燃料電池
【課題】積層体の外部と内部の何れにもガス漏れしない燃料電池を提供する。
【解決手段】平板状の燃料電池セルを複数積層してなる積層体と、積層体の周縁部に配置されると共に積層体を積層方向に貫いて発電反応に用いられる反応ガスを各燃料電池セルに供給する又は発電反応後の排ガスを各燃料電池セルより排出するガス給排流路4〜7と、積層方向に沿って積層体の周縁部を貫く貫通孔に挿入された貫通部材9aと、貫通部材9aの両端に設けられた固定部材9bとを備え、貫通部材9aと固定部材9bを介して積層体が締め付けられている燃料電池1であって、貫通部材9aは、積層体の周縁部において、該周縁部の外寄りに位置する外縁側に第1列と、外縁側よりも内側に位置する内縁側に第2列とに並べて配置され、ガス給排流路4〜7は、第1列若しくは第2列の貫通部材9aと横並び又は第1列と第2列の貫通部材9aの間の位置に配置されていることを特徴とする。
【解決手段】平板状の燃料電池セルを複数積層してなる積層体と、積層体の周縁部に配置されると共に積層体を積層方向に貫いて発電反応に用いられる反応ガスを各燃料電池セルに供給する又は発電反応後の排ガスを各燃料電池セルより排出するガス給排流路4〜7と、積層方向に沿って積層体の周縁部を貫く貫通孔に挿入された貫通部材9aと、貫通部材9aの両端に設けられた固定部材9bとを備え、貫通部材9aと固定部材9bを介して積層体が締め付けられている燃料電池1であって、貫通部材9aは、積層体の周縁部において、該周縁部の外寄りに位置する外縁側に第1列と、外縁側よりも内側に位置する内縁側に第2列とに並べて配置され、ガス給排流路4〜7は、第1列若しくは第2列の貫通部材9aと横並び又は第1列と第2列の貫通部材9aの間の位置に配置されていることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平板状の燃料電池セルを複数枚積層して構成される燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の燃料電池は、例えば特許文献1に記載されているように、一対のエンドプレートの間に平板状の燃料電池セルを複数枚積層してなる積層体と、その積層体の周縁部近傍に配置されると共に該積層体を積層方向に貫いて発電反応に用いられる反応ガスを各燃料電池セルに供給するガス給排流路と、同じく発電反応後の排ガスを各燃料電池セルより排出するガス給排流路と、前記積層方向に沿って積層体の周縁部を貫く貫通孔に挿入されたネジ軸状の貫通部材と、その貫通部材の軸方向の両端に設けられたナット状の固定部材と、を備えている。
【0003】
燃料電池を構成する前記各燃料電池セルは、前記積層体の積層方向を上下方向として上下両面に位置する一対のインターコネクタと、該インターコネクタ間に位置し一方のインターコネクタの内面に対向する面に空気極が形成されると共に他方のインターコネクタの内面に対向する面に燃料極が形成された電解質等が積層されており、インターコネクタと空気極の間に空気室が形成され、もう一方のインターコネクタと燃料極の間に燃料室が形成されている。そして、その燃料室と空気室に前記ガス給排流路から空気や水素等の反応ガスが供給され、さらに発電反応後の排ガスが前記ガス給排流路から排出される。なお、ガス給排流路は、積層体の積層方向に連通する縦穴状の縦貫本流路と、該縦貫本流路と交差して各層の燃料室と空気室にそれぞれ反応ガスを供給しまたは燃料室と空気室から発電反応後の排ガスを回収する水平な横型支流路と、から形成されており、前記縦貫本流路に挿通された反応ガス用供給管を介して外部から反応ガスが供給され、また、縦貫本流路に挿通された排ガス用排気管を介して外部に排ガスが排出される。
【0004】
前記貫通部材は、中実のネジ軸状であって、少なくとも積層体の周縁角部を貫く4つの貫通孔に1本ずつ挿入されており、その貫通部材の軸方向の両端に装着したナット状の固定部材で、積層体が積層方向の両側より強く締め付けられている。
また、前記ガス給排流路の縦貫本流路に挿通された反応ガス用供給管と排ガス用排気管は、前記貫通部材同士の中間位置にあって積層体の積層方向の両側に突出すると共にその外周に雄ネジが形成されており、その雄ネジに嵌めたナットで前記貫通部材に嵌めた固定部材と同様に積層体を積層方向に締め付ける。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−117208号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の燃料電池は、積層体の周縁角部に配置した貫通部材と、それらの中間位置に配置した反応ガス用供給管と排ガス用排気管の合計8本を固定部材とナットで夫々締め付けて積層体を固定し、その締め付けで層間からのガス漏れを抑えるようにしている。そして、かかる構成により層間からのガス漏れは抑制できるものと考えられており、実際、外部へのガス漏れはほぼ抑制されていた。
【0007】
ところが本発明者が、1つの反応ガス用供給管を塞いだ状態で他方の反応ガス用供給管に流量一定で空気を供給したところ、双方の排ガス用排気管から空気の流れが僅かではあるが確認され、積層体の内部でガス漏れする場合があることが明らかになった。積層体の内部でのガス漏れは、ガス利用率の低下につながる弊害があることはもちろん、空気室または燃料室に規定外の反応ガスが侵入することによって構成材料の劣化を引き起こす可能性があるため好ましくない。
【0008】
そのような燃料電池の内部でのガス漏れ原因を検討した結果、従来の燃料電池は、積層体の周縁部を四角く囲った状態で強く締め付けていたため、全体の変形挙動として中心が膨らんだ形状になり、その変形によって前記ガス給排流路の層間のシール性が低下したものとの考えに至った。
【0009】
本発明は上記に鑑みなされたもので、その目的は、積層体の外部と内部の何れにもガス漏れしない燃料電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するため本発明は、
平板状の燃料電池セルを複数枚積層してなる積層体と、
前記積層体の周縁部に配置されると共に、該積層体を前記積層方向に貫いて、発電反応に用いられる反応ガスを各前記燃料電池セルに供給するまたは発電反応後の排ガスを前記各燃料電池セルより排出するガス給排流路と、
前記積層方向に沿って前記積層体の前記周縁部を貫く貫通孔に挿入された棒状の貫通部材と、
前記貫通部材の軸方向の両端に設けられた固定部材と、を備え、
前記貫通部材と前記固定部材を介して前記積層体が前記積層方向の両端側より締め付けられている燃料電池であって、
前記貫通部材は、
前記積層体の前記周縁部において、該周縁部の外寄りに位置する外縁側に第1列と、前記外縁側よりも内側に位置する内縁側に第2列とに並べて配置され、
前記ガス給排流路は、
前記第1列若しくは前記第2列の前記貫通部材と横並びの位置に、または前記第1列と前記第2列の前記貫通部材の間の位置に配置されている燃料電池を提供する。
【0011】
また、請求項2に記載したように、前記ガス給排流路は、前記第1列と前記第2列の前記貫通部材の間の位置に配置されており、さらに該ガス給排流路から、前記第1列、前記第2列の前記貫通部材までの最短距離が同じである請求項1記載の燃料電池を提供する。
【0012】
また、請求項3に記載したように、前記ガス給排流路は、前記第1列の貫通部材と横並びの位置に配置されており、さらに該第1列の貫通部材が挿入されている前記貫通孔の少なくとも一部に前記ガス給排流路が設けられている請求項1記載の燃料電池を提供する。
【0013】
また、請求項4に記載したように、前記第1列の前記貫通部材と前記第2列の前記貫通部材は、前記積層方向に直交する平面における平面視でジグザグ状に配置されている請求項1〜3のいずれか1項に記載の燃料電池を提供する。
【0014】
また、請求項5に記載したように、平板状の燃料電池セルを複数枚積層してなる積層体と、
前記積層体の周縁部に配置されると共に、該積層体を前記積層方向に貫いて、発電反応に用いられる反応ガスを各前記燃料電池セルに供給、または発電反応後の排ガスを前記燃料電池セルより排出するガス給排流路と、
前記積層体を前記積層方向の両端側より締め付ける締め部材と、
を備えた燃料電池であって、
前記締め部材は、
前記積層体の前記周縁部において、前記積層体の前記積層方向の両端の一方の面に対向する第1対向部と、
前記周縁部において、前記積層体の前記積層方向の両端の他方の面に対向する第2対向部と、
前記第1対向部の端部と前記第2対向部の端部を一体に連結して前記積層体の側面に対向する連結部と、
前記第1対向部と前記第2対向部の少なくとも一方に形成されると共に前記積層体の前記一方の面又は前記他方の面に向かって貫通し且つ前記積層体の前記外縁側に対応する第1列と前記内縁側に対応する第2列とに分けて形成された複数個の雌ネジ孔と、
前記雌ネジ孔に螺合すると共に前記積層体の前記一方の面又は前記他方の面に先端が当接し、前記雌ネジ孔への締め込みによって前記第1列と前記第2列に分かれて前記積層体を積層方向に締め付け得る複数本のネジ部材と、を有し、
前記ガス給排流路は、
前記第1列若しくは前記第2列の前記ネジ部材と横並びの位置に、または前記第1列と前記第2列の前記ネジ部材の間の位置に配置されている燃料電池を提供する。
【0015】
また、請求項6に記載したように、前記ガス給排流路は、前記第1列と前記第2列の前記ネジ部材の間の位置に配置されており、さらに前記積層方向に沿って前記積層方向に直交する平面に投影した際、前記ガス給排路から、前記第1例、前記第2列の前記ネジ部材までの最短投影距離が同じである請求項5に記載の燃料電池を提供する。
【0016】
また、請求項7に記載したように、前記第1列の前記ネジ部材と前記第2列の前記ネジ部材は、前記積層方向に直交する平面における平面視でジグザグ状に配置されている請求項5又は6に記載の燃料電池を提供する。
【発明の効果】
【0017】
本発明の燃料電池は、第1列の貫通部材によって外部へのガス漏れが抑制され、第2列の貫通部材によって内部へのガス漏れが抑制される。よって、反応ガスを無駄に流出させるおそれが殆どなく、また、空気室または燃料室に規定外の反応ガスが侵入することによる構成材料劣化のおそれも殆どない。
【0018】
また、上記効果は、請求項2に記載したように、ガス給排流路から、第1列、第2列の貫通部材までの最短距離を同じにした場合、つまりガス給排流路が第1列と第2列の貫通部材の中央位置にある場合に最も高い。
【0019】
また、請求項3に記載したように、ガス給排流路を第1列の貫通部材と横並びの位置に配置して該第1列の貫通部材が挿入されている貫通孔の少なくとも一部にガス給排流路を設けるようにした場合には、貫通孔とガス給排流路とを別々に設ける場合に比べて、製造工程数・部品数ともに削減できる。
【0020】
また、請求項4に記載したように、第1列と第2列の貫通部材を平面視でジグザグ状に配置すれば、少ない貫通部材の本数で効率よく外部と内部のガス漏れを防止することができる。
【0021】
また、請求項5に記載の燃料電池は、請求項1と同様の効果に加えて、積層体を固定する要素についてクリープひずみの軽減とクリープ破断の防止が可能で有る。すなわち、請求項5に記載の燃料電池の締め部材は、第1対向部と第2対向部の間に積層体の周縁部近傍を嵌め入れて第1対向部及び/又は第2対向部に取り付けたネジ部材を締め込むことで積層体を積層方向に締め付けるものであるため、ネジ部材に、請求項1の貫通部材に作用する引張り応力とは逆の圧縮応力が作用する。このように山谷形状のネジ部材を圧縮場にすることで、ネジ部材のクリープひずみの軽減とクリープ破断のリスクを低下させることができる。
【0022】
また、上記効果は、請求項6に記載したように、ガス給排流路から、第1列、第2列のネジ部材までの最短距離を同じにした場合、つまりガス給排流路が第1列と第2列のネジ部材の中央位置にある場合に最も高い。
【0023】
また、請求項7に記載したように、第1列と第2列のネジ部材を平面視でジグザグ状に配置すれば、少ないネジ部材の本数で効率よく外部と内部のガス漏れを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】燃料電池の斜視図である。
【図2】燃料電池の平面図である。
【図3】燃料電池セルの斜視図である。
【図4】燃料電池セルの分解斜視図である。
【図5】分解パーツを絞った燃料電池セルの分解斜視図である。
【図6】燃料電池セルの中間を省略した縦断面図である。
【図7】図6を分解して示す縦断面図である。
【図8】図6のA−A線断面図である。
【図9】図6のB−B線断面図である。
【図10】集電部材の斜視図である。
【図11】(a)はスペーサーの斜視図、(b)は集電部材のスペーサー装着前の斜視図である。
【図12】図11(b)の変形例を示す集電部材の斜視図である。
【図13】変形例を示す燃料電池セルの中間を省略した縦断面図である。
