためと考えられる。実施例2の燃料電池は、瞬間最大出力、出力安定性のいずれも実施例1と同程度であった。実施例1と同様に、副生ガスが燃料供給室に侵入することなく、安定した燃料供給が可能となったためと考えられる。実施例3の燃料電池は、瞬間最大出力、出力安定性のいずれにおいても優れるものであった。瞬間最大出力が向上したのは、より高濃度の燃料を使用できるようになったため、燃料供給が良好となり限界電流密度が向上したためと考えられる。また、実施例3の燃料電池は、実施例1と比較してさらに出力安定性が向上しているが、これは、第1層と第2層が、第3層によって面接合されていることにより第1層と第2層の間に隙間が生じにくくなり、より安定した燃料供給がなされたためと考えられる。比較例1の燃料電池では、出力安定性が低すぎて2hrの定電流負荷を行なうことができず、セル電圧が0.1V以下となったため測定を終えた(5min後と比較した電圧差は0.3V以上)。
【符号の説明】
【0120】
1 第1層、2 第2層、3 第3層、10 電解質膜、11 燃料極、12 空気極、20 膜電極複合体、21 アノード集電層、22 カソード集電層、30 単位電池、40 箱筺体、50 蓋筺体、51 開口、60 燃料供給室、61 燃料輸送部材、70 燃料貯蔵室、71 開孔、80 封止層、90 副生ガス排出部、91 第1貫通穴、92 第2貫通穴、100,200 燃料電池。
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、情報化社会を支える携帯用電子機器の新規電源として実用化の期待が高まっている。燃料電池は、使用する電解質材料や燃料の分類から、リン酸型、溶融炭酸塩型、固体電解質型、固体高分子型、ダイレクトアルコール型等に分類される。特に、電解質材料に固体高分子であるイオン交換膜を用いる固体高分子型燃料電池およびダイレクトアルコール型燃料電池は、常温で高い発電効率が得られることから、携帯用電子機器への応用を目的とした小型燃料電池としての実用化が検討されている。
【0003】
燃料としてアルコールまたはアルコール水溶液を使用するダイレクトアルコール型燃料電池は、燃料がガスである場合と比較して、燃料貯蔵室を比較的簡易に設計できるなどの理由から、燃料電池の構造の簡略化、省スペース化が可能であり、携帯用電子機器への応用を目的とした小型燃料電池としての期待が特に高い。
【0004】
電解質膜としてカチオン交換膜を使用するダイレクトアルコール型燃料電池においては、燃料極に燃料(アルコールまたはアルコール水溶液)を供給すると、燃料が酸化されて、二酸化炭素等のガス(以下、副生ガスと称する。)およびプロトンが生じる。たとえば、アルコールとしてメタノールを用いた場合では、
CH3OH+H2O → CO2↑+6H++6e-
の酸化反応により、副生ガスとして二酸化炭素が燃料極側で発生する。
【0005】
燃料極側で発生したプロトンは、電解質膜を介して空気極側に伝達される。そして、当該プロトンと、空気極に供給される空気中の酸素とが、
3/2O2+6H++6e- → 3H2O
の還元反応を起こし、水が生成する。このときに電子が外部の電子機器(負荷)を通過して燃料極から空気極に移動し、電力が取り出される。
【0006】
ダイレクトアルコール型燃料電池のような、液状の燃料(以下、液体燃料と称する。)を使用する燃料電池には、液体燃料をそのまま燃料極に供給する液体供給方式と、液体燃料の気化成分を燃料極に供給する気化供給方式とがある。たとえば特許文献1には、液体燃料収容室と燃料極との間に、気化した燃料(以下、気化燃料と称する。)を透過させる気液分離膜を配した気化供給方式の燃料電池が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2008/023633号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献1に記載されるような、気化供給方式とするために液体燃料収容室と燃料極との間に、気体が透過可能な気液分離膜を配した燃料電池においては、燃料極で生じた副生ガスが気液分離膜を通って液体燃料収容室内に浸入する。副生ガスの液体燃料収容室内への侵入は、気液分離膜に接触する液体燃料量を低減させ、結果、燃料極への気化燃料の供給量を低下させるとともに、気化燃料の安定的な供給を阻害し、燃料電池の出力安定性を低下させる。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、出力安定性が良好な燃料電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、燃料極、電解質膜および空気極をこの順で有する単位電池と、単位電池の燃料極側に配置され、燃料極に燃料を供給するための燃料供給部とを備える燃料電池であって、燃料供給部は、燃料極側が開放された空間からなり、液状の燃料(液体燃料)を流通させるかまたは収容するための燃料供給室と、燃料供給室の開口を覆うように燃料供給室と単位電池との間に配置される介在層とを含み、介在層は、その厚み方向における燃料供給室側に設けられ、測定媒体をメタノールとしたときのバブルポイントが30kPa以上である第1領域と、その厚み方向における単位電池側に設けられ、気化した燃料(気化燃料)を透過可能な第2領域とを有する燃料電池を提供する。
【0011】
介在層は、好ましくは、燃料供給室の開口を覆うように燃料供給室上に配置され、測定媒体をメタノールとしたときのバブルポイントが30kPa以上である第1層と、第1層における単位電池側表面に積層され、気化した燃料を透過可能な第2層とから構成される2層構造を有するものである。
【0012】
本発明の燃料電池は、第1層と第2層との間に、厚み方向に貫通する貫通孔を有する第3層をさらに備えることができる。第3層の好ましい一例は、厚み方向に貫通する複数の貫通孔を有する熱可塑性樹脂シートである。また、第3層の他の好ましい例として、接着性を有する樹脂または樹脂組成物から形成される多孔質層や、厚み方向に貫通する複数の貫通孔を有する金属板を含むものを挙げることができる。
【0013】
単位電池は、燃料極上に積層されるアノード集電層と、空気極上に積層されるカソード集電層とをさらに含むことが好ましい。燃料としては、純メタノールまたはメタノール水溶液を好ましく用いることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、燃料極で生じた副生ガスの燃料供給室への侵入を防止することができる。これにより、燃料極に対して、十分な量の気化燃料を安定して供給することができるようになるため、良好な出力安定性を維持することができる。本発明の燃料電池は、携帯電子機器への応用を目的とした小型燃料電池、とりわけ携帯電子機器搭載型の小型燃料電池として好適である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の燃料電池の一例を示す概略断面図である。
【図2】図1に示される燃料電池の概略上面図である。
【図3】図1に示されるIII−III線における概略断面図である。
【図4】図1に示されるIV−IV線における概略断面図である。
【図5】図1に示されるV−V線における概略断面図である。
【図6】燃料供給部の他の一例を示す概略断面図である。
【図7】燃料供給部の他の一例を示す概略断面図である。
【図8】本発明の燃料電池の他の一例を示す概略断面図である。
【図9】本発明の燃料電池の他の一例を示す概略断面図である。
【図10】図9に示される燃料電池が備える第3層を示す概略上面図である。
【図11】実施例1で用いた介在層の第1層を示す概略上面図である。
【図12】実施例1で用いた介在層の第2層を示す概略上面図である。
【図13】実施例1で用いた箱筐体を示す概略上面図である。
【図14】実施例3で用いた介在層の第3層を示す概略上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の燃料電池を実施の形態を示して詳細に説明する。
<第1の実施形態>
図1は本実施形態の燃料電池を示す概略断面図であり、図2は当該燃料電池の概略上面図である。また、図1に示されるIII−III線、IV−IV線およびV−V線における断面図をそれぞれ図3〜図5に示している。これらの図面に示される本実施形態の燃料電池100は、燃料極11、電解質膜10および空気極12をこの順で含む膜電極複合体20と、燃料極11上に積層され、これに電気的に接続されたアノード集電層21と、空気極12上に積層され、これに電気的に接続されたカソード集電層22とを備える単位電池30;燃料極11の下方に配置され、燃料極11側が開放された空間からなる燃料供給室60;燃料供給室60の開口(燃料極側への開放面)を覆うように燃料供給室60上に配置される第1層1と、第1層1の単位電池30側表面に積層される第2層2とからなる介在層;および、燃料(図示せず)を収容するための燃料貯蔵室70から基本的に構成されている。
