燃料電池
【課題】簡単な構成で、積層方向の反応ガス供給分布を抑制することができ、良好な発電を確実に行うことを可能にする。
【解決手段】燃料電池10は、複数の単位セル20を積層して構成される。燃料電池10には、各単位セル20の積層方向に互いに連通して、第1酸化剤ガス供給連通孔40a1及び第2酸化剤ガス供給連通孔40a2と、第1燃料ガス供給連通孔42a1及び第2燃料ガス供給連通孔42a2とが設けられる。第1酸化剤ガス供給連通孔40a1と第2酸化剤ガス供給連通孔40a2とは、仕切り部41により互いに独立して設けられる一方、第1燃料ガス供給連通孔42a1と第2燃料ガス供給連通孔42a2とは、仕切り部43により互いに独立して設けられる。
【解決手段】燃料電池10は、複数の単位セル20を積層して構成される。燃料電池10には、各単位セル20の積層方向に互いに連通して、第1酸化剤ガス供給連通孔40a1及び第2酸化剤ガス供給連通孔40a2と、第1燃料ガス供給連通孔42a1及び第2燃料ガス供給連通孔42a2とが設けられる。第1酸化剤ガス供給連通孔40a1と第2酸化剤ガス供給連通孔40a2とは、仕切り部41により互いに独立して設けられる一方、第1燃料ガス供給連通孔42a1と第2燃料ガス供給連通孔42a2とは、仕切り部43により互いに独立して設けられる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解質膜の両側に一対の電極が設けられる電解質膜・電極構造体とセパレータとを有して積層される複数の単位セルを備え、反応ガスを反応面に沿って流通させる反応ガス流路が設けられるとともに、前記単位セルの積層方向に貫通し前記反応ガスを前記反応ガス流路に供給する反応ガス供給連通孔と、前記積層方向に貫通し前記反応ガスを前記反応ガス流路から排出する反応ガス排出連通孔とが設けられる燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、固体高分子型燃料電池は、高分子イオン交換膜からなる電解質膜の両側に、それぞれアノード電極及びカソード電極を設けた電解質膜・電極構造体(MEA)を、一対のセパレータによって挟持する単位セルを備えている。燃料電池は、通常、複数の単位セルが積層されて燃料電池スタックを構成するとともに、定置用の他、車載用として燃料電池車両に組み込まれることにより、車載用燃料電池システムとして使用されている。
【0003】
上記の燃料電池では、セパレータの面内に、アノード電極に燃料ガスを流すための燃料ガス流路(以下、反応ガス流路ともいう)と、カソード電極に酸化剤ガスを流すための酸化剤ガス流路(以下、反応ガス流路ともいう)とが設けられている。さらに、各単位セル毎又は複数の単位セル毎に、冷却媒体を流すための冷却媒体流路がセパレータの面方向に沿って設けられている。
【0004】
この種の燃料電池では、単位セルの積層方向に貫通して燃料ガスを流すための燃料ガス供給連通孔(反応ガス供給連通孔)及び燃料ガス排出連通孔(反応ガス排出連通孔)と、酸化剤ガスを流すための酸化剤ガス供給連通孔(反応ガス供給連通孔)及び酸化剤ガス排出連通孔(反応ガス排出連通孔)と、冷却媒体を流すための冷却媒体供給連通孔及び冷却媒体排出連通孔とを内部に備える、所謂、内部マニホールド型燃料電池を構成する場合が多い。
【0005】
この種の内部マニホールド型燃料電池として、例えば、特許文献1に開示された燃料電池が知られている。この燃料電池は、電解質板とその両側に設けられたアノード及びカソードからなる単位電池をセパレータを介して積層した積層体からなり、前記セパレータは、順に第一、第二、第三及び第四の周辺部を有する四角形状をしている。
【0006】
そして、燃料電池は、セパレータの対向する第一及び第三の周辺部に設けられた積層方向に貫通する複数対の燃料ガス用貫通孔であって、第一の周辺部に設けられた燃料ガス用貫通孔は、燃料ガス流入用パイプに連通しており、第三の周辺部に設けられた燃料ガス用貫通孔は、燃料ガス排出用パイプに連通している燃料ガス用貫通孔と、前記セパレータの対向する第二及び第四の周辺部(前記第一及び第三の周辺部に直交する)に設けられた積層方向に貫通する複数対の酸化剤ガス用貫通孔であって、第二の周辺部に設けられた酸化剤ガス用貫通孔は、酸化剤ガス流入用パイプに連通しており、第四の周辺部に設けられた酸化剤ガス用貫通孔は、酸化剤ガス排出用パイプに連通している酸化剤ガス用貫通孔と、前記燃料ガス用貫通孔の各対向する対を連通させるように、前記セパレータの一方の面に設けられた複数の溝部からなる燃料ガス用流路域と、前記酸化剤ガス用貫通孔の各対向する対を連通させるように、前記セパレータの他方の面に設けられた複数の溝部からなる酸化剤ガス用流路域と、隣接する前記燃料ガス用流路域を分離するように、前記セパレータの一方の面に設けられた第一の隔壁と、隣接する前記酸化剤ガス用流路域を分離するように、前記セパレータの他方の面に設けられた第二の隔壁とを有し、もって前記セパレータの各流路域を流通するガスの流量を分離独立して調節し得ることを特徴としている。
【0007】
これにより、セパレータの複数の燃料ガス用流路域及び複数の酸化剤ガス用流路域を流れる燃料ガス及び酸化剤ガスの流量を独立して異なるようにでき、電解質板上における酸化還元反応を実質的に均一化させることができる、としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3319609号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
一般的に、多数の単位セルが積層された燃料電池では、例えば、低負荷発電時に、反応ガス供給連通孔の奥側の流速が遅いとともに、冷却媒体流量が多く、しかも端部放熱の影響で生成水が結露し易くなる。このため、単位セルに電圧低下が惹起され易いという問題がある。
【0010】
一方、燃料電池の起動時には、反応ガス供給連通孔の入口側の流速が速くなるため、ガスの飛び越えが発生し易くなり、単位セルの電圧が低下するという問題がある。
【0011】
本発明は、この種の問題を解決するものであり、簡単な構成で、積層方向の反応ガス供給分布を抑制することができ、良好な発電を確実に行うことが可能な燃料電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、電解質膜の両側に一対の電極が設けられる電解質膜・電極構造体とセパレータとを有して積層される複数の単位セルを備え、酸化剤ガス又は燃料ガスである反応ガスを反応面に沿って流通させる反応ガス流路が設けられるとともに、前記単位セルの積層方向に貫通し前記反応ガスを前記反応ガス流路に供給する反応ガス供給連通孔と、前記積層方向に貫通し前記反応ガスを前記反応ガス流路から排出する反応ガス排出連通孔とが設けられる燃料電池に関するものである。
【0013】
この燃料電池では、反応ガス供給連通孔は、積層方向の一端側から他端側に向かって反応ガスを流通させる第1反応ガス供給連通孔と、前記積層方向の他端側から一端側に向かって前記反応ガスを流通させる第2反応ガス供給連通孔とを分割して備えている。
【0014】
また、この燃料電池では、第1反応ガス供給連通孔の開口寸法は、第2反応ガス供給連通孔の開口寸法と同一寸法に設定されることが好ましい。
【0015】
さらに、この燃料電池では、反応ガス供給連通孔は、積層方向の一端側から他端側に向かって反応ガスを流通させる第1反応ガス供給連通孔及び第2反応ガス供給連通孔を分割して備えるとともに、前記第1反応ガス供給連通孔の開口寸法は、前記第2反応ガス供給連通孔の開口寸法とは異なる寸法に設定されている。
【0016】
さらにまた、この燃料電池では、反応ガス排出連通孔は、互いに分割される第1反応ガス排出連通孔及び第2反応ガス排出連通孔を備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明では、反応ガスは、第1反応ガス供給連通孔に沿って単位セルの積層方向一端側から他端側に流通する一方、第2反応ガス供給連通孔に沿って積層方向他端側から一端側に流通している。このため、第1反応ガス供給連通孔と第2反応ガス供給連通孔とでは、反応ガスが互いに対向流となり、積層された複数の単位セルに対して前記反応ガスを均等に供給することができる。
【0018】