【図14】変形例を示す燃料電池セルの中間を省略した縦断面図である。
【図15】変形例を示す燃料電池セルの中間を省略した縦断面図である。
【図16】変形例を示す燃料電池セルの中間を省略した縦断面図である。
【図17】実施形態2の燃料電池の平面図である。
【図18】実施形態3の燃料電池の平面図である。
【図19】実施形態4の燃料電池の斜視図である。
【図20】実施形態4の燃料電池の平面図である。
【図21】実施形態4の燃料電池の中間部分を省略した縦断面図である。
【図22】他の形態を示す燃料電池の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
[実施形態1]
以下に本発明の実施形態1を図1〜図12を参照しつつ説明する。
現在、燃料電池には電解質の材質により大別して、高分子電解質膜を電解質とする固体高分子形燃料電池(PEFC)と、リン酸を電解質とするリン酸形燃料電池(PAFC)と、Li−Na/K系炭酸塩を電解質とする溶融炭酸塩形燃料電池(MCFC)と、例えばZrO2系セラミックを電解質とする固体酸化物形燃料電池(SOFC)の4タイプがある。各タイプは、作動温度(イオンが電解質中を移動できる温度)が異なるのであって、現時点において、PEFCは常温〜約90℃、PAFCは約150℃〜200℃、MCFCは約650℃〜700℃、SOFCは約700℃〜1000℃である。
【0026】
図1〜図12に示した実施形態1の燃料電池1は、例えばZrO2系セラミックを電解質2とし、例えば水素(以下、「燃料ガス」という。)と空気を反応ガスとするSOFCである。この燃料電池1は、発電の最小単位である燃料電池セル3と、該燃料電池セル3に空気を供給する空気供給用のガス給排流路(以下、「空気供給流路」ともいう。)4と、発電反応後の空気を排ガスとして外部に排出する空気排気用のガス給排流路(以下、「空気排気流路」ともいう。)5と、同じく燃料電池セル3に燃料ガスを供給する燃料供給用のガス給排流路(以下、「燃料供給流路」ともいう。)6と、発電反応後の燃料ガスを排ガスとして外部に排出する燃料排気用のガス給排流路(以下、「燃料排気流路」ともいう。)7と、該燃料電池セル3を複数枚積層してなる積層体8と、該積層体8を積層方向に締め付けて固定する固定手段9と、から概略構成される。
【0027】
[燃料電池セル]
燃料電池セル3は、図3の斜視図に示したように平面視正方形の平板状であり、図4、図5に分解して示したように四角い板形態で導電性を有するフェライト系ステンレス等で形成された上(※ここでの「上」又は「下」は図面の記載を基準とするが、これはあくまでも説明の便宜上のものであって絶対的な上下を意味しない。以下同じ。)のインターコネクタ12と、同じく四角い板形態で導電性を有するフェライト系ステンレス等で形成された下のインターコネクタ13と、上下のインターコネクタ12,13のほぼ中間に位置すると共に電解質2の上のインターコネクタ12の内面(下面)に対向する面に空気極14を形成すると共に下のインターコネクタ13の内面(上面)に対向する面に燃料極15を形成したセル本体20と、上のインターコネクタ12と空気極14との間に形成された空気室16と、下のインターコネクタ13と燃料極15との間に形成された燃料室17と、空気室16の内部に配置され空気極14と上のインターコネクタ12とを電気的に接続する空気極14側の集電部材18と、前記燃料室17の内部に配置され燃料極15と下のインターコネクタ13とを電気的に接続する燃料極15側の集電部材19と、を有する。
【0028】
[電解質]
前記電解質2は、ZrO2系セラミックの他、LaGaO3系セラミック、BaCeO3系セラミック、SrCeO3系セラミック、SrZrO3系セラミック、CaZrO3系セラミック等で形成される。
【0029】
[燃料極]
前記燃料極15の材質は、Ni及びFe等の金属と、Sc、Y等の希土類元素のうちの少なくとも1種により安定化されたジルコニア等のZrO2系セラミック、CeO2系セラミック等のセラミックのうちの少なくとも1種との混合物が挙げられる。また、燃料極15の材質は、Pt、Au、Ag、Pb、Ir、Ru、Rh、Ni及びFe等の金属でもよく、これらの金属は1種のみでもよいし、2種以上の合金にしてもよい。さらに、これらの金属及び/又は合金と、上記セラミックの各々の少なくとも1種との混合物(サーメットを含む。)が挙げられる。また、Ni及びFe等の金属の酸化物と、上記セラミックの各々の少なくとも1種との混合物等が挙げられる。
【0030】
[空気極]
前記空気極14の材質は、例えば各種の金属、金属の酸化物、金属の複酸化物等を用いることができる。前記金属としてはPt、Au、Ag、Pb、Ir、Ru及びRh等の金属又は2種以上の金属を含有する合金が挙げられる。さらに、金属の酸化物としては、La、Sr、Ce、Co、Mn及びFe等の酸化物(La2O3、SrO、Ce2O3、Co2O3、MnO2及びFeO等)が挙げられる。また、複酸化物としては、少なくともLa、Pr、Sm、Sr、Ba、Co、Fe及びMn等を含有する複酸化物(La1−XSrXCoO3系複酸化物、La1−XSrXFeO3系複酸化物、La1−XSrXCo1−yFeO3系複酸化物、La1−XSrXMnO3系複酸化物、Pr1−XBaXCoO3系複酸化物及びSm1−XSrXCoO3系複酸化物等)が挙げられる。
【0031】
[燃料室]
前記燃料室17は、図4〜図7に示したように、集電部材19の周りを囲う状態にして下のインターコネクタ13の上面に設置された額縁形態の燃料極ガス流路形成用絶縁フレーム(以下、「燃料極絶縁フレーム」ともいう。)21と、額縁形態であって前記燃料極絶縁フレーム21の上面に設置される燃料極フレーム22と、によって四角い部屋状に形成されている。
【0032】
[燃料室側の集電部材]
燃料室17側の集電部材19は、例えば真空中1000℃で1時間の熱処理をして焼き鈍し(HV硬度で200以下)を行ったNiの板材で形成されており、下のインターコネクタ13に当接するコネクタ当接部19aと、セル本体20の燃料極15に当接するセル本体当接部19bと、コネクタ当接部19aとセル本体当接部19bとをつなぐU字状の連接部19cとが一連に形成され、該連接部19cのU字に曲がった部分の弾性によりコネクタ当接部19aとセル本体当接部19bがそれぞれインターコネクタ13とセル本体20に向けて付勢され、なおかつ、温度サイクルや燃料圧・空気圧などの変動によるセル本体20の変形に柔軟に追従し得る。
【0033】
なお、燃料室17側の集電部材19は、前記のように板材で形成する場合の他、例えばNi製の多孔質金属又は金網又はワイヤーで形成するようにしてもよい。また、燃料室17側の集電部材19は、Niの他、Ni合金やステンレス鋼など酸化に強い金属で形成するようにしてもよい。
【0034】
この集電部材19は、燃料室17に数十〜百個程度(もちろん燃料室の大きさにより異なる。)設けられており、それらを個々にインターコネクタ13上に並べて溶接(例えばレーザー溶接や抵抗溶接)するようにしてもよいが、好ましくは図11(b)に示したように前記板材を燃料室17に整合する四角い平板190に加工し、この平板190にセル本体当接部19bと連接部19cに対応する切込線19dを形成し、そうして図10の拡大部に示したように連接部19cをU字状に曲げてセル本体当接部19bがコネクタ当接部19aの上方に間隔s(図6拡大部参照)を空けて被さるようにしてある。したがって、セル本体当接部19bを曲げ起こして残った穴あき状態の平板190がコネクタ当接部19aの集合体であり、実施形態1では平板190のコネクタ当接部19aが下のインターコネクタ13にレーザー溶接や抵抗溶接により接合されている。
【0035】
なお、集電部材19の前記切込線19dは、図12に示したようにセル本体当接部19bと連接部19cを列単位で纏めた形にしてもよい。こうすることによりセル本体当接部19bと連接部19cの加工が効率よく行える。
【0036】
[スペーサー]
前記集電部材19には、図6に示したようにスペーサー58が併設されている。該スペーサー58は、セル本体20と下のインターコネクタ13の間の燃料室17内において、コネクタ当接部19aとセル本体当接部19bを隔てるように両者の間に配置され、少なくとも燃料電池作動温度域での該スペーサー58の熱膨張によってセル本体当接部19bとコネクタ当接部19aをそれぞれの当接方向、すなわちセル本体当接部19bをセル本体20に向けて、一方、コネクタ当接部19aをインターコネクタ13に向けて押圧し得るようにするべく、燃料電池作動温度域である700℃〜1000℃において、熱膨張によって拡大する前記間隔sをさらなる熱膨張によって上回る厚みと材質で形成されている。
【0037】
なお、スペーサー58の厚みは、燃料電池作動温度域での状態でセル本体当接部19bとコネクタ当接部19aの間隔sを上回るものであればよいが、好ましくは燃料電池非作動時の常温状態で少なくともセル本体当接部19bとコネクタ当接部19aの間隔sとほぼ同じにするかまたは若干大きく設定するのがよい。そうすることにより発電開始から作動温度域に達するまでの間においても、スペーサー58によってコネクタ当接部19aとインターコネクタ13及びセル本体当接部19bとセル本体20の接触を安定的にすることができる。
【0038】
また、スペーサー58は、集電部材19より柔軟な材質、つまり集電部材19より荷重に対する反発力が弱い材質が選定されており、温度サイクルや燃料圧・空気圧の変化による燃料室17の間隔の変動に対し集電部材19の動きに追従して該集電部材19の機敏な動きを妨げないようにしてある。
【0039】
また、スペーサー58は、燃料電池作動温度域で集電部材19と焼結しない性質を持った材料で形成されており、したがって、セル本体当接部19bとコネクタ当接部19aとが直接触れ合って焼結するおそれがないことはもちろん、セル本体当接部19bとコネクタ当接部19aがスペーサー58を介して焼結するおそれもない。
【0040】
以上の条件を満たすスペーサー58の材質としては、マイカ、アルミナ、バーミキュライト、カーボン繊維、炭化珪素繊維、シリカの何れか自体か、或は少なくとも何れか1種を主成分とするものでもよい。また、これらを例えばマイカのような薄い板状体の積層構造にしておけば、積層方向への荷重に対し適度な弾性が付与されるため好ましい。これらの材質の熱膨張率は、前記固定手段9の後述する貫通部材9aの熱膨張率或は実施形態4の締め部材90のコ字状主体91aの熱膨張率より大きい。
【0041】
なお、実施形態1の集電部材19は、前記のようにコネクタ当接部19aの集合体である平板190でつながった一体構造になっており、これに合わせてスペーサー58も図11(a)に示したように平板190とほぼ同幅で平板190より若干短い(具体的には、1つの(セル本体当接部19b+連接部19c)の長さ相当分短い)四角形にした1枚の材料シートから、セル本体当接部19bと連接部19cに対応する部分を横1列分ずつ纏めて切り抜いて横格子状に形成されている。
そして、このスペーサー58を集電部材19の加工前の図11(b)に示した平板190に重ね、その状態で図10拡大部に示したように連接部19cをU字状に曲げるようにすれば、予めスペーサー58を組み込んだ集電部材19ができる。
ところで、図10拡大部では、セル本体当接部19bが左角部に位置するものから右に向かって段階的に曲げられる状態になっているが、これは専ら加工手順を説明するために描いたものであり、セル本体当接部19bの曲げ加工は全部を一斉に行ってもよいし、加工上都合の良い部分から順に行ってもよい。
【0042】
[空気室]
前記空気室16は、図4〜図6に示したように、四角い額縁形態であって下面に前記電解質2が取着された導電性を有する薄い金属製のセパレータ23と、該セパレータ23と上のインターコネクタ12との間に設置されて集電部材18の周りを囲う額縁形態の空気極ガス流路形成用絶縁フレーム(以下、「空気極絶縁フレーム」ともいう。)24と、によって四角い部屋状に形成されている。
【0043】
[空気室側の集電部材]
空気室16側の集電部材18は、細長い角材形状で、緻密な導電部材である例えばステンレス材で形成され、電解質2の上面の空気極14と上のインターコネクタ12の下面(内面)に当接する状態にして複数本を平行に且つ一定の間隔をおいて配設されている。なお、空気室16側の集電部材18は、燃料室17側の集電部材19と同じ構造にしてもよい。
【0044】
以上のように燃料電池セル3は、下のインターコネクタ13と、燃料極絶縁フレーム21と、燃料極フレーム22と、セパレータ23と、空気極絶縁フレーム24と、上のインターコネクタ12と、の組合せによって燃料室17と空気室16を形成し、その燃料室17と空気室16を電解質2で仕切って相互に独立させ、さらに、燃料極絶縁フレーム21と空気極絶縁フレーム24で燃料極15側と空気極14側を電気的に絶縁している。
【0045】