【0017】
液体燃料を貯蔵する燃料貯蔵室70と、該燃料を流通させる燃料供給室60と、燃料供給室60の開口を覆うように配置される介在層とによって燃料電池100の燃料供給部が形成されている。燃料貯蔵室70と燃料供給室60とは流路により接続されている。
【0018】
箱筺体40は、燃料供給室60を形成する凹部(溝)を有しており、該凹部を覆うように第1層1を積層することにより燃料供給室60(内部空間)が形成されている。また、箱筺体40は、燃料電池100の燃料供給室60を構成する部位とともに、燃料貯蔵室70の底壁および側壁を構成する部位を一体として有している。
【0019】
本実施形態の燃料電池100は、燃料極11で生じた副生ガスを燃料電池外部に排出するための副生ガス排出部90を有している。本実施形態において副生ガス排出部90は、箱筺体40の側壁を厚み方向に貫通する第1貫通穴91と、第1層1を厚み方向に貫通する第2貫通穴92とからなる(図4および図5参照)。第2貫通穴92は第1貫通穴91の直上に配置され、これらの貫通穴は連通している。
【0020】
本実施形態の燃料電池100は、箱筺体40とともに、カソード集電層22上に積層され、複数の開口51を有する蓋筺体50を備えており、単位電池30は、箱筺体40と蓋筺体50とによって挟持されている。蓋筺体50は、カソード集電層22上に積層される部位とともに、燃料貯蔵室70の上壁(天井壁)を構成する部位を一体として有しており、箱筺体40、蓋筺体50および、単位電池30などの側面によって燃料貯蔵室70が形成されている。単位電池30および介在層の燃料貯蔵室側端面には、燃料貯蔵室70内に収容された燃料が侵入しないよう、エポキシ系硬化性樹脂組成物の硬化物層などからなる封止層80が形成されている。本実施形態の燃料電池100において、燃料貯蔵室70は、単位電池30およびその下方に配置された燃料供給室60の側方に配置されている。
【0021】
燃料貯蔵室70は、その内部空間と燃料電池100外部とを連通する開孔71を備えている。この開孔71は、蓋筺体50に設けられた貫通孔である。
【0022】
本実施形態の燃料電池100は、次のような動作により発電を行なう。流路を通って燃料貯蔵室70から燃料供給室60内に流通してきた液体燃料は、燃料供給室60内全体に行き渡り、介在層の第1層1を濡らす。第1層1から染み出した液体燃料は、第2層2により気液分離され、気化燃料のみが単位電池30側へ透過する。第2層2を透過した気化燃料は、アノード集電層21の開口を通って燃料極11に供給される。そして、液体燃料としてメタノール水溶液を例に挙げると、燃料極11に供給されたガス状態のメタノール水溶液は、
CH3OH+H2O → CO2↑+6H++6e-
の式で表される酸化反応を起こし消費される。気化燃料は、燃料電池100の発電電流量に応じて消費されていくこととなるが、これを補うように、第2層2から液体燃料が随時蒸発を続けるため、燃料極11近傍における気化燃料の蒸気圧は略一定に保たれる。
【0023】
一方、空気極12においては、蓋筺体50の開口51およびカソード集電層22の開口を通って到達した空気中の酸素と、電解質膜10を介して燃料極11から空気極12に伝達されたプロトンとが、
3/2O2+6H++6e- → 3H2O
の式で表される還元反応を起こす。以上の酸化還元反応により、電子が、燃料極11→アノード集電層21→外部の電子機器(負荷)→カソード集電層22→空気極12のルートで移動し、外部の電子機器に対して電力が供給される。
【0024】
発電により燃料極11で生じた副生ガス(上記式におけるCO2)は、介在層の存在により燃料供給室60内に浸入することはなく、アノード集電層21の開口、第2層2および副生ガス排出部90を通って燃料電池外部に排出される。
【0025】
燃料供給室60と単位電池30との間に配置される、第1層1および第2層2からなる介在層は、燃料極11への燃料供給を均一に、かつ適切量に制御された状態で行なうことを可能にする。これにより、燃料のクロスオーバーを効果的に抑制でき、発電部に温度ムラが生じにくく、安定した発電状態を維持することができる。
【0026】
次に、燃料電池100を構成する各部材等について詳細に説明する。
〔介在層〕
(1)第1層
燃料供給室60の開口(燃料極側への開放面)を覆うように(すなわち、燃料供給室60を形成する凹部を覆うように)燃料供給室60と単位電池30との間に配置される介在層は、図1に示される例のように、燃料供給室60の開口を覆うように燃料供給室60上に積層される第1層1と、第1層1の単位電池30側表面に積層される第2層2の2層構造であることができる。第1層1は、測定媒体をメタノールとしたときのバブルポイントが30kPa以上の層であり、このような第1層1を燃料供給室60の開口を覆うように配置することにより、第1層1の細孔内に液体燃料が毛細管力により保持されるため、燃料極11で発生した副生ガス(CO2ガスなど)の燃料供給室60内への侵入を効果的に防止することができる。これにより、燃料極11への気化燃料の供給量が低下したり、気化燃料の安定的供給が阻害されたりすることを防止できるため、燃料電池の出力安定性を良好に維持することができる。また、副生ガスが浸入し燃料供給室60の内圧が上昇することによる構成部材間の界面での剥離や、構成部材の破壊を抑制できることから、燃料電池の信頼性を向上させることができる。
【0027】
また、第1層1の設置は次の点でも有利である。
(a)燃料貯蔵室70から燃料供給室60内への液体燃料の輸送を、第1層1の毛細管力を利用して行なうことができるため、液体燃料のパッシブ供給が可能となる。これにより、液体燃料を送液するためのポンプ等の補機を省略することができる。また、毛細管力による燃料供給が可能になることにより、燃料供給の方向依存性をなくすことができる(すなわち、燃料電池の使用時における向きに関係なく、発電を行なうことができる。)。
【0028】
(b)高分子材料などの熱伝導性の低い材料を第1層に用いる場合には、第1層内に保持された液体燃料は、発電部の急激な温度上昇に対する影響を受けにくくなり、その温度上昇が緩慢となる。その結果、第1層内に保持された液体燃料を比較的低い温度に安定的に維持できるようになるため、燃料極に供給される気化燃料の供給量を安定させることができる。このことは、燃料電池の信頼性向上に寄与する。
【0029】
(c)第1層面内に均一に液体燃料が広がり保持されるため、燃料極面に対して、均一に気化燃料を供給することができ、発電部に対し燃料の局所的な過剰供給や、燃料不足となることがないため、触媒等の材料劣化が抑えられる。このことは、出力向上および燃料電池の信頼性向上に寄与する。
【0030】
(d)ポンプ等の圧送手段を用いて燃料貯蔵室70に収容された液体燃料を燃料供給室60に圧送するなどの方法によって燃料供給室60内の圧力を高めることにより、燃料極11で発生した副生ガスが燃料供給室60内へ浸入することをある程度防止することが可能であるが、第1層1による浸入防止の効果がこれを凌駕するため、燃料供給室60内の内圧を高める必要がない。これにより、内圧上昇による液漏れの危険性を回避することができ、燃料電池の信頼性を向上させることができる。
【0031】
(e)燃料極11内の内圧が上がっても副生ガスの侵入のおそれがないことから、副生ガス排出部90を構成する貫通穴の径をより小さくすることができる。これにより未使用の気化燃料の排出を低減できることから、燃料の利用効率を向上させることができる(この効果については後で詳述する)。
【0032】
ここで、バブルポイントとは、液媒体で濡らした層(膜)の裏側から空気圧をかけたときに、層(膜)の表面に気泡の発生が認められる最小圧力である。バブルポイントが高いほど気体の透過性は低い。バブルポイントΔPは、下記式(1):
ΔP[Pa]=4γcosθ/d (1)
(γは測定媒体の表面張力[N/m]、θは層(膜)の素材と測定媒体との接触角、dは層(膜)が有する最大細孔径である。)
によって定義される。本発明においてバブルポイントは、測定媒体をメタノールとし、JIS K 3832に準拠して測定される。
【0033】
副生ガスの燃料供給室60内への侵入を効果的に防止する観点から、第1層1のバブルポイントは、好ましくは50kPa以上であり、より好ましくは100kPa以上である。第1層1のバブルポイントは、上記(1)から理解されるように、第1層1として用いる材料の細孔径や接触角の調整により制御可能である。