従って、特に、低負荷運転時であっても、簡単な構成で、積層方向の反応ガス供給分布を抑制することが可能になり、良好な発電を確実に行うことができる。
【0019】
また、本発明では、互いに並行流である第1反応ガス供給流路と第2反応ガス供給流路とに、それぞれ反応ガスが供給されると、開口寸法の小さな流路では、反応ガスの流速が速くなる一方、開口寸法の大きな流路では、流量が増加している。
【0020】
これにより、反応ガスは、開口寸法の小さな流路に沿って積層方向に迅速に供給されるため、例えば、ガス置換速度(例えば、残留する酸化剤ガスと燃料ガスとの置換速度)を上げることが可能になる。このため、簡単な構成で、積層方向の反応ガス供給分布を抑制することができ、良好な発電を確実に行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る燃料電池の概略斜視説明図である。
【図2】前記燃料電池が組み込まれる車載用燃料電池システムの概略説明図である。
【図3】前記燃料電池を構成する単位セルの分解斜視説明図である。
【図4】前記単位セルを構成するアノード側セパレータの正面説明図である。
【図5】起動後の加速時における単位セルの積層位置とセル電圧との関係説明図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る燃料電池が組み込まれる車載用燃料電池システムの概略構成図である。
【図7】前記燃料電池を構成する単位セルの分解斜視説明図である。
【図8】本発明の第3の実施形態に係る燃料電池の概略斜視説明図である。
【図9】前記燃料電池が組み込まれる車載用燃料電池システムの概略説明図である。
【図10】前記燃料電池を構成する単位セルの分解斜視説明図である。
【図11】低負荷発電時の単位セルの積層位置とセル電圧との関係説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1及び図2に示すように、本発明の第1の実施形態に係る燃料電池10は、例えば、車載用燃料電池システム12に組み込まれ、図示しない燃料電池車両(燃料電池自動車)に搭載される。
【0023】
燃料電池システム12は、燃料電池10と、前記燃料電池10に酸化剤ガスを供給する酸化剤ガス供給装置14と、前記燃料電池10に燃料ガスを供給する燃料ガス供給装置16と、前記燃料電池10に冷却媒体を供給するための冷却媒体供給装置18とを備える。
【0024】
燃料電池10は、複数の単位セル20を水平方向(図1中、矢印A方向)又は重力方向(図1中、矢印C方向)に積層して構成される。図3に示すように、各単位セル20は、例えば、パーフルオロスルホン酸の薄膜に水が含浸された固体高分子電解質膜22をカソード電極24とアノード電極26とで挟持した電解質膜・電極構造体(MEA)28を備える。
【0025】
カソード電極24及びアノード電極26は、カーボンペーパ等からなるガス拡散層と、白金合金(又はRu等)が表面に担持された多孔質カーボン粒子が前記ガス拡散層の表面に一様に塗布されて形成された電極触媒層とを有する。電極触媒層は、固体高分子電解質膜22の両面に形成される。
【0026】
電解質膜・電極構造体28は、鉛直方向(矢印C方向)に面方向を向けて立位姿勢で配置されるとともに、カソード電極24及びアノード電極26は、反応面が鉛直姿勢で且つ鉛直方向に長尺な縦長形状を有する。
【0027】
電解質膜・電極構造体28は、カソード側セパレータ30及びアノード側セパレータ32で挟持され、水平方向(矢印A方向)に沿って積層される。カソード側セパレータ30及びアノード側セパレータ32は、例えば、カーボンセパレータ又は金属セパレータで構成される。
【0028】
カソード側セパレータ30と電解質膜・電極構造体28との間には、鉛直方向に延在する酸化剤ガス流路(反応ガス流路)34が設けられるとともに、アノード側セパレータ32と前記電解質膜・電極構造体28との間には、鉛直方向に延在する燃料ガス流路(反応ガス流路)36が設けられる。互いに当接するカソード側セパレータ30とアノード側セパレータ32との間には、水平方向に延在する冷却媒体流路38が設けられる。
【0029】
燃料電池10の矢印C方向上端縁部には、各単位セル20の積層方向に互いに連通して、酸化剤ガス、例えば、酸素含有ガス(以下、空気ともいう)を供給する第1酸化剤ガス供給連通孔(第1反応ガス供給連通孔)40a1及び第2酸化剤ガス供給連通孔(第2反応ガス供給連通孔)40a2と、燃料ガス、例えば、水素含有ガス(以下、水素ガスともいう)を供給する第1燃料ガス供給連通孔(第1反応ガス供給連通孔)42a1及び第2燃料ガス供給連通孔(第2反応ガス供給連通孔)42a2とが設けられる。
【0030】
第1酸化剤ガス供給連通孔40a1と第2酸化剤ガス供給連通孔40a2とは、仕切り部41により互いに独立して設けられる一方、第1燃料ガス供給連通孔42a1と第2燃料ガス供給連通孔42a2とは、仕切り部43により互いに独立して設けられる。
【0031】
第1酸化剤ガス供給連通孔40a1は、積層方向の一端側から他端側に向かって(矢印A1方向)、酸化剤ガスを流通させる一方、第2酸化剤ガス供給連通孔40a2は、積層方向の他端側から一端側に向かって(矢印A2方向)、前記酸化剤ガスを流通させる。第1酸化剤ガス供給連通孔40a1の開口寸法は、第2酸化剤ガス供給連通孔40a2の開口寸法と同一寸法に設定される。
【0032】
第1燃料ガス供給連通孔42a1は、積層方向の一端側から他端側に向かって(矢印A1方向)、燃料ガスを流通させる一方、第2燃料ガス供給連通孔42a2は、積層方向の他端側から一端側に向かって(矢印A2方向)、前記燃料ガスを流通させる。第1燃料ガス供給連通孔42a1の開口寸法は、第2燃料ガス供給連通孔42a2の開口寸法と同一寸法に設定される。
【0033】
燃料電池10の矢印C方向下端縁部には、各単位セル20の積層方向に互いに連通して、酸化剤ガスを排出する酸化剤ガス排出連通孔40bと、燃料ガスを排出する燃料ガス排出連通孔42bとが設けられる。
【0034】
燃料電池10の矢印B方向両端縁部には、各単位セル20の積層方向に互いに連通して、冷却媒体を供給する冷却媒体供給連通孔44aと、前記冷却媒体を排出する冷却媒体排出連通孔44bとが設けられる。
【0035】
カソード側セパレータ30には、第1シール部材46が、一体的又は個別に設けられるとともに、アノード側セパレータ32には、第2シール部材48が、一体的に又は個別に設けられる。第1シール部材46及び第2シール部材48は、例えば、EPDM、NBR、フッ素ゴム、シリコンゴム、フロロシリコンゴム、ブチルゴム、天然ゴム、スチレンゴム、クロロプレーン、又はアクリルゴム等のシール材、クッション材、あるいはパッキン材を使用する。
【0036】
カソード側セパレータ30では、第1酸化剤ガス供給連通孔40a1及び第2酸化剤ガス供給連通孔40a2と酸化剤ガス排出連通孔40bとが、酸化剤ガス流路34に第1シール部材46を介して連通する。図4に示すように、アノード側セパレータ32では、第1燃料ガス供給連通孔42a1及び第2燃料ガス供給連通孔42a2と燃料ガス排出連通孔42bとが、燃料ガス流路36に第2シール部材48を介して連通する。
【0037】
図1及び図2に示すように、燃料電池10の積層方向両端には、エンドプレート50a、50bが配設され、前記エンドプレート50a、50b間が、図示しないタイロッドやケーシング等により締め付け保持される。エンドプレート50aには、第1酸化剤ガス供給連通孔40a1、第1燃料ガス供給連通孔42a1、酸化剤ガス排出連通孔40b、燃料ガス排出連通孔42b、冷却媒体供給連通孔44a及び冷却媒体排出連通孔44bが設けられる。エンドプレート50bには、第2酸化剤ガス供給連通孔40a2及び第2燃料ガス供給連通孔42a2が設けられる。
【0038】
図2に示すように、酸化剤ガス供給装置14は、大気からの空気を圧縮して供給するエアポンプ52を備え、前記エアポンプ52から空気供給流路54に前記空気が供給される。空気供給流路54は、第1空気供給流路54aと第2空気供給流路54bとに分岐される。第1空気供給流路54aは、第1酸化剤ガス供給連通孔40a1に連通する一方、第2空気供給流路54bは、第2酸化剤ガス供給連通孔40a2に連通する。酸化剤ガス排出連通孔40bには、空気排出流路56が連通し、大気中に排出される。