また、燃料電池セル3は、前記のように空気室16の内部に空気を供給する空気供給流路4と、空気室16から排ガスたる空気を外部に排出する空気排気流路5と、燃料室17の内部に燃料ガスを供給する燃料供給流路6と、燃料室17から排ガスたる燃料ガスを外部に排出する燃料排気流路7と、を備えている。
【0046】
[空気供給流路]
空気供給流路4は、四角い燃料電池セル3の角部近傍に上下方向に貫通形成した空気供給用の縦貫本流路(以下、「空気供給本流路」ともいう。)29と、該空気供給本流路29と交差して連通するように空気極絶縁フレーム24に開設した長孔状の横型支流路(以下、「空気供給支流路」という。)30と、該空気供給支流路30と空気室16との間を仕切る隔壁31の上面を複数箇所窪ませて形成した空気供給連絡部32と、を備えており、前記空気供給本流路29に挿入された後述する空気用供給管400の空気導入通路25を介して外部から空気が供給されるようになっている。
【0047】
[空気排気流路]
空気排気流路5は、燃料電池セル3の空気供給本流路29に対向する角部近傍に上下方向に貫通形成した空気排気用の縦貫本流路(以下、「空気排気本流路」ともいう。)33と、該空気排気本流路33と交差して連通するように空気極絶縁フレーム24に開設した長孔状の横型支流路(以下、「空気排気支流路」という。)34と、該空気排気支流路34と空気室16との間を仕切る隔壁35の上面を複数箇所窪ませて形成した空気排気連絡部36と、を備えており、前記空気排気本流路33に挿入された後述する空気用排気管500の空気排気通路26を介して発電反応後の空気を排ガスとして外部に排出するようになっている。
【0048】
[燃料供給流路]
燃料供給流路6は、四角い燃料電池セル3の残り二つの角部のうちの一つの角部近傍に上下方向に貫通形成した燃料供給用の縦貫本流路(以下、「燃料供給本流路」ともいう。)37と、該燃料供給本流路37に連通するように燃料極絶縁フレーム21に開設した長孔状の横型支流路(以下、「燃料供給支流路」という。)38と、該燃料供給支流路38と燃料室17の間とを仕切る隔壁39の上面を複数箇所窪ませて形成した燃料供給連絡部40と、を備えており、前記燃料供給本流路37に挿入された後述する燃料用供給管600の燃料導入通路27を介して外部から燃料ガスが供給されるようになっている。
【0049】
[燃料排気流路]
燃料排気流路7は、燃料電池セル3の燃料供給本流路37に対向する角部近傍に上下方向に貫通形成した燃料排気用の縦貫本流路(以下、「燃料排気本流路」ともいう。)41と、該燃料排気本流路41と交差して連通するように燃料極絶縁フレーム21に開設した長孔状の横型支流路(以下、「燃料排気支流路」という。)42と、該燃料排気支流路42と燃料室17との間を仕切る隔壁43の上面を複数箇所窪ませて形成した燃料排気連絡部44と、を備えており、前記燃料排気本流路41に挿入された後述する燃料用排気管700の燃料排気通路28を介して発電反応後の燃料ガスを排ガスとして外部に排出するようになっている。
【0050】
[積層体]
積層体8は、前記燃料電池セル3を複数枚積層すると共にその上下を一対のエンドプレート45a,45bで挟んでその周囲を複数の固定手段9,9…で固定したものである。なお、燃料電池セル3を複数枚積層した場合において、下に位置する燃料電池セル3の上のインターコネクタ12と、その上に載る燃料電池セル3の下のインターコネクタ13は、一体にして上下の燃料電池セル3,3同士で共有する。
【0051】
[積層体のガス給排流路]
積層体8は、前記燃料電池セル3を複数枚積層したものであり、したがって各燃料電池セル3の空気供給流路4は、縦貫本流路たる空気供給本流路29で積層方向(上下方向)に連通しており、同様に空気排気流路5は空気排気本流路29で積層方向に連通し、燃料供給流路6は燃料供給本流路37で積層方向に連通し、燃料排気流路7は燃料排気本流路41で積層方向(上下方向)に連通している。そしてさらに、前記各本流路29,33,37,41に空気用供給管400と空気用排気管500と燃料用供給管600と燃料用排気管700がそれぞれ挿通されている。
【0052】
[空気用供給管]
空気用供給管400は、エンドプレート45a,45bの通孔(図示せず)と積層体8の前記空気供給本流路29を上下に貫く状態にして取り付けられている。空気用供給管400は、下端を閉じた空気導入通路25を軸中心に有する中空ネジ軸状であり、絶縁性の座金10,10を介してナット11,11で締め付けられている。空気用供給管400は、前記空気供給支流路30毎に対応させて図8拡大図に示したように空気供給本流路29に通じる横孔48が設けられており、該横孔48を介して空気導入通路25から空気供給本流路29に、そして空気供給本流路29から空気供給支流路30に空気が供給される。
【0053】
[空気用排気管]
空気用排気管500は、エンドプレート45a,45bの通孔(図示せず)と積層体8の前記空気排気本流路33を上下に貫く状態にして取り付けられている。空気用排気管500は、前記空気用供給管400と同構造であって、下端を閉じた空気排気通路26を軸中心に有する中空ネジ軸状であり、絶縁性の座金10,10を介してナット11,11で締め付けられ、さらに前記空気排気支流路34毎に対応させて図8に示したように空気排気本流路33に通じる横孔49が設けられており、発電反応後の空気が、空気排気支流路34から空気排気本流路33に、そして横孔49を介して空気排気本流路33から空気排気通路26に入って外部に排出される。
【0054】
[燃料用供給管]
燃料用供給管600は、エンドプレート45a,45bの通孔(図示せず)と積層体8の前記燃料供給本流路37を上下に貫く状態にして取り付けられている。燃料用供給管600も前記空気用供給管400と同構造であって、下端を閉じた燃料導入通路27を軸中心に有する中空ネジ軸状であり、絶縁性の座金10,10を介してナット11,11で締め付けられ、さらに前記燃料供給支流路38毎に対応させて図9に示したように燃料供給本流路37に通じる横孔50が設けられており、該横孔50を介して燃料導入通路27から燃料供給本流路37に、そして燃料供給本流路37から燃料供給支流路38に燃料が供給される。
【0055】
[燃料用排気管]
燃料用排気管700は、エンドプレート45a,45bの通孔(図示せず)と積層体8の前記燃料排気本流路41を上下に貫く状態にして取り付けられている。燃料用排気管700も前記空気用供給管400と同構造であって、下端を閉じた燃料排気通路28を軸中心に有する中空ネジ軸状であり、絶縁性の座金10,10を介してナット11,11で締め付けられ、さらに前記燃料排気支流路42毎に対応させて図9に示したように燃料排気本流路41に通じる横孔51が設けられており、発電反応後の燃料ガスが、燃料排気支流路42から燃料排気本流路41に、そして横孔51を介して燃料排気本流路41から燃料排気通路28に入って外部に排出される。
【0056】
[固定手段]
積層体8を固定する複数の固定手段9は、図1想像線と図3に示したように、積層体8の周縁部を積層方向に貫く貫通孔46に挿入された棒状の貫通部材9aと、該貫通部材9aの軸方向の両端に設けられた上下一対の固定部材9bで構成されている。
【0057】
[固定手段−貫通部材]
貫通部材9aは、中実丸棒の外周に雄ネジを形成したネジ軸状であり、例えばNi合金のインコネル601等の金属で形成されている。
貫通部材9aは、図2の平面図に示したように、積層体8の周縁部において、前記した4つのガス給排流路である空気供給流路4と空気排気流路5と燃料供給流路6及び燃料排気流路7よりも外縁側に位置する第1列と、前記各ガス給排流路4〜7よりも内側に位置する第2列とに並べて配置され、換言すればガス給排流路4〜7が第1列と第2列の貫通部材9aの間に配置されている。特に実施形態1のガス給排流路4〜7は、第1列と第2列の貫通部材9aの間の中央位置にあって、第1列、第2列の貫通部材9aまでの最短距離が同じになっている。
さらに貫通部材9aは、図2の平面図に示したように、第1列の貫通部材9aと第2列の貫通部材9aが、前記積層方向に直交する平面における平面視でジグザグ状(図2一点鎖線参照)、すなわち第1列と第2列を重ね合わせた場合に第1列の貫通部材9a同士の間(好ましくは貫通部材9a同士の中央)に第2列の貫通部材9aが位置する状態に配置されている。
【0058】
[固定手段−固定部材]
固定部材9bは、前記貫通部材9aの雄ネジに螺合するナット状であり、例えばNi合金のインコネル601等の金属で形成されている。該固定部材9bは、上下とも締め外し自在なナット形態にしてもよいし、上下の一方を貫通部材9aに溶接等で固定するか、或は通常のボルトのごとく上下の一方を貫通部材9aと一体に形成してもよい。
【0059】
[固定手段−その他]
固定手段9の貫通部材9aは、貫通孔46の径より細くなっていて貫通孔46との間に隙間が形成されるようになっている。また、固定部材9bとエンドプレート45a,45bとの間にも絶縁性の座金10,10が介装されており、そうして固定手段9と積層体8が電気的に絶縁されるようになっている。
【0060】
以上の構成である実施形態1の燃料電池1に対し、燃料用供給管600を塞いだ状態で空気用供給管400に流量一定で空気を供給したところ、空気用排気管500から供給分と同流量の空気が検出され、一方、燃料用排気管700からは空気の流出が検出されなかった。これにより実施形態1の燃料電池1では、積層体8の外部と内部の何れにもガス漏れが生じていないことが確認された。
【0061】
[発電]
次に、前記燃料電池1の空気供給流路4に空気を供給すると、その空気は、図8の右側の空気供給支流路30から空気供給連絡部32を通って空気室16に供給され、この空気室16の集電部材18同士の間のガス流路56を通り抜け、さらに左側の空気排気連絡部36から空気排気支流路34に入って外部に排出される。
【0062】
同時に燃料電池1の燃料供給流路6に燃料ガスを供給すると、その燃料ガスは、図9の上側の燃料供給支流路38から燃料供給連絡部40を通って燃料室17に供給され、この燃料室17の集電部材19,19…の間、厳密にはセル本体当接部19b,19b…同士の間のガス流路57(図9において、燃料室17内の非斜線部参照)を拡散しながら通り抜け、さらに下側の燃料排気連絡部44から燃料排気支流路42に入って外部に排出される。
なお、このとき集電部材19が前記のように多孔質金属又は金網又はワイヤーで形成されていると、ガス流路57の表面が凸凹になるため燃料ガスの拡散性が向上する。
【0063】
このような空気と燃料ガスの供給・排気を行いつつ全燃料電池セル3(積層体8)の温度を700℃〜1000℃にまで上昇させると、空気と燃料ガスが空気極14と電解質2と燃料極15を介して反応を起こすため、空気極14を正極、燃料極15を負極とする直流の電気エネルギが発生する。なお、燃料電池セル3内で電気エネルギが発生する原理は周知であるため説明を省略する。
【0064】
前記のように空気極14は、集電部材18を介して上のインターコネクタ12に電気的に接続され、一方、燃料極15は、集電部材19を介して下のインターコネクタ13に電気的に接続されており、また、積層体8は複数の燃料電池セル3を積層して直列に接続された状態であるから、上のエンドプレート45aが正極で、下のエンドプレート45bが負極になる。
【0065】
以上のように燃料電池は、発電時に温度が上昇し、発電停止により温度が下降する、という温度サイクルを繰り返す。したがって、燃料室17や空気室16を構成する全ての部材や前記固定手段9について熱膨張と収縮が繰り返され、それに伴い燃料室17や空気室16の間隔も拡大と縮小を繰り返す。
また、燃料圧や空気圧も変動する場合があり、その圧力の変動でセル本体20が変形することによっても燃料室17や空気室16の間隔が拡大又は縮小する。
このような燃料室17や空気室16の拡大方向の変化に対して、実施形態1では燃料室17側の集電部材19が、連接部19cの弾性と、スペーサー58の積層方向の弾性と熱膨張によってセル本体20を押圧するため電気的接続が安定的に維持される。この集電部材19によるセル本体20の押圧は空気室16側にも影響するため、空気室16の電気的接続も安定的に維持される。
また、燃料室17や空気室16の縮小方向の変化に対して、燃料室17側の集電部材19の連接部19cの弾性と、スペーサー58の収縮によってセル本体20に加わる応力が緩和される。
【0066】
また、燃料極15側の集電部材19がNiか又はNi合金であると、発電時の高温環境下でセル本体当接部19bが燃料極15中のNiと拡散接合して一体になる。したがって集電部材19による電気的接続がより安定的に維持される。
なお、好ましくは燃料極15にNiOペーストを塗布して接合層を形成しておくとよい。そうすることによりH2 中の通電でNiOがNiになるから集電部材19と燃料極15の接合性がさらに向上する。前記接合層は、燃料極15にPtペーストを塗布することによって形成してもよい。
【0067】