【0034】
30kPa以上のバブルポイントを達成するために、第1層1が有する細孔の最大細孔径は、1μm以下であることが好ましく、0.7μm以下であることがより好ましい。最大細孔径は、上記バブルポイントを測定することで得られるが、それ以外の手法としては水銀圧入法によって測定することができる。ただし、水銀圧入法では0.005μm〜500μmの細孔分布しか測定できないため、この範囲外の細孔は存在しない、もしくは無視できる場合に有効な測定手段である。
【0035】
第1層1としては、たとえば、高分子材料、金属材料または無機材料などからなる多孔質層や、高分子膜を挙げることができ、具体例を示せば以下のとおりである。
【0036】
1)次の材料からなる多孔質層。ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素系樹脂;アクリル系樹脂;ABS樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂;ポリエチレンテレフタラート等のポリエステル系樹脂;セルロースアセテート、ニトロセルロース、イオン交換セルロース等のセルロース系樹脂;ナイロン;ポリカーボネート系樹脂;ポリ塩化ビニル等の塩素系樹脂;ポリエーテルエーテルケトン;ポリエーテルスルホン;ガラス;セラミックス;ステンレス、チタン、タングステン、ニッケル、アルミニウム、スチール等の金属材料。多孔質層は、これらの材料からなる発泡体、焼結体、不織布または繊維(ガラス繊維等)などであることができる。
【0037】
2)次の材料からなる高分子膜。パーフルオロスルホン酸系重合体;スチレン系グラフト重合体、トリフルオロスチレン誘導体共重合体、スルホン化ポリアリーレンエーテル、スルホン化ポリエーテルエーテルケトン、スルホン化ポリイミド、スルホン化ポリベンゾイミダゾール、ホスホン化ポリベンゾイミダゾール、スルホン化ポリフォスファゼンなどの炭化水素系重合体などの電解質膜材料として用いることができるもの。これらの高分子膜は、3次元的に絡み合う高分子間の隙間として、ナノオーダーの細孔を有している。
【0038】
第1層1を構成する材料として高分子材料を用いる場合には、親水性官能基を導入するなどの方法により親水化処理を施し、細孔表面の水(したがってメタノールもしくはメタノール水溶液等の燃料)に対する濡れ性を高めることにより、第1層1のバブルポイントを高めることもできる。また、第1層1に親水化処理を施すことにより、より低い圧損で液体燃料を燃料供給室60内において流通させることができる。
【0039】
第1層1の厚みは特に制限されないが、燃料電池の薄型化の観点から、好ましくは20〜500μmであり、より好ましくは50〜200μmである。
【0040】
第1層1には、副生ガス排出部90の一部を形成する第2貫通穴92が設けられる。第2貫通穴92は、第1層1を箱筐体40上に積層したときに、第1貫通穴91と連通するような位置(すなわち、第1貫通穴91の直上)に形成される。
【0041】
(2)第2層
第1層1の単位電池30側表面に積層される第2層2は、気化燃料透過性かつ液体燃料不透過性の疎水性を有する多孔質層であり、燃料極11への燃料の気化供給を可能とする層(気液分離層)である。第2層2は、燃料極11へ供給される気化燃料の量または濃度を適切量に制御(制限)するとともに、均一化する機能を有する。第2層2を設けることにより、燃料のクロスオーバーを効果的に抑制でき、発電部に温度ムラが生じにくく、安定した発電状態を維持することができる。
【0042】
第2層2としては、使用する燃料に関して気液分離能を有するものであれば特に制限されないが、たとえば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン等のフッ素系樹脂、撥水化処理されたシリコーン樹脂などからなる多孔質膜または多孔質シートを挙げることができ、具体的には、ポリテトラフルオロエチレンからなる多孔質フィルムである日東電工(株)製テミッシュ〔TEMISH(登録商標)〕の「NTF2026A−N06」や「NTF2122A−S06」が例示できる。
【0043】
第2層2は、気化燃料透過性を有するものであることから、第1層1よりも小さいバブルポイントを有している。第2層2の上記測定方法に従うバブルポイントは好ましくは10kPa以下であり、第2層2に対するメタノールの接触角は大きいほど良く、好ましくは45度以上であり、より好ましくは90度程度以上である。また、気化燃料透過性および液体燃料不透過性を付与する観点から、第2層2が有する細孔の最大細孔径は、0.1〜10μmであることが好ましく、0.5〜5μmであることがより好ましい。第2層2が有する細孔の最大細孔径は、第1層1と同様、メタノール等を用いてバブルポイントを測定することにより求めることができる。
【0044】
第2層2の厚みは特に制限されないが、上記機能を十分に発現させるために、20μm以上であることが好ましく、50μm以上であることがより好ましい。また、燃料電池の薄型化の観点からは、第2層2の厚みは、500μm以下であることが好ましく、300μm以下であることがより好ましい。
【0045】
〔電解質膜〕
膜電極複合体20を構成する電解質膜10は、燃料極11から空気極12へプロトンを伝達する機能と、燃料極11と空気極12との電気的絶縁性を保ち、短絡を防止する機能を有する。電解質膜の材質は、プロトン伝導性を有し、かつ電気的絶縁性を有する材質であれば特に限定されず、高分子膜、無機膜またはコンポジット膜を用いることができる。高分子膜としては、たとえば、パーフルオロスルホン酸系電解質膜である、ナフィオン(登録商標、デュポン社製)、アシプレックス(登録商標、旭化成社製)、フレミオン(登録商標、旭硝子社製)などが挙げられる。また、スチレン系グラフト重合体、トリフルオロスチレン誘導体共重合体、スルホン化ポリアリーレンエーテル、スルホン化ポリエーテルエーテルケトン、スルホン化ポリイミド、スルホン化ポリベンゾイミダゾール、ホスホン化ポリベンゾイミダゾール、スルホン化ポリフォスファゼンなどの炭化水素系電解質膜などを用いることもできる。
【0046】
無機膜としては、たとえばリン酸ガラス、硫酸水素セシウム、ポリタングストリン酸、ポリリン酸アンモニウムなどからなる膜が挙げられる。コンポジット膜としては、タングステン酸、硫酸水素セシウム、ポリタングストリン酸等の無機物とポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、パーフルオロスルホン酸等の有機物とのコンポジット膜などが挙げられる。
【0047】
電解質膜10の厚みはたとえば1〜200μmである。また、電解質膜10のEW値(プロトン官能基1モルあたりの乾燥重量)は、800〜1100程度であることが好ましい。EW値が小さいほど、プロトン移動に伴う電解質膜の抵抗が小さくなり高い出力を得ることができる。
【0048】
〔燃料極および空気極〕
電解質膜10の一方の表面に積層される燃料極11および他方の表面に積層される空気極12には、少なくとも触媒と電解質とを有する多孔質層からなる触媒層が設けられる。燃料極11用の触媒は、メタノール水溶液等の液体燃料からプロトンと電子とを生成する反応を触媒し、電解質は、生成したプロトンを電解質膜10へ伝導する機能を有する。空気極12用の触媒は、電解質を伝導してきたプロトンと空気中の酸素から水を生成する反応を触媒する。
【0049】
燃料極11および空気極12用の触媒は、カーボンやチタン等の導電体の表面に担持されたものでもよく、なかでも、水酸基やカルボキシル基等の親水性の官能基を有するカーボンやチタン等の導電体の表面に担持されていることが好ましい。これにより、燃料極11および空気極12の保水性を向上させることができる。また、燃料極11および空気極12の電解質は、電解質膜10のEW値よりも小さなEW値を有する材料からなることが好ましく、具体的には、電解質膜10と同質材料であるが、EW値が400〜800である電解質材料が好ましい。このような電解質材料を用いることによっても、燃料極11および空気極12の保水性を向上させることができる。燃料極11および空気極12の保水性の向上により、プロトン移動に伴う電解質膜10の抵抗や燃料極11および空気極12における電位分布を改善することができる。また、EW値の低い電解質は同時に液体燃料の透過性も高いことから、EW値の低い電解質を用いることにより、燃料極11の触媒層に均一に気化燃料を供給することができる。
【0050】