【0039】
燃料ガス供給装置16は、高圧水素を貯留する水素タンク58を備え、前記水素タンク58から水素供給流路60に水素ガスが供給される。水素供給流路60は、第1水素供給流路60aと第2水素供給流路60bとに分岐する。第1水素供給流路60aは、第1燃料ガス供給連通孔42a1に連通する一方、第2水素供給流路60bは、第2燃料ガス供給連通孔42a2に連通する。燃料ガス排出連通孔42bには、水素排出流路62が連通して燃料ガスが循環される。
【0040】
冷却媒体供給装置18は、冷却媒体を燃料電池10に循環させるために、冷媒ポンプ64を備える。冷却媒体は、冷却媒体供給流路66及び冷却媒体排出流路68を介して各単位セル20の冷却媒体流路38を循環する。
【0041】
このように構成される燃料電池10の動作について、以下に説明する。
【0042】
図2に示すように、酸化剤ガス供給装置14を構成するエアポンプ52を介して、空気供給流路54に空気が送られる。この空気は、第1空気供給流路54a及び第2空気供給流路54bに分流された後、それぞれエンドプレート50aの第1酸化剤ガス供給連通孔40a1とエンドプレート50bの第2酸化剤ガス供給連通孔40a2とに供給される。
【0043】
図3に示すように、空気は、第1酸化剤ガス供給連通孔40a1に沿って矢印A1方向に流通する一方、第2酸化剤ガス供給連通孔40a2に沿って矢印A2方向に流通する。このため、空気は、燃料電池10内の各単位セル20に設けられている酸化剤ガス流路34に沿って移動することにより、カソード電極24に供給される。
【0044】
一方、図2に示すように、燃料ガス供給装置16では、水素タンク58から水素供給流路60に水素ガスが供給される。この水素ガスは、第1水素供給流路60a及び第2水素供給流路60bに分流された後、それぞれエンドプレート50aの第1燃料ガス供給連通孔42a1とエンドプレート50bの第2燃料ガス供給連通孔42a2とに供給される。
【0045】
図3に示すように、水素ガスは、第1燃料ガス供給連通孔42a1に沿って矢印A1方向に流通する一方、第2燃料ガス供給連通孔42a2に沿って矢印A2方向に流通する。このため、水素ガスは、燃料電池10内の各単位セル20に設けられている燃料ガス流路36に沿って移動することにより、アノード電極26に供給される。従って、カソード電極24に供給される空気とアノード電極26に供給される水素ガスとが電気化学的に反応して発電が行われる。
【0046】
また、図2に示すように、冷却媒体供給装置18では、冷媒ポンプ64から冷却媒体供給流路66に冷却媒体が供給される。この冷却媒体は、燃料電池10内の各単位セル20間に設けられている冷却媒体流路38に沿って移動することにより、燃料電池10を冷却した後、冷却媒体排出流路68に戻される。
【0047】
この場合、第1の実施形態では、図3に示すように、酸化剤ガスは、第1酸化剤ガス供給連通孔40a1に沿って矢印A1方向に流通する一方、第2酸化剤ガス供給連通孔40a2に沿って矢印A2方向に流通している。このため、第1酸化剤ガス供給連通孔40a1と第2酸化剤ガス供給連通孔40a2とでは、酸化剤ガス(空気)が互いに対向流となっている。
【0048】
同様に、燃料ガスは、第1燃料ガス供給連通孔42a1に沿って矢印A1方向に流通する一方、第2燃料ガス供給連通孔42a2に沿って矢印A2方向に流通している。このため、第1燃料ガス供給連通孔42a1と第2燃料ガス供給連通孔42a2とでは、燃料ガス(水素ガス)が互いに対向流となっている。
【0049】
通常、燃料電池が起動後に加速される際、図5に示すように、反応ガスマニホールド側(反応ガスの供給及び排出側)では、積層方向奥側(反応ガスマニホールドとは反対側)に比べて電圧低下が発生し易い。反応ガスマニホールド側では、流速が速くなり、ガスの飛び越えが発生し易くなるからである。
【0050】
そこで、第1の実施形態では、酸化剤ガス及び燃料ガスは、それぞれ分流されて積層方向両端側から燃料電池10に供給されている。しかも、第1酸化剤ガス供給連通孔40a1と第2酸化剤ガス供給連通孔40a2とは、同一の開口寸法に設定されるとともに、第1燃料ガス供給連通孔42a1と第2燃料ガス供給連通孔42a2とは、同一の開口寸法に設定されている。このため、積層された複数の単位セル20に対して酸化剤ガス及び燃料ガスをそれぞれ均等に供給することができる。
【0051】
従って、特に、起動後の加速時であっても、簡単な構成で、積層方向の酸化剤ガス供給分布及び燃料ガス供給分布を抑制することが可能になり、良好な発電を確実に行うことができるという効果が得られる。
【0052】
図6は、本発明の第2の実施形態に係る燃料電池80が組み込まれる車載用燃料電池システム82の概略構成図である。なお、第1の実施形態に係る燃料電池システム12と同一の構成要素には、同一の参照符号を付して、その詳細な説明は省略する。また、以下に説明する第3の実施形態においても同様に、その詳細な説明は省略する。
【0053】
燃料電池80は、複数の単位セル84を水平方向(矢印A方向)又は重力方向(矢印C方向)に積層して構成される。図6及び図7に示すように、各単位セル84は、電解質膜・電極構造体86と、前記電解質膜・電極構造体86を挟持するカソード側セパレータ88及びアノード側セパレータ90とを備える。
【0054】
燃料電池80の矢印C方向下端縁部には、各単位セル84の積層方向に互いに連通して、酸化剤ガスを排出する第1酸化剤ガス排出連通孔40b1及び第2酸化剤ガス排出連通孔40b2と、燃料ガスを排出する第1燃料ガス排出連通孔42b1及び第2燃料ガス排出連通孔42b2とが設けられる。
【0055】
第1酸化剤ガス排出連通孔40b1と第2酸化剤ガス排出連通孔40b2とは、仕切り部92により互いに独立して設けられる一方、第1燃料ガス排出連通孔42b1と第2燃料ガス排出連通孔42b2とは、仕切り部94により互いに独立して設けられる。
【0056】
第1酸化剤ガス排出連通孔40b1は、矢印A2方向に向かって酸化剤ガスを流通させる一方、第2酸化剤ガス排出連通孔40b2は、矢印A1方向に向かって前記酸化剤ガスを流通させる。第1酸化剤ガス排出連通孔40b1の開口寸法は、第2酸化剤ガス排出連通孔40b2の開口寸法と同一寸法に設定される。
【0057】
第1燃料ガス排出連通孔42b1は、矢印A2方向に向かって燃料ガスを流通させる一方、第2燃料ガス排出連通孔42b2は、矢印A1方向に向かって前記燃料ガスを流通させる。第1燃料ガス排出連通孔42b1の開口寸法は、第2燃料ガス排出連通孔42b2の開口寸法と同一寸法に設定される。
【0058】
図6に示すように、酸化剤ガス供給装置14において、空気排出流路56は、第1空気排出流路56aと第2空気排出流路56bとに分岐する。第1空気排出流路56aは、第1酸化剤ガス排出連通孔40b1に連通する一方、第2空気排出流路56bは、第2酸化剤ガス排出連通孔40b2に連通する。
【0059】
燃料ガス供給装置16において、水素排出流路62は、第1水素排出流路62aと第2水素排出流路62bとに分岐する。第1水素排出流路62aは、第1燃料ガス排出連通孔42b1に連通する一方、第2水素排出流路62bは、第2燃料ガス排出連通孔42b2に連通する。
【0060】
このように構成される第2の実施形態では、酸化剤ガスは、第1酸化剤ガス排出連通孔40b1に沿って矢印A2方向に流通する一方、第2酸化剤ガス排出連通孔40b2に沿って矢印A1方向に流通している。同様に、燃料ガスは、第1燃料ガス排出連通孔42b1に沿って矢印A2方向に流通する一方、第2燃料ガス排出連通孔42b2に沿って矢印A1方向に流通している。
【0061】
これにより、簡単な構成で、積層方向の酸化剤ガス及び燃料ガスの分配性を向上させることが可能になり、良好な発電を確実に行うことができる等、上記の第1の実施形態と同様の効果が得られる。
【0062】
図8は、本発明の第3の実施形態に係る燃料電池100の概略斜視説明図である。燃料電池100は、図9に示すように、車載用燃料電池システム102に組み込まれる。
【0063】