また、実施形態1では下のインターコネクタ13にコネクタ当接部19aの集合体である平板190を溶接して接合するようにしたが、該インターコネクタ13と平板190の材質を発電時の高温環境下で拡散接合し得る組み合わせ(例えばCrofer22HとNi)にするか、或は下のインターコネクタ13の内面側に前記のような接合層を形成するようにしておけば、発電時の高温環境下でインターコネクタ13と集電部材19を接合して一体にすることができる。
【0068】
[集電部材の変形例]
図13〜図16は、実施形態1の集電部材19の変形例を示す燃料電池セル3の中間省略縦断面図である。実施形態1の集電部材19は、連接部19cをU字状に曲げてコネクタ当接部19aの上方にセル本体当接部19bを配置すると共にコネクタ当接部19aとセル本体当接部19bの間にスペーサー58を介在させるようにしたが、変形例では連接部19cを斜めにして、図13のようにコネクタ当接部19aとセル本体当接部19bの上下位置を完全に異ならせるか又は図14のように集電部材19を断面略Z字状にしてコネクタ当接部19aとセル本体当接部19bの一部が上下位置を違えて重なるように配置し、そうしてコネクタ当接部19aとセル本体20及びセル本体当接部19bとインターコネクタ13を隔てるように前記スペーサー58を配置したものである。また、図15のようにスペーサー58をコネクタ当接部19aとセル本体20を隔てるように介在させるか、或は図16のようにスペーサー58をセル本体当接部19bとインターコネクタ13を隔てるように介在させるようにすることもできる。
前記した実施形態1と変形例の構成の相違は以上のとおりであり、それ以外の点については実施形態1と同じであるため詳細な説明を省略する。
【0069】
[実施形態2]
図17は、実施形態2の燃料電池を示す平面図である。この図に示されているように実施形態2の燃料電池1は、前記ガス給排流路4〜7と、前記第1列の貫通部材9aとが横並びの位置に配置されている。この場合、ガス給排流路4〜7の各縦貫本流路29,33,37,41が貫通孔46を兼用し、また、そこに挿通された空気用供給管400、空気用排気管500、燃料用供給管600、燃料用排気管700が夫々貫通部材9aを兼用し、上下のナット11,11が固定部材9bを兼用する。
なお、上記以外の点については実施形態1と同じであるため説明を省略する。また、図17において実施形態1と同じ符合を付した部分又は部品は、それらと同一又は同機能の部分又は部品である。
【0070】
[実施形態3]
図18は、実施形態3の燃料電池を示す平面図である。この図に示されているように実施形態3の燃料電池1は、前記ガス給排流路4〜7と、前記第2列の貫通部材9aとが横並びの位置に配置されている。この場合においても、ガス給排流路4〜7の各縦貫本流路29,33,37,41が貫通孔46を兼用し、また、そこに挿通された空気用供給管400、空気用排気管500、燃料用供給管600、燃料用排気管700が貫通部材9aを兼用し、上下のナット11,11が固定部材9bを兼用する。
なお、上記以外の点については実施形態1と同じであるため説明を省略する。また、図18において実施形態1と同じ符合を付した部分又は部品は、それらと同一又は同機能の部分又は部品である。
【0071】
[実施形態4]
実施形態4の燃料電池を図19〜図21を参照しつつ説明する。この実施形態4は、前記積層体8を複数(具体的には4つ)の締め部材90で固定するようにしたものであり、実施形態1に対して積層体8を固定するための固定手段9と、該固定手段9の貫通部材9aを通す貫通孔46に関する構成が異なるのみである。したがって、以下に記載のない部分については原則として実施形態1と同じである。なお、図19〜図21において図1〜図16と同じ符合の部分又は部品は、実施形態1と同一又は同機能の部分又は部品を示している。
【0072】
[締め部材]
積層体8を固定する締め部材90は、図19〜図21に示したようにコ字状主体91aと、ネジ部材92aで構成される。
【0073】
[締め部材−コ字状主体]
コ字状主体91aは、積層体8の積層方向の周縁部上面に対向する第1対向部91bと、積層体8の積層方向の周縁部下面に対向する第2対向部91cと、第1対向部91bの端部と第2対向部91cの端部を一体に連結して積層体8の側面との間に適度な隙間を空けて対向する連結部91dと、を備えており、例えばNi合金のインコネル601等の金属で形成されている。また、コ字状主体91aは、第1対向部91bと連結部91dとで構成される角部の内側と、第2対向部91cと連結部91dとで構成される角部の内側とが滑らかな曲面91eで形成されている。
【0074】
1つのコ字状主体91aの大きさは、積層体8の一辺より若干小さい程度であって、図20に示したように4つのコ字状主体91aを四角く環状に組み合わせることにより、図19に示したように積層体8の周囲をほぼ囲み得る。
コ字状主体91aの前記第1対向部91bには、中心軸が積層体8の上面に対して略垂直になる向きにして雌ネジ孔91fが形成されている。
【0075】
[締め部材−ネジ部材]
ネジ部材92aは、例えばNi合金のインコネル601等の金属で形成されており、雄ネジ軸92bの頂部に六角穴付きの円柱頭部92cを一体に有する。このネジ部材92aは、図21に示したように雄ネジ軸92bが前記雌ネジ孔91fに螺合しており、第1対向部91bから出た先端が積層体8の上面(具体的には上のエンドプレート45aの上面)に当接し、雌ネジ孔91fへの締め込み具合を調節することによって、積層体8を第2対向部91cとの間に挟んだ状態で締め付け得る。
【0076】
[雌ネジ孔とネジ部材の配置]
前記雌ネジ孔91fとネジ部材92aは、第1対向部91bに対して多数設けられており、その配置は、図19、図20に示したようにコ字状主体91aで積層体8の周囲を囲んだ状態で、実施形態1の貫通部材9aと同じである。
【0077】
すなわち、多数の雌ネジ孔91fとネジ部材92aは、4つのガス給排流路である空気供給流路4と空気排気流路5と燃料供給流路6及び燃料排気流路7よりも外縁側に位置する第1列と、前記各ガス給排流路4〜7よりも内側に位置する第2列とに並べて配置され、換言すればガス給排流路4〜7が第1列と第2列のネジ部材92aの間に配置されている。特に実施形態4のガス給排流路4〜7は、第1列と第2列のネジ部材92aの間の中央位置にあって、第1列、第2列のネジ部材92aまでの最短距離が同じになっている。
さらにネジ部材92aは、図20の平面図に示したように、第1列のネジ部材92aと第2列のネジ部材92aが、前記積層方向に直交する平面における平面視でジグザグ状(図20一点鎖線参照)、すなわち第1列と第2列を重ねた場合に第1列のネジ部材92a同士の間(好ましくはネジ部材同士の中央)に第2列のネジ部材92aが位置する状態に配置されている。
【0078】
以上の実施形態4の燃料電池1は、図21に示したように、締め部材90の第1対向部91bと第2対向部91cの間に積層体8の周縁部近傍を嵌め入れて第1列と第2列のネジ部材92aを積層方向に締め込むことで、実施形態1と同様に、積層体8の外部と内部の何れにもガス漏れしにくい状態でしっかりと固定することができる。
【0079】
なお、実施形態4においてネジ部材92aには、実施形態1の貫通部材9aに作用する引張り応力とは逆の圧縮応力が作用する。このように山谷形状のネジ部材92aを圧縮場にすることで、ネジ部材92aのクリープひずみの軽減とクリープ破断のリスクを低下させることができる。
【0080】
以上本発明を実施形態1〜4について説明したが、もちろん本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、実施形態1〜4では、第1列と第2列の貫通部材9a又は第1列と第2列のネジ部材92aをジグザグ状に配置したが、第1列と第2列の貫通部材9a又は第1列と第2列のネジ部材92aを図22に示したように平面視で横並びの位置に配置するようにしてもよい。もっともこの場合は、図22に示したように、貫通部材9a同士又はネジ部材92a同士の間隔Lがガス給排流路4〜7を横断する状態で広く空くため、ジグザグ状に配置する場合より隣り合う貫通部材9a同士又は隣り合うネジ部材92a同士の間隔を小さく詰める必要がある。換言すれば、第1列と第2列の貫通部材9a又は第1列と第2列のネジ部材92aを平面視でジグザグ状に配置すれば、少ない本数で効率よくシール性を高めることができる。
また、実施形態4ではネジ部材92aを第1対向部91bのみに設けたが、第2対向部91cのみに設けてもよいし、第1対向部91bと第2対向部91cの両方に設けてもよい。
また、実施形態では、コ字状主体91aの角部の曲面91eを第1対向部91bと第2対向部91cのそれぞれに形成したが、何れか一方の角部に曲面91eを設けるだけでもよい。なお、角部の内側を滑らかな曲面で形成することにより、発電時の熱によるネジ部材92aの緩みが軽減される効果がある。
【符号の説明】
【0081】
1 …燃料電池
3 …燃料電池セル
4 …空気供給流路(ガス給排流路)
5 …空気排気流路(ガス給排流路)
6 …燃料供給流路(ガス給排流路)
7 …燃料排気流路(ガス給排流路)
8 …積層体
9a …貫通部材
9b …固定部材
46 …貫通孔
90 …締め部材
91b …第1対向部
91c …第2対向部
91d …連結部
91f …雌ネジ孔
92a …ネジ部材
【技術分野】
【0001】
本発明は、平板状の燃料電池セルを複数枚積層して構成される燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の燃料電池は、例えば特許文献1に記載されているように、一対のエンドプレートの間に平板状の燃料電池セルを複数枚積層してなる積層体と、その積層体の周縁部近傍に配置されると共に該積層体を積層方向に貫いて発電反応に用いられる反応ガスを各燃料電池セルに供給するガス給排流路と、同じく発電反応後の排ガスを各燃料電池セルより排出するガス給排流路と、前記積層方向に沿って積層体の周縁部を貫く貫通孔に挿入されたネジ軸状の貫通部材と、その貫通部材の軸方向の両端に設けられたナット状の固定部材と、を備えている。
【0003】
燃料電池を構成する前記各燃料電池セルは、前記積層体の積層方向を上下方向として上下両面に位置する一対のインターコネクタと、該インターコネクタ間に位置し一方のインターコネクタの内面に対向する面に空気極が形成されると共に他方のインターコネクタの内面に対向する面に燃料極が形成された電解質等が積層されており、インターコネクタと空気極の間に空気室が形成され、もう一方のインターコネクタと燃料極の間に燃料室が形成されている。そして、その燃料室と空気室に前記ガス給排流路から空気や水素等の反応ガスが供給され、さらに発電反応後の排ガスが前記ガス給排流路から排出される。なお、ガス給排流路は、積層体の積層方向に連通する縦穴状の縦貫本流路と、該縦貫本流路と交差して各層の燃料室と空気室にそれぞれ反応ガスを供給しまたは燃料室と空気室から発電反応後の排ガスを回収する水平な横型支流路と、から形成されており、前記縦貫本流路に挿通された反応ガス用供給管を介して外部から反応ガスが供給され、また、縦貫本流路に挿通された排ガス用排気管を介して外部に排ガスが排出される。
【0004】
前記貫通部材は、中実のネジ軸状であって、少なくとも積層体の周縁角部を貫く4つの貫通孔に1本ずつ挿入されており、その貫通部材の軸方向の両端に装着したナット状の固定部材で、積層体が積層方向の両側より強く締め付けられている。
また、前記ガス給排流路の縦貫本流路に挿通された反応ガス用供給管と排ガス用排気管は、前記貫通部材同士の中間位置にあって積層体の積層方向の両側に突出すると共にその外周に雄ネジが形成されており、その雄ネジに嵌めたナットで前記貫通部材に嵌めた固定部材と同様に積層体を積層方向に締め付ける。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−117208号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の燃料電池は、積層体の周縁角部に配置した貫通部材と、それらの中間位置に配置した反応ガス用供給管と排ガス用排気管の合計8本を固定部材とナットで夫々締め付けて積層体を固定し、その締め付けで層間からのガス漏れを抑えるようにしている。そして、かかる構成により層間からのガス漏れは抑制できるものと考えられており、実際、外部へのガス漏れはほぼ抑制されていた。
【0007】
ところが本発明者が、1つの反応ガス用供給管を塞いだ状態で他方の反応ガス用供給管に流量一定で空気を供給したところ、双方の排ガス用排気管から空気の流れが僅かではあるが確認され、積層体の内部でガス漏れする場合があることが明らかになった。積層体の内部でのガス漏れは、ガス利用率の低下につながる弊害があることはもちろん、空気室または燃料室に規定外の反応ガスが侵入することによって構成材料の劣化を引き起こす可能性があるため好ましくない。