燃料極11および空気極12はそれぞれ、触媒層上に積層されるアノード導電性多孔質層、カソード導電性多孔質層を備えていてもよい。これらの導電性多孔質層は、燃料極11、空気極12に供給されるガス(気化燃料または空気)を面内において拡散させる機能を有するとともに、触媒層と電子の授受を行なう機能を有する。アノード導電性多孔質層およびカソード導電性多孔質層としては、比抵抗が小さく、電圧の低下が抑制されることから、カーボン材料;導電性高分子;Au、Pt、Pd等の貴金属;Ti、Ta、W、Nb、Ni、Al、Cu、Ag、Zn等の遷移金属;これらの金属の窒化物または炭化物等;ならびに、ステンレスに代表されるこれらの金属を含有する合金などからなる多孔質材料を用いることが好ましい。Cu、Ag、Zn等の、酸性雰囲気下で耐腐食性に乏しい金属を用いる場合には、Au、Pt、Pdなどの耐腐食性を有する貴金属、導電性高分子、導電性窒化物、導電性炭化物、導電性酸化物等により表面処理(皮膜形成)を行なってもよい。より具体的には、アノード導電性多孔質層およびカソード導電性多孔質層として、たとえば、上記貴金属、遷移金属または合金からなる発泡金属、金属織物および金属焼結体;ならびにカーボンペーパー、カーボンクロス、カーボン粒子を含有するエポキシ樹脂膜などを好適に用いることができる。
【0051】
〔アノード集電層およびカソード集電層〕
アノード集電層21、カソード集電層22はそれぞれ、燃料極11上、空気極12上に積層され、膜電極複合体20とともに単位電池30を構成する。アノード集電層21およびカソード集電層22はそれぞれ、燃料極11、空気極12における電子を集電する機能と、電気的配線を行なう機能とを有する。集電層の材質は、比抵抗が小さく、面方向に電流を取り出しても電圧の低下が抑制されることから、金属であることが好ましく、なかでも、電子伝導性を有し、酸性雰囲気下で耐腐食性を有する金属であることがより好ましい。このような金属としては、Au、Pt、Pd等の貴金属;Ti、Ta、W、Nb、Ni、Al、Cu、Ag、Zn等の遷移金属;およびこれらの金属の窒化物または炭化物等;ならびに、ステンレスに代表されるこれらの金属を含有する合金などが挙げられる。Cu、Ag、Zn等の、酸性雰囲気下で耐腐食性に乏しい金属を用いる場合には、Au、Pt、Pdなどの耐腐食性を有する貴金属、導電性高分子、導電性窒化物、導電性炭化物、導電性酸化物等により表面処理(皮膜形成)を行なってもよい。なお、アノード導電性多孔質層およびカソード導電性多孔質層が、たとえば金属等からなり、導電性が比較的高い場合には、アノード集電層およびカソード集電層は省略されてもよい。
【0052】
より具体的には、アノード集電層21は、気化燃料を燃料極11へ誘導するための厚み方向に貫通する貫通孔(開口)を複数備える、上記金属材料などからなるメッシュ形状またはパンチングメタル形状を有する平板であることができる。この貫通孔は、燃料極11の触媒層で生成する副生ガス(CO2ガス等)を副生ガス排出部90へ誘導するための経路としても機能する。同様に、カソード集電層22は、燃料電池外部の空気を空気極12の触媒層に供給するための厚み方向に貫通する貫通孔(開口)を複数備える、上記金属材料などからなるメッシュ形状またはパンチングメタル形状を有する平板であることができる。
【0053】
〔燃料供給室〕
燃料供給室60は、後述する燃料貯蔵室70とともに、燃料収容および燃料供給の役割を果たす燃料供給部を構成する部位であり、好ましくは燃料極11の直下に配置される。図1に示される本実施形態の燃料電池100において、燃料供給室60は、燃料極11の燃料貯蔵室70側端部からこれと反対側の端部までの長さと同じかまたはそれ以上の長さを有しており、燃料極11の幅と同じかまたはそれ以上の幅を有する空間からなる。燃料供給室60の高さ(深さ)は特に制限されない。
【0054】
本実施形態の燃料電池100において燃料供給室60は、単位電池30の下部に介在層に接するように配置された、燃料供給室60の内部空間を構成する凹部を有する箱筺体40と、介在層とによって形成されている。なお、図1に示される箱筺体40は、燃料供給室60を構成する部位とともに、燃料貯蔵室70の底壁および側壁を構成する部位を一体として有しているが、これに限定されるものではなく、燃料供給室60を構成する部材と燃料貯蔵室70を構成する部材とは異なる部材であってもよい。
【0055】
箱筺体40は、プラスチック材料または金属材料を用いて、少なくとも燃料供給室60の内部空間を構成する凹部を有するように適宜の形状に成形することによって作製することができる。プラスチック材料としては、たとえば、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)などを挙げることができる。金属材料としては、たとえば、チタン、アルミニウム等のほか、ステンレス、マグネシウム合金等の合金材料を用いることができる。これらのなかでも、ポリフェニレンサルファイド(PPS)やポリエチレン(PE)は、3次元架橋による分子量増加により強度が高く安価に加工ができ、また軽量であることから好ましく用いられる。
【0056】
〔副生ガス排出部〕
本実施形態の燃料電池100は、燃料極11で生じた副生ガスを燃料電池外部に排出するための副生ガス排出部90を有している。本実施形態において副生ガス排出部90は、箱筺体40の側壁を厚み方向に貫通する第1貫通穴91と、第1層1を厚み方向に貫通する第2貫通穴92とからなる(図4および図5参照)。第2貫通穴92は第1貫通穴91の直上に配置され、これらの貫通穴は連通している。副生ガス排出部90を設けることにより、燃料極11内の過度の内圧上昇を防止することができる。
【0057】
上述のように本発明の燃料電池では、介在層を備えることにより燃料供給室60内への副生ガスの侵入が効果的に防止されているため、仮に燃料極11内の内圧が上昇した場合でも副生ガスが燃料供給室60内へ侵入するおそれがない。したがって、副生ガス排出部90を構成する貫通穴の径をより小さくして、燃料極11内の内圧がある程度上昇することを許容できるという利点がある。副生ガス排出部90は、未使用の気化燃料(燃料極11に到達する前の気化燃料)が燃料電池外部に排出されるルートを提供し得るが、副生ガス排出部90を構成する貫通穴の小径化は、未使用気化燃料の排出量低減に極めて有利であり、これにより燃料の利用効率を向上させることができる。従来の燃料電池では、副生ガスの燃料供給室内への侵入を防止する手段を持たなかったため、副生ガスを排出させるための経路を設ける場合、燃料極11内の内圧上昇を防止するために、その径を大きくせざるを得ず、燃料利用効率が低下していた。
【0058】
なお、副生ガスを燃料電池外に排出させるための手段は、本実施形態の燃料電池100が有する、図4および図5に示されるような第1貫通穴91および第2貫通穴92からなる副生ガス排出部90に限定されず、燃料極11の近傍から燃料電池外部へと延びる何らかの経路であればよい。たとえば、箱筐体40の第1貫通穴91上には介在層を配置せず(介在層のサイズを小さくする)、その分、第1貫通穴91をアノード集電層21まで延ばした構造であってもよい。この場合、副生ガス排出部は、第1貫通穴91のみからなり、第2貫通穴92を有しない。また、電解質膜に厚み方向に貫通する貫通穴を設け、副生ガスを空気極側へ排出してもよい。該貫通穴から排出された副生ガスが空気極で酸化され、燃料電池の出力特性を低下させたり、空気が過剰に消費されたりしないよう、該貫通穴の直上の位置に空気極が形成されない領域を設ける構造であってもよい。この場合、副生ガス排出部は、電解質膜の貫通穴および空気極が形成されない領域の連続した空間からなり、副生ガスは空気極側へ排出される。
【0059】
〔燃料貯蔵室〕
燃料貯蔵室70は、好ましくは単位電池30および燃料供給室60の側方に配置される、液体燃料を収容するための室である。本実施形態の燃料電池100において燃料貯蔵室70は、カソード集電層22上に積層され、複数の開口51を有する蓋筺体50、箱筺体40、単位電池30および介在層によって形成されている。単位電池30および介在層の燃料貯蔵室側端面は、燃料貯蔵室70内に収容された燃料が侵入しないよう、エポキシ系硬化性樹脂組成物の硬化物などからなる封止層80によって封止されている。
【0060】
なお、燃料貯蔵室70は、これら蓋筺体50および箱筺体40を用いて構成する必要性は必ずしもなく、たとえば、燃料貯蔵室70の上壁(天井壁)、側壁および底壁を形成する部位を一体として含む1つの部材から構成することもできる。
【0061】