燃料電池100は、複数の単位セル104を水平方向(矢印A方向)又は重力方向(矢印C方向)に積層して構成される。図9及び図10に示すように、各単位セル104は、電解質膜・電極構造体106と、前記電解質膜・電極構造体106を挟持するカソード側セパレータ108及びアノード側セパレータ110とを備える。
【0064】
図10に示すように、燃料電池100の矢印C方向上端縁部には、各単位セル104の積層方向に互いに連通して、第1酸化剤ガス供給連通孔(第1反応ガス供給連通孔)40a(M)及び第2酸化剤ガス供給連通孔(第2反応ガス供給連通孔)40a(S)と、第1燃料ガス供給連通孔(第1反応ガス供給連通孔)42a(M)及び第2燃料ガス供給連通孔42a(S)とが設けられる。
【0065】
第1酸化剤ガス供給連通孔40a(M)と第2酸化剤ガス供給連通孔40a(S)とは、仕切り部41により互いに独立して設けられる一方、第1燃料ガス供給連通孔42a(M)と第2燃料ガス供給連通孔42a(S)とは、仕切り部43により互いに独立して設けられる。
【0066】
第1酸化剤ガス供給連通孔40a(M)及び第2酸化剤ガス供給連通孔40a(S)は、積層方向の一端側から他端側に向かって(矢印A1方向)、酸化剤ガスを流通させる。第1酸化剤ガス供給連通孔40a(M)の開口寸法は、第2酸化剤ガス供給連通孔40a(S)の開口寸法よりも大きく(異なる寸法に)設定される。第1酸化剤ガス供給連通孔40a(M)は、主流路を構成する一方、第2酸化剤ガス供給連通孔40a(S)は、副流路を構成する。
【0067】
第1燃料ガス供給連通孔42a(M)及び第2燃料ガス供給連通孔42a(S)は、積層方向の一端側から他端側に向かって(矢印A1方向)、燃料ガスを流通させる。第1燃料ガス供給連通孔42a(M)の開口寸法は、第2燃料ガス供給連通孔42a(S)の開口寸法よりも大きく設定される。第1燃料ガス供給連通孔42a(M)は、主流路を構成する一方、第2燃料ガス供給連通孔42a(S)は、副流路を構成する。
【0068】
図9に示すように、酸化剤ガス供給装置14は、空気供給流路54を備える。空気供給流路54は、エンドプレート50aに設けられるマニホールド(図示せず)を介して第1酸化剤ガス供給連通孔40a(M)及び第2酸化剤ガス供給連通孔40a(S)に一体に連通する。
【0069】
燃料ガス供給装置16は、水素供給流路60を備える。水素供給流路60は、エンドプレート50aに設けられるマニホールド(図示せず)を介して第1燃料ガス供給連通孔42a(M)及び第2燃料ガス供給連通孔42a(S)に一体に連通する。
【0070】
このように構成される第3の実施形態では、酸化剤ガス供給装置14の作用下に、第1酸化剤ガス供給連通孔40a(M)及び第2酸化剤ガス供給連通孔40a(S)に空気が供給される。一方、燃料ガス供給装置16の作用下に、第1燃料ガス供給連通孔42a(M)及び第2燃料ガス供給連通孔42a(S)に水素ガスが供給される。
【0071】
図10に示すように、酸化剤ガスは、第1酸化剤ガス供給連通孔40a(M)及び第2酸化剤ガス供給連通孔40a(S)に沿って、矢印A1方向に流通する。その際、第1酸化剤ガス供給連通孔40a(M)の開口寸法は、第2酸化剤ガス供給連通孔40a(S)の開口寸法よりも大きな寸法に設定されるため、前記第1酸化剤ガス供給連通孔40a(M)での流速が遅くなる一方、前記第2酸化剤ガス供給連通孔40a(S)での流速が速くなる。このため、酸化剤ガスは、第2酸化剤ガス供給連通孔40a(S)に沿って単位セル104の積層方向に迅速且つ確実に、最も奥側の前記単位セル104まで移動することができる。
【0072】
一方、燃料ガスは、第1燃料ガス供給連通孔42a(M)及び第2燃料ガス供給連通孔42a(S)に沿って、矢印A1方向に流通する。その際、第1燃料ガス供給連通孔42a(M)の開口寸法は、第2燃料ガス供給連通孔42a(S)の開口寸法よりも大きな寸法に設定されるため、前記第1燃料ガス供給連通孔42a(M)での流速が遅くなる一方、前記第2燃料ガス供給連通孔42a(S)での流速が速くなる。従って、燃料ガスは、第2燃料ガス供給連通孔42a(S)に沿って単位セル104の積層方向に迅速且つ確実に、最も奥側の前記単位セル104まで移動することができる。
【0073】
一般的に、燃料電池を停止させる際、この燃料電池内のアノード側及びカソード側に、酸化剤ガス(空気)等の所望のガスを充填する処理が行われている。そして、燃料電池を起動させる際には、アノード側に燃料ガスを供給する一方、カソード側に酸化剤ガスを供給してガス置換が行われている。低負荷発電時のように、このガス置換処理に時間がかかると、特に単位セルの積層方向の奥側(反応ガスマニホールド側とは反対側)に電圧低下が惹起され易い(図11参照)。
【0074】
この場合、第3の実施形態では、酸化剤ガス及び燃料ガスは、それぞれ流速が速く設定された副流路である第2酸化剤ガス供給連通孔40a(S)及び第2燃料ガス供給連通孔42a(S)に沿って、積層方向奥側に迅速に供給されている。
【0075】
これにより、ガス置換速度を上げることが可能になり、簡単な構成で、積層方向の反応ガス供給分布を抑制することができ、良好な発電を確実に行うことが可能になるという効果が得られる。ガス置換遅れにより奥側の単位セル104の電圧低下はあるものの、流速が速いことによるガス飛び越えによって入口側の前記単位セル104の電圧低下が発生するからである。
【0076】
なお、第3の実施形態では、それぞれ単一の酸化剤ガス排出連通孔40b及び燃料ガス排出連通孔42bを用いているが、これに限定されるものではない。例えば、第2の実施形態と同様に、それぞれ2分割に構成してもよい。
【符号の説明】
【0077】
10、80、100…燃料電池 12、82、102…燃料電池システム
14…酸化剤ガス供給装置 16…燃料ガス供給装置
18…冷却媒体供給装置 20、84、104…単位セル
22…固体高分子電解質膜 24…カソード電極
26…アノード電極
28、86、106…電解質膜・電極構造体
30、88、108…カソード側セパレータ
32、90、110…アノード側セパレータ
34…酸化剤ガス流路 36…燃料ガス流路
38…冷却媒体流路
40a1、40a2、40a(M)、40a(S)…酸化剤ガス供給連通孔
42a1、42a2、42a(M)、42a(S)…燃料ガス供給連通孔
40b、40b1、40b2…酸化剤ガス排出連通孔
42b、42b1、42b2…燃料ガス排出連通孔
44a…冷却媒体供給連通孔 44b…冷却媒体排出連通孔
52…エアポンプ 58…水素タンク
64…冷媒ポンプ
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解質膜の両側に一対の電極が設けられる電解質膜・電極構造体とセパレータとを有して積層される複数の単位セルを備え、反応ガスを反応面に沿って流通させる反応ガス流路が設けられるとともに、前記単位セルの積層方向に貫通し前記反応ガスを前記反応ガス流路に供給する反応ガス供給連通孔と、前記積層方向に貫通し前記反応ガスを前記反応ガス流路から排出する反応ガス排出連通孔とが設けられる燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、固体高分子型燃料電池は、高分子イオン交換膜からなる電解質膜の両側に、それぞれアノード電極及びカソード電極を設けた電解質膜・電極構造体(MEA)を、一対のセパレータによって挟持する単位セルを備えている。燃料電池は、通常、複数の単位セルが積層されて燃料電池スタックを構成するとともに、定置用の他、車載用として燃料電池車両に組み込まれることにより、車載用燃料電池システムとして使用されている。
【0003】
上記の燃料電池では、セパレータの面内に、アノード電極に燃料ガスを流すための燃料ガス流路(以下、反応ガス流路ともいう)と、カソード電極に酸化剤ガスを流すための酸化剤ガス流路(以下、反応ガス流路ともいう)とが設けられている。さらに、各単位セル毎又は複数の単位セル毎に、冷却媒体を流すための冷却媒体流路がセパレータの面方向に沿って設けられている。
【0004】
この種の燃料電池では、単位セルの積層方向に貫通して燃料ガスを流すための燃料ガス供給連通孔(反応ガス供給連通孔)及び燃料ガス排出連通孔(反応ガス排出連通孔)と、酸化剤ガスを流すための酸化剤ガス供給連通孔(反応ガス供給連通孔)及び酸化剤ガス排出連通孔(反応ガス排出連通孔)と、冷却媒体を流すための冷却媒体供給連通孔及び冷却媒体排出連通孔とを内部に備える、所謂、内部マニホールド型燃料電池を構成する場合が多い。