【0008】
そのような燃料電池の内部でのガス漏れ原因を検討した結果、従来の燃料電池は、積層体の周縁部を四角く囲った状態で強く締め付けていたため、全体の変形挙動として中心が膨らんだ形状になり、その変形によって前記ガス給排流路の層間のシール性が低下したものとの考えに至った。
【0009】
本発明は上記に鑑みなされたもので、その目的は、積層体の外部と内部の何れにもガス漏れしない燃料電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するため本発明は、
平板状の燃料電池セルを複数枚積層してなる積層体と、
前記積層体の周縁部に配置されると共に、該積層体を前記積層方向に貫いて、発電反応に用いられる反応ガスを各前記燃料電池セルに供給するまたは発電反応後の排ガスを前記各燃料電池セルより排出するガス給排流路と、
前記積層方向に沿って前記積層体の前記周縁部を貫く貫通孔に挿入された棒状の貫通部材と、
前記貫通部材の軸方向の両端に設けられた固定部材と、を備え、
前記貫通部材と前記固定部材を介して前記積層体が前記積層方向の両端側より締め付けられている燃料電池であって、
前記貫通部材は、
前記積層体の前記周縁部において、該周縁部の外寄りに位置する外縁側に第1列と、前記外縁側よりも内側に位置する内縁側に第2列とに並べて配置され、
前記ガス給排流路は、
前記第1列若しくは前記第2列の前記貫通部材と横並びの位置に、または前記第1列と前記第2列の前記貫通部材の間の位置に配置されている燃料電池を提供する。
【0011】
また、請求項2に記載したように、前記ガス給排流路は、前記第1列と前記第2列の前記貫通部材の間の位置に配置されており、さらに該ガス給排流路から、前記第1列、前記第2列の前記貫通部材までの最短距離が同じである請求項1記載の燃料電池を提供する。
【0012】
また、請求項3に記載したように、前記ガス給排流路は、前記第1列の貫通部材と横並びの位置に配置されており、さらに該第1列の貫通部材が挿入されている前記貫通孔の少なくとも一部に前記ガス給排流路が設けられている請求項1記載の燃料電池を提供する。
【0013】
また、請求項4に記載したように、前記第1列の前記貫通部材と前記第2列の前記貫通部材は、前記積層方向に直交する平面における平面視でジグザグ状に配置されている請求項1〜3のいずれか1項に記載の燃料電池を提供する。
【0014】
また、請求項5に記載したように、平板状の燃料電池セルを複数枚積層してなる積層体と、
前記積層体の周縁部に配置されると共に、該積層体を前記積層方向に貫いて、発電反応に用いられる反応ガスを各前記燃料電池セルに供給、または発電反応後の排ガスを前記燃料電池セルより排出するガス給排流路と、
前記積層体を前記積層方向の両端側より締め付ける締め部材と、
を備えた燃料電池であって、
前記締め部材は、
前記積層体の前記周縁部において、前記積層体の前記積層方向の両端の一方の面に対向する第1対向部と、
前記周縁部において、前記積層体の前記積層方向の両端の他方の面に対向する第2対向部と、
前記第1対向部の端部と前記第2対向部の端部を一体に連結して前記積層体の側面に対向する連結部と、
前記第1対向部と前記第2対向部の少なくとも一方に形成されると共に前記積層体の前記一方の面又は前記他方の面に向かって貫通し且つ前記積層体の前記外縁側に対応する第1列と前記内縁側に対応する第2列とに分けて形成された複数個の雌ネジ孔と、
前記雌ネジ孔に螺合すると共に前記積層体の前記一方の面又は前記他方の面に先端が当接し、前記雌ネジ孔への締め込みによって前記第1列と前記第2列に分かれて前記積層体を積層方向に締め付け得る複数本のネジ部材と、を有し、
前記ガス給排流路は、
前記第1列若しくは前記第2列の前記ネジ部材と横並びの位置に、または前記第1列と前記第2列の前記ネジ部材の間の位置に配置されている燃料電池を提供する。
【0015】
また、請求項6に記載したように、前記ガス給排流路は、前記第1列と前記第2列の前記ネジ部材の間の位置に配置されており、さらに前記積層方向に沿って前記積層方向に直交する平面に投影した際、前記ガス給排路から、前記第1例、前記第2列の前記ネジ部材までの最短投影距離が同じである請求項5に記載の燃料電池を提供する。
【0016】
また、請求項7に記載したように、前記第1列の前記ネジ部材と前記第2列の前記ネジ部材は、前記積層方向に直交する平面における平面視でジグザグ状に配置されている請求項5又は6に記載の燃料電池を提供する。
【発明の効果】
【0017】
本発明の燃料電池は、第1列の貫通部材によって外部へのガス漏れが抑制され、第2列の貫通部材によって内部へのガス漏れが抑制される。よって、反応ガスを無駄に流出させるおそれが殆どなく、また、空気室または燃料室に規定外の反応ガスが侵入することによる構成材料劣化のおそれも殆どない。
【0018】
また、上記効果は、請求項2に記載したように、ガス給排流路から、第1列、第2列の貫通部材までの最短距離を同じにした場合、つまりガス給排流路が第1列と第2列の貫通部材の中央位置にある場合に最も高い。
【0019】
また、請求項3に記載したように、ガス給排流路を第1列の貫通部材と横並びの位置に配置して該第1列の貫通部材が挿入されている貫通孔の少なくとも一部にガス給排流路を設けるようにした場合には、貫通孔とガス給排流路とを別々に設ける場合に比べて、製造工程数・部品数ともに削減できる。
【0020】
また、請求項4に記載したように、第1列と第2列の貫通部材を平面視でジグザグ状に配置すれば、少ない貫通部材の本数で効率よく外部と内部のガス漏れを防止することができる。
【0021】
また、請求項5に記載の燃料電池は、請求項1と同様の効果に加えて、積層体を固定する要素についてクリープひずみの軽減とクリープ破断の防止が可能で有る。すなわち、請求項5に記載の燃料電池の締め部材は、第1対向部と第2対向部の間に積層体の周縁部近傍を嵌め入れて第1対向部及び/又は第2対向部に取り付けたネジ部材を締め込むことで積層体を積層方向に締め付けるものであるため、ネジ部材に、請求項1の貫通部材に作用する引張り応力とは逆の圧縮応力が作用する。このように山谷形状のネジ部材を圧縮場にすることで、ネジ部材のクリープひずみの軽減とクリープ破断のリスクを低下させることができる。
【0022】
また、上記効果は、請求項6に記載したように、ガス給排流路から、第1列、第2列のネジ部材までの最短距離を同じにした場合、つまりガス給排流路が第1列と第2列のネジ部材の中央位置にある場合に最も高い。
【0023】
また、請求項7に記載したように、第1列と第2列のネジ部材を平面視でジグザグ状に配置すれば、少ないネジ部材の本数で効率よく外部と内部のガス漏れを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】燃料電池の斜視図である。
【図2】燃料電池の平面図である。
【図3】燃料電池セルの斜視図である。
【図4】燃料電池セルの分解斜視図である。
【図5】分解パーツを絞った燃料電池セルの分解斜視図である。
【図6】燃料電池セルの中間を省略した縦断面図である。
【図7】図6を分解して示す縦断面図である。
【図8】図6のA−A線断面図である。
【図9】図6のB−B線断面図である。
【図10】集電部材の斜視図である。
【図11】(a)はスペーサーの斜視図、(b)は集電部材のスペーサー装着前の斜視図である。
【図12】図11(b)の変形例を示す集電部材の斜視図である。
【図13】変形例を示す燃料電池セルの中間を省略した縦断面図である。
【図14】変形例を示す燃料電池セルの中間を省略した縦断面図である。
【図15】変形例を示す燃料電池セルの中間を省略した縦断面図である。
【図16】変形例を示す燃料電池セルの中間を省略した縦断面図である。
【図17】実施形態2の燃料電池の平面図である。
【図18】実施形態3の燃料電池の平面図である。
【図19】実施形態4の燃料電池の斜視図である。
【図20】実施形態4の燃料電池の平面図である。
【図21】実施形態4の燃料電池の中間部分を省略した縦断面図である。
【図22】他の形態を示す燃料電池の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
[実施形態1]
以下に本発明の実施形態1を図1〜図12を参照しつつ説明する。
現在、燃料電池には電解質の材質により大別して、高分子電解質膜を電解質とする固体高分子形燃料電池(PEFC)と、リン酸を電解質とするリン酸形燃料電池(PAFC)と、Li−Na/K系炭酸塩を電解質とする溶融炭酸塩形燃料電池(MCFC)と、例えばZrO2系セラミックを電解質とする固体酸化物形燃料電池(SOFC)の4タイプがある。各タイプは、作動温度(イオンが電解質中を移動できる温度)が異なるのであって、現時点において、PEFCは常温〜約90℃、PAFCは約150℃〜200℃、MCFCは約650℃〜700℃、SOFCは約700℃〜1000℃である。
【0026】
図1〜図12に示した実施形態1の燃料電池1は、例えばZrO2系セラミックを電解質2とし、例えば水素(以下、「燃料ガス」という。)と空気を反応ガスとするSOFCである。この燃料電池1は、発電の最小単位である燃料電池セル3と、該燃料電池セル3に空気を供給する空気供給用のガス給排流路(以下、「空気供給流路」ともいう。)4と、発電反応後の空気を排ガスとして外部に排出する空気排気用のガス給排流路(以下、「空気排気流路」ともいう。)5と、同じく燃料電池セル3に燃料ガスを供給する燃料供給用のガス給排流路(以下、「燃料供給流路」ともいう。)6と、発電反応後の燃料ガスを排ガスとして外部に排出する燃料排気用のガス給排流路(以下、「燃料排気流路」ともいう。)7と、該燃料電池セル3を複数枚積層してなる積層体8と、該積層体8を積層方向に締め付けて固定する固定手段9と、から概略構成される。
【0027】
[燃料電池セル]
燃料電池セル3は、図3の斜視図に示したように平面視正方形の平板状であり、図4、図5に分解して示したように四角い板形態で導電性を有するフェライト系ステンレス等で形成された上(※ここでの「上」又は「下」は図面の記載を基準とするが、これはあくまでも説明の便宜上のものであって絶対的な上下を意味しない。以下同じ。)のインターコネクタ12と、同じく四角い板形態で導電性を有するフェライト系ステンレス等で形成された下のインターコネクタ13と、上下のインターコネクタ12,13のほぼ中間に位置すると共に電解質2の上のインターコネクタ12の内面(下面)に対向する面に空気極14を形成すると共に下のインターコネクタ13の内面(上面)に対向する面に燃料極15を形成したセル本体20と、上のインターコネクタ12と空気極14との間に形成された空気室16と、下のインターコネクタ13と燃料極15との間に形成された燃料室17と、空気室16の内部に配置され空気極14と上のインターコネクタ12とを電気的に接続する空気極14側の集電部材18と、前記燃料室17の内部に配置され燃料極15と下のインターコネクタ13とを電気的に接続する燃料極15側の集電部材19と、を有する。
【0028】
[電解質]
前記電解質2は、ZrO2系セラミックの他、LaGaO3系セラミック、BaCeO3系セラミック、SrCeO3系セラミック、SrZrO3系セラミック、CaZrO3系セラミック等で形成される。
【0029】
[燃料極]
前記燃料極15の材質は、Ni及びFe等の金属と、Sc、Y等の希土類元素のうちの少なくとも1種により安定化されたジルコニア等のZrO2系セラミック、CeO2系セラミック等のセラミックのうちの少なくとも1種との混合物が挙げられる。また、燃料極15の材質は、Pt、Au、Ag、Pb、Ir、Ru、Rh、Ni及びFe等の金属でもよく、これらの金属は1種のみでもよいし、2種以上の合金にしてもよい。さらに、これらの金属及び/又は合金と、上記セラミックの各々の少なくとも1種との混合物(サーメットを含む。)が挙げられる。また、Ni及びFe等の金属の酸化物と、上記セラミックの各々の少なくとも1種との混合物等が挙げられる。
【0030】
[空気極]
前記空気極14の材質は、例えば各種の金属、金属の酸化物、金属の複酸化物等を用いることができる。前記金属としてはPt、Au、Ag、Pb、Ir、Ru及びRh等の金属又は2種以上の金属を含有する合金が挙げられる。さらに、金属の酸化物としては、La、Sr、Ce、Co、Mn及びFe等の酸化物(La2O3、SrO、Ce2O3、Co2O3、MnO2及びFeO等)が挙げられる。また、複酸化物としては、少なくともLa、Pr、Sm、Sr、Ba、Co、Fe及びMn等を含有する複酸化物(La1−XSrXCoO3系複酸化物、La1−XSrXFeO3系複酸化物、La1−XSrXCo1−yFeO3系複酸化物、La1−XSrXMnO3系複酸化物、Pr1−XBaXCoO3系複酸化物及びSm1−XSrXCoO3系複酸化物等)が挙げられる。
【0031】
[燃料室]