本実施形態の燃料電池100において蓋筺体50は、燃料貯蔵室70の上壁(天井壁)を形成するとともに、単位電池30が直接露出することを防止する保護板として機能している。蓋筺体50の空気極12直上部分には、空気を流通させるための複数の開口51(ただし、開口の数は1以上あればよい)が形成されている。
【0062】
蓋筺体50は、プラスチック材料または金属材料を用い、適宜の形状に成形することによって作製することができる。プラスチック材料としては、たとえば、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)などを挙げることができる。金属材料としては、たとえば、チタン、アルミニウム等のほか、ステンレス、マグネシウム合金等の合金材料を用いることができる。これらのなかでも、ポリフェニレンサルファイド(PPS)やポリエチレン(PE)は、3次元架橋による分子量増加により強度が高く安価に加工ができ、また軽量であることから好ましく用いられる。
【0063】
燃料貯蔵室70は、その内部空間と燃料電池外部とを連通する開孔71を備えることが好ましい。これにより、液体燃料が燃料供給室60に輸送される場合においても、燃料貯蔵室70内が大気圧に維持されるため、液体燃料の輸送を円滑に行なうことができる。図1に示される燃料電池100において開孔71は、蓋筺体50を厚み方向に貫通する貫通孔であるが、これに限定されるものではない。
【0064】
開孔71からの液体燃料の漏洩を防止するために、開孔71の開孔径は十分に小さいことが好ましく(たとえば直径100〜500μm程度、好ましくは100〜300μm)、あるいは、燃料電池外部への液体燃料の漏出を防止するための気液分離膜(たとえば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデンまたはポリエチレン等からなる多孔質膜)を開孔71内に設けてもよい。
【0065】
(変形例)
本実施形態の燃料電池は、既述した変形例に限定されるものではなく、たとえば以下のような変形例をも含む。本実施形態で述べた変形例は、後述する他の実施形態にも適用できる。
【0066】
(1)上記実施形態では、介在層として、燃料供給室の開口を覆うように配置される第1層1と、第1層1上に積層される第2層2との2層構造のものを使用したが、第1層1と同様の機能特性を有する領域と第2層2と同様の機能特性を有する領域を備えた、1層構造のものを介在層として使用することができる。ここでいう「1層構造」とは、1つの部材から構成されており、2つの部材の組み合わせではないことを意味している。このような1層構造の介在層は、2層構造で生じ得る第1層と第2層との密着性不良(隙間の形成)が生じ得ない点で有利である。界面の一部に隙間が形成されると、隙間に副生ガスが滞留して第2層面内において燃料の過剰供給や、燃料不足といった気化燃料の透過量にバラツキが生じたり、副生ガスの圧力で上記隙間が広がり燃料供給室が閉塞し燃料供給を妨げたりするおそれがある。
【0067】
より具体的には、1層構造の介在層として、その厚み方向における燃料供給室60側の領域である、上記第1層1と同様の機能特性を有する(測定媒体をメタノールとしたときのバブルポイントが30kPa以上である)第1領域と、その厚み方向における単位電池30側の領域である、上記第2層2と同様の機能特性を有する(気化燃料を透過可能な)第2領域とを備えた層を用いることができる。1層構造の介在層が有する第1領域のバブルポイントは、1層構造の介在層のバブルポイントと同義である。第1層1と第2層2との関係と同様、第2領域のバブルポイントは第1領域のそれより小さく、介在層全体としてのバブルポイントは、バブルポイントがより大きい領域のそれと一致するからである。
【0068】
1層構造の介在層は、たとえば、第2層として使用可能な多孔質層の厚み方向における一方の領域のみを親水化処理して、当該領域のバブルポイントを上げるなどの方法により作製することができる。
【0069】
このような1層構造の介在層は、2層構造で生じ得る第1層と第2層との密着性不良(隙間の形成)が生じ得ない点で有利である。界面の一部に隙間が形成されていると、第2層面内において気化燃料の透過量にバラツキが生じ、燃料極に対して均一な燃料供給ができず、出力が低下する可能性があるが、1層の構造の介在層であれば、このような問題は生じ得ない。一方、2層構造の介在層を使用する場合には、上記問題に対処するために、ボルト・ナットまたはネジなどの締結部材などを用いて燃料電池を上下面から締め付けることにより、第1層と第2層との密着性を確保することが好ましい。
【0070】
(2)燃料供給室60の空間形状は図4に示されるものに限定されない。燃料供給室60は、たとえば図6に示されるような、枝分かれ状の複数の流路から形成されていてもよい。あるいは、複数のライン状の流路、サーペンタイン状の流路などから形成することもできる。図6は、燃料供給室の他の一例を示す図4と同様の概略断面図である。
【0071】
(3)図7は燃料供給部の他の一例を示す図4と同様の概略断面図である。図7に示されるように、燃料供給部は、介在層、燃料供給室60および燃料貯蔵室70のほか、さらに燃料輸送部材61を含むものであってもよい。燃料輸送部材61は、その少なくとも一部が燃料供給室60内に配置され、燃料貯蔵室70から燃料供給室60に毛細管現象を利用して液体燃料を輸送するための部材であり、第1層1の毛細管力を利用した液体燃料輸送を補助する役割を担う。
【0072】
燃料輸送部材61は、液体燃料に対して毛細管作用を示す材料からなる。このような毛細管作用を示す材料としては、アクリル系樹脂;ABS樹脂;ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂;ポリエチレンテレフタラート等のポリエステル系樹脂;ナイロン;ポリ塩化ビニル;ポリエーテルエーテルケトン;ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂;セルロースなどの高分子材料(プラスチック材料)からなる不規則な細孔を有する多孔質体;ステンレス、チタン、タングステン、ニッケル、アルミニウム、スチールなどの金属材料からなる不規則な細孔を有する多孔質体が挙げられる。多孔質体としては、上記金属材料からなる不織布、発泡体、焼結体や、上記高分子材料からなる不織布などを挙げることができる。また、上記高分子材料または金属材料からなり、毛細管として表面に規則的なまたは不規則なスリットパターン(溝パターン)を有する板状体を燃料輸送部材61として用いることもできる。
【0073】
燃料輸送部材61が有する細孔の細孔径は、重力に対して十分な毛細管現象が生じ、良好な吸い上げ高(燃料輸送部材の一端を液体燃料に浸漬したときの、毛細管現象による液体燃料の当該部材における到達可能位置を意味する)および吸い上げ速度(燃料輸送部材の一端を液体燃料に浸漬したときの、単位時間当たりに吸い上げられる液体燃料の体積を意味する)を得るために、0.1〜500μmとすることが好ましく、1〜300μmとすることがより好ましい。なお、燃料輸送部材61が有する細孔の細孔径は、水銀圧入法により測定される径である。
【0074】
燃料輸送部材61を構成する毛細管作用を示す材料としては、上記吸い上げ高および吸い上げ速度の観点から、30分後の揚水距離が10cm以上であるものを用いることが好ましく、15cm以上であるものを用いることがより好ましい。このようなものとしては、王子キノクロス(株)製の「ハトシート」、東レ(株)製の「導水シート」などがある。揚水距離とは、フェルト試験片の下端2cmを温度25℃の水中に浸し、一定時間(30分)放置後の水の到達高さを意味する。
【0075】
燃料輸送部材61の形状は、図7に示されるような短冊形状(より具体的には直方体形状)限定されず、燃料電池全体の形状、膜電極複合体の形状または燃料供給室の形状等に応じた適宜の形状とすることができる。直方体形状以外の他の例として、たとえば立方体形状、一端から他端に向かうに従い、幅が連続的または段階的に小さくまたは大きくなる形状(表面が台形や三角形である形状等)などの短冊形状が挙げられる。
【0076】
燃料輸送部材61の長さ(燃料貯蔵室70側の一端からこれに対向する他端までの距離)は特に制限されず、燃料電池全体の形状、膜電極複合体の形状または燃料供給室の形状等に応じた適宜の長さとすることができるが、燃料輸送部材61の一端を燃料貯蔵室70に保持された液体燃料に接触可能な位置に配置したときに、その他端が燃料極11(または第1層1)の端部(燃料貯蔵室70側とは反対側の端部)の略直下の位置に配置されるような長さまたはそれ以上の長さを有していることが好ましい。
【0077】