【0005】
この種の内部マニホールド型燃料電池として、例えば、特許文献1に開示された燃料電池が知られている。この燃料電池は、電解質板とその両側に設けられたアノード及びカソードからなる単位電池をセパレータを介して積層した積層体からなり、前記セパレータは、順に第一、第二、第三及び第四の周辺部を有する四角形状をしている。
【0006】
そして、燃料電池は、セパレータの対向する第一及び第三の周辺部に設けられた積層方向に貫通する複数対の燃料ガス用貫通孔であって、第一の周辺部に設けられた燃料ガス用貫通孔は、燃料ガス流入用パイプに連通しており、第三の周辺部に設けられた燃料ガス用貫通孔は、燃料ガス排出用パイプに連通している燃料ガス用貫通孔と、前記セパレータの対向する第二及び第四の周辺部(前記第一及び第三の周辺部に直交する)に設けられた積層方向に貫通する複数対の酸化剤ガス用貫通孔であって、第二の周辺部に設けられた酸化剤ガス用貫通孔は、酸化剤ガス流入用パイプに連通しており、第四の周辺部に設けられた酸化剤ガス用貫通孔は、酸化剤ガス排出用パイプに連通している酸化剤ガス用貫通孔と、前記燃料ガス用貫通孔の各対向する対を連通させるように、前記セパレータの一方の面に設けられた複数の溝部からなる燃料ガス用流路域と、前記酸化剤ガス用貫通孔の各対向する対を連通させるように、前記セパレータの他方の面に設けられた複数の溝部からなる酸化剤ガス用流路域と、隣接する前記燃料ガス用流路域を分離するように、前記セパレータの一方の面に設けられた第一の隔壁と、隣接する前記酸化剤ガス用流路域を分離するように、前記セパレータの他方の面に設けられた第二の隔壁とを有し、もって前記セパレータの各流路域を流通するガスの流量を分離独立して調節し得ることを特徴としている。
【0007】
これにより、セパレータの複数の燃料ガス用流路域及び複数の酸化剤ガス用流路域を流れる燃料ガス及び酸化剤ガスの流量を独立して異なるようにでき、電解質板上における酸化還元反応を実質的に均一化させることができる、としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3319609号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
一般的に、多数の単位セルが積層された燃料電池では、例えば、低負荷発電時に、反応ガス供給連通孔の奥側の流速が遅いとともに、冷却媒体流量が多く、しかも端部放熱の影響で生成水が結露し易くなる。このため、単位セルに電圧低下が惹起され易いという問題がある。
【0010】
一方、燃料電池の起動時には、反応ガス供給連通孔の入口側の流速が速くなるため、ガスの飛び越えが発生し易くなり、単位セルの電圧が低下するという問題がある。
【0011】
本発明は、この種の問題を解決するものであり、簡単な構成で、積層方向の反応ガス供給分布を抑制することができ、良好な発電を確実に行うことが可能な燃料電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、電解質膜の両側に一対の電極が設けられる電解質膜・電極構造体とセパレータとを有して積層される複数の単位セルを備え、酸化剤ガス又は燃料ガスである反応ガスを反応面に沿って流通させる反応ガス流路が設けられるとともに、前記単位セルの積層方向に貫通し前記反応ガスを前記反応ガス流路に供給する反応ガス供給連通孔と、前記積層方向に貫通し前記反応ガスを前記反応ガス流路から排出する反応ガス排出連通孔とが設けられる燃料電池に関するものである。
【0013】
この燃料電池では、反応ガス供給連通孔は、積層方向の一端側から他端側に向かって反応ガスを流通させる第1反応ガス供給連通孔と、前記積層方向の他端側から一端側に向かって前記反応ガスを流通させる第2反応ガス供給連通孔とを分割して備えている。
【0014】
また、この燃料電池では、第1反応ガス供給連通孔の開口寸法は、第2反応ガス供給連通孔の開口寸法と同一寸法に設定されることが好ましい。
【0015】
さらに、この燃料電池では、反応ガス供給連通孔は、積層方向の一端側から他端側に向かって反応ガスを流通させる第1反応ガス供給連通孔及び第2反応ガス供給連通孔を分割して備えるとともに、前記第1反応ガス供給連通孔の開口寸法は、前記第2反応ガス供給連通孔の開口寸法とは異なる寸法に設定されている。
【0016】
さらにまた、この燃料電池では、反応ガス排出連通孔は、互いに分割される第1反応ガス排出連通孔及び第2反応ガス排出連通孔を備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明では、反応ガスは、第1反応ガス供給連通孔に沿って単位セルの積層方向一端側から他端側に流通する一方、第2反応ガス供給連通孔に沿って積層方向他端側から一端側に流通している。このため、第1反応ガス供給連通孔と第2反応ガス供給連通孔とでは、反応ガスが互いに対向流となり、積層された複数の単位セルに対して前記反応ガスを均等に供給することができる。
【0018】
従って、特に、低負荷運転時であっても、簡単な構成で、積層方向の反応ガス供給分布を抑制することが可能になり、良好な発電を確実に行うことができる。
【0019】
また、本発明では、互いに並行流である第1反応ガス供給流路と第2反応ガス供給流路とに、それぞれ反応ガスが供給されると、開口寸法の小さな流路では、反応ガスの流速が速くなる一方、開口寸法の大きな流路では、流量が増加している。
【0020】
これにより、反応ガスは、開口寸法の小さな流路に沿って積層方向に迅速に供給されるため、例えば、ガス置換速度(例えば、残留する酸化剤ガスと燃料ガスとの置換速度)を上げることが可能になる。このため、簡単な構成で、積層方向の反応ガス供給分布を抑制することができ、良好な発電を確実に行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る燃料電池の概略斜視説明図である。
【図2】前記燃料電池が組み込まれる車載用燃料電池システムの概略説明図である。
【図3】前記燃料電池を構成する単位セルの分解斜視説明図である。
【図4】前記単位セルを構成するアノード側セパレータの正面説明図である。
【図5】起動後の加速時における単位セルの積層位置とセル電圧との関係説明図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る燃料電池が組み込まれる車載用燃料電池システムの概略構成図である。
【図7】前記燃料電池を構成する単位セルの分解斜視説明図である。
【図8】本発明の第3の実施形態に係る燃料電池の概略斜視説明図である。
【図9】前記燃料電池が組み込まれる車載用燃料電池システムの概略説明図である。
【図10】前記燃料電池を構成する単位セルの分解斜視説明図である。
【図11】低負荷発電時の単位セルの積層位置とセル電圧との関係説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1及び図2に示すように、本発明の第1の実施形態に係る燃料電池10は、例えば、車載用燃料電池システム12に組み込まれ、図示しない燃料電池車両(燃料電池自動車)に搭載される。
【0023】
燃料電池システム12は、燃料電池10と、前記燃料電池10に酸化剤ガスを供給する酸化剤ガス供給装置14と、前記燃料電池10に燃料ガスを供給する燃料ガス供給装置16と、前記燃料電池10に冷却媒体を供給するための冷却媒体供給装置18とを備える。
【0024】
燃料電池10は、複数の単位セル20を水平方向(図1中、矢印A方向)又は重力方向(図1中、矢印C方向)に積層して構成される。図3に示すように、各単位セル20は、例えば、パーフルオロスルホン酸の薄膜に水が含浸された固体高分子電解質膜22をカソード電極24とアノード電極26とで挟持した電解質膜・電極構造体(MEA)28を備える。
【0025】
カソード電極24及びアノード電極26は、カーボンペーパ等からなるガス拡散層と、白金合金(又はRu等)が表面に担持された多孔質カーボン粒子が前記ガス拡散層の表面に一様に塗布されて形成された電極触媒層とを有する。電極触媒層は、固体高分子電解質膜22の両面に形成される。
【0026】