前記燃料室17は、図4〜図7に示したように、集電部材19の周りを囲う状態にして下のインターコネクタ13の上面に設置された額縁形態の燃料極ガス流路形成用絶縁フレーム(以下、「燃料極絶縁フレーム」ともいう。)21と、額縁形態であって前記燃料極絶縁フレーム21の上面に設置される燃料極フレーム22と、によって四角い部屋状に形成されている。
【0032】
[燃料室側の集電部材]
燃料室17側の集電部材19は、例えば真空中1000℃で1時間の熱処理をして焼き鈍し(HV硬度で200以下)を行ったNiの板材で形成されており、下のインターコネクタ13に当接するコネクタ当接部19aと、セル本体20の燃料極15に当接するセル本体当接部19bと、コネクタ当接部19aとセル本体当接部19bとをつなぐU字状の連接部19cとが一連に形成され、該連接部19cのU字に曲がった部分の弾性によりコネクタ当接部19aとセル本体当接部19bがそれぞれインターコネクタ13とセル本体20に向けて付勢され、なおかつ、温度サイクルや燃料圧・空気圧などの変動によるセル本体20の変形に柔軟に追従し得る。
【0033】
なお、燃料室17側の集電部材19は、前記のように板材で形成する場合の他、例えばNi製の多孔質金属又は金網又はワイヤーで形成するようにしてもよい。また、燃料室17側の集電部材19は、Niの他、Ni合金やステンレス鋼など酸化に強い金属で形成するようにしてもよい。
【0034】
この集電部材19は、燃料室17に数十〜百個程度(もちろん燃料室の大きさにより異なる。)設けられており、それらを個々にインターコネクタ13上に並べて溶接(例えばレーザー溶接や抵抗溶接)するようにしてもよいが、好ましくは図11(b)に示したように前記板材を燃料室17に整合する四角い平板190に加工し、この平板190にセル本体当接部19bと連接部19cに対応する切込線19dを形成し、そうして図10の拡大部に示したように連接部19cをU字状に曲げてセル本体当接部19bがコネクタ当接部19aの上方に間隔s(図6拡大部参照)を空けて被さるようにしてある。したがって、セル本体当接部19bを曲げ起こして残った穴あき状態の平板190がコネクタ当接部19aの集合体であり、実施形態1では平板190のコネクタ当接部19aが下のインターコネクタ13にレーザー溶接や抵抗溶接により接合されている。
【0035】
なお、集電部材19の前記切込線19dは、図12に示したようにセル本体当接部19bと連接部19cを列単位で纏めた形にしてもよい。こうすることによりセル本体当接部19bと連接部19cの加工が効率よく行える。
【0036】
[スペーサー]
前記集電部材19には、図6に示したようにスペーサー58が併設されている。該スペーサー58は、セル本体20と下のインターコネクタ13の間の燃料室17内において、コネクタ当接部19aとセル本体当接部19bを隔てるように両者の間に配置され、少なくとも燃料電池作動温度域での該スペーサー58の熱膨張によってセル本体当接部19bとコネクタ当接部19aをそれぞれの当接方向、すなわちセル本体当接部19bをセル本体20に向けて、一方、コネクタ当接部19aをインターコネクタ13に向けて押圧し得るようにするべく、燃料電池作動温度域である700℃〜1000℃において、熱膨張によって拡大する前記間隔sをさらなる熱膨張によって上回る厚みと材質で形成されている。
【0037】
なお、スペーサー58の厚みは、燃料電池作動温度域での状態でセル本体当接部19bとコネクタ当接部19aの間隔sを上回るものであればよいが、好ましくは燃料電池非作動時の常温状態で少なくともセル本体当接部19bとコネクタ当接部19aの間隔sとほぼ同じにするかまたは若干大きく設定するのがよい。そうすることにより発電開始から作動温度域に達するまでの間においても、スペーサー58によってコネクタ当接部19aとインターコネクタ13及びセル本体当接部19bとセル本体20の接触を安定的にすることができる。
【0038】
また、スペーサー58は、集電部材19より柔軟な材質、つまり集電部材19より荷重に対する反発力が弱い材質が選定されており、温度サイクルや燃料圧・空気圧の変化による燃料室17の間隔の変動に対し集電部材19の動きに追従して該集電部材19の機敏な動きを妨げないようにしてある。
【0039】
また、スペーサー58は、燃料電池作動温度域で集電部材19と焼結しない性質を持った材料で形成されており、したがって、セル本体当接部19bとコネクタ当接部19aとが直接触れ合って焼結するおそれがないことはもちろん、セル本体当接部19bとコネクタ当接部19aがスペーサー58を介して焼結するおそれもない。
【0040】
以上の条件を満たすスペーサー58の材質としては、マイカ、アルミナ、バーミキュライト、カーボン繊維、炭化珪素繊維、シリカの何れか自体か、或は少なくとも何れか1種を主成分とするものでもよい。また、これらを例えばマイカのような薄い板状体の積層構造にしておけば、積層方向への荷重に対し適度な弾性が付与されるため好ましい。これらの材質の熱膨張率は、前記固定手段9の後述する貫通部材9aの熱膨張率或は実施形態4の締め部材90のコ字状主体91aの熱膨張率より大きい。
【0041】
なお、実施形態1の集電部材19は、前記のようにコネクタ当接部19aの集合体である平板190でつながった一体構造になっており、これに合わせてスペーサー58も図11(a)に示したように平板190とほぼ同幅で平板190より若干短い(具体的には、1つの(セル本体当接部19b+連接部19c)の長さ相当分短い)四角形にした1枚の材料シートから、セル本体当接部19bと連接部19cに対応する部分を横1列分ずつ纏めて切り抜いて横格子状に形成されている。
そして、このスペーサー58を集電部材19の加工前の図11(b)に示した平板190に重ね、その状態で図10拡大部に示したように連接部19cをU字状に曲げるようにすれば、予めスペーサー58を組み込んだ集電部材19ができる。
ところで、図10拡大部では、セル本体当接部19bが左角部に位置するものから右に向かって段階的に曲げられる状態になっているが、これは専ら加工手順を説明するために描いたものであり、セル本体当接部19bの曲げ加工は全部を一斉に行ってもよいし、加工上都合の良い部分から順に行ってもよい。
【0042】
[空気室]
前記空気室16は、図4〜図6に示したように、四角い額縁形態であって下面に前記電解質2が取着された導電性を有する薄い金属製のセパレータ23と、該セパレータ23と上のインターコネクタ12との間に設置されて集電部材18の周りを囲う額縁形態の空気極ガス流路形成用絶縁フレーム(以下、「空気極絶縁フレーム」ともいう。)24と、によって四角い部屋状に形成されている。
【0043】
[空気室側の集電部材]
空気室16側の集電部材18は、細長い角材形状で、緻密な導電部材である例えばステンレス材で形成され、電解質2の上面の空気極14と上のインターコネクタ12の下面(内面)に当接する状態にして複数本を平行に且つ一定の間隔をおいて配設されている。なお、空気室16側の集電部材18は、燃料室17側の集電部材19と同じ構造にしてもよい。
【0044】
以上のように燃料電池セル3は、下のインターコネクタ13と、燃料極絶縁フレーム21と、燃料極フレーム22と、セパレータ23と、空気極絶縁フレーム24と、上のインターコネクタ12と、の組合せによって燃料室17と空気室16を形成し、その燃料室17と空気室16を電解質2で仕切って相互に独立させ、さらに、燃料極絶縁フレーム21と空気極絶縁フレーム24で燃料極15側と空気極14側を電気的に絶縁している。
【0045】
また、燃料電池セル3は、前記のように空気室16の内部に空気を供給する空気供給流路4と、空気室16から排ガスたる空気を外部に排出する空気排気流路5と、燃料室17の内部に燃料ガスを供給する燃料供給流路6と、燃料室17から排ガスたる燃料ガスを外部に排出する燃料排気流路7と、を備えている。
【0046】
[空気供給流路]
空気供給流路4は、四角い燃料電池セル3の角部近傍に上下方向に貫通形成した空気供給用の縦貫本流路(以下、「空気供給本流路」ともいう。)29と、該空気供給本流路29と交差して連通するように空気極絶縁フレーム24に開設した長孔状の横型支流路(以下、「空気供給支流路」という。)30と、該空気供給支流路30と空気室16との間を仕切る隔壁31の上面を複数箇所窪ませて形成した空気供給連絡部32と、を備えており、前記空気供給本流路29に挿入された後述する空気用供給管400の空気導入通路25を介して外部から空気が供給されるようになっている。
【0047】
[空気排気流路]
空気排気流路5は、燃料電池セル3の空気供給本流路29に対向する角部近傍に上下方向に貫通形成した空気排気用の縦貫本流路(以下、「空気排気本流路」ともいう。)33と、該空気排気本流路33と交差して連通するように空気極絶縁フレーム24に開設した長孔状の横型支流路(以下、「空気排気支流路」という。)34と、該空気排気支流路34と空気室16との間を仕切る隔壁35の上面を複数箇所窪ませて形成した空気排気連絡部36と、を備えており、前記空気排気本流路33に挿入された後述する空気用排気管500の空気排気通路26を介して発電反応後の空気を排ガスとして外部に排出するようになっている。
【0048】
[燃料供給流路]
燃料供給流路6は、四角い燃料電池セル3の残り二つの角部のうちの一つの角部近傍に上下方向に貫通形成した燃料供給用の縦貫本流路(以下、「燃料供給本流路」ともいう。)37と、該燃料供給本流路37に連通するように燃料極絶縁フレーム21に開設した長孔状の横型支流路(以下、「燃料供給支流路」という。)38と、該燃料供給支流路38と燃料室17の間とを仕切る隔壁39の上面を複数箇所窪ませて形成した燃料供給連絡部40と、を備えており、前記燃料供給本流路37に挿入された後述する燃料用供給管600の燃料導入通路27を介して外部から燃料ガスが供給されるようになっている。
【0049】
[燃料排気流路]
燃料排気流路7は、燃料電池セル3の燃料供給本流路37に対向する角部近傍に上下方向に貫通形成した燃料排気用の縦貫本流路(以下、「燃料排気本流路」ともいう。)41と、該燃料排気本流路41と交差して連通するように燃料極絶縁フレーム21に開設した長孔状の横型支流路(以下、「燃料排気支流路」という。)42と、該燃料排気支流路42と燃料室17との間を仕切る隔壁43の上面を複数箇所窪ませて形成した燃料排気連絡部44と、を備えており、前記燃料排気本流路41に挿入された後述する燃料用排気管700の燃料排気通路28を介して発電反応後の燃料ガスを排ガスとして外部に排出するようになっている。
【0050】
[積層体]
積層体8は、前記燃料電池セル3を複数枚積層すると共にその上下を一対のエンドプレート45a,45bで挟んでその周囲を複数の固定手段9,9…で固定したものである。なお、燃料電池セル3を複数枚積層した場合において、下に位置する燃料電池セル3の上のインターコネクタ12と、その上に載る燃料電池セル3の下のインターコネクタ13は、一体にして上下の燃料電池セル3,3同士で共有する。
【0051】
[積層体のガス給排流路]
積層体8は、前記燃料電池セル3を複数枚積層したものであり、したがって各燃料電池セル3の空気供給流路4は、縦貫本流路たる空気供給本流路29で積層方向(上下方向)に連通しており、同様に空気排気流路5は空気排気本流路29で積層方向に連通し、燃料供給流路6は燃料供給本流路37で積層方向に連通し、燃料排気流路7は燃料排気本流路41で積層方向(上下方向)に連通している。そしてさらに、前記各本流路29,33,37,41に空気用供給管400と空気用排気管500と燃料用供給管600と燃料用排気管700がそれぞれ挿通されている。
【0052】
[空気用供給管]
空気用供給管400は、エンドプレート45a,45bの通孔(図示せず)と積層体8の前記空気供給本流路29を上下に貫く状態にして取り付けられている。空気用供給管400は、下端を閉じた空気導入通路25を軸中心に有する中空ネジ軸状であり、絶縁性の座金10,10を介してナット11,11で締め付けられている。空気用供給管400は、前記空気供給支流路30毎に対応させて図8拡大図に示したように空気供給本流路29に通じる横孔48が設けられており、該横孔48を介して空気導入通路25から空気供給本流路29に、そして空気供給本流路29から空気供給支流路30に空気が供給される。
【0053】
[空気用排気管]
空気用排気管500は、エンドプレート45a,45bの通孔(図示せず)と積層体8の前記空気排気本流路33を上下に貫く状態にして取り付けられている。空気用排気管500は、前記空気用供給管400と同構造であって、下端を閉じた空気排気通路26を軸中心に有する中空ネジ軸状であり、絶縁性の座金10,10を介してナット11,11で締め付けられ、さらに前記空気排気支流路34毎に対応させて図8に示したように空気排気本流路33に通じる横孔49が設けられており、発電反応後の空気が、空気排気支流路34から空気排気本流路33に、そして横孔49を介して空気排気本流路33から空気排気通路26に入って外部に排出される。