なお、「液体燃料に接触可能な位置」とは、図7に示されるように、燃料輸送部材61の一端が燃料貯蔵室70内部に位置する場合のほか、燃料輸送部材61の一端が燃料供給室60と燃料貯蔵室70とを仕切る壁(箱筺体40の一部分である)の内部に位置する場合などを含む。
【0078】
(4)燃料供給部は、燃料供給室と燃料貯蔵室とを含むものに限定されない。たとえば、燃料供給室60が液体燃料を収容する燃料貯蔵室70を兼ねた構成とし、燃料貯蔵室70(および燃料輸送部材61)を省略してもよい。
【0079】
(5)燃料電池の層構成は、図1〜5に示されるものに限定されるものではなく、たとえば図8に示されるような、燃料供給室60の両面に単位電池30が配置された構成であってもよい。図8は、燃料供給室60の両面に単位電池30が配置された燃料電池の一例を示す、図5と同様の概略断面図である。かかる構成においては、燃料供給室60は、上下2つの燃料極11に対して燃料を供給するために、上下面ともに開放されている必要があることから、箱筺体40として、上下面が開いた空間を有する部材が用いられる。このような燃料供給室60の両面に単位電池30が配置された燃料電池は、2つの単位電池に対して1つの燃料供給部で足りることから、燃料電池の薄型化を図ることができるとともに、燃料電池の単位体積当たりの出力を向上させることができる。なお、図8に示される実施形態においては、図示されるように、第1貫通穴91は、これに接続され、箱筐体40の側壁を横方向に延びる排出経路を有しており、副生ガスはこの排出経路を通って箱筐体40の側面から排出させることができる。
【0080】
(6)燃料電池は、同一平面上に配列された単位電池30を2以上含むものであってもよい。この場合において、燃料供給室60は、単位電池30ごとに設けられてもよいし、単位電池30より少ない数だけ設けられてもよい。
【0081】
(7)燃料電池の外形形状は、上記実施の形態の形状に限定されるものではない。たとえば、燃料電池の厚み方向からみたときの形状(平面形状)は、長方形のほか、正方形などであることができる。
【0082】
(8)燃料電池は、燃料貯蔵室に収容された液体燃料を燃料供給室に圧送するためのポンプなどの圧送手段を備えることができる。燃料供給室内を短時間で満たすことができるため、燃料電池の起動性を向上させることができる。
【0083】
<第2の実施形態>
図9は本実施形態の燃料電池を示す概略断面図である。本実施形態の燃料電池200は、燃料供給室60と単位電池30との間に配置される介在層が、第3層3をさらに含むこと以外は上記第1の実施形態と同様である。図10は、燃料電池200で使用されている第3層3を示す概略上面図である。以下、本実施形態の特徴である第3層について詳細に説明する。なお、上記第1の実施形態で述べた各種変形例は、本実施形態にも同様に適用することができる。
【0084】
第3層は、第1層と第2層との間に配置され、液体燃料が透過可能な厚み方向に貫通する貫通孔を有する層であり、少なくとも第1層と第2層とを密着性良く面接合する役割を担い、好ましくは第2層側への液体燃料透過量を調整(制限)する機能を有する。第3層のとしては、たとえば図9および図10に示されるような、厚み方向に貫通する貫通孔を有する非多孔性シート(フィルム)を用いることができ、材料としては熱可塑性樹脂が好ましく例示できる。これを用いて、第1層/第3層/第2層からなる積層体を熱圧着することにより、各層間を密着性良く面接合することができる。介在層が第3層としての厚み方向に貫通する貫通孔を有し、面接合が可能な非多孔性シートを有する燃料電池は、以下の点において有利である。
【0085】
(a)第3層を介して第1層と第2層とを密着性良く接合することができるため、第1層と第2層との間に副生ガスが滞留することがなく、第2層面内における気化燃料透過量のバラツキを抑制することができ、これにより燃料極に対して均一な燃料供給を行なうことができ、出力を向上させることが可能になる。また、第3層が樹脂からなる場合は、発電部の急激な温度上昇に対し、熱を液体燃料に伝達しにくくする効果がある。その結果、液体燃料の温度上昇が緩慢となり、液体燃料を比較的低い温度に安定的に維持できるようになるため、燃料極に供給される気化燃料の供給量を安定させることができる。このことは、燃料電池の信頼性向上に寄与する。
【0086】
(b)第3層に形成される貫通孔の数や開孔径により、第2層側への液体燃料透過量、ひいては燃料極への気化燃料供給量を適切な量に調整(制限)することができる。これにより、燃料のクロスオーバーの防止または抑制、および燃料供給の安定化を図ることができる。貫通孔の数は特に制限されないが、複数個存在することが好ましく、第2層面内における気化燃料透過量を均一化する観点から、これらを第3層における燃料供給室(箱筐体の凹部)の直上の領域に均一に分布させることが好ましい。貫通孔の開孔径(直径)は、たとえば、0.1〜5mm程度とすることができる。
【0087】
(c)第3層により第1層と第2層との間の良好な面接合が可能であるため、ボルト・ナットまたはネジなどの締結部材などを用いた燃料電池の締め付けが不要となり、燃料電池の薄型化を図ることができる。
【0088】
(d)熱圧着により容易に介在層を作製することができるため、燃料電池製造工程の簡略化、製造効率の向上を図ることができる。
【0089】
上述の熱可塑性樹脂シートのほか、第3層は、たとえば次のものから形成されるものであってもよい。
【0090】
1)接着性を有する樹脂または樹脂組成物から形成される多孔質層、たとえば、ホットメルト系接着剤や硬化型接着剤などの接着剤から形成される多孔質層。当該接着剤を用いる場合、第3層は、接着剤層、すなわち、当該接着剤またはその硬化物からなる多孔質層である。このような第3層を用いる場合であっても、上記(a)〜(c)と同様の効果を得ることができる。第2層側への液体燃料透過量は、多孔質層が有する細孔によって調整(制限)される。
【0091】
2)厚み方向に貫通する貫通孔を有する、好ましくは非多孔性の金属板を含むもの。この場合、金属板の両面には、第1層および第2層との良好な密着性を確保するために、接着剤層が形成され、したがって、第3層は、接着剤層/金属板/接着剤層の3層構造となる。接着剤層は、接着剤またはその硬化物からなる多孔質層である。接着剤は、ホットメルト系接着剤や硬化型接着剤などであることができる。このような第3層を用いる場合であっても、上記(a)〜(c)と同様の効果を得ることができる。第2層側への液体燃料透過量は、熱可塑性樹脂シートの場合と同様、金属板に形成される貫通孔の数や開孔径により調整(制御)できる。接着剤層は貫通孔を塞がないように形成されることが好ましい。貫通孔の数は特に制限されないが、複数個存在することが好ましく、第2層面内における気化燃料透過量を均一化する観点から、これらを金属板における燃料供給室(箱筐体の凹部)の直上の領域に均一に分布させることが好ましい。貫通孔の開孔径(直径)は、たとえば、0.1〜5mm程度とすることができる。
【0092】
厚み方向に貫通する貫通孔を有する非多孔性シート(フィルム)を第3層とする場合や、厚み方向に貫通する貫通孔を有する非多孔性金属板を含むものを第3層とする場合には、第1層の第2貫通穴の直上の位置にも貫通孔を形成し、該貫通孔と、箱筐体の第1貫通穴および第1層の第2貫通穴とによって副生ガス排出部を構築する。一方、接着性を有する樹脂または樹脂組成物から形成される多孔質層を第3層とする場合は、貫通孔の加工は特段不要である。
【0093】
本発明の燃料電池は、固体高分子型燃料電池またダイレクトアルコール型燃料電池などであることができ、特にダイレクトアルコール型燃料電池(とりわけ、ダイレクトメタノール型燃料電池)として好適である。本発明の燃料電池において使用することのできる液体燃料としては、たとえば、メタノール、エタノールなどのアルコール類;ジメトキシメタンなどのアセタール類;ギ酸などのカルボン酸類;ギ酸メチルなどのエステル類;ならびにこれらの水溶液を挙げることができる。液体燃料は1種に限定されず、2種以上の混合物であってもよい。コストの低さや体積あたりのエネルギー密度の高さ、発電効率の高さなどの点から、メタノール水溶液または純メタノールが好ましく用いられる。
【0094】
本発明の燃料電池は、電子機器、特には、携帯電話、電子手帳、ノート型パソコンに代表される携帯機器などの小型電子機器用の電源として好適に用いることができる。
【実施例】
【0095】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0096】
<実施例1>
以下の手順で図1と類似の構成を有する燃料電池を作製した。
【0097】
(1)膜電極複合体の作製