電解質膜・電極構造体28は、鉛直方向(矢印C方向)に面方向を向けて立位姿勢で配置されるとともに、カソード電極24及びアノード電極26は、反応面が鉛直姿勢で且つ鉛直方向に長尺な縦長形状を有する。
【0027】
電解質膜・電極構造体28は、カソード側セパレータ30及びアノード側セパレータ32で挟持され、水平方向(矢印A方向)に沿って積層される。カソード側セパレータ30及びアノード側セパレータ32は、例えば、カーボンセパレータ又は金属セパレータで構成される。
【0028】
カソード側セパレータ30と電解質膜・電極構造体28との間には、鉛直方向に延在する酸化剤ガス流路(反応ガス流路)34が設けられるとともに、アノード側セパレータ32と前記電解質膜・電極構造体28との間には、鉛直方向に延在する燃料ガス流路(反応ガス流路)36が設けられる。互いに当接するカソード側セパレータ30とアノード側セパレータ32との間には、水平方向に延在する冷却媒体流路38が設けられる。
【0029】
燃料電池10の矢印C方向上端縁部には、各単位セル20の積層方向に互いに連通して、酸化剤ガス、例えば、酸素含有ガス(以下、空気ともいう)を供給する第1酸化剤ガス供給連通孔(第1反応ガス供給連通孔)40a1及び第2酸化剤ガス供給連通孔(第2反応ガス供給連通孔)40a2と、燃料ガス、例えば、水素含有ガス(以下、水素ガスともいう)を供給する第1燃料ガス供給連通孔(第1反応ガス供給連通孔)42a1及び第2燃料ガス供給連通孔(第2反応ガス供給連通孔)42a2とが設けられる。
【0030】
第1酸化剤ガス供給連通孔40a1と第2酸化剤ガス供給連通孔40a2とは、仕切り部41により互いに独立して設けられる一方、第1燃料ガス供給連通孔42a1と第2燃料ガス供給連通孔42a2とは、仕切り部43により互いに独立して設けられる。
【0031】
第1酸化剤ガス供給連通孔40a1は、積層方向の一端側から他端側に向かって(矢印A1方向)、酸化剤ガスを流通させる一方、第2酸化剤ガス供給連通孔40a2は、積層方向の他端側から一端側に向かって(矢印A2方向)、前記酸化剤ガスを流通させる。第1酸化剤ガス供給連通孔40a1の開口寸法は、第2酸化剤ガス供給連通孔40a2の開口寸法と同一寸法に設定される。
【0032】
第1燃料ガス供給連通孔42a1は、積層方向の一端側から他端側に向かって(矢印A1方向)、燃料ガスを流通させる一方、第2燃料ガス供給連通孔42a2は、積層方向の他端側から一端側に向かって(矢印A2方向)、前記燃料ガスを流通させる。第1燃料ガス供給連通孔42a1の開口寸法は、第2燃料ガス供給連通孔42a2の開口寸法と同一寸法に設定される。
【0033】
燃料電池10の矢印C方向下端縁部には、各単位セル20の積層方向に互いに連通して、酸化剤ガスを排出する酸化剤ガス排出連通孔40bと、燃料ガスを排出する燃料ガス排出連通孔42bとが設けられる。
【0034】
燃料電池10の矢印B方向両端縁部には、各単位セル20の積層方向に互いに連通して、冷却媒体を供給する冷却媒体供給連通孔44aと、前記冷却媒体を排出する冷却媒体排出連通孔44bとが設けられる。
【0035】
カソード側セパレータ30には、第1シール部材46が、一体的又は個別に設けられるとともに、アノード側セパレータ32には、第2シール部材48が、一体的に又は個別に設けられる。第1シール部材46及び第2シール部材48は、例えば、EPDM、NBR、フッ素ゴム、シリコンゴム、フロロシリコンゴム、ブチルゴム、天然ゴム、スチレンゴム、クロロプレーン、又はアクリルゴム等のシール材、クッション材、あるいはパッキン材を使用する。
【0036】
カソード側セパレータ30では、第1酸化剤ガス供給連通孔40a1及び第2酸化剤ガス供給連通孔40a2と酸化剤ガス排出連通孔40bとが、酸化剤ガス流路34に第1シール部材46を介して連通する。図4に示すように、アノード側セパレータ32では、第1燃料ガス供給連通孔42a1及び第2燃料ガス供給連通孔42a2と燃料ガス排出連通孔42bとが、燃料ガス流路36に第2シール部材48を介して連通する。
【0037】
図1及び図2に示すように、燃料電池10の積層方向両端には、エンドプレート50a、50bが配設され、前記エンドプレート50a、50b間が、図示しないタイロッドやケーシング等により締め付け保持される。エンドプレート50aには、第1酸化剤ガス供給連通孔40a1、第1燃料ガス供給連通孔42a1、酸化剤ガス排出連通孔40b、燃料ガス排出連通孔42b、冷却媒体供給連通孔44a及び冷却媒体排出連通孔44bが設けられる。エンドプレート50bには、第2酸化剤ガス供給連通孔40a2及び第2燃料ガス供給連通孔42a2が設けられる。
【0038】
図2に示すように、酸化剤ガス供給装置14は、大気からの空気を圧縮して供給するエアポンプ52を備え、前記エアポンプ52から空気供給流路54に前記空気が供給される。空気供給流路54は、第1空気供給流路54aと第2空気供給流路54bとに分岐される。第1空気供給流路54aは、第1酸化剤ガス供給連通孔40a1に連通する一方、第2空気供給流路54bは、第2酸化剤ガス供給連通孔40a2に連通する。酸化剤ガス排出連通孔40bには、空気排出流路56が連通し、大気中に排出される。
【0039】
燃料ガス供給装置16は、高圧水素を貯留する水素タンク58を備え、前記水素タンク58から水素供給流路60に水素ガスが供給される。水素供給流路60は、第1水素供給流路60aと第2水素供給流路60bとに分岐する。第1水素供給流路60aは、第1燃料ガス供給連通孔42a1に連通する一方、第2水素供給流路60bは、第2燃料ガス供給連通孔42a2に連通する。燃料ガス排出連通孔42bには、水素排出流路62が連通して燃料ガスが循環される。
【0040】
冷却媒体供給装置18は、冷却媒体を燃料電池10に循環させるために、冷媒ポンプ64を備える。冷却媒体は、冷却媒体供給流路66及び冷却媒体排出流路68を介して各単位セル20の冷却媒体流路38を循環する。
【0041】
このように構成される燃料電池10の動作について、以下に説明する。
【0042】
図2に示すように、酸化剤ガス供給装置14を構成するエアポンプ52を介して、空気供給流路54に空気が送られる。この空気は、第1空気供給流路54a及び第2空気供給流路54bに分流された後、それぞれエンドプレート50aの第1酸化剤ガス供給連通孔40a1とエンドプレート50bの第2酸化剤ガス供給連通孔40a2とに供給される。
【0043】
図3に示すように、空気は、第1酸化剤ガス供給連通孔40a1に沿って矢印A1方向に流通する一方、第2酸化剤ガス供給連通孔40a2に沿って矢印A2方向に流通する。このため、空気は、燃料電池10内の各単位セル20に設けられている酸化剤ガス流路34に沿って移動することにより、カソード電極24に供給される。
【0044】
一方、図2に示すように、燃料ガス供給装置16では、水素タンク58から水素供給流路60に水素ガスが供給される。この水素ガスは、第1水素供給流路60a及び第2水素供給流路60bに分流された後、それぞれエンドプレート50aの第1燃料ガス供給連通孔42a1とエンドプレート50bの第2燃料ガス供給連通孔42a2とに供給される。
【0045】
図3に示すように、水素ガスは、第1燃料ガス供給連通孔42a1に沿って矢印A1方向に流通する一方、第2燃料ガス供給連通孔42a2に沿って矢印A2方向に流通する。このため、水素ガスは、燃料電池10内の各単位セル20に設けられている燃料ガス流路36に沿って移動することにより、アノード電極26に供給される。従って、カソード電極24に供給される空気とアノード電極26に供給される水素ガスとが電気化学的に反応して発電が行われる。
【0046】
また、図2に示すように、冷却媒体供給装置18では、冷媒ポンプ64から冷却媒体供給流路66に冷却媒体が供給される。この冷却媒体は、燃料電池10内の各単位セル20間に設けられている冷却媒体流路38に沿って移動することにより、燃料電池10を冷却した後、冷却媒体排出流路68に戻される。
【0047】
この場合、第1の実施形態では、図3に示すように、酸化剤ガスは、第1酸化剤ガス供給連通孔40a1に沿って矢印A1方向に流通する一方、第2酸化剤ガス供給連通孔40a2に沿って矢印A2方向に流通している。このため、第1酸化剤ガス供給連通孔40a1と第2酸化剤ガス供給連通孔40a2とでは、酸化剤ガス(空気)が互いに対向流となっている。