【0054】
[燃料用供給管]
燃料用供給管600は、エンドプレート45a,45bの通孔(図示せず)と積層体8の前記燃料供給本流路37を上下に貫く状態にして取り付けられている。燃料用供給管600も前記空気用供給管400と同構造であって、下端を閉じた燃料導入通路27を軸中心に有する中空ネジ軸状であり、絶縁性の座金10,10を介してナット11,11で締め付けられ、さらに前記燃料供給支流路38毎に対応させて図9に示したように燃料供給本流路37に通じる横孔50が設けられており、該横孔50を介して燃料導入通路27から燃料供給本流路37に、そして燃料供給本流路37から燃料供給支流路38に燃料が供給される。
【0055】
[燃料用排気管]
燃料用排気管700は、エンドプレート45a,45bの通孔(図示せず)と積層体8の前記燃料排気本流路41を上下に貫く状態にして取り付けられている。燃料用排気管700も前記空気用供給管400と同構造であって、下端を閉じた燃料排気通路28を軸中心に有する中空ネジ軸状であり、絶縁性の座金10,10を介してナット11,11で締め付けられ、さらに前記燃料排気支流路42毎に対応させて図9に示したように燃料排気本流路41に通じる横孔51が設けられており、発電反応後の燃料ガスが、燃料排気支流路42から燃料排気本流路41に、そして横孔51を介して燃料排気本流路41から燃料排気通路28に入って外部に排出される。
【0056】
[固定手段]
積層体8を固定する複数の固定手段9は、図1想像線と図3に示したように、積層体8の周縁部を積層方向に貫く貫通孔46に挿入された棒状の貫通部材9aと、該貫通部材9aの軸方向の両端に設けられた上下一対の固定部材9bで構成されている。
【0057】
[固定手段−貫通部材]
貫通部材9aは、中実丸棒の外周に雄ネジを形成したネジ軸状であり、例えばNi合金のインコネル601等の金属で形成されている。
貫通部材9aは、図2の平面図に示したように、積層体8の周縁部において、前記した4つのガス給排流路である空気供給流路4と空気排気流路5と燃料供給流路6及び燃料排気流路7よりも外縁側に位置する第1列と、前記各ガス給排流路4〜7よりも内側に位置する第2列とに並べて配置され、換言すればガス給排流路4〜7が第1列と第2列の貫通部材9aの間に配置されている。特に実施形態1のガス給排流路4〜7は、第1列と第2列の貫通部材9aの間の中央位置にあって、第1列、第2列の貫通部材9aまでの最短距離が同じになっている。
さらに貫通部材9aは、図2の平面図に示したように、第1列の貫通部材9aと第2列の貫通部材9aが、前記積層方向に直交する平面における平面視でジグザグ状(図2一点鎖線参照)、すなわち第1列と第2列を重ね合わせた場合に第1列の貫通部材9a同士の間(好ましくは貫通部材9a同士の中央)に第2列の貫通部材9aが位置する状態に配置されている。
【0058】
[固定手段−固定部材]
固定部材9bは、前記貫通部材9aの雄ネジに螺合するナット状であり、例えばNi合金のインコネル601等の金属で形成されている。該固定部材9bは、上下とも締め外し自在なナット形態にしてもよいし、上下の一方を貫通部材9aに溶接等で固定するか、或は通常のボルトのごとく上下の一方を貫通部材9aと一体に形成してもよい。
【0059】
[固定手段−その他]
固定手段9の貫通部材9aは、貫通孔46の径より細くなっていて貫通孔46との間に隙間が形成されるようになっている。また、固定部材9bとエンドプレート45a,45bとの間にも絶縁性の座金10,10が介装されており、そうして固定手段9と積層体8が電気的に絶縁されるようになっている。
【0060】
以上の構成である実施形態1の燃料電池1に対し、燃料用供給管600を塞いだ状態で空気用供給管400に流量一定で空気を供給したところ、空気用排気管500から供給分と同流量の空気が検出され、一方、燃料用排気管700からは空気の流出が検出されなかった。これにより実施形態1の燃料電池1では、積層体8の外部と内部の何れにもガス漏れが生じていないことが確認された。
【0061】
[発電]
次に、前記燃料電池1の空気供給流路4に空気を供給すると、その空気は、図8の右側の空気供給支流路30から空気供給連絡部32を通って空気室16に供給され、この空気室16の集電部材18同士の間のガス流路56を通り抜け、さらに左側の空気排気連絡部36から空気排気支流路34に入って外部に排出される。
【0062】
同時に燃料電池1の燃料供給流路6に燃料ガスを供給すると、その燃料ガスは、図9の上側の燃料供給支流路38から燃料供給連絡部40を通って燃料室17に供給され、この燃料室17の集電部材19,19…の間、厳密にはセル本体当接部19b,19b…同士の間のガス流路57(図9において、燃料室17内の非斜線部参照)を拡散しながら通り抜け、さらに下側の燃料排気連絡部44から燃料排気支流路42に入って外部に排出される。
なお、このとき集電部材19が前記のように多孔質金属又は金網又はワイヤーで形成されていると、ガス流路57の表面が凸凹になるため燃料ガスの拡散性が向上する。
【0063】
このような空気と燃料ガスの供給・排気を行いつつ全燃料電池セル3(積層体8)の温度を700℃〜1000℃にまで上昇させると、空気と燃料ガスが空気極14と電解質2と燃料極15を介して反応を起こすため、空気極14を正極、燃料極15を負極とする直流の電気エネルギが発生する。なお、燃料電池セル3内で電気エネルギが発生する原理は周知であるため説明を省略する。
【0064】
前記のように空気極14は、集電部材18を介して上のインターコネクタ12に電気的に接続され、一方、燃料極15は、集電部材19を介して下のインターコネクタ13に電気的に接続されており、また、積層体8は複数の燃料電池セル3を積層して直列に接続された状態であるから、上のエンドプレート45aが正極で、下のエンドプレート45bが負極になる。
【0065】
以上のように燃料電池は、発電時に温度が上昇し、発電停止により温度が下降する、という温度サイクルを繰り返す。したがって、燃料室17や空気室16を構成する全ての部材や前記固定手段9について熱膨張と収縮が繰り返され、それに伴い燃料室17や空気室16の間隔も拡大と縮小を繰り返す。
また、燃料圧や空気圧も変動する場合があり、その圧力の変動でセル本体20が変形することによっても燃料室17や空気室16の間隔が拡大又は縮小する。
このような燃料室17や空気室16の拡大方向の変化に対して、実施形態1では燃料室17側の集電部材19が、連接部19cの弾性と、スペーサー58の積層方向の弾性と熱膨張によってセル本体20を押圧するため電気的接続が安定的に維持される。この集電部材19によるセル本体20の押圧は空気室16側にも影響するため、空気室16の電気的接続も安定的に維持される。
また、燃料室17や空気室16の縮小方向の変化に対して、燃料室17側の集電部材19の連接部19cの弾性と、スペーサー58の収縮によってセル本体20に加わる応力が緩和される。
【0066】
また、燃料極15側の集電部材19がNiか又はNi合金であると、発電時の高温環境下でセル本体当接部19bが燃料極15中のNiと拡散接合して一体になる。したがって集電部材19による電気的接続がより安定的に維持される。
なお、好ましくは燃料極15にNiOペーストを塗布して接合層を形成しておくとよい。そうすることによりH2 中の通電でNiOがNiになるから集電部材19と燃料極15の接合性がさらに向上する。前記接合層は、燃料極15にPtペーストを塗布することによって形成してもよい。
【0067】
また、実施形態1では下のインターコネクタ13にコネクタ当接部19aの集合体である平板190を溶接して接合するようにしたが、該インターコネクタ13と平板190の材質を発電時の高温環境下で拡散接合し得る組み合わせ(例えばCrofer22HとNi)にするか、或は下のインターコネクタ13の内面側に前記のような接合層を形成するようにしておけば、発電時の高温環境下でインターコネクタ13と集電部材19を接合して一体にすることができる。
【0068】
[集電部材の変形例]
図13〜図16は、実施形態1の集電部材19の変形例を示す燃料電池セル3の中間省略縦断面図である。実施形態1の集電部材19は、連接部19cをU字状に曲げてコネクタ当接部19aの上方にセル本体当接部19bを配置すると共にコネクタ当接部19aとセル本体当接部19bの間にスペーサー58を介在させるようにしたが、変形例では連接部19cを斜めにして、図13のようにコネクタ当接部19aとセル本体当接部19bの上下位置を完全に異ならせるか又は図14のように集電部材19を断面略Z字状にしてコネクタ当接部19aとセル本体当接部19bの一部が上下位置を違えて重なるように配置し、そうしてコネクタ当接部19aとセル本体20及びセル本体当接部19bとインターコネクタ13を隔てるように前記スペーサー58を配置したものである。また、図15のようにスペーサー58をコネクタ当接部19aとセル本体20を隔てるように介在させるか、或は図16のようにスペーサー58をセル本体当接部19bとインターコネクタ13を隔てるように介在させるようにすることもできる。
前記した実施形態1と変形例の構成の相違は以上のとおりであり、それ以外の点については実施形態1と同じであるため詳細な説明を省略する。
【0069】
[実施形態2]
図17は、実施形態2の燃料電池を示す平面図である。この図に示されているように実施形態2の燃料電池1は、前記ガス給排流路4〜7と、前記第1列の貫通部材9aとが横並びの位置に配置されている。この場合、ガス給排流路4〜7の各縦貫本流路29,33,37,41が貫通孔46を兼用し、また、そこに挿通された空気用供給管400、空気用排気管500、燃料用供給管600、燃料用排気管700が夫々貫通部材9aを兼用し、上下のナット11,11が固定部材9bを兼用する。
なお、上記以外の点については実施形態1と同じであるため説明を省略する。また、図17において実施形態1と同じ符合を付した部分又は部品は、それらと同一又は同機能の部分又は部品である。
【0070】
[実施形態3]
図18は、実施形態3の燃料電池を示す平面図である。この図に示されているように実施形態3の燃料電池1は、前記ガス給排流路4〜7と、前記第2列の貫通部材9aとが横並びの位置に配置されている。この場合においても、ガス給排流路4〜7の各縦貫本流路29,33,37,41が貫通孔46を兼用し、また、そこに挿通された空気用供給管400、空気用排気管500、燃料用供給管600、燃料用排気管700が貫通部材9aを兼用し、上下のナット11,11が固定部材9bを兼用する。
なお、上記以外の点については実施形態1と同じであるため説明を省略する。また、図18において実施形態1と同じ符合を付した部分又は部品は、それらと同一又は同機能の部分又は部品である。
【0071】
[実施形態4]
実施形態4の燃料電池を図19〜図21を参照しつつ説明する。この実施形態4は、前記積層体8を複数(具体的には4つ)の締め部材90で固定するようにしたものであり、実施形態1に対して積層体8を固定するための固定手段9と、該固定手段9の貫通部材9aを通す貫通孔46に関する構成が異なるのみである。したがって、以下に記載のない部分については原則として実施形態1と同じである。なお、図19〜図21において図1〜図16と同じ符合の部分又は部品は、実施形態1と同一又は同機能の部分又は部品を示している。
【0072】
[締め部材]
積層体8を固定する締め部材90は、図19〜図21に示したようにコ字状主体91aと、ネジ部材92aで構成される。
【0073】
[締め部材−コ字状主体]
コ字状主体91aは、積層体8の積層方向の周縁部上面に対向する第1対向部91bと、積層体8の積層方向の周縁部下面に対向する第2対向部91cと、第1対向部91bの端部と第2対向部91cの端部を一体に連結して積層体8の側面との間に適度な隙間を空けて対向する連結部91dと、を備えており、例えばNi合金のインコネル601等の金属で形成されている。また、コ字状主体91aは、第1対向部91bと連結部91dとで構成される角部の内側と、第2対向部91cと連結部91dとで構成される角部の内側とが滑らかな曲面91eで形成されている。
【0074】
1つのコ字状主体91aの大きさは、積層体8の一辺より若干小さい程度であって、図20に示したように4つのコ字状主体91aを四角く環状に組み合わせることにより、図19に示したように積層体8の周囲をほぼ囲み得る。
コ字状主体91aの前記第1対向部91bには、中心軸が積層体8の上面に対して略垂直になる向きにして雌ネジ孔91fが形成されている。
【0075】
[締め部材−ネジ部材]
ネジ部材92aは、例えばNi合金のインコネル601等の金属で形成されており、雄ネジ軸92bの頂部に六角穴付きの円柱頭部92cを一体に有する。このネジ部材92aは、図21に示したように雄ネジ軸92bが前記雌ネジ孔91fに螺合しており、第1対向部91bから出た先端が積層体8の上面(具体的には上のエンドプレート45aの上面)に当接し、雌ネジ孔91fへの締め込み具合を調節することによって、積層体8を第2対向部91cとの間に挟んだ状態で締め付け得る。