Pt担持量32.5重量%、Ru担持量16.9重量%の触媒担持カーボン粒子(TEC66E50、田中貴金属社製)と、電解質である20重量%のナフィオン(登録商標)のアルコール溶液(アルドリッチ社製)と、n−プロパノールと、イソプロパノールと、ジルコニアボールとを、所定の割合でフッ素系樹脂製の容器に入れ、攪拌機を用いて500rpmで50分間の混合を行なうことにより、燃料極用の触媒ペーストを調製した。また、Pt担持量46.8重量%の触媒担持カーボン粒子(TEC10E50E、田中貴金属社製)を用い、燃料極用の触媒ペーストと同様にして空気極用の触媒ペーストを調製した。
【0098】
また、縦23mm、横28mmに切り出したカーボンペーパー(GDL25BC、SGL社製)を2枚用意し、それぞれアノード導電性多孔質層、カソード導電性多孔質層とした。
【0099】
上記アノード導電性多孔質層上に、上記の燃料極用触媒ペーストを触媒担持量が約3mg/cm2となるように、縦22mm、横27mmのウィンドウを有したスクリーン印刷版を用いて塗布し、乾燥させることにより、アノード導電性多孔質層の中央にアノード触媒層が形成された、厚み約100μmの燃料極11を作製した。また、カソード導電性多孔質層上に、上記の空気極用触媒ペーストを触媒担持量が約1mg/cm2となるように、縦22mm、横27mmのウィンドウを有したスクリーン印刷版を用いて塗布し、乾燥させることにより、カソード導電性多孔質層の中央にカソード触媒層が形成された、厚み約50μmの空気極12を作製した。
【0100】
次に、厚さ約175μmのパーフルオロスルホン酸系イオン交換膜(ナフィオン(登録商標)117、デュポン社製)を縦23mm、横28mmに切断して電解質膜10とし、上記燃料極11と電解質膜10と上記空気極12とをこの順で、それぞれの触媒層が電解質膜10に対向するように重ね合わせた後、130℃、2分間の熱圧着を行ない、燃料極11および空気極12を電解質膜10に接合した。上記重ね合わせは、燃料極11と空気極12の電解質膜10の面内における位置が一致するように、かつ燃料極11と電解質膜10と空気極12の中心が一致するように行なった。ついで、得られた積層体の端部を切断することにより、縦22mm、横27mmの膜電極複合体20を作製した。
【0101】
(2)単位電池の作製
厚さ100μm、縦22mm、横27mmのステンレス板(NSS445M2、日新製鋼社製)を用意し、この中央領域に、開孔径φ0.6mmである複数の貫通孔(開孔パターン:千鳥60°ピッチ0.8mm)を、フォトレジストマスクを用いたウェットエッチングにて両面から加工することにより、厚み方向に貫通する貫通孔を複数備えるステンレス板を2枚作製した。ついで、耐食性向上と電気抵抗低減のため、これらのステンレス板の表面に金メッキを施し、それぞれアノード集電層21およびカソード集電層22とした。なお、アノード集電層21およびカソード集電層22には、評価時に電流を掃引するための電気的接点が設けられている。
【0102】
次に、上記アノード集電層21を燃料極11上に、カーボン粒子とエポキシ樹脂とからなる導電性接着剤層を介して積層するとともに、カソード集電層22を空気極12上に、カーボン粒子とエポキシ樹脂とからなる導電性接着剤層を介して積層し、これらを熱圧着により接合して、縦22mm、横27mmの単位電池30を作製した。なお、アノード集電層21およびカソード集電層22は、それらの貫通孔が形成された領域がそれぞれ燃料極11、空気極12の直上に配置されるように積層した。
【0103】
(3)介在層の作製
介在層の第1層1として、図11に示したような縦25mm、横27mm、厚み0.1mmのポリフッ化ビニリデンからなる多孔質フィルム(MILLIPORE製のデュラポアメンブレンフィルター)を用いた。この多孔質フィルムが有する細孔の最大細孔径は0.1μmであり、またJIS K 3832に準拠したバブルポイントは、測定媒体をメタノールとしたとき、115kPaであった。
【0104】
図11に示されるように、第1層1は、「穴群A」(点線枠で囲まれた領域に含まれる5個)と記した厚み方向に貫通する貫通穴(内径1.0mm)と、「穴群B」(他の点線枠で囲まれた領域に含まれる12個)と記した厚み方向に貫通する貫通穴(内径1.0mm)とを有している。穴群Aは、第1層の下に配置される燃料供給室内に液体燃料が入る際、燃料供給室内に存在する空気を抜くための穴である(空気を抜くことにより液体燃料が入る)。穴群Aを設けると、第1層が完全に燃料で濡れた後も燃料供給室内の空気を抜くことが可能であるため、燃料供給室に空気が滞留することはなく、燃料供給室内は常に液体燃料で満たされることになる。なお、単位電池30は、この穴群A上には配置されないため、副生ガスが穴群Aを通って燃料供給室内に侵入することはない。一方、穴群Bは、副生ガスを燃料電池外に排出するための上述の「第2貫通穴92」であり、副生ガス排出部の一部を構成する。
【0105】
また、介在層の第2層2として、図12に示したような縦25mm、横27mm、厚み0.2mmのポリテトラフルオロエチレンからなる多孔質フィルム(日東電工(株)製の「テミッシュ〔TEMISH(登録商標)〕NTF2122A−S06」)を用いた。この多孔質フィルムのJIS K 3832に準拠したバブルポイントは、測定媒体をメタノールとしたとき、18kPaであった。
【0106】
上記第1層1上に第2層2を積層し(図11、12のA−A’面が一致するように積層)、すべての側面の層境界部を接着剤で接合して介在層を作製した。介在層のバブルポイントは、これを構成する層のうち最もバブルポイントの大きい層の値と一致する。したがって、本実施例の介在層のバブルポイントは115kPaである。
【0107】
(4)燃料供給部の作製
図13に示したような、一方の面に縦23.5mm、横1.0mm、深さ0.4mmの凹部(燃料供給室となる空間)が5本形成され、さらに内径1.0mmの第1貫通穴91が図示される位置に合計12個形成された縦30mm、横27mm、厚み0.6mmの箱筺体40を用意した。この箱筺体40は、図1に示されるものと同様の形状を有しており、燃料供給室60となる凹部側方に燃料貯蔵室70を構成する凹部を備えたものである。介在層の第1層1側が箱筐体40側になるよう、ポリオレフィン系接着剤を介して箱筺体40の凹部上に介在層を積層させた後(図11〜13のA−A’面が一致するように積層)、熱圧着を行なうことにより、介在層と箱筺体40とを接合した。第1層1の第2貫通穴92(穴群B)は、箱筺体40の第1貫通穴91の直上に配置されている。
【0108】
(5)単位電池、燃料供給部の端面の封止
単位電池30の長辺側端面が、燃料供給部(介在層および箱筐体40)のA−A’面と重なるように単位電池30を介在層上に積層した。次に、単位電池30および燃料供給部の双方の端面に、マスクを用いて、エポキシ樹脂を含有する塗布液を塗布し硬化させることにより、エポキシ樹脂からなる封止層で被覆した。これにより、燃料電池外部から燃料極に空気が入ったり、燃料が燃料電池外部へ漏れたりすることを防ぐことができる。
【0109】
(6)燃料電池の作製
単位電池30および介在層の燃料貯蔵室側端面に、エポキシ樹脂を塗布し硬化させることにより、封止層80(燃料侵入防止層)を形成した。最後に、空気極12に空気を供給するための開口51と、開孔71(圧力調整孔)とを備えた蓋筐体50を、単位電池30上に配置することにより燃料電池を得た。
【0110】
<実施例2>
介在層の第1層1として、実施例1で用いた多孔質フィルムと同じ形状(図11に示される形状であり、穴群Aおよび穴群Bを有している)、厚みおよび材質であるが細孔の最大細孔径が異なる多孔質フィルム(MILLIPORE製のデュラポアメンブレンフィルター フィルターコード:DVPP)を用いた。この多孔質フィルムが有する細孔の最大細孔径は0.65μmであり、またJIS K 3832に準拠したバブルポイントは、測定媒体をメタノールとしたとき、42kPaであった。
【0111】
第2層2として実施例1と同じものと用い、上記第1層1上に第2層2を積層し(図11、12のA−A’面が一致するように積層)、すべての側面の層境界部を接着剤で接合して介在層を作製した。この介在層を燃料供給部に適用したこと以外は実施例1と同様にして燃料電池を得た。本実施例の介在層のバブルポイントは、42kPaである。
【0112】
<実施例3>
以下の手順で図9と類似の構成を有する燃料電池を作製した。
【0113】