【0048】
同様に、燃料ガスは、第1燃料ガス供給連通孔42a1に沿って矢印A1方向に流通する一方、第2燃料ガス供給連通孔42a2に沿って矢印A2方向に流通している。このため、第1燃料ガス供給連通孔42a1と第2燃料ガス供給連通孔42a2とでは、燃料ガス(水素ガス)が互いに対向流となっている。
【0049】
通常、燃料電池が起動後に加速される際、図5に示すように、反応ガスマニホールド側(反応ガスの供給及び排出側)では、積層方向奥側(反応ガスマニホールドとは反対側)に比べて電圧低下が発生し易い。反応ガスマニホールド側では、流速が速くなり、ガスの飛び越えが発生し易くなるからである。
【0050】
そこで、第1の実施形態では、酸化剤ガス及び燃料ガスは、それぞれ分流されて積層方向両端側から燃料電池10に供給されている。しかも、第1酸化剤ガス供給連通孔40a1と第2酸化剤ガス供給連通孔40a2とは、同一の開口寸法に設定されるとともに、第1燃料ガス供給連通孔42a1と第2燃料ガス供給連通孔42a2とは、同一の開口寸法に設定されている。このため、積層された複数の単位セル20に対して酸化剤ガス及び燃料ガスをそれぞれ均等に供給することができる。
【0051】
従って、特に、起動後の加速時であっても、簡単な構成で、積層方向の酸化剤ガス供給分布及び燃料ガス供給分布を抑制することが可能になり、良好な発電を確実に行うことができるという効果が得られる。
【0052】
図6は、本発明の第2の実施形態に係る燃料電池80が組み込まれる車載用燃料電池システム82の概略構成図である。なお、第1の実施形態に係る燃料電池システム12と同一の構成要素には、同一の参照符号を付して、その詳細な説明は省略する。また、以下に説明する第3の実施形態においても同様に、その詳細な説明は省略する。
【0053】
燃料電池80は、複数の単位セル84を水平方向(矢印A方向)又は重力方向(矢印C方向)に積層して構成される。図6及び図7に示すように、各単位セル84は、電解質膜・電極構造体86と、前記電解質膜・電極構造体86を挟持するカソード側セパレータ88及びアノード側セパレータ90とを備える。
【0054】
燃料電池80の矢印C方向下端縁部には、各単位セル84の積層方向に互いに連通して、酸化剤ガスを排出する第1酸化剤ガス排出連通孔40b1及び第2酸化剤ガス排出連通孔40b2と、燃料ガスを排出する第1燃料ガス排出連通孔42b1及び第2燃料ガス排出連通孔42b2とが設けられる。
【0055】
第1酸化剤ガス排出連通孔40b1と第2酸化剤ガス排出連通孔40b2とは、仕切り部92により互いに独立して設けられる一方、第1燃料ガス排出連通孔42b1と第2燃料ガス排出連通孔42b2とは、仕切り部94により互いに独立して設けられる。
【0056】
第1酸化剤ガス排出連通孔40b1は、矢印A2方向に向かって酸化剤ガスを流通させる一方、第2酸化剤ガス排出連通孔40b2は、矢印A1方向に向かって前記酸化剤ガスを流通させる。第1酸化剤ガス排出連通孔40b1の開口寸法は、第2酸化剤ガス排出連通孔40b2の開口寸法と同一寸法に設定される。
【0057】
第1燃料ガス排出連通孔42b1は、矢印A2方向に向かって燃料ガスを流通させる一方、第2燃料ガス排出連通孔42b2は、矢印A1方向に向かって前記燃料ガスを流通させる。第1燃料ガス排出連通孔42b1の開口寸法は、第2燃料ガス排出連通孔42b2の開口寸法と同一寸法に設定される。
【0058】
図6に示すように、酸化剤ガス供給装置14において、空気排出流路56は、第1空気排出流路56aと第2空気排出流路56bとに分岐する。第1空気排出流路56aは、第1酸化剤ガス排出連通孔40b1に連通する一方、第2空気排出流路56bは、第2酸化剤ガス排出連通孔40b2に連通する。
【0059】
燃料ガス供給装置16において、水素排出流路62は、第1水素排出流路62aと第2水素排出流路62bとに分岐する。第1水素排出流路62aは、第1燃料ガス排出連通孔42b1に連通する一方、第2水素排出流路62bは、第2燃料ガス排出連通孔42b2に連通する。
【0060】
このように構成される第2の実施形態では、酸化剤ガスは、第1酸化剤ガス排出連通孔40b1に沿って矢印A2方向に流通する一方、第2酸化剤ガス排出連通孔40b2に沿って矢印A1方向に流通している。同様に、燃料ガスは、第1燃料ガス排出連通孔42b1に沿って矢印A2方向に流通する一方、第2燃料ガス排出連通孔42b2に沿って矢印A1方向に流通している。
【0061】
これにより、簡単な構成で、積層方向の酸化剤ガス及び燃料ガスの分配性を向上させることが可能になり、良好な発電を確実に行うことができる等、上記の第1の実施形態と同様の効果が得られる。
【0062】
図8は、本発明の第3の実施形態に係る燃料電池100の概略斜視説明図である。燃料電池100は、図9に示すように、車載用燃料電池システム102に組み込まれる。
【0063】
燃料電池100は、複数の単位セル104を水平方向(矢印A方向)又は重力方向(矢印C方向)に積層して構成される。図9及び図10に示すように、各単位セル104は、電解質膜・電極構造体106と、前記電解質膜・電極構造体106を挟持するカソード側セパレータ108及びアノード側セパレータ110とを備える。
【0064】
図10に示すように、燃料電池100の矢印C方向上端縁部には、各単位セル104の積層方向に互いに連通して、第1酸化剤ガス供給連通孔(第1反応ガス供給連通孔)40a(M)及び第2酸化剤ガス供給連通孔(第2反応ガス供給連通孔)40a(S)と、第1燃料ガス供給連通孔(第1反応ガス供給連通孔)42a(M)及び第2燃料ガス供給連通孔42a(S)とが設けられる。
【0065】
第1酸化剤ガス供給連通孔40a(M)と第2酸化剤ガス供給連通孔40a(S)とは、仕切り部41により互いに独立して設けられる一方、第1燃料ガス供給連通孔42a(M)と第2燃料ガス供給連通孔42a(S)とは、仕切り部43により互いに独立して設けられる。
【0066】
第1酸化剤ガス供給連通孔40a(M)及び第2酸化剤ガス供給連通孔40a(S)は、積層方向の一端側から他端側に向かって(矢印A1方向)、酸化剤ガスを流通させる。第1酸化剤ガス供給連通孔40a(M)の開口寸法は、第2酸化剤ガス供給連通孔40a(S)の開口寸法よりも大きく(異なる寸法に)設定される。第1酸化剤ガス供給連通孔40a(M)は、主流路を構成する一方、第2酸化剤ガス供給連通孔40a(S)は、副流路を構成する。
【0067】
第1燃料ガス供給連通孔42a(M)及び第2燃料ガス供給連通孔42a(S)は、積層方向の一端側から他端側に向かって(矢印A1方向)、燃料ガスを流通させる。第1燃料ガス供給連通孔42a(M)の開口寸法は、第2燃料ガス供給連通孔42a(S)の開口寸法よりも大きく設定される。第1燃料ガス供給連通孔42a(M)は、主流路を構成する一方、第2燃料ガス供給連通孔42a(S)は、副流路を構成する。
【0068】
図9に示すように、酸化剤ガス供給装置14は、空気供給流路54を備える。空気供給流路54は、エンドプレート50aに設けられるマニホールド(図示せず)を介して第1酸化剤ガス供給連通孔40a(M)及び第2酸化剤ガス供給連通孔40a(S)に一体に連通する。
【0069】
燃料ガス供給装置16は、水素供給流路60を備える。水素供給流路60は、エンドプレート50aに設けられるマニホールド(図示せず)を介して第1燃料ガス供給連通孔42a(M)及び第2燃料ガス供給連通孔42a(S)に一体に連通する。
【0070】
このように構成される第3の実施形態では、酸化剤ガス供給装置14の作用下に、第1酸化剤ガス供給連通孔40a(M)及び第2酸化剤ガス供給連通孔40a(S)に空気が供給される。一方、燃料ガス供給装置16の作用下に、第1燃料ガス供給連通孔42a(M)及び第2燃料ガス供給連通孔42a(S)に水素ガスが供給される。
【0071】
図10に示すように、酸化剤ガスは、第1酸化剤ガス供給連通孔40a(M)及び第2酸化剤ガス供給連通孔40a(S)に沿って、矢印A1方向に流通する。その際、第1酸化剤ガス供給連通孔40a(M)の開口寸法は、第2酸化剤ガス供給連通孔40a(S)の開口寸法よりも大きな寸法に設定されるため、前記第1酸化剤ガス供給連通孔40a(M)での流速が遅くなる一方、前記第2酸化剤ガス供給連通孔40a(S)での流速が速くなる。このため、酸化剤ガスは、第2酸化剤ガス供給連通孔40a(S)に沿って単位セル104の積層方向に迅速且つ確実に、最も奥側の前記単位セル104まで移動することができる。