【0076】
[雌ネジ孔とネジ部材の配置]
前記雌ネジ孔91fとネジ部材92aは、第1対向部91bに対して多数設けられており、その配置は、図19、図20に示したようにコ字状主体91aで積層体8の周囲を囲んだ状態で、実施形態1の貫通部材9aと同じである。
【0077】
すなわち、多数の雌ネジ孔91fとネジ部材92aは、4つのガス給排流路である空気供給流路4と空気排気流路5と燃料供給流路6及び燃料排気流路7よりも外縁側に位置する第1列と、前記各ガス給排流路4〜7よりも内側に位置する第2列とに並べて配置され、換言すればガス給排流路4〜7が第1列と第2列のネジ部材92aの間に配置されている。特に実施形態4のガス給排流路4〜7は、第1列と第2列のネジ部材92aの間の中央位置にあって、第1列、第2列のネジ部材92aまでの最短距離が同じになっている。
さらにネジ部材92aは、図20の平面図に示したように、第1列のネジ部材92aと第2列のネジ部材92aが、前記積層方向に直交する平面における平面視でジグザグ状(図20一点鎖線参照)、すなわち第1列と第2列を重ねた場合に第1列のネジ部材92a同士の間(好ましくはネジ部材同士の中央)に第2列のネジ部材92aが位置する状態に配置されている。
【0078】
以上の実施形態4の燃料電池1は、図21に示したように、締め部材90の第1対向部91bと第2対向部91cの間に積層体8の周縁部近傍を嵌め入れて第1列と第2列のネジ部材92aを積層方向に締め込むことで、実施形態1と同様に、積層体8の外部と内部の何れにもガス漏れしにくい状態でしっかりと固定することができる。
【0079】
なお、実施形態4においてネジ部材92aには、実施形態1の貫通部材9aに作用する引張り応力とは逆の圧縮応力が作用する。このように山谷形状のネジ部材92aを圧縮場にすることで、ネジ部材92aのクリープひずみの軽減とクリープ破断のリスクを低下させることができる。
【0080】
以上本発明を実施形態1〜4について説明したが、もちろん本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、実施形態1〜4では、第1列と第2列の貫通部材9a又は第1列と第2列のネジ部材92aをジグザグ状に配置したが、第1列と第2列の貫通部材9a又は第1列と第2列のネジ部材92aを図22に示したように平面視で横並びの位置に配置するようにしてもよい。もっともこの場合は、図22に示したように、貫通部材9a同士又はネジ部材92a同士の間隔Lがガス給排流路4〜7を横断する状態で広く空くため、ジグザグ状に配置する場合より隣り合う貫通部材9a同士又は隣り合うネジ部材92a同士の間隔を小さく詰める必要がある。換言すれば、第1列と第2列の貫通部材9a又は第1列と第2列のネジ部材92aを平面視でジグザグ状に配置すれば、少ない本数で効率よくシール性を高めることができる。
また、実施形態4ではネジ部材92aを第1対向部91bのみに設けたが、第2対向部91cのみに設けてもよいし、第1対向部91bと第2対向部91cの両方に設けてもよい。
また、実施形態では、コ字状主体91aの角部の曲面91eを第1対向部91bと第2対向部91cのそれぞれに形成したが、何れか一方の角部に曲面91eを設けるだけでもよい。なお、角部の内側を滑らかな曲面で形成することにより、発電時の熱によるネジ部材92aの緩みが軽減される効果がある。
【符号の説明】
【0081】
1 …燃料電池
3 …燃料電池セル
4 …空気供給流路(ガス給排流路)
5 …空気排気流路(ガス給排流路)
6 …燃料供給流路(ガス給排流路)
7 …燃料排気流路(ガス給排流路)
8 …積層体
9a …貫通部材
9b …固定部材
46 …貫通孔
90 …締め部材
91b …第1対向部
91c …第2対向部
91d …連結部
91f …雌ネジ孔
92a …ネジ部材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平板状の燃料電池セルを複数枚積層してなる積層体と、
前記積層体の周縁部に配置されると共に、該積層体を前記積層方向に貫いて、発電反応に用いられる反応ガスを各前記燃料電池セルに供給するまたは発電反応後の排ガスを前記各燃料電池セルより排出するガス給排流路と、
前記積層方向に沿って前記積層体の前記周縁部を貫く貫通孔に挿入された棒状の貫通部材と、
前記貫通部材の軸方向の両端に設けられた固定部材と、を備え、
前記貫通部材と前記固定部材を介して前記積層体が前記積層方向の両端側より締め付けられている燃料電池であって、
前記貫通部材は、
前記積層体の前記周縁部において、該周縁部の外寄りに位置する外縁側に第1列と、前記外縁側よりも内側に位置する内縁側に第2列とに並べて配置され、
前記ガス給排流路は、
前記第1列若しくは前記第2列の前記貫通部材と横並びの位置に、または前記第1列と前記第2列の前記貫通部材の間の位置に配置されていることを特徴とする燃料電池。
【請求項2】
前記ガス給排流路は、前記第1列と前記第2列の前記貫通部材の間の位置に配置されており、さらに該ガス給排流路から、前記第1列、前記第2列の前記貫通部材までの最短距離が同じであることを特徴とする請求項1記載の燃料電池。
【請求項3】
前記ガス給排流路は、前記第1列の貫通部材と横並びの位置に配置されており、さらに該第1列の貫通部材が挿入されている前記貫通孔の少なくとも一部に前記ガス給排流路が設けられていることを特徴とする請求項1記載の燃料電池。
【請求項4】
前記第1列の前記貫通部材と前記第2列の前記貫通部材は、前記積層方向に直交する平面における平面視でジグザグ状に配置されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の燃料電池。
【請求項5】
平板状の燃料電池セルを複数枚積層してなる積層体と、
前記積層体の周縁部に配置されると共に、該積層体を前記積層方向に貫いて、発電反応に用いられる反応ガスを各前記燃料電池セルに供給、または発電反応後の排ガスを前記燃料電池セルより排出するガス給排流路と、
前記積層体を前記積層方向の両端側より締め付ける締め部材と、
を備えた燃料電池であって、
前記締め部材は、
前記積層体の前記周縁部において、前記積層体の前記積層方向の両端の一方の面に対向する第1対向部と、
前記周縁部において、前記積層体の前記積層方向の両端の他方の面に対向する第2対向部と、
前記第1対向部の端部と前記第2対向部の端部を一体に連結して前記積層体の側面に対向する連結部と、
前記第1対向部と前記第2対向部の少なくとも一方に形成されると共に前記積層体の前記一方の面又は前記他方の面に向かって貫通し且つ前記積層体の前記外縁側に対応する第1列と前記内縁側に対応する第2列とに分けて形成された複数個の雌ネジ孔と、
前記雌ネジ孔に螺合すると共に前記積層体の前記一方の面又は前記他方の面に先端が当接し、前記雌ネジ孔への締め込みによって前記第1列と前記第2列に分かれて前記積層体を積層方向に締め付け得る複数本のネジ部材と、を有し、
前記ガス給排流路は、
前記第1列若しくは前記第2列の前記ネジ部材と横並びの位置に、または前記第1列と前記第2列の前記ネジ部材の間の位置に配置されていることを特徴とする燃料電池。
【請求項6】
前記ガス給排流路は、前記第1列と前記第2列の前記ネジ部材の間の位置に配置されており、さらに前記積層方向に沿って前記積層方向に直交する平面に投影した際、前記ガス給排路から、前記第1例、前記第2列の前記ネジ部材までの最短投影距離が同じであることを特徴とする請求項5に記載の燃料電池。
【請求項7】
前記第1列の前記ネジ部材と前記第2列の前記ネジ部材は、前記積層方向に直交する平面における平面視でジグザグ状に配置されていることを特徴とする請求項5又は6に記載の燃料電池。
【請求項1】
平板状の燃料電池セルを複数枚積層してなる積層体と、
前記積層体の周縁部に配置されると共に、該積層体を前記積層方向に貫いて、発電反応に用いられる反応ガスを各前記燃料電池セルに供給するまたは発電反応後の排ガスを前記各燃料電池セルより排出するガス給排流路と、
前記積層方向に沿って前記積層体の前記周縁部を貫く貫通孔に挿入された棒状の貫通部材と、
前記貫通部材の軸方向の両端に設けられた固定部材と、を備え、
前記貫通部材と前記固定部材を介して前記積層体が前記積層方向の両端側より締め付けられている燃料電池であって、
前記貫通部材は、
前記積層体の前記周縁部において、該周縁部の外寄りに位置する外縁側に第1列と、前記外縁側よりも内側に位置する内縁側に第2列とに並べて配置され、
前記ガス給排流路は、
前記第1列若しくは前記第2列の前記貫通部材と横並びの位置に、または前記第1列と前記第2列の前記貫通部材の間の位置に配置されていることを特徴とする燃料電池。
【請求項2】
前記ガス給排流路は、前記第1列と前記第2列の前記貫通部材の間の位置に配置されており、さらに該ガス給排流路から、前記第1列、前記第2列の前記貫通部材までの最短距離が同じであることを特徴とする請求項1記載の燃料電池。
【請求項3】
前記ガス給排流路は、前記第1列の貫通部材と横並びの位置に配置されており、さらに該第1列の貫通部材が挿入されている前記貫通孔の少なくとも一部に前記ガス給排流路が設けられていることを特徴とする請求項1記載の燃料電池。
【請求項4】
前記第1列の前記貫通部材と前記第2列の前記貫通部材は、前記積層方向に直交する平面における平面視でジグザグ状に配置されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の燃料電池。
【請求項5】
平板状の燃料電池セルを複数枚積層してなる積層体と、
前記積層体の周縁部に配置されると共に、該積層体を前記積層方向に貫いて、発電反応に用いられる反応ガスを各前記燃料電池セルに供給、または発電反応後の排ガスを前記燃料電池セルより排出するガス給排流路と、
前記積層体を前記積層方向の両端側より締め付ける締め部材と、
を備えた燃料電池であって、
前記締め部材は、
前記積層体の前記周縁部において、前記積層体の前記積層方向の両端の一方の面に対向する第1対向部と、
前記周縁部において、前記積層体の前記積層方向の両端の他方の面に対向する第2対向部と、
前記第1対向部の端部と前記第2対向部の端部を一体に連結して前記積層体の側面に対向する連結部と、
前記第1対向部と前記第2対向部の少なくとも一方に形成されると共に前記積層体の前記一方の面又は前記他方の面に向かって貫通し且つ前記積層体の前記外縁側に対応する第1列と前記内縁側に対応する第2列とに分けて形成された複数個の雌ネジ孔と、
前記雌ネジ孔に螺合すると共に前記積層体の前記一方の面又は前記他方の面に先端が当接し、前記雌ネジ孔への締め込みによって前記第1列と前記第2列に分かれて前記積層体を積層方向に締め付け得る複数本のネジ部材と、を有し、
前記ガス給排流路は、
前記第1列若しくは前記第2列の前記ネジ部材と横並びの位置に、または前記第1列と前記第2列の前記ネジ部材の間の位置に配置されていることを特徴とする燃料電池。
【請求項6】
前記ガス給排流路は、前記第1列と前記第2列の前記ネジ部材の間の位置に配置されており、さらに前記積層方向に沿って前記積層方向に直交する平面に投影した際、前記ガス給排路から、前記第1例、前記第2列の前記ネジ部材までの最短投影距離が同じであることを特徴とする請求項5に記載の燃料電池。
【請求項7】
前記第1列の前記ネジ部材と前記第2列の前記ネジ部材は、前記積層方向に直交する平面における平面視でジグザグ状に配置されていることを特徴とする請求項5又は6に記載の燃料電池。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
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【図11】
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【図19】
【図20】
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【公開番号】特開2013−80650(P2013−80650A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−220753(P2011−220753)
【出願日】平成23年10月5日(2011.10.5)
【出願人】(000004547)日本特殊陶業株式会社 (2,912)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月5日(2011.10.5)
【出願人】(000004547)日本特殊陶業株式会社 (2,912)
【Fターム(参考)】
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