介在層の第3層3として、図14に示したような縦25mm、横27mm、厚み0.07mmの熱可塑性フィルム(日東シンコー(株)製の「FB−ML4」)を用いた。この第3層3は、「穴群C」(点線枠で囲まれた領域に含まれる25個)と記した厚み方向に貫通する貫通穴(内径1.0mm)を有するとともに、第1層1に設けられた穴群AおよびBの直上の位置にも同じ数だけ貫通穴(内径1.0mm)を有している(図14参照)。第3層3を構成するフィルム自体は燃料不透過性であるが、燃料は穴群Cを通って第1層1側から第2層2側へ透過可能である。
【0114】
第1層1および第2層2として実施例1と同じものと用い、第1層1、第3層、第2層の順に積層し(図11、12および14のA−A’面が一致するように積層)、130℃、10分間の熱圧着を行ない、介在層を作製した。この介在層を燃料供給部に適用したこと以外は実施例1と同様にして燃料電池を得た。本実施例の介在層のバブルポイントは115kPaである。
【0115】
<比較例1>
介在層の第1層として、縦25mm、横27mm、厚み0.1mmの超高分子量ポリエチレンからなる多孔質フィルム(日東電工(株)製の「サンマップ LCシリーズ」)を用いること以外は実施例1と同様にして介在層を作製し、この介在層を用いること以外は実施例1と同様にして燃料電池を作製した。本比較例で用いた第1層のJIS K 3832に準拠したバブルポイントは、測定媒体をメタノールとしたとき、8kPaであった。本比較例の介在層のバブルポイントは18kPaである(第2層のバブルポイントに相当)。
【0116】
(燃料電池の発電特性評価)
燃料としてメタノール水溶液を用いパッシブ供給にて燃料供給を行ない、得られた燃料電池を稼動させ、充放電装置(菊水電子工業(株)製の「SPEC20526」)を用いてI−V測定を行ない、最大瞬間出力を評価するとともに、同装置を用いて定電流測定(電流密度75mA/cm2)を行なった。定電流負荷を与えた5min後の電圧を基準にして、測定2hr後の電圧と当該基準電圧との差によって出力安定性を評価した。電圧の差が大きいほど、副生ガスが燃料供給室に侵入することなどに起因して出力安定性を欠いていることとなる。
【0117】
供給するメタノール水溶液の濃度は、実施例1、2および比較例1の燃料電池については、12mol/dm3とした。一方、実施例3の燃料電池については、介在層の第3層によりメタノールクロスオーバーが抑制され、実施例1、2および比較例1と同じ濃度の燃料を用いた場合、相対的に電池温度が低くなるため、実施例1、2および比較例1と同等の電池温度となる濃度23mol/dm3のメタノール水溶液を燃料として用いた。
【0118】
【表1】
【0119】
実施例1の燃料電池は、瞬間最大出力としては比較例1と同程度であるものの、出力安定性において優れるものであった。介在層のバブルポイントが大きいことから、副生ガスが燃料供給室に侵入することがなく、安定した燃料供給が可能となったためと考えられる。実施例2の燃料電池は、瞬間最大出力、出力安定性のいずれも実施例1と同程度であった。実施例1と同様に、副生ガスが燃料供給室に侵入することなく、安定した燃料供給が可能となったためと考えられる。実施例3の燃料電池は、瞬間最大出力、出力安定性のいずれにおいても優れるものであった。瞬間最大出力が向上したのは、より高濃度の燃料を使用できるようになったため、燃料供給が良好となり限界電流密度が向上したためと考えられる。また、実施例3の燃料電池は、実施例1と比較してさらに出力安定性が向上しているが、これは、第1層と第2層が、第3層によって面接合されていることにより第1層と第2層の間に隙間が生じにくくなり、より安定した燃料供給がなされたためと考えられる。比較例1の燃料電池では、出力安定性が低すぎて2hrの定電流負荷を行なうことができず、セル電圧が0.1V以下となったため測定を終えた(5min後と比較した電圧差は0.3V以上)。
【符号の説明】
【0120】
1 第1層、2 第2層、3 第3層、10 電解質膜、11 燃料極、12 空気極、20 膜電極複合体、21 アノード集電層、22 カソード集電層、30 単位電池、40 箱筺体、50 蓋筺体、51 開口、60 燃料供給室、61 燃料輸送部材、70 燃料貯蔵室、71 開孔、80 封止層、90 副生ガス排出部、91 第1貫通穴、92 第2貫通穴、100,200 燃料電池。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料極、電解質膜および空気極をこの順で有する単位電池と、前記単位電池の前記燃料極側に配置され、前記燃料極に燃料を供給するための燃料供給部とを備える燃料電池であって、
前記燃料供給部は、前記燃料極側が開放された空間からなり、液状の前記燃料を流通させるかまたは収容するための燃料供給室と、前記燃料供給室の開口を覆うように前記燃料供給室と前記単位電池との間に配置される介在層とを含み、
前記介在層は、その厚み方向における前記燃料供給室側に設けられ、測定媒体をメタノールとしたときのバブルポイントが30kPa以上である第1領域と、その厚み方向における前記単位電池側に設けられ、気化した前記燃料を透過可能な第2領域とを有する燃料電池。
【請求項2】
前記介在層は、前記燃料供給室の開口を覆うように前記燃料供給室上に配置され、測定媒体をメタノールとしたときのバブルポイントが30kPa以上である第1層と、前記第1層における単位電池側表面に積層され、気化した前記燃料を透過可能な第2層とから構成される2層構造を有する請求項1に記載の燃料電池。
【請求項3】
前記第1層と前記第2層との間に、厚み方向に貫通する貫通孔を有する第3層をさらに備える請求項2に記載の燃料電池。
【請求項4】
前記第3層は、厚み方向に貫通する複数の貫通孔を有する熱可塑性樹脂シートである請求項3に記載の燃料電池。
【請求項5】
前記第3層は、接着性を有する樹脂または樹脂組成物から形成される多孔質層である請求項3に記載の燃料電池。
【請求項6】
前記第3層は、厚み方向に貫通する複数の貫通孔を有する金属板を含む請求項3に記載の燃料電池。
【請求項7】
前記単位電池は、前記燃料極上に積層されるアノード集電層と、前記空気極上に積層されるカソード集電層とをさらに含む請求項1〜6のいずれかに記載の燃料電池。
【請求項8】
前記燃料は、純メタノールまたはメタノール水溶液である請求項1〜7のいずれかに記載の燃料電池。
【請求項1】
燃料極、電解質膜および空気極をこの順で有する単位電池と、前記単位電池の前記燃料極側に配置され、前記燃料極に燃料を供給するための燃料供給部とを備える燃料電池であって、
前記燃料供給部は、前記燃料極側が開放された空間からなり、液状の前記燃料を流通させるかまたは収容するための燃料供給室と、前記燃料供給室の開口を覆うように前記燃料供給室と前記単位電池との間に配置される介在層とを含み、
前記介在層は、その厚み方向における前記燃料供給室側に設けられ、測定媒体をメタノールとしたときのバブルポイントが30kPa以上である第1領域と、その厚み方向における前記単位電池側に設けられ、気化した前記燃料を透過可能な第2領域とを有する燃料電池。
【請求項2】
前記介在層は、前記燃料供給室の開口を覆うように前記燃料供給室上に配置され、測定媒体をメタノールとしたときのバブルポイントが30kPa以上である第1層と、前記第1層における単位電池側表面に積層され、気化した前記燃料を透過可能な第2層とから構成される2層構造を有する請求項1に記載の燃料電池。
【請求項3】
前記第1層と前記第2層との間に、厚み方向に貫通する貫通孔を有する第3層をさらに備える請求項2に記載の燃料電池。
【請求項4】
前記第3層は、厚み方向に貫通する複数の貫通孔を有する熱可塑性樹脂シートである請求項3に記載の燃料電池。
【請求項5】
前記第3層は、接着性を有する樹脂または樹脂組成物から形成される多孔質層である請求項3に記載の燃料電池。
【請求項6】
前記第3層は、厚み方向に貫通する複数の貫通孔を有する金属板を含む請求項3に記載の燃料電池。
【請求項7】
前記単位電池は、前記燃料極上に積層されるアノード集電層と、前記空気極上に積層されるカソード集電層とをさらに含む請求項1〜6のいずれかに記載の燃料電池。
【請求項8】
前記燃料は、純メタノールまたはメタノール水溶液である請求項1〜7のいずれかに記載の燃料電池。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−204063(P2012−204063A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−65992(P2011−65992)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
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