【0072】
一方、燃料ガスは、第1燃料ガス供給連通孔42a(M)及び第2燃料ガス供給連通孔42a(S)に沿って、矢印A1方向に流通する。その際、第1燃料ガス供給連通孔42a(M)の開口寸法は、第2燃料ガス供給連通孔42a(S)の開口寸法よりも大きな寸法に設定されるため、前記第1燃料ガス供給連通孔42a(M)での流速が遅くなる一方、前記第2燃料ガス供給連通孔42a(S)での流速が速くなる。従って、燃料ガスは、第2燃料ガス供給連通孔42a(S)に沿って単位セル104の積層方向に迅速且つ確実に、最も奥側の前記単位セル104まで移動することができる。
【0073】
一般的に、燃料電池を停止させる際、この燃料電池内のアノード側及びカソード側に、酸化剤ガス(空気)等の所望のガスを充填する処理が行われている。そして、燃料電池を起動させる際には、アノード側に燃料ガスを供給する一方、カソード側に酸化剤ガスを供給してガス置換が行われている。低負荷発電時のように、このガス置換処理に時間がかかると、特に単位セルの積層方向の奥側(反応ガスマニホールド側とは反対側)に電圧低下が惹起され易い(図11参照)。
【0074】
この場合、第3の実施形態では、酸化剤ガス及び燃料ガスは、それぞれ流速が速く設定された副流路である第2酸化剤ガス供給連通孔40a(S)及び第2燃料ガス供給連通孔42a(S)に沿って、積層方向奥側に迅速に供給されている。
【0075】
これにより、ガス置換速度を上げることが可能になり、簡単な構成で、積層方向の反応ガス供給分布を抑制することができ、良好な発電を確実に行うことが可能になるという効果が得られる。ガス置換遅れにより奥側の単位セル104の電圧低下はあるものの、流速が速いことによるガス飛び越えによって入口側の前記単位セル104の電圧低下が発生するからである。
【0076】
なお、第3の実施形態では、それぞれ単一の酸化剤ガス排出連通孔40b及び燃料ガス排出連通孔42bを用いているが、これに限定されるものではない。例えば、第2の実施形態と同様に、それぞれ2分割に構成してもよい。
【符号の説明】
【0077】
10、80、100…燃料電池 12、82、102…燃料電池システム
14…酸化剤ガス供給装置 16…燃料ガス供給装置
18…冷却媒体供給装置 20、84、104…単位セル
22…固体高分子電解質膜 24…カソード電極
26…アノード電極
28、86、106…電解質膜・電極構造体
30、88、108…カソード側セパレータ
32、90、110…アノード側セパレータ
34…酸化剤ガス流路 36…燃料ガス流路
38…冷却媒体流路
40a1、40a2、40a(M)、40a(S)…酸化剤ガス供給連通孔
42a1、42a2、42a(M)、42a(S)…燃料ガス供給連通孔
40b、40b1、40b2…酸化剤ガス排出連通孔
42b、42b1、42b2…燃料ガス排出連通孔
44a…冷却媒体供給連通孔 44b…冷却媒体排出連通孔
52…エアポンプ 58…水素タンク
64…冷媒ポンプ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質膜の両側に一対の電極が設けられる電解質膜・電極構造体とセパレータとを有して積層される複数の単位セルを備え、酸化剤ガス又は燃料ガスである反応ガスを反応面に沿って流通させる反応ガス流路が設けられるとともに、前記単位セルの積層方向に貫通し前記反応ガスを前記反応ガス流路に供給する反応ガス供給連通孔と、前記積層方向に貫通し前記反応ガスを前記反応ガス流路から排出する反応ガス排出連通孔とが設けられる燃料電池であって、
前記反応ガス供給連通孔は、前記積層方向の一端側から他端側に向かって前記反応ガスを流通させる第1反応ガス供給連通孔と、
前記積層方向の他端側から一端側に向かって前記反応ガスを流通させる第2反応ガス供給連通孔と、
を分割して備えることを特徴とする燃料電池。
【請求項2】
請求項1記載の燃料電池において、前記第1反応ガス供給連通孔の開口寸法は、前記第2反応ガス供給連通孔の開口寸法と同一寸法に設定されることを特徴とする燃料電池。
【請求項3】
電解質膜の両側に一対の電極が設けられる電解質膜・電極構造体とセパレータとを有して積層される複数の単位セルを備え、酸化剤ガス又は燃料ガスである反応ガスを反応面に沿って流通させる反応ガス流路が設けられるとともに、前記単位セルの積層方向に貫通し前記反応ガスを前記反応ガス流路に供給する反応ガス供給連通孔と、前記積層方向に貫通し前記反応ガスを前記反応ガス流路から排出する反応ガス排出連通孔とが設けられる燃料電池であって、
前記反応ガス供給連通孔は、前記積層方向の一端側から他端側に向かって前記反応ガスを流通させる第1反応ガス供給連通孔及び第2反応ガス供給連通孔を分割して備えるとともに、
前記第1反応ガス供給連通孔の開口寸法は、前記第2反応ガス供給連通孔の開口寸法とは異なる寸法に設定されることを特徴とする燃料電池。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の燃料電池において、前記反応ガス排出連通孔は、互いに分割される第1反応ガス排出連通孔及び第2反応ガス排出連通孔を備えることを特徴とする燃料電池。
【請求項1】
電解質膜の両側に一対の電極が設けられる電解質膜・電極構造体とセパレータとを有して積層される複数の単位セルを備え、酸化剤ガス又は燃料ガスである反応ガスを反応面に沿って流通させる反応ガス流路が設けられるとともに、前記単位セルの積層方向に貫通し前記反応ガスを前記反応ガス流路に供給する反応ガス供給連通孔と、前記積層方向に貫通し前記反応ガスを前記反応ガス流路から排出する反応ガス排出連通孔とが設けられる燃料電池であって、
前記反応ガス供給連通孔は、前記積層方向の一端側から他端側に向かって前記反応ガスを流通させる第1反応ガス供給連通孔と、
前記積層方向の他端側から一端側に向かって前記反応ガスを流通させる第2反応ガス供給連通孔と、
を分割して備えることを特徴とする燃料電池。
【請求項2】
請求項1記載の燃料電池において、前記第1反応ガス供給連通孔の開口寸法は、前記第2反応ガス供給連通孔の開口寸法と同一寸法に設定されることを特徴とする燃料電池。
【請求項3】
電解質膜の両側に一対の電極が設けられる電解質膜・電極構造体とセパレータとを有して積層される複数の単位セルを備え、酸化剤ガス又は燃料ガスである反応ガスを反応面に沿って流通させる反応ガス流路が設けられるとともに、前記単位セルの積層方向に貫通し前記反応ガスを前記反応ガス流路に供給する反応ガス供給連通孔と、前記積層方向に貫通し前記反応ガスを前記反応ガス流路から排出する反応ガス排出連通孔とが設けられる燃料電池であって、
前記反応ガス供給連通孔は、前記積層方向の一端側から他端側に向かって前記反応ガスを流通させる第1反応ガス供給連通孔及び第2反応ガス供給連通孔を分割して備えるとともに、
前記第1反応ガス供給連通孔の開口寸法は、前記第2反応ガス供給連通孔の開口寸法とは異なる寸法に設定されることを特徴とする燃料電池。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の燃料電池において、前記反応ガス排出連通孔は、互いに分割される第1反応ガス排出連通孔及び第2反応ガス排出連通孔を備えることを特徴とする燃料電池。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−37892(P2013−37892A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−173048(P2011−173048)
【出願日】平成23年8月8日(2011.8.8)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月8日(2011.8.8)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
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